船舶の配線方法及び接続用スリーブ
【課題】ブロック間での配線の接続が容易であり、配線作業の負担を軽減することができる船舶の配線方法を提供する。
【解決手段】 船舶の各部を構成する複数のブロックを製作した後、該複数のブロックを組み合わせて形成される船舶の内部に配線をする船舶の配線方法において、各ブロック内の配線を行うとともに、隣り合うブロックとの境界部となる箇所に、隣り合うブロックとの接続用配線3の端部を設けるブロック内配線工程と、相互に隣り合うブロックの境界部となる箇所夫々に設けられた両方のブロックの接続用配線3の端部同士を接続用スリーブ4で接続するブロック間配線接続工程とを有し、前記ブロック間配線接続工程は、両方のブロックの接続用配線3の端部を挿入して固定する導通部材が絶縁材で被覆された接続用スリーブ4を用いる。
【解決手段】 船舶の各部を構成する複数のブロックを製作した後、該複数のブロックを組み合わせて形成される船舶の内部に配線をする船舶の配線方法において、各ブロック内の配線を行うとともに、隣り合うブロックとの境界部となる箇所に、隣り合うブロックとの接続用配線3の端部を設けるブロック内配線工程と、相互に隣り合うブロックの境界部となる箇所夫々に設けられた両方のブロックの接続用配線3の端部同士を接続用スリーブ4で接続するブロック間配線接続工程とを有し、前記ブロック間配線接続工程は、両方のブロックの接続用配線3の端部を挿入して固定する導通部材が絶縁材で被覆された接続用スリーブ4を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のブロックを組み上げて船体等を形成する船舶の配線方法、及び、該船舶の配線方法に使用する接続用スリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶をブロックに分けて製作するブロック工法では船内の配線はブロック毎に予め工場で先行艤装される。先行艤装ではブロックが上下逆さになって製作されるために、配線作業を効率的に行うことを目的として、天井部分に対して配線作業を行うようにしている。ブロックに分けた場合、ブロック間での配線の接続が問題となるが、従来は、隣り合うブロックの一方の配線の端部に他のブロック内へ配線する線材を束ねておき、複数のブロックを組み上げた後、一方のブロックに束ねておいた線材を他のブロック内へ配線してブロック間での接続をするようにしている。
【0003】
また本発明に係る船舶の配線方法に関連する技術として、次の船舶上部構造体の電気艤装方法が公知である(特許文献1参照)。具体的には、船舶の上部構造体のデッキを上下に貫通して配置される枠状の長尺体の内部に、各層のデッキに配線される横電路ケーブルとの接続部を設けた縦電路ケーブルを配した縦電路モジュールを予め組み立てておき、船体の上甲板上に構築した上部構造体の各デッキに形成した貫通口に前記縦電路モジュールを貫通させ、縦電路ケーブルの接続部に各層のデッキの横電路ケーブルを接続し、縦電路ケーブルの下端部を船体本体側の配電盤等に接続している。
【0004】
また本発明に係る船舶の配線方法に関連する別の技術として、船舶の居室に対する配線システムが公知である(特許文献2参照)。具体的には、ユニット化された居室を船舶の所定位置に設置した後、共用通路の天井に配線された主電路と居室ユニットに備えた接続箱とをケーブルで接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−237579号公報
【特許文献2】特開平8−216977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のブロック工法では、ブロック間での配線ために隣り合うブロックの一方に束ねておいた線材が解けないように取り扱いに注意を要し、また、ブロックを組み上げた後の他のブロック内への配線は高い足場の上での作業となり、作業の負担が大きいという問題があった。
【0007】
尚、特許文献1に記載の船舶上部構造体の電気艤装方法において船舶上部構造体を1つのブロックと考えた場合、船舶上部構造体の縦電路ケーブルの下端部を船体本体側の他のブロック内の配電盤等に接続する具体的な配線方法は示されていない。また、特許文献2に記載の船舶の居室に対する配線システムはブロック内での配線が対象であり、ブロック間の配線については示されていない。
【0008】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、ブロック間での配線の接続が容易であり、配線作業の負担を軽減することができる船舶の配線方法、及び、該船舶の配線方法に好適に使用できる接続用スリーブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る船舶の配線方法は、船舶の各部を構成する複数のブロックを製作した後、該複数のブロックを組み合わせて形成される船舶の内部に配線をする船舶の配線方法において、各ブロック内の配線を行うとともに、隣り合うブロックとの境界部となる箇所に、隣り合うブロックとの接続用配線の端部を設けるブロック内配線工程と、相互に隣り合うブロックの境界部となる箇所夫々に設けられた両方のブロックの接続用配線の端部同士を接続用スリーブで接続するブロック間配線接続工程とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明においては、船舶の各部を構成する複数のブロックを夫々製作するときに、各ブロック内の配線を行うとともに、ブロックの組み合わせ時に隣り合うブロックとの境界部となる箇所に、隣り合うブロックとの接続用配線の端部を設けるブロック内配線工程を実行する。次に、複数のブロックを組み合わせ、相互に隣り合うブロックの境界部となる箇所夫々に設けられた両方のブロックの接続用配線の端部同士を接続用スリーブで接続するブロック間配線接続工程を実行する。
【0011】
本発明に係る船舶の配線方法は、前記ブロック間配線接続工程は、両方のブロックの接続用配線の端部を挿入して固定する導通部材が絶縁材で被覆された接続用スリーブを用いることを特徴とする。
本発明においては、相互に隣り合うブロックの境界部となる箇所夫々に設けられた両方のブロックの接続用配線の端部夫々を絶縁材で被覆された接続用スリーブの導通部材に挿入して固定することにより、両方のブロックの接続用配線の端部同士が接続される。
【0012】
本発明に係る船舶の配線方法は、前記導通部材は、隣り合う一方のブロックの1つの接続用配線の端部を固定する1つの配線固定部と、他方のブロックの複数の接続用配線の端部を固定する複数の配線固定部とを備えており、前記一方のブロックのブロック内配線工程では、前記境界部となる箇所に、前記1つの配線固定部に対応する1つの接続用配線の端部を設け、前記他方のブロックのブロック内配線工程では、前記境界部となる箇所に、前記複数の配線固定部に対応する複数の接続用配線の端部を設けることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、隣り合う一方のブロックのブロック内配線工程では、隣り合う他方のブロックとの境界部となる箇所に、1つの接続用配線の端部を設け、隣り合う他方のブロックのブロック内配線工程では、隣り合う一方のブロックとの境界部となる箇所に、複数の接続用配線の端部を設ける。次にブロック間配線接続工程では、一方のブロックの1つの接続用配線の端部を導通部材に備えた1つの配線固定部に挿入して固定し、他方のブロックの複数の接続用配線の端部夫々を導通部材に備えた複数の配線固定部夫々に挿入して固定することにより、隣り合う一方のブロックの1つの接続用配線の端部と他方のブロックの複数の接続用配線の端部とが接続される。
【0014】
本発明に係る船舶の配線方法は、前記ブロック間配線接続工程では、隣り合うブロックの境界付近に設けられ、両方のブロックの接続用配線の端部夫々が挿通可能な2つの開口を有する収納体に前記接続用スリーブを収容することを特徴とする。
本発明においては、ブロック間配線接続工程では、隣り合うブロックの境界付近に設けられた収納体が有する2つの開口に隣り合う両方のブロックの接続用配線の端部夫々を挿通した状態で、該両方のブロックの接続用配線の端部同士を接続した接続用スリーブを収納体に収容する。
【0015】
本発明に係る船舶の配線方法は、前記開口に挿通される両方のブロックの接続用配線の周囲を覆う防水用部材又は防滴用部材を備えた前記収納体を用いることを特徴とする。
本発明においては、収納体の2つの開口に挿通される両方のブロックの接続用配線の周囲が収納体に備えた防水用部材又は防滴用部材によって覆われる。
【0016】
本発明に係る船舶の配線方法は、前記ブロック内配線工程では、ブロックの天地をブロックの組み合わせ時とは逆にして配線作業を行うことを特徴とする。
本発明においては、ブロック内配線工程では、ブロックの組み合わせ時に天井となる箇所が下部になり、床となる箇所が上部になる状態で配線作業を行う。
【0017】
本発明に係る接続用スリーブは、線材が挿入可能であり、互いに導通した複数の導電部材を備え、該導電部材の夫々に貫通したネジ孔が開設してある接続用スリーブにおいて、前記複数の導電部材の外面を覆い、前記ネジ孔の位置に対応した開口を有する絶縁材を備えていることを特徴とする。
