説明

船舶コーティング

現在では、大多数の船舶コーティング製品は、防汚ペイント(すなわち、海洋微生物を死滅させる殺生物剤の放出)に基づく。殺生物剤は海洋環境に有害であるので、それらの適用は高度に制限されている。船舶コーティングにおける進歩にもかかわらず、自己研磨/非汚染性および超疎水性/非汚染性の有利な特性を提供する、新しい船舶コーティングの必要性が存在する。本発明はこの必要性を満たすことを目指し、さらなる関連する利点を提供する。本発明は、非汚染性双性イオンポリマーに加水分解性のカチオン性ポリマーを含む船舶コーティング、コーティングされた船舶表面、および船舶コーティングを作製し、使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
船体および他の海洋表面の生物汚損は、地球環境および経済上の問題になっている。
【背景技術】
【0002】
現在では、大多数の船舶コーティング製品は、防汚ペイント(すなわち、海洋微生物を死滅させる殺生物剤の放出)に基づく。殺生物剤は海洋環境に有害であるので、それらの適用は高度に制限されている。シリコーン化合物に基づく無毒性汚染放出コーティングが市販されているが、まだ一般的ではない。これらのコーティングは、高速(14ノットを超える)で動く船舶でのみ有効である。さらに、これらのコーティングは、材料、塗布および維持の面で高コストである。
【0003】
超低汚染性双性イオン物質およびコーティングは、非汚染性船舶コーティングの開発を可能にする。ポリ(エチレングリコール)(PEG)誘導体または双性イオンポリマーは、細菌付着およびバイオフィルム形成を減少させる非汚染性材料として、広く用いられている。しかし、酸化損傷に対するPEGの感受性は、複合媒体でのその長期適用を制限している。ポリ(スルホベタインメタクリレート)(pSBMA)などの双性イオン物質は、細菌付着およびバイオフィルム形成を激減させることができ、また、非特異的タンパク質吸着に高度抵抗性である。
【0004】
船舶コーティングにおける進歩にもかかわらず、自己研磨/非汚染性および超疎水性/非汚染性の有利な特性を提供する、新しい船舶コーティングの必要性が存在する。本発明はこの必要性を満たすことを目指し、さらなる関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリマーを含む船舶コーティング、コーティングを作製する方法、コーティングで塗布される船舶表面、およびコーティングを船舶に塗布する方法を提供する。
【0006】
一態様では、本発明は船舶コーティングを提供する。
【0007】
一実施形態では、船舶コーティングは、以下を含むカチオン性ポリマーを含み:
(a)ポリマー骨格;
(b)それぞれが第一のリンカーによって前記ポリマー骨格に共有結合している複数のカチオン性中心;
(c)各カチオン性中心に結合している対イオン;および
(d)第二のリンカーを介して各カチオン性中心に共有結合している加水分解性基であって、アニオン性中心に加水分解性であり、前記第二のリンカーを介して前記カチオン性中心に共有結合しているアニオン性中心を有する双性イオンポリマーを提供する加水分解性基を含む。
【0008】
一実施形態では、ポリマーは、式:
PB−(L−N(R)(R)−L−A(=O)−OR (X
を有し、上式で、
PBはn個のペンダント基L−N(R)(R)−L−A(=O)−OR)を有するポリマー骨格であり;
はカチオン性中心であり;
およびRは、水素、アルキルおよびアリールから独立に選択され;
A(=O)−ORは、加水分解性基であって、AはC、S、SO、PまたはPOからなる群から選択され、Rは、1つまたは複数の置換基でさらに置換されてもよいアルキル、アリール、アシルまたはシリル基であり;
は、カチオン性中心をポリマー骨格に共有結合させるリンカーであり;
は、カチオン性中心を加水分解性基に共有結合させるリンカーであり;
は、カチオン性中心に結合している対イオンであり;
nは、約10〜約10,000の整数である。
【0009】
一実施形態では、対イオンは疎水性の有機対イオンである。代表的な対イオンには、C1〜C20カルボキシレートおよびC1〜C20アルキルスルホネートが含まれる。
【0010】
ある実施形態では、対イオンは生物学的に活性である。代表的な対イオンには、抗菌剤、抗細菌剤および抗真菌剤が含まれる。一実施形態では、対イオンはサリチレートである。
【0011】
ある実施形態では、加水分解性基は、加水分解の際に疎水性の有機基を放出する。一実施形態では、加水分解性基は加水分解の際にC1〜C20カルボキシレートを放出する。
【0012】
ある実施形態では、加水分解性基は、加水分解の際に生物学的活性物質を放出する。代表的な生物学的活性物質には、抗細菌剤および抗真菌剤が含まれる。
【0013】
代表的なカチオン性中心には、アンモニウム、イミダゾリウム、トリアザオリウム、ピリジニウム、モルホリニウム、オキサゾリジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピペラジニウムおよびピロリジニウムが含まれる。
【0014】
一実施形態では、RおよびRは、C1〜C10直鎖および分枝状アルキル基からなる群から独立に選択される。
【0015】
一実施形態では、Lは−C(=O)O−(CH−および−C(=O)NH−(CH−からなる群から選択され、式中、nは1〜20の整数である。
【0016】
一実施形態では、Lは−(CH−であり、式中、nは1〜20の整数である。
【0017】
一実施形態では、Aは、C、SOおよびPOからなる群から選択される。
【0018】
一実施形態では、RはC1〜C20アルキルである。
【0019】
一実施形態では、Xは、ハライド、カルボキシレート、アルキルスルホネート、サルフェート;ナイトレート、パークロレート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、トリフルオロメチルスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、ラクテートおよびサリチレートからなる群から選択される。
【0020】
別の実施形態では、船舶コーティングは、式
【0021】
【化1】

を有する共重合体を含み、式中、Rは各出現時に、水素、メチルおよびエチルからなる群から独立に選択され;
およびRは、C1〜C20アルキルおよびフルオロアルキルからなる群から独立に選択され;
は、C1〜C20アルキル、C6〜C12アリールおよびトリ(C1〜C8アルキル)シリルからなる群から選択され;
Rは、アンモニウム、イミダゾリウム、トリアザオリウム、ピリジニウム、モルホリニウム、オキサゾリジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピペラジニウムおよびピロリジニウムから選択されるカチオン性中心であり;
mは、1〜20の整数であり;
nは、5〜約100,000の整数であり;
pは、1〜20の整数であり;
qは、5〜約100,000の整数である。
【0022】
一実施形態では、RはC4〜C12アルキルである。
【0023】
さらなる実施形態では、船舶コーティングは、式
【0024】
【化2】

