説明

航空機に窓を取り付ける方法

【課題】本発明は、航空機胴体の側壁(12)の開口に窓を取り付ける方法であって、上記窓は、外部透明部材(10)および少なくとも1つの内部透明部材(11)を含む、方法に関する。
【解決手段】本発明によれば、盲凹部が、開口のエッジに沿って側壁(12)の一部分に形成される。続けて、開口の直径よりも大きな直径を有し、開口内の外部透明部材(10)を横方向および縦方向においてブロックするように側壁の上記部分と協働する形状を有する第1の部分(13)を含む外部透明部材(10)が、胴体外部から開口内に位置決めされる。外部透明部材(10)は、胴体内に突出する溝(17)を有する第2の部分(16)も含む。外部透明部材(10)および少なくとも1つの内部透明部材(11)は、少なくとも胴体および溝(17)の内壁に対してリップ(21)を押す帯鋼(22)を使用して胴体に溶接される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の胴体側壁に設けられた開口に沿って窓を取り付ける方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
商用航空機が、通常、例えば、飛行中に受ける機械的負荷に耐えるために、ストリンガ及びフレーム等の補剛部材によって補強された疑似円筒形胴体を含むことが既知である。
【0003】
例えば、商用航空機では、窓を嵌め込むための開口が胴体の側壁に設けられて、乗客が胴体外の環境を直接見られるようにする。
【0004】
しかし、こういった窓は一般に、多くの欠点を生じさせる。第1に、乗客に快適さを提供するために、航空機の窓は、胴体の内部空間の外部からの音および熱を遮断しなければならない。さらに、水密性および気密性を有さなければならない。
【0005】
通常、胴体表面にリベット留めされる窓枠も、胴体の屈曲および窓に加えられる圧力から生じる負荷等の機械的負荷に耐えなければならない。
【0006】
そして、窓は航空機の空力的プロファイルに従わなければならない。
【0007】
これらすべての負荷により、製造業者は窓エリアに特別な剛性を付与している。
【0008】
図1は、航空機胴体の側壁1に取り付けられた従来技術による窓の部分断面図を概略的に示す図である。
【0009】
航空機の窓は、外部ペイン2と、第2の安全バリアを形成する内部ペイン3とを含み、それ自体、潜在的に、第3のペインによって偶発的なひっかきから保護される。
【0010】
外部ペイン2および内部ペイン3は、封止機能を提供するジョイント4によって互いに離間される。
【0011】
窓5の枠は、胴体の側壁1の開口6の全周に延びる2列のリベット(図示せず)を使用して胴体の側壁1に一体化される。
【0012】
ペイン2、3、およびジョイント4は、固定クリップ7、ナット、およびスタッド等の機械的な固定具によって定位置に保持される。
【0013】
これらの機械的固定具の取り付けは難しく時間のかかる仕事である。したがって、この取り付けは、メンテナンス時に航空機を固定するため、費用がかかる。
【0014】
これらの機械的固定具は、航空機による燃料消費に悪影響を及ぼす重量の追加も意味する。
【0015】
さらに、これらの機械的固定具によっては、胴体の側壁にさらなる穴を設ける必要があるものがある。ここで、複合胴体の表面に穴を設けることは、機械的挙動に関する多くの負荷を意味する。
【0016】
ブラケットには脆弱なものがあり、多くのメンテナンスを必要とするため、航空機整備費が増大することも留意すべき点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
このため、胴体表面にいかなる穴も追加せずに位置決めでき、そのメンテナンスが容易で最適な単純な設計および作業の航空機窓が緊急に必要とされている。
【0018】
したがって、本発明の目的は、最小の質量を有するとともに、窓開口以外に航空機状態の側壁に穴を必要とせず、かつ胴体壁をダブラに接続するいかなる機械的固定具も必要とせずに、非常に重要な機械的耐性を有する経済的な外部透明部材を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、このような外部透明部材を含む航空機窓を航空機の側壁に設けられた開口に取り付ける方法である。この取り付け方法は、その作業において特に単純であり、窓のより素早い取り付けおよび取り外しを可能にし、結果として、メンテナンスコストを低減させる。
【0020】
窓毎にこの側壁に設けられる穴は1つのみであるため、この取り付けは確実でもある。有利には、この取り付けでは、窓と胴体壁とのずれの整合が問題にならない。
【0021】
