説明

船舶の整流板、船舶及び整流板の取付け方法

【課題】溶接施工や溶接箇所の視認が容易にできるようにして溶接欠陥を無くし、船舶の船底に確実に接続可能な整流板を提供する。
【解決手段】整流板6は、基端9aが船底3に接続された基礎部10と、基礎部10の外周面13に嵌合する本体部20とを備えている。基礎部10は、筒状に形成されており、基礎部10の外周面13及び内周面15の基端側縁部は、それぞれテーパー状に開先加工されている。基礎部10の基端側端面11と船底3とを溶接して金属溶接部14a、14bを形成することにより、基礎部10が船底3に固着される。本体部20は、一端19aが閉塞された筒状の形状を有している。雄ネジ30を本体部20の貫通穴22に挿入するとともに、雄ネジ30の先端を基礎部10の雌ネジ穴12に螺合して、本体部20を基礎部10に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船尾の船底に取り付けられ、推進用スクリューに流入する水を整流する船舶の整流板、船舶及び整流板の取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の船尾に設けられた推進用スクリューの前方には、図7に示すように、推進用スクリュー2の周囲に生じる旋回流を弱めるための複数のフィン5と、推進用スクリュー2に流入する水を整流して推進性能を向上させるための整流板50とが設けられている(特許文献1)。
整流板50は、一般的に手作業で船尾の船底3に溶接して取り付けられる。この溶接は、整流板50の基端51を船底3に当接させた状態で、整流板50の外周面側から整流板50の外周に沿って施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−179869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した整流板を船底に溶接する作業は困難であるため、融合不良が生じたり、整流板の外周側のみを溶接するため、溶込み不良が生じたりするおそれがある。万が一、融合不良や溶込み不良等の溶接不良箇所が存在すると、整流板には船舶の航行中に水が激しく衝突して衝撃力が作用するので、溶接不良箇所に応力が集中して亀裂や破損が生じるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題を解決するものであって、溶接施工や溶接箇所の視認が容易にできるようにして溶接欠陥を無くし、船舶の船底に確実に接続可能な整流板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する本発明に係る船舶の整流板は、船尾の船底に取り付けられ、推進用スクリューに流入する水を整流する船舶の整流板であって、
中空部を有して筒状に形成され、基端が前記船底に取り付けられる基礎部と、
前記基礎部の外周面と同じ曲率の内周面を有し、且つ一端から基端までの長さが前記基礎部の前記基端から他端までの長さよりも長く形成され、当該一端が閉塞された筒状の本体部と、
前記本体部を前記基礎部に固定する固定部材とを備え、
前記本体部の基端側の内方に前記基礎部が嵌合され、前記固定部材にて前記本体部が前記基礎部に固定されていることを特徴とする。
【0007】
このように、整流板は基礎部と本体部とに分割されており、その基礎部は筒状の形状を有しているため、基礎部の内周面側及び外周面側から基礎部の基端を溶接して船底に取り付けることができる。これにより、従来の整流板を外周面側からのみ溶接する場合と比べて確実に整流板を船底に取り付けることができる。
また、基礎部は筒状の形状を有しているため、外周面側から溶接した箇所のみならず、内周面側から溶接した箇所も目視することができる。これにより、溶接した箇所に浸透探傷液等を塗布して溶接不良箇所を検査する非破壊検査を、基礎部の内周面側及び外周面側に対して共に実施することができるので、溶接の信頼性が向上する。
また、整流板は基礎部と本体部とに分割されているため、それぞれの部材が小型化されることで、運搬や取り扱いが容易となる。これにより、船底への取付け作業が容易となり、溶接品質が向上する。
【0008】
