説明

航続可能距離予測装置、航続可能距離予測方法、及び航続可能距離予測プログラム

【課題】アルコール濃度が変化しても航続可能距離を正確に算出することを目的とする。
【解決手段】液状態検知センサの液位検知部の静電容量を測定して燃料残量を算出し(100、102)、閾値以上の燃料増加がある場合には、液状態検知センサのリファレンス部の静電容量を測定してエタノール濃度を算出し、算出したエタノール濃度に応じた燃費係数を算出する(104〜110)。そして、算出した燃費係数に平均燃費を乗算して給油後の平均燃費を算出して航続可能距離を算出して表示する(118、120)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航続可能距離予測装置、航続可能距離予測方法、及び航続可能距離予測プログラムにかかり、特に、エタノール混合燃料等の混合燃料を使用する自動車の航続可能距離予測装置、航続可能距離予測方法、航続可能距離予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の技術では、アルコール濃度センサの出力に基づいて、アルコール濃度を算出すると共に、フロート及び摺動抵抗からなる燃料残量センサの出力に基づいて燃料残量を算出して、アルコール濃度の関数から残存燃料の単位体積あたりの発熱量を算出して燃料残量に乗算することにより、残存燃料の総発熱量を算出することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03−059423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自動車は、燃料を使用する内燃機関や車種、車重などによって燃費が異なるが、特許文献1に記載の技術では、残存燃料の総発熱量を算出しているものの、アルコール濃度変化に基づく燃費の変化までは考慮していないので、正確な航続可能距離を算出するためには改善の余地がある。
【0005】
また、特許文献1に記載の技術では、フロートを利用した燃料残量センサを用いているが、フロートを利用した燃料残量センサでは、満タン付近及び空付近の領域の感度が悪い(不感帯を有する)ので、残量検出精度が悪い領域が存在する。すなわち、残存燃料から燃費や航続距離を算出する場合には、算出精度の低下の一要因となる。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、アルコール濃度が変化しても航続可能距離を正確に算出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の航続可能距離予測装置は、タンクに貯留されたアルコールを含む燃料の残量及び燃料に含まれるアルコール濃度を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出されたアルコール濃度に基づいて予め定めた平均燃費を補正し、補正した前記平均燃費と前記検出手段によって検出された燃料の残量とに基づいて、航続可能距離を算出する算出手段と、を備えている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、検出手段では、タンクに貯留されたアルコールを含む燃料の残量及び燃料に含まれるアルコール濃度が検出される。検出手段は、例えば、請求項3に記載の発明のように、液位に応じて静電容量が変化する液位測定部と、アルコール濃度に応じて静電容量が変化するリファレンス測定部と、を備えた静電容量式センサにより、燃料の残量及びアルコール濃度を検出することが可能である。また、フロート式のセンサでは、満タン付近及び空付近が不感帯であったが、当該静電容量式センサを用いることにより液位に関係なく正確な残量を検出することが可能となる。
【0009】
また、算出手段では、検出手段によって検出されたアルコール濃度に基づいて予め定めた平均燃費を補正し、補正した平均燃費と検出手段によって検出された燃料の残量とに基づいて航続可能距離が算出される。すなわち、予め定めた平均燃費(例えば、予め定めた基準の平均燃費や所定期間毎に求めた平均燃費など)を検出されたアルコール濃度に応じて補正して航続可能距離が算出されることにより、アルコール濃度の変化による燃費変化を反映した航続可能距離を算出することができる。従って、アルコール濃度が変化しても航続可能距離を正確に算出することができる。
【0010】
なお、算出手段は、請求項2に記載の発明のように、アルコール濃度に対応する燃費係数を予め定めた対応関係に基づいて、検出手段によって検出されたアルコール濃度に対応する燃費係数を算出し、算出した燃費係数を平均燃費に乗算することにより平均燃費を補正する補正手段と、補正手段によって補正された平均燃費と検出手段によって検出された燃料の残量とに基づいて航続可能距離を算出する航続可能距離算出手段と、を含むようにしてもよい。また、請求項4に記載の発明のように、算出手段によって算出された航続可能距離を表示する表示手段を更に備えるようにしてもよい。