を有する共重合体を含み、式中、RおよびRは、C1〜C20アルキルおよびフルオロアルキルから独立に選択され;
Rは、アンモニウム、イミダゾリウム、トリアザオリウム、ピリジニウム、モルホリニウム、オキサゾリジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピペラジニウムおよびピロリジニウムから選択されるカチオン性中心であり;
pは、1〜20の整数であり;
qは、1〜20の整数であり;
mは、5〜約100,000の整数であり;
nは、5〜約100,000の整数である。
【0025】
上記の共重合体について、一実施形態では、Rはアンモニウムである。一実施形態では、共重合体はブロック共重合体である。
【0026】
本発明の船舶コーティングは、結合剤ポリマーをさらに含むことができる。代表的な結合剤ポリマーには、ロジン、アクリルポリマー、ポリエステル、アミノ樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシおよびフェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリホスファゼン、ポリシロキサンおよびそれらの混合物が含まれる。
【0027】
別の態様では、本発明は、本発明の船舶コーティングで処理された船舶基材の表面を提供する。代表的な基材には、船舶の船体および船舶構造物、例えばプロペラ、潜望鏡およびセンサーが含まれる。本発明の船舶コーティングで有利にコーティングすることができる他の海洋構造物には、橋および魚網が含まれる。
【0028】
本発明のさらなる態様では、船舶基材の表面を処理する方法が提供される。本方法では、本発明の船舶コーティングは、船舶基材の表面に塗布される。一実施形態では、コーティングを塗布することは、コーティングを噴霧することを含む。別の実施形態では、コーティングを塗布することは、コーティングをペイントすることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明において有用であるカチオン性ポリマーを作製するのに有用な3つの代表的なカチオン性モノマー、すなわち、異なるカルボキシベタインエステル基を有する3つのアクリルアミドモノマー、CBAA−1−エステル、CBAA−3−エステルおよびCBAA−5−エステルの構造を例示する図である。
【図2】本発明の代表的なカチオン性ポリマーの加水分解、すなわち、双性イオンポリカルボキシベタインへのカチオン性ポリカルボキシベタインエステルの加水分解を例示する図である。
【図3】(a)10mM(3%加水分解)、(b)100mM(82%加水分解)および(c)1M(100%加水分解)の水酸化ナトリウム濃度の溶液で1時間処理した後の、本発明の代表的なカチオン性ポリマー、ポリCBAA−3−エステルの加水分解のH NMRスペクトルを比較する図である。
【図4】10mMおよび100mMの水酸化ナトリウム水溶液での本発明において有用である代表的なカチオン性ポリマーの加水分解速度を比較する図である。
【図5A】本発明の代表的なポリマー、すなわち加水分解の前後のポリカルボキシベタインエステル;(a)ポリCBAA−1−エステルを移植した表面でのフィブリノーゲン吸着のSPRセンサーグラムを示す図である。ポリマーブラシを有する表面を、100mmNaOH溶液で1〜2時間加水分解した。
【図5B】本発明の代表的なポリマー、すなわち加水分解の前後のポリカルボキシベタインエステル;(b)ポリCBAA−3−エステルを移植した表面でのフィブリノーゲン吸着のSPRセンサーグラムを示す図である。ポリマーブラシを有する表面を、100mmNaOH溶液で1〜2時間加水分解した。
【図5C】本発明の代表的なポリマー、すなわち加水分解の前後のポリカルボキシベタインエステル;(c)ポリCBAA−5−エステルを移植した表面でのフィブリノーゲン吸着のSPRセンサーグラムを示す図である。ポリマーブラシを有する表面を、100mmNaOH溶液で1〜2時間加水分解した。
【図6】本発明において有用である3つの代表的なカチオン性ポリマー、ポリCBAA−エステルの加水分解の前後の抗微生物活性を比較するグラフである。E.coli(10個の細胞/mL)を、各ポリマー溶液(反復単位モル濃度: 2mM)と30分間インキュベートした。PBS緩衝液(pH7.4および150mM)を、陰性対照として用いる。
【図7】カチオン性ポリマーでコーティングした本発明の代表的な表面の略図である。表面は、加水分解時に、抗細菌性表面から非汚染性表面に切り替わる:(a)抗微生物性カチオン性pCBMA−1 C2は、細菌を効果的に殺傷し、(b)pCBMA−1 C2は、加水分解時に非汚染性双性イオンpCBMA−1に変換され、(c)表面にとどまっている死菌は、非汚染性双性イオンpCBMA−1から放出され、(d)双性イオンpCBMA−1自体は、細菌の接着に高度抵抗性であることを証明する。
【図8】本発明の代表的なカチオン性ポリマー、切替可能なpCBMA−1 C2;抗微生物性カチオン性pC8NMA;および非汚染性双性イオンpCBMA−2の化学構造を例示する図である。
【図9】E.coli K12に対するpCBMA−1 C2およびpC8NMAの殺菌活性を比較するグラフである。抗微生物性ポリマーでコーティングされた表面で増殖した生存E.coli K12コロニーの割合は、pCBMA−2対照(n=3)の上で増殖したコロニー数と相対的である。
【図10】様々なポリマーで被覆した表面への1時間曝露についての、1010個の細胞・mL−1の懸濁液からの付着したE.coli K12細胞(赤色)の蛍光顕微鏡検査画像を示す図である:(a)、(c)および(e)は、それぞれ加水分解前のpCBMA−1 C2、pC8NMAおよびpCBMA−2のものであり、(b)、(d)および(f)は、それぞれ加水分解後の同じポリマーのものである。加水分解は、10mM CAPS(pH10.0)で8日間であった。
【図11】加水分解の前後のpCBMA−1 C2、pC8NMAおよびpCBMA−2への1時間の曝露についての、1010個の細胞・mL−1の懸濁液からのE.coli K12の結合を比較するグラフである(n=3)。
【図12】図12Aは、(a)加水分解の前、ならびに(b)、(c)および(d)は、それぞれ水、pH9.0の10mM CEHS、pH10.0の10mM CAPSによる24時間の加水分解の後の、ATRPを通してpCBMA−1 C2を移植した表面への、PBS緩衝液中の1mg・mL−1フィブリノーゲンの吸着を示すSPRセンサーグラムを比較する図である。図12Bは、pH10.0の10mM CAPSとのインキュベーションの(a)前、および(b)24時間の後のpC8NMAを移植した表面、ならびに、pH10.0の10mM CAPSによる(c)加水分解の前および(d)24時間の加水分解の後のpCBMA−2を移植した表面への、PBS緩衝液中の1mg・mL−1フィブリノーゲンの吸着を示すSPRセンサーグラムを比較する図である。
【図13】本発明において有用であるカチオン性ポリマーを作製するのに有用な代表的なカチオン性モノマー:CBMA−1 C2 SA、サリチル酸対イオンを有するCBMA−1のエチルエステルの構造を例示する図である。
【図14】CBMA−1 C2 SAを重合させることによって調製したヒドロゲルからの、4つの条件:(a)水、中性pH;(b)リン酸緩衝食塩水(PBS);(c)水、pH10;および(d)0.15M塩化ナトリウム水溶液、pH10の下での、25℃でのサリチル酸の経時的(12時間、39時間および63時間)放出速度(mg/h)を比較する図である。
【図15】CBMA−1 C2 SAを重合させることによって調製したヒドロゲルからの、4つの条件:(a)水、中性pH;(b)リン酸緩衝食塩水(PBS);(c)水、pH10;および(d)0.15M塩化ナトリウム水溶液、pH10の下での、37℃でのサリチル酸の経時的(12時間、39時間および63時間)放出速度(mg/h)を比較する図である。
【図16】本発明で有用な、イオン交換対イオンY(例えば、疎水性の対イオン)を有する代表的なカチオン性モノマーおよびポリマーの調製の略図である。
【図17】本発明で有用な、疎水性の対イオン(サリチル酸)および脱離基CH(CHOHまたはCH(CH11OHを有する、代表的なカチオン性ポリマーの海水加水分解、すなわち、双性イオンポリカルボキシベタインへのカチオン性ポリカルボキシベタインエステルの加水分解を示す図である。
【図18】図17に示すカチオン性ポリマー(m=7およびm=11)でコーティングした表面についての、加水分解(人工海水、pH8.2の0.6M塩化ナトリウムに曝露させた時間)の関数としての相対的なタンパク質吸着を比較する図である。m=11のカチオン性ポリマーでは遅い加水分解、m=7のカチオン性ポリマーでは中間の加水分解。相対的なタンパク質吸着は、西洋ワサビペルオキシダーゼ−抗フィブリノーゲンELISAで測定した。
【図19】図17に示すカチオン性ポリマー(m=7およびm=11)でコーティングした表面についての、時間の関数(pH10.3の溶液)としての相対的なタンパク質吸着を比較する図である。相対的なタンパク質吸着は、西洋ワサビペルオキシダーゼ−抗フィブリノーゲンELISAで測定した。
【図20−1】フロリダ野外試験パネルを比較する写真である。Aは、エポキシパネルである。
【図20−2】フロリダ野外試験パネルを比較する写真である。Bは、PVCパネルである。
【図20−3】フロリダ野外試験パネルを比較する写真である。Cは、図23に示す本発明の代表的なカチオン性ポリマー(m=11)で処理したパネルである。
【図20−4】フロリダ野外試験パネルを比較する写真である。D〜Eは、図23に示す本発明の代表的なカチオン性ポリマー(m=11)で処理したパネルである。
【図20−5】フロリダ野外試験パネルを比較する写真である。Fは、図23に示す本発明の代表的なカチオン性ポリマー(m=11)で処理したパネルである。
【図21】双性イオンブロック(スルホベタイン)および疎水性のブロック(メタクリレートCエステル)を有する、本発明の代表的なブロックポリマーの調製の略図である。
【図22−1】ハワイ野外試験パネルを比較する写真である。図22Aおよび22Bは、エポキシパネルである。
【図22−2】ハワイ野外試験パネルを比較する写真である。図22Cは、Hempasilパネルである。
【図22−3】ハワイ野外試験パネルを比較する写真である。図22Dは、図28に示す本発明の代表的なブロック共重合体(p=11)(加水分解性シリルエステル結合剤ポリマーと混合したブロック共重合体ナノ粒子)で処理したパネルである。
【図23】フルオロアルキル部分(−CF−を含む双性イオンペンダント基を有する、本発明の代表的なシロキサンポリマーの調製の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、加水分解性基を有するカチオン性ポリマーを含む船舶コーティング、コーティングを作製する方法、およびコーティングを船舶に塗布する方法を提供する。
【0031】
本発明の一態様では、カチオン性ポリマーを含む船舶コーティングが提供される。本発明で有用なカチオン性ポリマーは、加水分解して双性イオンポリマーを提供することができる加水分解性基を含む。双性イオンポリマーは、正および負の電荷の均衡を有するポリマーである。双性イオンポリマーは、タンパク質吸着および細菌接着に高度抵抗性であることができる。それらの生物模倣性質のために、ホスホベタイン、スルホベタインおよびカルボキシベタインポリマーなどの双性イオンポリマーは、高い生体適合性を示し、環境に対して優しい。
【0032】
制御された加水分解。カチオン性ポリマーの構造上の特徴の変動は、それらの制御された加水分解、ならびに生物学的、化学的および物理的な特性の制御を可能にする。加水分解の速度は、加水分解性基(例えば、エステルの場合、−OR)の性質の選択によってかなり影響を与えること、および制御することができる。
【0033】
下記のように、ある実施形態では、本発明において有用であるカチオン性ポリマーは、加水分解後に官能基を都合よく放出する。例えば、明本発明において有用であるカチオン性エステルについては、加水分解エステルは−OR基を放出する。これらの実施形態では、放出される基は、治療剤(例えば、抗微生物性、抗細菌性、抗真菌性の薬剤)であってもよい。同様に、ある実施形態では、カチオン性ポリマーはそれらの対イオン(X)を放出することができ、それらも、生物学的に活性(例えば、抗微生物剤および抗細菌剤)であってよい。
【0034】
加水分解性基を加水分解によってだけでなく、他の手段によって起こる切断(例えば、分解または侵食)によっても切断することができることはいうまでもない。カチオン性ポリマーは、とりわけ、酵素触媒反応、酸化還元、熱、光、イオン強度、pHおよび加水分解による環境変化によって、それらの対応する双性イオンポリマーに変換することができる。
【0035】
本発明において有用である代表的なカチオン性ポリマーおよびそれらの対応する双性イオンポリマー対応物を、下に記載する。
【0036】
カチオン性ポリマー
本発明において有用であるカチオン性ポリマーは、加水分解されるとポリマーを双性イオンにするアニオン基を提供する加水分解性基を含む。各ポリマーでは、加水分解性基の数はカチオン基の数と実質的に同等であり、したがって、加水分解性基が加水分解されると生じるポリマーは双性イオン性である。本明細書で用いるように、用語「双性イオンポリマー」は、実質的に同等数のカチオン基およびアニオン基を有するポリマーを指す。
【0037】
本発明において有用である代表的なカチオン性ポリマーは、式(I)
PB−(L−N(R)(R)−L−A(=O)−OR (X (I)
を有し、上式で、PBはn個のペンダント基(すなわち、L−N(R)(R)−L−A(=O)−OR)を有するポリマー骨格であり;Nはカチオン性中心であり;RおよびRは、水素、アルキルおよびアリール基から独立に選択され;A(=O)−ORは加水分解性基であって、式中、AはC、S、SO、PまたはPOであり、Rは、1つまたは複数の置換基でさらに置換されてもよいアルキル、アリール、アシルまたはシリル基であり;Lは、カチオン性中心をポリマー骨格に共有結合させるリンカーであり;Lは、カチオン性中心を加水分解性基に共有結合させるリンカーであり;Xは、カチオン性中心に結合している対イオンであり;nは、約10〜約10,000である。式(I)のポリマーの平均分子量は、約1kDa〜約1,000kDaである。
【0038】
式(I)のカチオン性ポリマーの加水分解は、式(II)
PB−(L−N(R)(R)−L−A(=O)O (II)
を有する双性イオンポリマーを提供し、上式で、PB、L、N、R、R、L、Aおよびnは上に述べた通りであり、A(=O)Oはアニオン基である。
【0039】
この実施形態では、式(I)のポリマーは、n個のペンダント基を含み、式(III)
CH=C(R)−L−N(R)(R)−L−A(=O)−OR (III)
を有するモノマーの重合によって調製することができ、上式で、L、N、R、R、A(=O)−ORおよびL、およびXは、上で述べた通りであり、Rは、水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1〜C6アルキルおよびC6〜C12アリール基から選択される。
【0040】
以下は、上記の式(I)〜(III)のポリマーおよびモノマーの記載である。
【0041】
式(I)および(II)において、PBはポリマー骨格である。代表的なポリマー骨格には、ビニルモノマー(例えば、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン)に由来するビニル骨格(すなわち、−C(R’)(R’’)−C(R’’’)(R’’’’)−、式中、R’、R’’、R’’’およびR’’’’は、水素、アルキルおよびアリールから独立に選択される)が含まれる。他の適する骨格には、双性イオン基に変換することができる加水分解性基を含むペンダントカチオン基を提供するポリマー骨格、およびカチオン基を含み、双性イオン基に変換することができるペンダント加水分解性基を提供する骨格が含まれる。他の代表的なポリマー骨格には、ペプチド(ポリペプチド)、ウレタン(ポリウレタン)およびエポキシ骨格が含まれる。
【0042】
同様に、式(III)で、CH=C(R)−は、重合可能な基である。上記のものを含む他の重合可能な基を、本発明のモノマーおよびポリマーを提供するために用いることができることはいうまでもない。
【0043】
式(I)〜(III)で、Nはカチオン性中心である。ある実施形態では、カチオン性中心は、第四級アンモニウム(NがL;R、RおよびLに結合)である。アンモニウムに加えて、他の有用なカチオン性中心には、イミダゾリウム、トリアザオリウム、ピリジニウム、モルホリニウム、オキサゾリジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピペラジニウムおよびピロリジニウムが含まれる。
【0044】
およびRは、水素、アルキルおよびアリール基から独立に選択される。代表的なアルキル基には、C1〜C10直鎖および分枝状のアルキル基が含まれる。ある実施形態では、アルキル基は、例えばアリール基(例えば、−CH、ベンジル)を含む、1つまたは複数の置換基でさらに置換される。一実施形態では、RおよびRは、メチルである。代表的なアリール基には、例えばフェニルを含む、C6〜C12アリール基が含まれる。式(I)〜(III)のある実施形態については、RまたはRは存在しない。
【0045】
は、カチオン性中心をポリマー骨格に共有結合させるリンカーである。ある実施形態では、Lは、Lの残りをポリマー骨格(または式(III)のモノマーの重合可能な部分)に結合させる官能基(例えば、エステルまたはアミド)を含む。官能基に加えて、LはC1〜C20アルキレン鎖を含むことができる。代表的なL基には、−C(=O)O−(CH−および−C(=O)NH−(CH−が含まれ、式中、nは1〜20(例えば、3)である。
【0046】
は、カチオン性中心を加水分解性基(または、式(II)の双性イオンポリマーのアニオン基)に共有結合させるリンカーである。Lは、C1〜C20アルキレン鎖であることができる。代表的なL基には−(CH−が含まれ、式中、nは1〜20(例えば、1、3または5)である。
【0047】
式(I)のカチオン性ポリマーの疎水性および加水分解速度は、Lおよび/またはLによって制御することができる。LまたはLの疎水性が強いほど、加水分解性基の加水分解および双性イオンポリマーへのカチオン性ポリマーの変換はより遅い。
【0048】
A(=O)−ORは、加水分解性基である。加水分解性基は、エステル、例えばカルボン酸エステル(AはCである)、スルフィン酸エステル(AはSである)、スルホン酸エステル(AはSOである)、ホスフィン酸エステル(AはPである)またはホスホン酸エステル(AはPOである)であることができる。加水分解性基は、無水物であることもできる。Rは、1つまたは複数の置換基でさらに置換されてもよいアルキル、アリール、アシルまたはシリル基である。
【0049】
代表的なアルキル基には、C1〜C30直鎖および分枝状のアルキル基が含まれる。ある実施形態では、アルキル基は、例えばアリール基(例えば、−CH、ベンジル)を含む、1つまたは複数の置換基でさらに置換される。ある実施形態では、RはC1〜C20直鎖アルキル基である。一実施形態では、Rはメチルである。別の実施形態では、Rはエチルである。一実施形態では、RはC3〜C20アルキルである。一実施形態では、RはC4〜C20アルキルである。一実施形態では、RはC5〜C20アルキルである。一実施形態では、RはC6〜C20アルキルである。一実施形態では、RはC8〜C20アルキルである。一実施形態では、RはC10〜C20アルキルである。比較的遅い加水分解が所望される用途の場合、RはC4〜C20 n−アルキル基またはC4〜C30 n−アルキル基である。
【0050】
代表的なアリール基には、例えば置換されたフェニル基(例えば安息香酸)を含むフェニルを含む、C6〜C12アリール基が含まれる。
【0051】
代表的なアシル基(−C(=O)R)には、RがC1〜C20アルキルまたはC6〜C12アリールであるアシル基が含まれる。
【0052】
代表的なシリル基(−SiR)には、RがC1〜C20アルキルまたはC6〜C12アリールであるシリル基が含まれる。
【0053】
本発明のある実施形態では、加水分解生成物R(またはROH)は、生物学的に活性(例えば、抗微生物剤、例えばサリチル酸(2−ヒドロキシ安息香酸)、ベンゾエート、ラクテート、ならびに抗生物質または抗真菌性薬剤のアニオン形態)である。
【0054】
ある他の実施形態では、加水分解生成物R(またはROH)は、ラクテート、グリコレートまたはアミノ酸である。
【0055】
式(I)のカチオン性ポリマーの加水分解速度は、Rによって制御することもできる。例えば、Rによる立体的および/または速度論的効果により加水分解性基の加水分解がより遅いほど、双性イオンポリマーへのカチオン性ポリマーの変換はより遅い。
【0056】
は、カチオン性中心に結合している対イオンである。対イオンは、式(I)のカチオン性ポリマーの合成または式(III)のモノマーから生じる対イオンであってよい(例えば、Cl、Br、I)。カチオン性中心の合成から最初に生成される対イオンは、他の適する対イオンと交換して、制御可能な加水分解特性および他の生物的特性を有するポリマーを提供することもできる。
【0057】
式(I)のカチオン性ポリマーの加水分解速度は、対イオンによって制御することもできる。対イオンの疎水性が強いほど、加水分解性基の加水分解はより遅く、双性イオンポリマーへのカチオン性ポリマーの変換はより遅い。代表的な疎水性対イオンには、カルボキシレート、例えば安息香酸および脂肪酸アニオン(例えば、CH(CHCO、式中、n=1〜19);アルキルスルホネート(例えば、CH(CHSO、式中、n=1〜19);サリチレート;ラクテート;ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオン(N(SOCF);およびそれらの誘導体が含まれる。他の対イオンを、塩化物、臭化物、ヨウ化物、サルフェート;ナイトレート;パークロレート(ClO);テトラフルオロボレート(BF);ヘキサフルオロホスフェート(PF);トリフルオロメチルスルホネート(SOCF);およびそれらの誘導体から選択することもできる。
【0058】
他の適する対イオンには、疎水性対イオン、および、生物学的活性のある対イオン(例えば、抗微生物剤、例えばサリチル酸(2−ヒドロキシ安息香酸)、ベンゾエート、ラクテート、ならびに抗生物質または抗真菌性薬剤のアニオン形態)が含まれる。
【0059】
式(III)のモノマーについては、Rは、水素、フッ化物、トリフルオロメチルおよびC1〜C6アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル)から選択される。一実施形態では、Rは水素である。一実施形態では、Rはメチルである。別の実施形態では、Rはエチルである。
【0060】
カチオン性ポリマーの構造上の特徴の変動は、それらの制御された加水分解、ならびに生物学的、化学的および物理的な特性の制御を可能にする。所望の制御されたポリマー加水分解を達成するために変更することができる、上記カチオン性ポリマーの構造上の特徴には、L、L、R、R、A、RおよびXが含まれる。一般には、ポリマーまたは記載の構造上の特徴が疎水性であるほど、双性イオンポリマーへのカチオン性ポリマーの加水分解はより遅い。
【0061】
ホモポリマー、ランダム共重合体、ブロック共重合体。本発明において有用であるカチオン性ポリマーには、ホモポリマー、ランダム共重合体およびブロック共重合体が含まれる。
【0062】
一実施形態では、本発明は、式(III)によって定義されるようなカチオン性モノマーを重合させることによって調製される、式(I)によって定義されるようなカチオン性ホモポリマーを提供する。式(I)によって定義されるポリマーを含む本発明において有用であるカチオン性ポリマーに付随する有利な特性を、他の重合物質に付与することができることはいうまでもない。
【0063】
一実施形態では、本発明は、式(III)の2つの異なるカチオン性モノマーを共重合することによって調製されるランダム共重合体を提供する。
【0064】
別の実施形態では、本発明は、式(III)によって定義される本発明の1つまたは複数のカチオン性モノマーを、1つまたは複数の他のモノマー(例えば、疎水性のモノマー、アニオン性モノマーまたは双性イオンモノマー、例えばホスホリルベタイン、スルホベタインもしくはカルボキシベタインモノマー)と共重合することによって調製されるカチオン性反復単位を含む、ランダム共重合体を提供する。
【0065】
一実施形態では、本発明は、カチオン性反復単位を含む1つまたは複数のブロック、および1つまたは複数の他のブロックを有するブロック共重合体を提供する。この実施形態では、カチオン性反復単位を含む1つまたは複数のブロックは、カチオン性反復単位(例えば、式(III)のカチオン性モノマーから調製されるホモポリマーまたは共重合体)だけを含む。あるいは、カチオン性反復単位を含む1つまたは複数のブロックは、カチオン性反復単位および他の反復単位(例えば、疎水性、アニオン性、双性イオン性の反復単位)を含む。
【0066】
他の適するポリマー
本発明は、以下のポリマーも提供する。
【0067】
一実施形態では、カチオン性ポリマーは、以下の構造を有し:
【0068】
【化3】

