説明

航空機の外装保護のための環境的に安定したハイブリッド織物システム

航空機(10)用の外面保護構造(12)を形成する方法は、キャリア(51)を有する装填したサーフェイサ(52)をハイブリッドプリプレグ基板(32)に接合することを含む。プリプレグ基板(32)は、金属導電性範囲の範囲内の導電性を有する一体型の導電性構成要素(48)を有する炭素織物(44)を含み、ベース基板(30)に接合される。装填したサーフェイサ(52)とプリプレグ基板(32)との間に界面接着物質を含む、装填したサーフェイサ(52)およびプリプレグ基板(32)は硬化される。航空機(10)の外装(14)のための保護織物システム(12)は、ベース基板(,30)を含む。ハイブリッドプリプレグ基板(32)がベース基板(30)に結合される。キャリア(51)を有する装填したサーフェイサ(52)は、プリプレグ基板(32)に界面接着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
この発明は概して、航空機の外装のコーティング、層、表面および複合物に関する。より詳細には、この発明は、耐食性、耐雨食性、環境耐久性、構造性能、および避雷を含む電磁気保護を提供する航空機の外装保護のためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
伝統的に、雷から保護する目的で、航空機の方法は電気エネルギを放散させるために胴体の金属製部分の至るところに抵抗が低い経路を含んでいた。媒体を設けて迅速にエネルギを放散させるために、複合部品の外面に沿って金属化繊維強化構造材料が使用されてきた。現在の避雷構造の中には、宇宙船およびいくつかの航空機での使用には適しているが頻繁に使用される民間航空機での使用には適していないものもある。これは、民間航空機が経験する圧力、湿度および温度環境が過酷でかつ絶えず変化するためであり、それらに関連付けられるコストおよびメンテナンス制約が異なるためである。
【0003】
頻繁に使用される民間航空機の動作条件下で、ある特定の避雷構造は、腐食および紫外線劣化をより受けやすくする基板の微小割れおよび仕上塗料の亀裂を経験する傾向があることが試験によってわかった。微小割れはときには「織りのテレグラフィング(weave telegraphing)」と称される。織りのテレグラフィングとは、(a)仕上塗料における目に見えるムラが、表面の下にある織りパターンの外観を帯びるとき、(b)使用する間にパターンが顕著になってくるとき、ならびに(c)基板および/または塗装仕上塗料の亀裂が形成および伝播するときのことを指す。記載する微小割れは、温度、湿度および圧力の変動が繰返されるため、ならびに温度、湿度および圧力の変動が極端であるために生じる傾向がある。微小割れは、熱膨張係数の違いおよび複合システムにおける構成要素間の界面接着が最適でないことが原因の内部応力を含むいくつかの要因に起因して発生する。
【0004】
微小割れは目に見える塗装層の中に伸長する可能性があり、これは外観の劣化ならびにメンテナンスおよび検査時間およびコストの増大をもたらし得る。塗装の修理などメンテナンスを増やすことは、外観に必要なだけでなく、下にある有機材料の紫外線劣化を防ぐためにいつ再塗装が必要であるかを特定するためにも必要である。検査を増やすことは、腐食を監視するために必要なだけでなく、微小割れが構造的完全性に悪影響を及ぼしていないことを保証するためにも必要である。したがって、このような構造は、商業的な環境において長期間に亘って使用するには必ずしも費用対効果が高いとは限らない。
【0005】
避雷構造の1つのタイプは、基板層と、金属メッシュスクリーンと、ガラスまたはポリエステルなどの材料で強化され得る非構造的外膜とを含む。メッシュは、通常膨張する金属織布、ランダムマット、または孔の開いた金属であり得る。金属および基板に応じて、ベース基板と金属メッシュとの間の腐食を回避することを目的に、ガルバニック絶縁のために追加の非構造的プリプレグ層を使用してもよい。この構造は、所望の避雷をもたらすが、構造的な利益を提供せず、典型的に複数の非構造的な層を含む。したがって、この構造は本来、生産するのに労働集約的であり、費用がかかる。メッシュを封入して腐食を防ぎ平滑な表面を与えるのに必要な樹脂の重量は、金属メッシュの重量を超える可能性があり、結果的に重い。また、メッシュシステムは微小割れを受けやすい可能性もある。
【0006】
別の保護構造アプローチは、複合材料の上に固体金属を使用するというものである。この構造も重く、固体膜として共に硬化されるときまたは硬化された部品に噴霧されるとき
に、空隙などの製造上の欠陥がない状態で加工するのが困難である。アルミニウムフレーム溶射などの噴霧プロセスには、有資格者および典型的には航空会社の施設では利用可能でない機器が必要であるという追加の問題がある。