そして、このような取り付けにより、外部透明部材を使用して、胴体壁において最も繊細な場所である胴体壁のフリーエッジの保護が可能になる。それにもかかわらず、この取り付けは、フランジエッジを含まない開口エッジのみに適合する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的のために、本発明は、窓を航空機の胴体側壁に設けられた開口に取り付ける方法であって、この窓が、外部透明部材および少なくとも1つの内部透明部材を含む、方法に関する。
【0023】
本発明によれば、この方法は以下の工程を含む。
a)盲凹部が、上記開口の周縁に沿ってこの側壁の一部分に設けられる工程
b)外部透明部材が、胴体の外部から開口に位置決めされる工程であって、この外部透明部材が第1の部分を有し、第1の部分の直径は開口の直径よりも大きく、この第1の部分は、この開口内の外部透明部材を横方向および縦方向においてブロックするように側壁の上記部分と協働する形状を有する、位置決めされる工程
c)外部透明部材が胴体内側に突出した溝を有する第2の部分を含み、外部透明部材および上記少なくとも1つの内部透明部材が、帯鋼を通して胴体と一体化される工程であって、この帯鋼は、ジョイントを少なくとも胴体および溝の内壁に対して押す、一体化される工程
【0024】
有利には、これら透明部材は、機械的耐性および航空学の分野の用途に結び付けられた腐食基準に対する耐性に準拠する材料で作られる。純粋に例示として、透明部材は延伸アクリル樹脂で作られる。
【0025】
前記取り付け方法の特定の各種実施形態は、それぞれ特定の利点を有し、利用可能な技術の多様な組み合わせを適用することが可能であるが、これら実施形態において、
−上記盲凹部は食い付き部を含む。
【0026】
この食い付き部は、有利には、外部透明部材と胴体側壁との間に実質的に水密性かつ気密性の接続を提供することを可能にする。
【0027】
この食い付き部は、外部透明部材が胴体側壁によって画定される空力的プロファイルを超えないことを確実にすることも可能にする。
−上記少なくとも1つの内部透明部材は、工程c)前に、ジョイントを使用して外部透明部材に取り付けられる。
−帯鋼は少なくとも2つの帯鋼部材を含み、これら帯鋼部材は、少なくとも1つの固定部材を通して共に一体化される。
【0028】
これら固定部材は、好ましくは機械的部材であり、例えば、ネジ、ボルト、サークリップを含む。
−内部透明部材は、楕円形、三角形、矩形、および菱形を含む群から選択される形状を有する。
【0029】
当然ながら、胴体側壁の開口は、乗客にとって最良の胴体外部環境視野を与えるように、内部透明部材の形状と略同一の形状を含む。この内部透明部材は、開口に略対向する。
【0030】
本発明は、航空機の胴体側壁に設けられた開口に取り付けられることを目的とする外部透明部材にも関する。
【0031】
本発明によれば、この外部透明部材は1ブロックで作られる。外部透明部材は、少なくとも、開口の直径よりも大きな直径の第1の部分を含み、この第1の部分は、上記開口の周縁に沿って胴体の上記外部側壁に設けられる盲凹部と協働して、開口内でのこの外部透明部材を横方向および縦方向においてブロックすることを目的とした形状を有する。この部材は、溝を有する第2の部分をさらに含み、この溝は、外部透明部材が上記開口に対して押されたときに、胴体内部に位置決めされるように、第1の部分の外表面から距離dだけ離間される。
【0032】
好ましくは、この凹部は食い付き部を有し、外部透明部材の第1の部分は、この食い付き部と協働できるように、斜めに切断されたエッジを含む。
【0033】
前記外部透明部材の特定の各種実施形態は、それぞれ特定の利点を有し、利用可能な技術の多様な組み合わせを適用することが可能であるが、これら実施形態において、
−溝は、外部透明部材が上記開口と一体化されたときに溝のサイドエッジのうちの一方が胴体の側壁に重なるように、第1の部分の外表面から距離dだけ離間される。
−透明部材は、開口に略対向して位置決めされることを目的とした内部透明部材を形成する第3の部分をさらに含む。
【0034】
最後に、本発明は、側壁に窓を含む胴体を有する航空機に関するものである。
【0035】
本発明によれば、これら窓のうちの少なくともいくつかは、上述したような外部透明部材を含む。
【0036】
本発明についてさらに詳細に添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来技術による航空機の窓の部分断面図を概略的に示す図である。
【図2】本発明の特定の実施形態による航空機の窓の概略表現である。
【図3】図2の窓の軸A−Aの部分断面図を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図3は、本発明の特定の実施形態による航空機の胴体の側壁に設けられた開口に取り付けられた窓の部分断面図を示す図である。
