説明

船舶の推進装置

【課題】船舶を推進する内燃機関の出力トルクを一定に保持して燃費を向上する。
【解決手段】負荷トルク検出器22aからの検出信号に基づいて演算された負荷トルクQaと、動力伝達経路12に加わる負荷トルクの変動基準値Qsとを比較し、負荷トルクQaが変動基準値Qsよりも大きい場合にはジェネレータモータ14による発電量を減少させ、負荷トルクQaが変動基準値Qsよりも小さい場合には発電量を増加させる。また、負荷トルクQaが変動基準値Qsよりも大きい場合にはジェネレータモータ14のアシスト出力を増加させ、負荷トルクQaが変動基準値Qsよりも小さい場合にはアシスト出力を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶航行時に水面の波等の外乱により内燃機関に負荷変動が加わらないようにした船舶の推進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロペラの推力により水上を航行する船舶の動力源としては、通常、ディーゼルエンジンなどの内燃機関が使用されており、内燃機関に加えて動力源として電動モータを有するハイブリッド式の推進装置が特許文献1,2に記載されている。このハイブリッド式推進装置は、内燃機関により駆動されて発電するジェネレータを有し、船舶の航行時に内燃機関によってプロペラを駆動しながらジェネレータを駆動することによりバッテリに電力を充電し、電動モータが駆動されるときにはバッテリから電動モータに電力を供給する。推進装置の小型化を図るために、電動モータの機能とジェネレータの機能とを有するジェネレータモータが用いられている。
【0003】
上述したハイブリッド式の推進装置においては、船舶の定常航行時には内燃機関によりプロペラを駆動し、低速ないし微速航行時および使用頻度が少ない後進航行時には電動モータによりプロペラを駆動するようにしている。微速航行時や後進航行時に電動モータによりプロペラを駆動することにより、内燃機関の騒音の発生を解消し、停船時および係留時にもバッテリの電力を電気機器に供給するようにしている。
【0004】
一方、特許文献3には、プロペラに加わる負荷トルクが内燃機関の出力トルクを上回る場合には、ジェネレータモータをアシストモードで作動させることによりプロペラにモータトルクをアシストし、プロペラに加わる負荷トルクが内燃機関の出力トルクを下回る場合にはジェネレータモータを発電モードで作動させるようにした船舶の推進装置が記載されている。このように、負荷トルクと出力トルクとの大小関係によりジェネレータモータの作動モードを、発電モードとアシストモードのいずれかに切り換えるようにすると、内燃機関の負荷を一定にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−270495号公報
【特許文献2】特開2001−301692号公報
【特許文献3】特開2010−241160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、負荷トルクと出力トルクの大小関係により、ジェネレータモータの作動モードを切り換えて内燃機関の負荷を一定にするには、負荷トルクを精度良く計測する必要がある。負荷トルクの計測には、例えば、プロペラ軸の捩れを計測する歪みゲージが使用されているが、内燃機関停止時の無負荷状態でのゼロ点調整を行う際にプロペラ軸の残留応力を確認することができないため、負荷トルクの計測結果は誤差を含んでおり、負荷トルクを精度よく計測することができない。
【0007】
負荷トルクと出力トルクの大小関係によりジェネレータモータの作動モードを切り換えるようにすると、負荷トルクと出力トルクの値には、ジェネレータモータの発電出力とモータ出力にも変動が含まれることになり、負荷トルクと出力トルクとの大小関係によっては内燃機関の出力トルクを一定に制御することができず、燃費を確実に向上することができない。
【0008】
さらに、負荷トルクと出力トルクの大小関係が長く入れ替わらない場合には、発電モードとアシストモードの一方を長く継続することになる。しかし、船舶に搭載されるバッテリからジェネレータモータに長い間に渡って電気エネルギーを供給したり、長い間に渡ってジェネレータモータからバッテリに充電したりするには、バッテリ容量や切換制御時間などに限界がある。
【0009】