【0011】
請求項5に記載の航続可能距離予測方法は、タンクに貯留されたたアルコールを含む燃料の残量及び燃料に含まれるアルコール濃度をセンサによって検出する検出ステップと、前記検出ステップで検出したアルコール濃度に基づいて予め定めた平均燃費を補正し、補正した平均燃費と前記検出ステップで検出した燃料の残量とに基づいて、航続可能距離を算出する算出ステップと、を含んでいる。
【0012】
請求項5に記載の発明によれば、検出ステップでは、タンクに貯留されたアルコールを含む燃料の残量及び燃料に含まれるアルコール濃度を検出する。検出ステップは、例えば、請求項7に記載の発明のように、液位に応じて静電容量が変化する液位測定部と、アルコール濃度に応じて静電容量が変化するリファレンス測定部と、を備えた静電容量式センサにより、燃料の残量及びアルコール濃度を検出することが可能である。また、フロート式のセンサでは、満タン付近及び空付近が不感帯であったが、当該静電容量式センサを用いることにより液位に関係なく正確な残量を検出することが可能となる。
【0013】
また、算出ステップでは、検出ステップで検出したアルコール濃度に基づいて予め定めた平均燃費を補正し、補正した平均燃費と検出ステップで検出した燃料の残量とに基づいて航続可能距離を算出する。すなわち、予め定めた平均燃費(例えば、予め定めた基準の平均燃費や所定期間毎に求めた平均燃費など)を検出したアルコール濃度に応じて補正して航続可能距離を算出することにより、アルコール濃度の変化による燃費変化を反映した航続可能距離を算出することができる。従って、アルコール濃度が変化しても航続可能距離を正確に算出することができる。
【0014】
なお、算出ステップは、請求項6に記載の発明のように、アルコール濃度に対応する燃費係数を予め定めた対応関係に基づいて、検出手段によって検出されたアルコール濃度に対応する燃費係数を算出し、算出した燃費係数を平均燃費に乗算することにより平均燃費を補正する補正ステップと、補正ステップで補正した平均燃費と検出ステップで検出した燃料の残量とに基づいて航続可能距離を算出する航続可能距離算出ステップと、を含むようにしてもよい。また、請求項8に記載の発明のように、算出ステップで算出した航続可能距離を表示部に表示する表示ステップを更に備えるようにしてもよい。
【0015】
請求項9に記載の航続可能距離予測プログラムは、タンクに貯留されたたアルコールを含む燃料の残量及び燃料に含まれるアルコール濃度をセンサによって検出する検出ステップと、前記検出ステップで検出したアルコール濃度に基づいて平均燃費を補正し、補正した平均燃費と前記検出ステップで検出した燃料の残量とに基づいて、航続可能距離を算出する算出ステップと、を含む処理をコンピュータに実行させる。
【0016】
請求項9に記載の発明によれば、検出ステップでは、タンクに貯留されたアルコールを含む燃料の残量及び燃料に含まれるアルコール濃度を検出する。検出ステップは、例えば、液位に応じて静電容量が変化する液位測定部と、アルコール濃度に応じて静電容量が変化するリファレンス測定部と、を備えた静電容量式センサにより、燃料の残量及びアルコール濃度を検出することが可能である。また、フロート式のセンサでは、満タン付近及び空付近が不感帯であったが、当該静電容量式センサを用いることにより液位に関係なく正確な残量を検出することが可能となる。
【0017】
また、算出ステップでは、検出ステップで検出したアルコール濃度に基づいて予め定めた平均燃費を補正し、補正した平均燃費と検出ステップで検出した燃料の残量とに基づいて航続可能距離を算出する。すなわち、予め定めた平均燃費(例えば、予め定めた基準の平均燃費や所定期間毎に求めた平均燃費など)を検出したアルコール濃度に応じて補正して航続可能距離を算出することにより、アルコール濃度の変化による燃費変化を反映した航続可能距離を算出することができる。従って、アルコール濃度が変化しても航続可能距離を正確に算出することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、検出されたアルコール濃度に応じて平均燃費を補正して航続可能距離を算出することにより、アルコール濃度が変化しても航続可能距離を正確に算出することができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係わる航続可能距離予測装置に適用する液状態検知センサを備えた燃料タンクの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係わる航続可能距離予測装置で用いる液状態検知センサの概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係わる航続可能距離予測装置の概略構成を示す図である。
