説明

舶用排気ガス脱硝装置

【課題】加熱手段における燃料消費量を抑制することができ、ランニングコストを低減させることができる舶用排気ガス脱硝装置を提供すること。
【解決手段】還元剤が貯蔵された還元剤貯蔵タンク11と、前記還元剤貯蔵タンク11に貯蔵された還元剤を、排気ガス中に噴出させる還元剤噴射ノズル13と、前記排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元する触媒を備えた脱硝反応器14と、前記脱硝反応器14よりも上流側に設けられて、前記脱硝反応器14に供給される排気ガスを昇温させる加熱手段15と、前記脱硝反応器14の性能が所定のレベルを下回った場合に、前記加熱手段15を作動させ、前記脱硝反応器14に供給される排気ガスを昇温させて、その後、前記脱硝反応器14の性能が所定のレベルを上回った場合に、前記加熱手段15を停止させ、前記脱硝反応器14に供給される排気ガスの昇温を停止させる機能を備えた制御装置16と、を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、船舶の主機として用いられる2サイクル低速ディーゼル機関から排出される排気ガス中から窒素酸化物を除去する舶用排気ガス脱硝装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の環境保全に対する関心の高まりに伴い、例えば、船舶の主機として用いられる2サイクル低速ディーゼル機関から排出される排気ガスに含まれる窒素酸化物(以下、「NOx」という。)を削減する必要性が生じている。NOx削減を図るためには、ディーゼル機関の排気ガスを脱硝触媒に通す方法が一般的に知られている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、脱硝触媒としては、アンモニア等を還元剤として窒素に還元する選択的還元法(SCR法)に基づく触媒が一般的に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−6380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、上述のような2サイクル低速ディーゼル機関であって、過給機を備えたものの場合には、過給機から排出された排気ガスの温度は300℃以下となる。
一般に、脱硝触媒におけるNOxの還元反応は、300℃から320℃よりも高い温度で行われることが好ましく、これよりも低温の排気ガスを脱硝触媒に通すと、脱硝触媒が短時間で劣化したり、NOx低減効果が低くなったりすると言われている。
【0005】
このような問題を解決するため、上記特許文献1の図2に示すように、2サイクル低速ディーゼル機関と過給機との間に脱硝触媒を配置して、言い換えると、過給機の入口上流側に脱硝反応器を配置して、脱硝反応器に温度が低下する前の高温の排気ガスを導入する方法が知られている。
【0006】
しかしながら、過給機の入口上流側に脱硝反応器を配置すると、脱硝反応器は熱容量を有し緩衝部として作用することから、舶用内燃機関における起動時や停止時等のように過渡的に負荷が変動した場合に、過給機の回転数が負荷の変動に追従しない、または、遅れるという問題があった。
【0007】
その一方で、上記特許文献1の図1に示すように、過給機の下流側に脱硝反応器を配置するとともに、過給機と脱硝反応器との間に燃料を燃焼させるバーナー部(排ガス加熱装置:加熱手段)を配置し、脱硝反応器に導入される排気ガスの温度を上げる方法も考えられる。
しかしながら、従来のバーナー部においては、排気ガスの温度を300℃から320℃よりも高い温度に保つため、燃焼用空気および燃料が常時供給され、過給機から脱硝反応器に供給される排気ガスが常時昇温(加熱)されるようになっていた。