説明

航空管制レーダ及びスキッタの識別方法

【課題】航空機から受信するショートスキッタとロングスキッタを識別し、航空機の捕捉に有効に利用する。
【解決手段】受信信号が、質問信号に対する応答信号であるか否かを判定する応答判定手段132aと、応答判定手段によって受信信号が応答信号でないと判定された場合、当該受信信号がスキッタとして定められる規定のフォーマットに適合するか否かの信頼性を判定し、当該信頼性の判定を利用してショートスキッタ又はロングスキッタのいずれであるかを識別するDF部にエラーがあるか否かを判定するDF部信頼性判定手段132cと、DF部信頼性判定手段によって受信信号が規定のフォーマットに適合するが、DF部にエラーがあると判定された場合、当該受信信号のデータ長に応じてショートスキッタ及びロングスキッタを抽出する抽出手段132eとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機から受信するショートスキッタとロングスキッタを識別する航空管制レーダ及びスキッタの識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行中の航空機は、地上局の航空管制レーダで監視されている。図3に示すように、航空管制レーダであるモードS二次監視レーダ(SSRモードS:Secondary Surveillance Radar Mode S)1aは、航空機(図示せず)に搭載されているトランスポンダ2(2a,2b)に質問を送信する。その後、モードS二次監視レーダ1aは、トランスポンダ2から送信される応答を受信すると、この応答を解析して航空機を監視している(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
トランスポンダ2には、処理や送受信する信号の異なるモードSトランスポンダ2aとATCRBSトランスポンダ2bとがある。モードS二次監視レーダ1aは、このモードSトランスポンダ2aを備える航空機(モードS機)と、ATCRBSトランスポンダ2bを備える航空機(ATCRBS機)を確実に捕捉するため、「オールコール期間」と「ロールコール期間」を設定し、各期間で異なる処理を実行している。
【0004】
具体的には、モードS二次監視レーダ1aは、オールコール期間には、モードS機を捕捉するためにモードS一括質問を送信する。また、モードS二次監視レーダ1aは、モードS機から送信されたモードS応答を受信し、モードS機を捕捉する。その後のロールコール期間には、モードS二次監視レーダ1aは、オールコール期間で捕捉したモードS機との間でモードS個別質問の送信及びモードS応答の受信を行うことで、このモードS機の捕捉を継続する。
【0005】
また、モードS二次監視レーダ1aは、オールコール期間には、ATCRBS機を捕捉するためにATCRBS一括質問を送信する。また、モードS二次監視レーダ1aは、ATCRBS機から送信されたATCRBS応答を受信し、ATCRBS機を捕捉する。
【0006】
モードS二次監視レーダ1aは、送信した質問に対応する応答の他にも様々な信号を受信する。したがって、モードS二次監視レーダ1aは、マルチサイト環境下におけるフルーツ(他サイトからの質問に対する応答による誤検出)の誤検出や、航空機に備えられる航空機衝突防止装置(ACAS)から送信されるスキッタの誤検出を防止するため、受信した信号のうち、自サイトから送信した質問信号に対する応答信号(自サイトID=PIフィールド)のみを選択して航空機の監視に利用している。
【0007】
しかしながら、現状のモードS二次監視レーダ1aでは、オールコール期間においてモードSトランスポンダ2aから送信されるモードS応答が、ATCRBS応答、フルーツ、スキッタ、フォールス等の信号と重なり、認識できない場合がある。また、地上局と航空機の位置関係を原因として、トランスポンダ2での質問の未受信又は応答抜けやモードS二次監視レーダ1aでの応答の未受信等が生じた場合がある。このような場合、モードS二次監視レーダ1aは、オールコール期間でモードS機を捕捉するまでモードS機を検出することができない。
【0008】
ところで、航空機衝突防止装置(図示せず)を搭載する航空機は、モードS二次監視レーダ1aからの質問に関係なく、定期的にスキッタを送信している。スキッタは、自機の存在を他の航空機通知する信号であり、航空機衝突防止装置を備える航空機は、他の航空機から送信されたスキッタを受信すると、受信するスキッタを利用して他の航空機との衝突防止に利用している。
【0009】
