説明

船外機用シール部材

【課題】ロワーカバーとアッパーカバーとの間を確実にシールしつつ、ヒケの発生により船外機の外観が損なわれるのを抑制し、また船外機の軽量化等を図る。
【解決手段】船外機のロワーカバー2の周縁上端部2Aとアッパーカバー3の周縁下端部3Aとの間に設けられたシール部材5に、ロワーカバー2に対するアッパーカバー3の垂直方向における取付位置を決める第1の支持部25と、ロワーカバー2に対するアッパーカバー3の水平方向における取付位置を決める第2の支持部26と、ロワーカバー2とアッパーカバー3との間をシールするシール部27とを形成する。これにより、アッパーカバー3の周縁下端部3Aに凹部等を形成する必要がなくなり、アッパーカバー3の側壁の厚さを変化させる必要がなくなるのでヒケを防止でき、また、ロワーカバー2に対してアッパーカバー3を位置決めするための係合部材を別途設ける必要がなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機の外殻を形成するロワーカバーとアッパーカバーとの間に設けられた船外機用シール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、船外機は、当該船外機の外殻を形成し、上側が開口した略箱状のロワーカバーと、このロワーカバーの上側を閉塞するアッパーカバーとを備え、ロワーカバーとアッパーカバーとによって形成された空間内にはエンジン等が収容されている。そして、ロワーカバーとアッパーカバーとの間にはシール部材が設けられ、エンジン等が収容された上記空間内に水が浸入することを防止している。
【0003】
特許文献1および2には、このような船外機のロワーカバーとアッパーカバーとの間に設けられたシール部材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−307181号公報
【特許文献2】特開平6−171595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
船外機のロワーカバーとアッパーカバーとの間をシールするシール部材は、リング状に形成され、ロワーカバーの周縁上端部またはアッパーカバーの周縁下端部に取り付けられる。そして、シール部材は、ロワーカバー上にアッパーカバーが取り付けられたときに、ロワーカバーの周縁上端部とアッパーカバーの周縁下端部との間を全周にわたってシールする。
【0006】
ところで、シール部材により、ロワーカバーの周縁上端部とアッパーカバーの周縁下端部との間を全周にわって確実にシールするためには、シール部材におけるシール部の弾性変形の範囲を適正な範囲に保つ必要があり、このためには、ロワーカバーに対するアッパーカバーの取付位置が垂直方向においても水平方向においても、設計時に予定された適正な位置となることが必要である。ロワーカバーに対するアッパーカバーの垂直方向または水平方向における取付位置が適正位置からずれると、シール部材とロワーカバーとの間、またはシール部材とアッパーカバーとの間に隙間が形成され、その隙間を介して水の浸入を許してしまう。
【0007】
このようなロワーカバーに対するアッパーカバーの取付位置のずれは例えば次のような方法で抑制することができる。すなわち、ロワーカバーの周縁上端部およびアッパーカバーの周縁下端部のそれぞれに互いに係合する凹凸を形成し、ロワーカバー上にアッパーカバーが取り付けられたときにこれらの凹凸を互いに係合させる。これにより、ロワーカバーに対するアッパーカバーの取付位置が適正位置からずれるのを抑制することができる。
【0008】
この点、特許文献1の図1には、ロワーカバー(ボトムカウル)の周縁上端部において外周側にリブを形成すると共に内周側に段部を形成し、一方、アッパーカバー(トップカウル)の周縁下端部において外周側に段部を形成すると共に内周側にリブを形成し、ロワーカバー上にアッパーカバーが取り付けられたときには、ロワーカバー側のリブをアッパーカバー側の段部に係合し、アッパーカバー側のリブをロワーカバー側の段部に係合することにより、ロワーカバーに対するアッパーカバーの取付位置を適正位置に位置決めする構造が記載されている。そして、特許文献1におけるシール部材は、ロワーカバー側のリブおよび段部と、アッパーカバー側のリブおよび段部との間に設けられている。
【0009】