本発明の目的は、船舶を推進する内燃機関の出力トルクを一定に保持し得るようにして内燃機関の燃費を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の船舶の推進装置は、船舶に推力を加えるプロペラと内燃機関の主軸とを連結する動力伝達経路を有する船舶の推進装置であって、前記動力伝達経路に設けられ、前記内燃機関により駆動されて電力を発生するジェネレータと、前記ジェネレータにより発生された電力が供給される電力被供給部と、前記動力伝達経路に加わる負荷トルクを演算する負荷トルク演算手段と、前記負荷トルク演算手段により演算された負荷トルクと前記動力伝達経路に加わる負荷トルクの変動基準値とを比較し、前記負荷トルクが前記変動基準値よりも大きい場合には前記ジェネレータによる発電量を減少させ、前記負荷トルクが前記変動基準値よりも小さい場合には前記ジェネレータによる発電量を増加させる制御手段とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の船舶の推進装置は、船舶に推力を加えるプロペラと内燃機関の主軸とを連結する動力伝達経路を有する船舶の推進装置であって、前記動力伝達経路に設けられ、前記プロペラに動力をアシストする電動モータと、前記電動モータに電力を供給する電力源と、前記動力伝達経路に加わる負荷トルクを演算する負荷トルク演算手段と、前記負荷トルク演算手段により演算された負荷トルクと前記動力伝達経路に加わる負荷トルクの変動基準値とを比較し、前記負荷トルクが前記変動基準値よりも大きい場合には前記電動モータのアシスト出力を増加させ、前記負荷トルクが前記変動基準値よりも小さい場合には前記電動モータのアシスト出力を減少させる制御手段とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の船舶の推進装置は、船舶に推力を加えるプロペラと内燃機関の主軸とを連結する動力伝達経路を有する船舶の推進装置であって、前記動力伝達経路に設けられ、前記内燃機関により駆動されて電力を発生する一方、前記プロペラに動力をアシストするジェネレータモータと、前記ジェネレータモータにより発生された電力が供給される電力被供給部と、前記ジェネレータモータに電力を供給する電力源と、前記動力伝達経路に加わる負荷トルクを演算する負荷トルク演算手段と、前記負荷トルク演算手段により演算された負荷トルクと前記動力伝達経路に加わる負荷トルクの変動基準値とを比較し、前記負荷トルクが前記変動基準値よりも大きい場合には前記電力源からの電力により前記ジェネレータモータを稼働させて前記プロペラに動力をアシストし、前記負荷トルクが前記変動基準値よりも小さい場合には前記ジェネレータモータを前記内燃機関により稼働させて前記電力被供給部に電力を供給する制御手段とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の船舶の推進装置は、負荷トルクの前記算出値を動力伝達経路の歪み量に基づいて演算するか、または動力伝達経路の回転数に基づいて演算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内燃機関への負荷変動の伝達が防止されるので、船舶に外乱が加わっても内燃機関の出力トルクを常に一定に保持することができ、内燃機関の燃費を向上させることができる。
【0015】
航行時にプロペラに加わる負荷トルクを変動基準値と比較することによって負荷トルクの変化量に基づいて発電量を制御したり、アシスト出力を制御したりすることにより、高精度に発電量やアシスト出力を制御することができ、内燃機関に加わる負荷トルクの影響を少なくすることができ、内燃機関の燃費を向上させることができる。
【0016】
負荷トルクと変動基準値とを比較することにより、ジェネレータモータの作動モードをアシスト制御モードと、発電制御モードに切り換えることにより、内燃機関に加わる負荷トルクの影響を少なくすることができ、内燃機関の燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態である船舶の推進装置を示すブロック図である。
【図2】波が発生している水面を船舶が航行している状態を示す模式図である。
【図3】(A)は波の発生により標準水位に対して水面が変化している状態を示す模式図であり、(B)は波による船速の変化を示す模式図であり、(C)は波によりプロペラに加わる負荷トルクの変化を示す模式図であり、(D)は波により負荷トルクが変動した場合における内燃機関の回転数を従来技術と比較して示す模式図である。
【図4】船舶の推進装置における発電制御モードを示すタイムチャートである。
【図5】船舶の推進装置におけるアシスト制御モードを示すタイムチャートである。
【図6】船舶の推進装置における自動切換制御モードを示すタイムチャートである。