また、前記基礎部の前記基端から前記他端までの長さをLbとし、前記本体部の前記一端から前記基端までの長さをLtとしたとき、1/4≦Lb/Lt≦1/3の関係が成立することとしてもよい。
【0009】
このように、本体部の長さLtに対して基礎部の長さLbが短いため、基礎部の内周面側からの溶接作業や溶接箇所の非破壊検査作業を容易に行うことができる。
【0010】
また、前記固定部材は、複数の雄ネジから構成され、
前記本体部には、前記本体部の前記基端側から前記一端側へ向かう方向と直交する方向を向く複数の貫通穴が形成され、
前記基礎部には、前記基礎部の前記基端側から前記他端側へ向かう方向と直交する方向を向く複数の雌ネジ穴が形成されており、
前記雄ネジを前記本体部の前記貫通穴に挿入して前記基礎部の前記雌ネジ穴に螺合することで前記本体部を前記基礎部に固定してもよい。
【0011】
このように、固定部材の雄ネジを基礎部に形成された雌ネジ穴に螺合することで本体部を基礎部に固定することができる。また、基礎部と本体部とは雄ネジで固定されているため、雄ネジを緩めることで本体部を基礎部から取り外すことができる。これによって、本体部又は基礎部の何れか一方が破損した場合は、破損した方のみを取り外して修理したり、交換したりすることができるため、材料費や工賃等の補修費を低減できる。そして、本体部や基礎部を交換する場合には、新たな本体部や基礎部を予め製作しておくことで、補修期間を短縮することができる。さらに、整流板の定期点検時においては、本体部を取り外すことで、基礎部の内周面側から溶接した溶接箇所の非破壊検査が可能となるので、定期点検の信頼性が向上する。
【0012】
また、湾曲した断面形状を有し、前記本体部の外周面と同じ曲率の内周面を有する当て板を備え、
前記当て板は、前記基礎部と前記本体部との嵌合により前記基礎部の前記外周面と前記本体部の前記内周面とが当接している箇所における前記本体部の前記外周面に配置され、
前記当て板は、前記固定部材にて前記本体部に固定されていてもよい。
【0013】
このように、当て板は、基礎部と本体部とが当接している箇所における本体部の外周面に取り付けられているため、本体部の厚さが厚くなることで、本体部に雄ネジを挿通するための貫通穴を設けても整流板の剛性は低下しない。
【0014】
また、前記本体部の基端側の端面と前記基礎部の前記外周面とは、前記基礎部の前記外周面に沿って溶接が施こされていてもよい。
【0015】
このように、本体部の基端側の端面と基礎部の外周面とは溶接が施されているため、水が基礎部と本体部との間から整流板内に入ることを防止できる。
【0016】
また、前記本体部と前記当て板の側面とは、前記当て板の側面に沿って溶接が施こされていてもよい。
【0017】
このように、本体部と当て板の側面とは溶接が施されているため、水が本体部と当て板との間に入ることを防止できる。
【0018】
また、本発明に係る船舶は、上述した整流板を船尾の船底に備え、前記整流板を構成する基礎部の基端は、前記基礎部の内周面側及び外周面側からそれぞれ溶接して前記船底に接続されていることを特徴とする。
【0019】
このように、整流板は基礎部と本体部とに分割されており、その基礎部は筒状の形状を有しているため、基礎部の内周面側及び外周面側から基礎部の基端を溶接して船底に取り付けることができる。これにより、従来の整流板を外周面側からのみ溶接する場合と比べて確実に整流板を船底に取り付けることができる。また、整流板は基礎部と本体部とに分割されているため、それぞれの部材が小型化されることで、運搬や取り扱いが容易となる。これにより、船底への取付け作業が容易となり、作業効率が向上するため、短期間で船舶を製造することができる。
【0020】
さらに、本発明に係る整流板の取付け方法は、船尾の船底に取り付けられ、推進用スクリューに流入する水を整流する整流板の取付け方法であって、
中空部を有して筒状に形成された基礎部の基端を当該基礎部の内周面側及び外周面側からそれぞれ溶接して前記基礎部を前記船底に接続する溶接工程と、
一端から基端までの長さが前記基礎部の前記基端から他端までの長さよりも長く形成され、当該一端が閉塞された筒状の本体部を前記基礎部に嵌合する嵌合工程と、を備えることを特徴とする。
【0021】
