船舶用の区画モジュール
【課題】厨房室等、閉鎖された区画を形成する船舶用の区画モジュールを提供する。
【解決手段】船体に外部から設置して、閉鎖された単位区画11を形成する船舶用の区画モジュール1において、単位区画11は、鋼板からなる床面12と、前記床面12上に複数の防火パネル131,141を組み付けて構成した壁面13及び天井面14とからなり、例えば船体の甲板に床面12を接面し、前記船体の甲板と床面12とを結合して設置する船舶用の区画モジュール1である。
【解決手段】船体に外部から設置して、閉鎖された単位区画11を形成する船舶用の区画モジュール1において、単位区画11は、鋼板からなる床面12と、前記床面12上に複数の防火パネル131,141を組み付けて構成した壁面13及び天井面14とからなり、例えば船体の甲板に床面12を接面し、前記船体の甲板と床面12とを結合して設置する船舶用の区画モジュール1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船体に外部から設置して、閉鎖された単位区画を形成する船舶用の区画モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般の船舶は、船体を複数の甲板で垂直方向複数層に分画し、各層の甲板に挟まれた空間を隔壁で水平方向複数区画に分画することにより、厨房室、配膳室、船員用又は乗船客用船室、操舵室、無線室、荷役制御室、通路室又は階段室、ロッカー室又はストアー室、機関室等の閉鎖された区画を形成する。前記甲板及び隔壁は鋼板製であり、船体に対して溶接により固定される。このため、鋼板製の甲板又は隔壁は、溶接熱による歪みを除去しなければならず、区画形成に手間が掛かるほか、各区画の艤装工事が難しくなる問題があった。この問題を解消するため、特許文献1〜特許文献4に見られるように、鋼板製の隔壁による分画に代えて、組立及び分解が容易なパネル材を用いて壁面及び天井面のみを船舶外で構成し、前記壁面及び天井面を甲板上に設置する区画ユニットが提案されている。
【0003】
確かに、上記区画ユニットは、鋼板を用いるより区画の形成が容易になるものの、区画に対する艤装工事が不十分である。そこで、特許文献5に見られるように、床面、壁面及び天井面すべてを含み、船体外の工場等で艤装工事まで済ませた厨房室モジュール(厨房室ユニット)が提案されている。前記厨房室モジュールは、鋼板製の隔壁(鋼壁)と上下の鋼板製の甲板(鋼甲板)とから構成され、隔壁の内面及び甲板の下面に補強用の形鋼が一体的に設けられた構成を開示している。前記隔壁は、外部隔壁と内部隔壁とからなる中空構造である。この厨房室モジュールは、防熱、内張り、舗装等の造作工事、厨房機器の据付け、配管、配線等の設備工事、通風、空調、照明の取付等の艤装工事が地上で実施される。具体的には、下部甲板にモルタルセメントを介してタイルが張られて床面が、外部隔壁の内面に防熱材が取り付けられ、隔壁の内側には側壁内張りがされて壁面が、そして上部甲板の下部に天井内張りが根太ピースを介して取り付けられて天井面が形成される。
【0004】
【特許文献1】特開平06-122392号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平07-205881号公報(請求項1)
【特許文献3】特開2000-118486号公報(請求項1)
【特許文献4】特開2000-198487号公報(請求項1)
【特許文献5】特開平06-072383号公報(請求項1、[0009])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献5が開示する厨房室モジュールは、従来船体内で実施されていた甲板及び隔壁による分画を、別途地上で実施して独立した区画モジュールを構成したものである。確かに、船体から独立した厨房室モジュールを構成することにより、船体の建造と厨房室モジュールの製造とを平行に進められたり、厨房室モジュールの艤装工事を容易にし、溶接熱による歪みの除去を要しない利点が得られる。しかし、特許文献5が開示する厨房室モジュールは、船体内を分画する甲板及び隔壁をそのまま利用した構成の壁面及び天井面を用いており、前記壁面及び天井面の形成作業に手間又は労力がかかるほか、厨房室モジュールの重量を増加させる問題がある。特に重量増加の問題は、例えば階段室等のより大きな区画モジュールを製造することを難しくし、特許文献5が開示する厨房室モジュールの構成では、汎用的な区画モジュールを構成しにくい問題をもたらす。
