説明

船の側方方向舵

【課題】船のテーパ状の船尾において、船尾の形状に追従している流れの点から見て有利な方向舵板を提供する。
【解決手段】船の船尾、すなわち、方向舵板の組み付け位置の領域における水の流れの構成に順応して捩られた方向舵板とする。方向舵板の捩れは、回転中のスクリューが船の進行方向において方向舵板の前側に配置されていない場合、個々の方向舵板の領域における水の流れの形態に適合している。すなわち、方向舵据付が進行方向に対して正確に真っ直ぐに設定された場合、方向舵に流入する流れの角度も正確に0°となることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は船のための方向舵板、および本発明による少なくとも1つの方向舵板を備えた船に関する。
【背景技術】
【0002】
船の航行時の船の船体に沿った流れが考慮された場合、船のテーパ状の船尾において、流れは船の竜骨のラインに正確に平行に延在しておらず、船の船尾の形状に追従していることが明確にわかる。
【0003】
従来形状の方向舵は、換言すると簡単に言えば平板を呈しており、船の船尾領域内の竜骨のラインから側方に配置されるように組み付けられており、0°の位置に向けられて竜骨のラインと正確に平行とされている。したがって、そこに対して傾斜角を持って流入する流れを持ち、これによって粘性を生じさせている。その粘性はより多くの燃料消費をもたらすことでより高レベルの環境汚染につながり、または同じ燃料消費もしくは同じエンジン出力において速度の低下を招くことで航行時間が長くなり、換言すると、より多くの燃料消費と、より重度の環境汚染とをもたらす。
【0004】
特許文献1から、スクリューで発生した流れに順応する方向舵板が公知である。その場合、スクリューによって発生した流れの方向が考慮され、方向舵は翼弦の方向においてプロファイルの多様性内で適切に適応される。例えば、その公報の表1は個々のプロファイルの高さ(Y方向位置)の増加に伴った方向舵板の角度における粘性を示しており、そのプロファイルはその前部に配置されたスクリューの軸から始まっている。方向舵板の特別な形状は、方向舵による乱流によって効果の詳細を考慮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5415122号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、流れの点から見て有利な方向舵板を提供することであり、竜骨のラインのそばで、船の船尾領域の側方に組み付けられることに関して、特別な利点がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その目的は方向舵板自身が捩られたことによって達成される。その捩れは船の船尾、すなわち、方向舵板の組み付け位置の領域における水の流れの構成に順応されている。これらの方向舵板の利点は方向舵板に関する高い効率であり、それは方向舵板の小型化を導き、(スクリューがある場合)スクリューに関して流入する流れを改善もする。
【0008】
本発明による効果は、方向舵位置が0°において、すなわち、方向舵据付が進行方向に対して正確に真っ直ぐに設定された場合、方向舵に流入する流れの角度も正確に0°となることである。
【0009】
(水面での任意の事象における)流れが確実に船の船尾領域の船体形状に追従するので、方向舵板のトップサイド(船体に向かったサイド)での方向舵板の傾きの正確な角度は、船尾の幾何学的形状に自然に依存する。捩れは徐々にアンダーサイド(船の船体から離れる方に向いたサイド)に向かって減少している。
【0010】
この場合は、方向舵板はその上部領域(船体近傍)において約10°の角度で捩られ、下部領域(船体から離れた領域)において約2°の角度で捩られている。それらの数値は所定の船体形状の固有の例について、初めにシミュレーションされ、次に実験的に確認される。これ以前に述べられたように、その捩れは船体の幾何学形状に依存しており、最大20°の捩れは船体近傍(上部領域)の方向舵板の領域において非現実的であるとは確実に考えられない。最大5°の範囲は下部領域(船体から離れた領域)において確実に考慮されることが可能である。
【0011】
しかしながら、その観点において、その捩れが常に竜骨のラインに関係していなければならず、換言すると、船体の中心に向かっていなければならないということが考えられる。したがって、方向舵板は常に内向きに捩られる。
【0012】
本発明によれば、船の制御のために配置された、少なくとも1つの捩られた方向舵板を備えた船が提案されており、船の航行の方向において回転中のスクリューが方向舵の前部に配置されていない場合は、ブレードの捩れは個々の方向舵板の領域における水の流れの形態に適応されている。したがって、方向舵板は船に対する水の流れに適応されており、流れはその前部に組み付けられたスクリューによって発生されない。むしろ、その流れは水を介した船の動きの結果による流れであり、主として意味のあることである。他の流れは考慮されないか、または発生しない。したがって、本発明の範囲によれば、方向舵の前側にスクリューは配置されていない。別の実施形態において、上流位置にスクリューが配置される場合は、スクリューは回転されていない。換言すると、スクリューは駆動されるのではなく、例えば、空回り状態にある。