そのため、バーナー部における燃料消費量が増大し、ランニングコストが高騰してしまうといった問題点があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、加熱手段における燃料消費量を抑制することができ、ランニングコストを低減させることができる舶用排気ガス脱硝装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明に係る舶用排気ガス脱硝装置は、舶用内燃機関から排出されて、過給機を駆動した排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元する舶用排気ガス脱硝装置であって、還元剤が貯蔵された還元剤貯蔵タンクと、前記還元剤貯蔵タンクに貯蔵された還元剤を、前記排気ガス中に噴出させる還元剤噴射ノズルと、前記排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元する触媒を備えた脱硝反応器と、前記脱硝反応器よりも上流側に設けられて、前記脱硝反応器に供給される排気ガスを昇温させる加熱手段(バーナー、ヒーター等)と、前記脱硝反応器の性能が所定のレベルを下回った場合に、前記加熱手段を作動させ、前記脱硝反応器に供給される排気ガスを昇温させて、その後、前記脱硝反応器の性能が所定のレベルを上回った場合に、前記加熱手段を停止させ、前記脱硝反応器に供給される排気ガスの昇温を停止させる機能を備えた制御装置と、を具備している。
【0010】
本発明に係る舶用排気ガス脱硝装置によれば、脱硝反応器の性能が所定のレベルを下回った場合にのみ、加熱手段を作動させ、脱硝反応器に供給される排気ガスを昇温させて、その後、脱硝反応器の性能が再生(回復)して所定のレベルを上回ったら、加熱手段を停止させ、脱硝反応器に供給される排気ガスの昇温が停止されることになる。
これにより、加熱手段における燃料消費量を抑制することができ、ランニングコストを低減させることができる。
また、本発明に係る舶用排気ガス脱硝装置によれば、過給機の下流側に脱硝反応器が配置されるとともに、過給機と脱硝反応器との間に燃料を燃焼させる加熱手段が配置されることになる。
これにより、舶用内燃機関における起動時や停止時等のように過渡的に負荷が変動した場合でも、過給機の回転数を負荷の変動に追従させる、または、遅れないようにすることができる。
【0011】
上記舶用排気ガス脱硝装置において、前記加熱手段に流入した排気ガスに旋回力を付与する旋回力付与手段が、前記加熱手段内に設けられているとさらに好適である。
【0012】
このような舶用排気ガス脱硝装置によれば、加熱手段に流入した排気ガスに旋回力が付与され、排気ガスが旋回しながら下流側に進んでいくことになるので、排気ガスと、還元剤噴射ノズルから排気ガス中に噴出された還元剤とを、短い距離で均一に混ぜ合わせることができ、脱硝反応器におけるNOxの還元反応を促進させることができる。
【0013】
上記舶用排気ガス脱硝装置において、前記脱硝反応器の上流側に、前記排気ガス中の粒子状物質を捕集する除塵装置が設けられているとさらに好適である。
【0014】
このような舶用排気ガス脱硝装置によれば、脱硝反応器内への排気ガス中の粒子状物質の流入を抑制する(低減させる)ことができ、脱硝反応器の劣化速度を遅延させることができて、脱硝反応器の再生間隔を延ばすことができ、加熱手段における燃料消費量をさらに抑制することができる。
【0015】
本発明に係る船舶は、上記いずれかの舶用排気ガス脱硝装置を具備している。
【0016】
本発明に係る船舶によれば、加熱手段における燃料消費量を抑制することができ、ランニングコストを低減させることができる舶用排気ガス脱硝装置を具備していることになるので、船舶全体の燃料消費量を抑制することができて、船舶全体のランニングコストを低減させることができる。
また、本発明に係る船舶によれば、舶用内燃機関における起動時や停止時等のように過渡的に負荷が変動した場合でも、過給機の回転数を負荷の変動に追従させる、または、遅れないようにすることができる舶用排気ガス脱硝装置を具備していることになるので、船舶の操船性(操縦性)を損なわないように(阻害しないように)することができる。
【0017】
本発明に係る舶用排気ガス脱硝装置の運転方法は、還元剤が貯蔵された還元剤貯蔵タンクと、前記還元剤貯蔵タンクに貯蔵された還元剤を、前記排気ガス中に噴出させる還元剤噴射ノズルと、前記排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元する触媒を備えた脱硝反応器と、前記脱硝反応器よりも上流側に設けられて、前記脱硝反応器に供給される排気ガスを昇温させる加熱手段と、を備え、舶用内燃機関から排出されて、過給機を駆動した排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元する舶用排気ガス脱硝装置の運転方法であって、前記脱硝反応器の性能が所定のレベルを下回った場合に、前記加熱手段を作動させ、前記脱硝反応器に供給される排気ガスを昇温させて、その後、前記脱硝反応器の性能が所定のレベルを上回った場合に、前記加熱手段を停止させ、前記脱硝反応器に供給される排気ガスの昇温を停止させるようにした。