【0006】
特許文献5が開示する厨房室モジュールが、船体内を分画する甲板及び隔壁をそのまま利用して壁面及び天井面を形成した理由は明らかでないが、おそらく船舶の各区画に求められる防火規格を満足するためと推測される。船体内の上部甲板の各区画には、各区画の種類や用途によって、それぞれ最低限要求される防火規格が法定されている。例えば厨房室モジュールの場合、壁面及び天井面は国際海上人命安全条約の定めるA級防火規格を満足することが要求されている。従来の船舶では、前記A級規格に合格する壁面及び天井面として鋼板が用いられていたことから、特許文献5が開示する厨房室モジュールは鋼板を主材として壁面及び天井面に用いたものと考えられる。
【0007】
しかし、壁面及び天井面に鋼板を用いたために、完成された厨房室モジュールは非常に重くなり、上述したように、他の区画モジュールに同じ構成を採用できない問題が生じている。そこで、厨房室モジュールをはじめとして、船体に外部から設置し、厨房室、配膳室、船員用又は乗船客用船室、操舵室、無線室、荷役制御室、通路室又は階段室、ロッカー室又はストアー室、機関室等の閉鎖された区画を形成する船舶用の区画モジュールを開発するため、重量軽減を図りながら区画毎に求められるA級防火規格、B級防火規格又はH級防火規格のいずれか又はすべてを満足する壁面及び天井面を実現すべく、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果開発したものが、船体に外部から設置して、閉鎖された単位区画を形成する船舶用の区画モジュールにおいて、単位区画は、鋼板からなる床面と、前記床面上に複数の防火パネルを組み付けて構成した壁面及び天井面とからなり、船体の甲板に床面を接面し、前記船体の甲板と床面とを結合して設置する船舶用の区画モジュールである。本発明の区画モジュールは、従来同様防火性能に優れた鋼板により床面を構成し、防火パネルを組み付けて構成した壁面及び天井面を前記床面に被せて、防火性能に優れた区画を形成できる。これから、床面を構成する鋼板と壁面及び天井面を構成する鋼板とは同等の防火性能を有することが求められる。この区画モジュールは、床面に設けた吊り上げ部により吊り下げるとよい。
【0009】
壁面及び天井面を構成する防火パネルは、前記閉鎖された区画の種類に応じて要求される国際海上人命安全条約のA級防火規格又はB級防火規格を満足する壁面及び天井面を構成できればよい。例えば、薄鋼板(厚さ0.6mm前後)からなる中空パネルに断熱材(ロックウール)を充填した防火パネルを並び方向に実継構造で連結して、前記A級防火規格又はB級防火規格を満足する壁面及び天井面を構成できる。前記防火パネルは、厚さ数10mm程度となるが、従来区画を形成するために用いられていた隔壁を構成する鋼板(厚さ4.5mm以上)に比べて、軽量な壁面及び天井面を構成できる。
【0010】
本発明の区画モジュールは、閉鎖された区画の種類に応じて要求される防火性能を満たすため、床面を鋼板製としている。そこで、前記床板を更に構造部材として用いることにすれば、単位区画は、床面が船体の甲板を切り取った形状の鋼板に床フレームを組み付けた部分甲板構造とし、船体の甲板に設けた前記床面と同形状の開口に床面を嵌め込み、前記船体の甲板に床面又は床フレームの一方又は双方を結合して設置できる。これは、区画モジュールに甲板までを含めて地上での艤装工事を済ませることができることを意味するほか、船舶に設ける甲板の面積が少なくなり、それだけ船舶の建造作業を短縮できることを意味する。
【0011】
単位区画は、簡易に構成できながら、閉鎖された区画に要求される防火規格を満たすため、できる限り防火パネルのみで囲まれることが望ましい。これから、単位区画は、壁面の延在方向に連続する又は断続的に並ぶパネル受け具が床面に固着され、壁面が前記パネル受け具に下縁を嵌め込んで立設した複数の防火パネルを相互に組み付けて構成され、天井面が壁面を形成する防火パネルの上縁に取り付けたパネル支持具に架け渡された複数の防火パネルを相互に組み付けて構成する。