【0013】
したがって、実施形態によれば、少なくとも2つの方向舵板が提案されており、それらは竜骨のラインに関して側方に配置されるように設けられている。方向舵板のねじりは船体の幾何学形状に起因した、個々の方向舵板の領域における水の流れの形態に適応されている。水を介した船の動きは船に対して流れを提供し、その流れは、強さの点から見て、水を介した船の速度にほぼ一致している。流れの固有の形態は、水中の場合、船の船体の幾何学形状によって初期的に決定される。方向舵板はその流れに適応されている。
【0014】
方向舵板の捩れとの語は、その長手軸に関する方向舵の回転変位を示すために使用している。しかしながら、個々の固有の捩れ角は、竜骨のラインに対する個々の高さにおける方向舵板の角度で指定されており、入射角としても反映されることが可能である。
【0015】
実施形態によれば、方向舵板は竜骨のラインに対して傾いた角度を有しており、個々の方向舵板は船の前方への動きにおける流れの方向において竜骨のラインに向かって面している。船尾に向かって後方に収束した船体形状により、および方向舵が船の船尾領域において通常通り配置されている場合、船が水を介して前進するとき、水の流れも−船に対して−後方に収束する。この実施形態はその効果を考慮している。したがって、真っ直ぐに前進しているとき、方向舵板も竜骨のラインに向かって面しており、これによって船の中心に向かって面している。
【0016】
実施形態によれば、個々の方向舵板の竜骨のラインに対する入射角は、船の船体から離れる距離の増加に伴って減少している。それに応じて方向舵板は捩れており、船体近傍において、より大きい入射角が存在し、したがって、船の船体からの距離が増加する、換言すると後方に向かうとともに捩れは減少している。
【0017】
実施形態によれば、入射角または捩れ角は2°から20°の間である。その観点において、より大きな数値が通常は船の船体近傍におけるものであり、より小さい数値が方向舵板の下端部におけるものである。例えば、角度は船の船体から落とすことが可能であり、船体または船体近傍においける20°から、下端における5°まで、または別の実施例においては、10°から2°の角度までとすることができる。
【0018】
実施形態によれば、船体近傍領域での入射角または捩れ角は10°から20°の間であり、船体から離れた領域での入射角または捩れ角は2°から5°の間である。
【0019】
好適に、2つの方向舵が竜骨のラインの2つの側に個々に対称的に配置される。したがって、1つの方向舵は進行方向の右側であり、したがって船の右舷側である。それに加えてその相手方は竜骨のラインの対向側であるが、その他の点では同じ位置である。そのような2つの方向舵は好適に相互に対称的な形状でもあり、すなわち、鏡像的な対称形状である。
【0020】
好適に、少なくとも1つのマグヌスロータ(Magnus rotor)が船の駆動源として設けられている。マグヌスロータはマグヌス効果を利用して船の前方への推進力を発生する。例えば、例示的な用途は円筒で形成され、その円筒は垂直に直立し、および高速で風の流れる方向の周りに回転する。個々の風の流れおよび回転の方向に依存して、船の前方への推進力が発生する。したがって、スクリューの動きによる駆動はなく、船体領域における水の流れは水を介した船の動きに従ってほぼ向けられ、流れのプロファイルは船の船体の幾何学形状によって決定される。方向舵板はそれに対応してデザインされる。さらに有利な効果は他の種類の駆動源が使用された場合にも現われ、その駆動源は船体領域において水の流れの中に全くまたはほとんど入らない。本発明によれば、スクリューが例えば補助推進源として設けられることも可能である。しかしながらその場合、一つまたは複数の方向舵板のデザインは、スクリューが駆動されない場合、例えば空回りしている状態の場合に、好適に実行される。
【0021】
本発明によれば、方向舵板もクレームされており、方向舵板は船に使用されるために提供されている。
【0022】
4つの図が明細書に添付されている。それらは図4、図3、図2、および図1と特定されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による方向舵板を示した図である。
【図2】船体を抜いた2つの方向舵板のみを示した図である。
【図3】船の船尾の図を示した図である。
