説明

船舶の風圧抵抗低減構造

【課題】ウィング部とサポート部とを有する船舶の風圧抵抗を効果的に低減する、船舶の風圧抵抗低減構造を提供する。
【解決手段】居住区3から船幅方向に突出するウィング部2と、ウィング部2を下方から支持する柱状のサポート部1とを有する船舶100の風圧抵抗低減構造であって、サポート部1の正面側の上下方向に沿って、長尺箱状体のサポート部付加物10を取り付けて、航行時にサポート部1が受ける風圧抵抗を低減する。サポート部付加物10はサポート部1よりも幅の狭い長尺箱状体であって、サポート部付加物10をサポート部1の正面側の左右縁部に段差が生じるように取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の風圧抵抗低減構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タンカーやバルクキャリア等の船舶には、船体の上甲板上に操舵室や船員の居室等を有する居住区が設置されている。この居住区は、船舶航行時に正面からの風圧抵抗を受けるため、燃費の増加要因となっている。また、居住区から船幅方向には、Bridge Wing(以下、「ウィング部」という。)が突出しており、このウィング部も風圧抵抗を受ける。
【0003】
これに対して、ウィング部の風圧抵抗を低減させる発明が開示されている。例えば、特許文献1には、ドジャー2(ウィング部)に突設された帯状プレート8が記載されており、特許文献2には、ウィング部に取り付けられた整流板18が記載されている。また、特許文献3には、ドジャー2に形成された隅切り部10が記載されており、特許文献4には、ドジャー3の前面を横半円筒状に突出させたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−129976号公報
【特許文献2】実開昭58−143785号公報
【特許文献3】特開平11−29090号公報
【特許文献4】実開平1−99792号公報
【0005】
一方、CAPE(Capesize:ケープサイズの大型船)、VLCC(Very Large Crude Carrier:大型タンカー)、VLOC(Very Large Ore Carrier:大型ばら積み船)等の大型船舶においては、船幅が広くなるためウィング部が長くなり、ウィング部を下方から支持するための柱状のサポート部が設置されることが多い。図6乃至図8は、このようなサポート部を有する従来の大型船舶を示すものであり、図6は船舶を示す側面図、図7は船舶の居住区を示す正面図、図8は船舶の居住区を示す側面図である。
【0006】
船舶100の上甲板上には、操舵室や船員の居室等を有する居住区3が設置されている。居住区3から船幅方向には、左舷及び右舷に向けて、ウィング部2,2が突出している。また、ウィング部2,2を下方から支持するために、ウィング部2,2と上甲板上との間には、柱状のサポート部1,1が設置されている。図6乃至図8に示したサポート部は、2本の柱状部材を脚立のような八の字に配置した構成としているが、このような構成に限らずその形状は様々である。
【0007】
なお、大型船舶に限らず、省エネ効果を高めようと居住区本体の横幅を狭めて正面の面積を小さくしたタワー型の居住区を有する船舶においても、このようなサポート部を設けることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ウィング部に加えてサポート部を有する船舶においては、船舶航行時にサポート部が正面から受ける風圧抵抗が大きく、燃費の増加要因となっており、ウィング部だけではなく、サポート部が受ける風圧抵抗についても低減する必要がある。
【0009】
これに対し、特許文献1乃至特許文献4に記載された発明は、ウィング部の風圧抵抗の低減を目的としたものであり、サポート部の風圧抵抗を低減することはできない。
【0010】
また、新造船に限らず、既に就航している船舶についても、ウィング部とサポート部の風圧抵抗を低減する必要がある。
【0011】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、ウィング部とサポート部を有する船舶の風圧抵抗を効果的に低減する、船舶の風圧抵抗低減構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明の船舶の風圧抵抗低減構造は、居住区から船幅方向に突出するウィング部と、前記ウィング部を下方から支持する柱状のサポート部とを有する船舶の風圧抵抗低減構造であって、前記サポート部の正面側の上下方向に沿って、長尺箱状体のサポート部付加物を取り付けて、航行時に前記サポート部が受ける風圧抵抗を低減するようにしたことを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の船舶の風圧抵抗低減構造において、前記サポート部付加物が前記サポート部よりも幅の狭い長尺箱状体であって、前記サポート