説明

船用給電装置とその制御方法

【課題】 既設及び新設の船舶に適用することができ、給電用のケーブルを船舶と岸壁の間で短時間に容易に掛け渡して配線することができ、船内発電装置と外部電源との切り換えを無停電で行うことができ、外部電源や船内発電装置に異常が発生しても、その影響が船内機器や外部電源におよぶのを未然に防止することができる船用給電装置とその制御方法を提供する。
【解決手段】 巻取ケーブル14を巻き取り・巻き戻し可能で船外の外部電源に接続可能なケーブルリール装置12と、ケーブルリール装置を介して供給された電力を遮断又は接続可能な第1遮断器22と、第1遮断器を介して供給された電力を遮断又は接続可能な第2遮断器24と、船内発電装置、ケーブルリール装置及び第2遮断器を制御する給電制御装置26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶が停泊中に、陸上の外部電源から電力の供給を受けるための船用給電装置とその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から船内に発電装置を備えていると共に、陸上に設置されている外部電源(陸上電源)から電力の供給を受けることができる船舶が知られている。
【0003】
図5は、船内発電装置を備えた従来の船舶の概略構成図である。この船舶100は、船内発電装置102(例えば、発電機付ディーゼルエンジン)を備えており、この船内発電装置102は、遮断器104を介して、船内の他の装置に電力を供給するための主母線106に電気的に接続されている。
【0004】
また例えばアッパーデッキ108には、受電端子110が設けられており、この受電端子110と主母線106との間は、船内ケーブル112を介して互いに電気的に接続されている。さらに、船内ケーブル112の中間部には、遮断器114が設けられている。
【0005】
さらにこの船舶100は、ガバナ103及び発電制御装置105を備えている。ガバナ103は、船内発電装置102に設けられ、発電制御装置105によりガバナ103を制御し、発電出力、発電周波数、及び位相を制御するようになっている。
また、遮断器104は、一般に発電制御装置105により、随時、電路の遮断/接続が遠隔で制御できるようになっている。なお、遮断器114は、発電制御装置105により制御されず、手動により操作されるのが一般的である。
【0006】
上述した構成により、受電端子110と岸壁に設置されている陸上の外部電源端子116との間をケーブル118で互いに接続すると共に、遮断器104の電路を開き、遮断器114の電路を閉じることにより、陸上の電源設備から電力の供給を受けることができる。
【0007】
なお、本発明に関連する技術として、たとえば、特許文献1、2が知られている。
【0008】
特許文献1の海底観測システムは、各海底観測装置53へ定電流給電する分岐給電装置54を小型化することを目的とし、図6に示すように、幹線系給電ライン52へ定電流給電する陸上給電装置51と、幹線系給電ライン52の給電電流を電流分岐するための分岐給電装置54と、分岐給電装置54から定電流給電される分岐給電ライン55と、分岐給電ライン55に対し各々直列に接続された各海底観測装置53とを備え、分岐給電装置54は並列接続された分岐線とこの分岐線の分岐電流を定電流化する電流リミッタとからなるものである。
【0009】
特許文献2の「海底給電方式」は、図7に示すように、陸上の給電装置63に対応して海底装置61の複数に給電回路を実装し、その給電回路と陸上の給電装置とを陸揚げケーブル68により接続し、その給電回路から海底ケーブル62の両方向にそれぞれ極性の異なる直流定電流を供給するものである。
【0010】
【特許文献1】特開2001−309553号公報、「海底観測システムの給電方法および分岐給電装置」
【特許文献2】特開2002−164820号公報、「海底給電方式」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の船舶100において船内の電源電圧として、6600Vの高電圧系統と400〜450V(以下、400V級という)の低電圧系統の2種類が通常用いられている。
【0012】
船舶が停泊中に必要とする船内電力を外部電源から供給する場合において、船舶が高電圧系統を用いている場合、ケーブル118を流れる電流は低電圧系統に比べれば少ないが、船内の所要電力は一般に大きく、ケーブル118は大径で重いものとなる。したがって、ケーブル118を、クレーン等を用いて船舶と岸壁の間に掛け渡して配線するのに時間がかかり、かつ作業環境が悪いという問題点があった。
