説明

船用電線

【課題】鉄編組アジロを必ずしも必要とせずこれを省略して軽量・低コスト化し、さらに錆び付きの問題を解消する船用電線を提供する。
【手段】導体を絶縁体が被覆してなる被覆電線、介在物、及び該介在物を介して前記被覆電線を覆う樹脂がい装を少なくも有する船舶用電線であって、前記樹脂がい装は、ポリエーテル構造部又はポリカーボネート構造部をもつポリウレタンエラストマーからなり、リン化合物を含む難燃剤もしくは窒素化合物を含む難燃剤又は前記両者を含有し、かつデュロメータ硬度が83A〜100Aである樹脂材料で構成され、前記介在物は、ポリオレフィンを主成分とし、該ポリオレフィン100質量部に対して炭酸カルシウムを5〜400質量部含有する船用電線。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電力や信号などを伝達するために用いられる船舶用途に特に適した電線に関する。
【背景技術】
【0002】
船用電線は特に高い耐外傷性が要求される。これに応えるため、従来、絶縁層やその上に被せる保護層の更にその上に鉄などの金属線を編組状に編み込んで構成した金属編組あじろがい装(以下、「あじろがい装」を「アジロ」と略称することがある。)を設けたものが用いられてきた(図3参照)。一例を挙げると、LAN用のケーブルに適用するものとして、アジロとシースとの間に緩衝層を設けたものが開示されている(特許文献1参照)。これにより局所的な曲げやねじれ箇所に生じるおそれのある特性変化を抑制することができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−008458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなアジロの材料としては、安価で耐外傷性が高い鉄線が広く用いられる。しかし、鉄線は錆び付いてしまう。とりわけ船舶用途においてはその使用環境から、これを防止することが難しい。その対策として、鉄線にメッキを施したり、錆止め塗装を施したりすることも行われているが、そのための工数や手間がかかってしまう。またメッキや塗装を施した部分に外傷を受けると、これが剥がれてしまい、結局錆びを抑制ないし防止することはできない。また鉄編組アジロは重くかつ端末加工性が低く、製造効率を向上させることが難しいためその製造加工費用がかさみ、高コストとなりがちである。
【0005】
本発明は、鉄編組アジロを必要とせずこれを省略して軽量・低コスト化し、しかも耐延焼性が高く、さらに錆び付きや末端加工性の問題を解消する船用電線の提供を目的とする。また本発明は、船舶用の電線に適合する諸特性を有し、とくに鉄編組アジロによらずに十分な耐摩耗性及び耐溶接スパッタ性を発揮する船用電線の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は以下の手段によって解決された。
(1)導体を絶縁体が被覆してなる被覆電線、介在物、及び該介在物を介して前記被覆電線を覆う樹脂がい装を少なくも有する船舶用電線であって、
前記樹脂がい装は、ポリエーテル構造部又はポリカーボネート構造部をもつポリウレタンエラストマーからなり、リン化合物を含む難燃剤もしくは窒素化合物を含む難燃剤又は前記両者を含有し、かつデュロメータ硬度が83A〜100Aである樹脂材料で構成され、
前記介在物は、ポリオレフィンを主成分とし、該ポリオレフィン100質量部に対して炭酸カルシウムを5〜400質量部含有することを特徴とする船用電線。
(2)前記樹脂がい装を構成する材料のJISK7210条件コードMにおけるメルトマスフローレイトが100g/10min以下である(1)に記載の船用電線。
(3)前記樹脂がい装と前記介在物ないし前記被覆電線の間にシースを有することを特徴とする(1)又は(2)のいずれか1項に記載の船用電線。
【発明の効果】
【0007】
