説明

航空機位置測定システム、該システムに用いられる時刻同期方法及び時刻同期プログラム

【課題】航空機の位置の測定精度が向上する航空機位置測定システムを提供する。
【解決手段】航空機から送信されるスキッタ信号が各受信局51i で受信され、ターゲット処理局60により、各受信局51i の設置位置情報及び同各受信局51i でのスキッタ信号の受信時刻の差情報に基づいて、航空機の飛行位置情報(緯度情報、経度情報及び幾何学的高度情報)が求められる。この場合、各受信局51i では、時刻情報受信手段(GPS補強システム受信機52)により、衛星補強システムを構成する衛星から送信される時刻情報tmが受信される。時刻同期手段(タイミング部53、デコード部55)により、当該受信局51i で上記スキッタ信号を受信したときの受信時刻を、GPS補強システム受信機52で受信された時刻情報tmに同期させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、航空機位置測定システム、該システムに用いられる時刻同期方法及び時刻同期プログラムに係り、特に、広域の航空管制を行い、かつ航空機の位置の測定精度を向上させる場合に用いて好適な航空機位置測定システム、該システムに用いられる時刻同期方法及び時刻同期プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制などを行うための航空機位置測定システムとして、マルチラテレーションシステムが構築されている。マルチラテレーションシステムでは、航空機のトランスポンダから送信される信号(スキッタ信号)が4か所以上の受信局で受信されて、各受信時刻の差に基づいて同航空機の位置が測定される。
【0003】
図3は、この種の航空機位置測定システムの概略の構成及び同システムが用いられる環境を示す図である。
この航空機位置測定システムは、同図に示すように、受信局1,2,…,5と、データ処理部6とから構成されている。この航空機位置測定システムでは、受信局1,2,…,5は、それぞれ設置位置情報が確定し、航空機13のトランスポンダから送信される信号w1 ,w2 ,…,w5 を受信する。そして、データ処理部6により、各受信局1,2,…,5の設置位置情報及び同各受信局1,2,…,5で信号w1 ,w2 ,…,w5 をそれぞれ受信したときの受信時刻の差情報に基づいて、双曲線測位方式により、航空機13の飛行位置情報が求められる。飛行位置情報は、緯度、経度及び幾何学的高度からなっている。
【0004】
また、SSR装置(Secondary Surveillance Radar、二次監視レーダ)11により、図4(a)に示すように、航空機13の識別情報を要求するためのモードA信号(パルス間隔8μs)と同航空機13の高度情報を要求するためのモードC信号(パルス間隔21μs)とを含む質問信号waが同航空機13に向けて発信され、また、図4(b)に示すように、同質問信号waに対する同航空機13による応答信号wbが受信される。また、質問信号waに対する航空機13による応答は、上記信号w1 ,w2 ,…,w5 として受信局1,2,…,5で受信される。応答信号wbは、搬送波を1090MHzとする12ビットのパルス列で構成されている。これにより、最大識別数は4096であり、高度データは、100ft単位で高度−1000ftから126750ftまでコード化される。上記12ビットのパルス列は、パルスA1 (;1000),A2 (;2000),A4 (;4000),B1 (;100),B2 (;200),B4 (;400),C1 (;10),C2 (;20),C4
(;40),D1 (;1),D2 (;2),D4 (;4)から構成され、8進数に対応している。
【0005】
上記の航空機位置測定システムの他、この種の関連技術としては、たとえば、特許文献1に記載されたADS−B地上局がある。
このADS−B(Automatic Dependent Surveillance-Broadcast、放送型自動従属監視)地上局では、受信したADS−B信号に基づき、トラック情報を新たに作成した航空機に対して、このトラック情報の作成直後にDBC(Discrete Beacon Code、識別コード)を要求するモードS個別質問を行い、その応答信号を受信解読後、この新たに作成したトラック情報内とモードS個別応答内のそれぞれのDBC、及び距離情報が合致するか否かを判定する。そして、これらが合致した場合には、ADS−B信号を発した航空機とモードS個別質問に応答した航空機とが同一の航空機であるとしてこれを実ターゲットとして扱い、この新たに作成したトラック情報を継続して保持する。一方、これらが合致しない場合には誤ターゲットとし、この新たに作成したトラック情報を棄却して誤ターゲットの混在を減らす。
