説明

航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置

【課題】航空機に搭載して高空の大気を自動的に採取する装置を提供する。
【解決手段】航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置10は、フレーム100を有し、フレーム100内に片側3基づつ、合計6基のフラスコ110が装備される。フレーム100の上部には、大気を導入するパイプの継手120等がとりつけられ、導入された大気は、各フラスコ110へ送り込まれる。フレーム100の側面には制御ユニット200が設けられ、予め設定されたプログラムに基いて、弁等の開閉を行い、各フラスコ110が大気を採取する位置やタイミング等を制御する。制御ユニット200は、ARINCコンバータ300を介して機体側のARINCバスに接続され、採取地の緯度、経度、高度を記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機に搭載して高空の大気を自動的に収集する航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の悪化を防止するために、国際的な環境保全の必要性が高まっている。特に、大気中に放出される二酸化炭素は、地球温暖化の原因物質としてその削減が急務となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
大気中の成分等の観測は、各地の測候所で気球等を用いて行われている。しかしながら、地球的な大規模な観測は、長時間高々度を飛行する国際線の旅客機等により長期間にわたって行われることが望ましい。
本発明の目的は、大型の航空機に搭載して高空の大気を自動的に採取するとともに、採取位置や高度等の情報を同時に記憶できる航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置は、フレームと、フレームに装備される複数本のフラスコと、フラスコに対して加圧された外気を充填する弁と、弁の開閉を指示する制御ユニットを備え、制御ユニットは予めプログラムされたタイミングで各フラスコへ大気を採取する機能と、採取を実行した際の航空機の緯度、経度、高度のデータを航空機のARINCバスから受けて記憶する機能を備えるものである。
そして、航空機にとり込まれた大気を加圧するポンプと、加圧された大気の供給ライン及び排出ラインと、供給ラインと排出ラインを開閉するソレノイドバルブと、各フラスコと供給ライン及び排出ラインの間に設けられるソレノイドバルブと、供給ラインの圧力を検知する1基の圧力センサーを備え、制御ユニットは、ラインのパージとラインのパージに続いて各フラスコのパージと大気の充填を行うものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置によれば、高空の大気を自動的に採取し、採取位置のデータを同時に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、本発明の航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置を搭載する航空機の概要を示し、図2は図1のA部の断面を示す。
航空機の機体1の床部材2の下部には、収納スペース3が用意されており、例えば、機内で使用される真水用のタンク5等が装備される。
【0007】
本発明の航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置10は、この収納スペース3の空間を利用して搭載される。搭載に際しては、既存の機器等の干渉を避け、機体構造に影響を与えないように、適宜の取付部材を用意して床部材2に吊り下げる構造で搭載する。
航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置10を搭載する機種は複数にまたがるので、各機種に適した位置に搭載する。
【0008】
図3は、本発明の航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置10の構成を示す斜視図である。
全体を符号10で示す航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置は、フレーム100を有し、フレーム100内に片側3基づつ、合計6基のフラスコ110が装備される。フレーム100の上部には、大気を導入するパイプの継手120等がとりつけられ、導入された大気は、フィルタ122、圧力センサー124等を通って、各フラスコ110へ送り込まれる。
機体に導入される大気は、エンジンで加圧された外気が供給されるエアダクトから採取され、図示しないエアポンプで加圧された後に航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置10に送られる。
【0009】
フレーム100の側面には制御ユニット200が設けられ、入出力ボード220、制御ボード230、電源ボード210等がとりつけられる。ボードには、ノイズフィルタ240も搭載される。
【0010】
制御ユニット200は予め設定されたプログラムに基いて、弁等の開閉を行い、各フラスコ110が大気を採取する位置やタイミング等を制御する。
導入された大気のうち、フラスコに充填される以外のものは、レストリクタ132やレリーフ弁130によって、排出される。
【0011】
制御ユニット200は、ARINCコンバータ300を介して機体側のARINCバスに接続される。ARINCバスには機体の現在の緯度、経度、高度、対地速度等のデータが供給されており、このデータを航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置10に取り込むことによって特定のフラスコ110に採取された大気の位置や高度を自動的に記録することができる。ARINCコンバータ300はEMIフィルタ310を介してバスに接続され、電磁波の混入及び放出が防止される。
観測にあたっては、航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置10を2台並べて搭載し、12基のフラスコでサンプルを採取する。
【0012】
図4は、2台の航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置10A,10Bの配管とバルブ等の配置を示す説明図である。
航空機内にとり込まれた大気は、ポンプPにより加圧され、ソレノイドバルブVを介して第1の航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置10AのラインLに送られる。
