船舶およびバラスト水交換方法
【課題】 バラスト水排水基準をクリア可能とする船舶およびバラスト水交換方法の提供を目的とする。
【解決手段】 船舶1は、複数のバラストタンク9〜16を備えると共に、概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する基準船よりも大きな船尾肥大度係数rAを有し、複数のバラストタンク9〜16には、船尾バラストタンク16と、基準船に比べて容積が拡大された船首バラストタンク10とが含まれており、複数のバラストタンク9〜16は、船尾バラストタンク16、船首バラストタンク10および兼用バラストタンク9を含む第1タンクグループと、他のバラストタンク11〜15により構成される第2タンクグループとに区分けされ、タンクグループごとにバラスト水注入系統が独立に設けられている。
【解決手段】 船舶1は、複数のバラストタンク9〜16を備えると共に、概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する基準船よりも大きな船尾肥大度係数rAを有し、複数のバラストタンク9〜16には、船尾バラストタンク16と、基準船に比べて容積が拡大された船首バラストタンク10とが含まれており、複数のバラストタンク9〜16は、船尾バラストタンク16、船首バラストタンク10および兼用バラストタンク9を含む第1タンクグループと、他のバラストタンク11〜15により構成される第2タンクグループとに区分けされ、タンクグループごとにバラスト水注入系統が独立に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバラストタンクを有する船舶およびそのような船舶に適用されるバラスト水交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、船舶の運航時には、喫水を確保して船体を安定化させるべく出港地(揚荷港)にてバラストタンクに海水がバラスト水として注入され、入港地(荷積港)においてバラストタンクからバラスト水が排出される。従って、バラスト水の排出時には、バラスト水と共にそれに含まれていた出港地の海域における微生物、水棲生物、病原体等も一緒に入港先の海域に排出されることになる。この場合、バラスト水と共に移動した微生物や水棲生物等が新たな環境に定着してしまうと、その海域の生態系や水産業等の経済活動に大きな影響を与えるおそれがある。また、関係機関の推定によれば、地球規模で移動するバラスト水の量は年間およそ120億トンにも昇るといわれている。このため、このような生態系の移動による環境破壊、資源の損失、人体への悪影響等は、従来から世界共通の環境課題となっていた。
【0003】
上述のようなバラスト水の注排水に起因する生態系の移動を防止するために、2004年2月に国際海事機関(IMO)においてバラスト水管理条約が合意された。かかるバラスト水管理条約は、次のようなバラスト水排水基準に従ってバラスト水の注排水が実行されることを求めるものであり、港湾における船舶のバラスト水排出を大きく規制するものである。
【0004】
バラスト水排水基準(D−2基準):
・50μm以上の生きている生物量が1m3当たり10個体未満、10μm以上大きく50μmより小さい生きている生物量は1ml当たり10個体未満(基準として用いる生物の大きさは、長さ、幅、厚さの中で一番小さい箇所)
・病原性コレラ菌の量は、バラスト水100ml当たり1cfu未満、または動物プランクトン湿重量1g当たり1cfu未満
・大腸菌の量は、バラスト水100ml当たり250cfu単位未満
・腸球菌の量は、バラスト水100ml当たり100cfu単位未満
【0005】
バラスト水の注排水は船舶の運航上必要不可欠なものである。従って、上述の生態系の移動を防止するためには、バラストタンク内のバラスト水から微生物等を除去するための処理装置の実用化が求められる。しかしながら、このような処理装置の開発は容易なことではなく、上記基準をクリアさせ得る処理装置の実用化にはなお時間がかかるであろう。このため、上記バラスト水管理条約の合意後も、洋上でのバラスト水交換が暫定的に認められており、ほとんどの船舶は洋上でのバラスト交換を行っているのが現状である。
【0006】
ここで、船舶のバラスト水交換方法としては、次の2つの方法が主流となっている。
1)SEQUENTIAL法:バラスト水で満たされた何れかのバラストタンクを一旦空にして、再度注水を行うことでタンク内のバラスト水を交換する方法である。複数のバラストタンクについて順次バラスト水の交換を行うことから、一般にSEQUENTIAL法と呼ばれる。
2)FLOW−THROW法:バラストタンクにバラスト水が注入されている状態で、ポンプを用いてバラストタンク内にバラスト水を注入し続け、希釈によりバラスト水を交換する方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のバラスト水交換方法には、次のような問題も指摘されている。
【0008】
1)SEQUENTIAL法を用いる場合、バラストタンクを一旦空にしなければならないが、この際、船体の姿勢制御や船体にかかる縦強度の調整等が必要となる。従って、船舶によっては、安全要件や船級要件を満たせず、SEQUENTIAL法を採用することが困難となる。更に、荒天時には、プロペラ没水率が確保できなかったり、船首部SLAMMING強度が不足したりすると、SEQUENTIAL法によるバラスト水の交換を採用し得なくこともあり得る。
【0009】
2)FLOW−THROW法のもとでは、バラスト水の連続的な注入に起因してタンク内で生じる付加的水圧が船体構造に作用し、船体疲労の問題が生じるおそれもある。また、FLOW−THROW法を採用した場合、タンク容量の3倍ものバラスト水をバラストタンクに注入し続ける必要があるので、稼働時間の増加によりポンプの耐久性に悪影響を与えると共に、発電機の燃料消費量の増加等によりCO2発生量が増加してしまい、環境に悪影響を与えるおそれもある。
【0010】
3)現状、バラスト水の交換が認められているのは、港から200海里以上遠洋で、かつ水深200m以深の海域であるが、このような遠洋海域にて、バラストタンクを一旦空にする必要があるSEQUENTIAL法によりバラスト水を交換するのは特に荒天時において困難となる。また、遠洋海域において、タンク容量の3倍ものバラスト水をバラストタンクに注入し続ける必要があるFLOW−THROW法によりバラスト水を交換するのは、時間的に容易なことではない。
【0011】
4)SEQUENTIAL法およびFLOW−THROW法の何れについても、入港地にて、対象船舶のバラスト水の注排水が確実に外洋で行われたか否かを確認することは容易ではない。また、すべてのバラストタンクのバラスト水に含まれている微生物が確実に外洋において排出されているか否かを判断することも困難である。更に、バラストタンク内に残存するスラッジにも微生物や水棲生物等が存在し、それらが寄港地において排出される可能性も否定できない。
【0012】
上記理由から、バラスト水排水基準をクリアさせ得る技術の出現が求められている。そして、この種の技術は、実用性の高いバラスト水処理装置が出現するまで適用され得るものであることはもちろん、その出現後にも適用され得るものであると好ましい。
【0013】
そこで、本発明は、バラスト水排水基準をクリア可能とする船舶およびバラスト水交換方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による船舶は、複数のバラストタンクを有する船舶において、概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する基準船よりも大きな船尾肥大度係数を有すると共に、複数のバラストタンクには、船尾バラストタンクと、上記基準船に比べて容積が拡大された船首バラストタンクとが含まれており、複数のバラストタンクは、少なくとも2つのタンクグループに区分けされ、タンクグループごとにバラスト水注入系統が独立に設けられていることを特徴とする。
【0015】
この船舶は、それと概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する基準船よりも大きな船尾肥大度係数を有するので、船尾部で大きな浮力を発生し得ると共に、当該基準船に比べて容積が大きい船尾バラストタンクを備えることができる。また、この船舶の船首バラストタンクは、当該基準船に比べて容積が拡大されている。そして、この船舶の複数のバラストタンクは、少なくとも2つのタンクグループに区分けされており、各タンクグループには、それぞれ独立にバラスト水を注入可能である。なお、ここでいう「基準船」は、1軸船および2軸船の何れであってもよい。
【0016】
このように構成される船舶では、船尾バラストタンクおよび船首バラストタンクの容積が基準船に比べて大きいことから、少なくとも2つのタンクグループの何れかについてのみバラスト水が注入された場合であっても、船体の縦強度を十分に保ちつつ十分な喫水を確保することができる。従って、この船舶では、次のような手順によるバラスト水の交換を実行することができる。
【0017】
すなわち、出港地にて少なくとも2つのタンクグループのうちの予め定められた第1のタンクグループを構成するバラストタンクに海水をバラスト水として注入する。この場合、出港地にて第1のタンクグループを構成するバラストタンクに注入される海水は、微生物等を含んでいる可能性を少なからず有する。その後、船舶が出港して出港地から十分に遠離な遠洋海域に達した段階で、第1のタンクグループとは異なる第2のタンクグループを構成するバラストタンクに海水をバラスト水として注入する。この場合、遠洋海域で第2のタンクグループを構成するバラストタンクに注入される海水に微生物等が含まれている可能性はごく少なく、当該海域の海水は、バラスト水排出基準を満たすものと認められている。次いで、船舶が入港地に達する前に、入港地から十分に遠離な遠洋海域にて第1のタンクグループを構成するバラストタンクからバラスト水を排出する。
【0018】
上述の手順に従って出港地から入港地までの間にバラスト水を交換をしておくことにより、入港地に達した段階で、この船舶は、遠洋海域にて第2のタンクグループに注水された微生物等を実質的に含んでいないバラスト水のみを保有していることになる。従って、出港地でバラスト水として取得された海水に微生物等が含まれていたとしても、次の入港時には、バラスト水排出基準がクリアされており、入港地にて第2のタンクグループを構成するバラストタンクからバラスト水が排出されても、それにより環境破壊、資源の損失、人体への悪影響等の問題を生じさせる可能性は極めて低い。更に、入港地手前の遠洋海域で、出港地にて第1のタンクグループに注水された微生物等を含む可能性をもったバラスト水が排出されても、微生物等がそこで生存する可能性は非常に低く、このようなバラスト水の排出により環境破壊等を引き起こすおそれは実質的に無いといってよい。