【0006】
また、特許文献2に記載された空港面監視装置では、マルチラテレーションは、空港に配置された複数の地上局により、目標が発信する信号を受信し、受信信号の到達時間差から目標の3次元位置情報を算出すると共に、目標の識別情報を得る。目標高度監視装置により、3次元位置情報に基づいて、目標が空港上空を低高度で飛行しているか、飛行せず空港面上に在るかの判定が行われる。統合処理装置により、当該判定結果に基づいて空港面探知レーダとマルチラテレーションが算出した目標の位置情報が統合処理され、得られた位置情報に対応する識別情報が付加される。表示装置により、統合された目標の位置情報と識別情報が、空港面を表す座標上に表示される。
【0007】
また、特許文献3に記載されたGPS(Global Positioning System )衛星システムを利用したセルラー電話の迅速かつ正確な地理的位置の特定では、ワイヤレス通信ネットワークが、各スポットビーム又はセル内のユーザ端末に、領域内で視認可能な衛星の全てのGPS−IDと、その視認可能な衛星に関するドップラー及び信号強度の予測値とを送信する。ユーザ端末は、GPS端末を備えており、同GPS衛星からC/Aコードを受信することができる。ユーザ端末は、送信されたGPS援助データを用いて全ての視認可能なGPS衛星のためにGPS−C/A信号を迅速に捕捉する。次に、ユーザ端末は、GPS−C/Aコード測定値をワイヤレスネットワークに戻し、その測定値が別のGPSデータと共に処理される。これにより、ユーザ端末において位置を特定するために必要な計算機能の全てを実行する必要がなくなる。
【0008】
また、非特許文献1では、基準局方式、単独GPS方式、及びGPSコモンビュー(Common View )方式について記載されている。
基準局方式では、既知の位置に設置した基準局が送信するスキッタを各受信局が検出し、マルチラテレーション測位の結果から時刻同期を図る。また、単独GPS方式では、受信局にGPS受信機を搭載して時刻同期を図る。
【0009】
また、図5は、GPSコモンビュー方式の評価用装置の構成を示すブロック図である。
この評価用装置20は、受信局21,22,23,24と、送信局25と、WAN(Wide Area Network 、広域ネットワーク)26と、処理装置27とから構成されている。処理装置27は統合装置28に接続され、同統合装置28には、表示装置29及びSSRモードS地上局30が接続されている。
【0010】
図6は、図5中の受信局21の構成を示すブロック図である。
この受信局21は、SSR空中線41と、受信部42と、デコード部43と、タイミング部44と、GPS受信機45と、インタフェース46と、電源部47とから構成されている。受信局21は、スキッタとSSR応答を受信し、信号検出時刻を測定すると共に信号内容をデコードして、これらの情報をターゲットレポートにまとめて処理装置27に出力する。信号検出のサンプリング周波数は、500MHzとされ、高い分解能(2ns)が期待できる。また、時刻同期には、GPSコモンビュー方式が採用されている。信号処理技術は、SSRモードS地上局と同じ方式が採用されている。SSRモードSでは、全ての航空機に対して24ビットからなる個別アドレスが付与され、航空機の識別能力が、モードAの4096に対して1600万以上に増大する。また、受信局22,23,24も、受信局21と同様に構成されている。
【0011】
送信局25は、測位や位置算出を補完するため、航空機に対してSSR質問を送信する。測位の補完では、送信局25は、信号干渉などによりスキッタを検出できなかった場合、航空機に質問してSSR応答を得て測位を実行する。また、位置算出の補完では、送信局25は、質問送信から応答受信までの時間を航空機までの距離に変換して、位置の算出に利用する。処理装置27は、各受信局21,22,23,24が出力したターゲットレポートを相関処理してMLAT(マルチラテレーション)測位、追尾処理、及び送信局への質問制御などを行う。この場合、処理装置27は、測位誤差の低減を図るため、測位解に対して追尾処理を行い、その平滑位置を測位結果とする。