【0018】
本発明に係る舶用排気ガス脱硝装置の運転方法によれば、脱硝反応器の性能が所定のレベルを下回った場合にのみ、加熱手段を作動させ、脱硝反応器に供給される排気ガスを昇温させて、その後、脱硝反応器の性能が再生(回復)して所定のレベルを上回ったら、加熱手段を停止させ、脱硝反応器に供給される排気ガスの昇温が停止されることになる。
これにより、加熱手段における燃料消費量を抑制することができ、ランニングコストを低減させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る舶用排気ガス脱硝装置によれば、加熱手段における燃料消費量を抑制することができ、ランニングコストを低減させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る舶用排気ガス脱硝装置を具備した船舶の概略の構成を示す図である。
【図2】図1に示すバーナー部およびバーナー部近傍の構成を示す図である。
【図3】図1に示すバーナー部およびバーナー部近傍の構成を示す図である。
【図4】図3のIV−IV矢視断面図である。
【図5】図2から図4に示す内筒およびベーンを長手方向(軸方向)に沿って下流側から見た図である。
【図6】図5を上側(上流側に位置する煙道を流れてきた排気ガスが流入する側)から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る舶用排気ガス脱硝装置について、図1から図6を参照して説明する。
図1は本実施形態に係る舶用排気ガス脱硝装置を具備した船舶の概略の構成を示す図、図2および図3は図1に示すバーナー部およびバーナー部近傍の構成を示す図、図4は図3のIV−IV矢視断面図、図5は図2から図4に示す内筒およびベーンを長手方向(軸方向)に沿って下流側から見た図、図6は図5を上側(上流側に位置する煙道を流れてきた排気ガスが流入する側)から見た図である。
【0022】
本実施形態に係る船舶1は、舶用内燃機関2と、舶用排気ガス脱硝装置10とを備えている。
舶用内燃機関2としては、例えば、シリンダ部(図示せず)と、排気レシーバー(排気集合管:排気マニホールド)3と、過給機4とを備え、船舶1の主機として用いられる2サイクル低速ディーゼル機関を一具体例として挙げることができる。
各シリンダ部内には、クランク軸(図示せず)と連結されたピストン(図示せず)が配置されている。また、各シリンダ部の排気ポート(図示せず)は、排気管(図示せず)を介して排気レシーバー3と連通(接続)されており、各排気管におけるシリンダに対する開口部には、当該開口部を開閉する排気弁5が配置されている。
【0023】
舶用排気ガス脱硝装置10は、還元剤貯蔵タンク11と、還元剤供給装置12と、還元剤噴射ノズル13と、脱硝反応器14と、バーナー部(昇温部:加熱手段)15と、制御装置16とを備えている。
還元剤貯蔵タンク11には、還元剤(本実施形態では「アンモニア水または尿素水」)が貯蔵されている。また、還元剤貯蔵タンク11と還元剤供給装置12とは、(第1の)還元剤供給管21を介して連通(接続)されており、随時必要に応じて、還元剤貯蔵タンク11から還元剤供給装置12に還元剤が供給されるようになっている。
【0024】
還元剤供給装置12には、清水供給管22と、空気供給管23とが接続されており、随時必要に応じて、船舶1の船底に設けられた清水タンク(図示せず)から還元剤供給装置12に清水が供給され、船舶1内に設けられた空気タンク(図示せず)から還元剤供給装置12に制御空気が供給されるようになっている。
