説明

船底微細気泡発生装置

【課題】船の推進時における摩擦抵抗の低減効果が低下することを抑制することができ、性能維持のためのメンテナンスも容易である、船底微細気泡発生装置と、それを備えた船を提供する。
【解決手段】船底微細気泡発生装置は、空気供給管10と、内部に空気導入路23、24が形成された多孔体散気筒21、22が、継ぎ手30を介して着脱自在に連結されたものである。多孔体散気筒21、22は、樹脂又はセラミックスからなる焼結体であり、抗菌性を有しているものが好ましい。空気供給管10は、空気供給源に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船の推進時における摩擦抵抗を低減するための船底微細気泡発生装置及び前記装置を備えた船に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の航行時においては、船底部表面は水の摩擦抵抗を受けており、特に大型船の場合には水の摩擦抵抗が非常に大きなものとなる。このため、前記摩擦抵抗を低減する方法として、船底に気泡発生装置を設置する技術が知られている(特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1の発明は、船底(内部)上に設けたシーチェスト11内の船底外板1に空気吹き出し部3が設けられ、シーチェスト11内に空気供給口14が位置するように空気送給パイプ13が接続されている。シーチェスト内に供給された空気は、空気吹き出し部3から直接海水中に放出される(段落番号0014)。なお、シーチェスト11内は作業員が通行できるようにしていると記載されており(段落番号0014)、非常に大がかりな装置となっている。
【0004】
特許文献2の発明は、船底1内に設けられた気体室2(分室2a等)には、高圧空気室8aと繋がる高圧気体供給管3が接続されており、船底1には気泡噴出口1bが設けられている。船舶の航行時には、船底1に設けられた気泡噴出口1bから直接気泡が放出される。
【0005】
特許文献3の発明は、特許文献1、2の改良発明と記載されているが、船底5内部に複数のエアーチャンバ22が形成され、エアーチャンバ22内のフナ底5に空気噴出孔15が形成されている点においては同じである。
【0006】
特許文献1〜3の発明は、いずれも微小気泡の吹き出し部となる孔が直接船底に設けた構造のものであり、前記孔から直接海水中に気泡が放出されるようになっている。
しかし、このような構造のものの場合には、長期の航行中において前記孔が微生物や錆によって目詰まりしてしまい、摩擦低減効果が徐々に低下して行くという問題がある。さらに、航海ごとに船底の孔を掃除するという煩雑なメンテナンスも必要となる。
さらに特許文献1〜3の発明では、シーチェスト11、気体室2(分室2a等)、エアーチャンバ22のような空気分配用の空間が必須となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−227675号公報
【特許文献2】特開2008−114710号公報
【特許文献3】WO2010/058614 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、船の推進時における摩擦抵抗の低減効果が低下することを抑制することができ、性能維持のためのメンテナンスも容易である、船底微細気泡発生装置と、それを備えた船を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、課題の解決手段として、
空気供給管と、
前記空気供給管と着脱自在に接続される、樹脂製又はセラミックス製からなり、内部に空気導入路が形成された多孔体散気筒を有する、
船底に取り付けて使用するための船底微細気泡発生装置を提供する。
【0010】
本発明は、他の課題の解決手段として、
上記の船底微細気泡発生装置を備えた船であって、
空気供給管が、一端側が船内にある空気供給源と接続され、他端側は船底を貫通して水中に位置するように取り付けられており、
前記空気供給管の水中側の端部が、直接又は継ぎ手を介して多孔体散気筒と接続されている、船底微細気泡発生装置を備えた船を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の船底微細気泡発生装置を船に設置したときは、微細気泡の吹き出し部が微生物や錆で目詰まりするという問題が発生し難く、安定して微細気泡を発生させることができ、さらに装置の維持管理も容易である。
また本発明の船底微細気泡発生装置は構造が簡単であり、短期間の取り付け工事で船に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の船底微細気泡発生装置の斜視図。
【図2】図1中の多孔体散気筒の別実施形態の斜視図。
【図3】本発明の別実施形態である船底微細気泡発生装置の正面図。
【図4】(a)は、本発明のさらに別実施形態である船底微細気泡発生装置の正面図、(b)は(a)の側面図。