また、特許文献2の図6には、アッパーカバーの周縁下端部にリブを設け、当該周縁下端部と当該リブとの間に凹部(溝)を形成し、ロワーカバー上にアッパーカバーが取り付けられたときには、アッパーカバー側の凹部内に、ロワーカバーの周縁上端部を挿入することにより、ロワーカバーに対するアッパーカバーの取付位置を適正位置に位置決めする構造を備えている。そして、特許文献2におけるシール部材は、アッパーカバー側の凹部とロワーカバーの周縁上端部との間に設けられている。
【0010】
しかしながら、特許文献1における上記構造では、ロワーカバーの周縁上端部およびアッパーカバーの周縁下端部にそれぞれリブと段部を形成するため、ロワーカバーの周縁上端部およびアッパーカバーの周縁下端部のそれぞれにおいて部分的にカバーの側壁の厚みが変化する。ロワーカバーおよびアッパーカバーをそれぞれ樹脂により形成する場合、これら側壁の厚みの変化によりヒケが生じる。ロワーカバーまたはアッパーカバーに生じたヒケは、船外機の外観を損ねる。特に、ロワーカバーに比べてアッパーカバーは目立つ位置に配置されるため、アッパーカバーに生じたヒケは、船外機の外観を大きく損ねるという問題がある。
【0011】
これと同様に、特許文献2における上記構造においても、アッパーカバーの周縁下端部に凹部を形成するため、アッパーカバーの周縁下端部において部分的にカバーの側壁の厚みが変化し、この結果、アッパーカバーを樹脂により形成する場合には、ヒケの発生により船外機の外観を大きく損ねるという問題がある。
【0012】
一方、船外機の中には、ロワーカバー上にアッパーカバーが取り付けられたときに互いに係合し、ロワーカバーに対するアッパーカバーの取付位置を適正位置に位置決めする係合部材をアッパーカバーおよびロワーカバーの内側にそれぞれ取り付けたものがある。確かに、アッパーカバーまたはロワーカバーの内側に係合部材を取り付けることで、アッパーカバーの側壁の厚みを変化させることなく、ロワーカバーに対するアッパーカバーの取付位置を適正位置に位置決めすることができる。しかし、この場合、アッパーカバーおよびロワーカバーのそれぞれに係合部材を設ける必要があるため、船外機の重量が増し、大型化し、あるいはカバー内部の空間が小さくなってしまい、船外機の軽量化、小型化またはカバー内の空間の確保を図ることが難しくなるという問題がある。
【0013】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の第1の課題は、ロワーカバーとアッパーカバーとの間を確実にシールしつつ、ヒケの発生により船外機の外観が損なわれるのを抑制することができる船外機用シール部材を提供することにある。
【0014】
本発明の第2の課題は、ロワーカバーとアッパーカバーとの間を確実にシールしつつ、船外機の軽量化、小型化またはカバー内の空間の確保を図ることができる船外機用シール部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第1の船外機用シール部材は、船外機の外殻を形成し上側が開口したロワーカバーと前記ロワーカバーの上側を閉塞するアッパーカバーとの間に設けられ、前記ロワーカバーと前記アッパーカバーとの間を全周にわたってシールする船外機用シール部材であって、前記ロワーカバーの周縁上端部においてその外面が前記ロワーカバーの全周にわたって前記ロワーカバーの内側に略水平方向に伸長した後に前記ロワーカバーの上側に略垂直方向に伸長することにより形成されたシール部材載置段部に設けられ、内周側側面が前記シール部材載置段部の略垂直方向に伸長する第1の面に当接し、弾性材料によりリング状に形成されたシール部材本体と、前記シール部材本体の外周側側面の下部から前記シール部材本体の全周にわたって前記シール部材本体の外側に略水平方向に伸長し、下面が前記シール部材載置段部の略水平方向に伸長する第2の面に当接すると共に上面が前記アッパーカバーの周縁下端部の下端面に当接することにより、前記アッパーカバーを前記ロワーカバーに対して垂直方向に支持する第1の支持部と、前記シール部材本体の外周側側面において前記第1の支持部よりも上側から前記シール部材本体の全周にわたって前記シール部材本体の外側に略水平方向に伸長し、外周側側面が前記アッパーカバーの周縁下端部の内周側側面に当接することにより、前記アッパーカバーを前記ロワーカバーに対して水平方向に支持する第2の支持部と、前記シール部材本体の外周側側面において前記第2の支持部よりも上側から前記シール部材本体の全周にわたって前記シール部材本体の外側に略水平方向に伸長し、外周側側面が前記アッパーカバーの周縁下端部の内周側側面に弾性変形した状態で当接することにより、前記アッパーカバーと前記ロワーカバーとの間をシールするシール部とを備えている。
