説明

舗装道路の段差抑制工法及び段差抑制構造

【課題】容易に施工することができ、地震等による地盤の変形時にも道路機能を維持することができる、舗装道路の段差抑制工法を提供すること。
【解決手段】基礎支持層の上部に路床、路盤及び硬質舗装層を積層してなり、路床若しくは路盤内部に剛性構造物を有する舗装道路の段差抑制工法であって、前記剛性構造物と、前記路床若しくは前記路盤との境界部に、補強材によって充填材を抱囲して緩衝層を形成し、前記緩衝層を複数層形成して重合し、緩衝部を構築し、前記緩衝部の上部に、路盤及び硬質舗装層を形成して、舗装道路を構築することを特徴とする、舗装道路の段差抑制工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装道路の段差抑制工法及び段差抑制構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な舗装道路の構造は、路体の上部に位置する路床4と、路床4の上部に位置する路盤3、及び路盤3の上部に位置する硬質舗装層2と、を積層したものであり、車両等によって作用する荷重を下方へ分散して伝達する構造となっている。(図8(a))
路床4には、地下通路や水路、共同溝等、コンクリート製の剛性構造物5が配置されることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
地震等によって舗装道路が大きな荷重を受けた場合、下部の路体や路床4が変形する。
路床4中に剛性構造物5が存在する場合、剛性構造物5は変形しないため、剛性構造物5が存在する部分の舗装道路と、剛性構造物5が存在しない部分の舗装道路は、変形する路体や路床4の層の厚さが異なり、剛性構造物5が存在する部分の変形量の方が小さくなる。
このため、剛性構造物5の境界部の上部の舗装道路では大きな段差Aを生じることとなる。(図8(b))
【0004】
また、近年、砂浜や海を埋め立てて、その上に原子力発電所や空港等の施設が建設されており、このような施設の舗装道路の下部には剛性構造物が数多く配置されている。
埋め立てて形成した地盤は、地震時には液状化による変位が大きく、多くの剛性構造物の境界部で段差が生じ、施設内の道路交通が遮断されてしまう。これにより、施設の機能が失われ、復旧までの経済的損失が大きくなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、容易に施工することができ、地震等による地盤の変形時にも道路機能を維持することができる、舗装道路の段差抑制工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、基礎支持層の上部に路床、路盤及び硬質舗装層を積層してなり、路床若しくは路盤内部に剛性構造物を有する舗装道路の段差抑制工法であって、前記剛性構造物と、前記路床若しくは前記路盤との境界部に、補強材によって充填材を抱囲して緩衝層を形成し、前記緩衝層を複数層形成して重合し、緩衝部を構築し、前記緩衝部の上部に、路盤及び硬質舗装層を形成して、舗装道路を構築することを特徴とする、舗装道路の段差抑制工法を提供するものである。
本願の第2発明は、第1発明の舗装道路の段差抑制工法において、前記緩衝層は、前記剛性構造物と、前記路床若しくは前記路盤との境界部に、前記補強材を敷設し、前記充填材を前記補強材上に撒きだし、前記補強材の両端部を巻き返して前記充填材上に敷設し、上層の緩衝層を形成する上層補強材を前記充填材上に敷設し、前記補強材と前記上層補強材とを連結して形成することを特徴とする、舗装道路の段差抑制工法を提供するものである。
本願の第3発明は、第2発明の舗装道路の段差抑制工法において、敷設した前記補強材にモルタルを塗布し、モルタルを塗布した前記補強材上に前記充填材を撒きだすことを特徴とする、舗装道路の段差抑制工法を提供する。
本願の第4発明は、第1発明乃至第3発明のいずれかの舗装道路の段差抑制工法において、前記剛性構造物の一方の境界部から他方の境界部に亘って前記緩衝層を敷設し、前記緩衝層を複数層重合し、前記剛性構造物の上部に亘って緩衝部を構築することを特徴とする、舗装道路の段差抑制工法を提供する。
本願の第5発明は、基礎支持層の上部に路床、路盤及び硬質舗装層を積層してなり、路床若しくは路盤内部に剛性構造物を有する舗装道路の段差抑制構造であって、前記硬質舗装層の下部であって、前記剛性構造物と、前記路床若しくは前記路盤との境界部に緩衝部を有し、前記緩衝部は、補強材によって充填材を抱囲した緩衝層を複数層重合して構成することを特徴とする、舗装道路の段差抑制構造を提供する。
本願の第6発明は、第5発明の舗装道路の段差抑制構造において、前記緩衝部は、前記剛性構造物の一方の境界部から他方の境界部に亘って構成することを特徴とする舗装道路の段差抑制構造を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
<1>緩衝層は、補強材によって充填材を抱囲することにより構成するため、施工が容易であり、養生期間も不要であるため、施工期間を短縮することができる。