モードS二次監視レーダ1aにおいても航空機衝突防止装置から送信されるスキッタを受信しているが、質問信号に対する応答信号ではない(自サイトID≠PIフィールド)ため、通常はスキッタを使用せずに破棄している。一方、スキッタは、モードSアドレスを含んでおり、モードS二次監視レーダ1aがこのスキッタを利用することができれば、オールコール期間に捕捉できないモードS機の監視が可能になると考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
スキッタは、図4に示すように、「プリアンブル」と「データブロック」とで構成されているが、データのビット数が異なる「ショートスキッタ」と「ロングスキッタ」がある。
【0011】
図5(a)に示すように、ショートスキッタのデータブロックは、モードS専用一括質問と同一フォーマットであり、ショートスキッタであることを識別する「DF」部(5ビット)、トランスポンダの能力を表わす「CA」部(3ビット)、トランスポンダに対応するモードSアドレスである「AA」部(24ビット)、パリティに関する「PI」部(24ビット)を有する56ビットのデータである。
【0012】
また、図5(b)に示すように、ロングスキッタは、拡張スキッタであって、ロングスキッタであることを識別する「DF」部(5ビット)、トランスポンダの能力を表わす「CA」部(3ビット)、トランスポンダに対応するモードSアドレスである「AA」部(24ビット)、パリティに関する「PI」部(24ビット)の他、自機位置等の情報である「ME」部(56ビット)を有する112ビットのデータである。
【0013】
スキッタの受信側では、受信した信号のDF部がショートスキッタに関する値(01011)である場合にはショートスキッタと判定し、DF部がロングスキッタに関する値(10001、10010、10011)である場合にはロングスキッタと判定する。
【0014】
図6に示すように、一般的なモードS二次監視レーダ1aは、送受信部12において信号の送受信を切り替える送受切替器121、信号を送信する送信器122及び信号を受信する受信器123を備えている。また、信号処理部13において、信号の送信を制御する送信制御部131、モードS機から受信する信号を処理するモードS応答処理部137、ATCRBS機から受信する信号を処理するATCRBS応答処理部133、受信した信号に基づいてターゲットレポートを生成して航空機の飛行を監視する監視処理部135、オールコール期間及びロールコール期間を管理するチャネル管理部134及びアンテナ1の走査のタイミング信号を発生するタイミング信号発生部136を備えている。
【0015】
モードS二次監視レーダ1aが受信するスキッタを利用するためには、例えば、図6に示すように、モードS応答処理部137は、送信制御部131で送信した質問に対して受信したモードS応答を処理する応答処理手段137bの他、受信した信号がモードS応答であるかスキッタであるかを判定する応答判定手段137aと、スキッタがショートスキッタであるかロングスキッタであるかを識別する識別手段137cと、ショートスキッタのエラー訂正を実行する第1訂正手段137dと、ロングスキッタのエラー訂正を実行する第2訂正手段137eと、スキッタを航空機の捕捉のために処理するスキッタ処理手段137fとを備えることが必要と考えられる。
【0016】
この場合、図7に示すフローチャートにあるように、受信器123が信号を受信すると(S01)、応答判定手段137aはPIフィールドが自サイトIDと一致するか否かを判定する(S02)。PIフィールドと自サイトIDが一致しない場合(ステップS02でYes)、識別手段137cは、受信した信号はスキッタであるとして信号のDF部を参照し、ショートスキッタであるか否かを判定する(S03)。
【0017】
ショートスキッタである場合(S03でYes)、第1訂正手段137dは、受信した信号をショートスキッタとしてエラーの判定をし、エラーが存在する場合には、エラーを訂正し、(S04)、訂正の結果、信号に含まれる全てのエラーが訂正されたか否かを判定する(S06)。
【0018】
一方、ショートスキッタでない場合(S03でNo)、第2訂正手段137eは、受信した信号をロングスキッタとしてエラーの判定をし、エラーを訂正し(S05)、訂正の結果、信号に含まれる全てのエラーが訂正されたか否かを判定する(S06)。
【0019】
スキッタ処理手段137fは、訂正手段137d,137eで全てのエラーが訂正されたと判定された信号を(S06でNo)、有効なスキッタとして処理する(S07)。
【0020】
一方、訂正手段137d,137eは、エラーがあると判定した信号を(S06でYes)、無効なスキッタとして破棄する(S08)。仮に、ステップS01で受信した信号が質問に対する応答でスキッタではないとき、ステップS06においてエラーがあると判定されて、ステップS08において破棄される。
【0021】