【0016】
本発明の第1の船外機用シール部材によれば、ロワーカバー上にアッパーカバーが取り付けられたとき、アッパーカバーの周縁下端部の下端面がシール部材の第1の支持部の上面に当接する。これにより、ロワーカバーに対するアッパーカバーの垂直方向における取付位置が適正位置となる。また、ロワーカバー上にアッパーカバーが取り付けられたとき、アッパーカバーの周縁下端部の内周側側面がシール部材の第2の支持部の外周側側面に当接する。これにより、ロワーカバーに対するアッパーカバーの水平方向における取付位置が適正位置となる。さらに、ロワーカバー上にアッパーカバーが取り付けられたとき、アッパーカバーの周縁下端部の内周側側面がシール部材のシール部によりシールされる。これにより、ロワーカバーとアッパーカバーとの間を介して水が浸入することを防止することができる。
【0017】
このように、シール部材の第1の支持部および第2の支持部にアッパーカバーの周縁下端部を当接させることで、ロワーカバーに対するアッパーカバーの取付位置を垂直方向においても水平方向においても適正位置に位置決めすることができ、これにより、当該シール部材のシール部の弾性変形の範囲を適正な範囲に保つことができる。したがって、当該シール部によるロワーカバーとアッパーカバーとの間の確実なシール性を確保することができる。よって、ロワーカバーに対するアッパーカバーの取付位置を適正位置に位置決めするために、アッパーカバーの周縁下端部等に凹部や段部を形成しなくてもよく、それゆえ、アッパーカバーの周縁下端部等の厚さを変化させる必要がないので、アッパーカバーの周縁下端部等にヒケが発生することがない。したがって、船外機の外観を良くすることができる。また、ロワーカバーに対するアッパーカバーの取付位置を適正位置に位置決めするために係合部材を別途設ける必要がないので、船外機の軽量化、小型化、カバー内のスペースの確保を図ることができる。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の第2の船外機用シール部材は、上述した本発明の第1の船外機用シール部材において、前記第1の支持部と前記第2の支持部とは両者間に隙間を介さず互いに連続して形成され、前記第1の支持部の上面と前記第2の支持部の外周側側面とは互いに接していることを特徴とする。
【0019】
本発明の第2の船外機用シール部材によれば、第1の支持部と第2の支持部とを一体的に形成することにより、第1の支持部および第2の支持部の剛性を高めることができる。これにより、第1の支持部および第2の支持部により、アッパーカバーを強固に支持することができ、ロワーカバーに対するアッパーカバーの取付位置を適正位置に確実に位置決めすることができる。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の第3の船外機用シール部材は、上述した本発明の第1または第2の船外機用シール部材において、前記シール部材本体の内周側に形成され、前記ロワーカバーの周縁上端部をその上方から狭持することにより、前記シール部材本体を前記ロワーカバーの周縁上端部に取り付けて固定する取付部を備えていることを特徴とする。
【0021】
本発明の第3の船外機用シール部材によれば、当該シール部材をロワーカバーの周縁上端部に固定することができるので、ロワーカバーに対するアッパーカバーの取付性を良くし、ロワーカバーに対するアッパーカバーの取付位置の位置決めの精度を高め、また、ロワーカバーとアッパーカバーとの間を確実にシールすることが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ロワーカバーとアッパーカバーとの間を確実にシールしつつ、ヒケの発生により船外機の外観が損なわれるのを抑制することができ、また、船外機の軽量化、小型化またはカバー内の空間の確保を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態による船外機用シール部材が設けられた船外機を示す外観図である。
【図2】本発明の実施形態による船外機用シール部材と、当該船外機用シール部材が設けられるロワーカバーと、アッパーカバーとを示す分解斜視図である。
【図3】図2中の矢示III−III方向から見た本発明の実施形態による船外機用シール部材の断面を示す端面図である。