【0012】
具体的には、床面の周囲へ上向きに開いたチャンネル材を固着し、前記チャンネル材に複数の防火パネルの下縁を差し込み、かつ防火パネル相互を連結して並べ、こうして壁面を形成した防火パネルの上縁に内フランジを設けたチャンネル材を嵌合して、対向する位置関係にある前記内フランジに複数の防火パネルを架け渡し、かつ防火パネル相互を連結して並べる。各防火パネルは、床面に固着したチャンネル材や、壁面を形成する防火パネルの上縁に嵌合したチャンネル材とビス止め、ボルト止め等の固着手段により結合する。
【0013】
上述のように、本発明の区画モジュールは、単位区画を鋼板製の床面と防火パネルを組み付けた壁面及び天井面とから構成できる。しかし、単位区画の壁面又は天井面には、電線、給排水管、空調ダクト等を敷設する必要があり、防火パネルのみの壁面又は天井面では前記配線又は配管等を十分に支持できない。これから、単位区画は、壁面及び天井面を囲む補強柱及び補強梁からなる補強フレームを鋼板製の床面に対して設けるとよい。補強フレームは、船舶用の区画モジュールとしての構造強度を高め、例えば設置後の船舶から伝達される振動により床板が振動することを防止し、補強フレームに囲まれた防火パネルからなる壁面及び天井面のがたつきを防止する。
【0014】
本発明は、天井面、壁面及び床面で囲まれて閉鎖される区画に対して適用できる。これから、具体的な単位区画は、A級防火規格、B級防火規格又はH級防火規格のいずれか又はすべてを満足することが要求される厨房室、配膳室、船員用又は乗船客用船室、操舵室、無線室、荷役制御室、通路室又は階段室、ロッカー室又はストアー室(いわゆる倉庫)や機関室を挙げることができる。船員用船室は船長室、機関長室、一般乗員船室を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、船体に外部から設置し、閉鎖された区画を形成する船舶用の区画モジュールについて、軽量化を実現し、高い防火性能を付与する効果を有する。これは、防火パネルの使用により、重量軽減を図りながら区画毎に求められる防火規格に合格する床面、壁面又は天井面を構成できることによる効果である。既述したように、規格化された防火パネルを複数連結することにより、大小様々な床面、壁面又は天井面を形成できるため、本発明が適用できる単位区画は、厨房室、配膳室、船員用又は乗船客用船室、操舵室、無線室、荷役制御室、通路室又は階段室、ロッカー室又はストアー室、機関室等と多様である点にも特徴がある。
【0016】
こうして様々な区画に本発明を適用して船舶用の区画モジュールを構成できることは、各船舶用の区画モジュールが構成する区画についての艤装工事を、地上で実施できることを意味する。これにより、船体工事と艤装工事とを平行して進めることができるようになり、総じて船舶の建造に要する日数の短縮や、船体工事及び艤装工事をそれぞれ効率よく進められることからコスト低減の効果が得られるようになる。このほか、艤装工事の自由度が高められ、同一構成の船舶用の区画モジュールであっても、艤装仕様を容易に変更して、等級の差別化を図ることができ、船体の区画としての多様性を高めることができる効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は厨房室を単位区画11として本発明により構成した区画モジュール1の正面図、図2は単位区画11内を表した正面図、図3は本例の区画モジュール1の平面図、図4は単位区画11内を表した平面図、図5は本例の区画モジュール1の側面図、図6は単位区画11を構成する床面12、壁面13及び天井面14の組付関係を表す単位区画11の部分断面図、図7は壁面13及び天井面14の組付関係を表す単位区画11の部分斜視図、図8は壁面13及び天井面14の別例の組付関係を表す単位区画11の部分斜視図であり、図9は壁面13の角部における組付関係を表す単位区画11の部分斜視図である。本例は、本発明の適用が最も好ましい単位区画11として、厨房室を構成している。
