説明

航空機の貨物室内の特に荷物のための移送装置

この装置は、コンテナ(16)と荷物(12)を同時に収容できる貨物室用である。この貨物室には走行面を規定するロール(18)を有する貨物搭載システムが設置されていて、コンテナ(16)がそのロール(18)を回転させながらその走行面上を移動できる。この装置は、貨物室の中で長手方向に前後に配置されて貨物室の長さの少なくとも一部にわたって延びる1組のベルトコンベア群(20)を備えている。それぞれのベルトコンベア(20)は、移動させる物体(12)を載せる上方ベルトを備えており、それぞれのベルトコンベアは、そのベルトコンベアの上方ベルトが、貨物搭載システムのロール(18)によって規定される走行面の上方に位置する持ち上がった第1の位置と、そのベルトコンベアの上方ベルトが走行面の下方に位置する第2の位置の間を移動できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の貨物室の中で物体、特に荷物を移動させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客輸送用の航空機では、乗客は自分の荷物の一部を航空機の客室に持ち込む一方で、よりかさばる荷物とより重い荷物は貨物室で運ばれる。後者の荷物は、コンベアの助けを借りて、または牽引式荷物運搬用台車に載せて航空機まで運ばれる。荷物を航空機の貨物室の扉まで運ぶことのできるコンベアが存在している。貨物室の内部での整頓は、手作業で行なわれることが最も多い。作業者は、貨物室に到着した荷物を手で掴み、貨物室の中に収納する。荷物を貨物室の中に配置するこうした作業はきつい。貨物室は比較的狭いスペースであり、その中では立ったままでいることがほとんどできない。さらに、荷物の中には重いものがある可能性がある。最も難しいのは、荷物を積み込むときに最初の荷物を貨物室の奥に配置しに行くことや、荷物を下ろすとき、取り出すために貨物室の奥にある荷物を探しに行くことである。
【0003】
荷物を貨物室の中に配置するためのこうしたあらゆる困難があるため、乗客の荷物の積み降ろしにかかる時間は比較的長くなる。したがって乗客は、航空機から降りた後、空港で自分の荷物を待たねばならない。この事実があるため、多数の乗客は、自分の荷物がたとえ比較的かさばるものであっても、貨物室で運ぶよりもすべての荷物を客室に持ち込むほうを好む。
【0004】
乗客が自分の荷物を貨物室で運ばせるよう仕向けるため、そして客室内にスペースができて旅行中と乗機/降機時に乗客をより快適にできるようにするため、貨物室で運ばれた荷物を回収するための待ち時間を短くする必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、航空機の貨物室に対する荷物の積み降ろしが任務である作業者の作業を容易にすることのできる装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の別の目的は、乗客が目的の空港に到着したときに荷物の待ち時間を短くする、それどころか待ち時間なくすため、航空機の貨物室からより迅速に荷物を降ろすことのできる手段を提供することである。
【0007】
本発明のシステムは、コンテナと荷物を同時に収容する貨物室に合わせることのできるモジュール式システムであることが望ましい。このシステムは、特に輸送するコンテナの数に応じ、貨物室内で荷物に予定されているスペースを調節できることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明では、コンテナと荷物が同時に収容するようにされ、走行面を規定するロールを有する貨物搭載システムを備え、コンテナがそのロールを回転させながらその走行面上を移動できるようにされている、航空機の貨物室内で、物体、特に荷物を移送する装置を提案する。
【0009】
本発明によれば、この装置は、貨物室の中で長手方向に相前後して配置されて貨物室の長さの少なくとも一部にわたって延びる1組のベルトコンベア群を備えている。それぞれのベルトコンベアは、移動させる物体を載せる上方ベルトを備えている。それぞれのベルトコンベアは、そのベルトコンベアの上方ベルトが、貨物搭載システムのロールによって規定される走行面の上方に位置する持ち上がった第1の位置と、そのベルトコンベアの上方ベルトが走行面の下方に位置する第2の位置の間を移動できる。
【0010】