【図4】ロワーカバー上にアッパーカバーが取り付けられた状態における本発明の実施形態による船外機用シール部材の断面を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態による船外機用シール部材が設けられた船外機を示している。図1において、船外機1は、当該船外機1の外殻を形成し、上側が開口した略箱状のロワーカバー2と、ロワーカバー2上に取り付けられ、下側が開口した略箱状に形成され、ロワーカバー2の開口部を閉塞するアッパーカバー3とを備えている。ロワーカバー2およびアッパーカバー3はいずれも例えば樹脂等により形成されている。ロワーカバー2およびアッパーカバー3により覆われた空間には、エンジン等(図示せず)が収容されている。アッパーカバー3はロワーカバー2に着脱可能に取り付けられており、利用者はロワーカバー2からアッパーカバー3を取り外し、例えば、上記空間に収容されたエンジンのメンテナンス等を行うことができる。また、ロワーカバー2には、アッパーカバー3がロワーカバー2上に取り付けられた状態でアッパーカバー3をロワーカバー2に固定する留め具4が設けられている。
【0025】
また、ロワーカバー2とアッパーカバー3との間には本発明の実施形態による船外機用シール部材5が設けられている。シール部材5は、ロワーカバー2上にアッパーカバー3が取り付けられたときに、ロワーカバー2に対するアッパーカバー3の取付位置を適正位置に位置決めすると共に、ロワーカバー2とアッパーカバー3との間を両者の全周にわたってシールし、エンジン等が収容された上記空間に外部から水が浸入するのを防止する機能を有している。
【0026】
また、船外機1には、プロペラ6等を有する下部ユニット7、船外機1を船体の船尾板51に取り付けて固定するためのクランクブラケット8、船外機1ないし船体の操作を行うためのティラーハンドル9等が設けられている。
【0027】
図2は、ロワーカバー2、シール部材5およびアッパーカバー3を分解した状態を示している。図3は、図2中の矢示III−III方向から見たシール部材5の断面を示し、図4は、ロワーカバー2上にアッパーカバー3が取り付けられた状態におけるシール部材5の断面を示している。図2に示すように、シール部材5は、ロワーカバー2の周縁上端部2Aおよびアッパーカバー3の周縁下端部3Aに対応するようにリング状に形成されている。また、シール部材5は、後述する芯部24(図3参照)を除き、例えばゴム等の弾性材料により形成されている。
【0028】
シール部材5は、図3に示すように、垂直方向(図3中の上下方向)および水平方向(図3中の左右方向)にそれぞれ所定の寸法を有し、全体としてリング状に形成されたシール部材本体21を備えている。図2に示すように、ロワーカバー2の周縁上端部2Aは、その外面がロワーカバー2の全周にわたってロワーカバー2の内側に略水平方向に伸長した後にロワーカバー2の上側に略垂直方向に伸長している。これにより、ロワーカバー2の周縁上端部2Aには、図4に示すように、略垂直方向に伸長する第1の面11Aと略水平方向に伸長する第2の面11Bとを有するシール部材載置段部11が形成されている。シール部材5のシール部材本体21は、このシール部材載置段部11に設けられている。そして、シール部材本体21の内周側側面21Aは、シール部材載置段部11の第1の面11Aに当接している。
【0029】
また、シール部材本体21の内周側には、シール部材本体21をロワーカバー2の周縁上端部2Aに取り付けるための取付部22が形成されている。取付部22は、シール部材本体21の上部から略水平方向内向きに伸長した後、略垂直方向下向きに伸長している。また、取付部22はシール部材本体21の全周にわたって周方向に伸長している。そして、取付部22は、図4に示すように、ロワーカバー2の周縁上端部2Aをその上方から狭持することにより、シール部材本体21をロワーカバー2の周縁上端部2Aに係り止めている。また、取付部22には2つの保持部23が形成されている。各保持部23は取付部22の側面から略水平方向に伸長し、取付部22の全周にわたって周方向に伸長している。そして、各保持部23は、ロワーカバー2の周縁上端部2Aの内周側側面に弾性変形した状態で当接することにより、シール部材本体21をロワーカバー2の周縁上端部2Aに固定している。
【0030】