【0018】
本例の区画モジュール1は、図1〜図5に見られるように、床面12、壁面13及び天井面14で囲まれた単位区画11と、前記単位区画11に被せた外観の補強フレーム15とから構成される。単位区画11は、実質的に厨房室を構成する主要部分で、船体の甲板2を切り取った形状の鋼板121に床フレーム122を組み付けた部分甲板構造の床面12と、前記床面12上に複数の防火パネル131,141を組み付けて構成した壁面13及び天井面14から構成される。補強フレーム15は、単位区画11に必要な電線、給排水管、空調ダクト142等(図中空調ダクト142で代表)の支持部分、かつ床面12を介して区画モジュール1としての剛性を高める補強部分で、単位区画11の床面12の四隅と長手方向の辺を3等分する位置とに前記床面12から立設した補強柱151と、前記補強柱151の上端に架け渡された補強梁152とから構成される。補強柱151は、床面12及び補強梁152に対して補強板153を宛てがって、床面12及び補強梁152に対する直交関係を強固に維持している。このように、本例の区画モジュール1は、鋼板121からなる床面12を共通にしながら、それぞれ独立して構成される単位区画11と補強フレーム15との二重構造になっている。
【0019】
単位区画11は、全体が直方体の空間として構成されている。本例では、正面から見て右寄りに、壁面13同様の防火パネル131及びドア132により仕切111を構成し、前記仕切111により分けられた大区画112及び小区画113を合わせて単位区画11とし、前記大区画112及び小区画113それぞれに、厨房室に必要な流し台114、食器収納庫115、第1調理機器116、第2調理機器117及び第3調理機器118等を壁面13に沿って配置している(図2及び図4参照)。厨房室への出入口となるドア132は、壁面13を構成する防火パネル131の一部を切り欠いて取り付けている。このほか、例えば補強フレーム15に支持させた空調ダクト142の開口1421を、防火パネル141を並べて構成した天井面14の一部を切り欠いて設けている。こうした流し台114、第1調理機器116、第2調理機器117及び第3調理機器118等の配置や、壁面13に対するドア132の取り付け、そして電線、給排水管、空調ダクト142等の設置や前記電線、給排水管、空調ダクト142等を流し台114、第1調理機器116、第2調理機器117及び第3調理機器118等に接続する作業、すなわち艤装作業は、船体作業を妨げることなく、区画モジュール1を構築する船外で効率よく、かつ容易に実施できる。
【0020】
具体的な単位区画11及び補強フレーム15は、次のように構成される。まず。単位区画11の壁面13は、図6及び図7に見られるように、床面12上に単位区画11の水平断面に沿ってC型鋼を下向きにして溶接により固着した基礎フレーム123を構成し、前記基礎フレーム123上へ上向きに開いたチャンネル材からなるパネル受け具133を溶接により固着して、前記パネル受け具133に沿って複数の防火パネル131を差し込むことにより構成する。パネル受け具133は、壁面13を構成する防火パネル131の並び方向を揃えるガイド部材としての役割も有しているため、本例のように連続する壁面13に沿って長尺なチャンネル材を用いることが望ましい。また、本例において、パネル受け具133を床面12に固着したC型鋼から構成される基礎フレーム123に対して固着するのは、床面12を構成する鋼板121の剛性を向上させると共に、薄い鋼板からなるチャンネル材の剛性を向上させ、壁面13の安定した立設状態を維持させるためである。
【0021】
