説明

航空機エンジン用アフターバーナ、及び航空機エンジン

【課題】航空機エンジン用アフターバーナの着火性を損なうことなく、保炎性を高める航空機エンジンの提供。
【解決手段】エンジンケースの後部に配設された排気ダクト29と;排気ダクト29内に配設されかつアウター環部35及びインナー環部37を有した環状のガッタ33と;アウター環部35及びインナー環部37の表面に沿って後方向へ燃料を噴射するスプレーバ43と;先端部から燃料を含む混合ガスに対して火花を飛ばして着火するイグナイタ47と;を具備しており、アウター環部35の後縁におけるイグナイタ47の先端部の後側近傍に、アウター切欠き51を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機エンジンの技術分野に関わり、特に、燃料を再燃焼させてエンジン推力を増大させる航空機エンジン用アフターバーナの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機に搭載される航空機エンジンの要素の1つである航空機エンジン用アフターバーナは、燃料を再燃焼させてエンジン推力を増大させるものであって、以下、従来の一般的な航空機エンジン用アフターバーナについて簡単に説明する。
【0003】
即ち、前記航空機エンジンにおけるエンジンケースの後部には、排気ダクトが配設されており、この排気ダクト内には、後方に混合ガスの循環流(うず流)を形成可能な環状のガッタ(フレームホルダ)が配設されている。ここで、ガッタは、外側に、アウター環部を有してあって、内側に、インナー環部を有している。また、前記ガッタは、部分断面形状が後方に向かってV字形状に拡がるように構成されている。
【0004】
前記排気ダクトには、前記アウター環部及び前記インナー環部の表面に沿って後方向へ燃料を噴射する複数のスプレーバが等間隔に配設されている。また、前記排気ダクトにおけるいずれかの前記スプレーバの近傍には、イグナイタが配設されており、このイグナイタは、先端部から燃料を含む混合ガスに対して火花を飛ばして着火するものであって、前記イグナイタの先端部は、前記アウター環部に表側から貫通してある。
【0005】
従って、前記航空機エンジンの稼動中に、前記航空機エンジンにおける主流路から排出される高温ガスと、前記航空機エンジンにおけるバイパス流路から排出される低温の空気が混合して、混合ガスとして前記航空機エンジンから後方向へ排気されることにより、前記航空機はエンジン推力を得るこができる。
【0006】
更に、前記スプレーバによって前記アウター環部及び前記インナー環部の表面に沿って後方向へ燃料を噴射すると、前記ガッタによって後方に燃料を含む混合ガスの循環流を形成する。そして、イグナイタの先端部から燃料を含む混合ガスに対して火花を飛ばして着火することにより、燃料を再燃焼させて、前記ガッタの後方に火炎を形成するこができる。これにより、前記航空機エンジンから後方向へ排気される混合が膨張して加速されることで、エンジン推力を増大させるこができる。
【0007】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1に示すものがある。
【特許文献1】特開平9−119346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記ガッタの後方に火炎を安定的に形成して、前記航空機エンジン用アフターバーナの保炎性能を高めるには、燃料が前記ガッタ付近に滞留する時間を長くする必要がある。そのため、前記ガッタを前記航空機エンジンのエンジン軸方向(前後方向)へ大型化して、混合ガスの循環流のスケールを大きくする必要がある。
【0009】
一方、混合ガスの循環流のスケールが大きくなるに伴って、混合ガスの循環流の循環流中心(うず流中心)が後方に移ることになって、前記イグナイタの先端部と混合ガスの循環流の循環流中心との距離が長くなる。そのため、前記航空機エンジン用アフターバーナの保炎性能を高めると、十分な燃料が混合ガスの循環流に乗って前記イグナイタの先端部付近まで戻ってくるこができず、前記航空機エンジン用アフターバーナの着火性能が悪化する。
【0010】
つまり、従来の前記航空機エンジン用アフターバーナにあっては、前記航空機エンジン用アフターバーナの着火性能を損なうことなく、前記航空機エンジン用アフターバーナの保炎性能を高めることは極めて困難であるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明にあっては、航空機エンジンの要素の1つであって、燃料を再燃焼させてエンジン推力を増大させる航空機エンジン用アフターバーナにおいて、
前記航空機エンジンにおけるエンジンケースの後部に配設された排気ダクトと;