【0019】
このように、本発明による船舶によれば、出港地にてバラスト水を注入すべきタンクグループと、遠洋海域にてバラスト水を注入すべきタンクグループとを予め定めておけば、上述のバラスト水排出基準をクリアすることが可能となり、環境破壊、資源の損失、人体への悪影響といった問題の発生を良好に抑制することができる。
【0020】
また、本発明による船舶の船尾肥大度係数をrAとしたときに、船尾肥大度係数が、0.9≦rA≦1.2という範囲内に含まれると好ましい。
【0021】
このように、船尾肥大度係数を上記範囲内から選択することにより、船尾バラストタンクを実用上十分な大きさに拡大することが可能となり、少なくとも2つのタンクグループの何れかについてのみバラスト水が注入された場合であっても、船体の縦強度を十分に保ちつつ十分な喫水を確保することができる。
【0022】
更に、船首バラストタンクを画成する船首隔壁と船首垂線との距離が基準船に比べて長いと好ましい。
【0023】
このように、船首バラストタンクを画成する船首隔壁を船尾側にオフセットして当該船首隔壁と船首垂線との距離を長くすることにより、上記基準船に比べて容積が拡大された船首バラストタンクを容易に実現することが可能となる。
【0024】
また、タンクグループには、少なくとも船尾バラストタンクおよび船首バラストタンクを含む第1タンクグループと、他のバラストタンクにより構成される第2タンクグループとが含まれると好ましい。
【0025】
この態様によれば、第1タンクグループにのみ注水された場合と、第2タンクグループにのみ注水された場合との何れの場合においても、船体の縦強度を十分に保ちつつ十分な喫水を確保することができる。
【0026】
本発明によるバラスト水交換方法は、少なくとも2つのタンクグループに区分けされた複数のバラストタンクと、タンクグループごとに独立に設けられたバラスト水注入系統とを備えた船舶に適用されるバラスト水交換方法であって、
(a)出港地にて予め定められた第1のタンクグループを構成するバラストタンクに海水をバラスト水として注入するステップと、
(b)出港地から十分に遠離な遠洋海域にて第1のタンクグループとは異なる第2のタンクグループを構成するバラストタンクに海水をバラスト水として注入するステップと、
(c)入港地から十分に遠離な遠洋海域にて第1のタンクグループを構成するバラストタンクからバラスト水を排出するステップとを含むものである。
【0027】
また、本発明によるバラスト水交換方法は、(d)入港地にて第2のタンクグループを構成するバラストタンクからバラスト水を排出するステップを更に含むとよい。
【0028】
そして、この方法が適用される船舶は、概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する基準船よりも大きな船尾肥大度係数を有すると共に、基準船に比べて容積が拡大された船首バラストタンクを備えると好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明による船舶およびバラスト水交換方法によれば、バラスト水排水基準を良好にクリアすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明による船舶を示す概略構成図である。同図に示される船舶1は、例えば、2軸推進型のバルクキャリアとして構成されており、2体のプロペラ2と、各プロペラ2に対応して設けられた図示されない主機、それに関連する補機類等を備えるものである。本実施形態の船舶1は、船長Lpp=226m、船幅B=43m、型深さD=18.55m、満載時喫水d=12.8mという諸元を有する。また、船舶1は、保針性能(針路安定性)を良好に保つべく、2体のプロペラ2に対応するように船体後部に設けられた2つのスケグ3を有しており、各プロペラ2および各スケグ3の後方には、各1体の舵4が設けられている。そして、左右一対のスケグ同士間には、トンネル部5(図7から図9参照)が画成されている。
【0032】
更に、船舶1は、複数のカーゴホールドを有している。複数のカードホールドのうち、船長方向および船幅方向のそれぞれ概ね中央に設けられているカーゴホールド9は、バラストタンクとしても使用され得るように構成されている。以下、このカーゴホールドを「兼用バラストタンク9」という。また、船舶1は、複数のカーゴホールドに加えて、船首バラストタンク(Fore.Peak Tank)10、NO.1バラストタンク11、NO.2バラストタンク12、NO.3バラストタンク13、NO.4バラストタンク14、NO.5バラストタンク15および船尾バラストタンク(Aft.Peak Tank)16を有している。更に、NO.5バラストタンク15と船尾バラストタンク16との間には、機関区画18が画成されている。
【0033】
船首バラストタンク10は、船体と船首隔壁17とにより船体の最も船首側に画成される。また、NO.1〜NO.5バラストタンク11〜15は、何れも、左舷側タンクと右舷側タンクとから構成されるものである。更に、船尾バラストタンク16は、船体の最船尾側に形成され、プロペラ2や舵4等の上方に位置する。本実施形態では、これら複数のバラストタンク9〜16は、2つのタンクグループに区分けされている。すなわち、本実施形態では、船首バラストタンク10、船尾バラストタンク16および兼用バラストタンク9が第1タンクグループTG1を構成する。また、NO.1バラストタンク11、NO.2バラストタンク12、NO.3バラストタンク13、NO.4バラストタンク14およびNO.5バラストタンク15が第2タンクグループTG2を構成する。
【0034】
そして、船舶1は、タンクグループTG1およびTG2にそれぞれ独立にバラスト水を供給することができるように構成されている。すなわち、図2に示されるように、第1タンクグループTG1には、メインブランチ方式の第1バラスト水注入系統21が備えられており、第2タンクグループTG2には、第1バラスト水注入系統21とは独立のリングメイン方式の第2バラスト水注入系統22が備えられている。第1バラスト水注入系統21は、概ね船長方向に延びるメインライン23と、メインライン23に接続された第1バラストポンプ25とを含む。メインライン23からは、それぞれ中途にバラスト弁を有するブランチライン27a,27bおよび27cが分岐されている。ブランチライン27aは、船首バラストタンク10に接続され、ブランチライン27bは、兼用バラストタンク9に接続され、ブランチライン27cは、船尾バラストタンク16に接続されている。
【0035】
第2バラスト水注入系統22は、概ね環状に形成された環状メインライン24と、環状メインライン24に接続された第2バラストポンプ26とを含む。環状メインライン24からは、それぞれ中途にバラスト弁を有するブランチライン28a〜28jが分岐されている。ブランチライン28aは、NO.1バラストタンク11の左舷側タンクに、ブランチライン28bは、NO.1バラストタンク11の右舷側タンクにそれぞれ接続され、ブランチライン28cは、NO.2バラストタンク12の左舷側タンクに、ブランチライン28dは、NO.2バラストタンク12の右舷側タンクにそれぞれ接続されている。同様に、ブランチライン28eは、NO.3バラストタンク13の左舷側タンクに、ブランチライン28fは、NO.3バラストタンク13の右舷側タンクにそれぞれ接続され、ブランチライン28gは、NO.4バラストタンク14の左舷側タンクに、ブランチライン28hは、NO.4バラストタンク14の右舷側タンクにそれぞれ接続され、ブランチライン28iは、NO.5バラストタンク15の左舷側タンクに、ブランチライン28jは、NO.5バラストタンク15の右舷側タンクにそれぞれ接続されている。
【0036】
図3は、上述の船舶1の船首構造を説明するための模式図である。同図に示されるように、船舶1では、船首バラストタンク10を画成する船首隔壁17と船首垂線F.P.との距離Lfが基準船に比べて長く設定されている。ここで、「基準船」は、船舶1と概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する従来型船舶である。なお、「基準船」は1軸船および2軸船の何れであってもよい。本実施形態の船舶1では、船首バラストタンク10を画成する船首隔壁17を船尾側にオフセットすることにより船首隔壁17と船首垂線F.P.との距離Lfが長く設定されている。これにより、船舶1は、基準船に比べて容積が拡大された船首バラストタンク10を有することになる。
【0037】
また、基準船における船首隔壁と船首垂線との距離Lf’がLf’=0.042×Lppであるとすると、本実施形態の船舶1の船首隔壁17と船首垂線F.P.との距離Lfは、例えば、Lf’=0.06×Lppとされる。これにより、船舶1では、船首バラストタンク10の容積がおよそ3000m3程度となり、基準船(上記例の場合、2000m3程度)に比べて船首バラストタンクの容量を大幅に増加させることが可能となる。
【0038】
そして、本実施形態の船舶1の船体船尾部は、船尾肥大度係数をrA(=B/L(1.3×(1−Cb)−0.31×lcb))としたときに、船尾肥大度係数rAが、0.9≦rA≦1.2という範囲内に含まれるように構成されている。すなわち、図4からわかるように、本実施形態の船舶1の船尾肥大度係数は、概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する基準船(図4の例では1軸船であり、船尾肥大度係数は、例えば0.4≦rA≦0.65という範囲内に含まれる)に比べて大きな船尾肥大度係数rAを有し、図5に例示されるように、図15に例示される基準船に比べて肥大化された船尾部を有することになる。なお、本発明による船舶1は、船尾肥大度係数rAが、0.9≦rA≦1.2という条件を満たせば、1軸船として構成されてもよく、その場合も、図6に例示されるように、図15に例示される基準船に比べて肥大化された船尾部を有することになる。
【0039】
このように、船舶1の船尾肥大度係数rAを上記範囲内から選択すれば、船尾バラストタンク16を実用上十分な大きさに拡大することが可能となる。すなわち、本実施形態の船舶1の船尾バラストタンク16の容積は、およそ2800m3程度であり、基準船(上記例の場合、500〜600m3程度)に比べて大幅に増加されている。そして、船舶1では、第1タンクグループTG1を構成する兼用バラストタンク9、船首バラストタンク10、および船尾バラストタンク16にのみバラスト水を注入しても、船体の縦強度を十分に保ちつつ、すなわちルール要求を満たしつつ、十分な喫水を確保することが可能となる。
【0040】