【0018】
本発明の接続用スリーブにおいては、絶縁材で外面を覆われ、互いに導通した複数の導電部材の夫々に線材を挿入し、導電部材の夫々に開設してあるネジ孔及び該ネジ孔の位置に対応した絶縁材の開口にネジを貫通させ、該ネジによって各導電部材に挿入された線材を固定する。
【0019】
本発明に係る接続用スリーブは、前記絶縁材の開口を塞ぐ閉塞部材を備えていることを特徴とする。
本発明の接続用スリーブにおいては、各導電部材のネジ孔及び絶縁材の各開口にネジを貫通させて各導電部材に挿入された線材を固定した後、絶縁材の開口を閉塞部材によって塞ぐ。
【0020】
本発明に係る接続用スリーブは、前記複数の導電部材は筒体をなし、該筒体は筒軸方向の中間の内周部に環状突部を有し、前記ネジ孔を筒軸方向で該環状突部の両側に設けてあることを特徴とする。
【0021】
本発明の接続用スリーブにおいては、複数の導電部材がなす筒体の筒軸方向の一方の開放端から線材を挿入して筒軸方向の中間の内周部に設けた環状突部に当接させ、該線材を環状突部より一方の開放端側に設けてあるネジ孔に貫通させたネジにて固定し、筒体の筒軸方向の他方の開放端から線材を挿入して同環状突部に当接させ、該線材を環状突部より他方の開放端側に設けてあるネジ孔に貫通させたネジにて固定することにより、筒体の各開放端に挿入して固定された各線材同士が接続される。
【0022】
本発明に係る接続用スリーブは、前記筒体は2つの主筒部と1つ以上の分岐筒部とが連結された構造を有し、該主筒部及び分岐筒部の内部に前記線材が固定されることを特徴とする。
本発明の接続用スリーブにおいては、連結された2つの主筒部の内部に各開放端から挿入した線材を該主筒部に設けてあるネジ孔に貫通させたネジにて固定し、1つ以上の分岐筒部の内部に開放端から挿入した線材を分岐筒部に設けてあるネジ孔に貫通させたネジにて固定することにより、2つの主筒部及び1つ以上の分岐筒部の夫々に挿入して固定された各線材同士が導通接続される。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る船舶の配線方法によれば、船舶の各部を構成する複数のブロックを夫々製作するときに、ブロックの組み合わせ時に隣り合うブロックとの境界部となる箇所に接続用配線の端部を設け、複数のブロックを組み合わせたときに、隣り合うブロックの境界部となる箇所夫々に設けた両方のブロックの接続用配線の端部同士を接続用スリーブで接続することで隣り合うブロック間の配線が接続されるので、ブロック間での配線の接続が容易であり、配線作業の負担を軽減することができる船舶の配線方法が提供される。
【0024】
本発明に係る船舶の配線方法によれば、両方のブロックの接続用配線の端部を挿入して固定する導通部材が絶縁材で被覆された接続用スリーブを用いるので、絶縁テープ等にて導通部材の外面を被覆することが不要となり、ブロック間の接続作業が簡単化される。
【0025】
本発明に係る船舶の配線方法によれば、隣り合う一方のブロックの1つの接続用配線の端部と他方のブロックの複数の接続用配線の端部とが接続されるので、例えば両方のブロック間で同数の接続用配線の端部同士を接続する場合よりも接続用配線の総本数が少なくなり、ブロック間での配線の接続構造が簡略化される。
【0026】
本発明に係る船舶の配線方法によれば、隣り合うブロックの接続用配線の端部同士を接続した接続用スリーブが収納体に収容され、外力、外気条件等の外的要因の影響を受けにくくなるので、ブロック間での配線の接続構造の安全性や信頼性が向上する。
【0027】
本発明に係る船舶の配線方法によれば、収納体の2つの開口に挿通される両方のブロックの接続用配線の周囲が防水部材又は防滴部材によって覆われるので、ブロック間での配線の接続構造の安全性や信頼性がより一層向上する。
【0028】
本発明に係る船舶の配線方法によれば、ブロックの天地をブロックの組み合わせ時とは逆にしてブロック内の配線作業を行うので、通常多くの配線が設けられる天井となる箇所が下部になり、配線作業を楽な姿勢で容易に行うことができる。
【0029】
本発明に係る接続用スリーブによれば、挿入した線材をネジ孔に貫通させたネジにて固定する複数の導電部材が外面を被覆材で覆われているので、絶縁テープ等にて複数の導電部材の外面を被覆することが不要となる。また、導電部材に挿入した線材をネジにて固定するので、簡便なネジ締め工具が使用でき、大掛かりな装置となる油圧圧着工具を使用しなくて済む。
従って、ブロック間での配線作業の負担を軽減することができる船舶の配線方法に好適に使用できる接続用スリーブが提供される。
【0030】
本発明に係る接続用スリーブによれば、ネジが貫通した絶縁材の開口を閉塞部材によって塞ぐので、該開口を介して導電部材の内部に外から水等が侵入することが防止され、信頼性が向上した接続用スリーブが提供される。
【0031】
本発明に係る接続用スリーブによれば、複数の導電部材がなす筒体の筒軸方向の開放端から挿入された線材は環状突部に当接した位置に保持されるので、線材の挿入を的確に行うことができる。
【0032】
本発明に係る接続用スリーブによれば、2つの主筒部及び1つ以上の分岐筒部の内部に挿入して固定された各線材同士が接続されるので、例えば2つの筒部が連結された接続用スリーブを複数個に用いて接続する場合に比べて接続用スリーブの個数及び線材の総本数が少なくなり、配線の接続構造が簡略化される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る船舶の配線方法が適用される船舶のブロック構成の一例を模式的に示す船舶の側面図である。
【図2】図1に示す1つのブロック内の配線の要部を示す断面図である。
【図3】図1に示す1つのブロック内の配線の要部を示す断面図である。
【図4】縦方向で隣り合うブロック間の配線の接続構造を示す斜視図である。
【図5】図4に示すブロック間の配線の接続構造の蓋を閉じた状態を示す斜視図である。
【図6】図4に示す配線の接続構造の一部を拡大した斜視図である。
【図7】図1に示す1つのブロック内の配線の要部を示す断面図である。
【図8】横方向で隣り合うブロック間の配線の接続構造を示す斜視図である。
【図9】ブロック間の配線の接続構造の変形形態を示す斜視図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る接続用スリーブの平面図である。
【図11】図10に示す接続用スリーブの側面図である。
【図12】図10のXII−XII線における正面断面図である。
【図13】図10のXIII−XIII線における側面断面図である。
【図14】接続用スリーブの使用状態を示す側面断面図である。
【図15】第2の実施形態に係る接続用スリーブを用いた配線の接続構造を示す斜視図である。
【図16】図15に示す配線の接続構造の一部を拡大した斜視図である。
【図17】第3の実施形態に係る接続用スリーブを用いた配線の接続構造を示す斜視図である。
【図18】図17に示す配線の接続構造の一部を拡大した斜視図である。
【図19】第4の実施形態に係る接続用スリーブを用いた配線の接続構造を示す斜視図である。
【図20】図19に示す配線の接続構造の一部を拡大した斜視図である。
【図21】第5の実施形態に係る配線の接続構造を示す図である。
【図22】第6の実施形態に係る配線の接続構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る船舶の配線方法、及び接続用スリーブの実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0035】
〔第1の実施形態〕
図1は本発明の第1の実施形態に係る船舶の配線方法が適用される船舶のブロック構成の一例を模式的に示す船舶の側面図、図2は図1に示す1つのブロック内の配線の要部を示す断面図、図3は図1に示す1つのブロック内の配線の要部を示す断面図、図4は縦方向で隣り合うブロック間の配線の接続構造を示す斜視図、図5は図4に示すブロック間の配線の接続構造の蓋を閉じた状態を示す斜視図、図6は図4に示す配線の接続構造の一部を拡大した斜視図である。
【0036】
船舶は、前船体ブロックB1、中央船体ブロックB2、後船体ブロックB3、後船体ブロックB3の上に位置する船橋ブロックB4、及び中央船体ブロックB2の上に位置するクレーンブロックB5の5ブロックに区分してある。後船体ブロックB3には推進動力用のエンジンが設けてある。船橋ブロックB4は居住区である。クレーンブロックB5には荷物を積み下ろしするためのクレーンが設けてある。
【0037】
各ブロックB1〜B5は、船舶の建造場所の近くの作業場において製作される。3つの船体ブロックB1〜B3の製作は、作業性を良くするために、天地を逆にして作業を行うので、各船体ブロックB1〜B3の甲板裏天井は、ブロックの製作時は下側に位置する。
【0038】