=−H、−CH、−C
=原子なし、−H、−CH、−C
=−H、−CH、−C
x=1〜8。
【0069】
R=任意のアルキル鎖、芳香族またはラクテートまたはグリコレート
【0070】
【化4】

=−H、−CH、−C
Y=1〜10
Z=0〜22
またはC(=O)R’
R’=任意のアルキル鎖または芳香族基。
【0071】
別の実施形態では、カチオン性ポリマーは、以下の構造を有し:
【0072】
【化5】

n>5
x=1〜5
y=1〜5
=H、またはアルキル鎖
=原子なし、H、またはアルキル鎖
=アルキル鎖。
【0073】
別の実施形態では、本発明は以下の構造を有するポリマーを提供し:
【0074】
【化6】

、任意のアルキル鎖であり
は、任意のアルキル鎖であり
、Rは任意のアルキル鎖であり
x=1〜18
y=1〜18
n>3。
【0075】
別の実施形態では、本発明は以下の構造を有するポリマーを提供し:
【0076】
【化7】

Rは、アルキル鎖であり
x=1〜18
y=1〜18
n>3。
【0077】
別の実施形態では、本発明は以下の構造を有するポリマーを提供し:
【0078】
【化8】

R=任意のアルキル鎖
x=0〜11
n>3。
【0079】
別の実施形態では、本発明は以下の構造を有するポリマーを提供し:
【0080】
【化9】

n>3
x=1〜10
R=任意のアルキル鎖、芳香族またはラクテートまたはグリコレート。
【0081】
【化10】

=−H、−CH、−C
y=1〜10
z=0〜22
またはC(=O)R’
R’=任意のアルキル鎖、芳香族基。
【0082】
別の実施形態では、本発明は以下の構造を有するポリマーを提供し:
【0083】
【化11】

n>3
x=1〜6
y=0〜6
R=任意のアルキル鎖、芳香族またはラクテートまたはグリコレート
【0084】
【化12】

=−H、−CH、−C
y=1〜10
z=0〜22
またはC(=O)R’
R’=任意のアルキル鎖、芳香族基。
【0085】
別の実施形態では、本発明は以下の構造を有するポリマーを提供し:
【0086】
【化13】