また、ステップS02の判定において応答判定手段137aによって、PIフィールドが自サイトIDと一致する場合(ステップS02でNo)、応答処理手段137bは、信号を質問に対する応答として処理する(S09)。
【0022】
その後、モードS二次監視レーダ1aでは、終了の操作があるまで、ステップS01〜S09の処理を繰り返す(S10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2008−175784号公報
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Michael C. Stevens “Secondary Surveillance Radar” 1998, ISBN 0-89006-292-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
モードS二次監視レーダ1aにおいて、図7を用いて上述した処理を採用した場合、ステップS03において信号のDF部を利用してショートスキッタであるかロングスキッタであるかを判定しているが、DF部にエラーが発生していた場合には、正しく判定することができず、受信する全てのスキッタを有効に利用できないおそれがある。
【0026】
従って本発明は、航空機から受信するショートスキッタとロングスキッタを識別し、航空機の捕捉に有効に利用するモードS二次監視レーダ及びスキッタの識別方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の特徴に係る航空管制レーダは、航空機から送信される応答信号を受信すると、当該応答信号を利用して航空機の飛行を監視する航空管制レーダであって、受信信号が、質問信号に対する応答信号であるか否かを判定する応答判定手段と、応答判定手段によって受信信号が応答信号でないと判定された場合、当該受信信号がスキッタとして定められる規定のフォーマットに適合するか否かの信頼性を判定し、当該信頼性の判定結果を利用してショートスキッタ又はロングスキッタのいずれであるかを識別するDF部にエラーがあるか否かを判定するDF部信頼性判定手段と、DF部信頼性判定手段によって受信信号が規定のフォーマットに適合するが、DF部にエラーがあると判定された場合、当該受信信号のデータ長に応じてショートスキッタ及びロングスキッタを抽出する抽出手段とを備え、受信したショートスキッタ及びロングスキッタを利用して航空機の捕捉を実行する。
【0028】
また、本発明の特徴に係るスキッタの識別方法は、航空機から送信される応答信号を受信すると、当該応答信号を利用して航空機の飛行を監視する航空管制レーダにおいて、受信するスキッタの種類を識別するスキッタの識別方法であって、信号を受信するステップと、受信信号が質問信号に対する応答信号であるか否かを判定するステップと、応答信号でないと判定された受信信号が、スキッタとして定められる規定のフォーマットに適合し、かつショートスキッタ又はロングスキッタのいずれであるかを識別するDF部にエラーがあるか否かを判定するステップと、規定のフォーマットに適合し、かつDF部にエラーがあると判定された受信信号から、信号のデータ長に応じてショートスキッタ及びロングスキッタを抽出するステップとを備えている。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、航空機から受信するスキッタを、ショートスキッタとロングスキッタとに識別し、航空機の捕捉に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダの構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】図1のモードS二次監視レーダで実行される処理の一例を説明するフローチャートである。
【図3】一般的なモードS二次監視レーダとトランスポンダを表わす概略図である。
【図4】スキッタのフォーマットを説明する図である。
【図5】スキッタのデータブロックのフォーマットを説明する図である。
【図6】従来のモードS二次監視レーダの構成を説明する機能ブロック図である。
【図7】従来のモードS二次監視レーダで実行される処理の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1を用いて本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダ1について説明する。モードS二次監視レーダ1は、図3を用いて上述したモードS二次監視レーダ1aと同様に、地上局に設置されており、航空機に備えられるトランスポンダ2との質問応答に基づいて航空機を監視する。以下の説明において、従来と同一の構成については、上述の説明と同一の符号を付して説明を省略する。
