説明

航空機または船舶のリコーダーからのデータ遠隔収集方法及び装置

本発明は、沈没するときに放出させることが可能であり、かつフライトあるいは航海に関する情報だけでなく、漂流中のブイの位置をも記憶するメモリを二重に備えたブイ(3)を用いる、航空機または船舶のリコーダーからのデータ遠隔収集方法及び装置に関する。送受信両用無線通信手段により、ブイにメモリの内容を偵察航空機等の遠隔収集手段へ転送させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機あるいは船舶のリコーダーからのデータ遠隔収集方法及び装置に関する。従って、本発明の技術分野は航空機または船舶の輸送安全に関する技術である。本発明は、より具体的には、航空機または船舶が遭難状況にあるときに該航空機または船舶から放出可能なブイ(浮標)に関する。
【背景技術】
【0002】
海での航空機事故に際して、優先すべきこととして、飛行パラメータのリコーダーの回収と、最も一般的にブラックボックス、あるいは商船の場合には航海データ記録装置(略称VDR)と呼ばれる、コックピットにおける音声通信記録である。水中深くにおいて起こった事故の場合、位置測定に用いられる音波送信機の範囲には限界があるため、リコーダーの位置特定は極めて困難である。そのため、費用のかかる手段が捜索エリア上へ送り込まれ、乗員を捜し出すために広範囲に亘って精査される。このような作業に要する期間は数カ月に及び、極めて高額な費用が費やされる。
【0003】
本発明は、有人または無人の航空機、船舶、あるいは潜水艦のリコーダーからのデータの遠隔収集に関する。
【0004】
興味ある用途として本発明では、偵察機に、単回飛行において、浮遊破片の視覚による捜索を妨害することなく、それと同時にリコーダーからのデータ回収、さらには墜落事故または難破地点の特定座標を検索する性能を付与することを目的とする。
【0005】
フライトリコーダーからのデータ回収を可能とすることを意図した種々のシステムが存在する。米国特許出願US2002/0144834及び米国特許US7,208,685には記録を確実に保護する堅固な防御システムが記載されている。このようなシステムには取り外し可能なメモリ及び通信インタフェースが含まれている。収集手段を用いて前記取り外し可能メモリにアクセスするためには、メモリをその支持体から取り外すために水面下へ介入することが必要とされる。この目的のため、これらのシステムには回収手段をリコーダーの方へガイドする音波ビーコン(無線標識)が備えられる。水面下への介入には、大きな手段をエリアまで運ぶことが要求され、この作業は長距離に及び、かつ費用を要する。
【0006】
また、遭難状況下おいて、航空機自体によって機外投棄することが可能なデータリコーダーも存在する。
【0007】
海難事故の場合、データの回収には、遭難地域へ送られた船舶により、あるいはヘリコプターにより、例えば米国特許US5,086,998に記載されたような装置を用いて、海面上でリコーダーを回収することが要求される。このような作業は、それ自体で大洋のいかなる地域にも到達可能な偵察機等の固定翼をもつ航空機によってのみ実施可能である。
【0008】
米国特許US4,981,453には、収集手段に警報を出し、かつガイドする送信ブイが記載されている。このブイにはデータをメモリ中に保存するためのいかなる装置も備えられておらず、従ってリコーダーデータを遠隔収集する性能は付与されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記に鑑み、本発明は、従来技術による方法及び装置の問題点を、航空機あるいは船舶のリコーダーデータを遠隔収集する方法及び装置を付与することによって解決することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、航空機または船舶のリコーダーデータの遠隔収集装置が提案されている。本リコーダーデータ遠隔収集装置は、データ遠隔収集手段を用いることによってデジタルデータ交換を確保することができる二方向性無線チャネルを備える放出可能ブイから構成され、このブイには衛星位置測定受信機及びローカルメモリが備えられ、該メモリには海面上を漂流している間の連続位置が記憶され、また前記ブイにはさらにメモリが備えられ、このメモリには航空機の場合はフライトリコーダー中に、他方船舶の場合は航海データ記録装中に記録されていた情報が記憶され、前記ブイには猶さらに電源と搭載電子機器を作動させるための装置が備えられることを特徴とする。