具体的には、基準船の兼用バラストタンク、船首バラストタンク、および船尾バラストタンクにのみバラスト水を注入した場合、喫水は、船首垂線FPにて4.31m、船尾垂線APにて5.96m、トリム=1.65mとなり、プロペラ没水率=35.0%となるのに対して、本発明による船舶1において兼用バラストタンク9、船首バラストタンク10、および船尾バラストタンク16にのみバラスト水を注入した場合、喫水は、船首垂線FPにて4.31m、船尾垂線APにて6.61m、トリム=2.30mとなり、プロペラ没水率=50.9%となる。従って、船舶1では、第1タンクグループTG1を構成するバラストタンク9,10および16にのみバラスト水を注入しても、安全な航行が可能となる。
【0041】
本実施形態の船舶1では、上述のように肥大化された船尾構造を実現しつつ、推進性能や保針性能を向上させるべく、次のような対策が講じられている。まず、船舶1の各プロペラ2の直径Dpは、これら各プロペラ2の全円面積の合計が、船舶1と概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する1軸推進型基準船のプロペラの全円面積よりも大きく、かつ、当該1軸推進型基準船のプロペラの全円面積の2倍よりも小さくなるように定められている。すなわち、各プロペラ2の直径Dpは、当該1軸推進型基準船のプロペラの直径をDp1とすると、
1/√2<Dp/Dp1<1.0
という関係を満たしている。そして、本実施形態では、各プロペラ2の直径Dpが、
0.8×Dp1≦Dp≦0.9×Dp1
という範囲内から選択されており、例えば、Dp=0.88×Dp1とされている。なお、全円面積は、プロペラ2が回転した際にプロペラ羽根の先端により描かれる円の面積であり、π/4・Dp2として表される。
【0042】
各プロペラ2の直径Dpが上述のような範囲から選択される結果、船舶1に含まれる2体のプロペラ2は、船舶1と概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する1軸あるいは2軸推進型の基準船のプロペラよりも何れも小さいものとなるが、これによって、船舶1が本来有する良好な保針性能(操縦性能)は損なわれることはない。また、直径Dpを小さくしたことによる推進性能の低下は実用上許容される範囲内に抑えられ、船舶1の推進性能は実用上良好な範囲内に保たれる。
【0043】
また、本実施形態の船舶1では、上述のように2体のプロペラ2の直径Dpを小さくした上で、2つのスケグ3同士の間のトンネル部5が、図7に示されるように、スクエアステーション1.5、若しくはそれよりも船尾側で立ち上がるように形成されている。すなわち、トンネル部5は、その起点部5sから船尾垂線APまでの水平距離Sと船長Lppとの比が、
0<S/Lpp≦0.15
という関係を満たすように形成されている。これにより、船舶1では、船尾側を肥大化させて、1軸あるいは2軸推進型の基準船に比較して船尾バラストタンク16の容積を大幅に増加させることが可能となる。
【0044】
更に、船舶1の各スケグ3は、図8に示されるように、スケグ中心面P1に関して非対称に形成される。加えて、各スケグ3は、スケグ後端線3a(図7参照)を通る平面P2と、スケグ中心面P1とが交差するように、その下端側が船体側部に向けて傾けられている。なお、スケグ後端線3aは、スケグ3を側方から見た際のスケグ後端部の稜線である。
【0045】
ここで、一般に2軸船のスケグは、下方から見た状態で船首から船尾に向かうにつれて先細に形成される。このため、スケグがスケグ中心面に関して左右対称であって傾けられていない場合、トンネル部の船尾側が船首側に比べて拡げられ、トンネル入口に比べてトンネル出口が大きくなるので、トンネル部に流入した水流は船首から船尾に向かうに従って拡散・減速させられ、船体抵抗の増加を招く剥離を引き起こすおそれがある。
【0046】
これに対して、本実施形態のように、各スケグ3を左右非対称に形成すると共に、それぞれの下端側を船体側部に向けて傾けることにより、各スケグ3の船体中心側に位置する側面3iの延在方向は、図9に示されるように、各スケグ3の船体外側に位置する側面3oに比べて全体に船長方向に近づくことになる。これにより、トンネル部5の船長方向における断面積の変化率が比較的小さくなるので、トンネル部5における水流の拡散・減速が抑制される。従って、船舶1では、船体抵抗の増加を招くトンネル部5における剥離の発生を抑制すると共に、トンネル部5から各プロペラ2に流入する水流の流速を高めることができる。また、各スケグ3の船体外側に位置する側面3oのみを外方に膨らまして各スケグ3の外側における伴流率を高めることにより、船体効率を高めると共に各スケグ3の船体外側から各プロペラ2に流入する水流の流速を低下させることができる。
【0047】
これにより、各プロペラ面2b(図8参照)に流れ込む水流の非対称性、すなわち、各プロペラ2に対してスケグ3の内側すなわちトンネル部5から流入する水流とスケグ3の外側から流入する水流との間の流速差を生じさせ、いわゆる伴流利得を得ると共に、船体効率を高めることが可能となる。このように、各スケグ3を左右非対称に形成すると共にその下端側を船体側部に向けて傾ければ、船舶1の推進性能を良好に向上させることが可能となる。
【0048】
なお、船舶1の各スケグ3をスケグ中心面P1に関して非対称に形成するに際しては、スクエアステーション0.5にて、プロペラ2の軸心2aの高さにおけるスケグ内側半部(スケグ中心面P1よりも内側の部位)の幅Biとスケグ外側半部(スケグ中心面P1よりも外側の部位)の幅Boとの比が、
0.5≦Bi/Bo<1
という関係を満たすように各スケグ3を構成するとよい。本実施形態では、スケグ内側半部の幅Biとスケグ外側半部の幅Boとの比が、Bi/Bo=0.73として定められている。更に、各スケグ3を傾斜させるに際しては、スケグ中心面P1とスケグ後端線3aを通る平面P2とのなす角度θが、
0°<θ≦15°
という関係をみたすようにするとよい。これらの構成を採用すれば、プロペラ面2b(図8参照)に流れ込む水流に非対称性を良好に生じさせて伴流利得を確実に得ることが可能となる。
【0049】
また、本実施形態の船舶1では、船体中心線を通って鉛直方向に延びる船体中心面Pcと、各プロペラ2の軸心2a(図7参照)を通って鉛直方向に延びるスケグ中心面P1との距離Bs(図8参照)が、プロペラ2の直径Dpを基準として、
1.2×Dp≦Bs≦1.6×Dp
という関係を満たすように各スケグ3が形成されている。
【0050】
すなわち、船舶1の推進性能を向上させるためには、船体中心面Pcとスケグ中心面P1との距離Bs、つまりトンネル部5の幅をできるだけ小さくして、スケグ3同士間のトンネル部5における流れを加速させ、かつ、各スケグ3の外側における伴流率を高めることにより、船体抵抗の増加と伴流率の低下とを抑えるとよい。ただし、主機、補機の搭載スペースや船内交通性の確保、更には、2体のプロペラ2の相互干渉によるキャビテーションや振動の発生を考慮すると、船体中心面Pcとスケグ中心面P1との距離Bsを小さくすることには限界がある。これらの観点から、船体中心面Pcとスケグ中心面P1との距離Bsが上記関係を満たすようにすれば、スペース効率や船内交通性を損なうことなく、また、キャビテーションや振動の発生を抑制すると共に、上述のように左右非対称かつ傾斜したスケグ3を実現しつつ、船舶1の推進性能を向上させることが可能となる。なお、本実施形態の船舶1では、船体中心面Pcとスケグ中心面P1との距離Bsが、Bs=1.404×Dpとして定められている。
【0051】
更に、本実施形態の船舶1では、図10に示されるように、船底6の後端部、より詳しくは、プロペラ面2bよりも後方の船底6が上方に湾曲することなく概ね平坦に延びるように形成されている。更に、船舶1において、その船体後端部7は、満載時における船体後端部7の没水深さhaと満載時喫水dとの比が、
0.15≦ha/d≦0.25
という関係を満たすように形成されている。
【0052】
一般に、船体後端部7周辺では水流が船体から離れるため、この周辺の部位を図10において破線で示されるように上方に湾曲する曲面状に形成すると流れの剥離が起こり、船体抵抗の増加を招いてしまう。また、船体後端部7の没水深さhaを必要以上に大きくすると、流れの剥離範囲や死水領域が増加し、やはり船体抵抗の増加を招いてしまう。これに対して、上述のように、好ましくはプロペラ面2bよりも後方の船底6を概ね平坦に形成することにより、流れの剥離を抑制し、船体抵抗の減少させることが可能となる。更に、船体後端部7の深さhaと満載時喫水dとの比が上記関係を満たすようにすれば、剥離範囲や死水領域の増加を抑制し、船体抵抗の減少させることが可能となる。従って、このように船尾付近の形状を工夫することにより、船体抵抗を増加を抑えて船舶1の推進性能を向上させることが可能となる。
【0053】
以上説明されたように、本実施形態の船舶1の船首バラストタンク10は、それと概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する基準船に比べて容積が拡大されている。また、本実施形態の船舶1は、当該基準船よりも大きな船尾肥大度係数を有するので、船尾部で大きな浮力を発生し得ると共に、当該基準船に比べて容積が大きい船尾バラストタンク16を備えることができる。そして、船舶1の複数のバラストタンク9〜16は、兼用バラストタンク9、船首バラストタンク10および船尾バラストタンク16を含む第1タンクグループTG1と、他のバラストタンク11〜15により構成される第2タンクグループTG2とに区分けされており、各タンクグループTG1およびTG2には、それぞれ独立にバラスト水を注入することができる。このように構成される船舶1では、船首バラストタンク10および船尾バラストタンク16の容積が大きいことから、船首バラストタンク10、船尾バラストタンク16および兼用バラストタンク9を含む第1タンクグループTG1にのみバラスト水を注入しても、船体の縦強度を十分に保ちつつ十分な喫水を確保することができる。従って、この船舶では、次のような手順によるバラスト水の交換を実行することができる。
【0054】
図11は、上述の船舶1において実行されるバラスト水交換方法を説明するためのフローチャートである。同図に示されるように、積荷を積載していない状態の船舶1が出港地を出る際には、出港地にて2つのタンクグループTG1およびTG2のうちの予め定められた第1のタンクグループ(本実施形態では、第1タンクグループTG1)を構成するバラストタンク9,10および16に海水をバラスト水として注入する(S10)。すなわち、出港地では、第1バラスト水注入系統21の各バラスト弁が開放された上で、第1バラストポンプ25が作動され、これにより、図12に示されるように、兼用バラストタンク9、船首バラストタンク10および船尾バラストタンク16が概ね満水状態とされる。
【0055】
この場合、出港地にて第1のタンクグループを構成するバラストタンクに注入される海水は、出港地の海域に生息する微生物等を含んでいる可能性を少なからず有する。このため、バラストタンク9,10および16に対する海水の注入が完了したならば、船舶1の乗組員は、出港地の管理者から、出港地で注水されたのは第1タンクグループTG1の各タンク9,10および16である旨の確認(証書)を取得する(S12)。