還元剤噴射ノズル13は、過給機4と脱硝反応器14とを連通(接続)する(第1の)煙道(排気管)24内に設けられている。また、還元剤噴射ノズル13と還元剤供給装置12とは、(第2の)還元剤供給管25を介して連通(接続)されており、随時必要に応じて、還元剤供給装置12から還元剤が供給されるようになっている。そして、還元剤噴射ノズル13から煙道24内に向かって、霧状の還元剤が供給される(還元剤が噴霧される)ようになっている。
【0025】
なお、還元剤供給装置12に供給される清水の量および制御空気の量、還元剤噴射ノズル13に供給される還元剤の量は、制御装置16により制御されるようになっている。
また、バーナー部15が設けられている(配置されている)箇所(部分)よりも上流側に位置する煙道24には、過給機4を通過した排気ガス(燃焼ガス)を(排熱回収)ボイラ(図示せず)に導く枝管26が接続していることで、万が一脱硝反応器に不調が生じた場合でも船舶の運航が可能となる。
さらに、煙道24と枝管26との接合部(分岐部)よりも下流側で、バーナー部15よりも上流側に位置する煙道24内には、制御装置16によりその開度が調整される(第1の)流量調整弁27が設けられており、煙道24と枝管26との接合部(分岐部)近傍に位置する枝管26内には、制御装置16によりその開度が調整される(第2の)流量調整弁28が設けられている。
【0026】
脱硝反応器14の内部には、例えば、外観が直方体形状を呈するとともに、ハニカム(ハチの巣)構造を有する触媒29が複数個設けられており(配置されており)、これら触媒29の中を排気ガスが通過(通気)する際に、NOxが窒素と水に分解され、排気ガス中のNOxが除去されることになる。そして、NOxが除去された排気ガスは、脱硝反応器14と煙突(図示せず)とを連通(接続)する(第2の)煙道(排気管)30を介して煙突に導かれ、煙突から大気中に排出されるようになっている。
なお、煙道30内には、制御装置16によりその開度が調整される(第3の)流量調整弁31が設けられている。
【0027】
つぎに、バーナー部15について、図2から図6を用いて説明する。
図2から図6の少なくともいずれかの図に示すように、バーナー部15は、外筒41と、内筒42と、燃焼筒(バーナー筒)43と、ノズル(図示せず)と、ベーン(旋回力付与手段)44とを備えている。
外筒41は、外観が円柱形状を呈する筒状の部材であり、その外周面には、上流側に位置する煙道24を流れてきた排気ガスが、外筒41の内筒外周に沿って排ガスが旋回しつつ排ガス管の軸方向(長手方向軸線:中心軸線)に向かうとともに、外筒41の下流側に向かうようにして、上流側に位置する煙道24が接続(連結)されている。また、外筒41の下流端に設けられた端面の中央部には、下流側に位置する煙道24の長手方向軸線(中心軸線)が、外筒41の長手方向軸線(中心軸線)上に位置するようにして、下流側に位置する煙道24が接続(連結)されている。
【0028】
内筒42は、外観が円柱形状を呈するとともに、長手方向(軸方向)の長さが外筒41よりも短い筒状の部材であり、長手方向軸線(中心軸線)が外筒41の長手方向軸線(中心軸線)上に位置するとともに、一端が外筒41の上流端に設けられた端面の中央部に接するようにして、外筒41内に配置されている。また、内筒42は、上流側に位置する煙道24を流れてきた排気ガスが流入する側に放射状に配置された、複数枚(本実施形態では9枚)のベーン44を介して外筒41に支持されているとともに、上流側に位置する煙道24を流れてきた排気ガスが流入する側と反対の側に放射状に配置された、複数本(本実施形態では12(3×4)本)の丸棒状のステー(stay)45を介して外筒41に支持されている。
【0029】
ステー45は、棒状(例えば、丸棒)の部材であり、一端(半径方向外側に位置する端)が外筒41の内周面に接するとともに、他端(半径方向内側に位置する端)が内筒42の外周面に接するとともに、図4に示すように、中心角50度の範囲内に、周方向に隣り合うステー45の中心間の間隔(ピッチ)が等しくなるようにして、外筒41と内筒42との間に配置されている。
なお、図2中には、上流側に位置する6(3×2)本のステー45のみを示している。
【0030】
加熱手段としてバーナーを使用して内筒42に接続した場合、バーナー燃焼器(図示せず)で高温の燃焼ガスを作り、その高温ガスが内筒42を通り外筒41内に流入することで、過給機5から脱硝反応器14に供給される排気ガスを昇温(加熱)して、排気ガスの温度を高めるのに使用(利用)される。