このように、整流板は基礎部と本体部とに分割されており、その基礎部は筒状の形状を有しているため、基礎部の内周面側及び外周面側から基礎部の基端を溶接して船底に取り付けることができる。これにより、従来の整流板を外周面側からのみ溶接する場合と比べて確実に整流板を船底に取り付けることができる。
また、整流板は基礎部と本体部とに分割されているため、それぞれの部材が小型化されることで、運搬や取り扱いが容易となる。これにより、船底への取付け作業が容易となり、溶接品質が向上する。
【0022】
また、前記溶接工程と前記嵌合工程との間に、
前記基礎部の前記基端と前記船底とを溶接した箇所に対して非破壊検査を実施してもよい。
【0023】
このように、溶接不良箇所を検出するための非破壊検査を、基礎部の内周面側及び外周面側から実施することができるので、溶接の信頼性が向上する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、溶接施工や溶接箇所の視認が容易にできるようになるため、溶接欠陥が無くなり、船舶の船底に整流板を確実に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一実施形態に係る整流板の構成部材である基礎部の側面図及び当該側面図のA−A断面図である。
【図2】本実施形態に係る整流板の構成部材である本体部の側面図及び当該側面図のB−B断面図である。
【図3】基礎部と本体部とを備える整流板を船舶の船底に取り付けた状態を示す側面図及び当該側面図のC−C断面図である。
【図4】図3の側面図のD−D断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る整流板の側面図及び当該側面図のE−E断面図である。
【図6】図5の側面図のF−F断面図である。
【図7】従来の整流板を備えた船舶の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る船舶の整流板について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0027】
図1は、本発明の第一実施形態に係る整流板の構成部材である基礎部の側面図及び当該側面図のA−A断面図である。
図1に示すように、整流板の構成部材である基礎部10は、中空部を有して筒状に形成されており、基端9a側から他端9b側へ(以下、船長方向という)向かって次第に細くなるテーパー状の形状を有している。
基礎部10には、基礎部10の船長方向と直交する方向を向く複数の雌ネジ穴12が形成されている。
基礎部10の外周面13及び内周面15の基端側縁部9cは、それぞれテーパー状に開先加工されている。これにより、詳細は後述するが、基礎部10の基端側端面11を船底3に溶接する際に、当該基端側端面11と船底3との間に開先を形成することができる。
【0028】
図2は、本実施形態に係る整流板の構成部材である本体部の側面図及び当該側面図のB−B断面図である。
図2に示すように、整流板の構成部材である本体部20は、一端19aが閉塞された筒状の形状を有している。本体部20は、基端19b側から一端19a側へ(すなわち、船長方向)向かって次第に細くなるテーパー状の形状を有しており、その角度は、基礎部10の角度と同じである。また、本体部20の内周面25の曲率は、基礎部10の外周面13と同じ曲率を有している。
【0029】
本体部20の一端19aから基端19bまでの船長方向長さとLtとし、基礎部10の基端9aから他端9bまでの船長方向長さをLb(図1参照)としたとき、Lb/Lt=1/3の関係が成立する。すなわち、本体部20の船長方向長さLtは、基礎部10の船長方向長さLbの3倍の長さを有している。
なお、本実施形態では、本体部20の船長方向長さLtを基礎部10の船長方向長さLbの3倍としたが、これに限定されるものではなく、本体部20の船長方向長さLtと基礎部10の船長方向長さLbとの関係が次式(1)を満たしていればよい。
1/4≦Lb/Lt≦1/3 ・・・式(1)
【0030】
本体部20の大きさの具体例として、基礎部10の船長方向長さLbを500mmとした場合、本体部20の船長方向長さとLtを1500mm、本体部20の一端19aの長手方向長さLrを400mm、本体部20の基端19bの長手方向長さLsを700mmとする。