【0011】
本発明に従った注目すべき航空機または船舶のリコーダーデータ遠隔収集方法は、下記段階、すなわち、
衛星位置測定受信機及びメモリが備えられた放出可能ブイを、記録の遠隔収集の対象とされる航空機あるいは船舶に搭載された自動放出装置中へ挿入する段階、
望ましくは後に価値が知られることになる、フライトあるいは航海を通した特徴的断片情報を前記ブイのメモリ中へ記録する段階、
墜落事故または難破に際してブイを自動放出させ、及びブイ内部の電子機器を作動される段階、
衛星位置測定受信機によって配信された連続位置をブイのメモリに記録する段階、
ブイの位置及びフライトあるいは航海に関する断片情報を含むメモリ中の内容がデータ遠隔収集手段へ送信されるように、データ遠隔収集手段との二方向通信を確立する段階、
ブイの漂流を復元して、航空機衝突あるいは難破位置を遠隔決定する段階、及び
フライトあるいは航海に関する断片情報を遠隔分析して、状況及び起こり得る失敗を明らかにする段階、から構成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に従った装置に係る全体図である。
【図2】放出可能ブイの構成機器の機能ブロック図である。
【図3】データ収集装置の遠隔部分のブロック図である。
【発明を実施するための手段】
【0013】
本発明の他の特徴及び利点について、本発明の例示的実施例を図示している添付図面を参照しながら下記説明において明らかにする。
図1は本発明装置に係る全体図である。航空機1が海面上で損壊している。前記航空機と海面との衝突地点2の近くに、航空機から放出された後に海面を漂流しているブイ3が示されている。遠隔手段との無線連結点上のブイの位置4は放出点からのブイの漂流の例示である。地球位置測定衛星5によって、ブイに一定時間間隔でその漂流地点を記録させることが可能とされている。ブイ4との遠隔通信手段として別に海上パトロール機7、通信衛星8、及び地上9あるいは船上10に設置されたコントロールステーション等の手段も示されている。符号11は、COAPAS-SARSATシステム等の国際的ネットワーク衛星が所有する遭難送信機の位置測定専用の衛星を示す。
【0014】
データ遠隔収集手段は、固定翼あるいは回転翼をもつ航空機、通信衛星、あるいは潜望鏡を備える潜水艦によっても形成可能である。
【0015】
図2は、放出可能ブイの構成機器の機能ブロック図を示すものであり、蓄電池等の電源、マイクロプロセッサによって形成される中心的ユニット、放出終了後にブイの内部電子機器へ電圧を印加する装置等が示されている。作動装置22は海水との接触を検知する電極、あるいは放出中に作動される接触子によって形成可能である。第一メモリ23中に、フライトあるいは航海の特徴的な断片情報が非揮発方式で記録されるが、これはブイの内部インタフェース24を介して、及び必要なら暗号化データ用の外部装置26が備えられた通信電子機器25を介して受信される。衛星位置測定受信機27からのデータはマイクロプロセッサ21を介して第二メモリ28へと通過し、この第二メモリに放出後のブイの漂流が記録され、また暗号化形式での記録が必要であれば内部回路32を用いて記録される。データ遠隔収集手段との通信には無線送信機29が用いられる。命令が受信されたら、この無線送信機によってメモリ23及び28の内容が確実に送信される。ブイには遭難送信機の位置測定装置の国際的波長にチューニングされた遭難送信機30を備えてブイの検出及び地上のセンターからの極めて迅速な識別を容易化することも可能である。飛行手段、あるいは船等の水面手段を用いてブイの視覚による位置測定のために、夕暮れにフラッシュライト31を作動させることも可能である。最後に、無許可の第三者による妨害を防止するための、符号32で示される無線29によって送信された情報の暗号化装置も示されている。作業場において、あるいはフライト中に、ブイ内部の電子装置が適正に作動するか否かを確認するため、テストインタフェース33が用いられる。上述した各種構成要素が、浮力による浮遊性を確保する耐衝撃性の密封封入体36中に一体化される。メモリの内容が遠隔転送されたら、遠隔制御型オプション装置34を用いてブイを自沈させることも可能である。