後船体ブロックB3には、推進動力用のエンジンの他、ディーゼルエンジンにて駆動される発電機が複数台設置されており、この発電機にて発電された電力を船内の電気機器に配分する主配電盤(MSB)1が設けてある。そして、後述するように、主配電盤1から船の各部に電力が供給されるように船内の配線がされる。
【0039】
船橋ブロックB4には、後船体ブロックB3との境界部に、長手方向が縦方向に向いたトレイ式電路2が設けてある。該トレイ式電路2は、長手方向の両端に開口2dを有する扁平な長方形の箱体をなし、断面がコの字状の基部2bと、該基部2bに被せられる蓋部2aとを有している。基部2bは脚2cによって4隅部が横壁に支持され、蓋部2aを基部2bに被せた状態で蓋部2aと基部2bとの側面部同士をビスにて固定している。
【0040】
トレイ式電路2の上側の開口2dには、船橋ブロックB4の操舵室、居室等の所要箇所に配線された電力線3が挿入され、電力線3は3相交流用の3本の電線3a,3b,3cを有している。電力線3の端部3tの各電線は被覆を剥がし、夫々接続用スリーブ4の一方端に挿入して固定接続する。電力線3は結束材(不図示)等によってトレイ式電路2の基部2bに保持されている。
【0041】
後船体ブロックB3の甲板裏天井には、主配電盤1から配線された電力線3の端部3tが設けてある。主配電盤1と電力線3の端部3tとの間に設置される電力線3は、図示は省略するが、トレイ式電路内に収容、保持されている。
【0042】
後船体ブロックB3に船橋ブロックB4を溶接等により繋ぎ合せた後、後船体ブロックB3の甲板裏天井に設けてある電力線3の端部3tの各電線の被覆を剥がし、夫々接続用スリーブ4の他方端に挿入して固定接続する。これにより、船橋ブロックB4に電力が供給される。
【0043】
次に、後船体ブロックB3と中央船体ブロックB2との接続について説明する。図7は図1に示す1つのブロック内の配線の要部を示す断面図、図8は横方向で隣り合うブロック間の配線の接続構造を示す斜視図である。
【0044】
中央船体ブロックB2の甲板裏天井側には、後船体ブロックB3との境界部に、長手方向が横方向に向いたトレイ式電路5が設けてある。該トレイ式電路5は前記トレイ式電路2と同様に、長手方向の両端に開口5dを有する扁平な長方形の箱体をなし、断面がコの字状で上側が開口した基部5bと、該基部5bの開口に被せられる蓋部5aとを有している。基部5bは脚5cによって4隅部が甲板裏天井に支持され、蓋部5aと基部5bの側面部同士をビスにて固定している。
【0045】
トレイ式電路5の一端側の開口5dには、中央船体ブロックB2の所要箇所に配線された電力線3が挿入され、電力線3は3相交流用の3本の電線3a,3b,3cを有している。電力線3の端部3tの各電線の被覆を剥がし、夫々接続用スリーブ4の一方端に挿入して固定接続する。電力線3は結束材等によってトレイ式電路5の基部5bに保持されている。
【0046】
後船体ブロックB3の甲板裏天井の中央船体ブロックB2との境界部には、主配電盤1から配線された電力線3の端部3tが設けてある。主配電盤1と電力線3の端部3tとの間に設置される電力線3は、図示は省略するが、トレイ式電路内に収容、保持されている。
【0047】
後船体ブロックB3に中央船体ブロックB2を溶接等により繋ぎ合せた後、後船体ブロックB3の中央船体ブロックB2との境界部に設けてある電力線3の端部3tの各電線の被覆を剥がし、夫々接続用スリーブ4の他方端に挿入して固定接続する。これにより、中央船体ブロックB2に電力が供給される。
【0048】
中央船体ブロックB2とクレーンブロックB5との配線の接続構造は、後船体ブロックB3と船橋ブロックB4との接続の場合と同様である(図2〜図5参照)。また、中央船体ブロックB2と前船体ブロックB1との配線の接続構造は、後船体ブロックB3と中央船体ブロックB2との接続の場合と同様である(図2、図6〜図8参照)。
【0049】
次に、ブロック間の配線の接続構造の変形形態について説明する。図9はブロック間の配線の接続構造の変形形態を示す斜視図である。上記トレイ式電路2,5の防水性及び防滴性を向上させるために、電力線3が挿入される開口5dに、狭い開口面積の両端部を有する略長方形状の端部材5eを付設し、端部材5eの開口内の電力線3との隙間をパテ材5fにて充填する構造である。尚、図9にはトレイ式電路5の場合を図示するが、トレイ式電路2についても同様である。
【0050】
次に接続用スリーブ4の構造について説明する。図10は本発明の第1の実施形態に係る接続用スリーブの平面図、図11は図10に示す接続用スリーブの側面図、図12は図10のXII−XII線における正面断面図、図13は図10のXIII−XIII線における側面断面図、図14は接続用スリーブの使用状態を示す側面断面図である。
【0051】
接続用スリーブ4は、金属製の筒体40の外周部を絶縁材41で覆った構造である。筒体40は径方向の一方側に矩形状に突出したフランジ部40aを備え、径方向の他方側は断面が半円形の円筒部を有している。筒体40は筒軸方向の中央の内周部に断面が三角形状の環状突部40bを備え、環状突部40bの両側の筒部40dの内部に貫通した2個のネジ孔40cを夫々筒体40の筒壁に開設してある。
【0052】
絶縁材41は略同一の厚さで筒体40の外周部を覆う形状であり、筒体40の両端部に対応して、筒体40が抜けないように筒体40の外径よりも小さい内径の開口を有する端部41aを備えている。端部41aの開口41bは、外側から筒体40の両端部に向かって内径が2段階に小さくなる。絶縁材41には、筒体40の各ネジ孔40cに位置に対応してネジ孔40cよりも大径の開口41cが開設してある。
【0053】
接続用スリーブ4による電力線3の各電線の接続について説明する。筒体40の両端部と環状突部40bとの距離に相当する長さ分電線の被覆を剥がし、該電線を絶縁材41の端部41aの開口から環状突部40bの両側の筒部40dに挿入し、電線の先端を環状突部40bに突き当てる。次に、各筒部40dに設けてある各ネジ孔40cに外側からネジ42をねじ込み、ネジ42の先端によって電線を各筒部40dの内周壁に押し付けて固定する。最後に絶縁材41の開口41cに該開口41cの内径よりも少し大きい外径の閉塞部材43を詰める。該閉塞部材43は、例えば弾性樹脂材料にて製作される。
【0054】
〔第2の実施形態〕
図15は第2の実施形態に係る接続用スリーブを用いた配線の接続構造を示す斜視図、図16は図15に示す配線の接続構造の一部を拡大した斜視図である。第2の実施形態に係る接続用スリーブ6は、2つの主筒部6a,6bと1つの分岐筒部6cとが連結された構造である点を除いて、第1の実施形態に係る接続用スリーブ4と同様な構造を有する。2つの主筒部6a,6bは筒軸方向が一致し、分岐筒部6cが一方の主筒部6bの横側に該主筒部6bと筒軸方向が平行に配置してある。
【0055】
隣り合うブロックの一方の電力線3の3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ6の一方の主筒部6aに挿入して固定接続する。隣り合うブロックの他方に2本の電力線3A,3Bが配置され、その一方の電力線3Aの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ6の他方の主筒部3bに挿入して固定接続し、他方の電力線3Bの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ6の分岐筒部6cに挿入して固定接続する。
【0056】
第2の実施形態に係る配線の接続構造によれば、2本の電力線3A,3Bの一方の電力線3Aは、次に隣り合うブロックへ電力を供給するためにそのブロックとの境界部まで配線され、他方の電力線3Bは例えば当該ブロック内に設置されたモーター等の負荷に接続して電力を供給する構成とすることができる。
【0057】
〔第3の実施形態〕
図17は第3の実施形態に係る接続用スリーブを用いた配線の接続構造を示す斜視図、図18は図17に示す配線の接続構造の一部を拡大した斜視図である。第3の実施形態に係る接続用スリーブ7は、2つの主筒部7a,7bの連結箇所に1つの分岐筒部7cがT字型に分岐するように連結された構造である点を除いて、第2の実施形態に係る接続用スリーブ6と同様な構造を有する。また、接続用スリーブ7を収容するトレイ式電路9は、2つの主筒部7a,7bに接続する電力線3を挿通させる開口9dの他に、T字型の分岐筒部7cに接続する電力線3を挿通させる開口9eを有する点で前記トレイ式電路2,5と異なる。
【0058】
隣り合うブロックの一方の電力線3の3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ7の一方の主筒部7aに挿入して固定接続する。隣り合うブロックの他方の電力線3Aの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ7の他方の主筒部7bに挿入して固定接続する。また3個の接続用スリーブ7の分岐筒部7cに電力線3Bの3本の電線3a,3b,3cを夫々挿入して固定接続する。
【0059】
第3の実施形態に係る配線の接続構造によれば、電力線3Aは、次に隣り合うブロックへ電力を供給するためにそのブロックとの境界部まで配線され、電力線3Bは例えば隣り合うブロックの何れか一方のブロック内に設置されたモーター等の負荷に接続して電力を供給する構成とすることができる。