このようにすると、コンテナが積み降ろしされるときにベルトコンベアは下げられるため、コンテナは邪魔されることなく通過する。コンテナが貨物室の奥に配置されると、荷物の積み降ろしが可能になる。ベルトコンベア群により、荷物を貨物室の積み込み用扉に近い領域から貨物室の奥へと運ぶことができる。積み込みが進むにつれてベルトコンベアは下がり、停止する。同様に、荷降ろしの際にはベルトコンベアが持ち上がった位置へと徐々に移行して作動し、貨物室の扉の近くまで荷物を移送することができる。
【0011】
好ましい一実施態様では、本発明の物体移送装置は、貨物室内に長手方向に相前後して配置されて貨物室の長さの少なくとも一部にわたって延びる2組のベルトコンベア群を備えている。その2組は、貨物搭載システムのロールによって互いに隔てられた状態で平行に向かい合って配置されている。この変形例はたいていの貨物搭載システムに適しており、しかも本発明の移送装置により、運ばれる荷物の流れを増大させることが可能である。
【0012】
同じ組のベルトコンベア群は同じ長さで、所定のピッチで配置されていることが望ましい。このピッチは、貨物室の中で2つのコンテナを隔てるピッチであることが好ましい。例えば貨物室の中を運ばれるコンテナの数を増やしたいのであれば、それぞれの組のベルトコンベア群で単に1つのベルトコンベアを下げる。するとコンテナがその下がったベルトコンベアの上方の位置を占める。
【0013】
ベルトコンベアの上げ下げが確実になされるようにするため、本発明の一実施態様では、それぞれのベルトコンベアが、2つの端部ロールのまわりに取り付けられたエンドレス・ベルトを備えるようにする。さらに、その2つの端部ロールが互いに平行であり、貨物室に対して軸回転するアームに取り付けられていて、各アームが、他方の端部ロールのアームと平行平行四辺形を形成するようにする。
【0014】
貨物室の外にある自動荷物積み降ろし装置と連動できるようにするため、本発明の物体移送装置は、1組のベルトコンベア群の一端に配置された1つのベルトコンベアを隣接したベルトコンベアに対して傾けられるようにされている。
【0015】
本発明は、貨物搭載システムをさらに備える上に説明した物体移送装置にも関する。
【0016】
本発明は、貨物室を備える航空機であって、その貨物室に上に説明したような物体移送装置が設置されている航空機も目的とする。このような航空機では、貨物室は少なくとも2つのアクセス用扉を備えていて、それぞれの扉は1組のベルトコンベア群のほぼ端部に配置されていることが好ましい。第1の扉は、貨物室の中に規格化されたサイズのコンテナを導入するのに十分なサイズであり、第2の扉は、第1の扉よりもサイズが小さく、貨物室で第1の扉が存在している壁とは反対側の壁に位置する。第1の扉は、たとえコンテナの出し入れを特に目的としていても、荷物の積み降ろしにも利用できる。
【0017】
好ましい一変形例では、物体(例えば荷物)の移送を容易にするため、貨物室は、2つのアクセス用扉の間で、少なくとも1組のベルトコンベア群の端部に、互いに垂直な2方向に物体を移動させることのできる移送要素を備えている。第1の方向は、その1組のベルトコンベア群の上にある物体が移動する方向に対応し、第2の方向は、それとは垂直で航空機の横方向に対応する方向である。
【0018】
本発明の詳細と利点は、添付の概略図を参照した以下の説明からよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の移送装置が設置された航空機の貨物室を示す。
【図2】本発明の移送装置が設置された航空機の貨物室の正面図であり、この図の左側には、荷物の移動に用いる本発明の移送装置が一部示されており、この図の右側には、コンテナを配置するときの同様の移送装置が示されている。
【図3】本発明による移送装置のベルトコンベアが持ち上げられた位置にあるときの概略側面図である。
【図4】図3のベルトコンベアの正面図である。
【図5】図2のベルトコンベアが下がった位置にあるときの概略図を示す。
【図6】図5のベルトコンベアの正面図である。
【図7】航空機の貨物室の第1の扉から荷物を積み降ろしすることを示す図である。
【図8】航空機の貨物室の第2の扉から荷物を積み降ろしすることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明は、特に乗客を輸送するための航空機に関して行なう。図1は、このような航空機の貨物室を示している。
【0021】