【0012】
GPSコモンビュー方式では、各受信局21,22,23,24間で同時に同一のGPS衛星からの信号を受信することにより、GPS衛星がもつ時計の誤差が相殺され、高精度の時刻同期を図る。この場合、各受信局21,22,23,24に搭載されたGPS受信機45から衛星情報が転送されてコモンビュー処理が行われ、高い同期精度が達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−146450号公報
【特許文献2】特開2007−333427号公報
【特許文献3】特開平10−300835号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】宮崎裕己他、「広域マルチラテレーションの基礎実験結果」、電子航法研究所発表会予稿(第10回平成22年6月)、電子航法研究所発表会、平成22年6月、P.17-22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記関連技術では、次のような課題があった。
すなわち、図3の航空機位置測定システムでは、各受信局による時刻同期の精度によって航空機の位置測定の精度が決定されるが、簡易で高精度の時刻同期手段が確定していないので、位置測定の精度が不十分になるという課題がある。
【0016】
また、特許文献1に記載されたADS−B地上局では、装置規模の増大を抑えつつ、取得したADS−B監視情報の信頼性が向上するが、この発明とは構成や処理方法が異なる。
【0017】
特許文献2に記載された空港面監視装置では、空港面探知レーダによる空港面監視が、マルチラテレーションの情報を統合することで補間され、効率的で安全な空港管制が行われるが、この発明とは構成や処理方法が異なる。
【0018】
特許文献3に記載された地理的位置の特定では、ワイヤレス通信システムと関連するユーザの位置座標を決定するために用いられるGPS信号にアクセスするために必要な捕捉時間が減少するが、この発明とは構成や処理方法が異なる。
【0019】
また、非特許文献1に記載された基準局方式では、時刻同期が高精度には至らず、また、受信局が基準局の信号を受けるタイミングによって時刻同期を行う構成となっているので、基準局から見通しが得られる位置に各受信局を設置する必要があり、広域を対象としたマルチラテレーションに適用することが困難であるという課題がある。また、単独GPS方式では、時刻同期の精度が不十分になるという課題がある。また、GPSコモンビュー方式では、時刻同期が高精度で実現可能であるが、複雑なデータ処理が必要となり、簡易に実現することができないという課題がある。
【0020】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、広域を対象としたマルチラテレーションに適用でき、航空機の位置の測定精度が向上する航空機位置測定システム、該システムに用いられる時刻同期方法及び時刻同期プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、この発明の第1の構成は、設置位置情報が確定し、航空機から送信される信号を受信する所定数の受信局と、前記各受信局の前記設置位置情報及び前記各受信局での前記信号の受信時刻の差情報に基づいて、前記航空機の飛行位置情報を求める位置情報処理手段とを有する航空機位置測定システムに係り、前記各受信局は、衛星補強システムから送信される時刻情報を受信する時刻情報受信手段と、当該受信局で前記信号を受信したときの前記受信時刻を、前記時刻情報受信手段で受信された前記時刻情報に同期させる時刻同期手段とが設けられていることを特徴としている。
【0022】
この発明の第2の構成は、設置位置情報が確定し、航空機から送信される信号を受信する所定数の受信局と、前記各受信局の前記設置位置情報及び前記各受信局での前記信号の受信時刻の差情報に基づいて、前記航空機の飛行位置情報を求める位置情報処理手段とを有する航空機位置測定システムに用いられる時刻同期方法に係り、前記各受信局では、時刻情報受信手段が、衛星補強システムから送信される時刻情報を受信する時刻情報受信処理と、時刻同期手段が、当該受信局で前記信号を受信したときの前記受信時刻を、前記時刻情報受信手段で受信された前記時刻情報に同期させる時刻同期処理とを行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
