説明

船外機の盗難防止装置

【目的】1つの船体への取り付けを予定される複数基の船外機それぞれが盗難防止装置を備える場合であっても、複数基の船外機を容易に始動させられるようにした船外機の盗難防止装置を提供する。
【解決手段】1つの船体への取り付けを予定される複数基の船外機(12F、12S)において、複数基の船外機の内の少なくとも1基の船外機の認証手段(例えば認証ECU26F)からその他の船外機のエンジン制御手段(例えばエンジンECU24S)にエンジンの始動を許可したことを通信するように構成、即ち、複数基の船外機の内の1基(例えば第1船外機12F)においてエンジン始動のための照合が取れたとき、その照合情報をその他の船外機(例えば第2船外機12S)に送信するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は船外機の盗難防止装置に関し、より具体的には1つの船体への取り付けを予定される複数基の船外機を対象とした船外機の盗難防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源としてエンジンを備える機器の盗難防止装置としては、下記特許文献1に記載されるように、ID情報が格納される電子キーが操作されるとき、そのID情報をイモビライザ制御部に送信し、認証用のID情報と照合し、照合が成立した(認証した)ときに限り、その電子キーによるエンジンの始動を許可することで盗難を防止するようにしたもの(いわゆるイモビライザ)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−90908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば1つの船体に船外機が多基掛けされる場合であって複数基の船外機それぞれが上記した盗難防止装置を備える場合、複数基の船外機全てを始動させるには各々の船外機に対応した電子キーを操作することになる。即ち、全ての船外機を始動するには、操船者は複数個の電子キーを所持しなければならず、またそれらを識別すると共に、同様な照合操作を複数回行う必要があるため、手間がかかり、煩わしいといった問題があった。
【0005】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、1つの船体への取り付けを予定される複数基の船外機それぞれが盗難防止装置を備える場合であっても、複数基の船外機を容易に始動させられるようにした船外機の盗難防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1にあっては、1つの船体への取り付けを予定される複数基の船外機を備えると共に、前記複数基の船外機のそれぞれが、エンジンと、前記エンジンの動作を制御するエンジン制御手段と、ID情報が格納される電子キーが操作されるとき、前記電子キーから前記ID情報を取得して認証用のID情報と一致するか否か判定し、前記取得したID情報が前記認証用のID情報と一致すると判定するとき、前記エンジン制御手段に前記エンジンの始動を許可することで前記船外機の盗難を防止する認証手段とを有する船外機の盗難防止装置において、前記複数基の船外機の内の少なくとも1基の船外機の前記認証手段からその他の船外機のエンジン制御手段に前記エンジンの始動を許可したことを通信するように構成した。
【0007】
また、請求項2に係る船外機の盗難防止装置にあっては、前記複数基の船外機の内の少なくとも1基の船外機の前記認証手段は、前記その他の船外機と通信し、前記取得したID情報が前記その他の船外機の認証用のID情報と一致するか否か判定し、前記取得したID情報が前記その他の船外機の認証用のID情報と一致すると判定するとき、前記その他の船外機のエンジン制御手段に前記その他の船外機のエンジンの始動を許可すると共に、前記少なくとも1基の船外機のエンジン制御手段に前記少なくとも1基の船外機のエンジンの始動を許可するように構成した。
【発明の効果】
【0008】