【図7】エンジンに対する燃料供給量を一定とした状態のもとでエンジンの出力トルクと主軸の回転数との関係を示す特性線図である。
【図8】本発明の他の実施の形態である推進装置を示すブロック図である。
【図9】本発明のさらに他の実施の形態である推進装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示されるように、船舶に推力を加えるプロペラ11が設けられたプロペラ軸12aは、エンジンつまり内燃機関13の主軸12bに連結されている。プロペラ軸12aと主軸12bは動力伝達経路12を構成しており、エンジンの正味出力つまり出力トルクは動力伝達経路12を介してプロペラ11に伝達される。動力伝達経路12にはジェネレータモータ14が設けられており、ジェネレータモータ14はプロペラ11に対して動力を加える電動モータとしての機能と、内燃機関13により駆動されて発電するジェネレータとしての機能とを有している。
【0019】
船舶内に設けられた種々の船内電気機器15の電力需要を満たすために、船舶内には発電機16が設けられており、発電機16により発電された電力は船内電気機器15に電力線17により送られる。船内電気機器15は電力が供給されて機能を発揮する電力被供給部となっており、発電機16は電力を電力被供給部に供給する電力源となっている。
【0020】
ジェネレータモータ14は周波数と電圧変換機能を有する電力変換装置18を介して船内電気機器15および発電機16に接続されており、ジェネレータモータ14を発電機として稼働させることにより発生した電力を、船内電気機器15の電力需要に供給することができる。一方、ジェネレータモータ14を電動モータとして稼働させてプロペラ11に対して動力をアシストする場合には、ジェネレータモータ14には発電機16から電力を供給することができる。さらに、船舶内にはキャパシタ19aが搭載されており、キャパシタ19aは充放電盤19bを介して電力線17に接続されている。キャパシタ19aは充電された電力をジェネレータモータ14に供給してジェネレータモータ14を電動モータとして稼働させることができるとともに、ジェネレータモータ14により発電された電力を充電することができる。このように、推進装置にキャパシタ19aを設けることにより、キャパシタ19aは電力源および電力被供給部を構成することになる。
【0021】
ジェネレータモータ14,キャパシタ19aは、制御手段としてのコントローラ20により制御される。図1に示す推進装置は、コントローラ20により制御されて、ジェネレータモータ14に対して発電機16とキャパシタ19aのいずれからも電力を供給し得るとともに、ジェネレータモータ14による発電電力を船内電気機器15とキャパシタ19aとのいずれにも供給し得る形態となっている。コントローラ20には内燃機関13の回転数、燃料供給量等の機関駆動状況の検出信号が送られるとともに、内燃機関13の駆動を制御する。
【0022】
このように、図1に示す推進装置は、ジェネレータモータ14に発電機16とキャパシタ19aのいずれからも電力を供給し得るとともに、ジェネレータモータ14により発電した電力を船内電気機器15とキャパシタ19aとのいずれにも供給し得るようにした形態となっている。このような形態に加えて、ジェネレータモータ14に発電機16のみから電力を供給する形態と、ジェネレータモータ14にキャパシタ19aのみから電力を供給する形態がある。同様に、ジェネレータモータ14により発生した電力を船内電気機器15のみに供給する形態と、キャパシタ19aのみに供給する形態がある。
【0023】
プロペラ軸12aには歪みゲージ21aが設けられており、この歪みゲージ21aからは無線信号により負荷トルク検出器22aに検出信号が送信されるようになっている。この歪みゲージ21aは、プロペラ軸12aに加わるねじれ応力に応じた検出信号を、例えば500Hzの周期で負荷トルク検出器22aに送信する。主軸12bには歪みゲージ21bが設けられており、この歪みゲージ21bからは無線信号により負荷トルク検出器22bに検出信号が送信されるようになっている。この歪みゲージ21bは、主軸12bに加わるねじれ応力に応じた検出信号を、歪みゲージ21aと同様の周期で負荷トルク検出器22bに送信する。
【0024】
それぞれの負荷トルク検出器22a,22bの検出信号は信号線によりコントローラ20に送られるようになっており、検出信号に基づいてプロペラ軸12aと主軸12bの負荷トルクを演算することができる。図1に示すように、動力伝達経路12には2つの歪みゲージ21a,21bが設けられているが、いずれか一方の歪みゲージにより船舶の航行時にプロペラ11に加わる負荷トルクを演算することができる。また、2つの歪みゲージ21a,21bの検出信号に基づいて得られた2つの負荷トルクの値の中間値を負荷トルクとすることもできる。