【0056】
図12に示されるように船舶1の第1タンクグループTG1を構成するバラストタンク9,10および16に海水が注入されると、喫水が十分に確保されてプロペラ2が十分に没水し、かつ、船体の縦強度も十分に保たれることから、船舶1は航行可能となる。そして、出航後、船舶1が出港地から十分に遠離な遠洋海域、すなわち出港地の200海里沖に達したならば、予め定められた第1のタンクグループとは異なる第2のタンクグループ(本実施形態では、第2タンクグループTG2)を構成するバラストタンク11〜15に海水をバラスト水として注入する(S14)。すなわち、出港地沖の遠洋海域では、第2バラスト水注入系統22の各バラスト弁が開放された上で、第2バラストポンプ26が作動され、NO.1〜NO.5バラストタンク11〜15が概ね満水状態とされる。
【0057】
このようにNO.1〜NO.5バラストタンク11〜15に海水が注入されると、図13に示されるように、船舶1のすべてのバラストタンク9〜16にバラスト水が注入されることになる。本実施形態の船舶1の喫水は、すべてのバラストタンク9〜16にバラスト水が注入された場合、船首垂線FPにて8.12m、船尾垂線APにて9.56m、トリム=1.4mとなり、プロペラ没水率=96.3%となる。これにより、船舶1の喫水は、出港時に比べて深くなるので、仮に更なる遠洋にて荒天に遭遇したとしても、船舶1の安定性を良好に確保することが可能となる。また、出港地沖の200海里沖で第2タンクグループTG2を構成するバラストタンク11〜15に注入される海水に微生物等が含まれている可能性はごく少なく、当該海域の海水は、バラスト水排出基準を満たすものと認められている。
【0058】
なお、第2タンクグループTG2を構成するNO.1〜NO.5バラストタンク11〜15に海水を注入する海域は、一般に荒天に遭遇する可能性が低いとされている出港地から200海里沖の遠洋が好ましいが、これに限られるものではない。すなわち、第2タンクグループTG2の各タンク11〜15に注水する海域は、出港地の200海里以遠であれば、より出港地から遠離な海域であってもよい。このような遠洋海域の海水に微生物等が含まれている可能性はごく少なく、当該海域の海水も、バラスト水排出基準を満たすものと認められているからである。
【0059】
次いで、船舶が入港地(荷積港)に達する前に、入港地から十分に遠離な遠洋海域、すなわち入港地の200海里沖に達したならば、当該遠洋海域にて第1タンクグループTG1を構成する兼用バラストタンク9、船首バラストタンク10および船尾バラストタンク16からバラスト水を排出する(S16)。これにより、この段階では、図14に示されるように、NO.1〜NO.5バラストタンク11〜15のみがバラスト水を保有している状態となる。この状態における船舶1の喫水は、船首垂線FPにて4.31m、船尾垂線APにて6.61m、トリム=2.30mとなり、プロペラ没水率=50.9%となる。従って、船舶1では、第2タンクグループTG2を構成するバラストタンク11〜15にのみバラスト水を注入しても、入港地まで安全な航行が可能となる。
【0060】
船舶1は、NO.1〜NO.5バラストタンク11〜15のみにバラスト水が注水された状態で航行し、やがて目的の入港地に達する。入港地に達したならば、船舶1の乗組員は、入港地の管理者から、出港地で注水されたは第1タンクグループTG1の各タンク9,10および16が空になっている旨の確認(証書)を取得する(S18)。そして、確認が取得されれば、入港地にて第2タンクグループTG2を構成するNO.1〜NO.5バラストタンク11〜15からのバラスト水の排水が可能となり(S20)、バラスト水の排水と共に、あるいは排水完了後に、船舶1への荷積が可能となる。
【0061】
上述のように、S10〜S16の手順に従って出港地から入港地までの間にバラスト水を交換をしておくことにより、入港地に達した段階で、船舶1は、遠洋海域すなわち入港地の200海里沖にて第2タンクグループTG2の各タンク11〜15に注入された微生物等を実質的に含んでいないバラスト水のみを保有していることになる。従って、出港地でバラスト水として取得された海水に微生物等が含まれていたとしても、次の入港時には、バラスト水排出基準が確実にクリアされていることになるので、入港地にて第2タンクグループTG2を構成するバラストタンク11〜15からバラスト水を排出しても、環境破壊、資源の損失、人体への悪影響等の問題を生じさせる可能性は極めて低い。また、入港地手前の遠洋海域で、出港地にて第1タンクグループTG1の各タンク9,10および16に注入された微生物等を含む可能性をもったバラスト水を排出しても、微生物等がそこで生存する可能性は非常に低く、このようなバラスト水の排出により環境破壊等を引き起こすおそれは実質的に無いといってよい。
【0062】
この結果、船舶1および上述のバラスト水交換方法によれば、出港地にてバラスト水を注入すべきタンクグループと、遠洋海域にてバラスト水を注入すべきタンクグループとを予め定めておくだけで、バラスト水排出基準をクリアすることが可能となり、環境破壊、資源の損失、人体への悪影響といった問題の発生を良好に抑制することが可能となる。
【0063】
なお、出港地にて海水が注入されるバラストタンクからなるタンクグループは、船首バラストタンク10、船尾バラストタンク16および兼用バラストタンク9を含む第1タンクグループTG1に限られるものではなく、第2タンクグループTG2とされてもよい。要するに、出港地にて微生物等を含む可能性をもった海水が導入されるタンクからなるタンクグループを予め定め、そのタンクグループを構成するバラストタンクのみに出港地で海水を注入し、他のタンクグループのバラストタンクには、遠洋海域においてのみバラスト水が注入されればよいのである。また、本実施形態の船舶1では、複数のバラストタンクが2つのタンクグループに区分けされたが、理論的には、複数のバラストタンクが3つ以上のタンクグループに区分けされてもよい。また、船体の縦強度を十分に保ちつつ十分な喫水を確保できるのであれば、各タンクグループにおけるバラストタンクの組合せは任意に定められ得る。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明による船舶を示す概略構成図である。
【図2】図1の船舶に設けられているバラスト水注入系統を説明するための系統図である。
【図3】図1の船舶の船首構造を説明するための模式図である。
【図4】本発明による船舶の船尾肥大度係数と基準船の船尾肥大度係数とを比較するグラフである。
【図5】図1の船舶の船尾構造を説明するための模式図である。
【図6】本発明による船舶の他の船尾構造を説明するための模式図である。
【図7】図1の船舶の船尾構造を示す模式図である。
【図8】図1の船舶を後方から見た状態を示す模式図である。
【図9】図1の船舶を下方から見た状態を示す模式図である。
【図10】図1の船舶のトンネル部の構成を説明するための模式図である。
【図11】本発明によるバラスト水交換方法を説明するためのフローチャートである。
【図12】本発明によるバラスト水交換方法を説明するための模式図である。
【図13】本発明によるバラスト水交換方法を説明するための模式図である。
【図14】本発明によるバラスト水交換方法を説明するための模式図である。
【図15】基準船の船尾構造を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0065】
1 船舶、2 プロペラ、2a 軸心、2b プロペラ面、3 スケグ、3a スケグ後端線、3i,3o 側面、4 舵、5 トンネル部、5s 起点部、6 船底、7 船体後端部、9 兼用バラストタンク、10 船首バラストタンク、11 NO.1バラストタンク、12 NO.2バラストタンク、13 NO.3バラストタンク、14 NO.4バラストタンク、15 NO.5バラストタンク、16 船尾バラストタンク、17 船首隔壁、18 機関区画、21 第1バラスト水注入系統、22 第2バラスト水注入系統、23 メインライン、24 環状メインライン、25 第1バラストポンプ、26 第2バラストポンプ、27a,27b,27c,28a,28b,28c,28d,28e,28f,28g,28h,28i,28j ブランチライン、P1 スケグ中心面、P2 スケグ後端線を通る平面、TG1 第1タンクグループ、TG2 第2タンクグループ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバラストタンクを有する船舶およびそのような船舶に適用されるバラスト水交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、船舶の運航時には、喫水を確保して船体を安定化させるべく出港地(揚荷港)にてバラストタンクに海水がバラスト水として注入され、入港地(荷積港)においてバラストタンクからバラスト水が排出される。従って、バラスト水の排出時には、バラスト水と共にそれに含まれていた出港地の海域における微生物、水棲生物、病原体等も一緒に入港先の海域に排出されることになる。この場合、バラスト水と共に移動した微生物や水棲生物等が新たな環境に定着してしまうと、その海域の生態系や水産業等の経済活動に大きな影響を与えるおそれがある。また、関係機関の推定によれば、地球規模で移動するバラスト水の量は年間およそ120億トンにも昇るといわれている。このため、このような生態系の移動による環境破壊、資源の損失、人体への悪影響等は、従来から世界共通の環境課題となっていた。
【0003】
上述のようなバラスト水の注排水に起因する生態系の移動を防止するために、2004年2月に国際海事機関(IMO)においてバラスト水管理条約が合意された。かかるバラスト水管理条約は、次のようなバラスト水排水基準に従ってバラスト水の注排水が実行されることを求めるものであり、港湾における船舶のバラスト水排出を大きく規制するものである。
【0004】
バラスト水排水基準(D−2基準):
・50μm以上の生きている生物量が1m3当たり10個体未満、10μm以上大きく50μmより小さい生きている生物量は1ml当たり10個体未満(基準として用いる生物の大きさは、長さ、幅、厚さの中で一番小さい箇所)
・病原性コレラ菌の量は、バラスト水100ml当たり1cfu未満、または動物プランクトン湿重量1g当たり1cfu未満
・大腸菌の量は、バラスト水100ml当たり250cfu単位未満
・腸球菌の量は、バラスト水100ml当たり100cfu単位未満
【0005】