【0016】
図3はデータ収集する側の装置の遠隔部分のブロック図である。該遠隔部分には、無線送信機42を介してブイと通信するコンピュータ40が備えられ、該コンピュータ40は電源41によって作動される。この通信は直接為されるか、あるいは1または必要な場合は数個の衛星8によってリレーされて行われる。漂流中のブイの経路及びフライトまたは航海断片情報に関するデータは、必要な場合は暗号化装置44を用いて解読された後、取り外し可能または取り外しできない大容量記憶媒体へ転送される。遠隔情報収集手段が航空機あるいは船舶である場合は、該遠隔収集手段にGPS受信機45を用いさせて可能な限り早期にブイと合流することが可能である。
【0017】
本発明方法は下記段階、すなわち、
請求項1項記載の放出可能ブイ3を、記録の遠隔収集の対象とされる航空機あるいは船舶に搭載された自動放出装置中へ挿入する段階、
フライトあるいは航海の期間に亘って、望ましくは後にその価値が知られる特徴的な断片情報をブイのメモリ23中へ記録する段階、
墜落事故あるいは難破に際してのブイの自動放出及びブイ内部の電子機器22による作動が為される段階、
衛星位置測定受信機27によって配信された連続位置情報をブイの第二メモリ28中に記録する段階、
データ遠隔収集手段40, 41, 42, 43が自らブイとの二方向通信を確立して、漂流中のブイの位置及びフライトあるいは航海に関する断片情報を含むメモリ28, 23中の内容を該収集手段へ転送させる段階、
ブイの漂流を復元して、航空機12あるいは難破船の衝突地点2を遠隔決定する段階、及び
フライトあるいは航海に関する断片情報を遠隔分析して状況及び起こり得る失敗を明らかにする段階、から構成される注目に値する方法である。
【0018】
本発明方法の別の特徴的な態様では、前記収集手段は、ブイとの二方向通信系を確立する前に、墜落事故または難破前の遭難状況にある航空機または船舶によって情報が送信された陸上から捜索地域の近くへとガイドされる。
【0019】
上記説明より、本発明によって最新技術による装置では提供できなかった下記性能が得られることが明らかである。
- 偵察機による単回飛行で、
a) フライトあるいは航海記録からデータを持ち帰ること、
b) 墜落事故あるいは難破地点の正確な座標の決定を可能とする断片情報を収集すること、
c) 視覚による浮遊物の探索調査を継続すること、が可能とされる。
イリジウム等の通信衛星を遠隔収集手段として用いることにより、墜落あるいは難破の場所へ航空機を送らなくとも、フライトリコーダーまたは航海リコーダー、及び漂流ブイの座標からデータを収集することが可能とされる。
【0020】
これにより、海洋救助活動に要する費用を大幅に軽減することができ、任務に要する期間が短期間となり、今後の任務の準備のために要求されるデータの収集が可能となる。衝突地点に関する知見、及びフライトまたは航海パラメータの有効性について陸上においてデータ処理することにより、現場における調査への道が開かれ、故障原因と推定される部品の持ち帰りが可能となる。
【0021】
なお、通信の確立はデータ遠隔収集手段によって開始されるため、ブイの自立度が高められており、データ収集手段の地点への移動及び持ち帰りに要する時間はブイに委ねられる。
【0022】
オプションの遭難送信機30がない場合には、ブイによる自発的送信は起こらないことに注意すべきである。従って、回収後に中身をブイから意図された媒体へ盗もうとする望ましくない第三者によって位置測定することはできなくなっている。
【0023】
さらに、メモリ23及び28に記憶されたデータはブイ32内部の装置あるいは外側装置26によって暗号化可能なため、第三者がブイの回収を行ってもその者によっては許可なくその中身を調べることは不可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ遠隔収集手段によりデジタルデータ交換を確保することができる二方向無線チャネル(29)を有するマイクロプロセッサ(21)を備えた放出可能ブイ(3)から構成される、航空機あるいは船舶のリコーダーからのデータ遠隔収集装置であって、