部付加物を前記サポート部の正面側の左右縁部に段差が生じるように取り付けたことを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の船舶の風圧抵抗低減構造において、前記サポート部付加物が前記サポート部と同一幅の長尺箱状体であって、長手方向の両側に傾斜面が形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明の船舶の風圧抵抗低減構造は、居住区から船幅方向に突出するウィング部と、前記ウィング部を下方から支持する柱状のサポート部とを有する船舶の風圧抵抗低減構造であって、前記サポート部の正面側の上下方向に沿って、長尺箱状体のサポート部付加物を取り付けて、航行時に前記サポート部が受ける風圧抵抗を低減するようにし、前記ウィング部の正面側の水平方向に沿って、長尺箱状体のウィング部付加物を取り付けて、航行時に前記ウィング部が受ける風圧抵抗を低減するようにしたことを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の船舶の風圧抵抗低減構造において、前記サポート部付加物が前記サポート部よりも幅の狭い長尺箱状体であって、前記サポート部付加物を前記サポート部の正面側の左右縁部に段差が生じるように取り付け、前記ウィング部付加物が前記ウィング部よりも幅の狭い長尺箱状体であって、前記ウィング部付加物を前記ウィング部の正面側の上下縁部に段差が生じるように取り付けたことを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項4に記載の船舶の風圧抵抗低減構造において、前記サポート部付加物が前記サポート部と同一幅の長尺箱状体であって、長手方向の両側に傾斜面が形成されており、前記ウィング部付加物が前記ウィング部と同一幅の長尺箱状体であって、長手方向の両側に傾斜面が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、サポート部の正面側の上下方向に沿って、長尺箱状体のサポート部付加物を取り付けて、航行時にサポート部が受ける風圧抵抗を低減するようになっている。従って、例えば大型タンカーや大型ばら積み船のように、居住区から船幅方向に突出するウィング部と、ウィング部を下方から支持する柱状のサポート部とを有する船舶の風圧抵抗を効果的に低減することができる。また、取り付けるサポート部付加物は長尺箱状体であるので、構造が単純であり容易に形成して取り付けることができる。また、新造船に限らず、既に就航している船舶についても容易に取り付けることができる。
【0019】
また、請求項2に係る発明によれば、サポート部付加物がサポート部よりも幅の狭い長尺箱状体であり、サポート部付加物をサポート部の正面側の左右縁部に段差が生じるように取り付けることにより、航行時にサポート部が受ける風圧抵抗を段差の隅切り効果により低減することができる。
【0020】
また、請求項3に係る発明によれば、サポート部付加物がサポート部と同一幅の長尺箱状体であり、長手方向の両側に傾斜面が形成されているので、航行時にサポート部が受ける風圧抵抗を傾斜面により低減することができる。
【0021】
また、請求項4に係る発明によれば、サポート部の正面側の上下方向に沿って、長尺箱状体のサポート部付加物を取り付けて、航行時にサポート部が受ける風圧抵抗を低減するようになっている。さらに、ウィング部の正面側の水平方向に沿って、長尺箱状体のウィング部付加物を取り付けて、航行時にウィング部が受ける風圧抵抗を低減するようになっている。従って、例えば大型タンカーや大型ばら積み船のように、居住区から船幅方向に突出するウィング部と、ウィング部を下方から支持する柱状のサポート部とを有する船舶の風圧抵抗を効果的に低減することができる。また、取り付けるサポート部付加物及びウィング部付加物は長尺箱状体であるので、構造が単純であり容易に形成して取り付けることができる。また、新造船に限らず、既に就航している船舶についても容易に取り付けることができる。
【0022】
また、請求項5に係る発明によれば、サポート部付加物がサポート部よりも幅の狭い長尺箱状体であり、サポート部付加物をサポート部の正面側の左右縁部に段差が生じるように取り付けることにより、航行時にサポート部が受ける風圧抵抗を段差の隅切り効果により低減することができる。さらに、ウィング部付加物がウィング部よりも幅の狭い長尺箱状体であり、ウィング部付加物をウィング部の正面側の上下縁部に段差が生じるように取り付けることにより、航行時にウィング部が受ける風圧抵抗を段差の隅切り効果により低減することができる。
【0023】
また、請求項6に係る発明によれば、サポート部付加物がサポート部と同一幅の長尺箱状体であり、長手方向の両側に傾斜面が形成されているので、航行時にサポート部が受ける風圧抵抗を傾斜面により低減することができる。さらに、ウィング部付加物がウィング部と同一幅の長尺箱状体であり、長手方向の両側に傾斜面が形成されているので、航行時にウィング部が受ける風圧抵抗を傾斜面により低減することができる。