また、船舶が低電圧系統を用いている場合、ケーブル118を流れる電流は高電圧系統に比べて約15倍以上の大電流となるため、ケーブル118は大径で重いものとなるだけでなく、ケーブル118の条数が増えることとなる(例えば、高電圧系統の場合は2本程度であるのに対して、低電圧系統では30本程度)。したがって、低電圧系統の場合は、高電圧系統と同様の問題点がより顕著となっていた。
【0013】
また、ケーブル118の配線後、船舶100が使用する電源を、船内発電装置102から外部電源に切り換える場合や、逆に、外部電源から船内発電装置に切り換える場合、従来は、主母線106に一時的に電力が供給できず、停電が発生する問題点があった。
【0014】
上記課題を船内に既に装備されている発電制御装置105や図示しない制御/監視システムを利用し、さらに、外部電源に異常が発生すると、その影響を船内機器が受けるおそれがあるという問題点も解決しようとすると、既設の設備に多大な変更を要し、既設船舶において上記課題を解決することは多くの時間と費用を伴うという問題点もあった。
【0015】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、既設及び新設の船舶に適用することができ、給電用のケーブルを船舶と岸壁の間で短時間に容易に掛け渡して配線することができ、船内発電装置と外部電源との切り換えを無停電で行うことができ、外部電源や船内発電装置に異常が発生しても、その影響が船内機器や外部電源におよぶのを未然に防止することができる船用給電装置とその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、船内発電装置を備えた船舶に取り付けられる船用給電装置であって、
巻取ケーブルを巻き取り・巻き戻し可能で船外の外部電源に接続可能なケーブルリール装置と、
該ケーブルリール装置を介して供給された電力を遮断又は接続可能な第1遮断器と、
該第1遮断器を介して供給された電力を遮断又は接続可能な第2遮断器と、
少なくとも前記船内発電装置、前記ケーブルリール装置及び前記第2遮断器を制御する給電制御装置とを備えた、ことを特徴とする船用給電装置が提供される。
【0017】
また、前記第1遮断器と前記第2遮断器との間に、外部電源の電圧を船内発電装置の電圧に変圧する変圧器を備える。
【0018】
前記ケーブルリール装置は、前記外部電源に接続可能なプラグを先端に有する巻取ケーブルと、該巻取ケーブルを巻き取り・巻き戻しするリールと、該リールを回転駆動する駆動装置と、前記巻取ケーブルの巻き戻し長さを検出する巻戻量検出器と、該巻戻量検出器の検出値に基づき前記駆動装置を制御するリール制御装置とからなり、該リール制御装置は、前記給電制御装置により制御される。
【0019】
前記給電制御装置は、前記外部電源の電圧、周波数及び/又は位相を検出する外部電源検出手段と、前記船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相を検出する船内電源検出手段と、前記外部電源に合わせて前記船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相をマッチングさせるマッチング指令手段と、を備える。
【0020】
前記船内発電装置の異常を検知する船内電源異常検知手段と、前記外部電源の異常を検知する外部電源異常検知手段と、を備え、前記給電制御装置は、前記船内電源異常検知手段及び前記外部電源異常検知手段の出力に基づいて異常監視を行う。
【0021】
また、本発明によれば、船内発電装置を備えた船舶に取り付けられる船用給電装置の制御方法であって、
前記船用給電装置は、巻取ケーブルを巻き取り・巻き戻し可能で船外の外部電源に接続可能なケーブルリール装置と、該ケーブルリール装置を介して供給された電力を遮断又は接続可能な第1遮断器と、該第1遮断器を介して供給された電力を遮断又は接続可能な第2遮断器とを備え、
前記船内発電装置から船内に電力供給している状態で前記巻取ケーブルを前記外部電源に接続するケーブル接続ステップと、
前記外部電源の電圧、周波数及び/又は位相を検出する外部電源検出ステップと、
前記船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相を検出する船内電源検出ステップと、
前記外部電源に合わせて前記船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相をマッチングさせるマッチングステップと、