【図5】図4の斜視図(但し、図4中の船底、リング状バンド42a、42bは省略している)。
【図6】本発明の船底微細気泡発生装置の船底への取り付け状態を示す図(又は本発明の船底微細気泡発生装置を取り付けた船)であり、船底外側から見たときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<船底微細気泡発生装置>
(1)図1に示す船底微細気泡発生装置
船底微細気泡発生装置は、空気供給管10と多孔体散気筒20(図示している多孔体散気筒21、22を総称して多孔体散気筒20とする)を有している。
【0014】
空気供給管10は、船底微細気泡発生装置を船に取り付けたとき、船内部に位置する船内空気供給管11と、船外部(水中)に突き出される船外空気供給管12とからなる。
船内空気供給管11は、図示していない空気供給源と接続される。船内空気供給管11は、必要に応じてエアコンプレッサ、流量計、バルブ等と組み合わせて設置することができる。船内空気供給管11と空気供給源との間には、空気の分配室(例えば、特許文献2の気体室2)は不要である。
船外空気供給管12の供給口12aは、直接に多孔体散気筒20と接続してもよいが、図1に示す実施形態では、継ぎ手30を介して2つの多孔体散気筒21、22と接続されている。
船外空気供給管12は、接続する多孔体散気筒20の数に応じて(即ち、継ぎ手30の形状に応じて)、二股又は三股以上にすることができる。
空気供給管10は、金属、合成樹脂、セラミックスからなるものにすることができるが、鉄やステンレス等の金属製のものが好ましい。
【0015】
図1に示す継ぎ手30は、船外空気供給管12と2つの多孔体散気筒20を接続するために三股構造(T字管構造)になっている。
継ぎ手30は、船外空気供給管12の供給口12aと接続する第1接続口31、多孔散気筒21と接続する第2接続口32、多孔散気筒22と接続する第3接続口33を有している。
なお、船外空気供給管12と1つの多孔体散気筒20を接続するときには、1つの管又はL字管にすることができ、船外空気供給管12と3つの多孔体散気筒10を接続するときには四股(十字乃至はX字)管にすることができる。
【0016】
継ぎ手30の第1接続口31、第2接続口32及び第3接続口33の近傍には、接続部分をシール構造にするためのシール部材(Oリング又はリング状パッキン)31a、32a、33aが取り付けられている。
継ぎ手30の第2接続口32側にはフランジ35が設けられ、第3接続口33側にはフランジ36が設けられている。これらのフランジ35、36にも必要に応じてシール部材を配置することができる。
【0017】
継ぎ手30と船外空気供給管12は、継ぎ手30の第1接続口31を船外空気供給管12の供給口12a内に嵌め込むことで接続されている。継ぎ手30を使用しない場合には、船外空気供給管12と多孔散気筒とを着脱自在に接続する。このとき、シール部材(Oリング等)31aにより接続部の気密性が確保されている。なお、継ぎ手30と船外空気供給管12は、着脱自在にすることもでき、例えば、互いの接続部にネジ部を形成し、ねじ込むことで着脱自在に接続できるようにしてもよい。
【0018】
多孔散気筒21、22は、樹脂製又はセラミックス製のものであり、空気供給管10から供給された空気を微細気泡として水中に放出するためのものである。
多孔散気筒21、22の幅方向の断面形状は円形であるが、その他、楕円形、四角形、六角形等にすることもできる。
多孔散気筒21、22の大きさは(外径及び長さ)は、設置対象となる船の大きさ(船底の大きさ)に応じて適宜調整することができる。
【0019】
多孔散気筒21は、空気供給管10から供給された空気を導入するための空気導入路23を有している。空気導入路23の一端側の開口部は継ぎ手30の第2接続口32と接続するための接続口21aとなり、他端側の端面21bは閉塞されている。
【0020】
多孔散気筒22は、空気供給管10から供給された空気を導入するための空気導入路24を有している。空気導入路24の一端側の開口部は継ぎ手30の第3接続口33と接続するための接続口22aとなり、他端側の端面22bは閉塞されている。
【0021】
多孔散気筒21は、製造が容易であることから、図2で示すように空気導入路23を貫通させた状態のものを製造しておき、接続口21aと反対側の開口を樹脂製又はセラミックス製の栓26で閉塞した構造のものにすることもできる。
栓26は、シール部材26a(Oリング又はリング状パッキン)を有するものであり、嵌め込み方式又はねじ込み方式のものを使用することができる。
多孔散気筒22についても図2と同様の構造のものにすることができる。
【0022】
多孔散気筒21、22は、微細気泡を放出できるものであれば特に制限されるものではないが、樹脂又はセラミックスからなる焼結体であるものが好ましい。
樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリメタクリレート、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン等を使用することができる。
セラミックスとしては、アルミナ、ジルコニア、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、フォルステライト、ステアタイト、コーディエライト、再アロン、マシナブルセラミックス、ジルコン、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、フェライト、ムライト等を使用することができる。
【0023】
樹脂からなる焼結体は公知の製造方法により製造することができ、例えば、乳化重合又は粉砕により得られた樹脂微粒子を金型に充填し、加熱して樹脂微粒子同士の表面を融着させた後、冷却する方法を適用して製造することができる。
セラミックスからなる焼結体は公知の製造方法により製造することができ、例えば、セラミックス粉末、有機バインダー及び水を混合したものを金型に充填し、加熱して有機バインダーと水を除去した後、残存するセラミックス粉末同士を融着させ、冷却する方法を適用して製造することができる。
【0024】
多孔散気筒21、22は、水中微生物の付着を防止するため、少なくともその表面が抗菌性を有していることが好ましい。また、多孔散気筒20a、20bが樹脂又はセラミックスからなる焼結体であるときには、全体が抗菌性を有していることが好ましい。
【0025】
抗菌性を付与する方法としては、樹脂又はセラミックス中に抗菌剤を含有させる方法を適用することができる。
抗菌剤は、無機系の抗菌剤でも有機系の抗菌剤でもよいが、環境への影響を考慮すると、無機系の抗菌剤を使用することが好ましい。無機系の抗菌剤としては、公知の銀、銅、亜鉛又はそれらを含む化合物を使用することができる。
【0026】
多孔散気筒21、22は、空気供給管10から供給された空気により微細気泡を発生させるため、連続した多数の空孔を有しているものである。
多孔散気筒21、22は、空孔率が15〜55%の範囲のものが好ましく、より好ましくは20〜45%、さらに好ましくは25〜40%の範囲のものである。
表面に露出している空孔の孔径は、微細気泡を発生させるため、10〜500μmの範囲が好ましく、50〜300μmの範囲がより好ましい。
【0027】
多孔散気筒21、22と継ぎ手30は、継ぎ手30の第2接続口32を多孔散気筒21の接続孔21a内に嵌め込み(フランジ35が接続孔21aの開口部に当接されている)、継ぎ手30の第3接続口33と多孔散気筒22の接続孔22a内に嵌め込む(フランジ36が接続孔22aの開口部に当接されている)ことで着脱自在に接続されている。このとき、シール部材(Oリング等)32a、33aにより接続部の気密性が確保されている。
なお、多孔散気筒21、22と継ぎ手30は、互いの接続部にネジ部を形成し、ねじ込むことで着脱自在に接続できるようにしてもよい。
【0028】
(2)図3に示す船底微細気泡発生装置
図3に示す船底微細気泡発生装置は、図1に示す船底微細気泡発生装置に対して一部構成要件を付加しただけの違いである。以下、異なる構成要件のみについて説明する。
なお、100は船底を示しているが、図3に示す船底微細気泡発生装置の船底100への取り付け状態を示すためのものであり、船底100の厚みと船底微細気泡発生装置の寸法関係は考慮していない。
【0029】
図3に示す船底微細気泡発生装置は、板状のホルダー40が付加されており、板状のホルダー40に対して、多孔散気筒21、22と継ぎ手30が固定手段で着脱自在に取り付けられている。
ホルダー40は、金属製でも樹脂製でもよいが、船底100に取り付ける観点から鉄やステンレス等の金属製が好ましい。
【0030】
多孔散気筒21は、板状のホルダー40に固着された2つのリング状バンド41a、41bで周囲が支持されている。板状のホルダー40と多孔散気筒21の間には、多孔散気筒21からの散気ができるようにするための隙間60が形成されている。
多孔散気筒22は、板状のホルダー40に固着された2つのリング状バンド42a、42bで周囲が支持されており、板状のホルダー40と多孔散気筒22の間には、多孔散気筒22からの散気ができるようにするための隙間60が形成されている。
継ぎ手30の第1接続口31側は、図示していないが、同様の板状のホルダー40に固着されたリング状バンド(図5のリング状バンド43a)で周囲が支持されている。
リング状バンド41a、41b、42a、42bは、金属製又は樹脂製のものを使用することができるが、金属製のものが好ましい。
【0031】
(3)図4、図5に示す船底微細気泡発生装置
図4、図5に示す船底微細気泡発生装置は、図3に示す船底微細気泡発生装置に対してさらにカバー50を付加しただけの違いである。以下、異なる構成要件のみについて説明する。
図5は、ホルダー40が透明なものとして表示している。
【0032】