【0060】
〔第4の実施形態〕
図19は第4の実施形態に係る接続用スリーブを用いた配線の接続構造を示す斜視図、図20は図19に示す配線の接続構造の一部を拡大した斜視図である。第4の実施形態に係る接続用スリーブ8は、2つの主筒部8a,8bと2つの分岐筒部8c、8dとが連結された構造である点を除いて、第2の実施形態に係る接続用スリーブ6と同様な構造を有する。2つの分岐筒部8c、8dは筒軸方向が一致し、一方の分岐筒部6cが一方の主筒部6bの横側に該主筒部6bと筒軸方向が平行に配置され、他方の分岐筒部8dが他方の主筒部6aの横側に該主筒部6aと筒軸方向が平行に配置され、バランスの良いスリーブ形状にしてある。
【0061】
隣り合うブロックの一方に2本の電力線3,3Cが配置され、その一方の電力線3の3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ8の一方の主筒部8aに挿入して固定接続し、他方の電力線3Cの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ8の分岐筒部8dに挿入して固定接続する。隣り合うブロックの他方に2本の電力線3A,3Bが配置され、その一方の電力線3Aの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ8の他方の主筒部8bに挿入して固定接続し、他方の電力線3Bの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ8の分岐筒部8cに挿入して固定接続する。
【0062】
第4の実施形態に係る配線の接続構造によれば、隣り合うブロックの他方の2本の電力線3A,3Bの一方の電力線3Aは、次に隣り合うブロックへ電力を供給するためにそのブロックとの境界部まで配線され、他方の電力線3Bは例えば当該他方のブロック内に設置されたモーター等の負荷に接続して電力を供給する構成とすることができる。また隣り合うブロックの一方の電力線3Cは例えば当該一方のブロック内に設置されたモーター等の負荷に接続して電力を供給する構成とすることができる。
【0063】
〔第5の実施形態〕
図21は第5の実施形態に係る配線の接続構造を示す図である。第5の実施形態では、第2の実施形態にて説明した分岐型の接続用スリーブ6を用いて、中央船体ブロックB2とクレーンブロックB5との配線の接続を行う。
【0064】
中央船体ブロックB2の甲板裏天井側には、クレーンブロックB5との境界部に、前記トレイ式電路2と同様な構成のトレイ式電路10が設けてあり、該トレイ式電路10内に3個の接続用スリーブ6が収容されている。後船体ブロックB3からの電力が供給されている電力線3の3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ6の一方の主筒部6aに挿入して固定接続する。また電力線3Aの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ6の他方の主筒部6bに挿入して固定接続する。
【0065】
クレーンブロックB5には、中央船体ブロックB2との境界部にクレーン用のモーター等の負荷に接続された電力線3Bの端部3tが設けてある。中央船体ブロックB2にクレーンブロックB5を繋ぎ合せた後、クレーンブロックB5側の電力線3Bの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ6の分岐筒部6cに挿入して固定接続する。
【0066】
〔第6の実施形態〕
図22は第6の実施形態に係る配線の接続構造を示す図である。第6の実施形態では、第4の実施形態にて説明した分岐型の接続用スリーブ8を用いて、中央船体ブロックB2とクレーンブロックB5との配線の接続を行う。
【0067】
中央船体ブロックB2の甲板裏天井側には、クレーンブロックB5との境界部に、前記トレイ式電路10が設けてあり、該トレイ式電路10内に3個の接続用スリーブ8が収容されている。後船体ブロックB3からの電力が供給されている電力線3の3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ8の一方の主筒部8aに挿入して固定接続し、中央船体ブロックB2内の負荷に接続されている電力線3Cの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ8の分岐筒部8dに挿入して固定接続する。また隣り合う前船体ブロックB1等へ電力を供給するための電力線3Aの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ6の他方の主筒部8bに挿入して固定接続する。
【0068】
クレーンブロックB5には、中央船体ブロックB2との境界部にクレーン用のモーター等の負荷に接続された電力線3Bの端部3tが設けてある。中央船体ブロックB2にクレーンブロックB5を繋ぎ合せた後、クレーンブロックB5側の電力線3Bの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ8の分岐筒部8cに挿入して固定接続する。
【符号の説明】
【0069】
2 トレイ式電路(収納体)
2d 開口
3 電力線(配線)
3A 電力線(配線)
3B 電力線(配線)
3C 電力線(配線)
3t 端部
4 接続用スリーブ
40 筒体(導通部材)
40b 環状突部
40c ネジ孔
40d 筒部(配線固定部)
41 絶縁材
42 ネジ
43 閉塞部材
5 トレイ式電路(収納体)
5d 開口
5e 端部材(防水用部材、防滴用部材)
5f パテ材(防水用部材、防滴用部材)
6 接続用スリーブ
6a 主筒部(配線固定部)
6b 主筒部(配線固定部)
6c 分岐筒部(配線固定部)
7 接続用スリーブ
7a 主筒部(配線固定部)
7b 主筒部(配線固定部)
7c 分岐筒部(配線固定部)
8 接続用スリーブ
8a 主筒部(配線固定部)
8b 主筒部(配線固定部)
8c 分岐筒部(配線固定部)
8d 分岐筒部(配線固定部)
9 トレイ式電路(収納体)
10 トレイ式電路(収納体)
B1 前船体ブロック
B2 中央船体ブロック
B3 後船体ブロック
B4 船橋ブロック
B5 クレーンブロック
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のブロックを組み上げて船体等を形成する船舶の配線方法、及び、該船舶の配線方法に使用する接続用スリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶をブロックに分けて製作するブロック工法では船内の配線はブロック毎に予め工場で先行艤装される。先行艤装ではブロックが上下逆さになって製作されるために、配線作業を効率的に行うことを目的として、天井部分に対して配線作業を行うようにしている。ブロックに分けた場合、ブロック間での配線の接続が問題となるが、従来は、隣り合うブロックの一方の配線の端部に他のブロック内へ配線する線材を束ねておき、複数のブロックを組み上げた後、一方のブロックに束ねておいた線材を他のブロック内へ配線してブロック間での接続をするようにしている。
【0003】
また本発明に係る船舶の配線方法に関連する技術として、次の船舶上部構造体の電気艤装方法が公知である(特許文献1参照)。具体的には、船舶の上部構造体のデッキを上下に貫通して配置される枠状の長尺体の内部に、各層のデッキに配線される横電路ケーブルとの接続部を設けた縦電路ケーブルを配した縦電路モジュールを予め組み立てておき、船体の上甲板上に構築した上部構造体の各デッキに形成した貫通口に前記縦電路モジュールを貫通させ、縦電路ケーブルの接続部に各層のデッキの横電路ケーブルを接続し、縦電路ケーブルの下端部を船体本体側の配電盤等に接続している。
【0004】
また本発明に係る船舶の配線方法に関連する別の技術として、船舶の居室に対する配線システムが公知である(特許文献2参照)。具体的には、ユニット化された居室を船舶の所定位置に設置した後、共用通路の天井に配線された主電路と居室ユニットに備えた接続箱とをケーブルで接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−237579号公報
【特許文献2】特開平8−216977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のブロック工法では、ブロック間での配線ために隣り合うブロックの一方に束ねておいた線材が解けないように取り扱いに注意を要し、また、ブロックを組み上げた後の他のブロック内への配線は高い足場の上での作業となり、作業の負担が大きいという問題があった。
【0007】
尚、特許文献1に記載の船舶上部構造体の電気艤装方法において船舶上部構造体を1つのブロックと考えた場合、船舶上部構造体の縦電路ケーブルの下端部を船体本体側の他のブロック内の配電盤等に接続する具体的な配線方法は示されていない。また、特許文献2に記載の船舶の居室に対する配線システムはブロック内での配線が対象であり、ブロック間の配線については示されていない。