本発明の船用電線は、鉄編組アジロを必要とせずこれを省略して軽量・低コスト化し、しかも耐延焼性が高く、さらに錆び付きや末端加工性の問題を解消する。また本発明の船用電線は、船舶用の電線に適合する諸特性を有し、とくに鉄編組アジロによらずに十分な耐摩耗性及び耐溶接スパッタ性を発揮するという優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の船用電線の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の船用電線の別の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図3】従来の船用電線の一実施形態を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の船用電線は、導体を絶縁体が被覆してなる被覆電線、介在物、及び該介在物を介して前記被覆電線を覆う樹脂がい装を少なくも有する船用電線であって、前記樹脂がい装に特定のポリウレタンエラストマー材料を採用し、かつ前記介在物に特定のフィラーを含有するポリオレフィン樹脂を適用することを特徴とする。以下、本発明についてその船用電線の好ましい実施形態を示した図面に基づき、詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明の船用電線の一実施形態を模式的に示す断面図である。本実施形態の電線は、撚り導体1を3芯備えた、例えば電力用ケーブルに好適に使用しうるものである。銅などの金属からなる撚り導体1には全長に渡ってゴムやポリオレフィンなどからなる絶縁体2が被せられて絶縁電線11が構成されている。この絶縁電線3本を、形を整えるための介在物3とともに撚り合わせる。本実施形態においては、この上に絶縁電線11と介在物3の撚りが巻き崩れるのを防ぐための押さえ巻きテープ4が巻かれている。ただし、この巻テープは省略してもよい。本実施形態においては、ここまでの構成(導体1、絶縁体2、介在物3、押さえ巻きテープ4)をコア12と呼ぶ。本実施形態の船用電線10においては、このコア12の上にシース5が施され、さらにその外側に樹脂がい装6が設けられている。以下、この電線を構成する材料について順に説明する。
【0011】
[樹脂がい装]
本実施形態においては、電線の絶縁層、保護層の上に、金属編組アジロの代わりに耐外傷性の高い樹脂製保護層(樹脂がい装)が設けられている。この材料としては、加工性及び耐摩耗性に優れた特定のポリウレタンエラストマーが採用されている。具体的に本実施形態においては、上記ポリウレタンエラストマーとして、ハロゲンフリー難燃剤で難燃化したものが採用されており、火災時の延焼を防ぎ、火災時の有毒ガスの発生を抑えるなどのセキュリティ上の理由から好ましい。
【0012】
本実施形態で使用するポリウレタンエラストマーからなる樹脂材料はデュロメータ硬度が83A以上のものであり、85A以上のものであることが好ましい。その範囲のものとすることで耐外傷性、耐摩耗性が向上する観点から好ましい。硬度がより高いことにより耐摩耗性が高まる。一方、硬度が高すぎると可撓性が低くなることがある。そのため、例えば自己径巻き付け試験を行うと、後述するコア部分が過剰に変形して絶縁性能が低下したり、被覆割れを生じたりしてしまうことがある。これに対応するため、本実施形態において上記デュロメータ硬度は100以下であり、95A以下であることが好ましい。
【0013】
(デュロメータ硬度の測定)
本発明においてデュロメータ硬度の測定は、特に断らない限り、JISK7215の条件、手順及び機器で測定した値をいう。
【0014】
樹脂がい装に用いられる上記ポリウレタンエラストマーからなる樹脂材料のデュロメータ硬度を上記の範囲で高める方法は特に限定されないが、例えば、充填材の添加や、ベース材料としてより硬いグレードのポリエステルエラストマーの採用という方法が挙げられる。その他、ポリウレタンエラストマーの物性調節は定法が適宜採用される。
【0015】
本実施形態においてポリウレタンエラストマーに含有させるハロゲンフリー難燃剤としてはリン化合物を含有する難燃剤(リン系難燃剤)又は窒素化合物を含有する難燃剤(窒素系難燃剤)が挙げられる。リン系難燃剤としては赤リン、リン酸エステル系やリン酸メラミン系、イントメッセント系などがある。窒素系難燃剤としてはメラミンシアヌレートなどがある。またリン系と窒素系の難燃剤を併用してもよい。尚、ハロゲンフリー難燃剤として金属水酸化物も良く知られているが、難燃化効果が低いため難燃性能を十分に持たせるには大量に添加する必要があり、その結果、逆に耐摩耗性が低下してしまうことがある。また一般的な水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムの場合はポリウレタンエラストマーの加工温度である180〜240℃では熱分解を開始してしまうため、成型加工時に脱水反応を起こし発泡してしまうことがある。