【0024】
以上、本発明によれば、ウィング部とサポート部とを有する船舶の風圧抵抗を効果的に低減する、船舶の風圧抵抗低減構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る船舶の風圧抵抗低減構造による、船舶の居住区を示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る船舶の風圧抵抗低減構造による、船舶の居住区を示す側面図である。
【図3】図1の(a)X−X拡大断面図、(b)Y−Y拡大断面図である。
【図4】付加物を示す横断面図である。
【図5】付加物を示す正面図である。
【図6】船舶を示す側面図である。
【図7】船舶の居住区を示す正面図である。
【図8】船舶の居住区を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、図1乃至図5を参照して、本発明の実施形態に係る船舶の風圧抵抗低減構造について説明する。図1は、本実施形態に係る船舶の風圧抵抗低減構造による、船舶の居住区3を示す正面図であり、図2は、居住区3を示す側面図である。また図3は、図1の(a)X−X拡大断面図、(b)Y−Y拡大断面図である。
【0027】
船舶100の上甲板上には、操舵室や船員の居室等を有する居住区3が設置されている。居住区3から船幅方向には、左舷及び右舷に向けて、ウィング部2,2が突出している。また、ウィング部2,2を下方から支持するために、ウィング部2,2と上甲板上との間には、柱状のサポート部1,1が設置されている。図1及び図2に示したサポート部は、2本の柱状部材を脚立のような八の字に配置した構成としているが、このような構成に限らずその形状は様々である。
【0028】
サポート部1の正面側(船舶航行時に風圧を受ける側)には、サポート部付加物10が取り付けられている。サポート部付加物10は、サポート部1の上下方向に沿って、上端部付近から下端部付近までの間に取り付けられている。
【0029】
また、サポート部付加物10は長尺箱状体であり、その幅はサポート部1の幅よりも若干狭くなっている。そして、図3(a)に示すように、サポート部1の幅方向の左右両側を残すような位置に、サポート部付加物10を取り付けてある。これにより、サポート部1の正面側の左右縁部A,Bに段差が生じて、船舶航行時に受ける風圧に対して、隅切り効果を奏するようになっている。なお、後述するように付加物の横断面形状によっては、サポート部付加物10の幅をサポート部1の幅と同一にすることもできる。
【0030】
一方、ウィング部2の正面側(船舶航行時に風圧を受ける側)には、ウィング部付加物20が取り付けられている。ウィング部付加物20は、ウィング部2の水平方向に沿って、基端部付近から先端部付近までの間に取り付けられている。
【0031】
また、ウィング部付加物20は長尺箱状体であり、その幅はウィング部2の幅よりも若干狭くなっている。そして、図3(b)に示すように、ウィング部2の幅方向の上下両側を残すような位置に、ウィング部付加物20を取り付けてある。これにより、ウィング部2の正面側の上下縁部C,Dに段差が生じて、船舶航行時に受ける風圧に対して、隅切り効果を奏するようになっている。なお、後述するように付加物の横断面形状によっては、ウィング部付加物20の幅をウィング部2の幅と同一にすることもできる。
【0032】
サポート部付加物10及びウィング部付加物20の部材としては、FRP(繊維強化プラスチック)等、船舶の大部分を構成する部材である鉄よりも比重の小さい部材を用いることが好ましい。また、取り付け方法としては、ボルト接続等、新たな重量負荷が少ない方法が好ましい。一般的に、ウィング部やサポート部は、プロペラやエンジンの回転数と共振して振動が発生しやすいため、予め固有振動数を熟考の上、構造設計が行われている。従って、軽量な部材を用いることにより、振動特性を変化させにくくすることができる。
【0033】
なお、図1乃至図3に示したサポート部付加物10及びウィング部付加物20は、横断面形状が長方形であるが、航行時に受ける風圧抵抗を低減することができればよいので、例えば図4に示すように様々な横断面形状とすることが可能である。図4はサポート部付加物10を示したものであるが、ウィング部付加物20についても同様である。
【0034】
また、サポート部付加物10及びウィング部付加物20の長尺箱状体は、内側に空洞がないものと空洞があるもののいずれも用いることができる。図4のうち、左側に示したサポート部付加物10a,10b,10c,10d,10eは、内側まで部材が詰まったものであり、右側に示したサポート部付加物10a,10b,10c,10d,10eは内側を空洞にしたものである。右側に示したサポート部付加物のように内側を空洞にすることでさらなる軽量化を図ることができる。
【0035】