【0007】
したがって、上述の不利な点を示さず、耐食性、耐雨食性、環境耐久性、構造性能、および所望の避雷特徴を含む電磁気保護を提供する航空機用の改良された避雷構造が必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
この発明の1つの実施例は、キャリアを有する装填したサーフェイサをハイブリッドプリプレグ基板に接合することによって航空機用の外面保護層を形成する方法を提供する。ハイブリッドプリプレグ基板は、ベース基板に接合された一体型の導電性構成要素を有する炭素織物を含む。装填したサーフェイサとハイブリッドプリプレグ基板との間に界面接着物質を含む、装填したサーフェイサおよびハイブリッドプリプレグ基板は、同時に硬化される。ベース基板と共に硬化されると、処理コストが低減する。
【0009】
上述の実施例のハイブリッド基板は、構造的耐久性の増大および電磁気保護をもたらす。ハイブリッド基板に関連付けられる補足的な電磁気保護コストはない。なぜなら、保護はその構造的ハイブリッドプリプレグに一体化しているためである。
【0010】
この発明の実施例は、いくつかの利点を提供する。1つのこのような利点は、無機充填剤を装填したサーフェイサをハイブリッド織物基板上で使用することを提供するというものであり、装填したサーフェイサおよびハイブリッド織物基板は硬化中に混合される。ハイブリッド織物基板が所望の避雷をもたらす一方で、装填したサーフェイサおよびハイブリッド織物基板の組合せは所望の構造支持および環境保護をもたらす。装填したサーフェイサを使用することによって、腐食および微小割れの両方が抑えられ、したがって、耐久性が改善する。
【0011】
この発明の実施例が提供する別の利点は、ハイブリッドプリプレグ基板の表面上で装填したサーフェイサを均一に分散させ、そのサーフェイサをその基板に界面接着させることを提供するというものである。キャリアおよび充填剤を有するサーフェイサは、そうでなければ区分けを促進しサーフェイサの厚さの大きなばらつきに繋がるであろう設計または工具の特徴に起因する圧力差を補償する。これは、最終的に基板の微小割れおよび塗装の亀裂に繋がる織りのテレグラフィングのタイプを防止することに役立つ。上述の利点は、組合さって、頻繁に使用される民間航空機のための認定試験および動作環境に耐えることができる保護構造を提供する。
【0012】
この発明自体は、さらなる目的および付随する利点とともに、添付の図面に関連して以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解される。
【0013】
この発明の他の特徴、利益および利点は、添付の図面および添付の特許請求の範囲に従って考察すると、この発明の以下の説明から明らかになる。
【0014】
この発明をより完全に理解するために、添付の図により詳細に示しかつこの発明の一例として以下に記載する実施例をここで参照すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
詳細な説明
頻繁に使用される航空機の動作条件下で、エポキシ樹脂内に配置された、金属ワイヤを有する炭素繊維を含む避雷構造が基板の微小割れおよび仕上塗料の亀裂を経験する傾向があることが試験を通じて明らかになった。この発明はこれを克服し、この発明について以下で詳細に説明する。この発明は、主に航空機用の外装保護構造の形成に関して記載されるが、種々の用途に適用および適合され得る。この発明は、最小限の織りのテレグラフィングを示すまたは織りのテレグラフィングを示さない耐久性のある避雷構造の必要性が求められる場合、および特に重量または人件費が問題であるときに、航空での用途、電力での用途、船舶での用途、鉄道での用途、自動車での用途、医学での用途、ならびに商業上および居住用の用途において適用され得る。また、この発明の以下に記載する特徴の異なる組合せを有するさまざまな他の実施例、本明細書に記載する特徴以外の特徴を有するさまざまな他の実施例、またはそれらの特徴のうちの1つ以上を欠いてさえいるさまざまな他の実施例が企図される。したがって、この発明は種々の他の好適なモードで実行できることが理解される。
【0016】
以下の説明では、1つの構築された実施例について種々の動作パラメータおよび構成要素を記載する。これらの具体的なパラメータおよび構成要素は、例として含まれており、限定するように意図されるものではない。
【0017】
また、以下の説明において、「構成要素(component)」という用語は、複合エンティティを構成する個々の部品のうちの1つである人工物を指す。構成要素は、システムから切離すことができるもしくはシステムに取付けることができる部品、システムもしくはアセンブリの部品、または当該技術分野において公知の他の部品を意味してもよい。