【0008】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、ブロック間での配線の接続が容易であり、配線作業の負担を軽減することができる船舶の配線方法、及び、該船舶の配線方法に好適に使用できる接続用スリーブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る船舶の配線方法は、船舶の各部を構成する複数のブロックを製作した後、該複数のブロックを組み合わせて形成される船舶の内部に配線をする船舶の配線方法において、各ブロック内の配線を行うとともに、隣り合うブロックとの境界部となる箇所に、隣り合うブロックとの接続用配線の端部を設けるブロック内配線工程と、相互に隣り合うブロックの境界部となる箇所夫々に設けられた両方のブロックの接続用配線の端部同士を接続用スリーブで接続するブロック間配線接続工程とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明においては、船舶の各部を構成する複数のブロックを夫々製作するときに、各ブロック内の配線を行うとともに、ブロックの組み合わせ時に隣り合うブロックとの境界部となる箇所に、隣り合うブロックとの接続用配線の端部を設けるブロック内配線工程を実行する。次に、複数のブロックを組み合わせ、相互に隣り合うブロックの境界部となる箇所夫々に設けられた両方のブロックの接続用配線の端部同士を接続用スリーブで接続するブロック間配線接続工程を実行する。
【0011】
本発明に係る船舶の配線方法は、前記ブロック間配線接続工程は、両方のブロックの接続用配線の端部を挿入して固定する導通部材が絶縁材で被覆された接続用スリーブを用いることを特徴とする。
本発明においては、相互に隣り合うブロックの境界部となる箇所夫々に設けられた両方のブロックの接続用配線の端部夫々を絶縁材で被覆された接続用スリーブの導通部材に挿入して固定することにより、両方のブロックの接続用配線の端部同士が接続される。
【0012】
本発明に係る船舶の配線方法は、前記導通部材は、隣り合う一方のブロックの1つの接続用配線の端部を固定する1つの配線固定部と、他方のブロックの複数の接続用配線の端部を固定する複数の配線固定部とを備えており、前記一方のブロックのブロック内配線工程では、前記境界部となる箇所に、前記1つの配線固定部に対応する1つの接続用配線の端部を設け、前記他方のブロックのブロック内配線工程では、前記境界部となる箇所に、前記複数の配線固定部に対応する複数の接続用配線の端部を設けることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、隣り合う一方のブロックのブロック内配線工程では、隣り合う他方のブロックとの境界部となる箇所に、1つの接続用配線の端部を設け、隣り合う他方のブロックのブロック内配線工程では、隣り合う一方のブロックとの境界部となる箇所に、複数の接続用配線の端部を設ける。次にブロック間配線接続工程では、一方のブロックの1つの接続用配線の端部を導通部材に備えた1つの配線固定部に挿入して固定し、他方のブロックの複数の接続用配線の端部夫々を導通部材に備えた複数の配線固定部夫々に挿入して固定することにより、隣り合う一方のブロックの1つの接続用配線の端部と他方のブロックの複数の接続用配線の端部とが接続される。
【0014】
本発明に係る船舶の配線方法は、前記ブロック間配線接続工程では、隣り合うブロックの境界付近に設けられ、両方のブロックの接続用配線の端部夫々が挿通可能な2つの開口を有する収納体に前記接続用スリーブを収容することを特徴とする。
本発明においては、ブロック間配線接続工程では、隣り合うブロックの境界付近に設けられた収納体が有する2つの開口に隣り合う両方のブロックの接続用配線の端部夫々を挿通した状態で、該両方のブロックの接続用配線の端部同士を接続した接続用スリーブを収納体に収容する。
【0015】
本発明に係る船舶の配線方法は、前記開口に挿通される両方のブロックの接続用配線の周囲を覆う防水用部材又は防滴用部材を備えた前記収納体を用いることを特徴とする。
本発明においては、収納体の2つの開口に挿通される両方のブロックの接続用配線の周囲が収納体に備えた防水用部材又は防滴用部材によって覆われる。
【0016】
本発明に係る船舶の配線方法は、前記ブロック内配線工程では、ブロックの天地をブロックの組み合わせ時とは逆にして配線作業を行うことを特徴とする。
本発明においては、ブロック内配線工程では、ブロックの組み合わせ時に天井となる箇所が下部になり、床となる箇所が上部になる状態で配線作業を行う。
【0017】
本発明に係る接続用スリーブは、線材が挿入可能であり、互いに導通した複数の導電部材を備え、該導電部材の夫々に貫通したネジ孔が開設してある接続用スリーブにおいて、前記複数の導電部材の外面を覆い、前記ネジ孔の位置に対応した開口を有する絶縁材を備えていることを特徴とする。
【0018】
本発明の接続用スリーブにおいては、絶縁材で外面を覆われ、互いに導通した複数の導電部材の夫々に線材を挿入し、導電部材の夫々に開設してあるネジ孔及び該ネジ孔の位置に対応した絶縁材の開口にネジを貫通させ、該ネジによって各導電部材に挿入された線材を固定する。
【0019】
本発明に係る接続用スリーブは、前記絶縁材の開口を塞ぐ閉塞部材を備えていることを特徴とする。
本発明の接続用スリーブにおいては、各導電部材のネジ孔及び絶縁材の各開口にネジを貫通させて各導電部材に挿入された線材を固定した後、絶縁材の開口を閉塞部材によって塞ぐ。
【0020】
本発明に係る接続用スリーブは、前記複数の導電部材は筒体をなし、該筒体は筒軸方向の中間の内周部に環状突部を有し、前記ネジ孔を筒軸方向で該環状突部の両側に設けてあることを特徴とする。
【0021】
本発明の接続用スリーブにおいては、複数の導電部材がなす筒体の筒軸方向の一方の開放端から線材を挿入して筒軸方向の中間の内周部に設けた環状突部に当接させ、該線材を環状突部より一方の開放端側に設けてあるネジ孔に貫通させたネジにて固定し、筒体の筒軸方向の他方の開放端から線材を挿入して同環状突部に当接させ、該線材を環状突部より他方の開放端側に設けてあるネジ孔に貫通させたネジにて固定することにより、筒体の各開放端に挿入して固定された各線材同士が接続される。
【0022】
本発明に係る接続用スリーブは、前記筒体は2つの主筒部と1つ以上の分岐筒部とが連結された構造を有し、該主筒部及び分岐筒部の内部に前記線材が固定されることを特徴とする。
本発明の接続用スリーブにおいては、連結された2つの主筒部の内部に各開放端から挿入した線材を該主筒部に設けてあるネジ孔に貫通させたネジにて固定し、1つ以上の分岐筒部の内部に開放端から挿入した線材を分岐筒部に設けてあるネジ孔に貫通させたネジにて固定することにより、2つの主筒部及び1つ以上の分岐筒部の夫々に挿入して固定された各線材同士が導通接続される。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る船舶の配線方法によれば、船舶の各部を構成する複数のブロックを夫々製作するときに、ブロックの組み合わせ時に隣り合うブロックとの境界部となる箇所に接続用配線の端部を設け、複数のブロックを組み合わせたときに、隣り合うブロックの境界部となる箇所夫々に設けた両方のブロックの接続用配線の端部同士を接続用スリーブで接続することで隣り合うブロック間の配線が接続されるので、ブロック間での配線の接続が容易であり、配線作業の負担を軽減することができる船舶の配線方法が提供される。
【0024】
本発明に係る船舶の配線方法によれば、両方のブロックの接続用配線の端部を挿入して固定する導通部材が絶縁材で被覆された接続用スリーブを用いるので、絶縁テープ等にて導通部材の外面を被覆することが不要となり、ブロック間の接続作業が簡単化される。
【0025】
本発明に係る船舶の配線方法によれば、隣り合う一方のブロックの1つの接続用配線の端部と他方のブロックの複数の接続用配線の端部とが接続されるので、例えば両方のブロック間で同数の接続用配線の端部同士を接続する場合よりも接続用配線の総本数が少なくなり、ブロック間での配線の接続構造が簡略化される。
【0026】
本発明に係る船舶の配線方法によれば、隣り合うブロックの接続用配線の端部同士を接続した接続用スリーブが収納体に収容され、外力、外気条件等の外的要因の影響を受けにくくなるので、ブロック間での配線の接続構造の安全性や信頼性が向上する。
【0027】
本発明に係る船舶の配線方法によれば、収納体の2つの開口に挿通される両方のブロックの接続用配線の周囲が防水部材又は防滴部材によって覆われるので、ブロック間での配線の接続構造の安全性や信頼性がより一層向上する。
【0028】
本発明に係る船舶の配線方法によれば、ブロックの天地をブロックの組み合わせ時とは逆にしてブロック内の配線作業を行うので、通常多くの配線が設けられる天井となる箇所が下部になり、配線作業を楽な姿勢で容易に行うことができる。
【0029】