【0025】
プロペラ11がほぼ一定の回転数で回転していた状態のもとで、水面の波やうねり等の外乱がプロペラ11に加わって動力伝達経路12の負荷トルクが変動すると、プロペラ軸12a、主軸12bのねじれ応力が変化するので、歪みゲージ21a,21bからの信号によりプロペラ11に加わる負荷トルクを演算することができる。ただし、負荷トルクを検出するために、歪みゲージ21a,21bに代えて光学式の軸トルク計を用いるようにしても良い。
【0026】
コントローラ20は、制御信号を演算するマイクロプロセッサ(CPU)と、制御プログラム、演算式、マップデータ等が格納されるROMと、一時的にデータを格納するRAMとを具備しており、演算手段としての機能を有している。コントローラ20は、それぞれの歪みゲージ21a,21bからの検出信号に基づいてROMに格納されたデータや演算式により負荷トルクを演算する。
【0027】
コントローラ20には、主軸12bの実際の回転数に対応した回転数信号と、内燃機関13に実際に供給される燃料供給量に対応した供給量信号とが送られるようになっており、コントローラ20に送られるこれらの信号に基づいて、コントローラ20により内燃機関13の正味の出力トルクTaが演算される。したがって、コントローラ20は内燃機関13の出力トルクTaを演算する機能を有しているが、内燃機関13を制御する図示しないエンジンコントローラから出力トルクの信号をコントローラ20に送るようにしても良い。正味の出力トルクTaは、シリンダ内の摩擦損失等を差し引いて内燃機関13の主軸12bから出力されるトルクであり、制動トルクとも言われる。内燃機関13の出力トルクTaの演算方式としては、軸トルク計により主軸12bの出力トルクを求めるようにしても良い。
【0028】
図2は波が発生している水面を船舶が航行している状態を示す模式図である。図2に示されるように、水面上を矢印で示す方向に船舶が航行しているとすると、船舶は波を上る状態S1から、波の頂点を航行する状態S2と、波を下る状態S3とを経て波の最下点状態S4に至ることになる。周期的な波が発生している状態のもとで船舶が航行するときには、このような航行状態が周期的に繰り返されることになる。
【0029】
図3(A)は波の発生により標準水位に対して水面が変化している状態を示す模式図であり、図3(B)は波による船速の変化を示す模式図であり、図3(C)は波によりプロペラ11に加わる負荷トルクQaの変化を示す模式図であり、図3(D)は波により負荷トルクQaが変動した場合における内燃機関の回転数を従来と比較して示す模式図である。
【0030】
船舶が波に差し掛かって波を上る状態S1のときには、船体に加わる航行抵抗は波により増加し船速は低下する。船速の低下によりプロペラ11に向けて流れる水の流入速度も低下するので、プロペラ11に加わる負荷トルクQaが増加することになる。負荷トルクQaは船速が最低となる波の頂点を航行する状態S2付近において最大となる。一方、波の頂点を過ぎると、波を原因とする航行抵抗は一気に低下し、重力加速度も加勢するために船速は急速に増大し、負荷トルクQaは低下することになる。したがって、船舶が航行する際に水面に波が発生すると、船速と負荷トルクQaは図3(B),(C)に示すように変化することになる。ただし、船速と負荷トルクQaの変化は、図3(B),(C)においては単純化して概略的に示されており、実際の波の変化に対する船速と負荷トルクQaの位相は図示する場合よりも複雑な位相差となる。
【0031】
図3(C)に示すように船舶に加わる波などの外乱によってプロペラ11に加わる負荷トルクQaは変動することになる。プロペラ11に加わる負荷トルクQaは、上述した周期で歪みゲージ21a,21bからの検出信号に基づいてコントローラ20により演算される。コントローラ20は、単位時間当たりにおける負荷トルクQaの平均値を変動基準値Qsとして演算してROMに記憶する。この変動基準値Qsは、過去数秒から数分の間における負荷トルクQaの平均値により演算され、時々刻々と更新される。
【0032】
変動基準値Qsを用いた船舶の推進制御形態としては、発電制御モードとアシスト制御モードとがある。
【0033】