単位区画11の天井面14は、図6及び図7に見られるように、壁面13を構成する防火パネル131に対して、前記パネル受け具133同様の内フランジ134を設けたチャンネル材からなるパネル支持具135を上方から嵌合し、前記パネル支持具135の内フランジ134に複数の防火パネル141を水平に架け渡すことにより、構成する。パネル支持具135は、壁面13を構成する防火パネル141の並び方向を揃えるガイド部材としての役割を有するほか、天井面14を構成する防火パネル141の水平面としての一体性を整えるガイド部材としての役割をも有することから、本例のように連続する天井面14に沿って長尺なチャンネル材を用いることが望ましい。しかし、同様なガイド部材として働くのであれば、図8に見られるように、内フランジ136を構成するアングル材からなるパネル支持具137を壁面13の防火パネル131の内側にビス止めし、前記パネル支持具137の内フランジ136に複数の防火パネル141を水平に架け渡すことにより、天井面14を構成してもよい。
【0022】
上記壁面13及び天井面14を構成する防火パネル131,141は、実継構造により相互に隙間なく連結し、パネル受け具133又はパネル支持具135にそれぞれビス止めされて、相互に拘束され、位置固定される。ここで、四方の壁面13に対する天井面14は、前記各壁面13の上縁にパネル支持具135が嵌合される(図7参照)又はビス止めされる(図8参照)ので、壁面13と天井面14とには隙間が生じない。また、例えば正面側の壁面13と側面側の壁面13との角部では、図9に見られるように、内側からアングル材からなるパネル継ぎ部材138を宛ててビス止めすることにより、両壁面13を構成する防火パネル131相互の隙間を完全に塞ぐことができる。このように隙間のない連続面となる壁面13及び天井面14が、国際海上人命安全条約のA級防火規格、B級防火規格又はH級防火規格のいずれか又はすべてを満足すれば、床面12が鋼板121から構成されていることと合わせ、本例の単位区画11はA級防火規格、B級防火規格又はH級防火規格のいずれか又はすべてを満たすことになる。
【0023】
本例の防火パネル131は、1枚の薄鋼板(0.6mm厚)を折り曲げて表面及び裏面を形成した中空パネル内にロックウール等の断熱材を充填した構造である。防火パネル131を連結すると、一方の防火パネル131の薄鋼板が開いた実継の凸条1311,1411は、他方の防火パネル131の薄鋼板を折り曲げて形成される実継の凹溝1312,1412に嵌め込まれるため、完全に隠れてしまう。この結果、壁面13又は天井面14は、薄鋼板が連続する内面及び外面の間に断熱材を充填した構造となり、高い断熱性を実現する。また、実継の凸条1311,1411及び凹溝1312,1412が深ければ、長時間の罹災による変形によっても前記凸条1311,1411及び凹溝1312,1412の嵌合関係が崩れず、炎が貫通する虞もない。こうして、本例の単位区画11は、国際海上人命安全条約のA級防火規格を十分に満たすことができる。
【0024】
実際の単位区画11では、床面12を構成する鋼板121に化粧タイル等の床面被覆材125を敷き詰めたり(図6参照)、壁面13又は天井面14を構成する複数の防火パネル131にわたって化粧シートを貼着し、外観を整え、それぞれ質感を向上させることができる。例えば、本例のように単位規格が厨房室である場合、床面12は排水性に優れることが好まれるため、撥水性のある化粧タイルを敷き詰めるとよい。また、壁面13は複数の防火パネル131にわたってステンレスフィルムを貼着することにより、壁面13としての外観上の一体性を高め、壁面13全体の質感を向上させるほか、防火性をも高めることができる。本発明の区画モジュール1は船外で構築できるため、前記化粧タイル又は化粧シートを取り付ける艤装工事も自由であり、結果として従来に比べて高品質の厨房室を提供できるようになる。
【0025】
補強フレーム15は、図1、図3、図5及び図6に見られるように、床面12を構成する鋼板121に組み付けられる床フレーム122と共に、区画モジュール1の構造強度を確保する強度要素(強度メンバー)を構成する。本例の区画モジュール1は、上述したように、部分甲板構造の床面12としており、船舶の甲板2に設けられる開口21に嵌め込んで設置される。これから、床面12には甲板相当の構造強度が求められる。そこで、本例の床面12は、大型のC型鋼を四角形に組んだ床フレーム122を鋼板121の下面に溶接により固着し、I型鋼からなる接地部1221を前記床フレーム122に溶接により固着している。これから、本例の区画モジュール1は、床フレーム122及び補強フレーム15から構成される直方体形状の枠体の前記床フレーム122に鋼板121を載せて固着することにより床面12を形成し、前記床面12に防火パネル131を組み付けた壁面13及び天井面14を形成することにより、単位区画11を構成した構造と見ることもできる。