n>5
x=0〜5。
【0087】
別の実施形態では、本発明は以下の構造を有するポリマーを提供し:
【0088】
【化14】

x=0〜17
n>5
R=Hまたはアルキル鎖。
【0089】
別の実施形態では、本発明は以下の構造を有するポリマーを提供し:
【0090】
【化15】

n>5
=Hまたは任意のアルキル鎖、例えばメチル
x、y=1〜6
=任意のアルキル鎖、
【0091】
【化16】

=−H、−CH、−C
y=1〜10
z=0〜22
別の実施形態では、本発明は以下の構造を有するポリマーを提供し:
【0092】
【化17】

n>3
=任意のアルキル鎖。
【0093】
式(I)のカチオン性ポリマーおよび究極的に式(II)の双性イオンポリマーを作製するために有用である、式(III)の3つの代表的なカチオン性モノマーを図1に例示する。図1を参照すると、カチオン性カルボキシベタインエステル基を運ぶペンダント基を有する、3つの正荷電のポリアクリルアミドを例示する。3つのモノマーは、第四級アンモニウム基(カチオン性中心)とエステル(加水分解性)基:CBAA−1−エステル(n=1);CBAA−3−エステル(n=3);およびCBAA−5−エステル(n=5)との間に、異なるスペーサー基(L:−(CH−)を有する。モノマーの重合は、対応するカチオン性ポリマーを提供する。3つのモノマーは、線状ポリマーを形成するフリーラジカル重合を用いて、または、SPRセンサーにポリマーブラシを調製する表面開始ATRPを用いて重合させた。異なるスペーサー基(L)およびエステル基を有するポリマーは、異なる化学的、物理的および生物学的特性を有すると予想された。3つのモノマーの合成およびそれらの重合を、実施例1に記載する。
【0094】
フリーラジカル重合を通して重合された線状ポリマーについては、それらの分子量は、水溶液でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。ポリCBAA−1−エステル、ポリCBAA−3−エステルおよびポリCBAA−5−エステルは、それぞれ、14kDa、13kDaおよび9.6kDaの平均分子量であった。
【0095】
カチオン性ポリマーの加水分解は、双性イオンポリマー(すなわち、双性イオンポリカルボキシベタイン)を提供する。本発明の代表的なカチオン性ポリマーの加水分解は、実施例2で記載し、図2で図示する。図2で、nは1、3または5である(それぞれ、ポリCBAA−1−エステル、ポリCBAA−3−エステルおよびポリCBAA−5−エステルに対応する)。3つのカルボキシベタインエステルポリマーを異なる水酸化ナトリウム濃度の下で溶解し、それらの加水分解挙動を研究した。しばらくして、H NMRを用いてポリマーの上に保持されているエステル基を測定することによって、ポリマーの加水分解速度を分析した。すべての3つのポリマーは水中で安定であり、4日後に明白な加水分解は検出されなかった。NaOHの濃度は、カルボキシベタインエステルポリマーの加水分解のために重要である。図3は、NaOHの3つの異なる濃度で1時間処理した後の、ポリCBAA−3−エステルのNMRスペクトルを図示する。10mMの濃度のNaOH溶液については、わずかな加水分解が検出されただけであった(約3%)。100mM NaOH溶液については、約82%のポリマーが加水分解された。1MのNaOH濃度については、ポリマーは1時間で完全に加水分解された。図4は、時間の関数としての、100mMまたは10mMのNaOHの下での加水分解速度をグラフ化する。図4を参照すると、これらの2つのNaOH濃度の下で、ほとんどの加水分解は最初の1時間で起こる。その後、加水分解速度は時間とともにわずかに変化する。
【0096】
上記したように、本発明において有用であるカチオン性ポリマーの加水分解速度は、それらの構造を修飾することによって制御することができる。異なる加水分解挙動を得るために、エステル基(加水分解性基)、スペーサー基(LおよびL)および対イオン(X)などの様々な構造パラメータを有するカチオン性ポリマー。加水分解挙動は、ポリマー分子量を変えること、または他のモノマーと共重合することによって制御することもできる。加水分解性エステル基(例えばt−ブチルおよびアルキル置換シリル)または無水物基は、酸性または塩基性の条件下で容易に加水分解することができる。第四級アンモニウム基(カチオン性中心)とエステル(加水分解性)基との間のスペーサー基(L:−(CH−)を変えることも、加水分解速度を調整することができる。短いスペーサーは、加水分解速度を増加させることができる。さらに、親水性のアニオン(例えば、Cl、Br、I、SO)などの対イオンも加水分解速度を増加させ、低いポリマー分子量および他の親水性モノマーとの共重合も、加水分解速度を増加させるのを助ける。
【0097】
タンパク質吸着
本発明の加水分解性カチオン性ポリマーは、ポリマーで処理された表面へのタンパク質吸着の低減で有効な物質として、有利に用いることができる。カチオン性ポリマーは、低汚染性表面を調製するために用いることができる。これらの表面は、装置表面へのタンパク質吸着が有害である環境での装置のために、有利に使用することができる。
【0098】
低いタンパク質吸着を有する表面の提供における本発明において有用である代表的なカチオン性ポリマーの有用性を証明するために、実施例3に記載の代表的なカチオン性ポリマーからポリマーブラシを調製し、それらのタンパク質吸着を測定した。
【0099】
3つのモノマー(CBAA−1−エステル、CBAA−3−エステルおよびCBAA−5−エステル)を、表面開始ATRPを用いてSPRセンサーの表面に移植した。XPS分析からの推定で、ポリマーブラシは、厚さが5〜20nmであった。3つのポリマーブラシの上の1mg/mLフィブリノーゲン溶液からのタンパク質吸着を、SPRを用いて測定した。フィブリノーゲンは粘着性のタンパク質で、医用材料の上での血小板凝集および血液凝固で重要な役割を演ずる。ポリCBAA−1−エステル、ポリCBAA−3−エステルおよびポリCBAA−5−エステルのフィブリノーゲン吸着は、それぞれ195ng/cm、255ng/cmおよび600ng/cmであった(図5A〜5Cを参照)。全3つのポリマーは、それらの正電荷のために明白なタンパク質吸着を有する。ポリCBAA−1−エステルは、より疎水性のL(すなわち、それぞれC3およびC5)を有する他の2つのエステルと比較してそのより高い親水性のために、比較的より低いフィブリノーゲン吸着を有した。メチレンからプロピレン、さらにペンチレンへのLの増加に伴い、ポリマーの疎水性が増加し、より高いフィブリノーゲン吸着をもたらす。
【0100】
100mMで1〜2時間の加水分解の後、表面特性は劇的に変化した。図5A〜5Cは、3つのポリマーの各々を移植した表面が、フィブリノーゲン吸着に高度抵抗性である表面に変換されたことを示す。加水分解されたポリCBAA−1−エステルおよび加水分解されたポリCBAA−3−エステルを有する表面では、フィブリノーゲン吸着はSPRの検出限界である0.3ng/cm未満である。加水分解されたポリCBAA−5−エステルの上でのフィブリノーゲン吸着は、約1.5ng/cmであった。加水分解を制御することによって、ポリマー移植表面は、高タンパク質吸着からタンパク質吸着高抵抗性にそれらの特性を変えることができる。さらに、加水分解後に生じた双性イオンポリマーを有する表面は生体適合性であり、血液血漿/血清および細菌接着/ビオフィルム形成からの非特異的タンパク質吸着に高度抵抗性である。
【0101】
抗微生物特性
本発明において有用である加水分解性カチオン性ポリマーは、抗微生物性特性を示す。本発明において有用である代表的なカチオン性ポリマーの抗微生物性特性の評価は、実施例4では記載される。
【0102】
カチオン性ポリカルボキシベタインエステルの抗微生物特性を評価するために、ポリCBAA−1−エステル、ポリCBAA−3−エステルおよびポリCBAA−5−エステルのポリマー溶液を、E.coliとインキュベートした。2mMの濃度(反復単位モル濃度)で、ポリCBAA−1−エステル、ポリCBAA−3−エステルおよびポリCBAA−5−エステルは、それぞれ95%、87.3%および46.2%の生細胞割合を示すことが判明した(図6を参照)。抗微生物活性は、Lの長さの増加と一緒に増加するようである。加水分解後、双性イオンポリマー、ポリCBAA−1、ポリCBAA−3およびポリCBAA−5は、それぞれ、93.7%、96.3%および95.3%の生細胞割合を示し、抗微生物活性は、双性イオンポリマー(すなわち、ポリカルボキシベタイン)へのカチオン性ポリマー(すなわち、ポリカルボキシベタインエステル)の加水分解に従って低下することを示す。
【0103】
いくつかの両親媒性ポリカチオンを、それらの抗細菌活性について調査した。異なるポリカチオンの殺菌効率を比較するために、ポリカチオンのアルキルペンダント鎖長を調べた。第四級アミン基およびより長い疎水性ペンダント鎖を有するポリマーは、より高い疎水性のためにより良好な抗微生物活性を有することが分かる。カルボキシベタインエステルを有する小分子第四級アンモニウム化合物(QMC)は、それらがより長い炭化水素基を有する場合、速やかな殺菌作用を有することが見出された。これらのQMCは、腸内細菌の外膜および細胞質膜に結合し、細菌の膜内に浸透することができた。抗微生物効果は、本発明のカチオン性ポリマー(例えば、ポリカルボキシベタインエステル)のスペーサー長(L)を増加させることで高まる。
【0104】
ポリCBAA−5−エステルの抗微生物効力は、類似したアルキル鎖長を有する他の四級化ポリマーのそれと同等である。より高い抗微生物効力は、より長いアルキル鎖長(例えば、C1〜C20)で達成することができる。
【0105】
従来の抗微生物性コーティングについては、死滅微生物および吸着タンパク質が表面に通常集積し、それらの抗微生物活性を劇的に低下させる。対照的に、本発明において有用であるカチオン性ポリマーから作製される抗微生物性コーティングは、双性イオンポリマーに加水分解され、様々な生体分子の吸着に高度抵抗性である表面を提供する。これらの双性イオンポリマーは、バルク材としておよび表面コーティングとして、無毒性、生体適合性および非汚染性である。
【0106】
本発明において有用である代表的な架橋双性イオンポリマー、ポリカルボキシベタインヒドロゲルは、無細胞傷害性で、カブトガニの血球溶解成分(LAL)エンドトキシンアッセイキット(Cambrex Bioscience、Walkerville、MD)を用いると、0.06単位(EU)/mL未満のエンドトキシンを含む。ポリカルボキシベタインヒドロゲルは、最高4週間の間マウスの皮下に移植した。結果は、ポリカルボキシベタインが、移植のためによく受け入れられているモデルの医用材料であるポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)(ポリHEMA)ヒドロゲルのそれと同等のインビボ生体適合性を有することを示した。双性イオンポリマーの無毒特性は、それらのカチオン性ポリマー前駆体の毒性を変換し、死滅微生物および吸着タンパク質が表面に集積することを防止することができる非汚染特性をさらに提供する。
【0107】
切替可能なポリマーコーティングおよび船舶コーティングでのそれらの使用
双性イオンポリマーに加水分解性である本発明で有用なカチオン性ポリマーは、例えば船舶コーティングを含む様々な装置の表面のコーティングとして、有利に用いることができる。この実施形態では、本発明で有用なカチオン性ポリマーは、自己研磨性および非汚染性能力を有する切替可能な生体適合性ポリマー表面を提供する。
【0108】
図7は、自己研磨性および非汚染性能力を有する切替可能な生体適合性ポリマー表面の略図である。図7を参照すると、抗微生物性表面(a)は、細菌を効果的に死滅させる本発明の代表的なカチオン性ポリマー(すなわち、pCBMA−1 C2、図8を参照)でコーティングした表面である。加水分解の際(b)、代表的なカチオン性ポリマーは非汚染性双性イオンポリマー(すなわち、pCBMA−1、pCBMA−1 C2エステルに対応するカルボキシレート)に変換され、表面にとどまっている死細菌は非汚染性双性イオンポリマー(すなわち、pCBMA−1)から放出され(c)、双性イオンポリマーでコーティングされている表面を提供し、それは、細菌接着に高度抵抗性である(d)。
【0109】
上記の物質は、生体適合性、抗微生物性および非汚染性の表面を提供するために船舶表面をコーティングするために、有利に用いられる。したがって、別の態様では、本発明は、上記の1つまたは複数の物質が塗布された(例えば、コーティング、共有結合、イオン的に結合、疎水的に結合した)表面(すなわち、1つまたは複数の表面)を有する船舶装置および材料を提供する。物質で有利に処理すること、物質を含むように修飾することができ、または物質を組み込む代表的な海洋装置には、海洋船舶(例えば、ボートまたは船体)が含まれる。
【0110】
上記のように、一実施形態では、本発明は、非汚染性表面の利点を組み合わせ、1時間で99.9%を超えるEscherichia coli K12を死滅させることができ、カチオン性誘導体が非汚染性双性イオンポリマーに加水分解されると死菌の98%が放出される、切替可能なポリマー表面コーティングを提供する。pCBMA−1−C2(式(I)のカチオンポリマーであって、式中、Lは−C(=O)OCHCH−であり、Lは−CH−であり、RはCHCHであり、XはBrである)対照コーティングを、表面開始原子転移ラジカル重合(ATRP)によって、イニシエーターで被覆された金表面に移植した。得られたポリマーコーティングの、原子間力鏡検(AFM)によって測定した厚みは、26〜32nmであった(表1)。
【0111】
【表1】