取付部22および各保持部23によれば、シール部材5をロワーカバー2の周縁上端部2Aに固定することができるので、ロワーカバー2に対するアッパーカバー3の取付性を良くし、ロワーカバー2に対するアッパーカバー3の取付位置の位置決めの精度を高め、また、ロワーカバー2とアッパーカバー3との間を確実にシールすることが可能になる。
【0031】
また、シール部材本体21および取付部22の内部には芯部24が設けられている。芯部24は、金属材料等により略U字状ないし略コ字状に形成され、また、全体としてリング状に形成されている。芯部24は、シール部材5全体のリング状の形状を保持する機能を有している。
【0032】
また、シール部材本体21の外周側側面21Bの下部には、アッパーカバー3をロワーカバー2に対して垂直方向に支持する第1の支持部25が形成されている。第1の支持部25は、シール部材本体21の外周側側面21Bからシール部材本体21の外側に略水平方向に伸長している。具体的には、第1の支持部25は、図4に示すように、第1の支持部25の外周側側面25Aがロワーカバー2の周縁上部の外周側側面2Bまたはロワーカバー2上に取り付けられたアッパーカバー3の周縁下部の外周側側面3Bと水平方向においてほぼ一致するまでシール部材本体21の外側に略水平方向に伸長している。また、第1の支持部25は、シール部材本体21の全周にわたって周方向に伸長している。
【0033】
そして、第1の支持部25の下面25Bは、シール部材載置段部11の第2の面11Bに当接する。一方、第1の支持部25の上面25Cは、ロワーカバー2上にアッパーカバー3が取り付けられたとき、アッパーカバー3の周縁下端部3Aの下端面3Cに当接する。このように、第1の支持部3は、ロワーカバー2上にアッパーカバー3が取り付けられたとき、ロワーカバー2上においてアッパーカバー3を受け止め、アッパーカバー3を垂直方向に支持する。
【0034】
また、第1の支持部25には所定の厚さ(垂直方向における寸法)D1が設定されている。また、上述したように、ロワーカバー2上にアッパーカバー3が取り付けられたときには、第1の支持部25は、ロワーカバー2に形成されたシール部材載置段部11の第2の面11Bとアッパーカバー3の周縁下端部3Aの下端面3Cとの間に挟まれるが、大きく弾性変形することがない。これにより、ロワーカバー2上にアッパーカバー3が取り付けられたとき、ロワーカバー2上におけるアッパーカバー3の垂直方向における取付位置が、設計時に予定された適正な位置に位置決めされる。なお、第1の支持部25の下面25Bには、図3に示すように、いくつかの凹凸が形成されているが、これら凹凸は、ロワーカバー2上にアッパーカバー3が取り付けられたときには、図4に示すように弾性変形し、これにより、下面25Bはほぼ平らになる。
【0035】
一方、シール部材本体21の外周側側面21Bにおいて第1の支持部25よりも上側には、アッパーカバー3をロワーカバー2に対して水平方向に支持する第2の支持部26が形成されている。第2の支持部26は、シール部材本体21の外周側側面21Bからシール部材本体21の外側に略水平方向に伸長している。具体的には、第2の支持部26は、図4に示すように、第2の支持部26の外周側側面26Aが、ロワーカバー2上に取り付けられたアッパーカバー3の周縁下部の外周側側面3Bからアッパーカバー3の周縁下部ないし周縁下端部3Aにおける側壁の厚さD2に相当する距離だけ水平方向内向きに離れた位置まで水平方向に伸長している。また、第2の支持部26は、シール部材本体21の全周にわたって周方向に伸長している。
【0036】
そして、第2の支持部26の外周側側面26Aは、ロワーカバー2上にアッパーカバー3が取り付けられたとき、アッパーカバー3の周縁下端部3Aの内周側側面3Dに当接し、アッパーカバー3をロワーカバー2に対して水平方向に支持する。
【0037】
また、シール部材本体21の内周側側面21Aから第2の支持部26の外周側側面26Aまでの水平方向における寸法D3は所定の値に設定されている。また、ロワーカバー2上にアッパーカバー3が取り付けられたときには、第2の支持部26は、ロワーカバー2に形成されたシール部材載置段部11の第1の面11Aとアッパーカバー3の周縁下端部3Aの内周側側面3Dとの間に挟まれるが、大きく弾性変形することがない。これにより、ロワーカバー2上にアッパーカバー3が取り付けられたとき、ロワーカバー2上におけるアッパーカバー3の水平方向における取付位置が、設計時に予定された適正な位置に位置決めされる。
【0038】