【0018】
加えて、「表面(surface)」という用語は、人工物の外側の境界、またはこのような境界を構成するもしくはこのような境界に似ている材料層を指す。表面は、材料の外縁だけでなく、材料の最も外側の部分または層も含んでもよい。表面は、厚みを有していてもよく、種々の粒子を含んでいてもよい。
【0019】
ここで図1を参照して、この発明の実施例に従う外装織物保護システム見本12を組入れる航空機10の斜視図を示す。保護システム12は、航空機10の外装14を横断する構造支持を与える。保護システム12は、雷から保護するため、および他の環境条件に耐えるようにするために、航空機10の胴体16および尾翼または翼18などの航空機部品上にあてがわれる。胴体16と組合せられた保護システムは、航空機10の主要な支持構造であると考えることができる。保護システム12は複数の層20を含み、この複数の層20について以下で詳細に説明する。
【0020】
ここで図2を参照して、この発明の実施例に従う保護システム12の側面接写断面図を示す。保護システム12はベース基板30を含む。ハイブリッドプリプレグ織物基板32が、ベース基板30の上に配置され、ベース基板30に結合される。装填したサーフェイサ膜52が、ハイブリッド基板32の上に配置され、ハイブリッド基板32に結合される。噴霧液が塗布された面、ピンホール充填剤、プライマおよび塗装トップコートなどの仕上塗料または仕上層36が、装填したサーフェイサ52にあてがわれてもよい。ベース基板30、ハイブリッド基板32および装填したサーフェイサ52の各々について特定の数の層を示すが、任意の数の層を利用してもよい。換言すれば、単一の塗装層、単一の装填したサーフェイサ層、単一のハイブリッドプリプレグ基板層、および4つのベース基板層を示すが、各々任意の数を使用してもよい。たとえば、性能を改善するためにハイブリッド基板の追加の層を使用してもよい。
【0021】
ベース基板30は、複合構造であってもよく、複数の構造支持層38を含んでいてもよい。構造支持層38は、炭素繊維/エポキシなどで形成されてもよく、テープまたは織物
の形態をしていてもよい。構造支持層38の配置角度は変化し得る。たとえば、層40、41および42などの隣接する各層は、ベース基板30の構造性能および全体的な耐久性を上げるために、0°、+45°および90°などの異なる向きに単方向炭素テープを有していてもよい。ベース基板30は航空機部品の内部部分である。航空機部品は、積層物、サンドイッチ構造、またはそれらの組合せを有する構造であってもよく、種々の金属製または非金属製の材料で形成されてもよい。ベース基板30は、この発明の1つの想定される実施例では炭素/エポキシ複合胴体にあてがわれるが、当該技術分野において公知の種々の材料で形成された何か他の複合部品またはハイブリッド部品にあてがわれてもよい。
【0022】
ハイブリッド基板32は、炭素繊維44と、ワイヤ48の形態の、炭素に一体化した金属と、エポキシ樹脂46とを含む。図2は、1本のワイヤ49の周りにある樹脂が豊富なエリア47を示すが、実際にはエポキシはハイブリッド基板32の至るところに配置されている。ハイブリッド基板32は、示されるように、織り合わされたワイヤ織物(interwoven wire fabric)(IWWF)などの形態をしていてもよい。繊維44Aは、ハイブリッド基板32の炭素トウの状態で示され、ワイヤ48に直交して延在している。炭素トウ44Bが示され、ワイヤ48に平行に延在している。繊維44Aおよび炭素トウ44BはともにIWWF53を形成する。ワイヤ48は、単一の方向に延在しているように示されるが、他の方向に延在していてもよい。
【0023】
「IWWF」という用語は、典型的には平織織物に織り込まれる炭素繊維を指すが、他の織りスタイルを使用してもよい。平織織物の各トウは、ワイヤ48のうちの1本などの導電性構成要素またはワイヤを含む。示す実施例では、ワイヤ48の断面直径Dは約0.004インチである。IWWF53は、エキスパンドメタル箔層を有する金属織布または構造が含むようには不連続な金属スクリーンを含まない。IWWF53は、金属ワイヤが一体型の構成要素として中に含まれるハイブリッド織物である。IWWF53は、金属メッシュおよび箔を含むより一般的な避雷構造とは異なって、荷重を担持できる。使用され得る例示的なIWWFは、ワシントン州タコマ(Tacoma)の東レ・コンポジッツ(アメリカ)・インコーポレイテッド(Toray Composites (America) Inc.)の、中間の係数の高強度炭素繊維を含むIWWFエポキシプリプレグFL6676G−37Eである。