pCBMA−1 C2表面の殺菌活性は、修正した文献方法(Tillerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA98巻:5981頁、2001年)に従ってE.coli K12を用いて測定した。恒久カチオン性ポリ(メタクリロイルオキシエチル−ジメチルオクチルアンモニウムブロミド)(pC8NMA、カチオン対照、図8を参照)、および双性イオンポリ(2−カルボキシ−N,N−ジメチル−N−[2’−(メタクリロイルオキシ)エチル]エタナミニウム)(pCBMA−2、双性イオン対照、図8を参照)を、それぞれ陽性対照および陰性対照の表面として用いた。抗微生物効果は、pCBMA−2表面のそれらと比較した、試験表面の生細胞の量と定義された。図9は、pCBMA−1 C2およびpC8NMA表面が、pCBMA−2表面と比較して、1時間でそれぞれ99.9%および99.6%を超えるE.coliを死滅させることを示す。陰性対照表面としても用いられた金表面の生細菌細胞の総数は、pCBMA−2表面のそれに類似している。
【0112】
E.coli K12の付着および放出は、加水分解の前後にpCBMA−1 C2表面で試験した。カチオン性pC8NMAおよび双性イオンpCBMA−2は、それぞれ陰性および陽性の非汚染性対照表面として、また、それぞれ陽性および陰性の抗微生物性対照表面として用いた。図10A〜10Fは、加水分解の前に大量の細菌がカチオン性pCBMA−1 C2およびpC8NMA表面に付着したが、双性イオンpCBMA−2表面には極めて少ない細菌細胞しか付着しなかったことを示す。pC8NMAと対照的に、pCBMA−1 C2は加水分解の後に大多数の細胞を放出したが、pCBMA−2は非汚染のままであった。図11は、加水分解の前後に全3つのポリマー表面にとどまっていた細菌細胞の量の定量データを示す。加水分解の前にはカチオン性pCBMA−1 C2およびpC8NMAの両方の表面に類似した量の細菌残留物があったが、pCBMA−2表面の付着細胞の量は、カチオン性pCBMA−1 C2およびpC8NMAの両方の表面のそれの0.3%未満である。細菌残留物の放出を試験するために、3つの表面をN−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPS)緩衝液(10mM、pH10.0)に37℃で8日間インキュベートした。pCBMA−1 C2表面はポリ(N−(カルボキシメチル)−N,N−ジメチル−2−[(2−メチル−1−オキソ−2−プロペン−1−イル)−オキシ]エタナミニウム)(pCBMA−1)に加水分解され、死細菌細胞の98%が放出された。対照的に、pC8NMA表面では死細胞の放出は観察されなかった(p>0.1)が、pCBMA−2表面は非常に低い細菌接着を保持した。
【0113】
付着細菌細胞の放出は、双性イオンpCBMA−1へのカチオン性pCBMA−1 C2の変換に依存する。ベタインエステルの加水分解速度は、いくつかの因子、例えば第四級アミンとカルボキシル基間のスペーサー(L)の長さ、加水分解性基の性質、温度およびpH値によって影響される。用いたエステル基のポリマー鎖の大多数が加水分解された。ベタインエステルの加水分解速度は、細菌細胞およびタンパク質が表面に付着した後にも、より遅い。1つのメチレンスペーサー(L)を有するpCBMA−1 C2を選択し、実験温度は、速い加水分解速度を達成し、生理的に関連した温度を提供するために37℃に設定した。タンパク質吸着結果(表2を参照)は、清潔なカチオン性pCBMA−1 C2表面は、37℃およびpH10.0でわずか24時間後に非汚染性双性イオン表面に加水分解されたが、非汚染性表面を形成し、10個の細胞・mL−1のE.coli K12懸濁液からの細菌の付着の後に細菌残留物を放出するのに、48時間を必要とすることを示した。1010個の細胞・mL−1の懸濁液から細菌細胞がpCBMA−1 C2表面に付着した場合、同じ加水分解条件の下で付着細菌の放出に8日を要した。
【0114】
表面の非汚染性特性を測定するために、様々な表面への非特異的タンパク質吸着を、表面プラズモン共鳴(SPR)センサーで測定した(表2を参照)。pCBMA−1 C2および対照表面の加水分解条件を、SPRセンサーによりインシトゥで調査した。図12Aおよび12Bは、pCBMA−1 C2および対照表面へのフィブリノーゲンの経時的吸着の、代表的なSPRセンサーグラムを示す。加水分解前のpCBMA−1 C2へのフィブリノーゲン吸着は、229.2ng・cm−2であった。CAPS緩衝液(pH10.0)との24時間のインキュベーションの後、pCBMA−1 C2表面への測定可能なタンパク質吸着はなかったが、そのことは、pCBMA−1 C2が非汚染性双性イオンpCBMA−1に完全に加水分解されることを示した。対照的に、pCBMA−1 C2の加水分解は、水またはN−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CEHS)緩衝液(pH9.0)のいずれでの24時間のインキュベーションの後にも完全でなかった。図12Bに示すように、表面を37℃で24時間CAPS緩衝液(pH10.0)とインキュベートした前後に、高いフィブリノーゲン吸着がpC8NMA表面で観察された。しかし、同一条件下でも、pCBMA−2表面は優れた非汚染特性を示し、2ng・cm−2未満のフィブリノーゲン吸収であった。この結果は、得られた双性イオン表面がタンパク質吸着に高度抵抗性であって、超低汚染性表面として適格であることを示す。
【0115】
この実施形態では、本発明は、抗微生物性および非汚染性の特性を組み込み、生体適合性である切替可能なポリマー表面を提供する。代表的なカチオン性ポリマー(すなわち、pCBMAの前駆体)は、細菌細胞を効果的に死滅させることができ、加水分解後に双性イオン非汚染性表面に切り替わり、死細菌細胞を放出する。さらに、生じた非汚染性双性イオン表面は、さらにタンパク質および微生物の付着を防止することができ、表面でのビオフィルムの形成を減少させることができる。抗微生物性から非汚染性表面への切替可能な過程は、適用の特定の要件のために、これらのポリマーの加水分解速度の調節を通して調整することができる。
【0116】
上記のように、本発明において有用であるカチオン性ポリマーは、疎水性の対イオンまたは治療活性(例えば、抗微生物性または抗細菌性の活性)を有する対イオンを含むことができる。サリチル酸対イオン(ポリCBMA−1 C2)を有する代表的なポリマーは、図13に例示するモノマー:CBMA−1 C2(「1」は2つの荷電基の間の1つの炭素を示し、「C2」はC2エステルを示す)から調製することができる。その対イオンとしてサリチル酸(SA)を加えたポリCBMA−1 C2ヒドロゲルは、1mM CBMA−1 C2 SAモノマー(図面13)を、1mlの溶媒(エチレングリコール:水:エタノール=1:2:1)中で0.05mMテトラエチレングリコールジメタクリレートと65℃で2時間共重合することによって調製した。生じたヒドロゲルは、脱イオン水に12時間浸した。ヒドロゲルは、直径1cmの円形ディスクに切断した。次に、ヒドロゲルディスクを、異なるpHおよびイオン強度の溶液に移し、25℃または37℃でインキュベートした。異なる時点で、水相を完全に除去し、新しい溶液を加えた。水相へのSAの放出は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定した。SAの放出速度は、時間で割った放出されたSAの量(mg/h)と定義される。pCBMA−1 C2 SAヒドロゲルからのSAの放出速度は、温度、イオン強度およびpHによって決まる。図14および図15は、より高いpHがSAの放出を促進し、より高いイオン強度がSAの放出速度をわずかに増加させることができることを示した。図14および図15を比較することによって、上昇温度が水およびリン酸緩衝食塩水(PBS)中でSAのより速い放出をもたらすことが観察される。SAの放出速度は、すべての条件で時間の関数として低下する。
【0117】
双性イオンポリマーに加水分解性である本発明で有用なカチオン性ポリマーは、例えばボートおよび船体を含む様々な海洋装置の表面のコーティングまたはコーティング成分として、有利に用いることができる。この実施形態では、本発明で有用なカチオン性ポリマーは、自己滅菌性および非汚染性能力を有する切替可能な生体適合性ポリマー表面を提供する。船舶コーティングとして塗布されるカチオン性ポリマーは、海水と接触すると、親水性の非汚染性コーティング(双性イオンコーティング)に変換する。
【0118】
図7は、自己滅菌性および非汚染性能力を有する切替可能な生体適合性ポリマー表面の略図である。図7を参照すると、抗微生物性表面(a)は、本発明の代表的なカチオン性ポリマー(すなわち、pCBMA−1 C2、図8を参照)でコーティングした表面である。加水分解の際(b)、代表的なカチオン性ポリマーは非汚染性双性イオンポリマー(すなわち、pCBMA−1、pCBMA−1 C2エステルに対応するカルボキシレート)に変換され、双性イオンポリマーでコーティングされている表面を提供し、それは、細菌接着に高度抵抗性である(d)。
【0119】
船舶コーティング用途では、官能的脱離/加水分解性基または官能的対イオンが特に有用である。これらの実施形態では、脱離/加水分解性基および/または対イオンは、有利には抗菌剤または殺生物剤である。本発明の船舶コーティング組成物は、殺生物剤の保存および放出に有効である。
【0120】
本発明は、長期塗布のための非汚染性船舶コーティングを提供する。これらの耐久性、非汚染性船舶コーティングは、海水との接触後、最外層が自己研磨性である。コーティングは、汚染放出または汚染防止技術と組み合わせてもよい。
【0121】
一実施形態では、船舶コーティングは、対イオンXのための疎水性イオンを有する、本発明で有用なカチオン性ポリマーを含む。この実施形態では、非汚染性船舶コーティングは、以下のポリマーの1つまたは複数を含む:(1)カチオン性ホモポリマー(すなわち、双性イオンモノマーの加水分解性前駆体の重合によって調製されるポリマー);(2)本発明のカチオン性モノマー(すなわち、双性イオンモノマーの加水分解性前駆体)および双性イオンもしくは疎水性のモノマーの共重合によって調製される共重合体;ならびに、(3)混合荷電モノマーの加水分解性前駆体の重合によって調製される共重合体。
【0122】
代表的なカチオン性ホモポリマーには、本発明で有用な上記カチオン性ポリマーならびに下の式(IV)および(V)のカチオン性ホモポリマーが含まれる。
【0123】
【化18】

式(IV)のカチオン性ポリマーは、ポリマー骨格に結合されるペンダント基にカチオン性中心を有する。式(V)のカチオン性ポリマーは、ポリマー骨格にカチオン性中心を有する。
【0124】
式(V)および(VI)のポリマーについては、Rは水素、メチルおよびエチルから選択され;RおよびRは、C1〜C20アルキルおよびフルオロアルキルから独立に選択され;Rは、C1〜C20アルキル、C6〜C12アリール、トリ(C1〜C8アルキル)シリル、アルキル銅、およびアルキル亜鉛から選択され;mは、1〜10の整数であり;pは、1〜10の整数であり;Rは、アンモニウム、イミダゾリウム、トリアザオリウム、ピリジニウム、モルホリニウム、オキサゾリジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピペラジニウムおよびピロリジニウム、および他の窒素塩基から選択されるカチオン性中心であり;Yは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、サルフェート、ナイトレート、パークロレート(ClO)、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド(N[SOCF)、トリフルオロメチルスルホネート(SOCF)、C1〜C20カルボキシレート(R−C(=O)O)、C1〜C20スルホネート(R−SO)、ラクテート、サリチレートおよびそれらの誘導体であり;nは、5〜約100,000である。
【0125】
本発明で有用な、疎水性の対イオンを有する式(IV)を有する代表的なカチオン性ホモポリマーの調製、ならびにそれらの自己研磨および非汚染性特性を、実施例5に記載する。式(IV)を有する本発明で有用な代表的なカチオン性ポリマーの水溶性を、表2に要約する。
【0126】
【表2】

本発明のカチオン性モノマー(すなわち、双性イオンモノマーの加水分解性前駆体)および双性イオンモノマーの共重合によって調製される代表的共重合体には、下の式(VI)の共重合体が含まれる。
【0127】
【化19】