ここで、シール部材5において、第1の支持部25と第2の支持部26とは、図4に示すように、垂直方向において両者間に隙間を介さず互いに連続して一体的に形成され、第1の支持部25の上面25Cと第2の支持部26の外周側側面26Aとは互いに接している。このように、第1の支持部25と第2の支持部26とを一体的に形成することにより、第1の支持部25および第2の支持部26の剛性を高めることができる。これにより、第1の支持部25および第2の支持部26により、アッパーカバー3を強固に支持することができ、ロワーカバー2に対するアッパーカバー3の取付位置を適正位置に確実に位置決めすることができる。
【0039】
他方、シール部材本体21の外周側側面21Bにおいて第2の支持部26よりも上側には、アッパーカバー3とロワーカバー2との間を全周にわたってシールするシール部27が形成されている。シール部27は、シール部材本体21の外周側側面21Bからシール部材本体21の外側に略水平方向に伸長し、ロワーカバー2上にアッパーカバー3が取り付けられたときには、外周側側面27Aがアッパーカバー3の周縁下端部3Aの内周側側面3Dに弾性変形した状態で当接する。具体的には、シール部27の外周側側面27Aは、図3に示すように、第2の支持部26の外周側側面26Aを水平方向において外側に超える位置まで伸長している。ところが、ロワーカバー2上にアッパーカバー3が取り付けられたときには、シール部27の外周側側面27Aがアッパーカバー3の周縁下端部3Aの内周側側面3Dに押され、シール部27が図4に示すように水平方向に潰れるように弾性変形する。これにより、シール部27の外周側側面27Aがアッパーカバー3の周縁下端部3Aの内周側側面3Dを押圧した状態で、当該内周側側面3Dに当接、すなわち密着する。この結果、シール部27の外周側側面27Aとアッパーカバー3の周縁下端部3Aの内周側側面3Dとの間がシールされる。また、シール部27は、シール部材本体21の全周にわたって形成されており、シール部27によるシール性は、ロワーカバー2およびアッパーカバー3の全周にわたって発揮される。
【0040】
ここで、ロワーカバー3上にアッパーカバー2が取り付けられ、アッパーカバー3の周縁下端部3Aの下端面3Cおよび内周側側面3Dが第1の支持部25および第2の支持部26にそれぞれ当接した状態では、シール部27は、当該シール部27が適切なシール性を発揮し得る適正な範囲内において弾性変形する。例えばシール部27が弾性変形した状態では、シール部27の水平方向における寸法が、弾性変形していない状態のシール部27の水平方向における寸法の15%程度縮小される。
【0041】
また、シール部27には、全周にわたって周方向に伸長する孔28が形成されており、これにより、シール部27の内部が中空となっている。このような構造により、シール部27は、第1の支持部25、第2の支持部26と比較して、小さな力を加えることで容易に弾性変形することができる。
【0042】
以上説明したとおり、本発明の実施形態による船外機用シール部材5によれば、第1の支持部25および第2の支持部26にアッパーカバー3の周縁下端部3Aの下端面3Cおよび内周側側面3Dをそれぞれ当接させることで、ロワーカバー2に対するアッパーカバー3の取付位置を垂直方向においても水平方向においても適正位置に位置決めすることができる。これにより、シール部27の弾性変形の範囲を適正な範囲に保つことができ、シール部27によるロワーカバー2とアッパーカバー3との間の確実なシール性を確保することができる。したがって、上記特許文献1または2に記載されているように、ロワーカバー2に対するアッパーカバー3の位置決めを行うために、アッパーカバー3の周縁下端部3A等に凹部や段部を形成しなくてもよく、それゆえ、アッパーカバー3の周縁下端部3A等の厚さを変化させる必要がないので、アッパーカバー3の周縁下端部3A等にヒケが発生することがない。よって、船外機1の外観を良くすることができる。また、アッパーカバー3の周縁下端部3A等に凹部や段部を形成しなくてもよいので、アッパーカバー3等のデザインの自由度を高めることができる。さらに、ロワーカバー2に対するアッパーカバー3の取付位置を適正位置に位置決めするために係合部材を別途設ける必要がないので、船外機1の軽量化、小型化、カバー内のスペースの確保を図ることができる。
【0043】