【0031】
本体部20には、本体部20の船長方向と直交する方向を向く複数の貫通穴22が形成されている。この貫通穴22の外周面27側の端部には、当該貫通穴22の径よりも大きくて雄ネジの頭部を載置するための座ぐり穴24が形成されている。
【0032】
図3は、基礎部10と本体部20とを備える整流板を船舶の船底に取り付けた状態を示す側面図及び当該側面図のC−C断面図である。また、図4は、図3の側面図のD−D断面図である。
図3及び図4に示すように、整流板6は、基端9aが船舶1に取り付けられた基礎部10と、基礎部10の外周面13に嵌合する本体部20とを備えている。
基礎部10は、船舶1の船底3に溶接にて取り付けられている。溶接は、基礎部10の基端側端面11と船底3との間に形成された開先に沿って施されており、基礎部10の外周面側及び内周面側にそれぞれ金属溶接部14a、14bが形成されている。基礎部10の外周面側及び内周面側からそれぞれ溶接されているため、溶込み不良が生じることを防止できる。また、基礎部10の基端9aから他端9bまでの船長方向長さLbは短くて溶接具を基礎部10の中空部内に挿入して溶接作業を容易に行うことができるため、融合不良等の溶接欠陥が生じることを防止できる。
【0033】
本体部20は、複数の雄ネジ30にて基礎部10に固定されている。本実施形態では、雄ネジ30としてキャップスクリューを用いたが、これに限定されるものではない。
雄ネジ30を本体部20の貫通穴22に挿入するとともに、雄ネジ30のネジ部を基礎部10の雌ネジ穴12に螺合して、本体部20を基礎部10に固定する。このとき、雄ネジ30の頭部は座ぐり穴24内に収納されているため、船舶1が航行する際に、整流板6の側方を通過する水の流れを乱すことはない。
【0034】
本体部20の基端側端面23と基礎部10の外周面13とが交わる箇所に当該基端側端面23に沿ってシール溶接部28が形成されている。これにより、本体部20の内周面25と基礎部10の外周面13との間に水が流入することを防止できる。
【0035】
次に、整流板6を船底3に取り付ける取付け方法について説明する。
【0036】
まず、基礎部10の基端9aを船底3に溶接する溶接ステップを実施する。
基礎部10の基端側端面11を船底3に当接させた後、外周面側を溶接して金属溶接部14aを形成する。また、基礎部10の他端9bの開口から溶接具を基礎部10内に挿入し、基礎部10の内周面側を溶接して金属溶接部14bを形成する。
【0037】
次に、金属溶接部14a、14bについて非破壊検査を実施する非破壊検査ステップを実施する。
基礎部10の外周面側及び内周面側からそれぞれ金属溶接部14a、14bに浸透探傷液を塗布して隙間や割れ等の溶接欠陥の有無を確認する。このとき、基礎部10の長さLbが短いため、基礎部10の他端9bの開口から浸透探傷検査による検出結果を十分に視認することができる。
なお、非破壊検査は、浸透探傷検査に限定されるものではなく、他の方法、例えば、超音波検査、電磁誘導検査、磁粉探傷検査等を用いてもよい。
【0038】
次に、本体部20を基礎部10に嵌合する嵌合ステップを実施する。
本体部20の基端19b側の内周面25を基礎部10の外周面13に当接させて、本体部20の貫通穴22の位置を基礎部10の雌ネジ穴12の位置に一致させる。
そして、雄ネジ30を本体部20の貫通穴22に挿入するとともに、ネジ部分を雌ネジ穴12に螺合する。雄ネジ30の頭部が座ぐり穴24内に完全に入り込むまで雄ネジ30を締め付けることで、本体部20を基礎部10に固定する。
【0039】
上述したように、本実施形態に係る整流板6の基礎部10は筒状の形状を有し、且つ基礎部10の長さLbが短いため、基礎部10の内周面側及び外周面側から基礎部10の基端9aを溶接して船底3に取り付けることができる。これにより、従来の整流板を外周面側からのみ溶接して船底3に取り付ける場合と比べて確実に整流板6を取り付けることができる。また、浸透探傷液等を塗布して溶接不良箇所を検査する非破壊検査を金属溶接部14a、14bに対して実施することができるので、溶接の信頼性が向上する。
そして、整流板6は、基礎部10と本体部20とに分割されているため、それぞれの部材を小型化することで、運搬や取り扱いが容易となる。これにより、船底3への取付け作業が容易となり、作業効率が向上する。