この発明の構成によれば、簡単な構成で航空機の飛行位置情報が高精度で得られる航空機位置測定システムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の一実施形態である航空機位置測定システムの概略の構成及び同システムが用いられる環境を示す図である。
【図2】図1中の受信局51i 及びターゲット処理局60からなるマルチラテレーション地上局の構成を示すブロック図である。
【図3】航空機位置測定システムの概略の構成及び同システムが用いられる環境を示す図である。
【図4】質問信号及び応答信号を示す波形図である。
【図5】GPSコモンビュー方式の評価用装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図5中の受信局21の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上記衛星補強システムは、SBAS(Satellite Based Augmentation System 、衛星回線による広域補強システム)で構成され、上記各受信局の上記時刻情報受信手段(GPS補強システム受信機)は、上記SBASを構成する衛星から送信される上記時刻情報を受信する構成とされている航空機位置測定システムを実現する。
【0026】
また、上記衛星補強システムは、GBAS(Ground Based Augmentation System、地上補強型衛星航法システム)で構成され、上記各受信局の上記時刻情報受信手段(GPS補強システム受信機)は、上記GBASを構成する地上基準局から送信される上記時刻情報を受信する構成とされている。
【0027】
また、上記各受信局は、上記航空機から送信されるスキッタ信号を受信する構成とされている。また、上記航空機の識別情報を要求するためのモードA信号と該航空機の高度情報を要求するためのモードC信号とを含む質問信号(SSRモードA/C)を上記航空機に向けて発信する二次監視レーダが設けられ、上記各受信局は、上記二次監視レーダの上記質問信号に対応する上記航空機の応答信号を受信する構成とされている。また、上記二次監視レーダは、上記質問信号(SSRモードA/C)に、上記航空機に個別アドレスを付与するためのSSRモードS信号を含める構成とされている。
【実施形態】
【0028】
図1は、この発明の一実施形態である航空機位置測定システムの概略の構成及び同システムが用いられる環境を示す図である。
この形態の航空機位置測定システムは、同図に示すように、受信局511 ,512 ,…,51n と、ターゲット処理局60とを有し、天空にSBAS(Satellite Based Augmentation System 、衛星回線による広域補強システム)衛星70、及び、たとえばGPS衛星などのGNSS(Global Navigation Satellite System、全地球的航法衛星システム)衛星71が存在し、航空機72が飛行する環境で用いられる。これらのSBAS衛星70及びGNSS衛星71で衛星補強システムが構成されている。
【0029】
受信局511 ,512 ,…,51n (以下、「受信局51i 」ともいう)は、たとえば空港などの所定の場所にそれぞれ設置されて設置位置情報が確定し、航空機72のトランスポンダから送信される信号(たとえば、スキッタ信号)を受信する。ターゲット処理局60は、各受信局51i の設置位置情報及び各受信局51i での上記信号の受信時刻の差情報(時刻差)に基づいて、航空機72の飛行位置情報(緯度情報、経度情報及び幾何学的高度情報)を求める。特に、この実施形態では、上記各受信局51i は、衛星補強システムを構成する上記GNSS衛星71から送信される所定の精度を満たす時刻情報(GNSS信号)を受信し、上記スキッタ信号を受信したときの受信時刻を、受信された上記時刻情報に同期させる。また、上記ターゲット処理局60は、求めた上記飛行位置情報をSBAS衛星70へ送信し、同SBAS衛星70が、同飛行位置情報を補強メッセージとして航空機72へ送信する。
【0030】
図2は、図1中の受信局51i 及びターゲット処理局60からなるマルチラテレーション地上局の構成を示すブロック図である。