本発明に係る接続用スリーブによれば、挿入した線材をネジ孔に貫通させたネジにて固定する複数の導電部材が外面を被覆材で覆われているので、絶縁テープ等にて複数の導電部材の外面を被覆することが不要となる。また、導電部材に挿入した線材をネジにて固定するので、簡便なネジ締め工具が使用でき、大掛かりな装置となる油圧圧着工具を使用しなくて済む。
従って、ブロック間での配線作業の負担を軽減することができる船舶の配線方法に好適に使用できる接続用スリーブが提供される。
【0030】
本発明に係る接続用スリーブによれば、ネジが貫通した絶縁材の開口を閉塞部材によって塞ぐので、該開口を介して導電部材の内部に外から水等が侵入することが防止され、信頼性が向上した接続用スリーブが提供される。
【0031】
本発明に係る接続用スリーブによれば、複数の導電部材がなす筒体の筒軸方向の開放端から挿入された線材は環状突部に当接した位置に保持されるので、線材の挿入を的確に行うことができる。
【0032】
本発明に係る接続用スリーブによれば、2つの主筒部及び1つ以上の分岐筒部の内部に挿入して固定された各線材同士が接続されるので、例えば2つの筒部が連結された接続用スリーブを複数個に用いて接続する場合に比べて接続用スリーブの個数及び線材の総本数が少なくなり、配線の接続構造が簡略化される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る船舶の配線方法が適用される船舶のブロック構成の一例を模式的に示す船舶の側面図である。
【図2】図1に示す1つのブロック内の配線の要部を示す断面図である。
【図3】図1に示す1つのブロック内の配線の要部を示す断面図である。
【図4】縦方向で隣り合うブロック間の配線の接続構造を示す斜視図である。
【図5】図4に示すブロック間の配線の接続構造の蓋を閉じた状態を示す斜視図である。
【図6】図4に示す配線の接続構造の一部を拡大した斜視図である。
【図7】図1に示す1つのブロック内の配線の要部を示す断面図である。
【図8】横方向で隣り合うブロック間の配線の接続構造を示す斜視図である。
【図9】ブロック間の配線の接続構造の変形形態を示す斜視図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る接続用スリーブの平面図である。
【図11】図10に示す接続用スリーブの側面図である。
【図12】図10のXII−XII線における正面断面図である。
【図13】図10のXIII−XIII線における側面断面図である。
【図14】接続用スリーブの使用状態を示す側面断面図である。
【図15】第2の実施形態に係る接続用スリーブを用いた配線の接続構造を示す斜視図である。
【図16】図15に示す配線の接続構造の一部を拡大した斜視図である。
【図17】第3の実施形態に係る接続用スリーブを用いた配線の接続構造を示す斜視図である。
【図18】図17に示す配線の接続構造の一部を拡大した斜視図である。
【図19】第4の実施形態に係る接続用スリーブを用いた配線の接続構造を示す斜視図である。
【図20】図19に示す配線の接続構造の一部を拡大した斜視図である。
【図21】第5の実施形態に係る配線の接続構造を示す図である。
【図22】第6の実施形態に係る配線の接続構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る船舶の配線方法、及び接続用スリーブの実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0035】
〔第1の実施形態〕
図1は本発明の第1の実施形態に係る船舶の配線方法が適用される船舶のブロック構成の一例を模式的に示す船舶の側面図、図2は図1に示す1つのブロック内の配線の要部を示す断面図、図3は図1に示す1つのブロック内の配線の要部を示す断面図、図4は縦方向で隣り合うブロック間の配線の接続構造を示す斜視図、図5は図4に示すブロック間の配線の接続構造の蓋を閉じた状態を示す斜視図、図6は図4に示す配線の接続構造の一部を拡大した斜視図である。
【0036】
船舶は、前船体ブロックB1、中央船体ブロックB2、後船体ブロックB3、後船体ブロックB3の上に位置する船橋ブロックB4、及び中央船体ブロックB2の上に位置するクレーンブロックB5の5ブロックに区分してある。後船体ブロックB3には推進動力用のエンジンが設けてある。船橋ブロックB4は居住区である。クレーンブロックB5には荷物を積み下ろしするためのクレーンが設けてある。
【0037】
各ブロックB1〜B5は、船舶の建造場所の近くの作業場において製作される。3つの船体ブロックB1〜B3の製作は、作業性を良くするために、天地を逆にして作業を行うので、各船体ブロックB1〜B3の甲板裏天井は、ブロックの製作時は下側に位置する。
【0038】
後船体ブロックB3には、推進動力用のエンジンの他、ディーゼルエンジンにて駆動される発電機が複数台設置されており、この発電機にて発電された電力を船内の電気機器に配分する主配電盤(MSB)1が設けてある。そして、後述するように、主配電盤1から船の各部に電力が供給されるように船内の配線がされる。
【0039】
船橋ブロックB4には、後船体ブロックB3との境界部に、長手方向が縦方向に向いたトレイ式電路2が設けてある。該トレイ式電路2は、長手方向の両端に開口2dを有する扁平な長方形の箱体をなし、断面がコの字状の基部2bと、該基部2bに被せられる蓋部2aとを有している。基部2bは脚2cによって4隅部が横壁に支持され、蓋部2aを基部2bに被せた状態で蓋部2aと基部2bとの側面部同士をビスにて固定している。
【0040】
トレイ式電路2の上側の開口2dには、船橋ブロックB4の操舵室、居室等の所要箇所に配線された電力線3が挿入され、電力線3は3相交流用の3本の電線3a,3b,3cを有している。電力線3の端部3tの各電線は被覆を剥がし、夫々接続用スリーブ4の一方端に挿入して固定接続する。電力線3は結束材(不図示)等によってトレイ式電路2の基部2bに保持されている。
【0041】
後船体ブロックB3の甲板裏天井には、主配電盤1から配線された電力線3の端部3tが設けてある。主配電盤1と電力線3の端部3tとの間に設置される電力線3は、図示は省略するが、トレイ式電路内に収容、保持されている。
【0042】
後船体ブロックB3に船橋ブロックB4を溶接等により繋ぎ合せた後、後船体ブロックB3の甲板裏天井に設けてある電力線3の端部3tの各電線の被覆を剥がし、夫々接続用スリーブ4の他方端に挿入して固定接続する。これにより、船橋ブロックB4に電力が供給される。
【0043】
次に、後船体ブロックB3と中央船体ブロックB2との接続について説明する。図7は図1に示す1つのブロック内の配線の要部を示す断面図、図8は横方向で隣り合うブロック間の配線の接続構造を示す斜視図である。
【0044】
中央船体ブロックB2の甲板裏天井側には、後船体ブロックB3との境界部に、長手方向が横方向に向いたトレイ式電路5が設けてある。該トレイ式電路5は前記トレイ式電路2と同様に、長手方向の両端に開口5dを有する扁平な長方形の箱体をなし、断面がコの字状で上側が開口した基部5bと、該基部5bの開口に被せられる蓋部5aとを有している。基部5bは脚5cによって4隅部が甲板裏天井に支持され、蓋部5aと基部5bの側面部同士をビスにて固定している。
【0045】
トレイ式電路5の一端側の開口5dには、中央船体ブロックB2の所要箇所に配線された電力線3が挿入され、電力線3は3相交流用の3本の電線3a,3b,3cを有している。電力線3の端部3tの各電線の被覆を剥がし、夫々接続用スリーブ4の一方端に挿入して固定接続する。電力線3は結束材等によってトレイ式電路5の基部5bに保持されている。
【0046】
後船体ブロックB3の甲板裏天井の中央船体ブロックB2との境界部には、主配電盤1から配線された電力線3の端部3tが設けてある。主配電盤1と電力線3の端部3tとの間に設置される電力線3は、図示は省略するが、トレイ式電路内に収容、保持されている。
【0047】
後船体ブロックB3に中央船体ブロックB2を溶接等により繋ぎ合せた後、後船体ブロックB3の中央船体ブロックB2との境界部に設けてある電力線3の端部3tの各電線の被覆を剥がし、夫々接続用スリーブ4の他方端に挿入して固定接続する。これにより、中央船体ブロックB2に電力が供給される。
【0048】
中央船体ブロックB2とクレーンブロックB5との配線の接続構造は、後船体ブロックB3と船橋ブロックB4との接続の場合と同様である(図2〜図5参照)。また、中央船体ブロックB2と前船体ブロックB1との配線の接続構造は、後船体ブロックB3と中央船体ブロックB2との接続の場合と同様である(図2、図6〜図8参照)。
【0049】
次に、ブロック間の配線の接続構造の変形形態について説明する。図9はブロック間の配線の接続構造の変形形態を示す斜視図である。上記トレイ式電路2,5の防水性及び防滴性を向上させるために、電力線3が挿入される開口5dに、狭い開口面積の両端部を有する略長方形状の端部材5eを付設し、端部材5eの開口内の電力線3との隙間をパテ材5fにて充填する構造である。尚、図9にはトレイ式電路5の場合を図示するが、トレイ式電路2についても同様である。
【0050】