前記排気ダクト内に配設され、外側にアウター環部を有し、内側にインナー環部を有してあって、部分断面形状が後方に向かってV字形状に拡がるように構成され、後方に混合ガスの循環流を形成可能な環状のガッタと;
前記アウター環部及び前記インナー環部の表面に沿って後方向へ燃料を噴射するスプレーバと;
先端部が前記アウター環部に表側から貫通してあって、先端部から燃料を含む混合ガスに対して火花を飛ばして着火するイグナイタと;を具備しており、
前記アウター環部の後縁における前記イグナイタの先端部の後側近傍に、アウター切欠きが形成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の発明特定事項によると、前記航空機エンジンの稼動中に、前記航空機エンジンにおける主流路から排出される高温ガスと、前記航空機エンジンにおけるバイパス流路から排出される低温の空気が混合して、混合ガスとして前記航空機エンジンから後方向へ排気されることにより、航空機はエンジン推力を得るこができる。
【0013】
また、前記スプレーバによって前記アウター環部及び前記インナー環部の表面に沿って後方向へ燃料を噴射すると、前記ガッタによって後方へ燃料を含む混合ガスの循環流を形成する。そして、イグナイタの先端部から燃料を含む混合ガスに対して火花を飛ばして着火することにより、燃料を再燃焼させて、前記ガッタの後方に火炎を形成するこができる。これにより、前記航空機エンジンから後方向へ排気される混合が膨張して加速されることで、エンジン推力を増大させるこができる(前記航空機エンジン用アフターバーナの一般的な作用)。
【0014】
前記航空機エンジン用アフターバーナの一般的な作用の他に、前記アウター環部の後縁における前記イグナイタの先端部の後側近傍に前記アウター切欠きが形成されているため、前記アウター環部の後方に形成される混合ガスの循環流における一部の領域の循環流中心(うず流中心)を局所的に前記イグナイタの先端部に近づけることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明にあっては、請求項1に記載の発明特定事項の他に、前記インナー環部の後縁に、前記アウター切欠きに対向したインナー切欠きが形成されたことを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明特定事項によると、請求項1に記載の発明特定事項による作用の他に、前記インナー環部の後縁に前記アウター切欠きに対向した前記インナー切欠きが形成されているため、前記インナー環部の後方に形成される混合ガスの循環流における一部の領域の循環流中心を局所的に前記イグナイタの先端部に近づけることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明にあっては、請求項1又は請求項2に記載の発明特定事項の他に、前記排気ダクト内に前記ガッタを囲むように配設され、混合ガスを前記アウター環部の表面に沿うように後方向へ誘導するアウターガイドと;
前記排気ダクト内に前記ガッタに囲まれるように配設され、混合ガスを前記インナー環部の表面に沿うように後方向へ誘導するインナーガイドと;
を具備したことを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載の発明特定事項によると、請求項1又は請求項2に記載の発明特定事項による作用の他に、前記アウターガイド及び前記インナーガイドによって混合ガスを前記アウター環部及び前記インナー環部の表面に沿うように後方向へ誘導するため、前記アウター環部及び前記インナー環部の後方にそれぞれ循環流を安定的に形成することができ、燃料が前記ガッタ付近に滞留する時間が長くなる。
【0019】
請求項4に記載の発明にあっては、請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の航空機エンジン用アフターバーナを具備したことを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載の発明にあっては、請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の発明特定事項による作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0021】
請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載の発明によれば、前記アウター環部の後方に形成される混合ガスの循環流における一部の領域の循環流中心を局所的に前記イグナイタの先端部に近づけることができるため、前記ガッタをエンジン軸方向へ大型化して、混合ガスの循環流のスケールを大きくしても、十分な燃料が混合ガスの循環流に乗って前記イグナイタの先端部付近まで戻ってくるこができる。そのため、前記航空機エンジン用アフターバーナの着火性能を損なうことなく、前記航空機エンジン用アフターバーナの保炎性能を容易かつ簡単に高めることができる。特に、請求項2から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載の発明によれば、前記インナー環部の後方に形成される混合ガスの循環流における一部の領域の循環流中心を局所的に前記イグナイタの先端部に近づけることができるため、より十分な燃料が混合ガスの循環流に乗って前記イグナイタの先端部付近まで戻ってくるこができ、前述の効果はより一層向上する。
