説明

船舶の着岸支援装置

【課題】船舶の着岸が不慣れな者でも、理想の着岸軌跡に沿って着岸できるように指示を行う船舶の着岸支援装置を提供する。
【解決手段】特定の港へ入港する船舶のための着岸支援装置であって、
該港への入港時から該着岸目標位置までの軌跡を記録する記録装置を設け、該軌跡に沿うように操船者に操船指示を行う。前記軌跡から、任意の範囲を定めたアプローチ範囲を定め、船舶が該アプローチ範囲から外れている場合は操船者に最終アプローチ開始地点へ移動するよう指示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の着岸支援装置に関し、船舶を岸壁または桟橋に着桟させる際に、着岸目標位置を設定し、港への入港時から着岸目標位置までの軌跡を作成する記録装置を設けて、該軌跡に沿うように操船者に指示を行うことを特徴とする着岸支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶を桟橋や岸壁から着岸させる(以下着岸という)場合、従来の船舶においては、GPS、レーダ等によって一般に操船者の位置から船が岸壁や桟橋に接近している部分の動きを直接モニターで見ることができる。また、入港から着岸までの類似記録を利用して、該着岸までの軌跡をモニターで見ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで着岸時の操船情報を目視により行う前記方法は、例えば衛星を利用して測位するGPS(地球規模測位システム)、D−GPS、特にセンチメートル単位で測位できるキネマティックGPSを使用し、その位置情報と、岸壁または桟橋との正確な位置とを比較して操船をするものである。しかしながら、着岸までの操船指示はなく、操船技術を要していた。また、理想的な速度、操舵タイミング、入港角度などを細かく指示する装置はなかった。
【0004】
例えば、特開昭60−263812号公報に記載された発明は、赤外線追尾カメラにより地上の目標からの反射赤外線を受光し、カメラの回転角計測装置によりカメラと目標との距離を求め、ジャイロから船体方位角を求めることにより、船体位置を自動的に検出するものである。
【0005】
また、特開2007−230455号公報に記載された発明は、着岸までの軌跡記録を表示するが、着岸の為の操作指示にいたるものではない。
【0006】
本発明は、以上の問題に着目して成されたものであり、船舶の着岸支援装置に関し、船舶を岸壁または桟橋に着岸させる際に、港への入港時から着岸目標位置までの軌跡を記録する記録装置を備え、該軌跡に沿うように操船者に指示を行うことを特徴とする着岸支援装置に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するため本発明の船舶の着岸支援装置は、特定の港へ入港する船舶のための着岸支援装置であって、
前記港への入港時から着岸目標位置までの軌跡を記録する記録装置を設け、該記録装置の軌跡に沿うように操船者に指示を行うことを特徴としたものである。
【0008】
また、前記記録した軌跡から、任意の範囲を定めたアプローチ範囲を定め、船舶が該アプローチ範囲から外れている場合は操船者に最終アプローチ開始地点へ移動するよう指示を行うことを特徴としたものである。
【0009】
また、前記アプローチ範囲は更に、第一支援許容範囲を定め、前記船舶が該第一支援許容範囲から外れた場合は第一支援許容範囲へ移動するよう操船指示を行うことを特徴としたものである。
【0010】
前記第一支援許容範囲内で操船している船舶において、該船舶の船首の向きを前記軌跡に沿うように操船指示を行うことを特徴としたものである。
【0011】
前記アプローチ範囲は、更に第二支援許容範囲を定め、前記船舶が該第二支援許容範囲で操船している場合は、前記第一支援許容範囲へ移動するよう指示を行うことを特徴としたものである。
【0012】
前記アプローチ範囲から外れた場合は、復航指示を行い、前記最終アプローチ開始地点に戻るよう指示を行うことを特徴としたものである
【0013】
前記着岸目標近傍には、その領域に入って続航すると目標位置に到達できないか、岸壁や桟橋に衝突する恐れがある停船領域を定め、該停船領域に操船された場合は、停船および復航指示を行う事を特徴としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の着岸操船支援装置によれば、次のような効果が得られる
(1)入港からの着岸経験がない操船者であっても、該支援装置の指示によって、着岸することができる。