【図4】エタノール濃度−燃費マップの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係わる航続可能距離予測装置において航続可能距離予測プログラムを実行することにより行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図6】エタノール濃度変化がない場合と、エタノール濃度変化がある場合とのそれぞれにおける航続可能距離の算出を説明するための図であり、(A)がエタノール濃度変化がない場合を示し、(B)はエタノール濃度変化がある場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わる航続可能距離予測装置に適用する液状態検知センサを備えた燃料タンクの概略構成を示す図である。
【0021】
燃料タンク10には、FFV(flexible-fuel vehicle)車等のエタノール混合燃料で走行する自動車等で使用する液状の燃料が貯留される。燃料タンク10に貯留する燃料は、燃料タンク10に接続された給油パイプ12から給油される。また、燃料タンク10に貯留された燃料は、燃料タンク10内に設けられた燃料ポンプ14から吸い上げられて、自動車のエンジン等の内燃機関に供給される。
【0022】
燃料ポンプ14には、フィルタ16が設けられており、フィルタ16を介して燃料が吸い上げられることによって、燃料ポンプ14の詰まり等が抑制されるようになっている。
【0023】
また、燃料タンク10内には、液状態検知センサ18が設けられている。本実施形態では、液状態検知センサ18は、燃料タンク10内に貯留される燃料の残量及び燃料に含まれるエタノール等のアルコール濃度を検知する。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態に係わる航続可能距離予測装置で用いる液状態検知センサの概略構成を示す図であり、図3は、本発明の実施の形態に係わる航続可能距離予測装置20の概略構成を示す図である。
【0025】
図2に示すように、液状態検知センサ18は、端子A〜Cの3つの端子を有すると共に、燃料の状態を検知するために2つのコンデンサC1、C2を備えており、各端子A〜Cがセンサ駆動ドライバ22に接続されている。
【0026】
各コンデンサC1、C2は、それぞれ櫛歯状の一対の電極で構成されており、一対の電極間に電荷の充電と放電が可能とされている。
【0027】
詳細には、コンデンサC1は端子B−C間に設けられ、コンデンサC2は端子A−C間に設けられている。
【0028】
そして、各コンデンサC1、C2は、それぞれ互いに静電容量測定エリアに干渉しない位置に設けられている。具体的には、コンデンサC1は、燃料タンク10の燃料残量に応じて一部または全部が燃料内に浸る液位検知部とされ、コンデンサC2は、燃料タンク10の底付近に位置してアルコール濃度を測定するための燃料リファレンス部とされている。
【0029】
すなわち、液状態検知センサ18は、図2の点線で折り曲げられて燃料タンク10内に設けられ、コンデンサC1には燃料の残量(液位)に応じた電荷が充電され、コンデンサC2には燃料の特性(アルコール濃度)に応じた電荷が充電されるようになっている。
【0030】
なお、本実施の形態では、2つのコンデンサC1、C2を備えて、燃料の状態として2つの状態(燃料の残量及びアルコール濃度)を検知するセンサを例に挙げて説明するが、これに限るものではなく、例えば、3つ以上のコンデンサを備えて、燃料の残量及びアルコール濃度以外の他の燃料の状態を更に検知可能なセンサを適用するようにしてもよい。
【0031】
一方、センサ駆動ドライバ22は、図3に示すように、航続可能距離予測装置20に接続されており、航続可能距離予測装置20がセンサ駆動ドライバ22を制御することにより、液状態検知センサ18の駆動を制御して、燃料の残量及びエタノール濃度を検知するようになっている。
【0032】
航続可能距離予測装置20は、CPU20A、RAM20B、ROM20C、及びインプットアウトプットインターフェース(I/O)がそれぞれバス20Eに接続されたマイクロコンピュータからなり、I/O20Dに、センサ駆動ドライバ22が接続されている。
【0033】
ROM20Cには、航続可能距離の算出及び表示を行うための航続可能距離予測プログラムが記憶されていると共に、エタノール濃度に応じた燃費係数を求めるための予め定めたエタノール濃度−燃費マップが記憶されている。すなわち、ROM20Cに記憶された航続可能距離予測プログラムをRAM20B等に展開してCPU20Aがプログラムを実行することにより、航続可能距離の算出及び表示に関する処理が行われる。また、当該処理を行う際に、ROM20Cに記憶されたエタノール濃度−燃費マップを利用するようになっている。なお、以下の説明における燃費とは、1リットルあたりの走行距離(燃料の単位容量あたりの走行距離)を示すものとして説明するが、1キロメートルを走行するために必要な燃料の量(単位距離あたりの必要な燃料の量)を示すものであってもよい。