バラスト水の注排水は船舶の運航上必要不可欠なものである。従って、上述の生態系の移動を防止するためには、バラストタンク内のバラスト水から微生物等を除去するための処理装置の実用化が求められる。しかしながら、このような処理装置の開発は容易なことではなく、上記基準をクリアさせ得る処理装置の実用化にはなお時間がかかるであろう。このため、上記バラスト水管理条約の合意後も、洋上でのバラスト水交換が暫定的に認められており、ほとんどの船舶は洋上でのバラスト交換を行っているのが現状である。
【0006】
ここで、船舶のバラスト水交換方法としては、次の2つの方法が主流となっている。
1)SEQUENTIAL法:バラスト水で満たされた何れかのバラストタンクを一旦空にして、再度注水を行うことでタンク内のバラスト水を交換する方法である。複数のバラストタンクについて順次バラスト水の交換を行うことから、一般にSEQUENTIAL法と呼ばれる。
2)FLOW−THROW法:バラストタンクにバラスト水が注入されている状態で、ポンプを用いてバラストタンク内にバラスト水を注入し続け、希釈によりバラスト水を交換する方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のバラスト水交換方法には、次のような問題も指摘されている。
【0008】
1)SEQUENTIAL法を用いる場合、バラストタンクを一旦空にしなければならないが、この際、船体の姿勢制御や船体にかかる縦強度の調整等が必要となる。従って、船舶によっては、安全要件や船級要件を満たせず、SEQUENTIAL法を採用することが困難となる。更に、荒天時には、プロペラ没水率が確保できなかったり、船首部SLAMMING強度が不足したりすると、SEQUENTIAL法によるバラスト水の交換を採用し得なくこともあり得る。
【0009】
2)FLOW−THROW法のもとでは、バラスト水の連続的な注入に起因してタンク内で生じる付加的水圧が船体構造に作用し、船体疲労の問題が生じるおそれもある。また、FLOW−THROW法を採用した場合、タンク容量の3倍ものバラスト水をバラストタンクに注入し続ける必要があるので、稼働時間の増加によりポンプの耐久性に悪影響を与えると共に、発電機の燃料消費量の増加等によりCO2発生量が増加してしまい、環境に悪影響を与えるおそれもある。
【0010】
3)現状、バラスト水の交換が認められているのは、港から200海里以上遠洋で、かつ水深200m以深の海域であるが、このような遠洋海域にて、バラストタンクを一旦空にする必要があるSEQUENTIAL法によりバラスト水を交換するのは特に荒天時において困難となる。また、遠洋海域において、タンク容量の3倍ものバラスト水をバラストタンクに注入し続ける必要があるFLOW−THROW法によりバラスト水を交換するのは、時間的に容易なことではない。
【0011】
4)SEQUENTIAL法およびFLOW−THROW法の何れについても、入港地にて、対象船舶のバラスト水の注排水が確実に外洋で行われたか否かを確認することは容易ではない。また、すべてのバラストタンクのバラスト水に含まれている微生物が確実に外洋において排出されているか否かを判断することも困難である。更に、バラストタンク内に残存するスラッジにも微生物や水棲生物等が存在し、それらが寄港地において排出される可能性も否定できない。
【0012】
上記理由から、バラスト水排水基準をクリアさせ得る技術の出現が求められている。そして、この種の技術は、実用性の高いバラスト水処理装置が出現するまで適用され得るものであることはもちろん、その出現後にも適用され得るものであると好ましい。
【0013】
そこで、本発明は、バラスト水排水基準をクリア可能とする船舶およびバラスト水交換方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による船舶は、複数のバラストタンクを有する船舶において、概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する基準船よりも大きな船尾肥大度係数を有すると共に、複数のバラストタンクには、船尾バラストタンクと、上記基準船に比べて容積が拡大された船首バラストタンクとが含まれており、複数のバラストタンクは、少なくとも2つのタンクグループに区分けされ、タンクグループごとにバラスト水注入系統が独立に設けられていることを特徴とする。
【0015】
この船舶は、それと概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する基準船よりも大きな船尾肥大度係数を有するので、船尾部で大きな浮力を発生し得ると共に、当該基準船に比べて容積が大きい船尾バラストタンクを備えることができる。また、この船舶の船首バラストタンクは、当該基準船に比べて容積が拡大されている。そして、この船舶の複数のバラストタンクは、少なくとも2つのタンクグループに区分けされており、各タンクグループには、それぞれ独立にバラスト水を注入可能である。なお、ここでいう「基準船」は、1軸船および2軸船の何れであってもよい。
【0016】
このように構成される船舶では、船尾バラストタンクおよび船首バラストタンクの容積が基準船に比べて大きいことから、少なくとも2つのタンクグループの何れかについてのみバラスト水が注入された場合であっても、船体の縦強度を十分に保ちつつ十分な喫水を確保することができる。従って、この船舶では、次のような手順によるバラスト水の交換を実行することができる。
【0017】
すなわち、出港地にて少なくとも2つのタンクグループのうちの予め定められた第1のタンクグループを構成するバラストタンクに海水をバラスト水として注入する。この場合、出港地にて第1のタンクグループを構成するバラストタンクに注入される海水は、微生物等を含んでいる可能性を少なからず有する。その後、船舶が出港して出港地から十分に遠離な遠洋海域に達した段階で、第1のタンクグループとは異なる第2のタンクグループを構成するバラストタンクに海水をバラスト水として注入する。この場合、遠洋海域で第2のタンクグループを構成するバラストタンクに注入される海水に微生物等が含まれている可能性はごく少なく、当該海域の海水は、バラスト水排出基準を満たすものと認められている。次いで、船舶が入港地に達する前に、入港地から十分に遠離な遠洋海域にて第1のタンクグループを構成するバラストタンクからバラスト水を排出する。
【0018】
上述の手順に従って出港地から入港地までの間にバラスト水を交換をしておくことにより、入港地に達した段階で、この船舶は、遠洋海域にて第2のタンクグループに注水された微生物等を実質的に含んでいないバラスト水のみを保有していることになる。従って、出港地でバラスト水として取得された海水に微生物等が含まれていたとしても、次の入港時には、バラスト水排出基準がクリアされており、入港地にて第2のタンクグループを構成するバラストタンクからバラスト水が排出されても、それにより環境破壊、資源の損失、人体への悪影響等の問題を生じさせる可能性は極めて低い。更に、入港地手前の遠洋海域で、出港地にて第1のタンクグループに注水された微生物等を含む可能性をもったバラスト水が排出されても、微生物等がそこで生存する可能性は非常に低く、このようなバラスト水の排出により環境破壊等を引き起こすおそれは実質的に無いといってよい。
【0019】
このように、本発明による船舶によれば、出港地にてバラスト水を注入すべきタンクグループと、遠洋海域にてバラスト水を注入すべきタンクグループとを予め定めておけば、上述のバラスト水排出基準をクリアすることが可能となり、環境破壊、資源の損失、人体への悪影響といった問題の発生を良好に抑制することができる。
【0020】
また、本発明による船舶の船尾肥大度係数をrAとしたときに、船尾肥大度係数が、0.9≦rA≦1.2という範囲内に含まれると好ましい。
【0021】
このように、船尾肥大度係数を上記範囲内から選択することにより、船尾バラストタンクを実用上十分な大きさに拡大することが可能となり、少なくとも2つのタンクグループの何れかについてのみバラスト水が注入された場合であっても、船体の縦強度を十分に保ちつつ十分な喫水を確保することができる。
【0022】
更に、船首バラストタンクを画成する船首隔壁と船首垂線との距離が基準船に比べて長いと好ましい。
【0023】
このように、船首バラストタンクを画成する船首隔壁を船尾側にオフセットして当該船首隔壁と船首垂線との距離を長くすることにより、上記基準船に比べて容積が拡大された船首バラストタンクを容易に実現することが可能となる。
【0024】
また、タンクグループには、少なくとも船尾バラストタンクおよび船首バラストタンクを含む第1タンクグループと、他のバラストタンクにより構成される第2タンクグループとが含まれると好ましい。
【0025】
この態様によれば、第1タンクグループにのみ注水された場合と、第2タンクグループにのみ注水された場合との何れの場合においても、船体の縦強度を十分に保ちつつ十分な喫水を確保することができる。
【0026】
本発明によるバラスト水交換方法は、少なくとも2つのタンクグループに区分けされた複数のバラストタンクと、タンクグループごとに独立に設けられたバラスト水注入系統とを備えた船舶に適用されるバラスト水交換方法であって、
(a)出港地にて予め定められた第1のタンクグループを構成するバラストタンクに海水をバラスト水として注入するステップと、
(b)出港地から十分に遠離な遠洋海域にて第1のタンクグループとは異なる第2のタンクグループを構成するバラストタンクに海水をバラスト水として注入するステップと、
(c)入港地から十分に遠離な遠洋海域にて第1のタンクグループを構成するバラストタンクからバラスト水を排出するステップとを含むものである。
【0027】
また、本発明によるバラスト水交換方法は、(d)入港地にて第2のタンクグループを構成するバラストタンクからバラスト水を排出するステップを更に含むとよい。
【0028】
そして、この方法が適用される船舶は、概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する基準船よりも大きな船尾肥大度係数を有すると共に、基準船に比べて容積が拡大された船首バラストタンクを備えると好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明による船舶およびバラスト水交換方法によれば、バラスト水排水基準を良好にクリアすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明による船舶を示す概略構成図である。同図に示される船舶1は、例えば、2軸推進型のバルクキャリアとして構成されており、2体のプロペラ2と、各プロペラ2に対応して設けられた図示されない主機、それに関連する補機類等を備えるものである。本実施形態の船舶1は、船長Lpp=226m、船幅B=43m、型深さD=18.55m、満載時喫水d=12.8mという諸元を有する。また、船舶1は、保針性能(針路安定性)を良好に保つべく、2体のプロペラ2に対応するように船体後部に設けられた2つのスケグ3を有しており、各プロペラ2および各スケグ3の後方には、各1体の舵4が設けられている。そして、左右一対のスケグ同士間には、トンネル部5(図7から図9参照)が画成されている。