(2)また、着岸軌跡、速度、操舵角度等の指示をするので操船者にとって、一層の着岸が容易となる。
(3)軌跡を記録したデータを転送できるので、特定の船舶に限定される事はない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】船舶の岸壁までの位置、速度、角度を算出する概要説明図である。
【図2】図2は、回路構成を示したブロック図である。
【図3】操船指示許容範囲を示す概要説明図である
【図4】理想な軌跡を記録するためのフローチャートである。
【図5】入港から着岸までのマニュアル操船指示のフローチャートである。
【図6】入港から着岸までの自動操船のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、岸壁1上に測定ポイントA,Bを定め、ミリ波レーダー3,3によって距離および測定ポイントA,Bが船体7の軸方向となす角度θaA,θaB,θbA,θbB,および距離SaA,SaB,SbA,SbBを演算することにより三角測量の手法により、岸壁1と船舶2との相対位置を知ることができる。
【0017】
前記ミリ波レーダー3は、図示はないがレーダーユニット、指向性アンテナ、駆動装置、コンピュータからなる信号処理部及び受信回路からなっている。そして該指向性アンテナを所定の電波放射方向に向ける駆動と、ミリ波パルスの放射・受信動作のとの制御は、いずれも信号処理部によって制御するようにした。アンテナと対象物との間の距離、速度、方向などの演算は信号処理部で行い、その結果を図2で示す船橋の信号処理装置11に出力するようにした。
【0018】
また、船舶にGPS4を取り付け、GPS4から出力される緯度・経度による位置信号を前記信号処理装置11に入力し、GPS4による測位信号、ミリ波レーダーから出力される信号、及び予め前記信号処理装置11に入力した海図データから、船舶と岸壁又は桟橋との関係位置を割り出せるようにする。得られた関係位置は、図2で示す表示装置13に表示できるようにする事ができる。
【0019】
図2は、着岸支援装置10の回路構成を示したブロック図である。
前記ミリ波レーダ3から船舶の速度、角度、距離を算出する。GPS4からは、自船位置を算出する。これらの信号を信号処理装置11で船舶と岸壁又は桟橋との関係位置を割り出せるようにする。次に軌跡記録装置12により入港から着岸までの軌跡を記録させる。これらの軌跡記録、自船の位置などを比較して軌跡に沿うように指示を行う。該指示は表示装置13にて表示される。また、一度記録した軌跡はその他船舶に転送ができるようにしている。例えば、USBポート(図示無し)を使用してデータの持ち出しを可能とする。また、該記録装置は、前記着岸理想軌跡の記録データと実際の軌跡を比較して、該理想軌跡との差に基づいて点数もつけることができる。該点数は、省エネルギーの貢献に寄与した操船に基づいている。
【0020】
前記表示装置13は、音声又は/及び画像表示され、操舵指示、操舵解除指示、速度設定指示等がなされる。例えば、右操舵から元の位置へ(この場合、直進位置)に戻す場合、予め右操舵の指示をした後、ブザーが鳴るまでその位置を保持する指示がなされる。 次にブザーが鳴ると直進位置へ戻すよう指示を行う。
【0021】
図3は、操船指示許容範囲を示す説明図である。着岸支援開始地点21は、予め定められている。着岸支援開始地点21から船舶の着岸位置27まで理想着岸軌跡20、アプローチ範囲22、第一支援許容範囲23、第二支援許容範囲24、復航領域25、停船領域26に分けられる。着岸支援開始地点21から船舶の着岸位置27までこれらの範囲、領域を認識し、指示を行うようにしている。
【0022】
前記アプローチ範囲22とは、理想着岸軌跡20から任意の範囲を定めており、支援指示に従い、進路を修正しながら、安全に着岸のための進行を続けることができる範囲を示している。また、該最終アプローチ開始地点とは、安全に着岸のための進行を続けることができる地点である。具体的には、、停船若しくは復航領域時に、該最終アプローチ開始地点まで戻るよう指示が行われる。
【0023】
図4は、理想軌跡を記録するためのフローチャートである。
まず、着岸軌跡モード30をスタートさせ、次に操船熟練者であるかの選択がなされる(S1)。該熟練者を選択すれば、該スタート地点が着岸開始地点となり、着岸軌跡が記録される(S2)。これらの記録は1回限りであるが、過去の着岸軌跡をリセットさせる事で再度着岸軌跡を記録することもできる。
【0024】