【0034】
また、I/O20Dには、コンビネーションメータ等に設けられたメータ表示部26を駆動するメータドライバ24が接続されている。本実施の形態では、燃料残量、エタノール濃度、平均燃費、航続可能距離などがCPU20Aによって算出されて、メータ表示部26に表示可能とされている。例えば、燃料残量は、液状態検知センサ18の液位検知部の静電容量と液位(燃料残量)との関係を予め定めておくことにより算出し、エタノール濃度は、液状態検知センサ18の燃料リファレンス部の静電容量とエタノール濃度との関係を予め定めておくことにより算出し、平均燃費は、所定期間内の走行距離と燃料消費量から算出し、航続可能距離は、燃料残量と平均燃費から算出する。なお、平均燃費を算出する際の所定期間内の走行距離は、トリップメータ等から取得することができ、燃料消費量は、所定期間前後の液状態検知センサ18の検知結果の差分から算出してもよいし、トリップメータ等を作動するための情報を用いるようにしてもよいし、或いは、予め定めた平均燃費を用いて航続可能距離を算出するようにしてもよい。
【0035】
ところで、本実施の形態の航続可能距離予測装置20は、ガソリンとエタノールの混合燃料を使用するFFV車に適用されるが、エタノールの発熱量は、ガソリンの70%程度であるので、エタノールの濃度によって航続可能距離が変化して燃費が変化してしまう。例えば、給油によってエタノール濃度が変化すると、給油前後で燃費が変化してしまうため、燃料残量で走行可能な正確な航続可能距離を求めることができなくなってしまう。
【0036】
そこで、本実施の形態に係わる航続可能距離予測装置20では、液状態検知センサ18によって燃料残量を検知すると共に、エタノール濃度を検知して、エタノール濃度に応じて燃費を補正して航続可能距離を算出するようになっている。
【0037】
具体的には、エタノール濃度に応じて燃費を補正するためのマップ(エタノール濃度−燃費マップ)を予め定めてROM20Cに記憶しておき、給油等によってエタノール濃度に変化が生じた場合に、当該マップを利用して燃費を補正して航続可能距離を算出する。マップは、上述したようにエタノールの発熱量がガソリンに比べて低いことによりエタノール濃度が高くなる程燃費が低下するので、図4に示すように、エタノール濃度に対応する燃費係数を実験等により予め定めてROM20Cに記憶する。例えば、エタノール濃度が0%を基準燃費としたときに、アルコールの濃度毎の燃費を求めて濃度毎の燃費係数を算出することによりマップを求める。このとき、自動車の種類、重量、及び内燃機関の種類等が異なることにより燃費自体も変化するため、自動車や内燃機関等の燃費を左右するパラメータの種類毎に実験を行ってマップを予め定めることにより、正確な燃費補正が可能となる。なお、本実施の形態では、エタノール濃度−燃費マップをROM20Cに記憶して利用するが、マップに限るものではなく、関数などを用いたエタノール濃度に対応する燃費係数を予め定めた対応関係を用いるようにしてもよい。
【0038】
続いて、上述のように構成された本発明の実施形態に係わる航続可能距離予測装置20で行われる具体的な処理について説明する。図5は、本発明の実施の形態に係わる航続可能距離予測装置20において航続可能距離予測プログラムを実行することにより行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図5の処理は、例えば、イグニッションスイッチ等をオンすることにより開始する。
【0039】
まず、ステップ100では、液状態検知センサ18の液位検知部の静電容量の測定が行われてステップ102へ移行する。すなわち、航続可能距離予測装置20がセンサ駆動ドライバ22を制御することによって液状態検知センサ18の液位検知部の静電容量が測定される。
【0040】
ステップ102では、測定された液状態検知センサ18の液位検知部の静電容量に基づいて、燃料残量が算出されてステップ104へ移行する。燃料残量の算出は、例えば、液位検知部の静電容量と液位との関係を予め定めておくことにより、燃料残量を算出することができる。
【0041】
ステップ104では、予め定めた閾値以上の燃料増加があるか否かが航続可能距離予測装置20によって判定される。すなわち、燃料の増加判定を行うことで給油を行ったか否かを判定してエタノール濃度に変化があるか否かを判定する。該判定が肯定された場合にはステップ106へ移行し、否定された場合にはステップ116へ移行する。
【0042】