なお、上述した実施形態では、シール部27に孔28を設けることにより、シール部27を比較的弾性変形し易い構造とする場合を例にあげたが、本発明においてシール部の形状はこれに限らない。例えば、シール部材本体21の外周側側面21Bに、シール部として、水平方向に外側に伸長し、厚さが小さく湾曲しやすい突条を形成してもよい。また、シール部材本体21の外周側側面21Bにおいて、垂直方向に複数のシール部を形成してもよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、ロワーカバー2の周縁上端部2Aを上方から狭持することによりシール部材5を当該周縁上端部2Aに固定する取付部22を設ける場合を例にあげたが、シール部材5を周縁上端部2Aに固定する方法は、これに限らない。例えば、接着剤と用いてシール部材5を周縁上端部2Aに固定する方法も採用することができる。
【0045】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う船外機用シール部材もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 船外機
2 ロワーカバー
2A 周縁上端部
3 アッパーカバー
3A 周縁下端部
3C 下端面
3D 内周側側面
11 シール部材載置段部
11A 第1の面
11B 第2の面
21 シール部材本体
21A 内周側側面
21B 外周側側面
22 取付部
25 第1の支持部
25A 外周側側面
25B 下面
25C 上面
26 第2の支持部
26A 外周側側面
27 シール部
27A 外周側側面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外機の外殻を形成し上側が開口したロワーカバーと前記ロワーカバーの上側を閉塞するアッパーカバーとの間に設けられ、前記ロワーカバーと前記アッパーカバーとの間を全周にわたってシールする船外機用シール部材であって、
前記ロワーカバーの周縁上端部においてその外面が前記ロワーカバーの全周にわたって前記ロワーカバーの内側に略水平方向に伸長した後に前記ロワーカバーの上側に略垂直方向に伸長することにより形成されたシール部材載置段部に設けられ、内周側側面が前記シール部材載置段部の略垂直方向に伸長する第1の面に当接し、弾性材料によりリング状に形成されたシール部材本体と、
前記シール部材本体の外周側側面の下部から前記シール部材本体の全周にわたって前記シール部材本体の外側に略水平方向に伸長し、下面が前記シール部材載置段部の略水平方向に伸長する第2の面に当接すると共に上面が前記アッパーカバーの周縁下端部の下端面に当接することにより、前記アッパーカバーを前記ロワーカバーに対して垂直方向に支持する第1の支持部と、
前記シール部材本体の外周側側面において前記第1の支持部よりも上側から前記シール部材本体の全周にわたって前記シール部材本体の外側に略水平方向に伸長し、外周側側面が前記アッパーカバーの周縁下端部の内周側側面に当接することにより、前記アッパーカバーを前記ロワーカバーに対して水平方向に支持する第2の支持部と、
前記シール部材本体の外周側側面において前記第2の支持部よりも上側から前記シール部材本体の全周にわたって前記シール部材本体の外側に略水平方向に伸長し、外周側側面が前記アッパーカバーの周縁下端部の内周側側面に弾性変形した状態で当接することにより、前記アッパーカバーと前記ロワーカバーとの間をシールするシール部とを備えていることを特徴とする船外機用シール部材。
【請求項2】
前記第1の支持部と前記第2の支持部とは両者間に隙間を介さず互いに連続して形成され、前記第1の支持部の上面と前記第2の支持部の外周側側面とは互いに接していることを特徴とする請求項1に記載の船外機用シール部材。
【請求項3】
前記シール部材本体の内周側に形成され、前記ロワーカバーの周縁上端部をその上方から狭持することにより、前記シール部材本体を前記ロワーカバーの周縁上端部に取り付けて固定する取付部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の船外機用シール部材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−97869(P2012−97869A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247898(P2010−247898)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】