前記操船熟練者でない方を選択した場合は、数回着岸軌跡を記録して平均値をとり、理想的な着岸軌跡を記録させる(S3)。ここでいう理想とは、着岸までの最短距離、省エネ、安全を考慮した軌跡となっている。
【0025】
図5は、入港から着岸までのマニュアル操船指示のフローチャートである。まず、着岸支援モードをスタートさせ、理想的な着岸軌跡が表示される。該フローチャートは前記着岸支援開始の地点であり、初めに、現在の船舶位置がアプローチ範囲に進行しているかチェックを行う(S4)。アプローチ範囲から外れた所に船舶が進行している場合、アプローチ範囲までの移動指示を行う(S5)。
【0026】
次に適正な速度で入港しているかチェックを行う(S6)。適正な速度ではない場合は、適正な速度にするよう指示がなされる(S7)。
【0027】
次に第一許容範囲内に船舶が進行しているかをチェックする(S8)。第一許容範囲から外れた所に船舶が進行している場合、次に第二許容範囲であるかチェックを行う(S9)。第二支援許容範囲内である場合は、該第一支援許容範囲までの移動指示を行う(S10)。
【0028】
第二支援許容範囲から外れた所に船舶が進行している場合は、更に復航領域であるか、又は停船領域であるかをチェックする(S11)。復航領域であれば、最終アプローチ開始地点まで戻るよう指示がなされる(S12)。また、停船領域に船舶が進行している場合は、即停船の指示がなされる(S13)。
【0029】
次に前記第一支援許容範囲内に船舶が進行している場合は、次に、船首が、理想着岸軌跡に沿っているかチェックを行う(S14)。該船首が沿っていない場合、船首を沿うように指示がなされる(S15)。例えば図3で示す、7aが指示の対象となる。該船首が沿うようになるとフローが再度適正な速度をチェックする(S7)に戻り、途中で該軌跡から外れないように速度、範囲、領域のチェックを行う。
【0030】
図6は、入港から着岸までの自動操船のフローチャートである。
指示がなされて、操船者が操船するマニュアルモードではなく、入港から着岸まですべて自動で操船される。図6では、自動補正(S16)が該当する。自動補正以外は、図5の説明と重複するので割愛する。
【符号の説明】
【0031】
1 岸壁
2 船舶
3 ミリ波レーダー
4 GPS
11 信号処理装置
12 軌跡記録装置
13 表示装置
20 理想着岸軌跡
22 アプローチ範囲
23 第一支援許容範囲
24 第二支援許容範囲
25 復航領域
26 停船領域
27 着岸位置













【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の港へ入港する船舶のための着岸支援装置であって、
前記港への入港時から着岸目標位置までの軌跡を記録する記録装置を設け、該記録装置の軌跡に沿うように操船者に指示を行うことを特徴とする着岸支援装置
【請求項2】
前記記録した軌跡から、任意の範囲を定めたアプローチ範囲を定め、船舶が該アプローチ範囲から外れている場合は操船者に最終アプローチ開始地点へ移動するよう指示を行うことを特徴とする請求項1記載の着岸支援装置
【請求項3】
前記アプローチ範囲は更に、第一支援許容範囲を定め、前記船舶が該第一支援許容範囲から外れた場合は第一支援許容範囲へ移動するよう操船指示を行うことを特徴とする請求項2記載の着岸支援装置
【請求項4】
前記第一支援許容範囲内で操船している船舶において、該船舶の船首の向きを前記軌跡に沿うように操船指示を行うことを特徴とする請求項3記載の着岸支援装置
【請求項5】
前記アプローチ範囲は、更に第二支援許容範囲を定め、前記船舶が該第二支援許容範囲で操船している場合は、前記第一支援許容範囲へ移動するよう指示を行うことを特徴とする請求項4記載の着岸支援装置
【請求項6】
前記アプローチ範囲から外れた場合は、復航指示を行い、前記最終アプローチ開始地点に戻るよう指示を行うことを特徴とする請求項5記載の着岸支援装置
【請求項7】
前記着岸目標近傍には、停船領域を定め、該停船領域に操船された場合は、停船指示を行うことを特徴とする請求項1記載の離着岸支援装置。
















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−128943(P2011−128943A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287517(P2009−287517)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】