【0022】
請求項3又は請求項4に記載の発明によれば、前記アウター環部及び前記インナー環部の後方にそれぞれ循環流を安定的に形成することができ、燃料が前記ガッタ付近に滞留する時間が長くなるため、前記航空機エンジン用アフターバーナの保炎性能をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図1から図5を参照して説明する。
【0024】
ここで、図1は、図5におけるI部の拡大図であって、図2は、図1におけるII-II線に沿った図であって、図3は、本発明の実施形態に係わる航空機エンジン用アフターバーナの模式的な部分背面図であって、図4は、ガッタの後方に形成される混合ガスの循環流を説明する図であって、図5は、本発明の実施の形態に係わる航空機エンジンの模式的な側断面図である。なお、図面中において、「F」は、前方向を指し、「R」は、後方向を指す。
図5に示すように、本発明の実施形態に係わる航空機エンジン1は、航空機に搭載されるものであって、筒状のエンジンケース3を本体として具備している。また、エンジンケース3内には、高温ガスが流れる主流路5が形成されており、エンジンケース3内における主流路5の外側には、低温の空気が流れるバイパス流路7が形成されている。
【0025】
エンジンケース3内の前部には、主流路5及びバイパス流路7に空気を送り込むファン9が配設されており、このファン9は、エンジン軸心Cを中心として回転可能なファンロータ9aを備えている。なお、ファンロータ9aの前側中央には、インレットコーン11が配設されている。
【0026】
エンジンケース3内におけるファン9の後側には、主流路5に送り込まれた空気を圧縮する圧縮機13が配設されており、この圧縮機13は、エンジン軸心Cを中心として回転可能な圧縮機ロータ13aを備えている。また、エンジンケース3内における圧縮機13の後方側には、圧縮した空気の中で燃料を燃焼させる燃焼器15が配設されている。
【0027】
エンジンケース3内における燃焼器15の後側には、高圧タービン17が配設されており、この高圧タービン17は、燃焼器15からの高温ガスの膨張によって駆動されると共に圧縮機13を連動して駆動するものであって、エンジン軸心Cを中心として回転可能な高圧タービンロータ17aを備えている。ここで、高圧タービンロータ17aは、圧縮機ロータ13aに一体的に連結に連結してある。
【0028】
エンジンケース3内における高圧タービン17の後側には、低圧タービン19が配設されており、この低圧タービン19は、高温ガスの膨張によって駆動されと共にファン9を連動して駆動するものであって、エンジン軸心Cを中心として回転可能な低圧タービンロータ19aを備えている。ここで、低圧タービンロータ19aは、ファン9に一体的に連結に連結してある。なお、低圧タービンロータ19aの後側中央には、テールコーン21が配設されている。
【0029】
エンジンケース3の後部には、ミキサ23が配設されており、このミキサ23は、主流路5から排出される高温ガスと、バイパス流路7から排出される低温の空気を混合するものである。そして、ミキサ23の後側には、燃料を再燃焼させてエンジン推力を増大させるアフターバーナ25が配設されており、このアフターバーナ25の後側には、高温ガスと低温の空気を混合ガスとして排気する排気ノズル27が配設されている。
【0030】
次に、航空機エンジン1の構成要素の1つであるアフターバーナ(航空機エンジン用アフターバーナ)25について詳細に説明する。
【0031】
図1及び図3に示すように、エンジンケース3の後部には、排気ダクト29が配設されており、この排気ダクト29は、排気ノズル27に接続されてある。また、排気ダクト29内には、筒状のライナ31が配設されている。
【0032】
ライナ31内には、後方に混合ガスの循環流(うず流)S(図4参照)を形成可能な環状のガッタ(フレームホルダ)33が配設されている。ここで、ガッタ33は、外側に、アウター環部35を有してあって、内側に、インナー環部37を有している。また、ガッタ33は、部分断面形状が後方に向かってV字形状に拡がるように構成されている。
【0033】