【0032】
図1に示すように、本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダ1は、アンテナ11と、アンテナ11を介して信号を送受信する送受信部12と、送受信部12に接続され、質問応答を制御するとともに受信する応答Aに基づいてターゲットレポートを生成して出力する信号処理部13とを備えている。
【0033】
送受信部12は、送受切替器121、送信器122及び受信器123を備え、アンテナ11を介して質問を送信するとともに、アンテナ11で受信する応答を信号処理部13に出力している。
【0034】
また、信号処理部13は、質問の送信制御を制御する送信制御部131、受信したモードS応答を処理するモードS応答処理部132、受信したATCRBS応答を処理するATCRBS応答処理部133、オールコール期間及びロールコール期間をスケジューリングするチャネル管理部134、応答に応じてターゲットレポートを生成する監視処理部135、アンテナ1の走査のタイミング信号を発生するタイミング信号発生部136を備えている。
【0035】
すなわち、信号処理部13は、図6に示す信号処理部13aと比較すると、モードS応答処理部137に代えて、モードS応答処理部132を備えている点で異なる。モードS応答処理部132は、図1に示すように、応答判定手段132a、応答処理手段132b、DF部信頼性判定手段132c、識別手段132d、抽出手段132e、第1訂正手段132f、第2訂正手段132g及びスキッタ処理手段132hを有している。
【0036】
応答判定手段132aは、受信した信号のPIフィールドが自サイトIDと一致するか否かによって、受信した信号が質問に対する応答であるか又はスキッタであるかを判定し、質問に対する応答であるときには、応答処理手段132bに出力する。すなわち、応答判定手段132aは、信号のPIフィールドと自サイトIDとが一致する信号を、モードS二次監視レーダ1が送信した質問に対してトランスポンダ2から送信された応答であると判定する。
【0037】
また、応答判定手段132aは、信号のPIフィールドと自サイトIDとが一致しない信号を航空機から送信されたスキッタであると判定し、DF部信頼性判定手段132cに出力する。すなわち、応答判定手段132aは、応答以外の信号を全てスキッタと判定する。
【0038】
DF部信頼性判定手段132cは、応答判定手段132aでスキッタと判定された信号のフォーマットがスキッタとして定められているフォーマットに適合するか否かを判定することにより、信号の信頼性(エラーが存在するか否か)を判定する。具体的には、DF部信頼性判定手段132cは、信号のパルス間隔が、スキッタに定められる規定のパルス間隔であるか否かを判定し、DF部にエラーがあるか否かによって信号の信頼性を判定する。
【0039】
DF部信頼性判定手段132cは、規定のフォーマットであって、DF部にエラーのない信号を有効なスキッタとして識別手段132dに出力する。一方、DF部信頼性判定手段132cは、信号のパルス間隔が既定のパルス間隔でない信号が、DF部にエラーがある信号を抽出手段132eに出力する。すなわち、DF部信頼性判定手段132cは、DF部にエラーが発生しておらず、DF部からスキッタの種別を判定することのできる信号のみを識別手段132dに出力し、スキッタとして定められる規定のパルス間隔ではあるが、DF部にエラーが発生している信号は抽出手段132eに出力する。なお、DF部信頼性判定手段132cは、スキッタとして定められる規定のパルス間隔ではない信号をスキッタではないとして破棄する。
【0040】
識別手段132dは、DF部信頼性判定手段132cにおいて、DF部の信頼性があると判定された信号のDF部を参照し、ショートスキッタ又はロングスキッタのいずれであるかを識別する。また、識別手段132dは、ショートスキッタと識別した信号を第1訂正手段132fに出力し、ロングスキッタと識別した信号を第2訂正手段132gに出力する。
【0041】
抽出手段132eは、応答判定手段132aでスキッタと判定されたとともに、DF部信頼性判定手段132cでDF部の信頼性がないと判定された信号が、112ビットの範囲で信頼性があるか否かを判定し、112ビットの範囲で信頼性があると判定された場合、この信号をロングスキッタとして抽出する。また、抽出手段132eは、112ビットの範囲で信頼性がないと判定された場合、この信号が56ビットの範囲で信頼性があるか否かを判定し、56ビットの範囲で信頼性があると判定された場合、この信号をショートスキッタとして抽出する。さらに、抽出手段132eは、ロングスキッタを第2訂正手段132gに出力し、ショートスキッタを第1訂正手段132fに出力する。
【0042】