図1と図2には、貨物室の床2が見える。この床は3つの部分からなる。すなわち、ほぼ水平な中央部4と、中央部4に対して傾斜して持ち上がった2つの側部6である。もちろん、本願の水平性と鉛直性の基準は、航空機が地上にあるときの航空機に関係する。
【0022】
貨物室は、ほぼ鉛直で貨物室の積み荷空間を規定する側壁8も有する。ここでは貨物室の天井は見えない。
【0023】
図1に示した貨物室は、出入口として、特に荷物12の積み降ろしをするための荷物用扉10と、コンテナ用扉14を備えている。コンテナ用扉14は、例えばLD3型の規格化されたコンテナ16が通過するのに十分なサイズである。
【0024】
図1に示した貨物室には、CLS(Cargo Loading System)の名称でも知られる貨物搭載システムが設置されている。貨物搭載システムは、貨物室の中をコンテナ16を移動させるために設けられている。コンテナは、コンテナ用扉14を通じて積み降ろしされる。貨物搭載システムは、特にロール18を備えており、貨物室の中を移動するコンテナ16がそのロールの上を滑る。ロール18は走行面を規定していて、その面の上をコンテナ16が移動する。コンテナはコンテナ用扉14から貨物室に導入され、貨物室の中に押し込まれる。貨物搭載システムにより、コンテナ16を貨物室の奥に向けて容易に移動させることができるため、他のコンテナ16を導入することが可能になる。ロック・システム(図示せず)により、飛行中はコンテナ16を貨物室の奥に保持することができる。このような貨物搭載システムとロック・システムは当業者に知られているため、ここではこれ以上詳しくは説明しない。
【0025】
図1の例では、コンテナ16は貨物室の奥にあり、貨物室の残りの部分には荷物12が収容される。貨物室に積み込むため荷物12は例えば荷物用扉10から貨物室に導入される。そこでその荷物を貨物室の奥に向かわせるため独自の手段が設けられている。
【0026】
ここで実現されている手段は、同じ2組のベルトコンベア群20を備えている。1組のベルトコンベア群20は、貨物室の床2の中央部4の上で航空機の長手方向に相前後して並んでいる。2組のベルトコンベア群20の間には、貨物搭載システムの一列のロール18が存在している。
【0027】
これらベルトコンベア群20のそれぞれにより、その上に置かれた1つ(または複数)の荷物12を航空機の貨物室の中で長手方向に移動させることができる。したがって1組のベルトコンベア群20により、荷物用扉10に最も近い位置にある最初のベルトコンベアから、その組のベルトコンベア群の他端に位置する最後のベルトコンベアまで、1つのベルトコンベア20から別のベルトコンベアへと荷物12を移動させることができる。
【0028】
したがってそれぞれの組のベルトコンベア群20の第1のベルトコンベアの上に荷物12を載せることが想定されている。するとこれらの荷物12は貨物室の奥まで行く。貨物室の奥にいる作業者は、図1に示したように、自分が受け取った荷物を処理して荷物の山を作る。1組のベルトコンベア群20に作業者を1人用意することが好ましい。
【0029】
貨物室の奥で荷物を整理する作業者の仕事を容易にするため、床2から傾いた側壁8の位置にベンチ22が設けられている。ベンチは、コンテナ16が通るのに邪魔にならないよう、折り畳み可能であることが好ましい。ベンチ22は、荷物12を載せるのにも使用できる。すなわち荷物12を貨物室の床2の傾いた部分に載せる代わりに、荷物はベンチ22に載せられる。ベンチ22は、貨物室の床2の中央部4に対してほぼ水平かつ平行な着座部26を有することが好ましい。そのため形成される荷物の山はより安定になる。
【0030】
ベルトコンベア群20は個別に制御することができる。例えば図1では、それぞれの組のベルトコンベア群のうちで貨物室の最も奥にあって荷物の山が載っているベルトコンベアは停止していることが好ましい。するとそのベルトコンベアと、荷物の山の下部にある荷物の間の摩擦が避けられる。
【0031】
荷物は、積み込まれていくにつれて荷物の山を形成する。これらの荷物が崩れないようにするため、貨物室に対して横方向にネット24が張られる。ネット24は、側壁8の位置にある柱27に巻き付けることが好ましい。柱27は、貨物室の上方に位置する客室の床を航空機の主要構造と結び付けている。図1に、柱27を支えるこの主要構造の区画群(一般に“フレームワーク”または“フレーム”と呼ばれる)を見ることができる。
【0032】