【0026】
床フレーム122は、鋼板121より小さく組まれ、床フレーム122から鋼板121が突出する接合フランジ1211を形成している。この接合フランジ1211は、甲板2に設けた開口21に対して上方から係合し、区画モジュール1を甲板2に設置する際の接合要素として機能する(図6参照)。また、鋼板121には、図5に見られるように、区画モジュール1をクレーン3(吊り下げワイヤで代表)等で吊り上げるための吊り上げ部124を4基設けている。本例の吊り上げ部124は、壁面13に直交して張り出す円弧状の鋼板1241に、クレーン3等のフック31を係合する係合孔1242を開口した構造である。床面12は、床フレーム122と、壁面13の基礎となるC型鋼とにより剛性が高められているため、区画モジュール1を吊り上げる際に撓まない十分な剛性を備えている。
【0027】
船外で構築された区画モジュール1が、補強フレーム15に倣う外形状が既存コンテナの規格に従った外形及び大きさであれば、例えばトラック等で陸上輸送することができる。本例の厨房室の区画モジュール1は、こうしたコンテナ用の陸上輸送を考慮して、コンテナの規格に倣った外形及び大きさの略直方体の外形及び大きさにしている。この場合、図示を省略するが、複数の区画モジュール1を並べる又は重ねることで、大きな単位区画11を構成できる。そして、各区画モジュール1の外形及び大きさをコンテナの規格に揃えることで、区画モジュール1自体が規格化され、製造コストの低減や取り扱いが容易になる等の利点を得ることができる。
【0028】
本発明の区画モジュールは、天井面、壁面及び床面で囲まれて閉鎖される区画に対して適用できることから、上記例示の厨房室のほか、A級防火規格、B級防火規格又はH級防火規格のいずれか又はすべてを満足することが要求される配膳室、船員用又は乗船客用船室、操舵室、無線室、荷役制御室、通路室又は階段室、ロッカー室又はストアー室や機関室にも適用できる。図10は本発明を適用して構成された階段室である単位区画41からなる区画モジュール4の斜視図であり、図11は本発明を適用して構成されたロッカー室である単位区画51からなる区画モジュール5の参考図である。前記階段室及びロッカー室となる区画モジュール4,5の基本構成は、上記例示の厨房室となる区画モジュール1と同様であるが、それぞれの用途によって一部構成が異なっている。
【0029】
階段室は、図10に見られるように、各層に分かれた甲板相互を繋ぐ区画であることから、前記各層に対応した踊り場とした床面42を有する複数の単位区画41に対し、前記各単位区画41の各床面42を階段411やそれぞれの補強フレーム45で繋ぐことにより一体の区画モジュール4として構成される。すなわち、階段室である単位区画41からなる区画モジュール4は、上層の単位区画41の床面42が下層の単位区画41の天井となることから、最上層の単位区画41のみ天井面44を設け、前記最上層以外の単位区画41は上層の単位区画41の床面42に壁面43を連結することで天井面を省略できる。ここで、上述したように、各単位区画41をコンテナの外形及び大きさに合わせて規格化した場合、個々の単位区画41の陸上輸送及び取り扱いが容易になる利点がある。
【0030】
ロッカー室は、図11に見られるように、上記例示(図1〜図9参照)の厨房室同様に単位区画51をそのまま区画モジュール5とすることもできるが、本例では2つの単位区画51を並べて、一体の区画モジュール5とし、大きな収容空間のロッカー室を形成している。本例の場合、図11中前後に単位区画51を並べており、手前側の単位区画51は奥側の壁面を、また奥側の単位区画51は手前側の壁面をそれぞれ設けることなく、連通面としている。これから、各単位区画51の床面52は溶接により、また天井面54や壁面53は専用の介装部材531,541で繋ぎ、隙間を塞ぐ。この際、各単位区画51の補強フレーム55も連結することが望ましい。ロッカー室に具える棚511は、各単位区画51毎に設置して、前記単位区画51同様に連結してもよいし、両単位区画51を設置した後から取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】厨房室を単位区画として本発明により構成した区画モジュールの正面図である。