また、抽出手段132eは、112ビットの範囲でも56ビットの範囲でも信頼性がないと判定された信号を無効な信号として破棄する。すなわち、応答判定手段132aではスキッタと判定された信号であっても、抽出手段132eによってロングスキッタ又はショートスキッタでないと判定された場合には、最終的にスキッタではないと判定されて破棄される。
【0043】
第1訂正手段132fは、識別手段132d又は抽出手段132eから入力した信号(ショートスキッタ)のエラーの有無を判定し、信号にエラーがあると判定された場合、このエラーを訂正する。具体的には、第1訂正手段132fは、信号のPI部を参照し、コードを「0」としてCRC(巡回冗長検査)を利用して信号に含まれるエラーを訂正する。ここで、第1訂正手段132fは、エラーが訂正できなかった信号を無効な信号として破棄する。また、第1訂正手段132fは、エラーのないショートスキッタ及びエラーを訂正することのできたショートスキッタを、有効なスキッタとしてスキッタ処理手段132hに出力する。
【0044】
また、第2訂正手段132gは、識別手段132d又は抽出手段132eから入力した信号(ロングスキッタ)のエラーの有無を判定し、信号にエラーがあると判定された場合、このエラーを訂正する。具体的には、第2訂正手段132gは、第1訂正手段132fと同様に、CRCを利用してエラーを訂正する。ここで、第2訂正手段132gは、エラーが訂正できなかった信号を無効な信号として破棄する。また、第2訂正手段132gは、エラーのないロングスキッタ及びエラーを訂正することのできたロングスキッタを、有効なスキッタとしてスキッタ処理手段132hに出力する。
【0045】
スキッタ処理手段132hは、入力するスキッタを有効なスキッタとして航空機の捕捉に利用するために処理する。
【0046】
続いて、図2に示すフローチャートを用いて、本発明の実施形態に係るスキッタ識別方法の処理について説明する。ここで、図2において、図7を用いて上述した従来と同一の処理については、同一の符号を付す。
【0047】
受信器123が信号を受信すると(S01)、応答判定手段132aは、受信した信号のPIフィールドが自サイトIDと一致するか否かを判定する(S02)。ここで、応答判定手段132aは、PIフィールドと自サイトIDが一致しない場合(S02でNO)、受信した信号をスキッタと特定してDF部信頼性判定手段132cに出力する。DF部信頼性判定手段132cは、スキッタと特定された信号の信頼性を判定する(S21)。
【0048】
その後、ステップS21における信号の信頼性判定の結果、信号のDF部にエラーがなかったとき(S22でNO)、識別手段132dは、信号のDF部に基づいて、信号がショートスキッタであるか又はロングスキッタであるかを判定する(S23)。また、信号のDF部にエラーがあったとき、抽出手段132eは、信号が112ビットの範囲で信頼性があるか否かを判定し、信号がロングスキッタであるか否かを判定する(S24)。一方、ロングスキッタでないと判定した場合(S24でNO)、抽出手段132eは、信号が56ビットの範囲で信頼性があるか否かを判定することで、信号がショートスキッタであるか否かを判定する(S25)。
【0049】
第1訂正手段132fは、識別手段132dでショートスキッタであると判定(S23でYES)又は、抽出手段132eでショートスキッタであると判定(S25でYES)された信号のエラーを判定し、エラーを訂正する(S04)。
【0050】
また、第2訂正手段132gは、識別手段132dでロングスキッタであると判定(S23でNO)又は、抽出手段132eでロングスキッタであると判定(S24でYES)された信号のエラーを判定し、エラーを訂正する(S05)。
【0051】
その後、スキッタ処理手段132hは、エラーの含まれないスキッタ、第1訂正手段132f又は第2訂正手段132gでエラーが訂正されたスキッタを、有効なスキッタとして処理する(S06でNO,S07)。
【0052】
また、抽出手段132eは、ロングスキッタでもショートスキッタでもない信号(S25でNO)を無効な信号として破棄し、第1訂正手段132f及び第2訂正手段132gでも、エラー訂正ができなかった信号(S06でYES)を無効な信号として破棄する(S08)。
【0053】
一方、応答処理手段132bは、応答判定手段132aで信号のPIフィールドと自サイトIDが一致すると判定された信号(S02でNO)を、質問に対する有効な応答として処理する(S09)。
【0054】
上述したモードS二次監視レーダ1によれば、信号のDF部にエラーが発生していても、データのビット数を利用して抽出手段132eにおいてロングスキッタおよびショートスキッタを抽出することができる。したがって、DF部にエラーが発生したスキッタであっても、有効なスキッタとして利用することができる。すなわち、航空機から受信するショートスキッタとロングスキッタをDF部を使用しなくても識別し、航空機の捕捉に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…二次監視レーダ