図4は船舶の推進装置における発電制御モードを示すタイムチャートである。この発電制御モードにおいては、内燃機関13の出力トルクTaは、プロペラ11を駆動するためのトルクと、ジェネレータモータ14により発電するためのトルクとの合計のトルクに設定される。船舶に加わる波などの外乱によってプロペラ11に加わる負荷トルクQaの変動に対応させてジェネレータモータ14の発電量Gを変化させることにより、内燃機関13の出力トルクTaは一定に設定される。このように、負荷トルクQaの変動をジェネレータモータ14の発電量Gにより相殺することによって、内燃機関13の出力トルクTaを常に一定に保持することができる。
【0034】
負荷トルクQaの変動をジェネレータモータ14の発電量Gにより相殺するために、負荷トルク検出器22aからの検出信号に基づいて演算される負荷トルクQaと、負荷トルクの変動基準値Qsとを比較する。その結果、負荷トルクQaが変動基準値Qsよりも大きい場合にはジェネレータモータ14による発電量Gを変動基準値Qsのときの発電量よりも減少させる。これに対して、負荷トルクQaが変動基準値Qsよりも小さい場合にはジェネレータモータ14による発電量Gを変動基準値Qsのときの発電量よりも増大させる。
【0035】
つまり、算出された負荷トルクQaと変動基準値Qsとの差つまり変化量をΔQ(Qa−Qs)とすると、変化量ΔQが+ならば、増大した負荷トルクに対応させて、発電量を減少させる。これに対し、変化量ΔQが−ならば、減少した負荷トルクに対応させて発電量を増大させることになる。
【0036】
変動基準値Qsは、上述のように、過去数秒から数分の間における負荷トルクQaの平均値により演算され、船舶の航行時に時々刻々と更新されるので、海象に応じた最適な変動基準値Qsに対して負荷トルクQaを比較することができる。このように、ジェネレータモータ14の発電量により負荷トルクQaの変動が吸収されるので、内燃機関13を常に一定の出力トルクTaで駆動させることができる。
【0037】
図5は船舶の推進装置におけるアシスト制御モードを示すタイムチャートである。このアシスト制御モードにおいては、プロペラ11には内燃機関13の出力トルクTaと、電動モータとして機能するジェネレータモータ14のアシスト出力Mとが伝達される。内燃機関13の出力トルクTaは、プロペラ11を駆動するために必要なトルクよりも少ない一定の値に設定されている。船舶に加わる波などの外乱によってプロペラ11に加わる負荷トルクQaが変動すると、その変動に対応させてジェネレータモータ14のアシスト出力Mを変化させることにより、内燃機関13の出力トルクTaは一定に設定される。このように、負荷トルクQaの変動をジェネレータモータ14のアシスト出力Mにより相殺することによって、内燃機関13の出力トルクTaを常に一定に保持することができる。
【0038】
負荷トルクQaの変動をジェネレータモータ14のアシスト出力Mにより相殺するために、負荷トルク検出器22aからの検出信号に基づいて演算される負荷トルクQaと、負荷トルクの変動基準値Qsとを比較する。その結果、負荷トルクQaが変動基準値Qsよりも大きい場合にはジェネレータモータ14によるアシスト出力Mを変動基準値Qsのときのアシスト出力Mよりも増大させる。これに対して、負荷トルクQaが変動基準値Qsよりも小さい場合にはジェネレータモータ14によるアシスト出力Mを変動基準値Qsのときのアシスト出力よりも減少させる。
【0039】
つまり、算出された負荷トルクQaと変動基準値Qsとの差である変化量をΔQ(Qa−Qs)とすると、ΔQが+ならば、増大した負荷トルクに対応させて、アシスト出力を増大させる。これに対し、ΔQが−ならば、減少した負荷トルクに対応させてアシスト出力を減少させることになる。このように、ジェネレータモータ14のアシスト出力により負荷トルクQaの変動が吸収されるので、内燃機関13を常に一定の出力トルクTaで駆動させることができる。
【0040】
図1に示すようにジェネレータモータ14を有する推進装置においては、変動基準値Qsに対する負荷トルクQaの変化量に応じた制御形態として、発電制御モードとアシスト制御モードのいずれかに、航行状況に応じて自動的に切り換えるようにする自動変動制御モードがある。その場合には、例えば、設定船速を得るための必要推進力と主機出力つまり内燃機関出力との関係、または船内の電力需要と供給との関係、あるいはキャパシタ19aの充電容量つまり残存容量の関係に応じて図4に示す発電制御モードと、図5に示すアシスト制御モードのいずれかに自動的に切り換えられる。さらに他の制御形態としては、乗員の操作によって発電制御モードとアシスト制御モードのいずれかに切り換えられるようにする方式がある。その場合には、コントローラ20には制御モードを入力する手動操作スイッチが接続され、手動操作スイッチの操作信号がコントローラ20に送られる。