難燃剤の含有量は特に限定されないが、ポリウレタンエラストマー100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、5〜50質量部であることがより好ましい。この範囲内であることにより、耐摩耗性を損なうことなく十分な難燃性能を得ることができ好ましい。難燃剤は1種又は2種以上を適宜選定して用いることができる。
【0016】
また、ここで用いるポリウレタンエラストマーは、価格面と耐加水分解性のバランス、さらには樹脂がい装として優れた性質を発揮する観点かポリエーテル構造部をもつポリウレタンエラストマー(ポリエーテル系ポリウレタンエラストマー)又はポリカーボネート構造部をもつポリウレタンエラストマー(ポリカーボネート系ポリウレタンエラストマー)が好適である。
【0017】
ポリエーテル系ポリウレタンエラストマーとしては市販のもの等適宜選定して採用することができる。好ましいポリエーテル系ポリウレタンエラストマーとしては、例えば、ルーブリゾール社製 エステン(商品名)、BASF社製 エラストラン(商品名)、ハンツマン社製 イログラン(商品名)等が挙げられる。
【0018】
ポリカーボネート系ポリウレタンエラストマーとしては市販のもの等適宜選定して採用することができる。好ましいポリカーボネート系ポリウレタンエラストマーとしては、例えば、大日精化工業社製 レザミン(商品名)が挙げられる。
【0019】
本実施形態の電線においては、溶接スパッタを受けた場合樹脂がい装が貫通するようなダメージを受けない性質を有することが好ましい。溶接スパッタとは、主に鉄などの金属を溶接する際に発生する火花で、非常に高温の溶融金属の粒である。このスパッタを受けても耐えるためには樹脂がい装材料の溶融粘度を所定の程度にまで高くすることが好ましい。溶融粘度の指標として樹脂材料のメルトマスフローレイトを好適化することが挙げられる。条件としてはJISK7210条件コードM(230℃、荷重2.16kg)でメルトマスフローレイトが200g/10min以下であることが好ましい。下限は特に制限されないが、0.1g/10min以上にすることが好ましい。
【0020】
樹脂がい装の厚さは特に限定されないが、0.1〜5mmであることが好ましく、0.2〜3mmであることがより好ましい。この範囲内とすることにより、十分な耐摩耗性と仕上がり外径の細さを両立することができ好ましい。なお、樹脂がい装は1層であっても、2層以上であってもよく、別の層を介在しながら複数の層が設けられていてもよい。また、必要に応じて、さらに外側に別の層を設けてもよい。
【0021】
[介在物]
本実施形態において前記介在物は、ポリオレフィンを主成分とし、該ポリオレフィン100質量部に対して炭酸カルシウムを5〜400質量部含有する。特に船用電線は海水や水に晒されることを考慮し、端末部より水が浸透していくことを防ぐ為に、水を弾く介在物であることが好ましい。水弾きがよく安価な介在物としては、ポリエチレンなどのポリオレフィン介在物が挙げられ、本実施形態に採用される。しかし、ポリオレフィンのみからなる介在物では火災等により高温に晒されると、介在が流動化して流れ出してしまい、燃焼部へ燃料として供給されてしまったり、中空化して煙熱を伝播したりすることがある。そこで、本実施形態においては、炭酸カルシウムをフィラーとして5〜400質量部配合したものを用いる。この範囲であれば配合量は特に制限されないが、典型的な送電用電線を考慮すると、5〜200質量部であることが好ましく、50〜200質量部であることがより好ましい。このような形態にしたポリオレフィン介在物を採用すると、吸水しにくく、しかも溶融時にも流動化せず、コストも安いため好適である。
【0022】
炭酸カルシウム配合量を上記下限値以上とすることで、燃焼時に介在物が流れ落ちにくく好ましい。一方、上記上限値以下とすることで、介在物の伸度が十分となり、電線を曲げた時に内部で破断などの不具合を生じさせず好ましい。他の安価な介在物としてはジュートや紙があるが、吸水し絶縁不良を起こすことがある。
【0023】
介在物の形状は特に限定されないが、紐状のものを用いることが好ましい。なお、介在物には、本発明の効果を奏する範囲でその他の成分を含有させて適宜物性を調節してもよい。
【0024】
[シース]
本実施形態においては、シースに用いられる材料は特に限定されず、難燃化したポリオレフィン、ポリウレタンエラストマーなどを用いることができる。コストや難燃化のしやすさの点で、ポリオレフィンが好適である。シースの厚さは特に限定されないが、0.5〜5mmであることが好ましい。なお、本実施形態とは異なり、シースを適用しない実施形態としてもよい(図2参照)。