この受信局51i は、図2に示すように、GPS補強システム受信機52と、タイミング部53と、受信部54と、デコード部55と、データ処理部56と、インタフェース部57と、電源部58とから構成されている。GPS補強システム受信機52は、GPS空中線52aを有し、GNSS衛星71(送信衛星補強システム)から送信されるGPS補強システム信号wgの時刻情報を数nsの時刻精度で受信する。タイミング部53は、GPS補強システム受信機52のデータ(時刻情報tm)をデコードする。
【0031】
受信部54は、航空機72のトランスポンダから送信されるスキッタ信号sqを受信する。デコード部55は、受信部54で受信されたスキッタ信号sqをデコードすると共に、同スキッタ信号sqを受信したときの受信時刻を、タイミング部53でデコードされたデータ(すなわち、GPS補強システム受信機52から出力された時刻情報tm)に同期させる。データ処理部56は、デコード部55から出力されるデータ(時刻情報)をデータ伝送フォーマットに加工する。インタフェース部57は、データ処理部56で加工されたデータ(時刻情報)をターゲット処理局60に伝送する。このインタフェース部57としては、専用電話回線、衛星回線、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)、シリアル通信など、データ容量、伝送時間、費用、実現可能性などを考慮した通信手段が使用される。電源部58は、当該受信局51i の各部に必要な電源を供給する。
【0032】
ターゲット処理局60は、インタフェース部61と、ターゲット処理部62とから構成されている。インタフェース部61は、受信局51i のインタフェース部57からデータ(時刻情報)を受信する。ターゲット処理部62は、インタフェース部61で受信された各受信局51i のデータを統合してマルチラテレーション測位を行う。また、この航空機位置測定システムは、時刻同期プログラムに基づいて機能するコンピュータで構成されている。
【0033】
次に、この形態の航空機位置測定システムに用いられる時刻同期方法の処理内容について説明する。
この航空機位置測定システムでは、航空機72のトランスポンダから送信されるスキッタ信号sqが各受信局51i で受信され、ターゲット処理局60により、各受信局51i の設置位置情報及び同各受信局51i でのスキッタ信号sqの受信時刻の差情報(時刻差)に基づいて、航空機72の飛行位置情報(緯度情報、経度情報及び幾何学的高度情報)が求められる。この場合、各受信局51i では、時刻情報受信手段(GPS補強システム受信機52)により、衛星補強システム(SBAS)を構成するGNSS衛星71から送信される時刻情報が受信される(時刻情報受信処理)。時刻同期手段(タイミング部53、デコード部55)により、当該受信局51i で上記スキッタ信号sqを受信したときの受信時刻を、上記GPS補強システム受信機52で受信された上記時刻情報tmに同期させる(時刻同期処理)。
【0034】
すなわち、GPS補強システム受信機52により、GNSS衛星71から送信されるGPS補強システム信号wgの時刻情報tmが数nsの時刻精度で受信される。GPS補強システム信号wgは、GPS衛星の擬似距離、搬送波位相、エフェメリス情報、アルマナックである。また、衛星補強システムがSBASの場合、SBASメッセージ、SBAS衛星70の擬似距離、搬送波位相も、GPS補強システム信号wgに含まれる。なお、SBAS衛星70のエフェメリス、アルマナックは、SBASメッセージに含まれるのが一般的である。これらの信号を使用してGPS補強システムの時刻情報tmが出力される。この時刻情報tmがタイミング部53に取り込まれる。
【0035】
また、受信部54にて航空機72のスキッタ信号sqが受信され、デコード部55にて同スキッタ信号sqがデコードされる。デコードされた結果の中には、航空機72のアドレス情報が含まれる。デコード部55では、このアドレス情報に、タイミング部53で取り込まれた時刻情報tmを付与し、データ処理部56に送付する。データ処理部56では、ターゲット処理局60に送付するためのデータフォーマット処理が行われる。フォーマットされたデータは、インタフェース部57を経てターゲット処理局60に送付される。ターゲット処理局60では、各受信局51iからのデータが統合され、航空機72のマルチラテレーション測位が行われる。マルチラテレーション測位では、ターゲット処理部62により、各受信局51i の設置位置情報及び同各受信局51i で航空機72のスキッタ信号sqをそれぞれ受信したときの受信時刻の差情報に基づいて、双曲線測位方式により、同航空機72の飛行位置情報が求められる。飛行位置情報は、緯度、経度及び幾何学的高度からなっている。