次に接続用スリーブ4の構造について説明する。図10は本発明の第1の実施形態に係る接続用スリーブの平面図、図11は図10に示す接続用スリーブの側面図、図12は図10のXII−XII線における正面断面図、図13は図10のXIII−XIII線における側面断面図、図14は接続用スリーブの使用状態を示す側面断面図である。
【0051】
接続用スリーブ4は、金属製の筒体40の外周部を絶縁材41で覆った構造である。筒体40は径方向の一方側に矩形状に突出したフランジ部40aを備え、径方向の他方側は断面が半円形の円筒部を有している。筒体40は筒軸方向の中央の内周部に断面が三角形状の環状突部40bを備え、環状突部40bの両側の筒部40dの内部に貫通した2個のネジ孔40cを夫々筒体40の筒壁に開設してある。
【0052】
絶縁材41は略同一の厚さで筒体40の外周部を覆う形状であり、筒体40の両端部に対応して、筒体40が抜けないように筒体40の外径よりも小さい内径の開口を有する端部41aを備えている。端部41aの開口41bは、外側から筒体40の両端部に向かって内径が2段階に小さくなる。絶縁材41には、筒体40の各ネジ孔40cに位置に対応してネジ孔40cよりも大径の開口41cが開設してある。
【0053】
接続用スリーブ4による電力線3の各電線の接続について説明する。筒体40の両端部と環状突部40bとの距離に相当する長さ分電線の被覆を剥がし、該電線を絶縁材41の端部41aの開口から環状突部40bの両側の筒部40dに挿入し、電線の先端を環状突部40bに突き当てる。次に、各筒部40dに設けてある各ネジ孔40cに外側からネジ42をねじ込み、ネジ42の先端によって電線を各筒部40dの内周壁に押し付けて固定する。最後に絶縁材41の開口41cに該開口41cの内径よりも少し大きい外径の閉塞部材43を詰める。該閉塞部材43は、例えば弾性樹脂材料にて製作される。
【0054】
〔第2の実施形態〕
図15は第2の実施形態に係る接続用スリーブを用いた配線の接続構造を示す斜視図、図16は図15に示す配線の接続構造の一部を拡大した斜視図である。第2の実施形態に係る接続用スリーブ6は、2つの主筒部6a,6bと1つの分岐筒部6cとが連結された構造である点を除いて、第1の実施形態に係る接続用スリーブ4と同様な構造を有する。2つの主筒部6a,6bは筒軸方向が一致し、分岐筒部6cが一方の主筒部6bの横側に該主筒部6bと筒軸方向が平行に配置してある。
【0055】
隣り合うブロックの一方の電力線3の3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ6の一方の主筒部6aに挿入して固定接続する。隣り合うブロックの他方に2本の電力線3A,3Bが配置され、その一方の電力線3Aの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ6の他方の主筒部3bに挿入して固定接続し、他方の電力線3Bの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ6の分岐筒部6cに挿入して固定接続する。
【0056】
第2の実施形態に係る配線の接続構造によれば、2本の電力線3A,3Bの一方の電力線3Aは、次に隣り合うブロックへ電力を供給するためにそのブロックとの境界部まで配線され、他方の電力線3Bは例えば当該ブロック内に設置されたモーター等の負荷に接続して電力を供給する構成とすることができる。
【0057】
〔第3の実施形態〕
図17は第3の実施形態に係る接続用スリーブを用いた配線の接続構造を示す斜視図、図18は図17に示す配線の接続構造の一部を拡大した斜視図である。第3の実施形態に係る接続用スリーブ7は、2つの主筒部7a,7bの連結箇所に1つの分岐筒部7cがT字型に分岐するように連結された構造である点を除いて、第2の実施形態に係る接続用スリーブ6と同様な構造を有する。また、接続用スリーブ7を収容するトレイ式電路9は、2つの主筒部7a,7bに接続する電力線3を挿通させる開口9dの他に、T字型の分岐筒部7cに接続する電力線3を挿通させる開口9eを有する点で前記トレイ式電路2,5と異なる。
【0058】
隣り合うブロックの一方の電力線3の3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ7の一方の主筒部7aに挿入して固定接続する。隣り合うブロックの他方の電力線3Aの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ7の他方の主筒部7bに挿入して固定接続する。また3個の接続用スリーブ7の分岐筒部7cに電力線3Bの3本の電線3a,3b,3cを夫々挿入して固定接続する。
【0059】
第3の実施形態に係る配線の接続構造によれば、電力線3Aは、次に隣り合うブロックへ電力を供給するためにそのブロックとの境界部まで配線され、電力線3Bは例えば隣り合うブロックの何れか一方のブロック内に設置されたモーター等の負荷に接続して電力を供給する構成とすることができる。
【0060】
〔第4の実施形態〕
図19は第4の実施形態に係る接続用スリーブを用いた配線の接続構造を示す斜視図、図20は図19に示す配線の接続構造の一部を拡大した斜視図である。第4の実施形態に係る接続用スリーブ8は、2つの主筒部8a,8bと2つの分岐筒部8c、8dとが連結された構造である点を除いて、第2の実施形態に係る接続用スリーブ6と同様な構造を有する。2つの分岐筒部8c、8dは筒軸方向が一致し、一方の分岐筒部6cが一方の主筒部6bの横側に該主筒部6bと筒軸方向が平行に配置され、他方の分岐筒部8dが他方の主筒部6aの横側に該主筒部6aと筒軸方向が平行に配置され、バランスの良いスリーブ形状にしてある。
【0061】
隣り合うブロックの一方に2本の電力線3,3Cが配置され、その一方の電力線3の3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ8の一方の主筒部8aに挿入して固定接続し、他方の電力線3Cの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ8の分岐筒部8dに挿入して固定接続する。隣り合うブロックの他方に2本の電力線3A,3Bが配置され、その一方の電力線3Aの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ8の他方の主筒部8bに挿入して固定接続し、他方の電力線3Bの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ8の分岐筒部8cに挿入して固定接続する。
【0062】
第4の実施形態に係る配線の接続構造によれば、隣り合うブロックの他方の2本の電力線3A,3Bの一方の電力線3Aは、次に隣り合うブロックへ電力を供給するためにそのブロックとの境界部まで配線され、他方の電力線3Bは例えば当該他方のブロック内に設置されたモーター等の負荷に接続して電力を供給する構成とすることができる。また隣り合うブロックの一方の電力線3Cは例えば当該一方のブロック内に設置されたモーター等の負荷に接続して電力を供給する構成とすることができる。
【0063】
〔第5の実施形態〕
図21は第5の実施形態に係る配線の接続構造を示す図である。第5の実施形態では、第2の実施形態にて説明した分岐型の接続用スリーブ6を用いて、中央船体ブロックB2とクレーンブロックB5との配線の接続を行う。
【0064】
中央船体ブロックB2の甲板裏天井側には、クレーンブロックB5との境界部に、前記トレイ式電路2と同様な構成のトレイ式電路10が設けてあり、該トレイ式電路10内に3個の接続用スリーブ6が収容されている。後船体ブロックB3からの電力が供給されている電力線3の3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ6の一方の主筒部6aに挿入して固定接続する。また電力線3Aの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ6の他方の主筒部6bに挿入して固定接続する。
【0065】
クレーンブロックB5には、中央船体ブロックB2との境界部にクレーン用のモーター等の負荷に接続された電力線3Bの端部3tが設けてある。中央船体ブロックB2にクレーンブロックB5を繋ぎ合せた後、クレーンブロックB5側の電力線3Bの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ6の分岐筒部6cに挿入して固定接続する。
【0066】
〔第6の実施形態〕
図22は第6の実施形態に係る配線の接続構造を示す図である。第6の実施形態では、第4の実施形態にて説明した分岐型の接続用スリーブ8を用いて、中央船体ブロックB2とクレーンブロックB5との配線の接続を行う。
【0067】