混合荷電モノマーの加水分解性前駆体の重合によって調製される代表的共重合体には、下の式(VII)の共重合体が含まれる。
【0128】
【化20】

式(VI)および(VII)のポリマーについては、Rは水素、メチルおよびエチルから選択され;RおよびRは、C1〜C20アルキルおよびフルオロアルキルから独立に選択され;Rは、C1〜C20アルキル、C6〜C12アリール、トリ(C1〜C8アルキル)シリル、アルキル銅、およびアルキル亜鉛から選択され;mは、1〜10の整数であり;pは、1〜10の整数であり;kは、1〜10の整数であり;Rは、アンモニウム、イミダゾリウム、トリアザオリウム、ピリジニウム、モルホリニウム、オキサゾリジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピペラジニウムおよびピロリジニウム、および他の窒素塩基から選択されるカチオン性中心であり;Yは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、サルフェート、ナイトレート、パークロレート(ClO)、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド(N[SOCF)、トリフルオロメチルスルホネート(SOCF)、C1〜C20カルボキシレート(R−C(=O)O)、C1〜C20スルホネート(R−SO)、ラクテート、サリチレートおよびそれらの誘導体であり;nは、5〜約100,000であり、qは、5〜約100,000である。
【0129】
別の実施形態では、船舶コーティングは、結合剤ポリマーを含有するマトリックスに含まれる双性イオン(親水性)および疎水性の共重合体から形成されるナノ粒子を含む。ナノ粒子は、双性イオンおよび疎水性のブロックを有するブロック共重合体から、または、双性イオンモノマーと疎水性モノマーとのランダム共重合から形成される。ナノ粒子は、非汚染性船舶コーティング組成物として、加水分解性ポリマーを含む結合剤ポリマーと混合することができる。結合剤ポリマーは、ロジン、アクリルポリマー、ポリエステル、アミノ樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシおよびフェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリホスファゼン、ポリシロキサンおよびそれらの混合物またはそれらの修飾されたポリマーから選択される。
【0130】
双性イオンおよび疎水性のブロックを有することによって調製される代表的な共重合体、または双性イオンおよび疎水性のモノマーの共重合によって調製されるランダム共重合体には、下記の式(VIII)の共重合体が含まれる。
【0131】
【化21】

式(VIII)のポリマーについては、Rは、各出現時、水素、メチルおよびエチルから選択され;RおよびRは、C1〜C20アルキルおよびフルオロアルキルから独立に選択され;Rは、C1〜C20アルキル、C6〜C12アリール、トリ(C1〜C8アルキル)シリルから選択され;mは、1〜20の整数であり;pは、1〜20の整数であり;Rは、アンモニウム、イミダゾリウム、トリアザオリウム、ピリジニウム、モルホリニウム、オキサゾリジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピペラジニウムおよびピロリジニウム、および他の窒素塩基から選択されるカチオン性中心であり;nは、5〜約100,000であり、qは、5〜約100,000である。
【0132】
式(VII)を有する、本発明で有用な代表的なカチオン性共重合体の調製、およびそれらの非汚染性特性を、実施例6で記載する。
【0133】
さらなる実施形態では、船舶コーティングは、双性イオンおよびフッ素含有および/またはシリコーンポリマーを含む両親媒性ポリマーを含む。両親媒性ポリマーは、双性イオンモノマー単位または基を組み合わせるフッ素含有または/およびシリコーンポリマーを含む。
【0134】
シリコーン主鎖に付属するペルフルオロアルキル基を含有する移植された双性イオン側鎖を有する代表的な両親媒性ポリマーには、下の式(IX)および(X)の共重合体が含まれる。
【0135】
【化22】

式(IX)および(X)のポリマーについては、RおよびRは、C1〜C20アルキルおよびフルオロアルキルから独立に選択され;pは、1〜20の整数であり;qは、1〜20の整数であり;Rは、アンモニウム、イミダゾリウム、トリアザオリウム、ピリジニウム、モルホリニウム、オキサゾリジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピペラジニウムおよびピロリジニウム、および他の窒素塩基から選択されるカチオン性中心であり;mは、5〜約100,000であり、nは、2〜約100,000である。一実施形態では、pは、1〜10の整数である。一実施形態では、qは、1〜10の整数である。
【0136】
シロキサン骨格に移植されたフッ化双性イオンペンダント基を有する本発明の代表的なポリマーの調製を、実施例7に記載する。
【0137】
ポリマー骨格に付いているペルフルオロアルキル基を含有する移植された双性イオン側鎖を有する代表的な両親媒性ポリマーには、下の式(XI)および(XII)の共重合体が含まれる。
【0138】
【化23】