【0041】
上述のように、航行時の負荷トルクQaを求めて、それよりも前の負荷トルクQaにより求められる変動基準値Qsと負荷トルクQaとを比較すると、負荷トルクQaの変化量を求めることかできる。変化量は相対的な値であって誤差を含まないので、変化量ΔQに基づいて推進装置を制御すると、負荷トルクQaに基づいて制御を高精度で行うことができる。
【0042】
図6は船舶の推進装置におけるさらに他の制御形態としての自動切換制御モードを示すタイムチャートである。
【0043】
この自動切換制御モードにおいては、負荷トルクQaと変動基準値Qsとを比較して負荷トルクQaが変動基準値Qsよりも大きい場合には電力源としてのキャパシタ19aからの電力によりジェネレータモータ14を稼働させてプロペラ11に動力をアシストし、負荷トルクQaが変動基準値Qsよりも小さい場合にはジェネレータモータ14を内燃機関13により稼働させて電力被供給部としてのキャパシタ19aに電力を供給する。図6においては、アシストされたモータトルクはハッチングを付して示されており、発電のために内燃機関13によりジェネレータモータ14に加えられた発電トルクは点を付して示されている。
【0044】
この自動切換制御モードにおいては、内燃機関13の出力トルクTaが変動基準値Qsに基づいてそれに近い値に設定される。変動基準値Qsは上述のように過去数秒から数分の間における負荷トルクQaの平均値により演算され、出力トルクTaはそれに概ね近い値に設定されることになる。波や潮流等の船舶に加わる外乱によって変動基準値Qsと出力トルクTaとの差が限界値よりも大きくなったときには、変動基準値Qsに近い値に出力トルクTaが調整される。限界値の算出周期を変動基準値Qsの算出周期よりも長くすることにより、出力トルクTaを頻繁に変化させることが防止される。このように、出力トルクTaを変動基準値Qsに近づけるように制御すると、充電と放電との偏りに起因してキャパシタ容量が不足することを防止できる。
【0045】
したがって、短期的な周期で変動する波やうねり等の外乱が発生している水面上を船舶が航行するときに、プロペラ11に加わる負荷トルクQaが変動基準値Qsよりも増加すると、ジェネレータモータ14によりプロペラ軸12aには駆動トルクがアシストされるので、内燃機関13に対して供給される燃料を増加させることなく、つまり内燃機関13の出力トルクTaを増加させることなく、船舶を航行させることができる。一方、プロペラ11に加わる負荷トルクが変動基準値Qsよりも減少すると、ジェネレータモータ14が内燃機関13により駆動されて内燃機関13の出力トルクは発電エネルギーとして使用されるので、内燃機関13に対して供給される燃料を減少させて内燃機関13の目標出力トルクを低下させることなく船舶を航行させることができる。
【0046】
上述したそれぞれの制御モードにより推進装置を制御すると、波やうねりが発生している水面上においても、内燃機関13に対して一定量の燃料を供給した状態とし、図3(D)に示すように内燃機関13の回転数を変化させることなく、内燃機関の出力トルクを一定に保持して船舶を航行させることができる。つまり、出力トルクを一定とする航行が可能となる。このように、周期的に負荷トルクが加わっても、内燃機関13の出力トルクを一定に保持することができるので、内燃機関13の回転数を周期的に変化させるように駆動する場合に比して燃費を向上させることができる。
【0047】
図7は内燃機関13に対する燃料供給量を一定とした状態のもとで内燃機関13の出力トルクと主軸12bの回転数との関係を示す特性線図である。この特性線図は内燃機関13として使用されるディーゼルエンジンの特性を示しており、内燃機関13は、供給燃料一定のもとでは、出力トルクと回転数との関係は、図5に示すような特性を有している。図7において、符号aから符号eは、それぞれ燃料供給量を示しており、符号aから符号eに向かうに従って燃料供給量は少ない状態を示す。ディーゼルエンジンは、回転数が高くなると出力トルクが増加し、最大出力トルクつまり最大馬力となる所定の回転数Pよりも回転数が高くなると、出力トルクは右下がりとなる出力特性を有している。船舶の定常航行時には、主軸12bは回転数が右下がりの領域で駆動される。
【0048】