請求項1にあっては、1つの船体への取り付けを予定される複数基の船外機を備えると共に、複数基の船外機のそれぞれが、エンジンと、エンジンの動作を制御するエンジン制御手段と、ID情報が格納される電子キーが操作されるとき、電子キーからID情報を取得して認証用のID情報と一致するか否か判定し、取得したID情報が認証用のID情報と一致すると判定するとき、エンジン制御手段にエンジンの始動を許可することで船外機の盗難を防止する認証手段とを有する船外機の盗難防止装置において、複数基の船外機の内の少なくとも1基の船外機の認証手段からその他の船外機のエンジン制御手段にエンジンの始動を許可したことを通信するように構成、即ち、複数基の船外機の内の1基においてエンジン始動のための照合が取れたとき、その照合情報をその他の船外機に送信するように構成したので、その照合情報に基づいてその他の船外機のエンジンの始動も許可することで、その他の船外機において照合操作を行う必要がない。よって、複数基の船外機それぞれが盗難防止装置を備える場合であっても、操船者は複数基の船外機それぞれの電子キーの内の1つを所持すれば良く、1回の照合操作で全ての船外機を始動許可状態にすることができる。それにより、複数基の船外機を容易に始動させることができる。
【0009】
請求項2に係る船外機の盗難防止装置にあっては、複数基の船外機の内の少なくとも1基の船外機の認証手段は、その他の船外機と通信し、取得したID情報がその他の船外機の認証用のID情報と一致するか否か判定し、取得したID情報がその他の船外機の認証用のID情報と一致すると判定するとき、その他の船外機のエンジン制御手段にその他の船外機のエンジンの始動を許可すると共に、その少なくとも1基の船外機のエンジン制御手段にそのエンジンの始動を許可するように構成、即ち、複数基の船外機の内の1基によって取得したID情報が自己の船外機の認証用のID情報と相違するとしても、その他の船外機と通信し、その他の船外機の認証用のID情報と一致する場合には、全ての船外機を始動許可状態とするように構成したので、操船者は複数基の船外機それぞれの電子キーの内の任意の1つを所持し、複数基の船外機の内の任意の認証手段において1回の照合操作を行うことで、全ての船外機を始動許可状態にすることができる。それにより、複数基の船外機を一層容易に始動させることができる。
【0010】
また、複数基の船外機の認証手段のいずれかが故障したとしても、その他の船外機の認証手段を用いて全ての船外機を始動許可状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施例に係る船外機の盗難防止装置を船体まで含めて全体的に示す概略図である。
【図2】図1に示す船外機の盗難防止装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す船外機の盗難防止装置において第1船外機と第2船外機のエンジンを始動させる際の動作を示すフロー・チャートである。
【図4】図1に示す船外機の盗難防止装置において第1船外機と第2船外機のエンジンを始動させる際の動作を示す図3と同様なフロー・チャートである。
【図5】図1に示す船外機の盗難防止装置の構成を示す、図2と同様なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に即してこの発明に係る船外機の盗難防止装置を実施するための形態について説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、この発明の実施例に係る船外機の盗難防止装置を船体まで含めて全体的に示す概略図である。
【0014】
図1において符号1は、この発明の実施例に係る船外機の盗難防止装置を示す。図1に示すように、船体(艇体)10の後部には、複数基、具体的には2基の船外機12が固定(2基掛け)される。別言すれば、この2基の船外機12は1つの船体10への取り付けが予定される船外機群である。以下、右舷側の船外機(進行方向において右側に配置された船外機)を「第1船外機」と呼び、符号12Fで示す。また、左舷側の船外機(進行方向において左側に配置された船外機)を「第2船外機」と呼び、符号12Sで示す。また以下において、第1船外機12Fの構成部材には「F」の添え字を、第2船外機12Sの構成部材には「S」の添え字を付す。
【0015】
第1船外機12Fと第2船外機12Sはそれぞれ、プロペラ14F,14Sとエンジン16F,16Sを備える。プロペラ14F,14Sは、エンジン16F,16Sの動力が伝達されて回転し、船体10を推進させる。エンジン16F,16Sは、具体的には火花点火式のガソリンエンジンであり、排気量2200ccを備える。エンジン16F,16Sは水面上に位置し、エンジンカバーで被覆される。
【0016】
船体10の操縦席付近には、リモートコントロールボックス18が配置される。リモートコントロールボックス18には、操船者によって操作自在なレバー20が設けられる。レバー20は、初期位置から前後方向(操船者の手前方向と奥方向)に揺動操作自在とされ、操船者からのシフトチェンジ指示とエンジン回転数の調整指示が入力される。レバー20の付近にはレバー位置センサ(図示せず)が設けられ、操船者によって操作されたレバー20の位置に応じた信号を出力する。