カバー50は、水面や水中に存在する漂流物(流木、ゴミ等)から船底微細気泡発生装置(特に多孔体散気筒21、22)を保護するためのものである。
【0033】
カバー50は金属製のものであり、ホルダー40との線状の接触部55においてに溶接等で固着されている。継ぎ手30の第1接続口31側はカバー50を貫通して、船外空気供給管12と接続されている。
【0034】
カバー50は、水の抵抗を緩和するため、図4、図5に示す船底微細気泡発生装置を船底に取り付けたとき、船の進行方向(図4(b)中の白矢印方向)に向く面(進行時に水の抵抗を受ける面)が曲面51を有するものが好ましい。曲面51は、円弧面であることが好ましく、より好ましくは図4(b)に示すような1/4円弧面である。
図4(a)、(b)に示すカバー50は、ホルダー40と曲面51を除いた面は開放されているため、開放箇所から微細気泡の放出が行われる。
【0035】
多孔散気筒21、22は、ホルダー40とカバー50の内周面の両方に固着されたリング状バンド41a、41b、42a、42bで周囲から支持・固定されている。
またホルダー40とカバー50は、線状の接触部55において固着されていると共に、リング状バンド41a、41b、42a、42bを介しても一体化されている。
【0036】
図1〜図5で示す船底微細気泡発生装置は、水圧感知センサーを取り付けることができる。
水圧感知センサーは、例えばカバー50の外側に取り付けることができる。
船底微細気泡発生装置に水圧感知センサーを取り付けることにより、多孔体散気筒21、22に加えられる水圧を検知することで、その水圧を超える圧力で空気を供給することができるようになる。このため、船の航行状態に応じて、安定した微細発泡を発生させることができる。
【0037】
<船底微細気泡発生装置を備えた船>
本発明の船底微細気泡発生装置を備えた船を図1〜図6により説明する。
本発明の船底微細気泡発生装置は、図3及び図4に示すようにして、ホルダー40の面40aが船底100の外側面100aに対して溶接等により固着されている。
【0038】
船底微細気泡発生装置の数や取り付け位置は、船の大きさに応じて適宜調整することができるが、航行中に水と接触している船底面積の50%以上が微細気泡と接触できるように配置することが好ましく、前記船底面積の100%が微細気泡と接触できるように配置することがより好ましい。
【0039】
船底微細気泡発生装置は、例えば、図6で示すようにして、船首に近い位置に船底微細気泡発生装置1a、1b、1cを設置することができる。
船底微細気泡発生装置1a、1b、1cは、図1〜図5で示す多孔体散気筒21、22を示すものでもあり、少ない装置数でより広い範囲の船底100を微細気泡で覆うため、図示するように、多孔体散気筒21、22が、船の進行方向(図6中の船首側に示されている白矢印方向)に対して垂直方向になるように(図4(b)で示す曲面51が船の進行方向に向くように)取り付けられていることが好ましい。
また船底100の両側端側に設置するときは、図6に示す船底微細気泡発生装置1d、1eのように、船の進行方向(図6中の船首側に示されている白矢印方向)に対して斜め方向になるように取り付けることもできる。このとき、船の進行方向と多孔体散気筒21、22の中心軸がなす角度は20〜80度程度にすることができる。
【0040】
船には、図6に示すように船の推進機であるプロペラ110、推進機関における冷却水の吸い込み口111を有している。このため、船底微細気泡発生装置1a〜1eから発生した微細気泡がプロペラ110や吸い込み口111方向に流れて行くことを防止するため、船底100にガイド部材111、121を設置することが好ましい。
ガイド部材111、121は、平面形状がV字状の平板部材からなるものであり、船の進行方向に対して平面形状が逆V字状になるように設置する。
【0041】
次に、本発明の船底微細気泡発生装置を備えた船における前記装置の動作を説明する。
船の航行中、空気源から高圧空気を直接供給することで、船底微細気泡発生装置1a〜1eが有するそれぞれの多孔体散気筒21、22から微細気泡を発生させる。微細気泡は、船底と接触しながら船尾方向に流れていく。
このとき、上記したように水圧感知センサーを備えた船底微細気泡発生装置にすることによって、水圧の変化に応じて適正圧力の空気を供給して安定した微細発泡を発生させることができる。
なお、船底微細気泡発生装置1a〜1eは、全てを同時に作動させる必要はなく、船底100と水との接触状態に応じて一部のみを選択して作動させることができる。
【0042】
本発明の船底微細気泡発生装置の好ましい実施形態について説明する。
多孔体散気筒21、22としては、次のものを使用することができる。
(多孔体散気筒21、22)
ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製の品名GTH−500
外径:7.5cm
内径:5.0cm
長さ:50.0cm
空孔率:36%
表面に存在する孔径:200〜300μm
【0043】