【0036】
以上のように、この実施形態では、各受信局51i で、衛星補強システム(SBAS)を構成するGNSS衛星71から送信される高精度の時刻情報が受信され、当該受信局51i で、航空機72のスキッタ信号sqを受信したときの受信時刻を、受信した上記時刻情報に同期させ、ターゲット処理局60により、各受信局51i の設置位置情報、及び同各受信局51i における上記時刻情報tmに同期した上記スキッタ信号sqの受信時刻の差情報(時刻差)に基づいて、航空機72の飛行位置情報が求められるので、簡単な構成で飛行位置情報の精度が向上する。
【0037】
以上、この発明の実施形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成は同実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。
たとえば、図3中のSSR装置11と同様のSSR装置(二次監視レーダ)を設け、同SSR装置により、航空機の識別情報を要求するためのモードA信号と同航空機の高度情報を要求するためのモードC信号とを含む質問信号(SSRモードA/C)を同航空機に向けて発信し、各受信局51i が、SSR装置の上記質問信号に対応する上記航空機の応答信号を受信するようにしても良い(請求項5、11に対応)。また、SSR装置は、上記質問信号(SSRモードA/C)に、航空機に個別アドレスを付与するためのSSRモードS信号を含めるようにしても良い(請求項6、12に対応)。
【0038】
また、衛星補強システムは、SBASに限らず、GBAS(Ground Based Augmentation System、地上補強型衛星航法システム)で構成されていても良い。この場合、各受信局51i の時刻情報受信手段(GPS補強システム受信機52)は、GBASを構成する地上基準局から送信される所定の精度を満たす時刻情報を受信する(請求項3、9に対応)。なお、GBASとは、地上局を使用したGNSS航法補強システムであり、SBASよりも飛行位置情報の精度が高いが、サービスは、地上局の電波の届く範囲に限られる。
【0039】
受信局51i の数は3以上が一般的であるが、更に受信局51i を追加することにより、飛行位置情報の精度が向上する。この場合、受信局51i が多いほど、精度の良い測位が実行できるが、費用もかかるため、要求される飛行位置情報の精度と費用とのバランスがとれるように局数を決定することが一般的である。また、図2中のインタフェース部61は、インタフェース部57と対向する通信手段となるが、1対多数の接続が可能な通信手段であれば、1つであり、1対1の通信のみ可能な手段であれば、受信局51i の同数だけ必要となる。また、衛星補強システムに、たとえば、ヨーロッパの「Galileo」や、日本の「準天頂衛星」が含まれていても良い。
【0040】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限定されない。
【0041】
(付記1)
設置位置情報が確定し、航空機から送信される信号を受信する所定数の受信局と、
前記各受信局の前記設置位置情報及び前記各受信局での前記信号の受信時刻の差情報に基づいて、前記航空機の飛行位置情報を求める位置情報処理手段とを有する航空機位置測定システムであって、
前記各受信局は、
衛星補強システムから送信される時刻情報を受信する時刻情報受信手段と、
当該受信局で前記信号を受信したときの前記受信時刻を、前記時刻情報受信手段で受信された前記時刻情報に同期させる時刻同期手段とが設けられている航空機位置測定システム。
【0042】
(付記2)
前記衛星補強システムは、
SBAS(Satellite Based Augmentation System 、衛星回線による広域補強システム)で構成され、
前記各受信局の前記時刻情報受信手段は、
前記SBASを構成する衛星から送信される前記時刻情報を受信する構成とされている付記1記載の航空機位置測定システム。