【0032】
更に、船舶1は、複数のカーゴホールドを有している。複数のカードホールドのうち、船長方向および船幅方向のそれぞれ概ね中央に設けられているカーゴホールド9は、バラストタンクとしても使用され得るように構成されている。以下、このカーゴホールドを「兼用バラストタンク9」という。また、船舶1は、複数のカーゴホールドに加えて、船首バラストタンク(Fore.Peak Tank)10、NO.1バラストタンク11、NO.2バラストタンク12、NO.3バラストタンク13、NO.4バラストタンク14、NO.5バラストタンク15および船尾バラストタンク(Aft.Peak Tank)16を有している。更に、NO.5バラストタンク15と船尾バラストタンク16との間には、機関区画18が画成されている。
【0033】
船首バラストタンク10は、船体と船首隔壁17とにより船体の最も船首側に画成される。また、NO.1〜NO.5バラストタンク11〜15は、何れも、左舷側タンクと右舷側タンクとから構成されるものである。更に、船尾バラストタンク16は、船体の最船尾側に形成され、プロペラ2や舵4等の上方に位置する。本実施形態では、これら複数のバラストタンク9〜16は、2つのタンクグループに区分けされている。すなわち、本実施形態では、船首バラストタンク10、船尾バラストタンク16および兼用バラストタンク9が第1タンクグループTG1を構成する。また、NO.1バラストタンク11、NO.2バラストタンク12、NO.3バラストタンク13、NO.4バラストタンク14およびNO.5バラストタンク15が第2タンクグループTG2を構成する。
【0034】
そして、船舶1は、タンクグループTG1およびTG2にそれぞれ独立にバラスト水を供給することができるように構成されている。すなわち、図2に示されるように、第1タンクグループTG1には、メインブランチ方式の第1バラスト水注入系統21が備えられており、第2タンクグループTG2には、第1バラスト水注入系統21とは独立のリングメイン方式の第2バラスト水注入系統22が備えられている。第1バラスト水注入系統21は、概ね船長方向に延びるメインライン23と、メインライン23に接続された第1バラストポンプ25とを含む。メインライン23からは、それぞれ中途にバラスト弁を有するブランチライン27a,27bおよび27cが分岐されている。ブランチライン27aは、船首バラストタンク10に接続され、ブランチライン27bは、兼用バラストタンク9に接続され、ブランチライン27cは、船尾バラストタンク16に接続されている。
【0035】
第2バラスト水注入系統22は、概ね環状に形成された環状メインライン24と、環状メインライン24に接続された第2バラストポンプ26とを含む。環状メインライン24からは、それぞれ中途にバラスト弁を有するブランチライン28a〜28jが分岐されている。ブランチライン28aは、NO.1バラストタンク11の左舷側タンクに、ブランチライン28bは、NO.1バラストタンク11の右舷側タンクにそれぞれ接続され、ブランチライン28cは、NO.2バラストタンク12の左舷側タンクに、ブランチライン28dは、NO.2バラストタンク12の右舷側タンクにそれぞれ接続されている。同様に、ブランチライン28eは、NO.3バラストタンク13の左舷側タンクに、ブランチライン28fは、NO.3バラストタンク13の右舷側タンクにそれぞれ接続され、ブランチライン28gは、NO.4バラストタンク14の左舷側タンクに、ブランチライン28hは、NO.4バラストタンク14の右舷側タンクにそれぞれ接続され、ブランチライン28iは、NO.5バラストタンク15の左舷側タンクに、ブランチライン28jは、NO.5バラストタンク15の右舷側タンクにそれぞれ接続されている。
【0036】
図3は、上述の船舶1の船首構造を説明するための模式図である。同図に示されるように、船舶1では、船首バラストタンク10を画成する船首隔壁17と船首垂線F.P.との距離Lfが基準船に比べて長く設定されている。ここで、「基準船」は、船舶1と概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する従来型船舶である。なお、「基準船」は1軸船および2軸船の何れであってもよい。本実施形態の船舶1では、船首バラストタンク10を画成する船首隔壁17を船尾側にオフセットすることにより船首隔壁17と船首垂線F.P.との距離Lfが長く設定されている。これにより、船舶1は、基準船に比べて容積が拡大された船首バラストタンク10を有することになる。
【0037】
また、基準船における船首隔壁と船首垂線との距離Lf’がLf’=0.042×Lppであるとすると、本実施形態の船舶1の船首隔壁17と船首垂線F.P.との距離Lfは、例えば、Lf’=0.06×Lppとされる。これにより、船舶1では、船首バラストタンク10の容積がおよそ3000m3程度となり、基準船(上記例の場合、2000m3程度)に比べて船首バラストタンクの容量を大幅に増加させることが可能となる。
【0038】
そして、本実施形態の船舶1の船体船尾部は、船尾肥大度係数をrA(=B/L(1.3×(1−Cb)−0.31×lcb))としたときに、船尾肥大度係数rAが、0.9≦rA≦1.2という範囲内に含まれるように構成されている。すなわち、図4からわかるように、本実施形態の船舶1の船尾肥大度係数は、概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する基準船(図4の例では1軸船であり、船尾肥大度係数は、例えば0.4≦rA≦0.65という範囲内に含まれる)に比べて大きな船尾肥大度係数rAを有し、図5に例示されるように、図15に例示される基準船に比べて肥大化された船尾部を有することになる。なお、本発明による船舶1は、船尾肥大度係数rAが、0.9≦rA≦1.2という条件を満たせば、1軸船として構成されてもよく、その場合も、図6に例示されるように、図15に例示される基準船に比べて肥大化された船尾部を有することになる。
【0039】
このように、船舶1の船尾肥大度係数rAを上記範囲内から選択すれば、船尾バラストタンク16を実用上十分な大きさに拡大することが可能となる。すなわち、本実施形態の船舶1の船尾バラストタンク16の容積は、およそ2800m3程度であり、基準船(上記例の場合、500〜600m3程度)に比べて大幅に増加されている。そして、船舶1では、第1タンクグループTG1を構成する兼用バラストタンク9、船首バラストタンク10、および船尾バラストタンク16にのみバラスト水を注入しても、船体の縦強度を十分に保ちつつ、すなわちルール要求を満たしつつ、十分な喫水を確保することが可能となる。
【0040】
具体的には、基準船の兼用バラストタンク、船首バラストタンク、および船尾バラストタンクにのみバラスト水を注入した場合、喫水は、船首垂線FPにて4.31m、船尾垂線APにて5.96m、トリム=1.65mとなり、プロペラ没水率=35.0%となるのに対して、本発明による船舶1において兼用バラストタンク9、船首バラストタンク10、および船尾バラストタンク16にのみバラスト水を注入した場合、喫水は、船首垂線FPにて4.31m、船尾垂線APにて6.61m、トリム=2.30mとなり、プロペラ没水率=50.9%となる。従って、船舶1では、第1タンクグループTG1を構成するバラストタンク9,10および16にのみバラスト水を注入しても、安全な航行が可能となる。
【0041】
本実施形態の船舶1では、上述のように肥大化された船尾構造を実現しつつ、推進性能や保針性能を向上させるべく、次のような対策が講じられている。まず、船舶1の各プロペラ2の直径Dpは、これら各プロペラ2の全円面積の合計が、船舶1と概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する1軸推進型基準船のプロペラの全円面積よりも大きく、かつ、当該1軸推進型基準船のプロペラの全円面積の2倍よりも小さくなるように定められている。すなわち、各プロペラ2の直径Dpは、当該1軸推進型基準船のプロペラの直径をDp1とすると、
1/√2<Dp/Dp1<1.0
という関係を満たしている。そして、本実施形態では、各プロペラ2の直径Dpが、
0.8×Dp1≦Dp≦0.9×Dp1
という範囲内から選択されており、例えば、Dp=0.88×Dp1とされている。なお、全円面積は、プロペラ2が回転した際にプロペラ羽根の先端により描かれる円の面積であり、π/4・Dp2として表される。
【0042】
各プロペラ2の直径Dpが上述のような範囲から選択される結果、船舶1に含まれる2体のプロペラ2は、船舶1と概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する1軸あるいは2軸推進型の基準船のプロペラよりも何れも小さいものとなるが、これによって、船舶1が本来有する良好な保針性能(操縦性能)は損なわれることはない。また、直径Dpを小さくしたことによる推進性能の低下は実用上許容される範囲内に抑えられ、船舶1の推進性能は実用上良好な範囲内に保たれる。
【0043】
また、本実施形態の船舶1では、上述のように2体のプロペラ2の直径Dpを小さくした上で、2つのスケグ3同士の間のトンネル部5が、図7に示されるように、スクエアステーション1.5、若しくはそれよりも船尾側で立ち上がるように形成されている。すなわち、トンネル部5は、その起点部5sから船尾垂線APまでの水平距離Sと船長Lppとの比が、
0<S/Lpp≦0.15
という関係を満たすように形成されている。これにより、船舶1では、船尾側を肥大化させて、1軸あるいは2軸推進型の基準船に比較して船尾バラストタンク16の容積を大幅に増加させることが可能となる。
【0044】
更に、船舶1の各スケグ3は、図8に示されるように、スケグ中心面P1に関して非対称に形成される。加えて、各スケグ3は、スケグ後端線3a(図7参照)を通る平面P2と、スケグ中心面P1とが交差するように、その下端側が船体側部に向けて傾けられている。なお、スケグ後端線3aは、スケグ3を側方から見た際のスケグ後端部の稜線である。
【0045】
ここで、一般に2軸船のスケグは、下方から見た状態で船首から船尾に向かうにつれて先細に形成される。このため、スケグがスケグ中心面に関して左右対称であって傾けられていない場合、トンネル部の船尾側が船首側に比べて拡げられ、トンネル入口に比べてトンネル出口が大きくなるので、トンネル部に流入した水流は船首から船尾に向かうに従って拡散・減速させられ、船体抵抗の増加を招く剥離を引き起こすおそれがある。
【0046】