【0039】
この窓は、外部透明部材10および内部透明部材11を含む。外部透明部材10は、航空機の胴体の側壁12に設けられた開口に取り付けられる。この胴体は金属製であってもよく、または例えば、炭素繊維等の複合材料製であってもよい。
【0040】
外部透明部材10は1ブロックで作られる。外部透明部材10は、直径が上記開口の直径よりも大きな第1の部分13を含む。この第1の部分13は、部分的に斜めに切断されたエッジ14を含む。したがって、このエッジ14は、この第1の部分が最外表面15に対して低減された直径を有するように、傾斜部を通して共に結合された2つの略平面の表面を有する。最外表面15は、航空機胴体の側壁と空力的連続性を提供する形状を有する。
【0041】
この第1の部分13は、上記開口の周縁に沿って胴体と協働すると共に、側壁12に設けられる盲凹部と協働することを目的とする。食い付き部を有するこのリセスは、第1の部分のエッジ14の形状と略同様の形状を有して、この開口内での外部透明部材10を横方向および縦方向においてブロックする。
【0042】
外部透明部材10は、溝17を有する第2の部分16を含む。この溝17は、外部透明部材10が開口に一体化されたときに胴体内部に位置決めされるように、第1の部分13の外表面15から距離dだけ離間される。
【0043】
外部透明部材10のエッジは、胴体内部に位置決めされ、この溝17を囲み、リップ18を形成する。可撓性ジョイント19により、外部透明部材10および内部透明部材11を中間空間20によって互いにに離間した状態を保ちながら、外部透明部材10および内部透明部材11を取り付けられるようにする。このジョイントは、外部透明部材10のリップ18上に配置される。
【0044】
窓/胴体側壁取り付けの封止は、このジョイント19のリップ21を胴体および溝17の内壁に対して押すことによって得られる。このジョイント19は連続ジョイントである。このジョイントは、例えば、ゴム由来のエラストマー製であってよい。
【0045】
窓は、胴体の壁に嵌った透明組立体をロックできるようにする帯鋼22を含み、この透明組立体は、内部および外部透明部材10、11およびジョイント19を含む。
【0046】
この帯鋼22は、ジョイント19のリップを溝17の内壁に対して押す、溝17と協働可能な突起を含む。少なくとも2つの帯鋼部材を含むこの帯鋼22は、帯鋼22の外面に設けられた溝内に配置されるジョイント23によって定位置に保持される。
【0047】
開口および内部透明部材11は、楕円形を有し、350mm×250mm程度の寸法を有してよく、それにより、従来技術の既知の窓よりも乗客により広い視野を提供する。この場合、外部透明部材10の第1の部分は、開口の周縁に沿って胴体側壁に設けられた凹部に重なるように、350mm×250mmよりも大きな寸法を有する。
【0048】
代替として、これらの形状は三角形、矩形、菱形を含む群から選択してもよい。
【0049】
本発明は、外部透明部材10および少なくとも1つの内部透明部材11を含むこの窓を取り付ける方法にも関するものである。
【0050】
この方法は、有利には食い付き部を含む盲凹部を開口の周縁に沿って側壁の一部分に設けることを主とする。したがって、この凹部は、開口の周縁に中空部を有する帯鋼を提供する。
【0051】
そして、この外部透明部材の第1の部分13が盲凹部と協働して、開口内の外部透明部材を横方向および縦方向においてブロックするように、外部透明部材10は、胴体の外部から開口に位置決めされる。
【0052】
そして、外部透明部材10は、胴体の内側に突出する溝17を有する第2の部分16を有する。好ましくは、この溝17のエッジの一方は、胴体の側壁に位置合わせされる。
【0053】
そして、ジョイント19が、内部透明部材11をこの外部透明部材10に取り付けるように位置決めされる。このジョイント21のリップが、帯鋼22を使用して胴体の側壁12の溝17の底部に対して押されて、封止された取り付けを提供する。この帯鋼22は、こうして窓に対して得られる6つの角度を自由に固定できるようにする。
【産業上の利用可能性】
【0054】
好ましくは2つの帯鋼部材を含むこの帯鋼22を位置決めするために、各帯鋼部材は、ジョイント19、外部透明部材10、および内部透明部材11を含む透明組立体に横方向に係合する。帯鋼のこの位置決めは、図2の矢印24によって表される。
【0055】
有利には、外部透明部材10は、略楕円形を有し、350mm×250mmよりも大きな寸法を有する。
【符号の説明】
【0056】
1.側壁
2.外部ペイン
3.内部ペイン
4.ジョイント
5.窓
6.開口
7.固定クリップ
10.外部透明部材
11.内部透明部材
12.側壁
13.第1の部分
15.(最)外表面
16.第2の部分
17.溝
18.リップ
19、21、23.ジョイント