該マッチングステップ後に前記第1遮断器及び前記第2遮断器を接続し前記船内発電装置からの電力供給を遮断する切換えステップと、を有することを特徴とする船用給電装置の制御方法が提供される。
【0022】
前記切換えステップは、前記船内発電装置からの電力供給を遮断する前に、前記船内発電装置から前記外部電源に負荷移行させる。
【0023】
また、船内発電装置を備えた船舶に取り付けられる船用給電装置の制御方法であって、
前記船用給電装置は、巻取ケーブルを巻き取り・巻き戻し可能で船外の外部電源に接続可能なケーブルリール装置と、該ケーブルリール装置を介して供給された電力を遮断又は接続可能な第1遮断器と、該第1遮断器を介して供給された電力を遮断又は接続可能な第2遮断器とを備え、
前記外部電源から船内に電力供給されている状態で前記船内発電装置を起動する船内電源起動ステップと、
前記外部電源の電圧、周波数及び/又は位相を検出する外部電源検出ステップと、
前記船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相を検出する船内電源検出ステップと、
前記外部電源に合わせて前記船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相をマッチングさせるマッチングステップと、
該マッチングステップ後に前記船内発電装置から電力供給を開始し前記第1遮断器及び前記第2遮断器を遮断する切換えステップと、
巻取ケーブルを外部電源から切り離しリールに巻き取るケーブル切離しステップと、を有することを特徴とする船用給電装置の制御方法が提供される。
【0024】
前記切換えステップは、前記第1遮断器及び前記第2遮断器を遮断する前に、前記外部電源から前記船内発電装置に負荷移行させる。
【0025】
さらに、船内発電装置を備えた船舶に取り付けられる船用給電装置の制御方法であって、
前記船用給電装置は、巻取ケーブルを巻き取り・巻き戻し可能で船外の外部電源に接続可能なケーブルリール装置と、該ケーブルリール装置を介して供給された電力を遮断又は接続可能な第1遮断器と、該第1遮断器を介して供給された電力を遮断又は接続可能な第2遮断器と、前記外部電源の異常を検知する外部電源異常検知手段とを備え、
前記外部電源から前記ケーブルリール装置、第1遮断器及び第2遮断器を介して船内に電力供給されている状態で、前記外部電源の異常を検出する外部電源異常検出ステップと、
前記外部電源の異常を検出した場合に前記船内発電装置から船内に電力供給するように切り換える異常時切換えステップと、を有することを特徴とする船用給電装置の制御方法が提供される。
【0026】
前記船用給電装置は、前記船内発電装置の異常を検知する船内電源異常検知手段を備え、
前記外部電源と前記船内発電装置との両方に接続された状態で、前記船内発電装置の異常を検出する船内電源異常検出ステップと、
前記船内発電装置の異常を検出した場合に前記外部電源の保護回路を作動させる外部電源保護ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0027】
上記本発明によれば、船内発電装置を備えた船舶に対して、ケーブルリール装置、第1遮断器、第2遮断器、及び給電制御装置を備えた船用給電装置を新たに設けることで、新設の船舶に適用できるだけでなく、既設の船舶に対しても容易に適用することができる。
【0028】
また、巻取ケーブルを巻き取って保持するケーブルリール装置で、巻取ケーブルを岸壁に向けて巻き戻して外部電源に接続できるので、接岸後に、給電用のケーブルを船舶と岸壁の間で短時間に容易に掛け渡して配線することができる。
【0029】
さらに、給電制御装置が、外部電源検出手段、船内電源検出手段、及びマッチング指令手段を備えるので、外部電源に合わせて船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相をマッチングさせた後で、第1遮断器及び第2遮断器を接続してから船内発電装置を停止させること或いは船内発電装置を接続してから第1遮断器及び第2遮断器を遮断して外部電源を切り離すことで、船内発電装置と外部電源との切り換えを無停電で行うことができる。
【0030】
また、外部電源が接続された状態において、本発明の方法では、外部電源の異常を検出した場合に、船内発電装置を起動して遮断器を接続し、船内発電装置から船内に電力供給するように切り換えることにより、外部電源に異常(電圧、周波数又は位相の)が発生しても、その影響が船内機器におよぶのを未然に防止することができる。