【0017】
操縦席付近には、回転操作自在なステアリングホイール22が配置される。ステアリングホイール22は、操船者からの旋回指示が入力される。ステアリングホイール22の回転軸には回転角センサ(図示せず)が設けられ、操船者によって操作されたステアリングホイール22の回転角に応じた信号を出力する。
【0018】
第1船外機12Fと第2船外機12Sはそれぞれ、エンジン16F,16Sの近傍にエンジン16F,16Sをはじめ船外機12のその他の機器の動作を制御する電子制御ユニット(Electronic Control Unit。以下「エンジンECU」という)24F,24Sを備える。エンジンECU24F,24SはそれぞれCPU、ROM、メモリ、入出力回路などを備えたマイクロ・コンピュータからなる。上記したセンサの出力はエンジンECU24F,24Sそれぞれに入力される。エンジンECU24F,24Sは入力されたセンサ信号に基づいてROM内のプログラムに従ってエンジン16F,16Sをはじめ船外機12のその他の機器の動作を制御する。
【0019】
尚、船外機自体の詳細は、本出願人が先に提案した特開2006−142880号公報に記載されているので、これ以上の説明は省略する。
【0020】
第1船外機12Fと第2船外機12Sはそれぞれ、エンジンECU24F,24Sの近傍に電子キーの認証を行うことで船外機(ないしは船外機が搭載される船体)の盗難を防止するための電子制御ユニット(Electronic Control Unit。以下「認証ECU」という)26F,26Sを備える。認証ECU26F,26SもCPU、ROM、メモリ、入出力回路などを備えたマイクロ・コンピュータからなる。認証ECU26F,26Sは、電子キーが操作されるとき、電子キーに内蔵されるID情報を取得し、そのID情報が船外機12の認証用のID情報と一致するか否か判定し、一致すると判定するとき、船外機12のエンジン16の始動を許可する。
【0021】
エンジンECU24F,24Sと認証ECU26F,26Sはそれぞれ、第1船外機12F、第2船外機12Sあるいは船体10に搭載されるバッテリ電源から電力が供給されるときに起動する。
【0022】
図2は、第1船外機12Fと第2船外機12SそれぞれのエンジンECU24F,24Sと認証ECU26F,26Sの構成について説明するブロック図である。
【0023】
第1船外機12FにおいてエンジンECU24Fと認証ECU26Fは通信線28Fで接続される。エンジンECU24Fには第1船外機12Fのエンジン16Fを識別するためのID情報A(図中で「ID:A」と示す)が格納される。尚、ID情報は実際には、数桁の文字列からなる。
【0024】
電子キー30はカード状を呈する。第1船外機12Fに対応する電子キー30Fには、エンジンECU24Fに格納されるのと同じID情報A(図中で「ID:A」と示す)が格納される。
【0025】
認証ECU26Fはリーダ26aFを備え、第1船外機12Fに対応する電子キー30Fを第1船外機12Fの認証ECU26Fに近づけるように操作すると、認証ECU26Fはリーダ26aFから無線通信(より詳しくは、非接触型近距離無線通信)により電子キー30FのID情報Aを取得する。認証ECU26Fは取得した電子キー30FのID情報Aと通信線28Fを介して送信される第1船外機12Fのエンジン16FのID情報Aを照合する。
【0026】
この場合、両者のID情報が一致するため、認証ECU26Fは認証許可の信号を第1船外機12FのエンジンECU24Fに送信する。それにより、第1船外機12FのエンジンECU24Fは自身のエンジン16Fの始動を許可の状態とする。具体的には、エンジンECU24Fにおいてイグニッションポジションが確立された状態とする。この状態において、認証ECU26Fに付随して設けられるスタータスイッチ26bFをオンすると第1船外機12Fのエンジン16Fが実際に始動開始する。
【0027】
一方、第1船外機12Fの認証ECU26Fにおける照合において電子キー30から取得されるID情報と第1船外機12Fのエンジン16FのID情報が相違する場合には、認証ECU26Fは認証許可の信号を第1船外機のエンジンECU24Fに送信せず、イグニッションポジションが確立されないため、スタータスイッチ26bFをオンしたとしても第1船外機12Fのエンジン16Fは始動しない。
【0028】