<2>剛性構造物の境界上部のみを掘削して施工するため、既設道路の補強も短工期に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の舗装道路の段差抑制構造の説明図
【図2】段差抑制工法の補強材敷設工の説明図
【図3】緩衝層構築工の説明図
【図4】緩衝部構築工の説明図
【図5】本発明の段差抑制構造の段差発生時の説明図
【図6】本発明の実施例2に係る緩衝層構築工の説明図
【図7】本発明の実施例3に係る段差抑制構造の説明図
【図8】従来の舗装道路構造の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0010】
[1]段差抑制構造の概要
本発明の工法に係る、舗装道路段差抑制構造は、路体の上部に位置する路床4と、路盤3、及び路盤3の上部に位置するアスファルトやコンクリートからなる硬質舗装層2からなり、路床4に地下通路や水路、共同溝等、コンクリート製の剛性構造物5を配置する舗装道路において、剛性構造物5の上部の路床4又は路盤3中に、剛性構造物5の端部から張り出すように、緩衝部1を配置して構成する。(図1)
【0011】
(1)緩衝部
緩衝部1は、剛性構造物5の上部に位置する路床4と路盤3のいずれかに設け、上部の舗装道路を支持するものである。
緩衝部1は、補強材11によって充填材12を抱囲して構成する緩衝層10を複数層重合して構成する。
緩衝部1は、剛性構造物5の端部から所定の範囲に亘って、一方が剛性構造物5の上部に掛かり、他方は剛性構造物5から張り出すように配置する。
【0012】
(2)緩衝層
緩衝層10は、所定の厚さに転圧した充填材12を、補強材11によって抱囲して構成する。
補強材11は、ある程度の引張強度と可撓性を有する、公知の各種シート状物又はネット状物である。
充填材12は、土砂の他、砂や砕石、処分に窮している各種廃材或いはこれらの混合物を使用できる。
【0013】
[2]施工方法
次に、舗装道路段差抑制構造の施工方法について説明する。
【0014】
(1)補強材の敷設
新たに舗装道路を構築する場合には、緩衝部1を形成する位置の直下まで舗装構造や剛性構造物5を構築する。
また、既設の舗装道路に耐震舗装を行う場合には、緩衝部1を形成する位置まで舗装道路を掘削する。
この際、緩衝部1は剛性構造物5の端部から所定の範囲に配置するため、既設の舗装道路をその範囲程度掘削すればよいため、低コストで、短工期に施工を行うことができる。
また、剛性構造物5の上部が路盤5中に位置する場合には、硬質舗装層2と路盤5のみを掘削すればよいため、低コストで、短工期に施工を行うことができる。
【0015】
次に、形成した路床4や剛性構造物5の上面に最下層の緩衝層10aを構成する補強材11aを敷設する。(図2)
補強材11aは両端部を巻き返して使うため、緩衝部1を配置する位置よりも両端が出るように敷設する。
敷設した補強材11aの両端であって、補強材11aを巻き返す位置には、型枠13aを配置する。
型枠13はU字状、またはJ字状の部材であり、型枠13の外周に沿って補強材11を巻き返すことで、緩衝層10の端部を形成するための部材である。
【0016】
(2)緩衝層の構築
次に、配置した型枠13間に、形成しようとする緩衝層10aの高さまで充填材12aを撒き出す。
充填材12aは、各種の転圧用機器を用いて、緩衝層10aの層厚に形成する。
充填材12aを撒きだして均したら、補強材11aの両端を、型枠13に沿って巻き返し、充填材12aの上面に敷設する。
型枠13は捨て型枠とし、内部に配置したまま緩衝層10aを構築する。
【0017】
(3)補強材の結合
緩衝層10aの上面に、上層の緩衝層10bを構成する補強材11bを敷設する。(図3)
補強材11bは補強材11aと同質である。
補強材11aと補強材11bは、ロープ材等の結合材によって結合することによって、充填材12aを補強材11a、11bによって抱囲する。
このように構成することにより、補強材11a、11bの拘束作用によって、緩衝層10aをせん断強度、曲げ強度及びじん性の高い土塊状とすることができる。
また、補強材11aと補強材11bを結合する際に、補強材11aの一方の端部を結合した後、他方の端部は補強材11aを引張しながら結合してもよい。
補強材11aを引張しながら補強材11bと結合することにより、引張力によって補強材11aの拘束作用が高まり、緩衝層10aのせん断強度、曲げ強度及びじん性を高めることができる。
【0018】
上記(2)〜(3)を繰り返すことによって、複数層の緩衝層10a〜10cを重合して、緩衝部1を構築する。(図4)
緩衝部1の周囲の路盤3や路床4は、緩衝層10を構築するごとに構築した緩衝層10の高さに合わせて施工してもよいし、緩衝部1を先に構築した後に構築してもよい。
緩衝層10を重合する層数は、舗装道路の重要度や、剛性構造物5と硬質舗装層2との距離を考慮し、適当な層数を選択することができる。
最上部の緩衝層10cは、両端から巻き返した補強材11cを互いに引張しながら結合材によって結合して充填材12cを抱囲する。
【0019】
(4)舗装道路の構築