式(XI)および(XII)のポリマーについては、Rは水素、メチルおよびエチルから選択され;RおよびRは、C1〜C20アルキルおよびフルオロアルキルから独立に選択され;mは、1〜10の整数であり;pは、1〜10の整数であり;kは、1〜20の整数であり;iは、1〜20の整数であり;Rは、アンモニウム、イミダゾリウム、トリアザオリウム、ピリジニウム、モルホリニウム、オキサゾリジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピペラジニウムおよびピロリジニウム、および他の窒素塩基から選択されるカチオン性中心であり;nは5〜約100,000であり、qは5〜約100,000である。
【0139】
上記のように、非汚染性船舶コーティングは、以下のポリマーの1つまたは複数を含む:(1)カチオン性ホモポリマー(すなわち、双性イオンモノマーの加水分解性前駆体の重合によって調製されるポリマー);ならびに(2)本発明のカチオン性モノマー(すなわち、双性イオンモノマーの加水分解性前駆体)および双性イオンもしくは疎水性のモノマーの共重合によって調製される共重合体。これらの実施形態のために、双性イオンモノマーは、重合可能なカルボキシベタイン、重合可能なスルホベタイン、重合可能なホスホベタインおよび他の重合可能な双性イオン化合物から独立に選択される。双性イオンモノマーの加水分解性前駆体は、加水分解の際に双性イオン基を提供する加水分解性官能基を含む重合可能なカチオン性モノマーから選択される。上記の重合可能なカチオン性モノマーの対イオンは、親水性および/または疎水性のアニオン、それらの混合物またはそれらの修飾された親水性および/または疎水性のアニオンから選択される。混合荷電モノマーは、正荷電カチオン性部分および負荷電アニオン性部分を有する重合可能なモノマーから選択される。混合荷電モノマーは、混合荷電ポリマーに加水分解することができる、混合荷電モノマー単位の加水分解性前駆体から選択される。上記ポリマーの骨格は、アクリルポリマー、アクリルアミドポリマー、ポリエステル、アミノ樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシおよびフェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリホスファゼン、ポリシロキサンおよびそれらの混合物またはそれらの修飾されたポリマーから選択することができる。
【0140】
本発明の船舶用組成物は、他の汚染放出物質(例えば、シリコーンおよび/またはフッ素含有コーティング材)および/または汚染防止物質(例えば、金属化合物または殺生物剤)をさらに含むことができる。
【0141】
以下の実施例は、請求される発明を限定するのではなく、例示するために提供される。
【実施例】
【0142】
(実施例1)
代表的なカチオン性ポリマーの合成および特性評価
材料。N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド(>98%)を、TCI America、Portland、ORから購入した。ブロモ酢酸メチル(97%)、エチル4−ブロモ酪酸(≧97.0%)、エチル6−ブロモヘキサン酸(99%)、臭化銅(I)(99.999%)、臭化ブロモイソブチリル(BIBB98%)、11−メルカプト−1−ウンデカノール(97%)および2,2’−ビピリジン(BPY99%)、および2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN98%)を、Sigma−Aldrichから購入した。フィブリノーゲン(ウシ血漿からの分画I)およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4、0.15M、138mM NaCl、2.7mM KCl)を、Sigma Chemical Co.から購入した。エタノール(無水200プルーフ)は、AAPER Alcohol and Chemical Co.から購入した。実験で用いた水は、ミリポア純水装置を18.0MΩ.cmの最小比抵抗で用いて精製した
ω−メルカプトウンデシルブロモイソブチレート(1)を、Ilker, M. F.;Nuesslein, K.;Tew, G. N.;Coughlin, E. B.、「Tuning the Hemolytic and Antibacterial Activities of Amphiphilic Polynorbornene Derivatives」、Journal of the American Chemical Society126巻(48号):15870〜15875頁、2004年に記載の方法を用いて、BIBBおよび(2)の反応を通して合成した。
1H NMR (300 MHz, CDCl): 4.15 (t, J=6.9, 2H, OCH), 2.51 (q, J=7.5, 2H, SCH), 1.92 (s, 6H, CH), 1.57−1.72 (m, 4H, CH), および1.24−1.40 (m, 16H, CH).
カチオン性モノマー合成
CBAA−1−エステル:(2−カルボキシメチル)3−アクリルアミドプロピルジメチルアンモニウムブロミド、メチルエステル。
【0143】
N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド(25mmol)、ブロモ酢酸メチル(37.5mmol)およびアセトニトリル(25mL)を、100mL丸底フラスコに加えた。混合液を、室温で6時間、窒素雰囲気の下で撹拌した。沈殿物を収集し、約500mLの無水アセトンで洗浄した。溶媒を回転蒸発装置で除去し、白色粉末(96%収率)を得た。
1H NMR (300 MHz, DO): 2.02 (m, 2H, −CH−), 3.25 (s, 6H, N(CH), 3.37 (t, 2H, CH−N), 3.58 (m, 2H, CH−N), 3.79 (s, 3H, O−CH3), 4.29 (s, 2H, CH−C=O), 5.77 (m, 1H, CH=C−CON−trans); 6.19 (m, 1H, CH=C−CON− cis), 6.23 (m, 1H, =CH−CON−).
CBAA−3−エステル:(4−カルボキシプロピル)3−アクリルアミドプロピルジメチルアンモニウムブロミド、エチルエステル。
【0144】
N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド(50mmol)、エチル4−ブロモブチレート(60mmol)およびアセトニトリル(25mL)を、100mL丸底フラスコに加えた。混合液を、室温で3日間、窒素雰囲気の下で撹拌した。溶媒を回転蒸発装置で除去し、無色油(92%収率)を得た。
1H NMR (300 MHz, DO):1.22 (t, 3H CH), 2.00 (m, 4H, C−CH−C), 2.47 (t, 2H, CH−C=O), 3.06 (s, 6H, N(CH), 3.28−3.35 (6H, CH−NおよびCH−N−CH ), 4.14 (q, 2H, O−CH), 5.75 (m, 1H, CH=C−CON−trans); 6.19 (m, 1H, CH=C−CON− cis), 6.26 (m, 1H, =CH−CON−).
CBAA−5−エステル:(6−カルボキシペンチル)3−アクリルアミドプロピルジメチルアンモニウムブロミド、エチルエステル。
【0145】
N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド(50mmol)、エチル6−ブロモヘキサノエート(55mmol)およびアセトニトリル(25mL)を、100mL丸底フラスコに加えた。混合液を、45℃で5日間、窒素雰囲気の下で撹拌した。溶媒を回転蒸発装置で除去し、わずかに黄色を帯びた油(87%収率)を得た。
1H NMR (300 MHz, DO): 1.20 (t, 3H CH), 1.34 (m, 2H, C−C−CH−C−C), 1.60−1.72 (4H, C−CH−C−CH−C), 2.00 (m, 2H, N−C−CH−C−N), 2.34 (t, 2H, CH−C=O), 3.04 (s, 6H, N(CH), 3.24−3.37 (6H, CH−NおよびCH−N−CH), 4.12 (q, 2H, O−CH), 5.75 (m, 1H, CH=C−CON−trans); 6.20 (m, 1H, CH=C−CON− cis), 6.24 (m, 1H, =CH−CON−).
代表的なカチオン性ポリマーの合成
表面開始ATRP。3つのモノマー、CBAA−1−エステル、CBAA−3−エステルおよびCBAA−5−エステルを、表面開始ATRPを用いて金コーティングSPRセンサーチップまたは金コーティングシリコンチップに移植した。ポリマーブラシの調製および特性評価は、Zhang, Z.;Chen, S.;Chang, Y.;Jiang, S.、「Surface Grafted Sulfobetaine Polymers Via Atom Transfer Radical Polymerization as Superlow Fouling Coatings」、Journal of Physical Chemistry B110巻(22号):10799〜10804頁、2006年、およびZhang, Z.;Chen, S.;Jiang, S.、「Dual−Functional Biomimetic Materials: Nonfouling Poly(carboxybetaine) With Active Functional Groups for Protein Immobilization」、Biomacromolecules7巻(12号):3311〜3315頁、2006年に記載される。過去の刊行物。簡潔には、CuBr(1mmol)およびBr−チオールSAMを有するSPRチップまたは金ディスクを、窒素パージした反応試験管に入れた。CBAAエステル(6.5mmol)を有する脱気溶液(1:1の容量比の純水およびメタノール、10mL)およびBPY(2mmol、5mLの脱気したメタノール中)を、注射器で試験管に移した。窒素の下で1時間を超える反応の後、SPRチップまたは金ディスクを取り出し、エタノール、水およびPBS溶液で洗浄した。試料は、試験の前にPBS溶液で保存した。
【0146】
ポリマー合成および特性評価
メタノール中の約0.3MのCBAA−1−エステル溶液を、窒素で30分間パージした。次に、イニシエーターとして3モル%AIBNを用いて、窒素下60℃で約48時間重合を実施して、ポリCBAA−1−エステルを提供した。ポリCBAA−3−エステルまたはポリCBAA−5−エステルの調製のために、溶媒としてエタノールを用いて同様の方法を適用した。ポリマーをエチルエーテルで洗浄し、次に溶媒を除去した。ポリマーの構造は、NMRで確認した。
1H NMR (300 MHz, DO): ポリCBAA−1−エステル: 1.62 (br, 2H), 2.05 (br, 3H), 3.25−3.32 (br, 8H), 3.62 (br, 2H), 3.83 (s, 3H), 4.38 (s, 2H); ポリCBAA−3−エステル 1.21 (t, 3H), 1.61 (br, 2H), 2.04 (br, 5H), 2.50 (t, 2H), 3.37 (br, 6H), 3.12 (s, 6H), 4.14 (q, 2H); ポリCBAA−5−エステル: 1.22 (t, 3H), 1.37 (m, 2H), 1.62−1.80 (br m, 6H), 2.01 (br, 3H), 2.39 (t, 2H), 3.03 (s, 6H), 3.24 (br m, 6H), 4.12 (q, 2H).
線状ポリCBAAの分子量は、Waters Ultrahydrogel 1000カラムを備えたWaters Alliance 2695 Separations Moduleを用いて推定し、Waters 2414 Reflex Detectorで検出した。移動相は、0.5mL/分の流速の水溶液であった。器具およびカラムは、Polymer Laboratoriesからのポリ(エチレンオキシド)標準で較正した。すべての測定は、35℃で実施した。ポリマーの分子量は、WatersからのEmpower Proを用いて計算した。
【0147】
(実施例2)
代表的なカチオン性ポリマー加水分解
実施例1に記載のように調製されたカチオン性ポリマーを、50mg/mLの濃度で、異なる濃度(10mM、100mMおよび1M)のNaOH溶液に溶解させた。適当な時間の後、希HCl溶液でポリマー溶液を中和し、水は減圧除去した。1H NMR分光法(DO)を実施し、変化していないエステル基の量を測定し、内部標準として他の非加水分解性ペンダント基と比較することによって、分解速度を測定した。結果を、図3に示す。
【0148】
(実施例3)
代表的なカチオン性ポリマーのタンパク質吸着および放出
実施例1に記載のように調製されたカチオン性ポリマーを、表面プラズモン共鳴(SPR)によって、タンパク質吸着について評価した。
【0149】
タンパク質吸着は、波長調査に基づくカスタムメイドのSPRセンサーで測定した。SPRチップをプリズムの基部に付着させ、屈折率マッチング流体(Cargille)を用いて光学接触を確立した。2つの独立した並流チャネルを有する二重チャネル流動セルを用いて、実験の間、液体試料を封じ込めた。臑動ポンプ(Ismatec)を利用して、流動セルの2つのチャネルに液体試料を送達した。PBS(0.15M、pH7.4)中の1.0mg/mLのフィブリノーゲン溶液を、0.05mL/分の流速で表面に流した。表面感受性SPR検出器を用いて、リアルタイムでタンパク質−表面相互作用を監視した。表面濃度(単位面積質量)の変化を測定するために、波長シフトを用いた。結果を、図5A〜5Cに示す。
【0150】
(実施例4)
代表的なカチオン性ポリマーの抗微生物特性
実施例1に記載のように調製されたカチオン性ポリマーを、それらの抗微生物特性について評価した。
【0151】
LB寒天プレート上で、E.coli K12を37℃で一晩別々の純粋な培養で先ず培養し、次に、それを振盪させながら37℃で24時間インキュベートした。4℃で保存される場合、寒天プレート上の培養物は2週間にわたって用いることができる。数個のコロニーを用いて、25mlのLB(20g/L)に接種した。これらの最初の培養物は、37℃で振盪させながら100rpmで18時間インキュベートし、次に、200mlの適当な培地で各種の第二の培養物に接種するために用いた。第二の懸濁培養物が600nmで1.0の光学濃度に到達したとき、4℃で10分間の8,000×gでの遠心分離によって細菌を収集した。細胞ペレットを滅菌リン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)で3回洗浄し、その後、10個の細胞/mLの最終濃度にPBSで懸濁した。
【0152】
細菌細胞を含む培養物を、30℃で前平衡させて振盪させた上記のポリマー懸濁液に加えたときに、代表的なポリマー溶液への細菌細胞の曝露を開始し、混合液を室温で30分間インキュベートした。最終溶液は約10個の細胞/mLのE.coli、および2mMの反復単位T濃度を含み、それは、ポリマーの反復単位のモル濃度である(CBAAおよびCBAA−エステルの分子量に基づき約0.6〜0.76mg/mL)。細菌をLive/Dead BacLight(商標)(Invitrogen、USA)で染色し、その後、細菌懸濁液を0.2μm孔径のポリカーボネート膜フィルター(Millipore、USA)でろ過し、100×油浸油レンズ付きのNikon Eclipse 80iに載せたCCD−CoolSNAPカメラ(Roper scientific,Inc.、USA)で直接観察した。生細胞および死細胞の数を、Cheng, G.;Zhang, Z.;Chen, S.;Bryers, J. D.;Jiang, S.、「Inhibition of Bacterial Adhesion and Biofilm Formation on Zwitterionic Surfaces」、Biomaterials28巻(29号):4192〜4199頁、2007年に記載のものと同じ顕微鏡で、FITCおよびローダミンフィルターを通してそれぞれ測定した。結果を、図6に示す。
【0153】
(実施例5)
代表的な船舶コーティング組成物の調製および特性:疎水性対イオンを有するカチオン性ポリマー
疎水性対イオンを有し、船舶コーティングの成分として有用である代表的なカチオン性ポリマーの調製が記載される。コーティングの加水分解、自己研磨および非汚染性特性も記載される。
【0154】
代表的なカチオン性モノマーおよびポリマー(すなわち、カルボキシベタインメタクリル酸エステル(CBMA−エステル)モノマーおよびポリマー)の調製および疎水性イオンによるイオン交換を、図16に図示し、下に記載する。
【0155】
アルキルクロロアセテート。溶媒として硫酸およびベンゼンの存在下で、クロロ酢酸を対応するアルキルアルコールと一晩還流することによってアルキルクロロアセテートを調製した。得られたクロロ酢酸のエステルを減圧蒸留によって精製して、約70〜95%の収率で得た。
【0156】
ドデシルクロロアセテート。1−ドデカノール(0.2モル、37.27g)、クロロ酢酸(0.2モル、18.9g)、ベンゼン(200ml)および硫酸(2ml)の混合物を、12時間還流させた。反応の後、混合物を25%NaCO(100ml)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、次に蒸発させ、残留した液体を減圧の下で蒸留し、90%の収率で無色の油(bp 150℃/3mmHg)を得た。
【0157】
N−(メタクリロキシエチル−N−(アルキルアセテート)−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド。N−(メタクリロキシエチル−N−(アルキルアセテート)−N,N−ジメチルアンモニウムクロリドのカチオン性化合物を、アルキルクロロアセテートおよび2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートからほぼ量的収率で調製した。
【0158】
N−(メタクリロキシエチル−N−(ドデシルアセテート)−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド。2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(0.05モル、7.86g)(ドデシルクロロアセテート(0.06モル、15.75g)、アセトニトリル(50ml)を、50℃に2日間加熱した。反応の後、溶媒を蒸発させ、残留した化合物をエーテルで洗浄して、白色の固体を98%収率で得た。
【0159】
疎水性イオンを有するCBMA−エステルモノマー。疎水性のアニオンを有するカルボキシベタインメタクリル酸エステル(CBMA−エステル)モノマーを、複分解反応方法で合成した。
【0160】
N−(メタクリロキシエチル−N−(ドデシルアセテート)−N,N−ジメチルアンモニウムサリチレート。N−(メタクリロキシエチル−N−(ドデシルアセテート)−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(0.1モル、41.9g)、サリチル酸ナトリウム(0.12モル、19.2g)および水(400ml)の混合物を、50℃に2日間加熱した。反応の後、混合物をクロロホルム(500ml)で抽出し、クロロホルム抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、次に蒸発乾固させ、白色の固体、N−(メタクリロキシエチル−N−(ドデシルアセテート)−N,N−ジメチルアンモニウムサリチレートを90%収率で得た。
【0161】
CBMA−エステルポリマー。カルボキシベタインメタクリル酸エステル(CBMA−エステル)モノマーを、フリーラジカル重合法によって重合させた。
【0162】
N−(メタクリロキシエチル−N−(ドデシルアセテート)−N,N−ジメチルアンモニウムサリチレートの重合。窒素ガスの保護の下で、モノマーN−(メタクリロキシエチル−N−(ドデシルアセテート)−N,N-ジメチルアンモニウムサリチレート(0.1モル、46.4g)を500mlフラスコに入れ、クロロホルム(250ml)を加えた。混合物を65℃に10分間加熱した後に、開始剤AIBN(2,2’−アゾ−ビス(イソブチロニトリル))(0.47g)を溶液に加えた。反応を24時間続け、次にヘキサン(2L)に注いだ。ポリマーを、溶液中に沈殿させた。ろ過および乾燥の後、ポリマーを白色固体として85%の収率で得た。
【0163】
得られたポリマー、例えばポリ(N−(メタクリロキシエチル−N−(ドデシルアセテート)−N,N−ジメチルアンモニウムサリチレート)は疎水性であり、エステル基のサイズおよび疎水性イオンのタイプによって、水に溶解することができない。これらの疎水性ポリマーは、海水条件の下で親水性のポリ(カルボキシベタインメタクリレート)(CBMA)に加水分解することができる(図17を参照)。本発明で有用な代表的なカチオン性ポリマーの水溶性を、表2に示す。
【0164】
代表的な船舶コーティングの非汚染特性。酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)で試験したタンパク質吸着実験のために、疎水性のポリ(CBMA−エステル)をパネル(10mm×10mm)の上へスピンコートした。人工海水(図18を参照)および塩基性溶液(加速実験、図19を参照)中での加水分解時間を増加させることで、フィブリノーゲン吸着を30〜40%のレベルに減少させることができることが判明した。これらの疎水性ポリマー(p=2〜18およびY=サリチル酸イオン、表2および図17を参照)を、エポキシをプライマーとしてパネル(4”×8”)の上へ噴霧コートした。フロリダでの野外試験の結果の例を、図20に示す。フロリダでの野外試験では、2008年4月〜5月に、静電浸漬パネルをSebastian入江近くのIndian Riverラグーンで曝露させた。すべてのパネルを、1/2”亜鉛メッキメッシュケージング内の水面下1メートルに保持した。これらのパネルのデジタル写真を撮影した(図20を参照)。
【0165】
(実施例6)
代表的な船舶コーティング組成物の調製および特性:ブロック共重合体からのナノ粒子
船舶コーティングの成分として有用である代表的なナノ粒子の調製を記載する。コーティングの非汚染性特性も記載する。
【0166】
双性イオンブロック(スルホベタイン)および疎水性ブロックを有する代表的なブロック共重合体の調製を、図21に図示し、下に記載する。図21を参照すると、アルキルメタクリレートの重合によって疎水性のブロックを調製する。疎水性のブロックは、基転移重合(GTP)または原子転移ラジカル重合(ATRP)方法によって調製することができる。このジブロック共重合体は、疎水性ブロックおよびアミンモノマーを用いたGTPまたはATRPによって調製され、それが、その後四級化されて双性イオンブロックおよび疎水性ブロックを有するジブロック共重合体を提供するジブロック共重合体となる。
【0167】
スルホベタインメタクリレートおよびアルキルメタクリレートのジブロック共重合体は、基転移重合(GTP)または原子転移ラジカル重合(ATRP)方法と、それに続く1,3−プロパンスルトンによる四級化によって合成し、対応する双性イオン含有ジブロック共重合体を高収率で得ることができる。
【0168】
ドデシルメタクリレートおよびスルホベタインメタクリレートのブロック共重合体のATRP方法による合成方法は、以下の通りである。
【0169】
ブロック1。トルエン(100ml)を含有するSchlenkフラスコに、Cu(I)Br(0.002モル、0.29g)、2,2’−ジピリジル(0.006モル、0.95g)およびドデシルメタクリレート(0.1モル、25g)を加えた。溶液を15分間脱気し、90℃に10分間加熱した。次に、メチル2−ブロモプロピオン酸(0.002モル、0.334g)を溶液に加えた。反応の後、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)分析の前に、触媒残渣を塩基性アルミナのカラムを通すろ過によって除去した。ポリマーは、メタノール中への沈殿によって単離した。変換は、50℃の減圧オーブンで一定重量まで乾燥させることによる、重量測定によって測定した。
【0170】
ブロック2。トルエン(100ml)を含有するSchlenkフラスコに、Cu(I)Cl(0.002モル、0.20g)、PMDETA(1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン)(0.002モル、0.35g)および、ブロック1から得られたポリマー(20g)を加えた。溶液を15分間脱気し、90℃に10分間加熱した。次に、モノマー2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(0.13モル、20g)を溶液に加えた。反応の後、GPC分析の前に、触媒残渣を塩基性アルミナのカラムを通すろ過によって除去した。ポリマーは、メタノール中への沈殿によって単離した。変換は、50℃の減圧オーブンで一定重量まで乾燥させることによる、重量測定によって測定した。得られたブロックポリマーをTHF(200ml)に加え、過剰な1,3−プロパンスルホンを加えた。混合物を室温で24時間撹拌して、対応する双性イオン含有ジブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体は、疎水性有機溶媒または水溶液中で自然発生自己集合を起こし、ナノ粒子を形成する。
【0171】
船舶コーティング。ナノ粒子を加水分解性シリルエステル結合剤ポリマーと混合して、パネルの上にコーティングした。ハワイでの野外試験の結果を、図22に示す。ハワイでの野外試験については、試験サイトは、Ford Island、Pearl Harbor、Honolulu、Hawaiiの南部の埠頭であった。パネルは、埠頭の下の杭材の上に取り付けたラックからつるした。パネルは、2008年5月〜6月に、汚染生物および参集体の多様な群集に曝露させた。
【0172】
(実施例7)
代表的な船舶コーティング組成物の調製および特性:シロキサンコーティング
船舶コーティングの成分として有用である、フッ化カルボキシベタインおよびポリメチルヒドロシロキサンの双性移植ポリマーの調製を記載する。
【0173】
代表的な双性イオン移植ポリマーの調製を、図23に図示し、下に記載する。
【0174】
触媒としてHPtClを用いて、フッ素含有双性イオンアルケンを、ポリメチルヒドロシロキサンまたは他のシリコーン誘導体に加えることができる。得られたポリマーは、両親媒特性を有し、良好な汚染防止および汚染解除特性を有する。ポリメチルヒドロシロキサンへのフッ素含有双性イオン化合物の移植を調製する1つの方法は、以下の通りである。
【0175】
ポリ(メチルアルキルシロキサン)の合成は、様々な長さのαオレフィンとのポリ(メチルヒドロシロキサン)のヒドロシル化(hydrosilation)反応によって実施した。温度計、機械撹拌器および窒素パージを備えた三つ口丸底フラスコに、ポリ(メチルヒドロシロキサン)(20g)および乾燥トルエン(100ml)中の過剰なαオレフィンを加えた。次にクロロ白金酸(ヘキサクロロ白金酸(IV)(150ppm)を反応混合液に加え、それを60℃に3日間維持した。反応混合液をろ過して触媒を除去し、活性炭で1時間還流し、ろ過した。溶媒を、減圧下で除去した。過剰なαオレフィンを、減圧下で除去した。最後に、ポリマーを乾燥トルエン(100ml)で再び溶解し、過剰な多フッ化グルタル無水物を溶液に加え、室温で2日間加熱して、最終フッ化双性イオン移植ポリマーを得た。
【0176】
例示的な実施形態を例示し、記載したが、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、それに様々な変更を加えることができることはいうまでもない。
【0177】
排他的占有または特権が請求される本発明の実施形態は、添付の特許請求の範囲に定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリマー骨格;
(b)それぞれが第一のリンカーによって前記ポリマー骨格に共有結合している複数のカチオン性中心;
(c)各カチオン性中心に結合している対イオン;および
(d)第二のリンカーを介して各カチオン性中心に共有結合している加水分解性基であって、アニオン性中心に加水分解性であり、前記第二のリンカーを介して前記カチオン性中心に共有結合している前記アニオン性中心を有する双性イオンポリマーを提供する加水分解性基
を含むカチオン性ポリマーを含む船舶コーティング。
【請求項2】
前記ポリマーが、式
PB−(L−N(R)(R)−L−A(=O)−OR (X
を有し、式中、
PBはn個のペンダント基L−N(R)(R)−L−A(=O)−OR)を有するポリマー骨格であり;
はカチオン性中心であり;
およびRは、水素、アルキルおよびアリールから独立に選択され;
A(=O)−ORは、AがC、S、SO、PまたはPOからなる群から選択され、Rが1つまたは複数の置換基でさらに置換されてもよいアルキル、アリール、アシルまたはシリル基である加水分解性基であり;
は、前記カチオン性中心を前記ポリマー骨格に共有結合させるリンカーであり;
は、前記カチオン性中心を前記加水分解性基に共有結合させるリンカーであり;
は、前記カチオン性中心に結合している対イオンであり;
nは、約10〜約10,000の整数である、請求項1に記載の船舶コーティング。
【請求項3】
前記対イオンが疎水性の有機対イオンである、請求項1に記載の船舶コーティング。
【請求項4】
前記対イオンがC1〜C20カルボキシレートおよびC1〜C20アルキルスルホネートからなる群から選択される、請求項1に記載の船舶コーティング。
【請求項5】
前記対イオンが生物学的に活性である、請求項1に記載の船舶コーティング。
【請求項6】
前記対イオンが抗菌剤、抗細菌剤および抗真菌剤からなる群から選択される、請求項1に記載の船舶コーティング。
【請求項7】
前記対イオンがサリチレートである、請求項1に記載の船舶コーティング。
【請求項8】
前記加水分解性基が加水分解の際に疎水性の有機基を放出する、請求項1に記載の船舶コーティング。
【請求項9】
前記加水分解性基が加水分解の際にC1〜C20カルボキシレートを放出する、請求項1に記載の船舶コーティング。
【請求項10】
前記加水分解性基が加水分解の際に生物学的活性物質を放出する、請求項1に記載の船舶コーティング。
【請求項11】
前記加水分解性基が加水分解の際に抗菌剤、抗細菌剤または抗真菌剤を放出する、請求項1に記載の船舶コーティング。
【請求項12】
前記カチオン性中心が、アンモニウム、イミダゾリウム、トリアザオリウム、ピリジニウム、モルホリニウム、オキサゾリジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピペラジニウムおよびピロリジニウムからなる群から選択される、請求項1に記載の船舶コーティング。
【請求項13】
およびRが、C1〜C10直鎖および分枝状アルキル基からなる群から独立に選択される、請求項2に記載の船舶コーティング。
【請求項14】
が−C(=O)O−(CH−および−C(=O)NH−(CH−からなる群から選択され、式中、nは1〜20の整数である、請求項2に記載の船舶コーティング。
【請求項15】
が−(CH−であり、式中、nは1〜20の整数である、請求項2に記載の船舶コーティング。
【請求項16】
Aが、C、SOおよびPOからなる群から選択される、請求項2に記載の船舶コーティング。
【請求項17】
がC1〜C20アルキルである、請求項2に記載の船舶コーティング。
【請求項18】
が、ハライド、カルボキシレート、アルキルスルホネート、サルフェート;ナイトレート、パークロレート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、トリフルオロメチルスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、ラクテートおよびサリチレートからなる群から選択される、請求項2に記載の船舶コーティング。
【請求項19】
船舶コーティングであって、式
【化24】