さらに、外部電源と船内電源の両方が接続された状態において、本発明の方法では、船内発電装置の異常を検出した場合に外部電源の保護回路を作動させることにより、船内電源に異常(電圧、周波数又は位相の)が発生しても、その影響が外部電源におよぶのを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0032】
図1は、本発明の第1実施形態を示す図である。なお、この例では、船内電源と外部電源の両方が6600Vの高電圧系統である場合を示しているが、本発明はこれに限定されず、両方が400V級の低電圧系統でもよい。
【0033】
この図において、船舶100は、船内発電装置102(例えば、発電機付ディーゼルエンジン)を備えており、この船内発電装置102は、遮断器104を介して、船内の他の装置に電力を供給するための主母線106に電気的に接続されている。この主母線106は、船舶100に設置されている機器(たとえば、照明設備、冷凍設備)に電力を供給するようになっている。
【0034】
さらにこの船舶100は、ガバナ103及び発電制御装置105を備えている。ガバナ103は、船内発電装置102に設けられ、発電制御装置105によりガバナ103を制御し、発電出力、発電周波数、及び位相を制御するようになっている。また、遮断器104は、発電制御装置105により、随時、電路の遮断/接続が遠隔で制御できるようになっている。
【0035】
なお、本発明において、船舶100(具体的には、船内発電装置102、ガバナ103、遮断器104、発電制御装置105、主母線106等からなる船内発電・配電設備)は、既設でも新設でもどちらでもよい。また、既設船舶の場合に、発電制御装置105を備えていない場合には、改造により追加してもよい。また、この改造が困難な場合には、これを省略し、同様の機能を有するほかの手段又は手動操作を併用してもよいし、後述する給電制御装置26で兼用するようにしてもよい。
【0036】
図1の例において、本発明の船用給電装置10は、ケーブルリール装置12、第1遮断器22、第2遮断器24及び給電制御装置26を備える。
【0037】
岸壁の海に近い部位(たとえば、岸壁の上面であって海側の端部)には、外部電源の接続端子の例であるソケット1が設置されている。このソケット1は、岸壁の地中に配線されているケーブルを介して、陸上の高電圧系統に接続されている。なお、外部電源は、6600Vの高電圧系統に限定されず、その他の高電圧系統、或いは他の電圧系統でもよい。
【0038】
ケーブルリール装置12は、外部電源に接続可能なプラグ11が先端に取り付けられた巻取ケーブル14と、巻取ケーブル14を巻き取り・巻き戻しするリール15と、リール15を回転駆動する駆動装置16(例えば電動モータ)と、巻取ケーブル14の巻き戻し長さを検出する巻戻し量検出器17と、巻戻し量検出器17の検出値に基づき前記駆動装置を制御するリール制御装置18とからなり、巻取ケーブル14を巻き取って保持し、かつ岸壁に向けて巻き戻し外部電源に接続できるようになっている。
またリール制御装置18は、制御線27aで接続され給電制御装置26により制御される。
巻取ケーブル14は、動力線と信号線からなる多線ケーブルであるのがよい。動力線は単相用の2本でも、3相用の3本でもよい。信号線は、1本でも複数でもよい。また、巻取ケーブル14は1本でも複数本でもよい。
【0039】
また、巻戻し量検出器17により、巻取ケーブル14の巻き戻し長さ(延出量)が所定の値を超えたことを検出した場合、リール制御装置18により駆動装置16の回転を停止するようになっている。
また、同様の場合に、外部電源から受けている電力を、船内発電装置102から受けるように切り換えてもよい。この場合、何らかの要因で船舶100が岸壁から所定の距離よりも離れて、例えば、巻取ケーブル14のプラグ11がソケット1からはずれる事態が発生しても、船舶100への電力の供給を無停電切り換えにて継続して行うことができる。なお、切り換え時に発電制御装置105により警報を出力させるようにしてもよい。
さらに、同様の場合に、外部電源の保護回路を作動させて外部電源からの電力の供給を停止するようにしてもよい。この場合、もし巻取ケーブル14が断線しても外部電源において不具合が発生するおそれを回避することができる。
【0040】
第1遮断器22は、外部ケーブル21と内部ケーブル25の間に設けられ、ケーブルリール装置12を介して供給された電力を給電制御装置26により遠隔制御で遮断又は接続可能に構成されている。