これに対して、本実施形態のように、各スケグ3を左右非対称に形成すると共に、それぞれの下端側を船体側部に向けて傾けることにより、各スケグ3の船体中心側に位置する側面3iの延在方向は、図9に示されるように、各スケグ3の船体外側に位置する側面3oに比べて全体に船長方向に近づくことになる。これにより、トンネル部5の船長方向における断面積の変化率が比較的小さくなるので、トンネル部5における水流の拡散・減速が抑制される。従って、船舶1では、船体抵抗の増加を招くトンネル部5における剥離の発生を抑制すると共に、トンネル部5から各プロペラ2に流入する水流の流速を高めることができる。また、各スケグ3の船体外側に位置する側面3oのみを外方に膨らまして各スケグ3の外側における伴流率を高めることにより、船体効率を高めると共に各スケグ3の船体外側から各プロペラ2に流入する水流の流速を低下させることができる。
【0047】
これにより、各プロペラ面2b(図8参照)に流れ込む水流の非対称性、すなわち、各プロペラ2に対してスケグ3の内側すなわちトンネル部5から流入する水流とスケグ3の外側から流入する水流との間の流速差を生じさせ、いわゆる伴流利得を得ると共に、船体効率を高めることが可能となる。このように、各スケグ3を左右非対称に形成すると共にその下端側を船体側部に向けて傾ければ、船舶1の推進性能を良好に向上させることが可能となる。
【0048】
なお、船舶1の各スケグ3をスケグ中心面P1に関して非対称に形成するに際しては、スクエアステーション0.5にて、プロペラ2の軸心2aの高さにおけるスケグ内側半部(スケグ中心面P1よりも内側の部位)の幅Biとスケグ外側半部(スケグ中心面P1よりも外側の部位)の幅Boとの比が、
0.5≦Bi/Bo<1
という関係を満たすように各スケグ3を構成するとよい。本実施形態では、スケグ内側半部の幅Biとスケグ外側半部の幅Boとの比が、Bi/Bo=0.73として定められている。更に、各スケグ3を傾斜させるに際しては、スケグ中心面P1とスケグ後端線3aを通る平面P2とのなす角度θが、
0°<θ≦15°
という関係をみたすようにするとよい。これらの構成を採用すれば、プロペラ面2b(図8参照)に流れ込む水流に非対称性を良好に生じさせて伴流利得を確実に得ることが可能となる。
【0049】
また、本実施形態の船舶1では、船体中心線を通って鉛直方向に延びる船体中心面Pcと、各プロペラ2の軸心2a(図7参照)を通って鉛直方向に延びるスケグ中心面P1との距離Bs(図8参照)が、プロペラ2の直径Dpを基準として、
1.2×Dp≦Bs≦1.6×Dp
という関係を満たすように各スケグ3が形成されている。
【0050】
すなわち、船舶1の推進性能を向上させるためには、船体中心面Pcとスケグ中心面P1との距離Bs、つまりトンネル部5の幅をできるだけ小さくして、スケグ3同士間のトンネル部5における流れを加速させ、かつ、各スケグ3の外側における伴流率を高めることにより、船体抵抗の増加と伴流率の低下とを抑えるとよい。ただし、主機、補機の搭載スペースや船内交通性の確保、更には、2体のプロペラ2の相互干渉によるキャビテーションや振動の発生を考慮すると、船体中心面Pcとスケグ中心面P1との距離Bsを小さくすることには限界がある。これらの観点から、船体中心面Pcとスケグ中心面P1との距離Bsが上記関係を満たすようにすれば、スペース効率や船内交通性を損なうことなく、また、キャビテーションや振動の発生を抑制すると共に、上述のように左右非対称かつ傾斜したスケグ3を実現しつつ、船舶1の推進性能を向上させることが可能となる。なお、本実施形態の船舶1では、船体中心面Pcとスケグ中心面P1との距離Bsが、Bs=1.404×Dpとして定められている。
【0051】
更に、本実施形態の船舶1では、図10に示されるように、船底6の後端部、より詳しくは、プロペラ面2bよりも後方の船底6が上方に湾曲することなく概ね平坦に延びるように形成されている。更に、船舶1において、その船体後端部7は、満載時における船体後端部7の没水深さhaと満載時喫水dとの比が、
0.15≦ha/d≦0.25
という関係を満たすように形成されている。
【0052】
一般に、船体後端部7周辺では水流が船体から離れるため、この周辺の部位を図10において破線で示されるように上方に湾曲する曲面状に形成すると流れの剥離が起こり、船体抵抗の増加を招いてしまう。また、船体後端部7の没水深さhaを必要以上に大きくすると、流れの剥離範囲や死水領域が増加し、やはり船体抵抗の増加を招いてしまう。これに対して、上述のように、好ましくはプロペラ面2bよりも後方の船底6を概ね平坦に形成することにより、流れの剥離を抑制し、船体抵抗の減少させることが可能となる。更に、船体後端部7の深さhaと満載時喫水dとの比が上記関係を満たすようにすれば、剥離範囲や死水領域の増加を抑制し、船体抵抗の減少させることが可能となる。従って、このように船尾付近の形状を工夫することにより、船体抵抗を増加を抑えて船舶1の推進性能を向上させることが可能となる。
【0053】
以上説明されたように、本実施形態の船舶1の船首バラストタンク10は、それと概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する基準船に比べて容積が拡大されている。また、本実施形態の船舶1は、当該基準船よりも大きな船尾肥大度係数を有するので、船尾部で大きな浮力を発生し得ると共に、当該基準船に比べて容積が大きい船尾バラストタンク16を備えることができる。そして、船舶1の複数のバラストタンク9〜16は、兼用バラストタンク9、船首バラストタンク10および船尾バラストタンク16を含む第1タンクグループTG1と、他のバラストタンク11〜15により構成される第2タンクグループTG2とに区分けされており、各タンクグループTG1およびTG2には、それぞれ独立にバラスト水を注入することができる。このように構成される船舶1では、船首バラストタンク10および船尾バラストタンク16の容積が大きいことから、船首バラストタンク10、船尾バラストタンク16および兼用バラストタンク9を含む第1タンクグループTG1にのみバラスト水を注入しても、船体の縦強度を十分に保ちつつ十分な喫水を確保することができる。従って、この船舶では、次のような手順によるバラスト水の交換を実行することができる。
【0054】
図11は、上述の船舶1において実行されるバラスト水交換方法を説明するためのフローチャートである。同図に示されるように、積荷を積載していない状態の船舶1が出港地を出る際には、出港地にて2つのタンクグループTG1およびTG2のうちの予め定められた第1のタンクグループ(本実施形態では、第1タンクグループTG1)を構成するバラストタンク9,10および16に海水をバラスト水として注入する(S10)。すなわち、出港地では、第1バラスト水注入系統21の各バラスト弁が開放された上で、第1バラストポンプ25が作動され、これにより、図12に示されるように、兼用バラストタンク9、船首バラストタンク10および船尾バラストタンク16が概ね満水状態とされる。
【0055】
この場合、出港地にて第1のタンクグループを構成するバラストタンクに注入される海水は、出港地の海域に生息する微生物等を含んでいる可能性を少なからず有する。このため、バラストタンク9,10および16に対する海水の注入が完了したならば、船舶1の乗組員は、出港地の管理者から、出港地で注水されたのは第1タンクグループTG1の各タンク9,10および16である旨の確認(証書)を取得する(S12)。
【0056】
図12に示されるように船舶1の第1タンクグループTG1を構成するバラストタンク9,10および16に海水が注入されると、喫水が十分に確保されてプロペラ2が十分に没水し、かつ、船体の縦強度も十分に保たれることから、船舶1は航行可能となる。そして、出航後、船舶1が出港地から十分に遠離な遠洋海域、すなわち出港地の200海里沖に達したならば、予め定められた第1のタンクグループとは異なる第2のタンクグループ(本実施形態では、第2タンクグループTG2)を構成するバラストタンク11〜15に海水をバラスト水として注入する(S14)。すなわち、出港地沖の遠洋海域では、第2バラスト水注入系統22の各バラスト弁が開放された上で、第2バラストポンプ26が作動され、NO.1〜NO.5バラストタンク11〜15が概ね満水状態とされる。
【0057】
このようにNO.1〜NO.5バラストタンク11〜15に海水が注入されると、図13に示されるように、船舶1のすべてのバラストタンク9〜16にバラスト水が注入されることになる。本実施形態の船舶1の喫水は、すべてのバラストタンク9〜16にバラスト水が注入された場合、船首垂線FPにて8.12m、船尾垂線APにて9.56m、トリム=1.4mとなり、プロペラ没水率=96.3%となる。これにより、船舶1の喫水は、出港時に比べて深くなるので、仮に更なる遠洋にて荒天に遭遇したとしても、船舶1の安定性を良好に確保することが可能となる。また、出港地沖の200海里沖で第2タンクグループTG2を構成するバラストタンク11〜15に注入される海水に微生物等が含まれている可能性はごく少なく、当該海域の海水は、バラスト水排出基準を満たすものと認められている。
【0058】
なお、第2タンクグループTG2を構成するNO.1〜NO.5バラストタンク11〜15に海水を注入する海域は、一般に荒天に遭遇する可能性が低いとされている出港地から200海里沖の遠洋が好ましいが、これに限られるものではない。すなわち、第2タンクグループTG2の各タンク11〜15に注水する海域は、出港地の200海里以遠であれば、より出港地から遠離な海域であってもよい。このような遠洋海域の海水に微生物等が含まれている可能性はごく少なく、当該海域の海水も、バラスト水排出基準を満たすものと認められているからである。
【0059】
次いで、船舶が入港地(荷積港)に達する前に、入港地から十分に遠離な遠洋海域、すなわち入港地の200海里沖に達したならば、当該遠洋海域にて第1タンクグループTG1を構成する兼用バラストタンク9、船首バラストタンク10および船尾バラストタンク16からバラスト水を排出する(S16)。これにより、この段階では、図14に示されるように、NO.1〜NO.5バラストタンク11〜15のみがバラスト水を保有している状態となる。この状態における船舶1の喫水は、船首垂線FPにて4.31m、船尾垂線APにて6.61m、トリム=2.30mとなり、プロペラ没水率=50.9%となる。従って、船舶1では、第2タンクグループTG2を構成するバラストタンク11〜15にのみバラスト水を注入しても、入港地まで安全な航行が可能となる。
【0060】
船舶1は、NO.1〜NO.5バラストタンク11〜15のみにバラスト水が注水された状態で航行し、やがて目的の入港地に達する。入港地に達したならば、船舶1の乗組員は、入港地の管理者から、出港地で注水されたは第1タンクグループTG1の各タンク9,10および16が空になっている旨の確認(証書)を取得する(S18)。そして、確認が取得されれば、入港地にて第2タンクグループTG2を構成するNO.1〜NO.5バラストタンク11〜15からのバラスト水の排水が可能となり(S20)、バラスト水の排水と共に、あるいは排水完了後に、船舶1への荷積が可能となる。