以上のようにして構築した緩衝部1の上部に、路盤3及び硬質舗装層2を形成し、図1のような舗装道路の段差抑制構造を構築する。
【0020】
(5)緩衝部の効果
緩衝部1はせん断強度、曲げ強度及びじん性の高い緩衝層10を組み合わせたものである。このため、下部の路体や路床4の変形に滑らかに追従しながら変形する。
【0021】
地震等の災害発生時、舗装構造の下部に位置する路床4や路体が液状化等によって崩壊することで、剛性構造物5の境界に不等沈下が発生して段差Aが生じた場合でも、せん断強度、曲げ剛性及びじん性の高い緩衝層10を重合した緩衝部1が、路床4や路体の変形に滑らかに追従して変形し、硬質舗装層2及び路盤3を支持するため、段差Aが抑制される。(図5)
これにより、硬質舗装層2に急激な段差が生じることなく、道路交通を維持することができる。
【実施例2】
【0022】
緩衝層10を構築する際には、敷設した補強材11の、充填材12を撒き出す範囲にモルタル14を塗布し、その上に充填材12を撒きだしてもよい。(図6)
補強材11はシート状又はネット状であるため、モルタル14によって補強材11が補強されるとともに、モルタル14を介して、補強材11と充填材12が一体となることによって、緩衝層10の下面を補強することができる。
緩衝部1が路床4の変形に追従して変形する際には、緩衝層10cの下部には、下面に沿って応力(引張応力)が作用する。この範囲にモルタル14を塗布することによって、この部分が補強されるため、緩衝部1の剛性を効果的に高めることができる。
【実施例3】
【0023】
上記実施例では、緩衝部1は剛性構造物5の端部から所定の範囲に設けたが、両方の端部に設ける緩衝部1を、剛性構造物5の上部の全範囲に亘って設けることにより、一体として形成してもよい。(図7)
一体に形成することによって、緩衝部1を複数構築する場合と比較して、各工程が一度で済み、短工期で構築することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 緩衝部
10 緩衝層
11 補強材
12 充填材
13 型枠
14 モルタル
2 硬質舗装層
3 路盤
4 路床
5 剛性構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層の上部に路床、路盤及び硬質舗装層を積層してなり、路床若しくは路盤内部に剛性構造物を有する舗装道路の段差抑制工法であって、
前記剛性構造物と、前記路床若しくは前記路盤との境界部に、補強材によって充填材を抱囲して緩衝層を形成し、
前記緩衝層を複数層形成して重合し、緩衝部を構築し、
前記緩衝部の上部に、路盤及び硬質舗装層を形成して、舗装道路を構築することを特徴とする、
舗装道路の段差抑制工法。
【請求項2】
請求項1に記載の舗装道路の段差抑制工法において、
前記緩衝層は、
前記剛性構造物と、前記路床若しくは前記路盤との境界部に、前記補強材を敷設し、
前記充填材を前記補強材上に撒きだし、
前記補強材の両端部を巻き返して前記充填材上に敷設し、
上層の緩衝層を形成する上層補強材を前記充填材上に敷設し、
前記補強材と前記上層補強材とを連結して形成することを特徴とする、
舗装道路の段差抑制工法。
【請求項3】
請求項2に記載の舗装道路の段差抑制工法において、
敷設した前記補強材にモルタルを薄層状に打設し、
モルタルを塗布した前記補強材上に前記充填材を撒きだすことを特徴とする、
舗装道路の段差抑制工法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の舗装道路の段差抑制工法において、
前記剛性構造物の一方の境界部から他方の境界部に亘って前記緩衝層を敷設し、
前記緩衝層を複数層重合し、前記剛性構造物の上部に亘って緩衝部を構築することを特徴とする、
舗装道路の段差抑制工法。
【請求項5】
基礎支持層の上部に路床、路盤及び硬質舗装層を積層してなり、路床若しくは路盤内部に剛性構造物を有する舗装道路の段差抑制構造であって、
前記硬質舗装層の下部であって、前記剛性構造物と、前記路床若しくは前記路盤との境界部に緩衝部を有し、
前記緩衝部は、補強材によって充填材を抱囲した緩衝層を複数層重合して構成することを特徴とする、
舗装道路の段差抑制構造。
【請求項6】
請求項5に記載の舗装道路の段差抑制構造において、
前記緩衝部は、前記剛性構造物の一方の境界部から他方の境界部に亘って構成することを特徴とする、
舗装道路の段差抑制構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−163769(P2010−163769A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5510(P2009−5510)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(509014641)東京ジオテク株式会社 (1)
【出願人】(000201490)前田工繊株式会社 (118)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】