例えば、図7においてA点の状態で船舶が航行しているときに、従来では、波やうねりによりプロペラ11に加わる負荷トルクが増加すると、主軸12bの回転数が低下することになるので、内燃機関13への燃料供給量が高められて、負荷トルクの増加に見合うように出力トルクが高められる。一方、負荷トルクが減少すると、回転数が増加することになるので、燃料供給量が低下されて、負荷トルクの減少に見合うように出力トルクが低下される。
【0049】
したがって、従来技術のように短期的な外乱に対して燃料供給量を制御するようにすると、図3(D)に示すように、エンジン回転数が頻繁に変化することになり、燃費を悪化させることになる。しかも、燃料供給量を制御すると、制御が完了するまでに、図3(D)に示すようにタイムラグTがあるので、短期的な外乱に対応させて安定的に主軸12bの回転数を制御することができない。これに対し、本発明においては、短期的な外乱に対して、ジェネレータモータ14を稼働させることによって主軸12bの回転数を外乱のもとでも、図3(D)に示すように、一定に維持することができる。
【0050】
図1に示すように、動力伝達経路12には電動モータの機能とジェネレータの機能とを有するジェネレータモータ14を設けているが、電動モータとジェネレータとを動力伝達経路にそれぞれ設けるようにしても良い。ただし、図1に示すように、ジェネレータモータ14を動力伝達経路12に配置するようにすると、推進装置を小型化することができる。動力伝達経路12に電動モータのみを設けるようにすると、負荷トルクが増加した場合にはプロペラ軸12aにはモータ動力がアシストされることになる。この場合には図5に示すアシスト制御モードで電動モータのアシスト出力Mが制御される。一方、動力伝達経路12にジェネレータのみを設けるようにすると、負荷トルクが低下した場合にはジェネレータにより発電が行われる。この場合には図4に示す発電制御モードでジェネレータの発電量Gが制御される。
【0051】
図8は本発明の他の実施の形態である船舶の推進装置を示すブロック図である。この推進装置は、図1に示した推進装置の動力伝達経路12が一列となった一軸タイプであるのに対し、動力伝達経路12にギヤボックス25が設けられたギヤボックスタイプとなっている。内燃機関13の主軸12bは、ギヤボックス25を介してプロペラ軸12aに連結され、ジェネレータモータ14の主軸14aもギヤボックス25を介してプロペラ軸12aに連結されている。この場合には、ギヤボックス25内に逆転機構を組み込むことにより、内燃機関13の主軸12bとジェネレータモータ14の主軸14aの回転を逆転させてプロペラ軸12aに伝達することができる。ギヤボックス25には遊星歯車機構が組み込まれており、入力側となる1つの入力動力を出力側となる他方の2つの軸に分力して出力したり、入力側となる2つの入力動力を1つの出力側の軸に合力して出力する機能を有している。
【0052】
図9は本発明のさらに他の実施の形態である船舶の推進装置を示すブロック図である。この推進装置は、図1に示した推進装置における発電機16に加えて廃熱回収装置26が電力供給源として設けられている。廃熱回収装置26は内燃機関13から排出される排ガスのエネルギーを利用して電力を発生する機能を有しており、廃熱回収装置26により利用されて低圧低温となった排ガスは外部に排出される。
【0053】
廃熱回収装置26としては、排ガスの流速、圧力エネルギーによりタービンを回転して発電するタイプと、排ガスの熱エネルギーによりボイラーを加熱し、ボイラーにより得られた蒸気により蒸気タービンを駆動して発電するタイプとがある。このように、内燃機関13の排ガスのエネルギーを電力供給源として利用することにより、内燃機関の燃費をより向上させることができる。
【0054】
図9に示す推進装置は、プロペラ軸12aの回転数Naを検出するための回転数検出器27aと、主軸12bの回転数Nbを検出するための回転数検出器27bとを有している。図7に示すように、内燃機関13の出力トルクTaは動力伝達経路12の回転数と対応関係があり、動力伝達経路12の回転数の変化量を検出することよってプロペラ11に加わる負荷トルクの変化量を求めることができる。このように、動力伝達経路12の回転数の変化量を求めることは、動力伝達経路12の負荷トルクの変化量を求めることを意味することになる。したがって、回転数に基づいて推進制御を行う場合には、プロペラ軸12aの回転数が下がれば、発電量を低減するか、ジェネレータモータ14のアシストトルクを増加させるか、モータモードに切り換えるかのいずれかが設定される。一方、回転数が上がれば、発電量を増加させるか、ジェネレータモータ14のアシストトルクを低減するか、発電モードに切り換えるかのいずれが設定される。ただし、負荷トルクに対応した燃料供給量とプロペラ11の回転数のマップデータをROMに格納するようにし、コントローラ20に送られる回転数検出器27a,27bからの検出信号により、負荷トルクQa,Qbに対応したプロペラ軸12aと主軸12bの回転数の変動値に基づいて、回転数が変動基準値Qsとなるように、発電制御モードとアシスト制御モードの制御を行うようにしても良い。