それぞれのネット24は、航空機の主要構造の同一のフレームに対応する2本の柱27の位置に配置されることが好ましい。そこで対応する2本の柱27に巻き取り装置を取り付ける。1本の柱27の正面にある対応する側壁8に設けられたスリットにより、ネット24を通すことが可能になる。カバー(図示せず)が巻き取り装置のまわりに設けられていて、この巻き取り装置のまわりの気密性を実現しているため、側壁との連続性が保証される。それぞれの巻き取り装置は、例えば半ネット24を収容している。したがってこれら半ネット24がそれぞれの巻き取り装置の位置から作業者によって引き出され、貨物室の中央で合体し、フックまたは他の連結装置の助けを借りて互いに繋ぎ止められた状態になる。
【0033】
図2は、一部に荷物12の移送を示し、残りの部分にコンテナ16(例えばLD3型の規格化されたコンテナ)の移動を示す正面からの概略図である。
【0034】
図2の左側には特に、ベルトコンベア20と、貨物搭載システムのロール18と、貨物室の構造の一部を見ることができる。貨物室の構造には、床と、隠すことのできるベンチ22が付随している。
【0035】
ベルトコンベア20は、ここでは(図2の左側)動作位置にある。ベルトコンベアの上方ベルトは、コンテナ16が移動する平面の上方にある。この平面は、ロール18の最上部を通る面、またはこれらロール18を回転させながらその上を移動するコンテナ16の奥の部分(図2の右側の部分)に対応する。したがってベルトコンベア20は、貨物室の貨物搭載システムに邪魔されることなく荷物12を移動させることができる。
【0036】
図2の左側では、ベンチ22が利用位置にあることがわかる。例えばベンチ22は、ほぼ水平な座部26、または別の言い方をすると、貨物室の床2の中央部4にほぼ平行な座部26を有する。
【0037】
図2の右側では、ベルトコンベア20は非動作状態であり、貨物搭載システムのロール18が利用されてLD3型のコンテナが移動する。ベンチ22のほうは隠れている。
【0038】
ベルトコンベア群20は、ここでは下がった位置にある。これらベルトコンベア群のそれぞれの上方ベルトは、上に説明した走行面の下方に位置する。コンテナ16は、ベルトコンベア群20に邪魔されずに通過することができる。ベルトコンベア群20は、荷物12の山を支えるときもこの位置を取る。ベルトコンベア群20のこのような構成により、ベルトコンベア群は大きな負荷を支えることができる。航空機の主要構造には堅固な支持体が設けられていて、それぞれのベルトコンベア20を下がった位置に収容する。
【0039】
ここではベンチ22は隠れているため、コンテナ16の通過を邪魔することがない。このベンチ22は、コンテナ16の積み降ろしの際には役に立たない。したがってベンチ22は折り畳むと邪魔にならない。
【0040】
貨物室をよりよくモジュール化するには、すなわち貨物室にいろいろな数のコンテナ16を受け入れられるようにしてその容積を荷物12に合わせるには、1つのベルトコンベア20の長さ、より詳細には2つのベルトコンベア20の間のピッチが、貨物室に適合した1つのコンテナ16の幅に対応していることが望ましい(ベルトコンベア20の長さとコンテナ16の幅は、それぞれ航空機の長手方向に沿って測定する)。したがって複数のコンテナ16が貨物室に搭載されたとき、コンテナ16の下にあるベルトコンベア20は下がった位置に留まり、他のベルトコンベア20が、荷物12をコンテナ16のところまで確実に移送する。
【0041】
同様に、貨物室のそれぞれの側に複数のベンチ22を用意することが好ましい。ここでも、航空機の長手方向に沿って測定すると、1つのベンチ22の長さは、1つのコンテナ16の幅の複数倍である。1つのベンチは、1つのコンテナの幅の2倍に対応する幅を持つことが望ましい。するとベンチ22を広げたり折り畳んだりする操作が、幅が1つのコンテナだけの幅に対応するベンチよりも迅速になされる。
【0042】
図3〜図6は、ベルトコンベア20が動作位置(図3と図4)から隠れた位置(図5と図6)へ、またはその逆へと移行する様子を示している。
【0043】
これらの図面には、ベルトコンベア20の構造を見ることができる。ベルトコンベア20は2つの端部ロール28を備えており、そのまわりにエンドレスベルト30が位置している。芯板32が端部ロール28の間でエンドレスベルト30の内側に配置されていて、移送のときと、ベルトコンベア20が下がった位置にあって複数の荷物を載せているとき、運ばれる負荷を支える。端部ロール28を駆動する1台(または複数台)のモータ(図示せず)を芯板32の中に収容することができる。
【0044】