また、第2遮断器24は、内部ケーブル25と主母線106の間に設けられ、第1遮断器22を介して供給された電力を給電制御装置26により遠隔制御で遮断又は接続可能に構成されている。この第2遮断器24は、図5に示した遮断器114が既に装備されている場合には、この遮断器114を給電制御装置26で遠隔制御できるようにすることによって構成すればよい。
【0041】
なお、遮断器22、24は、高電圧系統の場合にはVCB(Vacuum Circuit Breaker)であり、低電圧系統の場合にはACB(Air Circuit Breaker)であるのが好ましい。また、船舶側が低電圧系統の場合であっても、外部電源が高電圧系統の場合には、第1遮断器22をVCBとし、第2遮断器24をACBとするのが好ましい。
【0042】
給電制御装置26は、リール制御装置18、第1遮断器22、第2遮断器24、及び発電制御装置105と制御線27a,27b,27c,27d,27e,27fでそれぞれ接続され、これらを遠隔制御する。
【0043】
また、第1遮断器22、第2遮断器24は、外部電源と船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相をそれぞれ検出できるように、制御線27bを第1遮断器22の陸側に、制御線27eを第2遮断器24の船側に接続している。
なお、給電制御装置26とリール制御装置を一体化して、制御線27aを省略してもよい。
【0044】
さらに、給電制御装置26と発電制御装置105とを接続する制御線27fは、給電制御装置26により、発電制御装置105を介して船内発電装置102の電圧、周波数及び/又は位相を制御し、そのフィードバック信号を得られるように構成する。
なお、船舶100が既設船舶の場合で、発電制御装置105を介しての電圧、周波数及び/又は位相の制御、或いはそのフィードバック信号の発信ができない場合には、同様の機能を有する他の手段又は手動操作を併用する。
【0045】
この給電制御装置26は、外部電源の電圧、周波数及び/又は位相を検出する外部電源検出手段(図示せず)と、船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相を検出する船内電源検出手段(図示せず)と、外部電源に合わせて船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相をマッチング指令するマッチング指令手段(図示せず)とを備える。
【0046】
図1に示した構成により、船内発電装置102を備えた船舶100に対して、ケーブルリール装置12、第1遮断器22、第2遮断器24、及び給電制御装置26を備えた船用給電装置10を新たに設けることで、既設及び新設の船舶に適用することができる。
また、巻取ケーブル14を巻き取って保持するケーブルリール装置12で、巻取ケーブル14を岸壁に向けて巻き戻し外部電源(ソケット1)に接続できるので、接岸後に、給電用のケーブル14を船舶と岸壁の間で短時間に容易に掛け渡して配線することができる。
【0047】
図2は、本発明の第2実施形態を示す図である。この例では、外部電源が6600Vの高電圧系統であり、船内の電源電圧が400V級の低電圧系統の場合を示している。
この例において、本発明の船用給電装置10は、第1遮断器22と第2遮断器24との間に、外部電源の電圧(6600V)を船内発電装置の電圧(400V級)に変圧する変圧器28を備える。変圧器28は、中間ケーブル23を介してそれぞれ第1遮断器22と第2遮断器24に接続されている。
その他の構成は、図1の第1実施形態と同様である。
【0048】
図2の構成によっても、図1と同様に既設及び新設の船舶に適用することができ、かつ接岸後に、給電用のケーブル14を船舶と岸壁の間で短時間に容易に掛け渡して配線することができる。
【0049】
また図2の構成では、船内の電源電圧が400V級の低電圧系統の場合に変圧器28を備えて外部電源の電圧(6600V)を船内発電装置の電圧(400V級)に変圧するので、給電用のケーブル14として高電圧系統用の電流が小さく(低電圧系統の1/15以下)、比較的小径で軽量のものを用いることができるので、給電用のケーブル14を船舶と岸壁の間で短時間に容易に掛け渡して配線することができる。
【0050】
図3は、本発明の制御方法を示すフロー図である。この図において、(A)は船内電源から外部電源に切換える制御方法を示している。
【0051】
図3(A)において、本発明の制御方法は、図1又は図2に示した装置を用い、ケーブル接続ステップS1、外部電源検出ステップS2、船内電源検出ステップS3、マッチングステップS4、切換えステップS5及び船内発電装置の停止ステップS6を有する。
【0052】