【0055】
図1および図8に示す推進装置においても、負荷トルク検出器22a,22bに代えて回転数検出器27a,27bを使用するようにしても良い。図9は、図1と同様の一軸タイプの推進装置を示すが、図8と同様のギヤボックスを有するタイプとしても良い。
【0056】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
11 プロペラ
12 動力伝達経路
12a プロペラ軸
12b 主軸
13 内燃機関
14 ジェネレータモータ
15 船内電気機器
16 発電機
17 電力線
18 電力変換装置
19a キャパシタ
19b 充放電盤
20 コントローラ(制御手段、演算手段)
21a,21b 歪みゲージ
22a,22b 負荷トルク検出器
25 ギヤボックス
26 廃熱回収装置
27a,27b 回転数検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に推力を加えるプロペラと内燃機関の主軸とを連結する動力伝達経路を有する船舶の推進装置であって、
前記動力伝達経路に設けられ、前記内燃機関により駆動されて電力を発生するジェネレータと、
前記ジェネレータにより発生された電力が供給される電力被供給部と、
前記動力伝達経路に加わる負荷トルクを演算する負荷トルク演算手段と、
前記負荷トルク演算手段により演算された負荷トルクと前記動力伝達経路に加わる負荷トルクの変動基準値とを比較し、前記負荷トルクが前記変動基準値よりも大きい場合には前記ジェネレータによる発電量を減少させ、前記負荷トルクが前記変動基準値よりも小さい場合には前記ジェネレータによる発電量を増加させる制御手段とを有することを特徴とする船舶の推進装置。
【請求項2】
船舶に推力を加えるプロペラと内燃機関の主軸とを連結する動力伝達経路を有する船舶の推進装置であって、
前記動力伝達経路に設けられ、前記プロペラに動力をアシストする電動モータと、
前記電動モータに電力を供給する電力源と、
前記動力伝達経路に加わる負荷トルクを演算する負荷トルク演算手段と、
前記負荷トルク演算手段により演算された負荷トルクと前記動力伝達経路に加わる負荷トルクの変動基準値とを比較し、前記負荷トルクが前記変動基準値よりも大きい場合には前記電動モータのアシスト出力を増加させ、前記負荷トルクが前記変動基準値よりも小さい場合には前記電動モータのアシスト出力を減少させる制御手段とを有することを特徴とする船舶の推進装置。
【請求項3】
船舶に推力を加えるプロペラと内燃機関の主軸とを連結する動力伝達経路を有する船舶の推進装置であって、
前記動力伝達経路に設けられ、前記内燃機関により駆動されて電力を発生する一方、前記プロペラに動力をアシストするジェネレータモータと、
前記ジェネレータモータにより発生された電力が供給される電力被供給部と、
前記ジェネレータモータに電力を供給する電力源と、
前記動力伝達経路に加わる負荷トルクを演算する負荷トルク演算手段と、
前記負荷トルク演算手段により演算された負荷トルクと前記動力伝達経路に加わる負荷トルクの変動基準値とを比較し、前記負荷トルクが前記変動基準値よりも大きい場合には前記電力源からの電力により前記ジェネレータモータを稼働させて前記プロペラに動力をアシストし、前記負荷トルクが前記変動基準値よりも小さい場合には前記ジェネレータモータを前記内燃機関により稼働させて前記電力被供給部に電力を供給する制御手段とを有することを特徴とする船舶の推進装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の船舶の推進装置において、負荷トルクの前記算出値を動力伝達経路の歪み量に基づいて演算するか、または動力伝達経路の回転数に基づいて演算することを特徴とする船舶の推進装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−52704(P2013−52704A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190380(P2011−190380)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000232818)日本郵船株式会社 (61)