【0031】
ベーン44は、例えば、平面視矩形状を呈する薄板状の平板であり、一端(半径方向外側に位置する端)が外筒41の内周面に接するとともに、他端(半径方向内側に位置する端)が内筒42の外周面に接するようにして、外筒41と内筒42との間に周方向に沿って一列に配置されている。また、ベーン44は、内筒42およびベーン44を長手方向(軸方向)に沿って下流側から見た図5に示すように、中心角90度の範囲内に、隣り合うベーン44の中心間の間隔(ピッチ)が等しくなるとともに、図5を上側(上流側に位置する煙道24を流れてきた排気ガスが流入する側)から見た図6に示すように、上側から見て最も左に位置するベーン44と長手方向軸線(中心軸線)とのなす角が60度、最も右に位置する5枚のベーン44と長手方向軸線(中心軸線)とのなす角が30度になるようにして配置されている。そして、これらベーン44により、上流側に位置する煙道24から外筒41と内筒42との間に流入してきた排気ガスに、内筒42およびベーン44を長手方向(軸方向)に沿って下流側から見て右回り(時計回り)の旋回力(進行方向(下流側)に向かって左回りに回転する旋回力)が付与され、排気ガスは、下流側に位置する煙道24に旋回しながら流入していくことになる。
【0032】
なお、図2および図3に示すように、還元剤噴射ノズル13は、煙道24の直管部(短管部)24aの断面で見て、還元剤噴霧後の混合が促進されやすいように直管部24a内の略均等な位置に配置されている。
【0033】
制御装置16は、還元剤供給装置12に供給される清水の量および制御空気の量、還元剤噴射ノズル13に供給される還元剤の量、(第1の)流量調整弁27の開度、(第2の)流量調整弁28の開度、(第3の)流量調整弁31の開度を調整(制御)する機能を有する他、バーナー部15のノズルから燃焼筒43の内部に向けて燃焼用空気および燃料を噴出させ、燃焼筒43の内部に火炎を作り出し、過給機4から脱硝反応器14に供給される排気ガスを昇温(加熱)させる機能を有している。すなわち、制御装置16は、バーナー部15を作動させない状態で舶用排気ガス脱硝装置10を運転し、脱硝反応器14の性能が低下した(所定のレベルを下回った)場合(例えば、煙道30内を通過する排気ガス中のNOx測定値が設定値を超えた場合)に、バーナー部15のノズルから燃焼筒43の内部に向けて燃焼用空気および燃料を噴出させ、燃焼筒43の内部に火炎を作り出し、過給機4から脱硝反応器14に供給される排気ガスを昇温(加熱)させて、その後、脱硝反応器14の性能が回復(再生)した(所定のレベルを上回った)場合(例えば、煙道30内を通過する排気ガス中のNOx測定値が設定値を下回った場合)に、バーナー部15のノズルから燃焼筒43の内部への燃焼用空気および燃料の噴出を停止させ、燃焼筒43の内部に火炎が作り出されないようにし、過給機5から脱硝反応器14に供給される排気ガスの昇温(加熱)を停止させる機能も備えている。
【0034】
なお、図1中の符号46は、船舶1内に設けられた空気タンク(図示せず)から供給された圧縮空気、あるいは船舶1内に設けられたボイラ(図示せず)から供給された蒸気を噴霧して、触媒29に付着した煤やダスト、PM(Particulate Matter:排気ガス中の粒子状物質)等を吹き飛ばす(除去する)スーツブロワ装置である。
【0035】
本実施形態に係る舶用排気ガス脱硝装置10および舶用排気ガス脱硝装置10の運転方法によれば、脱硝反応器14の性能が所定のレベルを下回った場合にのみ、バーナー部15を作動させ、脱硝反応器14に供給される排気ガスを昇温させて、その後、脱硝反応器14の性能が再生(回復)して所定のレベルを上回ったら、バーナー部15を停止させ、脱硝反応器14に供給される排気ガスの昇温が停止されることになる。
これにより、バーナー部15における燃料消費量を抑制することができ、ランニングコストを低減させることができる。
また、本実施形態に係る舶用排気ガス脱硝装置10によれば、過給機4の下流側に脱硝反応器14が配置されるとともに、過給機4と脱硝反応器14との間に燃料を燃焼させるバーナー部15が配置されることになる。
これにより、舶用内燃機関2における起動時や停止時等のように過渡的に負荷が変動した場合でも、過給機4の回転数を負荷の変動に追従させる、または、遅れないようにすることができる。