それぞれの端部ロール28はシャフト34に取り付けられている。それぞれのシャフト34は、端部ロール28それぞれの側に1つあって軸回転する2本のアーム36に支持される。同じ1つの端部ロール28に対応する軸回転するアーム36は、モータで駆動される軸38に取り付けられている。軸回転するアーム36は例えば軸38に楔で留められていて、軸38が回転駆動されるとき、対応するアームが、対応する端部ロール28を伴って軸回転する。この端部ロールの高さが変わるため、ベルトコンベア20を動作位置から隠れた位置へ、またはその逆へと移行させることができる。
【0045】
隠れた位置から動作位置に移行するときやそれとは逆のとき、1つのベルトコンベア20の同じ側で、軸回転する2本のアーム36が平行四辺形を形成する。そのためベルトコンベア20は常にほぼ水平な状態に留まる。
【0046】
一般に、荷物用扉10の側の1組のベルトコンベア群20の端部にあるベルトコンベアを除き、同一のベルトコンベア20の2つの軸38を連携させ、同一のモータによって駆動する。
【0047】
荷物12の積み降ろしを示す図7と図8から特にわかるように、ベルトコンベア20で荷物用扉10に最も近い端部は、動作位置にある他のベルトコンベアに対して持ち上がっていることが望ましい。
【0048】
図7では、第1の矢印は貨物室への積み込みの際に荷物がたどる道筋を示しており、第2の矢印は、貨物室から降ろす際に荷物がたどる道筋を示している。
【0049】
図7と図8から、それぞれの組のベルトコンベア群20の端部に、荷物を互いに垂直な2つの方向に移動させることのできる移送要素40が存在していることがわかる。第1の方向は、1組のベルトコンベア群20の上にある荷物の移動に対応する長手方向に対応し、第2の方向は、それとは垂直で航空機の横方向に対応する方向である。
【0050】
それぞれの移送要素40は、荷物を長手方向に移動させることのできる第1のロール42を有する。したがって第1のロール42は、貨物室(または航空機)に対して横方向に延びている。それぞれの移送要素40は、荷物を横方向に移動させることのできる第2のロール44も有する。したがって第2のロール44は、貨物室の長手方向に延びている。これらのさまざまなロールはモーターで動く。選択した移送方向に応じ、第1のロール42は、例えば固定されている第2のロール44に対して持ち上げられたり下げられたりする。
【0051】
荷物を貨物室に積み込むとき、荷物は、荷物用扉10(図7)またはコンテナ用扉14(図8)から航空機に対してほぼ横方向の動きを伴って到着し、次いで長手方向の動きを伴って航空機の貨物室の奥に送られる。一般に、方向転換の直前に、ベルトコンベア(または他の移送手段)を持ち上げる必要がある。これは、図7と図8に、点線に続く矢印で示してある。点線はほぼ水平な平面を象徴するのに対し、実線の矢印は、ベルトコンベア20または荷物移動手段の上方への傾斜を示している。
【0052】
ここに提案する装置では、乗客の荷物を航空機の貨物室に積み込む作業者が貨物室の奥に向けて荷物を運ぶ(または投げる)ことが回避される。ここでは、可動壁10の横でベルトコンベア20の上に荷物を載せるだけでよい。ベルトコンベア20に荷物が載ると、可動壁10は移動し、荷物を載せる新しい面がベルトコンベア20に現われる。可動壁10の移動は、例えば荷物用扉12の近くに位置する制御パネルおよび/またはリモートコントロールの助けを借りて実現される。
【0053】
ここに提案する装置では、乗客の荷物を航空機の貨物室に積み込む作業者が貨物室の奥に向けて荷物を運ぶ(または投げる)ことが回避される。荷物は、ベルトコンベアなどによって貨物室の中まで到達させることができ、貨物室の中で荷物は自動的にベルトコンベア20に載せて貨物室の奥に送られる。作業者は、貨物室の奥で荷物を受け取り、それを積み上げる。積み込みが進むにつれてベルトコンベアは下がり、そして停止する。
【0054】
上に説明した装置は、チューブ状のシャーシを用いた比較的軽い構造物の中に実現することができる。そのためこの装置の重量によって航空機の全重量が重くなりすぎることはない。ベルトコンベアの長さも制限されている。
【0055】
ここに提案するベルトコンベアは限界重量が決められている。そのためこの装置の重量によって航空機の全重量が重くなりすぎることはない。
【0056】