【図4】2つの方向舵板を備えた船の船尾領域を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図4の図は2つの方向舵板を備えた船の船尾領域を示した図であり、方向舵板は船の竜骨のラインの脇の両方の側部に配置されている。方向舵板の1つは左側、すなわち竜骨のラインの左舷側に配置され、第2の方向舵板は右側、すなわち竜骨のラインの右舷側に配置されている。本図が指示することが可能である場合、船が純粋な帆船であるかどうか、または(例えば正確に竜骨のラインにおいて)さらなる方向舵板とともに少なくとも1つのスクリューがあるかどうかは、本発明に関して完全に無関係であるが、問題とならないことではない。
【0025】
図3の図は、幾分遠近感を修正しているが、さらなる船の船尾の図を示した図である。左舷(左側)の方向舵板は右に、すなわち竜骨のラインに向かって捩られており、右舷(右側)の方向舵板も左に、すなわち竜骨のラインに向かって捩られていることが、この図から明確にわかる。さらに、それぞれの方向舵板の入射角または捩れ角が全体からの距離が増加するにつれて減少していることが、この図から明確にわかる。しかしながら、特定の実施形態において、方向舵板の下端(船体から離れた領域)においてさえも、その角度が0°に到達することはなく、常に2°の角度までとされている。
【0026】
方向舵の前部にはスクリューが配置されていないことも、図3および4からわかる。図示された実施形態において、スクリューは全く存在しない。
【0027】
図2は(方向舵板が配置された)船体を抜いた2つの方向舵板のみを示した図である。この図において、捩れが再度明確に見られている。この図は船の後方から船尾領域に向かった図である。
【0028】
図1も本発明による方向舵板のみを示した図であるが、これ以降の図では、船の竜骨がそれらの方向舵板の間に見られる。(図の下方の)方向舵板の後縁における捩れがここで特に明確に見られている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船であって、
該船の制御のために配置された、少なくとも1つの捩られた方向舵板を具備した船において、
前記方向舵板の捩れは、回転中のスクリューが前記船の進行方向において前記方向舵板の前方に配置されていない場合に、個々の前記方向舵板の領域における水の流れの形態に適応されていることを特徴とする船。
【請求項2】
竜骨のラインに対して側方に配置された少なくとも2つの前記方向舵板が存在し、該方向舵板の捩れは、船体の幾何学形状に起因した、個々の前記方向舵の領域における水の流れの形態に適応されていることを特徴とする請求項1に記載の船。
【請求項3】
前記方向舵板は前記竜骨のラインに向かった入射角を有し、個々の前記方向舵板は前記船の前進方向における流れの向きにおいて前記竜骨のラインに向かって面していることを特徴とする請求項1または2に記載の船。
【請求項4】
個々の前記方向舵板の竜骨のラインに対する入射角は、前記船の船体からの距離が増加するにつれて減少していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の船。
【請求項5】
前記入射角または捩れ角は2°から20°の間であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の船。
【請求項6】
前記入射角または捩れ角は前記船体の近傍領域において10°から20°の間であり、前記船体から離れた領域において2°から5°の間であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の船。
【請求項7】
2つの前記方向舵板が、前記竜骨のラインの2つの側部に対称的に個々に配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の船。
【請求項8】
少なくとも1つのマグヌスロータが前記船のための駆動源として設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の船。
【請求項9】
方向舵板の捩れは、回転中のスクリューが船の進行方向において前記方向舵板の前側に配置されていない場合、個々の前記方向舵板の組み付け位置の領域における水の流れの形態に適合されていることを特徴とする捩られた方向舵板。
【請求項10】
竜骨のラインに対して側方に配置された少なくとも2つの前記方向舵板が存在し、該方向舵板の捩れは、船体の幾何学形状に起因した、個々の前記方向舵の領域における水の流れの形態に適応されていることを特徴とする請求項9に記載の捩られた方向舵板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−6598(P2013−6598A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−196993(P2012−196993)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【分割の表示】特願2009−530816(P2009−530816)の分割
【原出願日】平成19年10月8日(2007.10.8)
【出願人】(500017944)アロイス・ヴォベン (107)