【図2】単位区画内を表した正面図である。
【図3】本例の区画モジュールの平面図である。
【図4】単位区画内を表した平面図である。
【図5】本例の区画モジュールの側面図である。
【図6】単位区画を構成する床面、壁面及び天井面の組付関係を表す単位区画の部分断面図である。
【図7】壁面及び天井面の組付関係を表す単位区画の部分斜視図である。
【図8】壁面及び天井面の別例の組付関係を表す単位区画の部分斜視図である。
【図9】壁面の角部における組付関係を表す単位区画の部分斜視図である。
【図10】本発明を適用して構成された階段室である単位区画からなる区画モジュールの斜視図である。
【図11】本発明を適用して構成されたロッカー室である単位区画からなる区画モジュールの参考図である。
【符号の説明】
【0032】
1 区画モジュール
11 単位区画
12 床面
121 鋼板
122 床フレーム
13 壁面
131 防火パネル
133 パネル受け具
135 パネル支持具
14 天井面
141 防火パネル
15 補強フレーム
151 補強柱
152 補強梁
2 甲板
3 クレーン
4 区画モジュール
5 区画モジュール
【技術分野】
【0001】
本発明は、船体に外部から設置して、閉鎖された単位区画を形成する船舶用の区画モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般の船舶は、船体を複数の甲板で垂直方向複数層に分画し、各層の甲板に挟まれた空間を隔壁で水平方向複数区画に分画することにより、厨房室、配膳室、船員用又は乗船客用船室、操舵室、無線室、荷役制御室、通路室又は階段室、ロッカー室又はストアー室、機関室等の閉鎖された区画を形成する。前記甲板及び隔壁は鋼板製であり、船体に対して溶接により固定される。このため、鋼板製の甲板又は隔壁は、溶接熱による歪みを除去しなければならず、区画形成に手間が掛かるほか、各区画の艤装工事が難しくなる問題があった。この問題を解消するため、特許文献1〜特許文献4に見られるように、鋼板製の隔壁による分画に代えて、組立及び分解が容易なパネル材を用いて壁面及び天井面のみを船舶外で構成し、前記壁面及び天井面を甲板上に設置する区画ユニットが提案されている。
【0003】
確かに、上記区画ユニットは、鋼板を用いるより区画の形成が容易になるものの、区画に対する艤装工事が不十分である。そこで、特許文献5に見られるように、床面、壁面及び天井面すべてを含み、船体外の工場等で艤装工事まで済ませた厨房室モジュール(厨房室ユニット)が提案されている。前記厨房室モジュールは、鋼板製の隔壁(鋼壁)と上下の鋼板製の甲板(鋼甲板)とから構成され、隔壁の内面及び甲板の下面に補強用の形鋼が一体的に設けられた構成を開示している。前記隔壁は、外部隔壁と内部隔壁とからなる中空構造である。この厨房室モジュールは、防熱、内張り、舗装等の造作工事、厨房機器の据付け、配管、配線等の設備工事、通風、空調、照明の取付等の艤装工事が地上で実施される。具体的には、下部甲板にモルタルセメントを介してタイルが張られて床面が、外部隔壁の内面に防熱材が取り付けられ、隔壁の内側には側壁内張りがされて壁面が、そして上部甲板の下部に天井内張りが根太ピースを介して取り付けられて天井面が形成される。
【0004】
【特許文献1】特開平06-122392号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平07-205881号公報(請求項1)
【特許文献3】特開2000-118486号公報(請求項1)
【特許文献4】特開2000-198487号公報(請求項1)
