説明

航海データ記録装置

【目的】
本発明は、航海データ記録装置において、警告音を発した船内装置を特定することを目的とする。
【構成】
航海データ記録装置において、航海中の音声を記録する音声記録装置と、装置名と該装置が発する警告音を関連づけてデータベース化した警告音記録装置と、前記音声記録装置に収録された音声と前期警告音記録装置に格納された警告音を解析し比較する音声比較装置と、前記音声比較装置の比較結果を表示する表示装置と、から成る事を特徴とする航海データ記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航海データをデータ記憶装置に記憶する航海データ記録装置及び航海データ
記録・解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
航海データ記録装置{以下、VDR(Voyage Data Recoder)ともいう}は、航空機のフライトレコーダである「ブラックボックス」に類似した記録装置であるため、船のブラックボックスとも呼称され、衝突や沈没等の海難事故が発生した場合、事故を起こした船舶から前記VDRの保護カプセルを回収し、前記保護カプセルに記録されている前記船舶の船速、船橋内の会話、レーダ映像等の航海データを再生することにより、前記海難事故の原因を究明するものである(特許文献1参照)。
【0003】
VDRは、2002年7月1日以降に建造された国際航海に従事する3000総トン数以上の貨物船旅客船への装備がSOLAS条約によって義務化されている。ただし、貨物船旅客船に対しては、2002年7月1日以前に建造された船舶にも適用される。
【0004】
このように、VDRは事故または事件の際の解析の基礎を提供するものであり、その解析速度向上や解析精度向上を目的とする高機能化技術は、船の往来の増加に伴い、近年強く要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−071337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、前記の従来手法によれば、VDRによって記録される船内の音声を検査担当者が視聴して解析しなければならず、当該船内の音声に混入している機器類からの警報音などに関しては、それが何の警報音なのかを知るためには、乗員の勘と経験に頼らざるを得なかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、VDRによって記録される船内の音声に含まれる船内装置が発した警告音を自動的に特定することを目的としたものであり、このことによって海難事故の原因究明を容易にする一助となるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のVDRは次のような特徴を有するものとする。
つまり、航海データ記録装置において、
航海中の音声を記録する音声記録装置と、
船内に設置された装置に付した固有のラベルと該装置が発する警告音を関連づけてデータベース化した警告音記録装置と、
前記音声記録装置に収録された音声と前期警告音記録装置に格納された警告音を解析し比較する音声比較装置と、
前記音声比較装置の比較結果を用い音声記録装置に記録された音声との誤差が最小になる警告音を選択する符号間距離算出装置と、
前記符号間距離算出装置によって誤差最小と判定された警告音に関連付けられた前記ラベルを表示する表示装置と、
から成る事を特徴とする航海データ記録装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のように、予め船内の測定機器の警告音のデータベースを作成することにより、VDRが記録した音声に警告音が含まれていた場合、当該警告音を発生した船内装置を、音響解析によって直ちに自動的に特定することが可能となる。従って、船舶が例えば事故を起こし、後に事故原因の究明作業をする場合に、当該究明作業を迅速化でき、さらに、人為的なミスを防ぐことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態の一例である。
【図3】本発明の前処理部の処理内容を示した図である。
【図4】本発明の後処理部の処理内容を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
本発明の好適な実施の形態について図を参照して説明する。図1は本発明の実施例における航海データ記録装置の機能ブロック図である。
【0012】
図1において、1は船内音声を録音する音声記録装置である。2は装置名と該装置が発する警告音を関連付けてデータベース化する警告音記録装置である。3は、音声記録装置1が記録した音声データと、警告音記録装置2が作成したデータベースと、を保存する記録媒体である。4は、記録媒体3に保存された前記音声データと、前記データベースと、を照合し、警告音を発した装置の装置名を出力する音声比較装置である。5は音声比較装置4の出力した装置名を表示する表示装置である。
【0013】
前記記録媒体3は、VDRの保護カプセルに収納された記憶媒体と、VDR本体に内蔵された記憶装置と、VDRに接続されたリムーバブルメディアと、のいずれでもよい。
【0014】
前記音声記録装置1と、前記警告音記録装置2と、前記音声比較装置4と、が同時に前記記録媒体3に接続されている必要はない。したがって、前記音声記録装置1と、前記警告音記録装置2と、を船内に設置し、前記音声比較装置4と、前記表示装置5と、を陸上に設置する構成でもよい。