20.中間空間
22.帯鋼
24.矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓は、外部透明部材(10)および少なくとも1つの内部透明部材(11)を含む、航空機の胴体側壁に設けられた開口に前記窓を取り付ける方法において、
a)盲凹部が前記開口の周縁に沿って前記側壁(12)の一部分に設けられる工程と、
b)前記外部透明部材(10)が、前記胴体の外部から前記開口に位置決めされる工程であって、前記外部透明部材が第1の部分(13)を有し、該第1の部分の直径は前記開口の直径よりも大きく、前記第1の部分(13)は、前記開口内の前記外部透明部材(10)を横方向および縦方向においてブロックするように前記側壁(12)の前記部分と協働する形状を有する、位置決めされる工程と、
c)前記外部透明部材(10)が前記胴体内側に突出した溝(17)を有する第2の部分(16)を含み、前記外部透明部材(10)が、帯鋼(22)を通して前記胴体と前記少なくとも1つの内部透明部材(11)と一体化される工程であって、前記帯鋼(22)は、ジョイントを少なくとも前記胴体および前記溝(17)の内壁に対して適用する一体化される工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの内部透明部材(11)が、工程c)前に前記ジョイント(19、21)を使用して前記外部透明部材(10)に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記盲凹部が食い付き部を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記帯鋼(22)が少なくとも2つの帯鋼部材を含み、前記帯鋼部材が少なくとも1つの固定部材を通して共に一体化されることを特徴とする請求項1または3に記載の方法。
【請求項5】
前記固定部材がジョイント(23)を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
2つの帯鋼部材を含む前記帯鋼(22)を使用して、各帯鋼部材が前記ジョイント(19、21)、前記外部透明部材(10)、および前記少なくとも1つの内部透明部材(11)を含む透明組立体に横方向において係合することを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記ジョイント(19、21)が連続ジョイントであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記外部透明部材(10)が略楕円形を有し、350mm×250mmよりも大きな寸法を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
航空機の胴体側壁(12)に画定された開口に取り付けられることを目的とする外部透明部材であって、該外部透明部材は、一体形成され、少なくとも、
−前記開口の直径よりも大きな直径の第1の部分(13)であって、前記開口内の該外部透明部材(10)を横方向および縦方向においてブロックするように、前記開口の周縁に沿って前記胴体の前記外部側壁(12)に設けられた盲凹部と協働することを目的とする形状を有する第1の部分(13)と、
−溝(17)を有する第2の部分(16)であって、前記溝(17)は、該外部透明部材(10)が前記開口に対して押されたときに前記胴体内に位置決めされるように、前記第1の部分(13)であっての外表面から距離dだけ離間される、第2の部分(16)と、
を含むことを特徴とする外部透明部材。
【請求項10】
該外部透明部材(10)が前記開口と一体化されるときに前記溝(17)のサイドエッジのうちの一方が前記胴体の前記側壁(12)に重なるように、前記溝(17)が前記第1の部分(13)の外表面から距離dだけ離間されることを特徴とする請求項9に記載の外部透明部材。
【請求項11】
少なくとも側壁に窓を含む胴体を有する航空機であって、少なくとも特定の窓が請求項9または10に記載の外部透明部材(10)を含むことを特徴とする航空機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−514629(P2010−514629A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544437(P2009−544437)
【出願日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050008
【国際公開番号】WO2008/096088
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(501446228)エアバス・フランス (93)