2…トランスポンダ
2a…モードSトランスポンダ
2b…ATCRBSトランスポンダ
11…アンテナ
12…送受信部
121…送受切替器
122…送信器(送信手段)
123…受信器(受信手段)
13…信号処理部
131…送信制御部
132…モードS応答処理部
132a…応答判定手段
132b…応答処理手段
132c…DF部信頼性判定手段
132d…識別手段
132e…抽出手段
132f…第1訂正手段
132g…第2訂正手段
132h…スキッタ処理手段
133…ATCRBS応答処理部
134…チャネル管理部
135…監視処理部
136…タイミング信号発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機から送信される応答信号を受信すると、当該応答信号を利用して航空機の飛行を監視する航空管制レーダであって、
受信信号が、質問信号に対する応答信号であるか否かを判定する応答判定手段と、
前記応答判定手段によって受信信号が応答信号でないと判定された場合、当該受信信号がスキッタとして定められる規定のフォーマットに適合するか否かの信頼性を判定し、当該信頼性の判定結果を利用してショートスキッタ又はロングスキッタのいずれであるかを識別するDF部にエラーがあるか否かを判定するDF部信頼性判定手段と、
前記DF部信頼性判定手段によって受信信号が規定のフォーマットに適合するが、DF部にエラーがあると判定された場合、当該受信信号のデータ長に応じてショートスキッタ及びロングスキッタを抽出する抽出手段とを備え、
受信したショートスキッタ及びロングスキッタを利用して航空機の捕捉を実行することを特徴とする航空管制レーダ。
【請求項2】
ショートスキッタとして抽出された受信信号のエラーを訂正する第1訂正手段と、
ロングスキッタとして抽出された受信信号のエラーを訂正する第2訂正手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の航空管制レーダ。
【請求項3】
前記DF部信頼性判定手段によって受信信号が規定のフォーマットに適合し、かつDF部にエラーがないと判定された場合、当該受信信号のDF部に応じてショートスキッタであるか否かを判定するとともに、当該受信信号がショートスキッタであるとき前記第1訂正手段に出力し、当該受信信号がショートスキッタでないとき前記第2訂正手段に出力する識別手段をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の航空管制レーダ。
【請求項4】
前記抽出手段は、前記DF部信頼性判定手段によってDF部にエラーがあると判定された受信信号が112ビットの範囲で信頼性があるとき、当該受信信号をロングスキッタとして抽出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の航空管制レーダ。
【請求項5】
前記抽出手段は、前記DF部信頼性判定手段によってDF部にエラーのあると判定された受信信号が112ビットの範囲で信頼性がなく、かつ56ビットの範囲で信頼性があるとき、当該受信信号をショートスキッタとして抽出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の航空管制レーダ。
【請求項6】
航空機から送信される応答信号を受信すると、当該応答信号を利用して航空機の飛行を監視する航空管制レーダにおいて、受信するスキッタの種類を識別するスキッタの識別方法であって、
信号を受信するステップと、
受信信号が質問信号に対する応答信号であるか否かを判定するステップと、
応答信号でないと判定された受信信号が、スキッタとして定められる規定のフォーマットに適合し、かつショートスキッタ又はロングスキッタのいずれであるかを識別するDF部にエラーがあるか否かを判定するステップと、
規定のフォーマットに適合し、かつDF部にエラーがあると判定された受信信号から、信号のデータ長に応じてショートスキッタ及びロングスキッタを抽出するステップと、
を備えることを特徴とするスキッタの識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−160554(P2010−160554A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−816(P2009−816)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】