図4(a)の付加物10aは、横断面形状が長方形であり、その幅はサポート部1の幅よりも若干狭くなっている。そして、サポート部1の正面側の左右縁部A,Bに段差が生じて、船舶航行時に受ける風圧抵抗を段差の隅切り効果により低減するようになっている。
【0036】
図4(b)の付加物10bは、横断面形状が台形であり、その幅はサポート部1の幅と同一になっている。そして、付加物の長手方向の両側が面取りされるように傾斜面が形成されて、船舶航行時に受ける風圧抵抗を傾斜面により低減するようになっている。
【0037】
図4(c)の付加物10cは、横断面形状が上面の平らなかまぼこ型であり、その幅はサポート部1の幅と同一になっている。そして、付加物の長手方向の両側にR形状の傾斜面が形成されて、船舶航行時に受ける風圧抵抗を傾斜面により低減するようになっている。
【0038】
図4(d)の付加物10dは、横断面形状が両側面の平らなかまぼこ型であり、その幅はサポート部1の幅よりも若干狭くなっている。そして、サポート部1の正面側の左右縁部A,Bに段差が生じて、船舶航行時に受ける風圧抵抗を段差の隅切り効果により低減するようになっている。また、上面の膨らみによる風圧抵抗低減効果も期待できる。
【0039】
図4(e)の付加物10eは、横断面形状がドーム型であり、その幅はサポート部1の幅と同一になっている。そして、付加物の長手方向の両側にR形状の傾斜面が形成されて、船舶航行時に受ける風圧抵抗を傾斜面により低減するようになっている。また、上面の膨らみによる風圧抵抗低減効果も期待できる。
【0040】
なお、図4(a)の付加物10aは、他の付加物10b〜10eよりも、風圧抵抗低減効果の点では劣るものと考えられるが、構造が最も単純であるため、製造コスト、重量、取付作業負担の点では優れているものと考えられる。
【0041】
また、図5に示すように、サポート部付加物10及びウィング部付加物20を複数のユニットから構成することもできる。図5(a)に示すサポート部付加物10は、複数のサポート部付加物ユニット11から構成されている。また図5(b)に示すウィング部付加物20は、複数のウィング部付加物ユニット21から構成されている。これにより、取り付け作業が容易になるとともに、様々な長さのサポート部やウィング部に対応することができる。
【実施例】
【0042】
以下、本実施形態に係る船舶の風圧抵抗低減構造による、風洞実験の結果ついて説明する。実験では、ウィング部とサポート部とを有する船舶の居住区部分の模型(実船寸法の1/50)を使用し、風向を変化させながら船体前後方向の流体力を計測して、付加物の有無による風圧抵抗係数の違いを算出した。
【0043】
ウィング部付加物は、図1乃至図3に示すような、ウィング部よりも幅の狭い長尺箱状体であり、ウィング部よりも若干短い長さとした。同様にサポート部付加物は、サポート部よりも幅の狭い長尺箱状体であり、サポート部よりも若干短い長さとした。ウィング部付加物及びサポート部付加物の大きさは、それぞれ以下の通りである。
ウィング部付加物:幅20mm、長さ252mm、厚み10mm
サポート部付加物:幅16mm、長さ216mm、厚み5mm
【0044】
表1に、風洞実験の結果を示す。表1において、横軸は風向(度)を示し、縦軸は風圧抵抗係数(Cfx)を示している。なお、風向(度)は、船体前後方向(x軸)に対する角度を示している(0度=正面向かい風)。また、風圧抵抗係数(Cfx)は、以下の数式により求められた数値である。
Cfx=Fx/{(1/2)ρVS}
Fx:x軸方向の流体力
ρ :空気密度
V :風速
S :代表面積(投影面積)
【0045】
【表1】

【0046】
表1に示すように、「付加物あり」の方が、「付加物なし」よりも、風向0〜40度の半範囲において風圧抵抗係数が減少し、風圧抵抗低減効果が見られた。低減効果は風向0度において約10%である(ただし、居住区単体の低減効果であり、船体全体について10%低減されるわけではない)。
【0047】
本実施形態に係る船舶の風圧抵抗低減構造によれば、サポート部1の正面側の上下方向に沿って、長尺箱状体のサポート部付加物10を取り付けて、航行時にサポート部1が受ける風圧抵抗を低減するようになっている。さらに、ウィング部2の正面側の水平方向に沿って、長尺箱状体のウィング部付加物20を取り付けて、航行時にウィング部2が受ける風圧抵抗を低減するようになっている。従って、例えば大型タンカーや大型ばら積み船のように、居住区3から船幅方向に突出するウィング部2と、ウィング部2を下方から支持する柱状のサポート部1とを有する船舶100の風圧抵抗を効果的に低減することができる。また、取り付けるサポート部付加物10及びウィング部付加物20は長尺箱状体であるので、構造が単純であり容易に形成して取り付けることができる。また、新造船に限らず、既に就航している船舶についても容易に取り付けることができる。
【0048】