【0036】
さらに、本実施形態に係る舶用排気ガス脱硝装置10によれば、バーナー部15に流入した排気ガスに旋回力を付与するベーン44により、バーナー部15に流入した排気ガスに旋回力が付与され、排気ガスが旋回しながら下流側に進んでいくことになるので、排気ガスと、還元剤噴射ノズル13から排気ガス中に噴出された還元剤とを、短い距離(本実施形態では煙道24の直管部(短管部)24a内)で略均一に混ぜ合わせることができ、脱硝反応器14におけるNOxの還元反応を安定させることができ、船舶1という限られた空間にシステムを構成できる。
【0037】
一方、本実施形態に係る船舶1によれば、バーナー部15における燃料消費量を抑制することができ、ランニングコストを低減させることができる舶用排気ガス脱硝装置10を具備していることになるので、船舶1全体の燃料消費量を抑制することができて、船舶1全体のランニングコストを低減させることができる。
また、本実施形態に係る船舶1によれば、舶用内燃機関2における起動時や停止時等のように過渡的に負荷が変動した場合でも、過給機4の回転数を負荷の変動に追従させる、または、遅れないようにすることができる舶用排気ガス脱硝装置10を具備していることになるので、船舶1の操船性(操縦性)を損なわないように(阻害しないように)することができる。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜必要に応じて変形あるいは変更して実施することができる。
例えば、上述した実施形態では、バーナー部15を作動させない状態で舶用排気ガス脱硝装置10を運転し、脱硝反応器14の性能が低下した(所定のレベルを下回った)場合(例えば、煙道30内を通過する排気ガス中のNOx測定値が設定値を超えた場合)に、バーナー部15のノズルから燃焼筒43の内部に向けて燃焼用空気および燃料を噴出させ、燃焼筒43の内部に火炎を作り出し、過給機5から脱硝反応器14に供給される排気ガスを昇温(加熱)させて、その後、脱硝反応器14の性能が回復(再生)した(所定のレベルを上回った)場合(例えば、煙道30内を通過する排気ガス中のNOx測定値が設定値を下回った場合)に、バーナー部15のノズルから燃焼筒43の内部への燃焼用空気および燃料の噴出を停止させ、燃焼筒43の内部に火炎が作り出されないようにし、過給機5から脱硝反応器14に供給される排気ガスの昇温(加熱)を停止させるようにしていた。
しかし、本発明の一実施形態に係る舶用排気ガス脱硝装置10は、このような運転(運用)方法に限定されるものではなく、エンジン排気ガス規制海域(ECA:Emission Control Area)内においては、バーナー部15を用いて(作動させて)排気ガスを常時昇温(加熱)するようにし、エンジン排気ガス規制海域外においては、脱硝反応器14の性能が低下した(所定のレベルを下回った)場合(例えば、煙道30内を通過する排気ガス中のNOx測定値が設定値を超えた場合)に、バーナー部15のノズルから燃焼筒43の内部に向けて燃焼用空気および燃料を噴出させ、燃焼筒43の内部に火炎を作り出し、過給機5から脱硝反応器14に供給される排気ガスを昇温(加熱)させて、その後、脱硝反応器14の性能が回復(再生)した(所定のレベルを上回った)場合(例えば、煙道30内を通過する排気ガス中のNOx測定値が設定値を下回った場合)に、バーナー部15のノズルから燃焼筒43の内部への燃焼用空気および燃料の噴出を停止させ、燃焼筒43の内部に火炎が作り出されないようにし、過給機5から脱硝反応器14に供給される排気ガスの昇温(加熱)を停止させるようにしてもよい。
これにより、エンジン排気ガス規制海域内においては、排気ガス中のNOxを確実に除去することができ、排気ガス中のNOx濃度を規制値内に収めるようにすることができる。
【0039】
また、上述した実施形態において、脱硝反応器14の上流側(近傍)に位置する煙道24に、排気ガス中の粒子状物質であるPM(Particulate Matter)を捕集するEP(Electrostatic Precipitator)やDPF(Diesel Particulate Filter)等の除塵装置(集塵装置)が設けられているとさらに好適である。