ステップ106では、液状態検知センサ18の燃料リファレンス部の静電容量の測定が行われてステップ108へ移行する。すなわち、航続可能距離予測装置20がセンサ駆動ドライバ22を制御することによって液状態検知センサ18の燃料リファレンス部の静電容量が測定される。
【0043】
ステップ108では、測定された液状態検知センサ18の燃料リファレンス部の静電容量に基づいて、エタノール濃度が算出されてステップ110へ移行する。エタノール濃度の算出は、例えば、燃料残量の算出と同様に、燃料リファレンス部の静電容量とエタノール濃度との関係を予め定めておくことにより、エタノール濃度を算出することができる。
【0044】
ステップ110では、エタノール濃度−燃費マップに基づいて燃費係数が算出されてステップ112へ移行する。すなわち、測定されたエタノール濃度に対応する燃費係数をマップから求める。
【0045】
ステップ112では、給油後の平均燃費が算出されてステップ114へ移行する。給油後の平均燃費の算出は、給油前の平均燃費に対して燃費係数を乗算することにより算出することができる。なお、給油前の平均燃費については、所定期間内の走行距離と燃料消費量を随時求めることにより算出してRAM20B等に記憶しておくものとする。
【0046】
ステップ114では、給油後の航続可能距離が算出されてステップ118へ移行する。給油後の航続可能距離の算出は、燃料残量に対してステップ112で算出した平均燃費を乗算することにより算出することができる。
【0047】
一方、ステップ116では、給油によるエタノール濃度変化がないので、通常通りの航続可能距離が算出されてステップ118へ移行する。すなわち、ステップ102で算出した燃料残量に対して、随時算出して記憶される平均燃費(デフォルトでは、予め定めた基準の平均燃費)を乗算することにより航続可能距離を算出する。
【0048】
ステップ118では、メータドライバ24を制御することによって、ステップ114またはステップ116で算出された航続可能距離がメータ表示部26に表示されてステップ120へ移行する。
【0049】
ステップ120では、エンジン停止か否か判定され、該判定が否定された場合にはステップ100に戻って上述の処理が繰り返され、判定が肯定されたところで一連の処理を終了する。
【0050】
このように処理を行うことによって、給油によってエタノール濃度が変化しても、変化したエタノール濃度に応じて燃費が補正されて航続可能距離が算出されるので、エタノール濃度が変化しても正確な航続可能距離を表示することができる。
【0051】
ここで、図6(A)、(B)を参照してエタノール濃度変化がない場合と、エタノール濃度変化がある場合とのそれぞれにおける航続可能距離の算出について一例を挙げて説明する。
【0052】
図6(A)、(B)では、平地(Trip1)、登坂(Trip2)、登坂から下り(Trip3)、平地(Trip4)の走行パターンを走行して、各区間で給油した場合を一例として説明する。
【0053】
従来のガソリン自動車のようにエタノール濃度変化がない場合には、図6(A)に示すように、燃料性状は常にE0となり、瞬間燃費及び平均燃費はそれぞれ図6(A)に示すように、給油前後で大きな変化はなく、各区間(Trip間)で連続した変化になる。この場合の航続可能距離は、前回の給油間平均燃費のある比率分を学習燃費(図6では1/3)として算出すると、Trip1では、A0×(燃料残量)で算出され、Trip2では、{(2/3)A0+(1/3)A1}×(燃料残量)で算出され、Trip3では、{2/3)B+(1/3)A2}×(燃料残量)で算出され、Trip4では、{(2/3)C+(1/3)A3}×燃料残量で算出される。
【0054】
一方、エタノール濃度に変化がある場合には、図6(B)に示すように、給油前後で燃費(瞬間燃費及び平均燃費)が大きく変化して連続した変化にならない。そこで、本実施の形態では、エタノール濃度に対応する燃費係数Kを用いて燃費を補正して航続可能距離を算出する。具体的には、図6(B)に示すように、学習燃費を上記と同様に1/3として算出すると、Trip1では、A0×{K(E0)/K(E0)}×燃料残量で算出され、Trip2では、{(2/3)A0+(1/3)A1}×{K(E50)/K(E0)}×(燃料残量)で算出され、Trip3では、{2/3)B+(1/3)A2}×{K(E30)/K(E50)}×(燃料残量)で算出され、Trip4では、{(2/3)C+(1/3)A3}×{K(E20)/K(E30)}×燃料残量で算出される。
【0055】
このように給油毎にエタノール濃度が変化しても、変化するエタノール濃度に応じて燃費を補正して航続可能距離を算出することにより、エタノール濃度を考慮した正確な航続可能距離を算出して表示することができる。
【0056】
また、本実施の形態では、自動車や内燃機関等の燃費を左右するパラメータの種類毎の燃費を考慮した燃費係数を用いるため、正確な航続可能距離の算出が可能となる。