ケーブル接続ステップS1では、第1遮断器22及び第2遮断器24を遮断した状態で、巻取ケーブル14を岸壁に向けて巻き戻し外部電源(ソケット1)に接続する。
外部電源検出ステップS2では、外部電源の電圧、周波数及び/又は位相を検出する。
船内電源検出ステップS3では、船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相を検出する。
【0053】
マッチングステップS4では、外部電源に合わせて船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相をマッチングさせる。このマッチングは、例えば、船内発電装置の周波数が外部電源の周波数よりわずかに低くなるようにするのがよい。
切換えステップS5では、マッチングステップS4の後に、第1遮断器22及び第2遮断器24を接続し、遮断器104により船内発電装置102を遮断する。また、第1遮断器22及び第2遮断器24を接続した後、負荷移行を行い、負荷移行後に遮断器104により船内発電装置102を遮断するようにしてもよい。
停止ステップS6では、遮断器104により船内発電装置を遮断した後、船内発電装置102を停止する。
【0054】
上述した本発明の制御方法によれば、給電制御装置26が、外部電源検出手段、船内電源検出手段、及びマッチング指令手段を備えるので、外部電源に合わせて船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相をマッチング(S4)させた後で、第1遮断器22及び第2遮断器24を接続し、その後、船内発電装置102を停止させることで、船内発電装置102と外部電源との切り換えを無停電で行うことができる。
【0055】
図3(B)は、外部電源から船内電源に切換える制御方法を示している。この図において、本発明の制御方法は、図1又は図2に示した装置を用い、船内電源起動ステップS11、外部電源検出ステップS12、船内電源検出ステップS13、マッチングステップS14、切換えステップS15及びケーブル切離しステップS16を有する。
【0056】
船内電源起動ステップS11では、第1遮断器22及び第2遮断器24を接続し、船内発電装置を遮断した状態で、船内発電装置102を起動する。
外部電源検出ステップS12では、外部電源の電圧、周波数及び/又は位相を検出する。
船内電源検出ステップS13では、船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相を検出する。
【0057】
マッチングステップS14では、外部電源に合わせて船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相をマッチングさせる。このマッチングは、例えば、船内発電装置の周波数が外部電源の周波数よりもわずかに高くなるようにするのがよい。
【0058】
切換えステップS15では、マッチングステップS14の後に、遮断器104を接続して船内発電装置102を接続し、次いで第1遮断器22及び第2遮断器24を遮断する。また、遮断器104を接続した後、負荷移行を行い、負荷移行後に第1遮断器22及び第2遮断器24を遮断するようにしてもよい。
ケーブル切離しステップS16では、巻取ケーブル14を外部電源(ソケット1)から切り離しリールに巻き取る。
【0059】
上述した本発明の制御方法によれば、給電制御装置26が、外部電源検出手段、船内電源検出手段、及びマッチング指令手段を備えるので、外部電源に合わせて船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相をマッチングさせた後で、船内発電装置を接続し、その後、第1遮断器22及び第2遮断器24を遮断し、その後、外部電源(ソケット1)を切り離すことで、船内発電装置と外部電源との切り換えを無停電で行うことができる。
【0060】
図4(A)(B)は、異常検出時の制御方法を示している。
図4(A)において、本発明の制御方法は、図1又は図2に示した装置を用い、外部電源からケーブルリール装置12、第1遮断器22及び第2遮断器24を介して船内に電力供給されている状態において、外部電源の異常を検出する外部電源異常検出ステップS31と、外部電源の異常を検出した場合に船内発電装置102から船内に電力供給するように切り換える異常時切換えステップS32とを有する。