中央船体ブロックB2の甲板裏天井側には、クレーンブロックB5との境界部に、前記トレイ式電路10が設けてあり、該トレイ式電路10内に3個の接続用スリーブ8が収容されている。後船体ブロックB3からの電力が供給されている電力線3の3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ8の一方の主筒部8aに挿入して固定接続し、中央船体ブロックB2内の負荷に接続されている電力線3Cの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ8の分岐筒部8dに挿入して固定接続する。また隣り合う前船体ブロックB1等へ電力を供給するための電力線3Aの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ6の他方の主筒部8bに挿入して固定接続する。
【0068】
クレーンブロックB5には、中央船体ブロックB2との境界部にクレーン用のモーター等の負荷に接続された電力線3Bの端部3tが設けてある。中央船体ブロックB2にクレーンブロックB5を繋ぎ合せた後、クレーンブロックB5側の電力線3Bの3本の電線3a,3b,3cを夫々3個の接続用スリーブ8の分岐筒部8cに挿入して固定接続する。
【符号の説明】
【0069】
2 トレイ式電路(収納体)
2d 開口
3 電力線(配線)
3A 電力線(配線)
3B 電力線(配線)
3C 電力線(配線)
3t 端部
4 接続用スリーブ
40 筒体(導通部材)
40b 環状突部
40c ネジ孔
40d 筒部(配線固定部)
41 絶縁材
42 ネジ
43 閉塞部材
5 トレイ式電路(収納体)
5d 開口
5e 端部材(防水用部材、防滴用部材)
5f パテ材(防水用部材、防滴用部材)
6 接続用スリーブ
6a 主筒部(配線固定部)
6b 主筒部(配線固定部)
6c 分岐筒部(配線固定部)
7 接続用スリーブ
7a 主筒部(配線固定部)
7b 主筒部(配線固定部)
7c 分岐筒部(配線固定部)
8 接続用スリーブ
8a 主筒部(配線固定部)
8b 主筒部(配線固定部)
8c 分岐筒部(配線固定部)
8d 分岐筒部(配線固定部)
9 トレイ式電路(収納体)
10 トレイ式電路(収納体)
B1 前船体ブロック
B2 中央船体ブロック
B3 後船体ブロック
B4 船橋ブロック
B5 クレーンブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の各部を構成する複数のブロックを製作した後、該複数のブロックを組み合わせて形成される船舶の内部に配線をする船舶の配線方法において、
各ブロック内の配線を行うとともに、隣り合うブロックとの境界部となる箇所に、隣り合うブロックとの接続用配線の端部を設けるブロック内配線工程と、
相互に隣り合うブロックの境界部となる箇所夫々に設けられた両方のブロックの接続用配線の端部同士を接続用スリーブで接続するブロック間配線接続工程と
を有することを特徴とする船舶の配線方法。
【請求項2】
前記ブロック間配線接続工程は、両方のブロックの接続用配線の端部を挿入して固定する導通部材が絶縁材で被覆された接続用スリーブを用いることを特徴とする請求項1に記載の船舶の配線方法。
【請求項3】
前記導通部材は、隣り合う一方のブロックの1つの接続用配線の端部を固定する1つの配線固定部と、他方のブロックの複数の接続用配線の端部を固定する複数の配線固定部とを備えており、
前記一方のブロックのブロック内配線工程では、前記境界部となる箇所に、前記1つの配線固定部に対応する1つの接続用配線の端部を設け、
前記他方のブロックのブロック内配線工程では、前記境界部となる箇所に、前記複数の配線固定部に対応する複数の接続用配線の端部を設けることを特徴とする請求項2に記載の船舶の配線方法。
【請求項4】
前記ブロック間配線接続工程では、隣り合うブロックの境界付近に設けられ、両方のブロックの接続用配線の端部夫々が挿通可能な2つの開口を有する収納体に前記接続用スリーブを収容することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の船舶の配線方法。
【請求項5】
前記開口に挿通される両方のブロックの接続用配線の周囲を覆う防水用部材又は防滴用部材を備えた前記収納体を用いることを特徴とする請求項4に記載の船舶の配線方法。
【請求項6】
前記ブロック内配線工程では、ブロックの天地をブロックの組み合わせ時とは逆にして配線作業を行うことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の船舶の配線方法。
【請求項7】
線材が挿入可能であり、互いに導通した複数の導電部材を備え、該導電部材の夫々に貫通したネジ孔が開設してある接続用スリーブにおいて、
前記複数の導電部材の外面を覆い、前記ネジ孔の位置に対応した開口を有する絶縁材を備えていることを特徴とする接続用スリーブ。
【請求項8】
前記絶縁材の開口を塞ぐ閉塞部材を備えていることを特徴とする請求項7に記載の接続用スリーブ。
【請求項9】
前記複数の導電部材は筒体をなし、該筒体は筒軸方向の中間の内周部に環状突部を有し、前記ネジ孔を筒軸方向で該環状突部の両側に設けてあることを特徴とする請求項7又は8に記載の接続用スリーブ。
【請求項10】
前記筒体は2つの主筒部と1つ以上の分岐筒部とが連結された構造を有し、該主筒部及び分岐筒部の内部に前記線材が固定されることを特徴とする請求項9に記載の接続用スリーブ。
【請求項1】
船舶の各部を構成する複数のブロックを製作した後、該複数のブロックを組み合わせて形成される船舶の内部に配線をする船舶の配線方法において、
各ブロック内の配線を行うとともに、隣り合うブロックとの境界部となる箇所に、隣り合うブロックとの接続用配線の端部を設けるブロック内配線工程と、
相互に隣り合うブロックの境界部となる箇所夫々に設けられた両方のブロックの接続用配線の端部同士を接続用スリーブで接続するブロック間配線接続工程と
を有することを特徴とする船舶の配線方法。
【請求項2】
前記ブロック間配線接続工程は、両方のブロックの接続用配線の端部を挿入して固定する導通部材が絶縁材で被覆された接続用スリーブを用いることを特徴とする請求項1に記載の船舶の配線方法。
【請求項3】
前記導通部材は、隣り合う一方のブロックの1つの接続用配線の端部を固定する1つの配線固定部と、他方のブロックの複数の接続用配線の端部を固定する複数の配線固定部とを備えており、
前記一方のブロックのブロック内配線工程では、前記境界部となる箇所に、前記1つの配線固定部に対応する1つの接続用配線の端部を設け、
前記他方のブロックのブロック内配線工程では、前記境界部となる箇所に、前記複数の配線固定部に対応する複数の接続用配線の端部を設けることを特徴とする請求項2に記載の船舶の配線方法。
【請求項4】
前記ブロック間配線接続工程では、隣り合うブロックの境界付近に設けられ、両方のブロックの接続用配線の端部夫々が挿通可能な2つの開口を有する収納体に前記接続用スリーブを収容することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の船舶の配線方法。
【請求項5】
前記開口に挿通される両方のブロックの接続用配線の周囲を覆う防水用部材又は防滴用部材を備えた前記収納体を用いることを特徴とする請求項4に記載の船舶の配線方法。
【請求項6】
前記ブロック内配線工程では、ブロックの天地をブロックの組み合わせ時とは逆にして配線作業を行うことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の船舶の配線方法。
【請求項7】
線材が挿入可能であり、互いに導通した複数の導電部材を備え、該導電部材の夫々に貫通したネジ孔が開設してある接続用スリーブにおいて、
前記複数の導電部材の外面を覆い、前記ネジ孔の位置に対応した開口を有する絶縁材を備えていることを特徴とする接続用スリーブ。
【請求項8】
前記絶縁材の開口を塞ぐ閉塞部材を備えていることを特徴とする請求項7に記載の接続用スリーブ。
【請求項9】
前記複数の導電部材は筒体をなし、該筒体は筒軸方向の中間の内周部に環状突部を有し、前記ネジ孔を筒軸方向で該環状突部の両側に設けてあることを特徴とする請求項7又は8に記載の接続用スリーブ。
【請求項10】
前記筒体は2つの主筒部と1つ以上の分岐筒部とが連結された構造を有し、該主筒部及び分岐筒部の内部に前記線材が固定されることを特徴とする請求項9に記載の接続用スリーブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−269673(P2010−269673A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122457(P2009−122457)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(391013092)渦潮電機株式会社 (10)
【出願人】(591086843)古河電工産業電線株式会社 (40)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(391013092)渦潮電機株式会社 (10)
【出願人】(591086843)古河電工産業電線株式会社 (40)
【Fターム(参考)】
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