さらに、雄ネジ30で本体部20を基礎部10に固定しているため、船舶1の航行中に本体部20が外れたりすることがない。
また、雄ネジ30を緩めることで本体部20を基礎部10から取り外すことができる。これによって、本体部20が破損した場合は本体部20のみを交換したり、基礎部10が破損した場合は基礎部10のみを交換したりすることができるため、材料費や工賃等の補修費を低減できる。そして、本体部20や基礎部10を交換する場合には、新たな本体部20や基礎部10を予め製作しておくことで、補修期間を短縮することができる。
また、整流板6の定期点検時においては、本体部20を取り外すことで、基礎部10の内周面側の金属溶接部14bの非破壊検査が可能となるので、定期点検の信頼性を向上させることができる。
【0040】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。以下の説明において、上述した実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
本発明の第二実施形態に係る整流板は、第一実施形態の本体部20の外周面27に当て板を取り付けたものである
【0041】
図5は、本発明の第二実施形態に係る整流板の側面図及び当該側面図のE−E断面図である。また、図6は、図5の側面図のF−F断面図である。
図5及び図6に示すように、本実施形態に係る整流板26は、湾曲した断面形状を有し、本体部20の外周面27と同じ曲率の内周面41を有する当て板40を備えている。当て板40は、基礎部10と本体部20とが嵌合して基礎部10の外周面13と本体部20の内周面25とが当接している箇所における本体部20の外周面27に取り付けられている。
当て板40には、本体部20の船長方向と直交する方向を向く複数の貫通穴42が形成されている。この貫通穴42の外周面側端部には、当該貫通穴42の径よりも大きくて雄ネジ30の頭部を載置するための座ぐり穴44が形成されている。
また、本体部20には、本体部20の船長方向と直交する方向を向く複数の雌ネジ穴12が形成されている。
【0042】
本体部20の基端19b側の内周面25を基礎部10の外周面13に当接させて、雄ネジ30を当て板40の貫通穴42に挿入して本体部20及び基礎部10の雌ネジ穴12、12に螺合することで当て板40及び本体部20を基礎部10に固定する。
【0043】
当て板40の周方向側面43と本体部20の外周面27とが交わる箇所に当該周方向端面43に沿ってシール溶接部46が形成されている。そして、当て板40の船舶1と反対側の側面47にもシール溶接部46が形成されている。シール溶接部46は、本体部20の外周面27と当て板40の外周面との段差がなくなるように滑らかな傾斜を有している。これにより、整流板26に沿って流れる水の流れを乱すことはない。また、当て板40の船舶1側の側面45は、当て板40の内周面側から外周面側へ向かって次第に当て板40の中央部に近づくように傾斜している。当て板40の船舶側の側面45と本体部20の基端側端面23との境目を跨るようにシール溶接部48が形成されている。これらのシール溶接部46、48により、当て板40と本体部20との間に水が流入することを防止できる。
【0044】
本体部20の基端側端面23は、内周面側から外周面側に向かって次第に外周面27の中央部に近づくように傾斜している。そして、本体部20の基端側端面23と基礎部10の外周面13とが交わる箇所に当該基端側端面23に沿ってシール溶接部28が形成されている。
【0045】
本実施形態に係る整流板26によれば、第一実施形態で示した効果に加えて、基礎部10と本体部20とが当接している箇所における本体部20の外周面27に当て板40が設けられているため、雄ネジ30を挿入するための貫通穴22を本体部20に設けても、整流板26の剛性は低下しない。
また、当て板40の側面45及び本体部20の基端側側面23が傾斜していることにより、例えば、アーク溶接時に使用する被覆アーク溶接棒を所望の位置に正確に配することが可能となるため、溶接の品質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 船舶
2 スクリュー
3 船底