【0015】
前記記録媒体3を用いる代わりに、シリアル通信またはネットワーク通信により、前記音声記録装置1と前記警告音記録装置2から前記音声比較装置4へ、前記音声データと前記データベースを転送してもよい。
【0016】
図2は本発明の実施の形態の一例である。前記のように記録媒体3をネットワークの伝送路とした例であり、船舶10に音声記録装置1と警告音記録装置2を搭載し、衛星11を介したネットワークで陸上施設12と通信し、当該陸上施設12に音声比較装置4と表示装置5を備えている。
【0017】
図3は、本発明において、船内音声の中に装置の警告音が混入していた際に当該装置名を自動認識する処理のために必要となる処理を示したものである。つまり図1の音声記録装置1と警告音記録装置2をより詳細に描いた図である。
【0018】
警告音記録装置2は本発明における前処理である。当該装置に接続されたマイク等によって装置利用者が警告音を入力すると、警告音切り出し部21は警告音信号区間の切り出し処理を行う。この処理は様々な方法が考えられる。例えば、任意時間幅における信号電力の平均値が事前に定めた閾値を超えている区間を警告音信号区間とする方法である。あるいは、任意時間幅における信号の周波数分析によって周辺ノイズと警告音を識別し、警告音が含まれる区間を切り出す方法である。
【0019】
さらに装置利用者は警告音入力動作の前あるいは後に、装置名など固有のラベルを警告音記録装置2に接続されたキーボードなどから入力する。このことによって、前記のように切り出された警告音信号とラベルを対応付けて管理することが可能になる。
【0020】
次に、切り出された警告音信号を、第1の音声符号化処理部22で符号化する。なお、当該符号化アルゴリズムは任意であり、本発明ではこれを限定しない。符号化された警告音は第1の記録部23に、前記ラベルと対応付けて保存される。対応付けた保存とは、ラベルと符号化警告音を連続したメモリ領域に記録する方法や、あるいは、予め定めたメモリマップに従って記録する方法など様々な方法が考えられるが、本発明ではこれを限定しない。
【0021】
音声記録装置1においては、当該装置に接続されたマイク等によって船内音声を入力し、第2の音声符号化処理部24において符号化し、符号化された船内音声を第2の記録部25に記録する。ここで、第1の音声符号化処理部22の符号化アルゴリズムと第2の音声符号化処理部24の符号化アルゴリズムは同一であってもよいし、比較処理が出来るのであれば異なるアルゴリズムであってもよい。
【0022】
次に、前記の第1の記録部に記録した符号と第2の記録部に記録した符号を、記録媒体3に入力し、後段の処理を行う。
【0023】
図4は、本発明の後段を示したもので、記録された船内音声信号と警告音信号を比較する処理である。記録媒体3を経由した第1の記録部に記録された符号を音声比較装置4のバッファ31に格納し、また、記録媒体3を経由した第2の記録部に記録された符号を音声比較装置4のバッファ32に格納し、符号間距離算出部33が符号間距離を算出し、バッファ32との符号間距離が最小である第1の記録部に記録された符号に対応する第1の記録部に記録されたラベルを読み込み、表示装置5に当該ラベルを表示するものである。
【0024】
なお、前記のように、第1の記録部に記録された符号の中で、前記符号間距離が最小であるものを発見したとしても、当該符号間距離が予め定めた閾値を超える場合には、該当する警告音を発見できなかったと表示装置5に表示してもよい。
【0025】
また、前記のように、記録媒体3は記録装置であってもよいし、さらに、ネットワークにおける伝送路であってもよい。つまり、ネットワークにおける伝送路である場合は、音声比較装置4と表示装置5は当該船舶から離れた場所に設置することが可能になる。
【符号の説明】
【0026】
1…音声記録装置、
2…警告音記録装置、
3…記録媒体、
4…音声比較装置、
5…表示装置、
10…船舶、
11…衛星、
12…陸上施設、
21…警告音切り出し部、
22…第1の音声信号符号化処理部、
23…第1の記録部、
24…第2の音声信号符号化処理部、
25…第2の記録部、
31…第1の記録部から取得した信号格納部、
32…第2の記録部から取得した信号格納部、
33…符号間距離算出部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
航海データ記録装置において、
航海中の音声を記録する音声記録装置と、
船内に設置された装置に付した固有のラベルと該装置が発する警告音を関連づけてデータベース化した警告音記録装置と、
前記音声記録装置に収録された音声と前期警告音記録装置に格納された警告音を解析し比較する音声比較装置と、
前記音声比較装置の比較結果を用い音声記録装置に記録された音声との誤差が最小になる警告音を選択する符号間距離算出装置と、
前記符号間距離算出装置によって誤差最小と判定された警告音に関連付けられた前記ラベルを表示する表示装置と、
から成る事を特徴とする航海データ記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−168081(P2012−168081A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30618(P2011−30618)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】