すなわち、外部電源が接続された状態において、本発明の方法では、外部電源の異常を検出した場合に、船内発電装置102を起動して遮断器104を接続し、船内発電装置102から船内に電力供給するように切り換えることにより、外部電源に異常(電圧、周波数又は位相の)が発生しても、その影響が船内機器におよぶのを未然に防止することができる。なお、船内発電装置102に切り換える際には、第1遮断器22及び第2遮断器24の両方を遮断してもよいし、いずれか一方のみを遮断するように制御してもよい。
【0061】
本発明の船用給電装置は、船内発電装置102の異常を検知する船内電源異常検知手段を備えている。また、図4(B)において、本発明の制御方法は、さらに、外部電源と船内発電装置との両方に接続された状態で、船内発電装置102の異常を検出する船内電源異常検出ステップS33と、船内発電装置の異常を検出した場合に外部電源の保護回路を作動させる外部電源保護ステップS34と、を有する。
すなわち、外部電源と船内電源の両方が接続された状態において、本発明の方法では、船内発電装置の異常を検出した場合に外部電源の保護回路を作動させることにより、船内電源に異常(電圧、周波数又は位相の)が発生しても、その影響が外部電源におよぶのを未然に防止することができる。
【0062】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1実施形態を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す図である。
【図3】電源切換え時の本発明の制御方法を示すフロー図である。
【図4】異常検出時の本発明の制御方法を示すフロー図である。
【図5】従来の船舶の概略構成図である。
【図6】特許文献1の海底観測システムの構成図である。
【図7】特許文献2の「海底給電方式」の構成図である。
【符号の説明】
【0064】
1 ソケット、10 船用給電装置、11 プラグ、12 ケーブルリール装置、
14 巻取ケーブル、15 リール、16 駆動装置、
17 巻戻し量検出器、18 リール制御装置、
21 外部ケーブル、22 第1遮断器、
23,23a,23b 中間ケーブル、24 第2遮断器、
25 内部ケーブル、26 給電制御装置、
27a,27b,27c,27d,27f 制御線、28 変圧器、
100 船舶、102 船内発電装置、104 遮断器、116 外部電源端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船内発電装置を備えた船舶に取り付けられる船用給電装置であって、
巻取ケーブルを巻き取り・巻き戻し可能で船外の外部電源に接続可能なケーブルリール装置と、
該ケーブルリール装置を介して供給された電力を遮断又は接続可能な第1遮断器と、
該第1遮断器を介して供給された電力を遮断又は接続可能な第2遮断器と、
少なくとも前記船内発電装置、前記ケーブルリール装置及び前記第2遮断器を制御する給電制御装置とを備えた、ことを特徴とする船用給電装置。
【請求項2】
前記第1遮断器と前記第2遮断器との間に、外部電源の電圧を船内発電装置の電圧に変圧する変圧器を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の船用給電装置。
【請求項3】
前記ケーブルリール装置は、前記外部電源に接続可能なプラグを先端に有する巻取ケーブルと、該巻取ケーブルを巻き取り・巻き戻しするリールと、該リールを回転駆動する駆動装置と、前記巻取ケーブルの巻き戻し長さを検出する巻戻量検出器と、該巻戻量検出器の検出値に基づき前記駆動装置を制御するリール制御装置とからなり、該リール制御装置は、前記給電制御装置により制御される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の船用給電装置。
【請求項4】
前記給電制御装置は、前記外部電源の電圧、周波数及び/又は位相を検出する外部電源検出手段と、前記船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相を検出する船内電源検出手段と、前記外部電源に合わせて前記船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相をマッチングさせるマッチング指令手段と、を備えることを特徴とする請求項1ないし3に記載の船用給電装置。
【請求項5】
前記船内発電装置の異常を検知する船内電源異常検知手段と、前記外部電源の異常を検知する外部電源異常検知手段と、を備え、前記給電制御装置は、前記船内電源異常検知手段及び前記外部電源異常検知手段の出力に基づいて異常監視を行う、ことを特徴とする請求項1ないし4に記載の船用給電装置。
【請求項6】
船内発電装置を備えた船舶に取り付けられる船用給電装置の制御方法であって、