【0043】
(付記3)
前記衛星補強システムは、
GBAS(Ground Based Augmentation System、地上補強型衛星航法システム)で構成され、
前記各受信局の前記時刻情報受信手段は、
前記GBASを構成する地上基準局から送信される前記時刻情報を受信する構成とされている付記1記載の航空機位置測定システム。
【0044】
(付記4)
前記各受信局は、
前記航空機から送信されるスキッタ信号を受信する構成とされている付記1、2又は3記載の航空機位置測定システム。
【0045】
(付記5)
前記航空機の識別情報を要求するためのモードA信号と該航空機の高度情報を要求するためのモードC信号とを含む質問信号を前記航空機に向けて発信する二次監視レーダが設けられ、
前記各受信局は、
前記二次監視レーダの前記質問信号に対応する前記航空機の応答信号を受信する構成とされている付記1、2、3又は4記載の航空機位置測定システム。
【0046】
(付記6)
前記二次監視レーダは、
前記質問信号に、前記航空機に個別アドレスを付与するためのSSRモードS信号を含める構成とされている付記5記載の航空機位置測定システム。
【0047】
(付記7)
設置位置情報が確定し、航空機から送信される信号を受信する所定数の受信局と、
前記各受信局の前記設置位置情報及び前記各受信局での前記信号の受信時刻の差情報に基づいて、前記航空機の飛行位置情報を求める位置情報処理手段とを有する航空機位置測定システムに用いられる時刻同期方法であって、
前記各受信局では、
時刻情報受信手段が、衛星補強システムから送信される時刻情報を受信する時刻情報受信処理と、
時刻同期手段が、当該受信局で前記信号を受信したときの前記受信時刻を、前記時刻情報受信手段で受信された前記時刻情報に同期させる時刻同期処理とを行う時刻同期方法。
【0048】
(付記8)
前記衛星補強システムは、SBAS(Satellite Based Augmentation System 、衛星回線による広域補強システム)で構成され、
前記各受信局の前記時刻情報受信手段が、前記SBASを構成する衛星から送信される前記時刻情報を受信する付記7記載の時刻同期方法。
【0049】
(付記9)
前記衛星補強システムは、GBAS(Ground Based Augmentation System、地上補強型衛星航法システム)で構成され、
前記各受信局の前記時刻情報受信手段が、前記GBASを構成する地上基準局から送信される前記時刻情報を受信する付記7記載の時刻同期方法。
【0050】
(付記10)
前記各受信局が、前記航空機から送信されるスキッタ信号を受信する付記7、8又は9記載の時刻同期方法。
【0051】
(付記11)
前記航空機の識別情報を要求するためのモードA信号と該航空機の高度情報を要求するためのモードC信号とを含む質問信号を前記航空機に向けて発信する二次監視レーダが設けられ、
前記各受信局が、前記二次監視レーダの前記質問信号に対応する前記航空機の応答信号を受信する付記7、8、9又は10記載の時刻同期方法。
【0052】
(付記12)
前記二次監視レーダが、前記質問信号に、前記航空機に個別アドレスを付与するためのSSRモードS信号を含める付記11記載の時刻同期方法。
【0053】
(付記13)
コンピュータを、付記1乃至6のいずれか一に記載の航空機位置測定システムとして機能させる時刻同期プログラム。
【産業上の利用可能性】
【0054】
この発明は、航空機位置測定システム全般に適用でき、特に航空機の位置を高精度で測定する必要がある場合に有効である。
【符号の説明】
【0055】
511 ,512 ,…,51n 受信局
52 GPS補強システム受信機(時刻情報受信手段)
53 タイミング部(受信局の一部)
54 受信部(受信局の一部)
55 デコード部(時刻同期手段、受信局の一部)
56 データ処理部(受信局の一部)
57 インタフェース部(受信局の一部)
58 電源部(受信局の一部)
60 ターゲット処理局(位置情報処理手段)
61 インタフェース部(位置情報処理手段の一部)
62 ターゲット処理部(位置情報処理手段の一部)
70 SBAS(Satellite Based Augmentation System )衛星(衛星補強システムの一部)
71 GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星(衛星補強システムの一部)