ライナ31内におけるアウター環部35の近傍には、混合ガスをアウター環部35の表面に沿うように後方向へ誘導する環状のアウターガイド39がガッタ33を囲むように配設されており、アウターガイド39の後縁の前後位置(航空機エンジン1のエンジン軸方向における位置)は、アウター環部35の後縁の前後位置と同じになっている。また、ライナ31内におけるインナー環部37の近傍には、混合ガスをインナー環部37の表面に沿うよう後方向へ誘導する環状のインナーガイド41がガッタ33に囲まれるように配設されており、インナーガイド41の後縁の前後位置は、インナー環部37の後縁の前後位置と同じになっている。
【0034】
排気ダクト29には、アウター環部35及びインナー環部37の表面に沿って後方向へ燃料を噴射する複数のスプレーバ43がブラケット45(図3中においては省略)を介して等間隔に配設されている。ここで、各スプレーバ43は、ライナ31及びアウターガイド39をそれぞれ貫通してあって、各スプレーバ43の先端部は、ガッタ33の前側近傍にそれぞれ位置している。また、各スプレーバ43は、先端部付近に、燃料噴射孔43aをそれぞれ備えている。
【0035】
排気ダクト29におけるいずれかのスプレーバ43の後側近傍には、イグナイタ47が固定スリーブ49を介して配設されており、このイグナイタ47は、先端部から燃料を含む混合ガスに対して火花を飛ばして着火するものである。ここで、イグナイタ47は、ライナ31を貫通してあって、イグナイタ47の先端部は、アウターガイド39及びアウター環部35に表側から貫通してある。
【0036】
図1、図2、及び図4(b)に示すように、アウター環部35の後縁におけるイグナイタ47の先端部の後側近傍には、四角形状のアウター切欠き51が形成されており、このアウター切欠き51の幅は、イグナイタ47の先端部の径よりも大きくしている。また、図4(c)に示すように、アウター環部35の後縁にアウター切欠き51が形成される他に、インナー環部37の後縁にアウター切欠き51に対向した四角形状のインナー切欠き53が形成されるようにしてもよい。
【0037】
次に、本発明の実施形態の作用について説明する。
【0038】
適宜のスタータ装置(図示省略)の作動によってファンロータ9a及び圧縮機ロータ13aをエンジン軸心Cを中心として回転させると、ファン9によって主流路5及びバイパス流路7に空気を送り込むことができ、圧縮機13によって主流路5に送り込まれた空気を圧縮することができる。次に、燃焼器15によって圧縮した空気の中で燃料を燃焼させて、高圧の高温ガスを発生させると、高温ガスの膨張によって高圧タービン17及び低圧タービン19を駆動させて、圧縮機13及びファン9を連動して駆動させることができる。そして、一連の動作(ファン9の駆動、圧縮機13の駆動、燃焼器15による燃焼、高圧タービン17及び低圧タービン19の駆動)が連続して行われることにより、航空機エンジン1を稼動させることができる。
【0039】
また、航空機エンジン1の稼動中に、主流路5から排出される高温ガスと、バイパス流路7から排出される低温の空気をミキサ23によって混合して、混合ガスとして排気ノズル27から後方向へ排気されることにより、前記航空機はエンジン推力を得るこができる。
【0040】
更に、スプレーバ43によってアウター環部35及びインナー環部37の表面に沿って後方向へ燃料を噴射すると、ガッタ33によって燃料を含む混合ガスの循環流Sを形成する。ここで、アウターガイド39及びインナーガイド41によって混合ガスをアウター環部35及びインナー環部37の表面に沿うように後方向へ誘導するため、アウター環部35及びインナー環部37の後方にそれぞれ循環流Sを安定的に形成することができ、燃料がガッタ33付近に滞留する時間が長くなる。そして、イグナイタ47の先端部から燃料を含む混合ガスに対して火花を飛ばして着火することにより、燃料を再燃焼させて、ガッタ33の後方に火炎を形成するこができる。これにより、排気ノズル27から後方向へ排気される混合が膨張して加速されることで、エンジン推力を増大させるこができる(アフターバーナ25の一般的な作用)。
【0041】
アフターバーナ25の一般的な作用の他に、アウター環部35の後縁におけるイグナイタ47の先端部の後側近傍にアウター切欠き51が形成されているため、図4(b)に示すように、アウター環部35の後方に形成される混合ガスの循環流Sにおける一部の領域の循環流中心(うず流中心)Sbを局所的にイグナイタ47の先端部に近づけることができる。
【0042】
また、図4(c)に示すように、アウター環部35の後縁にアウター切欠き51が形成され、かつインナー環部37の後縁にインナー切欠き53が形成された場合には、アウター環部35及びインナー環部37の後方にそれぞれ形成される混合ガスの循環流Sにおける一部の領域の循環流中心Sbを局所的にイグナイタ47の先端部に更に近づけることができる。
【0043】