第2船外機12Sにおいても、同様である。即ち、エンジンECU24Sと認証ECU26Sは通信線28Sで接続される。エンジンECU24Sには第2船外機12Sのエンジン16Sを識別するためのID情報B(図中で「ID:B」と示す)が格納される。
【0029】
第2船外機12Sに対応する電子キー30Sには、エンジンECU24Sに格納されるのと同じID情報B(図中で「ID:B」と示す)が格納される。
【0030】
その第2船外機12Sに対応する電子キー30Sを第2船外機12Sの認証ECU26Sに近づけるように操作すると、認証ECU26Sはリーダ26aSから無線通信(より詳しくは、非接触型近距離無線通信)により電子キー30SのID情報Bを取得する。認証ECU26Sは取得した電子キー30SのID情報Bと通信線28Sを介して送信される第2船外機12Sのエンジン16SのID情報Bを照合する。
【0031】
この場合も両者のID情報が一致するため、認証ECU26Sは認証許可の信号を第2船外機12SのエンジンECU24Sに送信し、第2船外機12SのエンジンECU24Sは自身のエンジン16Sの始動を許可の状態とする。この状態において、認証ECU26Sに付随して設けられるスタータスイッチ26bSをオンすると第2船外機12Sのエンジン16Sが実際に始動開始する。
【0032】
一方、第2船外機12Sの認証ECU26Sにおける照合において電子キー30から取得されるID情報と第2船外機12Sのエンジン16SのID情報が相違する場合には、認証ECU26Sは認証許可の信号を第2船外機12SのエンジンECU24Sに送信せず、イグニッションポジションが確立されないため、スタータスイッチ26bSをオンしたとしても第2船外機12Sのエンジン16Sは始動しない。
【0033】
このように、第1船外機12Fと第2船外機12Sはそれぞれ認証ECU26F,26Sによって電子キー30F,30SのID情報A,Bが認証用のID情報A,Bと一致した場合にエンジン始動を許可する一方、一致しない場合はエンジン始動を不許可とすることで船外機12(ないしは船体10)の盗難防止を可能とするような盗難防止機能を備える。
【0034】
この発明に係る船外機の盗難防止装置1において特徴的なことは、図示のように、第1船外機12Fの通信線28Fと第2船外機12Sの通信線28Sを接続する接続線32を設けたことにある。それにより、第1船外機12Fの認証ECU26Fと第2船外機12SのエンジンECU24Sも通信自在となる。また、第2船外機12Sの認証ECU26Sと第1船外機12FのエンジンECU24Fも通信自在となる。即ち、第1船外機12Fと第2船外機12Sの盗難防止装置における認証情報を接続線32を介して互いに通信し合うことにより、第1船外機12Fと第2船外機12Sの始動操作性を容易にした。以下、この発明に係る船外機の盗難防止装置1の動作について詳説する。
【0035】
図3は、第1船外機12Fと第2船外機12Sのエンジン16F,16Sを始動させる際の動作を示すフロー・チャートである。尚、初期設定として、第1船外機12Fの認証ECU26Fと第2船外機12Sの認証ECU26Sに接続線32が設けられていることを認識させる。
【0036】
以下説明すると、まずS10において、第1船外機12Fに対応するID情報Aを有する電子キー30Fが第1船外機12Fの認証ECU26Fのリーダ26aF付近に操作されたとき、第1船外機12Fの認証ECU26Fはその電子キー30FのID情報Aを取得する。
【0037】
次いでS12に進み、第1船外機12Fの認証ECU26Fは第1船外機12FのエンジンECU24Fと通信し、S14に進んで取得した電子キー30FのID情報Aと第1船外機12Fに関するID情報Aとを照合する。
【0038】
この場合ID情報Aが一致するため、認証許可とし、S16に進んで第1船外機12Fの認証ECU26Fは第1船外機12Fのエンジン16Fの始動を許可すると共に、S18にも進んで第1船外機12Fの認証ECU26Fは第2船外機12SのエンジンECU24Sと前記した接続線32を介して通信する。即ち、第1船外機12Fの認証ECU26Fは第1船外機12Fに関する認証許可情報を第2船外機12SのエンジンECU24Sに送信する。次いで、S20に進んで第1船外機12Fの認証ECU26Fは第2船外機12Sのエンジン16Sの始動も許可する(正確には、第2船外機12SのエンジンECU24Sが、送信されてきた第1船外機12Fに関する認証許可情報に基づいて自身のエンジン16Sの始動を許可の状態とする)。
【0039】