72 航空機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置位置情報が確定し、航空機から送信される信号を受信する所定数の受信局と、
前記各受信局の前記設置位置情報及び前記各受信局での前記信号の受信時刻の差情報に基づいて、前記航空機の飛行位置情報を求める位置情報処理手段とを有する航空機位置測定システムであって、
前記各受信局は、
衛星補強システムから送信される時刻情報を受信する時刻情報受信手段と、
当該受信局で前記信号を受信したときの前記受信時刻を、前記時刻情報受信手段で受信された前記時刻情報に同期させる時刻同期手段とが設けられていることを特徴とする航空機位置測定システム。
【請求項2】
前記衛星補強システムは、
SBAS(Satellite Based Augmentation System 、衛星回線による広域補強システム)で構成され、
前記各受信局の前記時刻情報受信手段は、
前記SBASを構成する衛星から送信される前記時刻情報を受信する構成とされていることを特徴とする請求項1記載の航空機位置測定システム。
【請求項3】
前記衛星補強システムは、
GBAS(Ground Based Augmentation System)で構成され、
前記各受信局の前記時刻情報受信手段は、
前記GBASを構成する地上基準局から送信される前記時刻情報を受信する構成とされていることを特徴とする請求項1記載の航空機位置測定システム。
【請求項4】
前記各受信局は、
前記航空機から送信されるスキッタ信号を受信する構成とされていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の航空機位置測定システム。
【請求項5】
前記航空機の識別情報を要求するためのモードA信号と該航空機の高度情報を要求するためのモードC信号とを含む質問信号を前記航空機に向けて発信する二次監視レーダが設けられ、
前記各受信局は、
前記二次監視レーダの前記質問信号に対応する前記航空機の応答信号を受信する構成とされていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の航空機位置測定システム。
【請求項6】
前記二次監視レーダは、
前記質問信号に、前記航空機に個別アドレスを付与するためのSSRモードS信号を含める構成とされていることを特徴とする請求項5記載の航空機位置測定システム。
【請求項7】
設置位置情報が確定し、航空機から送信される信号を受信する所定数の受信局と、
前記各受信局の前記設置位置情報及び前記各受信局での前記信号の受信時刻の差情報に基づいて、前記航空機の飛行位置情報を求める位置情報処理手段とを有する航空機位置測定システムに用いられる時刻同期方法であって、
前記各受信局では、
時刻情報受信手段が、衛星補強システムから送信される時刻情報を受信する時刻情報受信処理と、
時刻同期手段が、当該受信局で前記信号を受信したときの前記受信時刻を、前記時刻情報受信手段で受信された前記時刻情報に同期させる時刻同期処理とを行うことを特徴とする時刻同期方法。
【請求項8】
前記衛星補強システムは、SBAS(Satellite Based Augmentation System )で構成され、
前記各受信局の前記時刻情報受信手段が、前記SBASを構成する衛星から送信される前記時刻情報を受信することを特徴とする請求項7記載の時刻同期方法。
【請求項9】
前記衛星補強システムは、GBAS(Ground Based Augmentation System)で構成され、
前記各受信局の前記時刻情報受信手段が、前記GBASを構成する地上基準局から送信される前記時刻情報を受信することを特徴とする請求項7記載の時刻同期方法。
【請求項10】
前記各受信局が、前記航空機から送信されるスキッタ信号を受信することを特徴とする請求項7、8又は9記載の時刻同期方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−122775(P2012−122775A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272033(P2010−272033)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】