もちろん本発明が例示として上に説明した好ましい実施態様に限定されることはない。本発明は、以下の請求項の範囲内で当業者の能力内のあらゆる実施態様にも関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナ(16)と荷物(12)を同時に収容するようにされ、走行面を規定するロール(18)を有する貨物搭載システムを備え、コンテナ(16)がそのロール(18)を回転させながらその走行面上を移動できるようにされている、航空機の貨物室内で、物体、特に荷物(12)を移送する装置であって、
この装置が、貨物室の中で長手方向に相前後して配置されて貨物室の長さの少なくとも一部にわたって延びる1組のベルトコンベア群(20)を備えており、
それぞれのベルトコンベア(20)が、移動させる物体(12)を載せる上方ベルトを備えており、
それぞれのベルトコンベアが、そのベルトコンベアの上方ベルトが、貨物搭載システムのロール(18)によって規定される走行面の上方に位置する持ち上がった第1の位置と、そのベルトコンベアの上方ベルトが走行面の下方に位置する第2の位置の間を移動できる、
ことを特徴とする物体移送装置。
【請求項2】
貨物室の中で長手方向に相前後して配置されて貨物室の長さの少なくとも一部にわたって延びる2組のベルトコンベア群(20)を備えていて、
その2組は、貨物搭載システムのロール(18)によって互いに隔てられた状態で平行に向かい合って配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の物体移送装置。
【請求項3】
同じ組のベルトコンベア群(20)が同じ長さであり、所定のピッチで配置されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の物体移送装置。
【請求項4】
それぞれのベルトコンベア(20)が、2つの端部ロール(28)のまわりに取り付けられたエンドレスベルト(30)を備えており、
その2つの端部ロール(28)が互いに平行であり、貨物室に対して軸回転するアーム(36)に取り付けられていて、
1つの端部ロール(28)に付随する各アームが、他方の端部ロール(28)のアームと平行四辺形を形成する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の物体移送装置。
【請求項5】
1組のベルトコンベア群(20)の一端に配置された1つのベルトコンベア(20)を隣接したベルトコンベアに対して傾けることが可能である、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の物体移送装置。
【請求項6】
貨物搭載システムをさらに備える、ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の物体移送装置。
【請求項7】
貨物室を備える航空機であってその貨物室に請求項1から5のいずれかに記載の物体移送装置が設置されている、ことを特徴とする航空機。
【請求項8】
貨物室が少なくとも2つのアクセス用扉(10、14)を備えていて、
それぞれの扉が1組のベルトコンベア群(20)のほぼ端部に配置されており、
第1の扉(14)は、貨物室の中に規格化されたサイズのコンテナ(16)を導入するのに十分なサイズであり、
第2の扉(10)は、第1の扉(14)よりもサイズが小さく、貨物室で第1の扉(14)が存在している壁とは反対側の壁に位置する、
ことを特徴とする請求項7に記載の航空機。
【請求項9】
貨物室が、2つのアクセス用扉(10、14)の間で、少なくとも1組のベルトコンベア群(20)の端部に、互いに垂直な2方向に物体を移動させることのできる移送要素(40)を備えていて、
第1の方向はその1組のベルトコンベア群の上にある物体が移動する方向に対応し、
第2の方向は、それとは垂直で航空機の横方向に対応する方向である、
ことを特徴とする請求項8に記載の航空機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−529925(P2010−529925A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511688(P2010−511688)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000822
【国際公開番号】WO2009/007549
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(509347273)エアバス オペラシオン (33)
【Fターム(参考)】