前記船用給電装置は、巻取ケーブルを巻き取り・巻き戻し可能で船外の外部電源に接続可能なケーブルリール装置と、該ケーブルリール装置を介して供給された電力を遮断又は接続可能な第1遮断器と、該第1遮断器を介して供給された電力を遮断又は接続可能な第2遮断器とを備え、
前記船内発電装置から船内に電力供給している状態で前記巻取ケーブルを前記外部電源に接続するケーブル接続ステップと、
前記外部電源の電圧、周波数及び/又は位相を検出する外部電源検出ステップと、
前記船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相を検出する船内電源検出ステップと、
前記外部電源に合わせて前記船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相をマッチングさせるマッチングステップと、
該マッチングステップ後に前記第1遮断器及び前記第2遮断器を接続し前記船内発電装置からの電力供給を遮断する切換えステップと、を有することを特徴とする船用給電装置の制御方法。
【請求項7】
前記切換えステップは、前記船内発電装置からの電力供給を遮断する前に、前記船内発電装置から前記外部電源に負荷移行させる、ことを特徴とする請求項6に記載の船用給電装置の制御方法。
【請求項8】
船内発電装置を備えた船舶に取り付けられる船用給電装置の制御方法であって、
前記船用給電装置は、巻取ケーブルを巻き取り・巻き戻し可能で船外の外部電源に接続可能なケーブルリール装置と、該ケーブルリール装置を介して供給された電力を遮断又は接続可能な第1遮断器と、該第1遮断器を介して供給された電力を遮断又は接続可能な第2遮断器とを備え、
前記外部電源から船内に電力供給されている状態で前記船内発電装置を起動する船内電源起動ステップと、
前記外部電源の電圧、周波数及び/又は位相を検出する外部電源検出ステップと、
前記船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相を検出する船内電源検出ステップと、
前記外部電源に合わせて前記船内発電装置の電圧、周波数及び/又は位相をマッチングさせるマッチングステップと、
該マッチングステップ後に前記船内発電装置から電力供給を開始し前記第1遮断器及び前記第2遮断器を遮断する切換えステップと、
巻取ケーブルを外部電源から切り離しリールに巻き取るケーブル切離しステップと、を有することを特徴とする船用給電装置の制御方法。
【請求項9】
前記切換えステップは、前記第1遮断器及び前記第2遮断器を遮断する前に、前記外部電源から前記船内発電装置に負荷移行させる、ことを特徴とする請求項8に記載の船用給電装置の制御方法。
【請求項10】
船内発電装置を備えた船舶に取り付けられる船用給電装置の制御方法であって、
前記船用給電装置は、巻取ケーブルを巻き取り・巻き戻し可能で船外の外部電源に接続可能なケーブルリール装置と、該ケーブルリール装置を介して供給された電力を遮断又は接続可能な第1遮断器と、該第1遮断器を介して供給された電力を遮断又は接続可能な第2遮断器と、前記外部電源の異常を検知する外部電源異常検知手段とを備え、
前記外部電源から前記ケーブルリール装置、第1遮断器及び第2遮断器を介して船内に電力供給されている状態で、前記外部電源の異常を検出する外部電源異常検出ステップと、
前記外部電源の異常を検出した場合に前記船内発電装置から船内に電力供給するように切り換える異常時切換えステップと、を有することを特徴とする船用給電装置の制御方法。
【請求項11】
前記船用給電装置は、前記船内発電装置の異常を検知する船内電源異常検知手段を備え、
前記外部電源と前記船内発電装置との両方に接続された状態で、前記船内発電装置の異常を検出する船内電源異常検出ステップと、
前記船内発電装置の異常を検出した場合に前記外部電源の保護回路を作動させる外部電源保護ステップと、を有する請求項10に記載の船用給電装置の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−290018(P2006−290018A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109404(P2005−109404)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)
【出願人】(000232818)日本郵船株式会社 (61)
【出願人】(000180966)寺崎電気産業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】