IWWF53は、約50%〜70%の炭素重量に基づいてエポキシ樹脂含有量が30%〜50%であるIWWFプリプレグから作製されると、引張強度が約112ksiになり、張力係数が10MSIになり得る。ハイブリッド基板32を形成するために使用され得る別の例は、カリフォルニア州ダブリン(Dublin)のヘクセル・コーポレーション(Hexcel Corporation)からのAS−4炭素繊維と、カリフォルニア州アナハイム(Anaheim)のサイテック・エンジニアード・マテリアルズ・インコーポレイテッド(Cytec Engineered Materials Inc.)からの材料識別番号977のエポキシとを組合せたものである。
【0024】
ハイブリッド基板32内の繊維は、さまざまな炭素タイプの繊維であってもよい。もちろん、以前に記載したものの特性と類似した特性を有する他の繊維、織物スタイル、金属および樹脂などを使用してもよい。
【0025】
ハイブリッド基板32は予め含浸させることができ、これは多くの場合「プリプレグ」と称される。または、ハイブリッド基板32は、樹脂トランスファ成形もしくは樹脂注入などの生産プロセスの一部としてエポキシ樹脂を添加した乾式ハイブリッド織物製品であり得る。乾式ハイブリッド織物製品の一例は、ヘクセル・コーポレーションからのAS−4炭素繊維である。ハイブリッド織物基板は主に、僅かな割合の金属または他の非常に導電性の材料がベース基板に結合された炭素織物である。本明細書に記載するハイブリッド基板32の導電性構成要素は、およそ各々の炭素トウ44B内に含まれる連続的な金属製ワイヤの形態をしていてもよいが、必ずしもその形態または材料に限定されない。金属/
炭素/樹脂の割合は、構成要素のタイプおよびサービス環境に依存する。利用される樹脂の量は予め定められた範囲内に維持されて、微小割れを防ぎ、間隙率レベルを約2%未満に維持し、所望の構造的完全性をもたらす。使用される量は、超音波検査機器で測定され得る。微小割れおよび間隙率レベルは、範囲の下端を設定する。所望の構造的完全性は、範囲の上端を設定する。
【0026】
金属メッシュとは異なって、ハイブリッド基板32は電磁気保護だけでなく構造的な利益を提供する。避雷、遮蔽保護および静電気保護を含む電磁気保護の提供に関連付けられるハイブリッド基板の重量は低減される。なぜなら、金属含有量が低減されるためである。
【0027】
上述のハイブリッド基板32またはIWWFは、リン青銅、アルミニウム、ニッケル被覆銅、銅、ステンレス鋼、または類似の電気的および熱的特徴を有する他の導電性材料、またはそれらの組合せで形成されたワイヤを含んでいてもよい。アルミニウムまたは他の類似の材料は、その密度、導電性および熱特性のために、雷に対する性能を改善するために使用され得る。一方、ステンレス鋼などは、耐食性を改善するために利用され得る。コスト、利用可能性、腐食の受けやすさ、熱膨張係数が原因のものを含む内部応力、他の熱的および電気的特性が、所与の用途のために保護構造を形成するときに考慮されるパラメータのうちのいくつかである。ハイブリッド基板32は、追加の構造支持を航空機10に与え、主要な支持構造の一部として使用できる。ハイブリッド基板32は、ベース基板30または構造支持層38の一部に取って代わってもよい。したがって、ハイブリッド基板32は、一般に、ベース基板30の厚さおよび重量、ベース基板30を生産するための時間およびコスト、ならびに航空機10の全重量を低減する。
【0028】
装填したサーフェイサ52は、二酸化チタンなどの無機充填剤(図示せず)が装填されている。破線51で表わされる無機充填剤およびキャリアは、有機樹脂エポキシ50の中にある。エポキシ50は、ヒュームドシリカおよびアルミナ、ならびに当該技術分野において公知の他の充填剤またはそれらの組合せを含む無機充填剤が装填されていてもよい。キャリア51は、ポリエステルマット、炭素繊維マット、ガラスマット、金属化マットなどの形態をしていてもよい。雷に対する回復力を改善するために導電性キャリアの量を増やしてもよい。有機エポキシ50は、約250〜350°Fの間の硬化温度まで相溶性がある。装填したサーフェイサ52は、硬化後にワイヤ48上の厚さTが約0.004インチであるとき、重量範囲が約0.02〜0.06ポンド/平方フィート(lb/ft2)の間である。装填したサーフェイサ52の重量は、IWWFまたは類似の材料の樹脂含有量および流量特徴、ならびに工具の取付けに基づいて比例して調整されて、頻繁に使用される民間航空機環境における長期間に亘る耐久性のために十分な量のサーフェイサが確実にワイヤと外面との間にあるようにする。使用され得る装填したサーフェイサの一例は、公称重量が0.0325lb/ft2であるサイテック・エンジニアード・マテリアルズ・サーフェイス・マスター905である。装填したサーフェイサ52は、下塗りおよび塗装に好適な表面を与える。