【0057】
なお、上記の実施の形態では、エタノールを混合した混合燃料の場合を一例として説明したが、エタノールに限るものではなく、他のアルコールを適用するようにしてもよいし、他の発熱量が異なる燃料を混合する混合燃料を使用する場合に適用してもよい。
【0058】
また、上記の実施の形態では、給油の有無を燃料の閾値以上の増加を判定することによって行うようにしたが、これに限るものではなく、例えば、所定値以上のアルコール濃度変化があるか否かを判定するようにしてもよいし、給油口の開放操作等を検出するようにしてもよい。
【0059】
また、上記の実施の形態では、給油によってエタノール濃度が変化した場合に、平均燃費を補正して航続可能距離を算出する例を説明したが、平均燃費の補正は給油時に限るものではなく、随時エタノール濃度を検出して平均燃費を補正するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 燃料タンク
18 液状態検知センサ
20 航続可能距離予測装置
22 センサ駆動ドライバ
24 メータドライバ
26 メータ表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクに貯留されたアルコールを含む燃料の残量及び燃料に含まれるアルコール濃度を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出されたアルコール濃度に基づいて予め定めた平均燃費を補正し、補正した前記平均燃費と前記検出手段によって検出された燃料の残量とに基づいて、航続可能距離を算出する算出手段と、
を備えた航続可能距離予測装置。
【請求項2】
前記算出手段は、アルコール濃度に対応する燃費係数を予め定めた対応関係に基づいて、前記検出手段によって検出されたアルコール濃度に対応する燃費係数を算出し、算出した燃費係数を前記平均燃費に乗算することにより前記平均燃費を補正する補正手段と、前記補正手段によって補正された前記平均燃費と前記検出手段によって検出された燃料の残量とに基づいて航続可能距離を算出する航続可能距離算出手段と、を含む請求項1に記載の航続可能距離予測装置。
【請求項3】
前記検出手段は、液位に応じて静電容量が変化する液位測定部と、アルコール濃度に応じて静電容量が変化するリファレンス測定部と、を備えた静電容量式センサにより、燃料の残量及びアルコール濃度を検出する請求項1又は請求項2に記載の航続可能距離予測装置。
【請求項4】
前記算出手段によって算出された航続可能距離を表示する表示手段を更に備えた請求項1〜3の何れか1項に記載の航続可能距離予測装置。
【請求項5】
タンクに貯留されたたアルコールを含む燃料の残量及び燃料に含まれるアルコール濃度をセンサによって検出する検出ステップと、
前記検出ステップで検出したアルコール濃度に基づいて予め定めた平均燃費を補正し、補正した平均燃費と前記検出ステップで検出した燃料の残量とに基づいて、航続可能距離を算出する算出ステップと、
を含む航続可能距離予測方法。
【請求項6】
前記算出ステップは、アルコール濃度に対応する燃費係数を予め定めた対応関係に基づいて、前記検出ステップで検出したアルコール濃度に対応する燃費係数を算出し、算出した燃費係数を平均燃費に乗算することにより前記平均燃費を補正する補正ステップと、前記補正ステップで補正した前記平均燃費と前記検出ステップで検出した燃料の残量とに基づいて航続可能距離を算出する航続可能距離算出ステップと、を含む請求項5に記載の航続可能距離予測方法。
【請求項7】
前記検出ステップは、液位に応じて静電容量が変化する液位測定部と、アルコール濃度に応じて静電容量が変化するリファレンス測定部と、を備えた静電容量式センサにより、燃料の残量及びアルコール濃度を検出する請求項5又は請求項6に記載の航続可能距離予測装置。
【請求項8】
前記算出ステップで算出した航続可能距離を表示部に表示する表示ステップを更に備えた請求項5〜7の何れか1項に記載の航続可能距離予測装置。
【請求項9】
タンクに貯留されたたアルコールを含む燃料の残量及び燃料に含まれるアルコール濃度をセンサによって検出する検出ステップと、
前記検出ステップで検出したアルコール濃度に基づいて平均燃費を補正し、補正した平均燃費と前記検出ステップで検出した燃料の残量とに基づいて、航続可能距離を算出する算出ステップと、
を含む処理をコンピュータに実行させるための航続可能距離予測プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−47064(P2013−47064A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186289(P2011−186289)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】