【0025】
[押さえ巻きテープ]
コア12の組み付け状態を維持するための押さえ巻きテープの材料はどのようなものでもよいが、コスト面ではポリエステルやポリオレフィンのフィルムがよく、また難燃性能上はガラスマイカテープやマイカテープが優れており好ましい。押さえ巻きテープの厚さは特に限定されないが、厚さ0.005〜1mmが好ましく、厚さ0.01〜0.1mmがより好ましい。
【0026】
[絶縁電線]
・導体
絶縁電線11に適用される導体1は特に限定されず、本実施形態においては銅線が用いられている。この導体は送電を行うものでは通常低抵抗の金属導体が適用されるが、本発明においてはこれに限らず、通信用のものにおいて導体に光ファイバーを適用したものであってもよい。導体の断面直径は特に限定されず、例えば、0.5〜500mm程度とすることが実際的である。断面形状については特に限定されず、円形のものであっても、その他の形状に適宜形成・加工したものを用いてもよい。導体は単線であっても、本実施形態のような撚り線であってもよい。
【0027】
・絶縁体
前記導体1を被覆する絶縁体2としては特に限定されず、この種の電線に用いられる一般的なものを適用することができる。例えば、ポリオレフィン樹脂、樹脂がい装と同様のポリウレタンエラストマー樹脂、エチレンプロピレンゴムなどが挙げられる。絶縁体1の被覆層の厚さは特に限定されないが、0.2〜3mmであることが好ましく、0.5〜3mmであることがより好ましい。
【0028】
本発明の船用電線は船舶に適用する電線に特に適した構造を有していれば上記の実施形態に限定されず、例えば、コアの導体断面積を適宜変更したり、芯数を3芯ではなく1芯にしたり10芯にしたりしてもよい。また、船用電線として所定の構造に組み立てる方法は特に限定されず、この種の電線に適用される製造方法を適宜採用すればよい。
【実施例】
【0029】
実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明がこれに限定して解釈されるものではない。
(実施例1〜6)
図1に示した構造の船用電線を作製した。導体には断面の面積2.5平方mmにした撚り線(銅線)を用いた。これを被覆する絶縁体樹脂(厚さ1.0mm)にはエチレンプロピレンゴムを用いた。さらに、介在物は表1に記載のものを用い、これらを組み付けたものを押さえ巻きテープ(PETフィルム)で巻きつけてコア(断面直径約10mm)とした。さらに、シース(厚さ1.2mm)として難燃化したポリオレフィンを用い、その外側に表1に記載の樹脂がい装(厚さ1.0mm)を適用して船用電線試験体とした。このときエーテール系ポリウレタンエラストマーとしてハンツマン社製 イログラン(商品名)を用いた。ポリカーボネート系ポリウレタンエラストマーには大日精化工業社製 レザミン(商品名)を用いた。また、難燃剤についても表中に記載のものをそこに記載された含有率になるよう配合した。調製した難燃化された樹脂のデュロメータ硬度及びメルトマスフローレイトを測定した結果を表1に記載した。
【0030】
(比較例1)
比較例1は従来用いられている鉄編組アジロをがい装として施した船用電線である(図3参照)。温水や海水に触れると錆びてしまい外観不良となる。これと同時に重く、端末加工性が低いものであった。
【0031】
(比較例2)
比較例2は難燃剤として金属水酸化物を使用した場合である。金属水酸化物は難燃化効果が低いため多量に添加する必要があり、その結果耐摩耗性、耐外傷性が著しく低下してしまっている。
【0032】
(比較例3)
比較例3は樹脂がい装のベース材料としてポリエステル系ポリウレタンエラストマー(BASF社製 エラストラン(商品名))を用いた場合である。ポリエステル系ポリウレタンエラストマーは耐加水分解性が低いため、耐温水性試験にて樹脂がい装にクラックが発生し不合格となった。
【0033】
(比較例4,5)
比較例4,5は樹脂がい装材料のデュロメータ硬度が83A〜100Aの範囲からはずれてしまったものである。比較例4は硬度が低すぎて耐摩耗性が低く、比較例5は硬度が高すぎて、自己径巻き付け試験後に電線をまっすぐに直して確認したところ、コア部の3芯の電線と介在がずれて元の円形の断面に戻らなくなってしまった。
【0034】
(比較例6)