【0029】
図2に類似した顕微鏡写真によって、サーフェイサがハイブリッド基板32を通ってベース基板まで局所的に貫通することが明らかになる。装填したサーフェイサ52は、ハイブリッド基板32における導電性構成要素44が、最大限の保護を得るために、装填したサーフェイサ52およびその上のいずれの塗装層も通って蒸発できるように選択される。
【0030】
歴史的に、サーフェイサは、保護構造の雷に対する性能を劣化させる傾向があるので使用されてこなかった。しかしながら、本明細書に記載する混合技術は、IWWFの使用とともに、避雷要件を満たす保護構造を提供する。装填したサーフェイサ52の厚さTは、所望の避雷の量および他の環境保護の量に応じて調整される。耐雨食性の量、耐食性の量
、および全体的な耐久性などの環境保護の量は、避雷の量と引換えになる。一般に、装填したサーフェイサ52が厚くなればなるほど、避雷は小さくなるが、与えられる環境保護は大きくなり、逆の場合も同様である。上の例から引続いて、樹脂含有量が約40%であり、約196g/m2の炭素および約63g/m2の金属からなるドライプリフォームを有するハイブリッドプリプレグ基板と組合せるときにサーフェイス・マスター905を使用する0.0325lb/ft2のサーフェイサのバージョンは、典型的な航空機の構成について最初の落雷が原因の孔を防ぐことができる。典型的な航空機の構成とは、標準的な生産仕上塗料を有する構成であり、航空機の認可が連邦航空規則(Federal Aviation Regulation)(FAR)のパート25を満たすのに必要なレベルに試験される構成である。
【0031】
保護システム12は、耐久性があり、頻繁に使用される大型の民間航空機などのものを含む、民間航空機に関連付けられる環境の繰返しに耐えることができる。商業的使用の承認に先立って、航空機の外装部分は商業的使用をシミュレートするために過酷な試験を経る。この試験のうちのいくつかは、構成要素を極端な温度、湿度および圧力の大きな変化に晒すことを含む。たとえば、商業的実現性を示すために、約120°Fにおいて95%の湿度レベルに試験片を何時間も晒してもよく、約65°Fから165°Fまでの間の温度変動を4000サイクル以上経てもよい。この試験は、飛行のプロファイルに一致する限界を有する圧力、湿度および温度の変化をシミュレートする地上−空中−地上チャンバの中で何千回も繰返すことを含み得る。
【0032】
ここで図3を参照して、この発明の実施例に従う、システム12などの外装織物保護構造またはシステムを形成する方法を示す論理フロー図を示す。以下のステップは主に図2の実施例に関して記載するが、これらのステップはこの発明の他の実施例に当てはまるように容易に修正され得る。
【0033】
ステップ100において、装填したサーフェイサ52およびキャリア51などの、キャリアを有する装填したサーフェイサを型にあてがう。この型は、形成されている構成要素または構造に応じて、種々のタイプ、スタイル、形状および大きさの型であってもよい。ステップ102において、炭素織物44および金属48を有するハイブリッド基板32などのハイブリッドプリプレグ基板を、装填したサーフェイサの上にあてがう。一実施例では、プリプレグ基板は上述のようにIWWFである。ステップ104において、ベース基板30などのベース基板をプリプレグ基板にあてがう。記載するこの例では、ベース基板はプリプレグの形態をしており、共に硬化される。しかしながら、ベース基板の層は、予め形成されていてもよく、プリプレグ基板をあてがうより前に、またはプリプレグ基板をあてがった後に、硬化されてもよい。しかしながら、使用する共に結合する技術次第で性能は異なる可能性がある。
【0034】
以下のステップ106〜110は、ステップ100〜104に類似しているが、逆の順序で実行される。ステップ106において、ベース基板をプリプレグの形態で型にあてがう。ベース基板の層は、予め形成されていてもよく、型にあてがうもしくは型に挿入するより前に、または型にあてがったもしくは型に挿入した後に、硬化される。ステップ108において、炭素織物およびワイヤなどの一体型の導電性構成要素を有するハイブリッドプリプレグ基板をベース基板にあてがう。ステップ110において、キャリアを含む装填したサーフェイサをハイブリッドプリプレグ基板にあてがう。
【0035】
ステップ112において、装填したサーフェイサ、プリプレグ基板およびベース基板を硬化して、保護システムを形成する。装填したサーフェイサ、ハイブリッドプリプレグ基板およびベース基板を含む型をオートクレーブなどの中に置き、焼き固める。オートクレーブ内の温度は、この例では約245〜355°Fの間である。使用される硬化温度は、ワイヤの融解を防ぐために、ハイブリッド基板内の導電性構成要素またはワイヤの融解温