なお、図4(a)に示すように、アウター環部35及びインナー環部37の後方にそれぞれ形成される混合ガスの循環流Sにおける大部分の領域の循環流中心Sbは、混合ガスの循環流Sのスケールの大きさに応じて、イグナイタ47の先端部との距離を保っている。また、図4(a)(b)(c)に示す混合ガスの循環流Sの循環流中心Sbは、CFD(Computational Fluid Dynamics)解析によって求めたものである。
【0044】
以上の如き、本発明の実施形態によれば、アウター環部35の後方に形成される混合ガスの循環流Sにおける一部の領域の循環流中心Sbを局所的にイグナイタ47の先端部に近づけることができるため、ガッタ33をエンジン軸方向へ大型化して、混合ガスの循環流Sのスケールを大きくしても、十分な燃料が混合ガスの循環流Sに乗ってイグナイタ47の先端部付近まで戻ってくるこができる。そのため、アフターバーナ25の着火性能を損なうことなく、アフターバーナ25の保炎性能を容易かつ簡単に高めることができる。
【0045】
特に、アウター環部35の後縁にアウター切欠き51が形成され、かつインナー環部37の後縁にインナー切欠き53が形成された場合には、アウター環部35及びインナー環部37の後方にそれぞれ形成される混合ガスの循環流Sにおける一部の領域の循環流中心Sbを局所的にイグナイタ47の先端部に更に近づけることができるため、より十分な燃料が混合ガスの循環流Sに乗ってイグナイタ47の先端部付近まで戻ってくるこができ、前述の効果はより一層向上する。
【0046】
また、アウター環部35及びインナー環部37の後方にそれぞれ循環流Sを安定的に形成することができ、燃料がガッタ33付近に滞留する時間が長くなるため、アフターバーナ25の保炎性能をより一層高めることができる。
【0047】
なお、本発明は、前述の発明の実施形態の説明に限るものではなく、適宜の変更を行うことにより、その他種々の態様で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図5におけるI部の拡大図である。
【図2】図1におけるII-II線に沿った図である。
【図3】本発明の実施形態に係わる航空機エンジン用アフターバーナの模式的な部分背面図である。
【図4】ガッタの後方に形成される混合ガスの循環流を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態に係わる航空機エンジンの模式的な側断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 航空機エンジン
5 主流路
7 バイパス流路
25 アフターバーナ(航空機エンジン用アフターバーナ)
29 排気ダクト
31 ライナ
33 ガッタ
35 アウター環部
37 インナー環部
39 アウターガイド
41 インナーガイド
43 スプレーバ
47 イグナイタ
51 アウター切欠き
53 インナー切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機エンジンの要素の1つであって、燃料を再燃焼させてエンジン推力を増大させる航空機エンジン用アフターバーナにおいて、
前記航空機エンジンにおけるエンジンケースの後部に配設された排気ダクトと;
前記排気ダクト内に配設され、外側にアウター環部を有し、内側にインナー環部を有してあって、部分断面形状が後方に向かってV字形状に拡がるように構成され、後方に混合ガスの循環流を形成可能な環状のガッタと;
前記アウター環部及び前記インナー環部の表面に沿って後方向へ燃料を噴射するスプレーバと;
先端部が前記アウター環部に表側から貫通してあって、先端部から燃料を含む混合ガスに対して火花を飛ばして着火するイグナイタと;を具備しており、
前記アウター環部の後縁における前記イグナイタの先端部の後側近傍に、アウター切欠きが形成されたことを特徴とする航空機エンジン用アフターバーナ。
【請求項2】
前記インナー環部の後縁に、前記アウター切欠きに対向したインナー切欠きが形成されたことを特徴とする請求項1に記載の航空機エンジン用アフターバーナ。
【請求項3】
前記排気ダクト内に前記ガッタを囲むように配設され、混合ガスを前記アウター環部の表面に沿うように後方向へ誘導するアウターガイドと;
前記排気ダクト内に前記ガッタに囲まれるように配設され、混合ガスを前記インナー環部の表面に沿うように後方向へ誘導するインナーガイドと;
を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の航空機エンジン用アフターバーナ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の航空機エンジン用アフターバーナを具備したことを特徴とする航空機エンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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