【0061】
上述のように、S10〜S16の手順に従って出港地から入港地までの間にバラスト水を交換をしておくことにより、入港地に達した段階で、船舶1は、遠洋海域すなわち入港地の200海里沖にて第2タンクグループTG2の各タンク11〜15に注入された微生物等を実質的に含んでいないバラスト水のみを保有していることになる。従って、出港地でバラスト水として取得された海水に微生物等が含まれていたとしても、次の入港時には、バラスト水排出基準が確実にクリアされていることになるので、入港地にて第2タンクグループTG2を構成するバラストタンク11〜15からバラスト水を排出しても、環境破壊、資源の損失、人体への悪影響等の問題を生じさせる可能性は極めて低い。また、入港地手前の遠洋海域で、出港地にて第1タンクグループTG1の各タンク9,10および16に注入された微生物等を含む可能性をもったバラスト水を排出しても、微生物等がそこで生存する可能性は非常に低く、このようなバラスト水の排出により環境破壊等を引き起こすおそれは実質的に無いといってよい。
【0062】
この結果、船舶1および上述のバラスト水交換方法によれば、出港地にてバラスト水を注入すべきタンクグループと、遠洋海域にてバラスト水を注入すべきタンクグループとを予め定めておくだけで、バラスト水排出基準をクリアすることが可能となり、環境破壊、資源の損失、人体への悪影響といった問題の発生を良好に抑制することが可能となる。
【0063】
なお、出港地にて海水が注入されるバラストタンクからなるタンクグループは、船首バラストタンク10、船尾バラストタンク16および兼用バラストタンク9を含む第1タンクグループTG1に限られるものではなく、第2タンクグループTG2とされてもよい。要するに、出港地にて微生物等を含む可能性をもった海水が導入されるタンクからなるタンクグループを予め定め、そのタンクグループを構成するバラストタンクのみに出港地で海水を注入し、他のタンクグループのバラストタンクには、遠洋海域においてのみバラスト水が注入されればよいのである。また、本実施形態の船舶1では、複数のバラストタンクが2つのタンクグループに区分けされたが、理論的には、複数のバラストタンクが3つ以上のタンクグループに区分けされてもよい。また、船体の縦強度を十分に保ちつつ十分な喫水を確保できるのであれば、各タンクグループにおけるバラストタンクの組合せは任意に定められ得る。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明による船舶を示す概略構成図である。
【図2】図1の船舶に設けられているバラスト水注入系統を説明するための系統図である。
【図3】図1の船舶の船首構造を説明するための模式図である。
【図4】本発明による船舶の船尾肥大度係数と基準船の船尾肥大度係数とを比較するグラフである。
【図5】図1の船舶の船尾構造を説明するための模式図である。
【図6】本発明による船舶の他の船尾構造を説明するための模式図である。
【図7】図1の船舶の船尾構造を示す模式図である。
【図8】図1の船舶を後方から見た状態を示す模式図である。
【図9】図1の船舶を下方から見た状態を示す模式図である。
【図10】図1の船舶のトンネル部の構成を説明するための模式図である。
【図11】本発明によるバラスト水交換方法を説明するためのフローチャートである。
【図12】本発明によるバラスト水交換方法を説明するための模式図である。
【図13】本発明によるバラスト水交換方法を説明するための模式図である。
【図14】本発明によるバラスト水交換方法を説明するための模式図である。
【図15】基準船の船尾構造を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0065】
1 船舶、2 プロペラ、2a 軸心、2b プロペラ面、3 スケグ、3a スケグ後端線、3i,3o 側面、4 舵、5 トンネル部、5s 起点部、6 船底、7 船体後端部、9 兼用バラストタンク、10 船首バラストタンク、11 NO.1バラストタンク、12 NO.2バラストタンク、13 NO.3バラストタンク、14 NO.4バラストタンク、15 NO.5バラストタンク、16 船尾バラストタンク、17 船首隔壁、18 機関区画、21 第1バラスト水注入系統、22 第2バラスト水注入系統、23 メインライン、24 環状メインライン、25 第1バラストポンプ、26 第2バラストポンプ、27a,27b,27c,28a,28b,28c,28d,28e,28f,28g,28h,28i,28j ブランチライン、P1 スケグ中心面、P2 スケグ後端線を通る平面、TG1 第1タンクグループ、TG2 第2タンクグループ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバラストタンクを有する船舶において、
概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する基準船よりも大きな船尾肥大度係数を有すると共に、前記複数のバラストタンクには、船尾バラストタンクと、前記基準船に比べて容積が拡大された船首バラストタンクとが含まれており、前記複数のバラストタンクは、少なくとも2つのタンクグループに区分けされ、タンクグループごとにバラスト水注入系統が独立に設けられていることを特徴とする船舶。
【請求項2】
船尾肥大度係数をrAとしたときに、船尾肥大度係数が、0.9≦rA≦1.2という範囲内に含まれることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記船首バラストタンクを画成する船首隔壁と船首垂線との距離が前記基準船に比べて長いことを特徴とする請求項1または2に記載の船舶。
【請求項4】
前記タンクグループには、少なくとも前記船尾バラストタンクおよび前記船首バラストタンクを含む第1タンクグループと、他のバラストタンクにより構成される第2タンクグループとが含まれることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の船舶。
【請求項5】
少なくとも2つのタンクグループに区分けされた複数のバラストタンクと、タンクグループごとに独立に設けられたバラスト水注入系統とを備えた船舶に適用されるバラスト水交換方法であって、
(a)出港地にて予め定められた第1のタンクグループを構成するバラストタンクに海水をバラスト水として注入するステップと、
(b)前記出港地から十分に遠離な遠洋海域にて前記第1のタンクグループとは異なる第2のタンクグループを構成するバラストタンクに海水をバラスト水として注入するステップと、
(c)入港地から十分に遠離な遠洋海域にて前記第1のタンクグループを構成するバラストタンクからバラスト水を排出するステップとを含むバラスト水交換方法。
【請求項6】
(d)前記入港地にて前記第2のタンクグループを構成するバラストタンクからバラスト水を排出するステップを更に含む請求項5に記載のバラスト水交換方法。
【請求項7】
前記船舶は、概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する基準船よりも大きな船尾肥大度係数を有すると共に、前記基準船に比べて容積が拡大された船首バラストタンクを備えることを特徴とする請求項5または6に記載のバラスト水交換方法。
【請求項1】
複数のバラストタンクを有する船舶において、
概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する基準船よりも大きな船尾肥大度係数を有すると共に、前記複数のバラストタンクには、船尾バラストタンクと、前記基準船に比べて容積が拡大された船首バラストタンクとが含まれており、前記複数のバラストタンクは、少なくとも2つのタンクグループに区分けされ、タンクグループごとにバラスト水注入系統が独立に設けられていることを特徴とする船舶。
【請求項2】
船尾肥大度係数をrAとしたときに、船尾肥大度係数が、0.9≦rA≦1.2という範囲内に含まれることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記船首バラストタンクを画成する船首隔壁と船首垂線との距離が前記基準船に比べて長いことを特徴とする請求項1または2に記載の船舶。
【請求項4】
前記タンクグループには、少なくとも前記船尾バラストタンクおよび前記船首バラストタンクを含む第1タンクグループと、他のバラストタンクにより構成される第2タンクグループとが含まれることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の船舶。
【請求項5】
少なくとも2つのタンクグループに区分けされた複数のバラストタンクと、タンクグループごとに独立に設けられたバラスト水注入系統とを備えた船舶に適用されるバラスト水交換方法であって、
(a)出港地にて予め定められた第1のタンクグループを構成するバラストタンクに海水をバラスト水として注入するステップと、
(b)前記出港地から十分に遠離な遠洋海域にて前記第1のタンクグループとは異なる第2のタンクグループを構成するバラストタンクに海水をバラスト水として注入するステップと、
(c)入港地から十分に遠離な遠洋海域にて前記第1のタンクグループを構成するバラストタンクからバラスト水を排出するステップとを含むバラスト水交換方法。
【請求項6】
(d)前記入港地にて前記第2のタンクグループを構成するバラストタンクからバラスト水を排出するステップを更に含む請求項5に記載のバラスト水交換方法。
【請求項7】
前記船舶は、概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する基準船よりも大きな船尾肥大度係数を有すると共に、前記基準船に比べて容積が拡大された船首バラストタンクを備えることを特徴とする請求項5または6に記載のバラスト水交換方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−22446(P2007−22446A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210365(P2005−210365)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(592250540)株式会社大島造船所 (32)
【出願人】(000232818)日本郵船株式会社 (61)
【出願人】(304035975)株式会社MTI (46)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(592250540)株式会社大島造船所 (32)
【出願人】(000232818)日本郵船株式会社 (61)
【出願人】(304035975)株式会社MTI (46)
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