度未満である。型がオートクレーブ内にある時間の長さは、利用される材料の硬化特性に依存する。硬化プロセス中、装填したサーフェイサは、完全にプリプレグ基板の上に残るのではなく、ハイブリッドプリプレグ基板に界面接着される。装填したサーフェイサおよびプリプレグ基板における物質または樹脂は混ざり合って硬化し、それによって、互いに界面接着する。
【0036】
加えて、装填したサーフェイサは、加熱されると型および/またはプリプレグ基板に亘って均一に分散および硬化して厚さTなどの特定の厚さの単一の連続的な層を形成するようなものである。これによって、プリプレグ基板内のワイヤ48などのワイヤが、装填したサーフェイサによって確実に覆われる。例示的な実施例では、利用される装填したサーフェイサは硬化して、約0.004インチの厚さになる。装填したサーフェイサは、局所的なエリアにおいてベース基板まで延在し得る。導電性構成要素の上に十分なサーフェイサ層含有量を維持しながらサーフェイサにおける樹脂の硬化中にハイブリッド織物基板における樹脂と混合することによって、所望の環境耐久性が提供される。
【0037】
ステップ114において、硬化によって形成される保護構造またはシステムの硬化の際に、装填したサーフェイサ、プリプレグ基板およびベース基板を型から取外す。
【0038】
上述の混合サーフェイサアプローチは、用途次第で、より高強度およびまたは係数がより高い炭素タイプ、特に、微小割れを受けやすい、樹脂を含浸させた炭素タイプにとって特に有益である。上述のステップは例示的な例であるように意図され、これらのステップは、用途次第で、順次、同期的に、同時に、または異なる順序で実行されてもよい。もちろん、記載するシステムの一部および実行されるステップは、手動で、または専用の機器もしくは機械を使用することなく達成されてもよい。
【0039】
この発明は、避雷システムを形成するための、費用対効果が高くかつ効率的なシステムおよび方法を提供する。この発明は、軽量であり、設計が単純であり、腐食を防ぎ、耐久性がある。したがって、この発明は、耐用寿命を引き上げ、航空機および関連付けられる外装構成要素のメンテナンスコストを低減する。
【0040】
この発明は1つ以上の実施例に関連して記載してきたが、記載してきた具体的な機構および技術はこの発明の原理の単なる例示であり、添付の特許請求の範囲が規定するこの発明の精神および範囲から逸脱することなく、記載する方法および装置に対して多くの修正がなされ得ることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の実施例に従う外装織物保護システム見本を組入れる航空機の斜視図である。
【図2】図1の外装織物保護システム見本の側面接写断面図である。
【図3】この発明の実施例に従う外装織物保護構造を形成する方法を示す論理フロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機用の外面保護構造を形成する方法であって、
キャリアを備える装填したサーフェイサをハイブリッドプリプレグ基板に接合することと、
一体型の導電性構成要素を有する炭素織物を備える前記ハイブリッドプリプレグ基板をベース基板に接合することと、
前記装填したサーフェイサと前記プリプレグ基板との間に界面接着物質を備える、前記装填したサーフェイサおよび前記ハイブリッドプリプレグ基板を硬化させることとを備える、方法。
【請求項2】
前記硬化させることは、前記プリプレグ基板上で前記装填したサーフェイサを均一に分散させて、前記炭素織物内の複数のワイヤのかなりの部分を覆う層を形成することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記硬化させることは、前記プリプレグ基板上で前記装填したサーフェイサを均一に分散させて、厚さが約0.004インチの層を形成することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記硬化させることは、約250〜350°Fの間の温度で前記装填したサーフェイサおよび前記プリプレグ基板を焼き固めることを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プリプレグ基板を接合することは、織り合わされたワイヤ織物を前記ベース基板に接合することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ハイブリッドプリプレグ基板を接合することは、炭素織物に織り込まれかつエポキシを含浸させた炭素繊維を前記ベース基板に接合することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プリプレグ基板を接合することは、金属スクリーンのない織り合わされたワイヤ織物を与えることを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