また、S10において第1船外機12Fの認証ECU26Fは電子キー30FのID情報Aを取得すると、S18にも進んで第2船外機12SのエンジンECU24Sと前記した接続線32を介して通信し、次いでS22に進んで取得した電子キー30FのID情報Aと第2船外機12Sに関するID情報Bとを照合する。この場合ID情報が不一致であるため、S24に進んで動作を終了する。
【0040】
また、第2船外機12Sに対応する電子キー30Sを第2船外機12Sの認証ECU26Sに対して操作した場合も上記と同様である。
【0041】
即ち、S26において第2船外機12Sに対応するID情報Bを有する電子キー30Sが第2船外機12Sの認証ECU26Sのリーダ26aS付近に操作されたとき、第2船外機12Sの認証ECU26Sはその電子キー30SのID情報Bを取得する。
【0042】
次いでS18に進み、第2船外機12Sの認証ECU26Sは第2船外機12SのエンジンECU24Sと通信し、S22に進んで取得した電子キー30SのID情報Bと第2船外機12Sに関するID情報Bとを照合する。
【0043】
この場合ID情報Bが一致するため、認証許可とし、S20に進んで第2船外機12Sの認証ECU26Sは第2船外機12Sのエンジン16Sの始動を許可すると共に、S12にも進んで第2船外機12Sの認証ECU26Sは第1船外機12FのエンジンECU24Fと前記した接続線32を介して通信する。即ち、第2船外機12Sの認証ECU26Sは第2船外機12Sに関する認証許可情報を第1船外機12FのエンジンECU24Fに送信する。次いで、S16に進んで第2船外機12Sの認証ECU26Sは第1船外機12Fのエンジン16Fの始動も許可する(正確には、第1船外機12FのエンジンECU24Fが、送信されてきた第2船外機12Sに関する認証許可情報に基づいて自身のエンジン16Fの始動を許可の状態とする)。
【0044】
また、S26において第2船外機12Sの認証ECU26Sは電子キー30SのID情報Bを取得すると、S12にも進んで第1船外機12FのエンジンECU24Fと前記した接続線32を介して通信し、次いでS14に進んで取得した電子キー30SのID情報Bと第1船外機12Fに関するID情報Aとを照合する。この場合ID情報が不一致であるため、S28に進んで動作を終了する。
【0045】
このように、第1船外機12Fあるいは第2船外機12Sの認証ECU26F,26Sは自身の船外機12においてエンジン始動のための認証が取れたとき、自身のエンジン16を始動許可状態とすると共に、その認証許可情報を他方の船外機12のエンジンECU24に通信し、他方のエンジン16も始動許可状態とするようにした。従って、第1船外機12Fと第2船外機12Sそれぞれが盗難防止装置を備える場合であっても、第1船外機12Fと第2船外機12Sいずれかに対して認証操作を行うことで、第1船外機12Fと第2船外機12Sいずれも始動許可状態にすることができる。それにより、第1船外機12Fと第2船外機12Sを容易に始動させることができる。
【0046】
図4は、図3と同様なエンジン始動時の動作フローである。図4を参照し、第2船外機12Sに対応する電子キー30Sを第1船外機12Fの認証ECU26Fに対して操作した場合、および第1船外機12Fに対応する電子キー30Fを第2船外機12Sの認証ECU26Sに対して操作した場合について説明する。
【0047】
まずS100において、第2船外機12Sに対応するID情報Bを有する電子キー30Sが第1船外機12Fの認証ECU26Fのリーダ26aF付近に操作されたとき、第1船外機12Fの認証ECU26Fはその電子キー30SのID情報Bを取得する。
【0048】
次いでS102に進み、第1船外機12Fの認証ECU26Fは第1船外機12FのエンジンECU24Fと通信し、S104に進んで取得した電子キー30SのID情報Bと第1船外機12Fに関するID情報Aとを照合する。この場合ID情報が不一致であるため、S106に進んで動作を終了する。
【0049】
一方、S100において第1船外機12Fの認証ECU26Fは電子キー30SのID情報Bを取得すると、S108にも進んで第2船外機12SのエンジンECU24Sと前記した接続線32を介して通信し、次いでS110に進んで取得した電子キー30SのID情報Bと第2船外機12Sに関するID情報Bとを照合する。
【0050】