5 フィン
6 整流板
9a 基端
9b 他端
9c 基端側縁部
10 基礎部
11 基端側端面
12 雌ネジ穴
13 外周面
14a、14b 金属溶接部
15 内周面
19a 一端
19b 基端
20 本体部
22 貫通穴
23 基端側端面
24 座ぐり穴
25 内周面
26 整流板
27 外周面
28 シール溶接部
30 雄ネジ
40 当て板
41 内周面
42 貫通穴
43 周方向側面
44 座ぐり穴
45 側面
46 シール溶接部
47 側面
48 シール溶接部
50 整流板
51 基端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船尾の船底に取り付けられ、推進用スクリューに流入する水を整流する船舶の整流板であって、
中空部を有して筒状に形成され、基端が前記船底に取り付けられる基礎部と、
前記基礎部の外周面と同じ曲率の内周面を有し、且つ一端から基端までの長さが前記基礎部の前記基端から他端までの長さよりも長く形成され、当該一端が閉塞された筒状の本体部と、
前記本体部を前記基礎部に固定する固定部材とを備え、
前記本体部の基端側の内方に前記基礎部が嵌合され、前記固定部材にて前記本体部が前記基礎部に固定されていることを特徴とする船舶の整流板。
【請求項2】
前記基礎部の前記基端から前記他端までの長さをLbとし、前記本体部の前記一端から前記基端までの長さをLtとしたとき、1/4≦Lb/Lt≦1/3の関係が成立することを特徴とする請求項1に記載の船舶の整流板。
【請求項3】
前記固定部材は、複数の雄ネジから構成され、
前記本体部には、前記本体部の前記基端側から前記一端側へ向かう方向と直交する方向を向く複数の貫通穴が形成され、
前記基礎部には、前記基礎部の前記基端側から前記他端側へ向かう方向と直交する方向を向く複数の雌ネジ穴が形成されており、
前記雄ネジを前記本体部の前記貫通穴に挿入して前記基礎部の前記雌ネジ穴に螺合することで前記本体部を前記基礎部に固定することを特徴とする請求項1又は2に記載の船舶の整流板。
【請求項4】
湾曲した断面形状を有し、前記本体部の外周面と同じ曲率の内周面を有する当て板を備え、
前記当て板は、前記基礎部と前記本体部との嵌合により前記基礎部の前記外周面と前記本体部の前記内周面とが当接している箇所における前記本体部の前記外周面に配置され、
前記当て板は、前記固定部材にて前記本体部に固定されていることを特徴とする請求項1〜3のうち何れか一項に記載の船舶の整流板。
【請求項5】
前記本体部の基端側の端面と前記基礎部の前記外周面とは、前記基礎部の前記外周面に沿って溶接が施こされていることを特徴とする請求項1〜4のうち何れか一項に記載の船舶の整流板。
【請求項6】
前記本体部と前記当て板の側面とは、前記当て板の側面に沿って溶接が施こされていることを特徴とする請求項4に記載の船舶の整流板。
【請求項7】
請求項1〜6のうち何れか一項に記載の船舶の整流板を船尾の船底に備え、前記整流板を構成する基礎部の基端は、前記基礎部の内周面側及び外周面側からそれぞれ溶接して前記船底に接続されていることを特徴とする船舶。
【請求項8】
船尾の船底に取り付けられ、推進用スクリューに流入する水を整流する整流板の取付け方法であって、
中空部を有して筒状に形成された基礎部の基端を当該基礎部の内周面側及び外周面側からそれぞれ溶接して前記基礎部を前記船底に接続する溶接工程と、
一端から基端までの長さが前記基礎部の前記基端から他端までの長さよりも長く形成され、当該一端が閉塞された筒状の本体部を前記基礎部に嵌合する嵌合工程と、を備えることを特徴とする整流板の取付け方法。
【請求項9】
前記溶接工程と前記嵌合工程との間に、
前記基礎部の前記基端と前記船底とを溶接した箇所に対して非破壊検査を実施することを特徴とする請求項8に記載の船舶の整流板の取付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−6450(P2013−6450A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138673(P2011−138673)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)