航空機の外装のための保護織物システムであって、
ベース基板と、
一体型の導電性構成要素を有する炭素織物を備え、金属導電性範囲の範囲内の導電性を有し、前記ベース基板に結合されたハイブリッドプリプレグ基板と、
前記プリプレグ基板に界面接着された、キャリアを備える装填したサーフェイサとを備える、システム。
【請求項9】
前記ベース基板は、複数の構造支持層を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記ハイブリッドプリプレグ基板は、炭素繊維、プリプレグ、および樹脂を有する乾式ハイブリッド織物から選択される少なくとも1つの材料を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記プリプレグ基板は、織り合わされたワイヤ織物である、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記織り合わされたワイヤ織物は、エポキシを含浸させた平織りを備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記織り合わされたワイヤ織物は、複数のトウとともに配置された複数のワイヤを備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記複数のワイヤは、リン青銅、ニッケル被覆銅、銅、アルミニウムおよびステンレス鋼から選択される少なくとも1つの材料で形成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記トウの各々の直径は約0.004インチである、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記装填したサーフェイサは、無機充填剤を備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記有機充填剤は、シリカ、アルミナおよびポリマーのうちの少なくとも1つから選択される材料である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記装填したサーフェイサは、硬化温度が約250〜350°Fの間であるエポキシを備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項19】
前記装填したサーフェイサは、硬化温度が約350°Fであるエポキシを有する、請求項8に記載のシステム。
【請求項20】
前記装填したサーフェイサは、厚さが約0.004インチの層を形成する、請求項8に記載のシステム。
【請求項21】
前記装填したサーフェイサは、前記一体型の導電性構成要素上の厚さが約0.004インチである状態で、関連付けられる重量が約0.02〜0.06lb/ft2の間である、請求項8に記載のシステム。
【請求項22】
前記キャリアは、ポリエステル、炭素、金属化炭素およびガラスのうちの少なくとも1つから選択される材料で形成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項23】
航空機であって、
航空機部品と、
前記胴体に結合された金属製織物を備えるハイブリッドプリプレグ基板と、
キャリアを備え、前記プリプレグ基板に界面接着される装填したサーフェイサとを備える、航空機。
【請求項24】
前記プリプレグ基板は、胴体に構造支持を与える、請求項23に記載の航空機。
【請求項25】
前記プリプレグ基板は、織り合わされたワイヤ織物の形態をしており、前記装填したサーフェイサは、無機充填剤を備え、前記プリプレグ基板上に連続的な層を形成する、請求項23に記載の航空機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−513438(P2009−513438A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537860(P2008−537860)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/041388
【国際公開番号】WO2007/120188
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】