この場合ID情報Bが一致するため、認証許可とし、S112に進んで第1船外機12Fの認証ECU26Fは第2船外機12SのエンジンECU24Sを介して第2船外機12Sのエンジン16Sの始動を許可すると共に、S102にも進んで第1船外機12Fの認証ECU26Fは第1船外機12FのエンジンECU24Fと通信する。即ち、第1船外機12Fの認証ECU26Fは第2船外機12Sに関する認証許可情報を第1船外機12FのエンジンECU24Fに送信する。次いで、S114に進んで第1船外機12Fの認証ECU26Fは第1船外機12Fのエンジン16Fの始動も許可する。
【0051】
また、第1船外機12Fに対応する電子キー30Fを第2船外機12Sの認証ECU26Sに対して操作した場合も上記と同様である。
【0052】
即ち、まずS116において、第1船外機12Fに対応するID情報Aを有する電子キー30Fが第2船外機12Sの認証ECU26Sのリーダ26aS付近に操作されたとき、第2船外機12Sの認証ECU26Sはその電子キー30FのID情報Aを取得する。
【0053】
次いでS108に進み、第2船外機12Sの認証ECU26Sは第2船外機12SのエンジンECU24Sと通信し、S110に進んで取得した電子キー30FのID情報Aと第2船外機12Sに関するID情報Bとを照合する。この場合ID情報が不一致であるため、S118に進んで動作を終了する。
【0054】
一方、S116において第2船外機12Sの認証ECU26Sは電子キー30FのID情報Aを取得すると、S102にも進んで第1船外機12FのエンジンECU24Fと前記した接続線32を介して通信し、次いでS104に進んで取得した電子キー30FのID情報Aと第1船外機12Fに関するID情報Aとを照合する。
【0055】
この場合ID情報Aが一致するため、認証許可とし、S114に進んで第2船外機12Sの認証ECU26Sは第1船外機12FのエンジンECU24Fを介して第1船外機12Fのエンジン16Fの始動を許可すると共に、S108にも進んで第2船外機12Sの認証ECU26Sは第2船外機12SのエンジンECU24Sと通信する。即ち、第2船外機12Sの認証ECU26Sは第1船外機12Fに関する認証許可情報を第2船外機12SのエンジンECU24Sに送信する。次いで、S112に進んで第2船外機12Sの認証ECU26Sは第2船外機12Sのエンジン16Sの始動も許可する。
【0056】
このように、第1船外機12Fあるいは第2船外機12Sの認証ECU26F,26Sは自身の船外機12においてエンジン始動のための認証が取れない場合でも、他方の船外機12と接続線32を介して通信し、電子キー30から取得したID情報が他方の船外機12の認証用のID情報と一致する場合には第1船外機12Fと第2船外機12Sの両方を始動許可状態とするようにした。従って、第1船外機12Fと第2船外機12Sいずれかに対して認証操作を行うに際してその船外機12に対応する電子キー30をわざわざ識別することなく、第1船外機12Fと第2船外機12Sの両方を始動許可状態とすることができる。それにより、第1船外機12Fと第2船外機12Sを一層容易に始動させることができる。
【0057】
尚、第1船外機12Fと第2船外機12Sに対応する電子キー30以外では、S14、S22、S104、S110におけるいずれの照合においても不一致となる結果、第1船外機12Fと第2船外機12Sが始動許可状態となることはない。それにより、盗難防止機能が担保される。
【0058】
また、第1船外機12Fと第2船外機12Sいずれかを取り外して新たな第3船外機を取り付けたとしても、接続線32を配すると共に、上記した初期設定を行わない限り、正常に動作しない。
【0059】
上記した如く、この実施例にあっては、1つの船体(10)への取り付けを予定される複数基の船外機(12F,12S)を備えると共に、前記複数基の船外機のそれぞれが、エンジン(16F,16S)と、前記エンジンの動作を制御するエンジン制御手段(エンジンECU24F,24S)と、ID情報(A,B)が格納される電子キー(30F,30S)が操作されるとき、前記電子キーから前記ID情報を取得して認証用のID情報(A,B)と一致するか否か判定し、前記取得したID情報が前記認証用のID情報と一致すると判定するとき、前記エンジン制御手段に前記エンジンの始動を許可することで前記船外機の盗難を防止する認証手段(認証ECU26F,26S)とを有する船外機の盗難防止装置(1)において、前記複数基の船外機の内の少なくとも1基の船外機の前記認証手段からその他の船外機のエンジン制御手段に前記エンジンの始動を許可したこと(認証許可情報)を通信するように構成した。
【0060】