前記ブイには、衛星位置測定受信機(27)、海面上を漂流している間の連続位置が記録されるローカルメモリ(28)、航空機のフライトリコーダーあるいは船舶については航海リコーダー中に放出前に記録された断片情報が通信インタフェース(24)を介して記録されたメモリ(23)、電源(20)、及び搭載電子機器の作動装置(22)が含まれることを特徴とする前記データ遠隔収集装置。
【請求項2】
データ遠隔収集手段は、海洋パトロール機、あるいは固定翼または回転翼をもつ航空機、あるいは船舶、あるいは通信衛星、あるいは潜望鏡を備える潜水艦であることを特徴とする請求項1項記載のデータ遠隔収集装置。
【請求項3】
前記放出可能ブイに、SARSAT-COSPAR等の遭難送信機(30)の位置測定装置に用いられる国際的周波数にチューニングされた送信機が一体化されていることを特徴とする請求項1項または2項記載のデータ遠隔収集装置。
【請求項4】
前記放出可能ブイに無線通信(26)を暗号化する外部システムが統合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のデータ遠隔収集装置。
【請求項5】
前記放出可能ブイに遠隔制御自沈装置(34)が備えられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のデータ遠隔収集装置。
【請求項6】
前記放出可能ブイにさらにフラッシュライトが備えられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のデータ遠隔収集装置。
【請求項7】
前記放出可能ブイに、無線送信機(29)によって送信された情報を暗号化する内部装置(32)が一体化されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のデータ遠隔収集装置。
【請求項8】
航空機あるいは船舶のリコーダーからのデータ遠隔収集方法であって、
請求項1項記載の放出可能ブイ(3)を、記録の遠隔収集対象とされる航空機あるいは船舶に搭載された自動放出装置中へ挿入する段階、
後に知られることが必要な情報をフライトまたは航海に亘って前記ブイのメモリ(23)中に記録する段階、
墜落事故あるいは難破に際してブイを自動放出させ、及びブイ内部の電子機器(22)を作動させる段階、
衛星位置測定受信機(27)によって配信された連続位置をブイの第二メモリ(28)中に記録する段階、
データ遠隔収集手段(40, 41, 42, 43)が自らブイとの二方向通信を確立して、漂流中のブイの位置及びフライトあるいは航海に関する断片情報を含むメモリ(28, 23)中の内容を該収集手段へ転送させる段階、
ブイの漂流情報から、航空機(12)あるいは難破船の衝突地点(2)を遠隔決定する段階、及び
フライトあるいは航海に関する断片情報を遠隔分析して状況及び起こり得る失敗を明らかにする段階、から構成されるデータ遠隔収集方法。
【請求項9】
前記収集手段が、ブイとの二方向通信を確立する前に、墜落事故または難破前の遭難状況にある航空機または船舶によって情報が送信された陸上から捜索地域の近くへとガイドされることを特徴とする請求項8項記載の航空機あるいは船舶のリコーダーからのデータ遠隔収集方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−510762(P2013−510762A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538388(P2012−538388)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052418
【国際公開番号】WO2011/058281
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512123329)
【氏名又は名称原語表記】ARCHITECTURE ET CONCEPTION DE SYTEMES AVANCES
【Fターム(参考)】