を有する共重合体を含み、式中、
は各出現時に、水素、メチルおよびエチルからなる群から独立に選択され;
およびRは、C1〜C20アルキルおよびフルオロアルキルからなる群から独立に選択され;
は、C1〜C20アルキル、C6〜C12アリールおよびトリ(C1〜C8アルキル)シリルからなる群から選択され;
Rは、アンモニウム、イミダゾリウム、トリアザオリウム、ピリジニウム、モルホリニウム、オキサゾリジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピペラジニウムおよびピロリジニウムから選択されるカチオン性中心であり;
mは、1〜20の整数であり;
nは、5〜約100,000の整数であり;
pは、1〜20の整数であり;
qは、5〜約100,000の整数である、船舶コーティング。
【請求項20】
がC4〜C12アルキルである、請求項19に記載の船舶コーティング。
【請求項21】
船舶コーティングであって、式
【化25】

を有する共重合体を含み、式中、
およびRは、C1〜C20アルキルおよびフルオロアルキルから独立に選択され;
Rは、アンモニウム、イミダゾリウム、トリアザオリウム、ピリジニウム、モルホリニウム、オキサゾリジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピペラジニウムおよびピロリジニウムから選択されるカチオン性中心であり;
pは、1〜20の整数であり;
qは、1〜20の整数であり;
mは、5〜約100,000の整数であり;
nは、5〜約100,000の整数である、船舶コーティング。
【請求項22】
Rがアンモニウムである、請求項19から21のいずれか一項に記載の船舶コーティング。
【請求項23】
前記共重合体がブロック共重合体である、請求項19から21のいずれか一項に記載の船舶コーティング。
【請求項24】
結合剤ポリマーをさらに含む、請求項19から21のいずれか一項に記載の船舶コーティング。
【請求項25】
前記結合剤ポリマーが、ロジン、アクリルポリマー、ポリエステル、アミノ樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシおよびフェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリホスファゼン、ポリシロキサンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項24に記載の船舶コーティング。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか一項に記載のコーティングで処理された船舶基材の表面。
【請求項27】
前記基材が海洋船体である、請求項26に記載の表面。
【請求項28】
前記基材が海洋構造物である、請求項26に記載の表面。
【請求項29】
前記海洋構造物がプロペラ、潜望鏡またはセンサーである、請求項28に記載の表面。
【請求項30】
前記海洋構造物が船橋である、請求項28に記載の表面。
【請求項31】
前記海洋構造物が魚網である、請求項28に記載の表面。
【請求項32】
請求項1から25のいずれか一項に記載のコーティングを船舶基材の表面に塗布することを含む、船舶基材の表面を処理する方法。
【請求項33】
前記コーティングを塗布することがコーティングを噴霧することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記コーティングを塗布することがコーティングをペイントすることを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記基材が船体または海洋構造物である、請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A−10F】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【図23】
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【図20−1】
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【図20−2】
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【図20−3】
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【図20−4】
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【図20−5】
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【図22−1】
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【図22−2】
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【図22−3】
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【公表番号】特表2011−503332(P2011−503332A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534290(P2010−534290)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/084098
【国際公開番号】WO2009/067565
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(502457803)ユニヴァーシティ オブ ワシントン (93)
【Fターム(参考)】