即ち、複数基の船外機の内の1基においてエンジン始動のための照合が取れたとき、その照合情報をその他の船外機に送信するように構成したので、その照合情報に基づいてその他の船外機のエンジンの始動も許可することで、その他の船外機において照合操作を行う必要がない。よって、複数基の船外機それぞれが盗難防止装置を備える場合であっても、操船者は複数基の船外機それぞれの電子キーの内の1つを所持すれば良く、1回の照合操作で全ての船外機を始動許可状態にすることができる。それにより、複数基の船外機を容易に始動させることができる。
【0061】
また、前記複数基の船外機の内の少なくとも1基の船外機の前記認証手段(認証ECU26F,26S)は、前記その他の船外機と通信し、前記取得したID情報が前記その他の船外機の認証用のID情報と一致するか否か判定し、前記取得したID情報が前記その他の船外機の認証用のID情報と一致すると判定するとき、前記その他の船外機のエンジン制御手段に前記その他の船外機のエンジンの始動を許可すると共に、前記少なくとも1基の船外機のエンジン制御手段に前記少なくとも1基の船外機のエンジンの始動を許可するように構成した。
【0062】
即ち、複数基の船外機の内の1基によって取得したID情報が自己の船外機の認証用のID情報と相違するとしても、その他の船外機と通信し、その他の船外機の認証用のID情報と一致する場合には、全ての船外機を始動許可状態とするように構成したので、操船者は複数基の船外機それぞれの電子キーの内の任意の1つを所持し、複数基の船外機の内の任意の認証手段において1回の照合操作を行うことで、全ての船外機を始動許可状態にすることができる。それにより、複数基の船外機を一層容易に始動させることができる。
【0063】
また、複数基の船外機の認証手段のいずれかが故障したとしても、その他の船外機の認証手段を用いて全ての船外機を始動許可状態にすることができる。
【0064】
尚、上記において接続線32(有線)で通信自在としたが、無線で通信自在となるように構成しても良い。
【0065】
また、2基の船外機の盗難防止装置を接続線32を用いて連係させることから、冗長的な認証ECUを削除し、図5に示す如く構成しても良い。その際、電子キー30に第1船外機12Fと第2船外機12Sに対応する2つのID情報A,Bを内蔵させるようにしても良い。
【0066】
また、2基掛けの船外機について説明したが、3基以上の多基掛けの船外機に対してもこの盗難防止装置を適用できる。
【符号の説明】
【0067】
1:盗難防止装置、10:船体、12F,12S:船外機、14F,14S:プロペラ、16F,16S:エンジン、18:リモートコントロールボックス、20:レバー、22:ステアリングホイール、24F,24S:エンジンECU、26F,26S:認証ECU、28F,28S:通信線、30F,30S:電子キー、32:接続線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの船体への取り付けを予定される複数基の船外機を備えると共に、前記複数基の船外機のそれぞれが、エンジンと、前記エンジンの動作を制御するエンジン制御手段と、ID情報が格納される電子キーが操作されるとき、前記電子キーから前記ID情報を取得して認証用のID情報と一致するか否か判定し、前記取得したID情報が前記認証用のID情報と一致すると判定するとき、前記エンジン制御手段に前記エンジンの始動を許可することで前記船外機の盗難を防止する認証手段とを有する船外機の盗難防止装置において、前記複数基の船外機の内の少なくとも1基の船外機の前記認証手段からその他の船外機のエンジン制御手段に前記エンジンの始動を許可したことを通信するように構成したことを特徴とする船外機の盗難防止装置。
【請求項2】
前記複数基の船外機の内の少なくとも1基の船外機の前記認証手段は、前記その他の船外機と通信し、前記取得したID情報が前記その他の船外機の認証用のID情報と一致するか否か判定し、前記取得したID情報が前記その他の船外機の認証用のID情報と一致すると判定するとき、前記その他の船外機のエンジン制御手段に前記その他の船外機のエンジンの始動を許可すると共に、前記少なくとも1基の船外機のエンジン制御手段に前記少なくとも1基の船外機のエンジンの始動を許可するように構成したことを特徴とする請求項1記載の船外機の盗難防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−122331(P2011−122331A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279928(P2009−279928)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】