比較例6は介在に炭酸カルシウムが5質量部未満配合されたポリプロピレン製ヒモを使用した場合である。燃焼中介在が溶けて落下する現象が見られた為、ケーブルが2.5m以上燃焼しCat.A試験が不合格となった。
【0035】
(比較例7)
比較例7は介在に炭酸カルシウムが400質量部を超えて配合されたポリプロピレン製ヒモを使用した場合である。介在の引張伸度が低下した結果、自己径巻き付け試験において介在の破断を生じ、コア部の3芯の電線の位置がずれて元の円形の断面に戻らなくなってしまった。
【0036】
その他、樹脂がい装のメルトフローレートが著しく高い(250g/10min)もので耐スパッタ性が劣ることを確認した。
【0037】
[性能評価]
・ビーズ針摩耗試験:被評価電線に外径0.41mmのビーズ針を電線と針の長さ方向が垂直位置になるように当て、サンプルに針の側面を荷重2kgfで押しつけながらストローク10mm、速度60往復/分の条件でこすりつけ、サンプルに破れや貫通孔が発生するまでの回数を計数する。1500回(往復)を上限とした。金属編組アジロと同等以下である1000回未満を×、同等以上である1000回以上1500回未満を○、上限の1500回を超える場合を◎とした。
【0038】
・砥石回転摩耗試験:JIS C 3327 単芯 公称断面積3.5mm以下 おもり1kgに準拠する。500回転を上限とした。金属編組アジロと同等以下である100回未満を×、同等以上である100回以上500回未満を○、上限の500回を超える場合を◎とした。
【0039】
・耐溶接スパッタ性:被評価電線の直上1mの位置にて鉄の電気溶接を30秒間行い、スパッタが電線に当たった部分について観察を行う。スパッタががい装を貫通してしまった場合を×、ややめり込んで容易には取り去れない状態なら○、がい装表面に乗っているだけで容易に振り落とせる場合は◎とした。
【0040】
・メルトマスフローレイト:JISK 7210の条件コード名M(230℃ 荷重2.16kg)に準拠する。
【0041】
・Cat.A試験:IEC60332−3 Cat.A(燃焼時間40分、非金属部分体積 7 l/m、公称断面積35mm以下)に準拠する。この試験の結果により、垂直支持時の耐延焼性を評価することができる。
【0042】
・耐温水性:被評価電線を85℃の温水中に1680時間浸漬し、がい装の様子を観察する。割れ等不具合無ければ○とした。
【0043】
・自己径巻き付け:被評価電線を常温にて同等の外径を持つ鉄棒に勢いよく巻き付け、がい装に割れ等不具合がないか確認する。その後電線を真っ直ぐに戻し、コアに過度なダメージが残っていないか確認を行った。
【0044】
【表1】

【符号の説明】
【0045】
1 導体
2 絶縁体
3 介在物
4 押さえ巻きテープ
5 シース
6 樹脂がい装
7 鉄編組アジロがい装
10、20、30
11 絶縁電線
12 コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体を絶縁体が被覆してなる被覆電線、介在物、及び該介在物を介して前記被覆電線を覆う樹脂がい装を少なくも有する船舶用電線であって、
前記樹脂がい装は、ポリエーテル構造部又はポリカーボネート構造部をもつポリウレタンエラストマーからなり、リン化合物を含む難燃剤もしくは窒素化合物を含む難燃剤又は前記両者を含有し、かつデュロメータ硬度が83A〜100Aである樹脂材料で構成され、
前記介在物は、ポリオレフィンを主成分とし、該ポリオレフィン100質量部に対して炭酸カルシウムを5〜400質量部含有することを特徴とする船用電線。
【請求項2】
前記樹脂がい装を構成する材料のJISK7210条件コードMにおけるメルトマスフローレイトが100g/10min以下である請求項1に記載の船用電線。
【請求項3】
前記樹脂がい装と前記介在物ないし前記被覆電線の間にシースを有することを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の船用電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−228122(P2011−228122A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96907(P2010−96907)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】