また、サポート部付加物10がサポート部1よりも幅の狭い長尺箱状体である場合、サポート部付加物10をサポート部1の正面側の左右縁部に段差A,Bが生じるように取り付けることにより、航行時にサポート部1が受ける風圧抵抗を段差A,Bの隅切り効果により低減することができる。さらに、ウィング部付加物20がウィング部2よりも幅の狭い長尺箱状体である場合、ウィング部付加物20をウィング部2の正面側の上下縁部に段差C,Dが生じるように取り付けることにより、航行時にウィング部2が受ける風圧抵抗を段差C,Dの隅切り効果により低減することができる。
【0049】
また、サポート部付加物10がサポート部1と同一幅の長尺箱状体であり、長手方向の両側に傾斜面が形成されている場合、航行時にサポート部1が受ける風圧抵抗を傾斜面により低減することができる。さらに、ウィング部付加物20がウィング部2と同一幅の長尺箱状体であり、長手方向の両側に傾斜面が形成されている場合、航行時にウィング部2が受ける風圧抵抗を傾斜面により低減することができる。
【0050】
以上、本実施形態に係る船舶の風圧抵抗低減構造によれば、ウィング部2とサポート部1とを有する船舶の風圧抵抗を効果的に低減する、船舶の風圧抵抗低減構造を提供することができる。
【0051】
なお、サポート部付加物10及びウィング部付加物20として用いる長尺箱状体は、航行時に受ける風圧抵抗を低減することができれば、図4に示す横断面形状に限定されるものではない。
【0052】
また、本実施形態においては、サポート部1とウィング部2の両方に付加物を取り付けたが、どちらか一方に取り付けても風圧抵抗を低減することは可能である。ただし、両方に取り付けることが好ましい。
【0053】
また、サポート部1やウィング部2の風圧抵抗を低減することにより、サポート部やウィング部周りの空気の流場が整流されて、船舶の振動が低減する効果も期待できる。
【符号の説明】
【0054】
1 サポート部
2 ウィング部
3 居住区
10 サポート部付加物
11 サポート部付加物ユニット
20 ウィング部付加物
21 ウィング部付加物ユニット
100 船舶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
居住区から船幅方向に突出するウィング部と、前記ウィング部を下方から支持する柱状のサポート部とを有する船舶の風圧抵抗低減構造であって、
前記サポート部の正面側の上下方向に沿って、長尺箱状体のサポート部付加物を取り付けて、航行時に前記サポート部が受ける風圧抵抗を低減するようにしたことを特徴とする船舶の風圧抵抗低減構造。
【請求項2】
前記サポート部付加物が前記サポート部よりも幅の狭い長尺箱状体であって、前記サポート部付加物を前記サポート部の正面側の左右縁部に段差が生じるように取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の船舶の風圧抵抗低減構造。
【請求項3】
前記サポート部付加物が前記サポート部と同一幅の長尺箱状体であって、長手方向の両側に傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の船舶の風圧抵抗低減構造。
【請求項4】
居住区から船幅方向に突出するウィング部と、前記ウィング部を下方から支持する柱状のサポート部とを有する船舶の風圧抵抗低減構造であって、
前記サポート部の正面側の上下方向に沿って、長尺箱状体のサポート部付加物を取り付けて、航行時に前記サポート部が受ける風圧抵抗を低減するようにし、
前記ウィング部の正面側の水平方向に沿って、長尺箱状体のウィング部付加物を取り付けて、航行時に前記ウィング部が受ける風圧抵抗を低減するようにしたことを特徴とする船舶の風圧抵抗低減構造。
【請求項5】
前記サポート部付加物が前記サポート部よりも幅の狭い長尺箱状体であって、前記サポート部付加物を前記サポート部の正面側の左右縁部に段差が生じるように取り付け、
前記ウィング部付加物が前記ウィング部よりも幅の狭い長尺箱状体であって、前記ウィング部付加物を前記ウィング部の正面側の上下縁部に段差が生じるように取り付けたことを特徴とする請求項4に記載の船舶の風圧抵抗低減構造。
【請求項6】
前記サポート部付加物が前記サポート部と同一幅の長尺箱状体であって、長手方向の両側に傾斜面が形成されており、
前記ウィング部付加物が前記ウィング部と同一幅の長尺箱状体であって、長手方向の両側に傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の船舶の風圧抵抗低減構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−14192(P2013−14192A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147219(P2011−147219)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000232818)日本郵船株式会社 (61)
【出願人】(511161362)常石造船株式会社 (3)