そして、上記の多孔体散気筒21、22が水深5mの海中に位置しているとき、圧力60〜65kPaで空気を送ることで、気泡径1.0〜2.0mmの微細気泡を発生させることができる。
【0044】
本発明の船底微細気泡発生装置を船に設置したときは、特許文献1、2の発明のように船底に直接孔(微小気泡の吹き出し部)をあけた構造の装置のように、微小気泡の吹き出し部が微生物や錆で目詰まりするという問題が発生せず、安定して微細気泡を発生させることができる。
【0045】
また本発明の船底微細気泡発生装置を船に設置したときは、特許文献1におけるシーチェスト11、特許文献2における気体室2(分室2a等)、特許文献3におけるエアーチャンバ22のような空気分配用の空間が不要になることから、取り付け作業が簡単になる。
【0046】
また1つの航海終了後には、図5の装置であれば、船外空気供給管12と継ぎ手30から多孔体散気筒21、22を取り外すことができる。
このため、メンテナンスをするときには、取り外した多孔体散気筒21、22を排水処理設備の整った陸上にて容易に洗浄処理することができる。
よって、洗浄排水による海洋汚染が生じることもないし、他の海域で付着した海洋生物が別の海域で廃棄されることによる外来生物繁殖による生態系への悪影響も防止される。
さらに上記のとおり、多孔体散気筒21、22を取り外すことができるため、新しい部品との交換も容易である。
【0047】
本発明の船底微細気泡発生装置は、外洋を航行する船、沿海又は内海を航行する船、湖沼や河川を航行する船に対して設置することができる。
本発明の船底微細気泡発生装置は、新造船だけなく、既存の船にも簡単に取り付けることができる。
また本発明の船底微細気泡発生装置は、自走式の船だけでなく、引き船や押し船のような外部推進力により運行する非自走式の船にも適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
11 船内空気供給管11
12 船外空気供給管
21、22 多孔体散気管
30 継ぎ手
40 ホルダー
50 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気供給管と、
前記空気供給管と着脱自在に接続される、樹脂製又はセラミックス製からなり、内部に空気導入路が形成された多孔体散気筒を有する、
船底に取り付けて使用するための船底微細気泡発生装置。
【請求項2】
前記空気供給管と前記多孔体散気筒が、継ぎ手を介して着脱自在に連結されている、請求項1記載の船底微細気泡発生装置。
【請求項3】
前記多孔体散気筒が、板状のホルダーに着脱自在に支持された状態で空気供給管又は継ぎ手と接続されている、請求項1又は2記載の船底微細気泡発生装置。
【請求項4】
前記多孔体散気筒が、板状のホルダー及びカバーの両方に固定された支持手段により着脱自在に支持された状態で空気供給管又は継ぎ手と接続されており、
前記カバーが、船底微細気泡発生装置を船底に設置したとき、船の進行方向に向く面で、水流を受ける面が曲面を有し、船の進行方向と反対側が開放された構造のものである、請求項1又は2記載の船底微細気泡発生装置。
【請求項5】
前記多孔体散気筒が、樹脂又はセラミックスからなる焼結体である、請求項1〜4のいずれか1項記載の船底微細気泡発生装置。
【請求項6】
前記多孔体散気筒が、樹脂又はセラミックスからなる焼結体であり、少なくとも表面が抗菌性を有しているものである、請求項〜4のいずれか1項記載の船底微細気泡発生装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の船底微細気泡発生装置を備えた船であって、
空気供給管が、一端側が船内にある空気供給源と接続され、他端側は船底を貫通して水中に位置するように取り付けられており、
前記空気供給管の水中側の端部が、直接又は継ぎ手を介して多孔体散気筒と接続されている、船底微細気泡発生装置を備えた船。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項記載の船底微細気泡発生装置と微細気泡の流れ方向を制御するためのガイド部材を備えた船であって、
前記ガイド部材により、船の推進機関における冷却水の吸い込み口及び推進機であるプロペラ方向に微細気泡が流れて行かないように制御されている、船底微細気泡発生装置を備えた船。
【請求項9】
前記船底微細気泡発生装置が、多孔体散気筒が、船の進行方向に対して斜め方向又は垂直方向になるように取り付けられている、請求項7又は8記載の船底微細気泡発生装置を備えた船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−153276(P2012−153276A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14693(P2011−14693)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)