このように、脱硝反応器14の上流側(好ましくは、上流側近傍)に位置する煙道24に除塵装置を配置することにより、脱硝反応器14内へのPMの流入を抑制する(低減させる)ことができ、脱硝反応器14の劣化速度を遅延させることができて、脱硝反応器14の再生間隔を延ばすことができ、バーナー部15における燃料消費量を抑制することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 船舶
2 舶用内燃機関
4 過給機
10 舶用排気ガス脱硝装置
11 還元剤貯蔵タンク
13 還元剤噴射ノズル
14 脱硝反応器
15 バーナー部(加熱手段)
16 制御装置
29 触媒
44 ベーン(旋回力付与手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舶用内燃機関から排出されて、過給機を駆動した排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元する舶用排気ガス脱硝装置であって、
還元剤が貯蔵された還元剤貯蔵タンクと、
前記還元剤貯蔵タンクに貯蔵された還元剤を、前記排気ガス中に噴出させる還元剤噴射ノズルと、
前記排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元する触媒を備えた脱硝反応器と、
前記脱硝反応器よりも上流側に設けられて、前記脱硝反応器に供給される排気ガスを昇温させる加熱手段と、
前記脱硝反応器の性能が所定のレベルを下回った場合に、前記加熱手段を作動させ、前記脱硝反応器に供給される排気ガスを昇温させて、その後、前記脱硝反応器の性能が所定のレベルを上回った場合に、前記加熱手段を停止させ、前記脱硝反応器に供給される排気ガスの昇温を停止させる機能を備えた制御装置と、を具備していることを特徴とする舶用排気ガス脱硝装置。
【請求項2】
前記加熱手段に流入した排気ガスに旋回力を付与する旋回力付与手段が、前記加熱手段内に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の舶用排気ガス脱硝装置。
【請求項3】
前記脱硝反応器の上流側に、前記排気ガス中の粒子状物質を捕集する除塵装置が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の舶用排気ガス脱硝装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の舶用排気ガス脱硝装置を具備していることを特徴とする船舶。
【請求項5】
還元剤が貯蔵された還元剤貯蔵タンクと、
前記還元剤貯蔵タンクに貯蔵された還元剤を、前記排気ガス中に噴出させる還元剤噴射ノズルと、
前記排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元する触媒を備えた脱硝反応器と、
前記脱硝反応器よりも上流側に設けられて、前記脱硝反応器に供給される排気ガスを昇温させる加熱手段と、を備え、
舶用内燃機関から排出されて、過給機を駆動した排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元する舶用排気ガス脱硝装置の運転方法であって、
前記脱硝反応器の性能が所定のレベルを下回った場合に、前記加熱手段を作動させ、前記脱硝反応器に供給される排気ガスを昇温させて、その後、前記脱硝反応器の性能が所定のレベルを上回った場合に、前記加熱手段を停止させ、前記脱硝反応器に供給される排気ガスの昇温を停止させるようにしたことを特徴とする舶用排気ガス脱硝装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−82804(P2012−82804A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231822(P2010−231822)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(510273787)株式会社赤阪鐵工所 (2)
【出願人】(592250540)株式会社大島造船所 (32)
【出願人】(000174541)堺化学工業株式会社 (96)
【出願人】(595055162)社団法人日本舶用工業会 (25)
【Fターム(参考)】