【0013】
本装置にあっては、1基の圧力センサーSのみにより圧力制御が達成される。
第1の航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置10Aは6基のフラスコC,C,C,C,C,Cを備え第1のフラスコCは、ソレノイドバルブVを介してサンプル大気の供給側のラインLに連結され、ソレノイドバルブVを介して排出側のラインLに連結される。
他のフラスコも同様にソレノイドバルブを介してラインLとラインLに連結される。
【0014】
第2の航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置10Bも6基のフラスコC,C,C,C10,C11,C12を備える。各フラスコは、ソレノイドバルブを介して供給側のラインL11と排出側のラインL12に連結される。
【0015】
図5は、この航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置のサンプルリング大気の採取工程を示す説明図である。図の左側は、横軸にソレノイドバルブV〜V33の開閉を示し、たて軸に工程の内容を示す。
図の右側は、圧力センサーPにより制御されるフラスコ内の圧力を示す。
【0016】
図において、左欄に示す工程1.1では、ソレノイドバルブV,V,Vが開となる。この操作により、ラインLが開放され、パージ(換気,清掃)が行われる。同時に、ソレノイドバルブV18,V19も開き、第2の航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置10BのラインL11もパージされる。
【0017】
工程1.2では、ソレノイドバルブVが閉となり、ソレノイドバルブV,Vが開となる。同時に、ソレノイドバルブV16,V17も開となり、排出側のラインLも開放される。この操作により、第1のフラスコCがパージされる。
【0018】
工程1.3では、第1のフラスコC内へのサンプリング大気の充填が行われる。第1のフラスコCに充填されるサンプリング大気の圧力は、図の右側のグラフに示すように上昇する。圧力の上限値である40.6psiに達する以前の圧力を圧力センサーSが検知して、ソレノイドバルブV,Vを閉じる。
この圧力の上限値40.6psiは、米国の運輸省(Department of Transportation,DOP)が規定する高圧ガスに該当しない圧力値として設定される。
【0019】
工程2.1では、ソレノイドバルブV,V,VとV18,V19が開となり、供給ラインのパージが行われる。
工程2.2では、第2のフラスコCのパージが行われ、工程2.3では、第2のフラスコCのサンプリング大気の充填が行われる。
【0020】
以下、同様の工程をくり返して、12基のフラスコへのサンプリング大気の採取が行われて、各フラスコへのサンプリング大気の採取の完了時の日付,時刻,緯度,経度,高度,大気温などが記録される。
また、ARINCのデータが受信できないことを想定して、予め設定したタイマーの制御によって、各フラスコにサンプリング大気を採取することもできる。
【0021】
本発明にあっては、1基の圧力センサーSのみで全ての圧力制御を行うことができるので、軽量化が必要な航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置として最適な構成を提供することができる。
基地に戻った航空機から航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置10は取り外され、検査機関へ運ばれる。検査機関では、各フラスコ110のソレノイドバルブ140を開いて採取された大気を検査装置に取り入れて、分析を行う。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置を搭載する航空機の概要を示す説明図。
【図2】図1のA部の断面図。
【図3】本発明の航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置の構成を示す斜視図。
【図4】本発明の航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置の配管構造を示す説明図。
【図5】各ソレノイドバルブの開閉タイミングを示す説明図。
【符号の説明】
【0023】
1 航空機
10 航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置
100 フレーム
110 フラスコ
200 制御ユニット
230 制御ボード
300 ARINCコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の収納スペース内に着脱自在に搭載される航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置であって、
フレームと、フレームに装備される複数本のフラスコと、フラスコに対して加圧された外気を充填する弁と、弁の開閉を指示する制御ユニットを備え、
制御ユニットは予めプログラムされたタイミングで各フラスコへ大気を採取する機能と、採取を実行した際の航空機の緯度、経度、高度のデータを航空機のARINCバスから受けて記憶する機能を備えることを特徴とする航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置。
【請求項2】
航空機にとり込まれた大気を加圧するポンプと、加圧された大気の供給ライン及び排出ラインと、供給ラインと排出ラインを開閉するソレノイドバルブと、各フラスコと供給ライン及び排出ラインの間に設けられるソレノイドバルブと、供給ラインの圧力を検知する1基の圧力センサーを備え、
制御ユニットは、ラインのパージとラインのパージに続いて各フラスコのパージと大気の充填を行うことを特徴とする請求項1記載の航空機搭載型大気自動フラスコサンプリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−92631(P2009−92631A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266387(P2007−266387)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(501273886)独立行政法人国立環境研究所 (30)
【出願人】(592175704)気象庁長官 (7)
【出願人】(000132013)株式会社ジャムコ (53)
【Fターム(参考)】