【特許文献5】特開平06-072383号公報(請求項1、[0009])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献5が開示する厨房室モジュールは、従来船体内で実施されていた甲板及び隔壁による分画を、別途地上で実施して独立した区画モジュールを構成したものである。確かに、船体から独立した厨房室モジュールを構成することにより、船体の建造と厨房室モジュールの製造とを平行に進められたり、厨房室モジュールの艤装工事を容易にし、溶接熱による歪みの除去を要しない利点が得られる。しかし、特許文献5が開示する厨房室モジュールは、船体内を分画する甲板及び隔壁をそのまま利用した構成の壁面及び天井面を用いており、前記壁面及び天井面の形成作業に手間又は労力がかかるほか、厨房室モジュールの重量を増加させる問題がある。特に重量増加の問題は、例えば階段室等のより大きな区画モジュールを製造することを難しくし、特許文献5が開示する厨房室モジュールの構成では、汎用的な区画モジュールを構成しにくい問題をもたらす。
【0006】
特許文献5が開示する厨房室モジュールが、船体内を分画する甲板及び隔壁をそのまま利用して壁面及び天井面を形成した理由は明らかでないが、おそらく船舶の各区画に求められる防火規格を満足するためと推測される。船体内の上部甲板の各区画には、各区画の種類や用途によって、それぞれ最低限要求される防火規格が法定されている。例えば厨房室モジュールの場合、壁面及び天井面は国際海上人命安全条約の定めるA級防火規格を満足することが要求されている。従来の船舶では、前記A級規格に合格する壁面及び天井面として鋼板が用いられていたことから、特許文献5が開示する厨房室モジュールは鋼板を主材として壁面及び天井面に用いたものと考えられる。
【0007】
しかし、壁面及び天井面に鋼板を用いたために、完成された厨房室モジュールは非常に重くなり、上述したように、他の区画モジュールに同じ構成を採用できない問題が生じている。そこで、厨房室モジュールをはじめとして、船体に外部から設置し、厨房室、配膳室、船員用又は乗船客用船室、操舵室、無線室、荷役制御室、通路室又は階段室、ロッカー室又はストアー室、機関室等の閉鎖された区画を形成する船舶用の区画モジュールを開発するため、重量軽減を図りながら区画毎に求められるA級防火規格、B級防火規格又はH級防火規格のいずれか又はすべてを満足する壁面及び天井面を実現すべく、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果開発したものが、船体に外部から設置して、閉鎖された単位区画を形成する船舶用の区画モジュールにおいて、単位区画は、鋼板からなる床面と、前記床面上に複数の防火パネルを組み付けて構成した壁面及び天井面とからなり、船体の甲板に床面を接面し、前記船体の甲板と床面とを結合して設置する船舶用の区画モジュールである。本発明の区画モジュールは、従来同様防火性能に優れた鋼板により床面を構成し、防火パネルを組み付けて構成した壁面及び天井面を前記床面に被せて、防火性能に優れた区画を形成できる。これから、床面を構成する鋼板と壁面及び天井面を構成する鋼板とは同等の防火性能を有することが求められる。この区画モジュールは、床面に設けた吊り上げ部により吊り下げるとよい。
【0009】
壁面及び天井面を構成する防火パネルは、前記閉鎖された区画の種類に応じて要求される国際海上人命安全条約のA級防火規格又はB級防火規格を満足する壁面及び天井面を構成できればよい。例えば、薄鋼板(厚さ0.6mm前後)からなる中空パネルに断熱材(ロックウール)を充填した防火パネルを並び方向に実継構造で連結して、前記A級防火規格又はB級防火規格を満足する壁面及び天井面を構成できる。前記防火パネルは、厚さ数10mm程度となるが、従来区画を形成するために用いられていた隔壁を構成する鋼板(厚さ4.5mm以上)に比べて、軽量な壁面及び天井面を構成できる。
【0010】
本発明の区画モジュールは、閉鎖された区画の種類に応じて要求される防火性能を満たすため、床面を鋼板製としている。そこで、前記床板を更に構造部材として用いることにすれば、単位区画は、床面が船体の甲板を切り取った形状の鋼板に床フレームを組み付けた部分甲板構造とし、船体の甲板に設けた前記床面と同形状の開口に床面を嵌め込み、前記船体の甲板に床面又は床フレームの一方又は双方を結合して設置できる。これは、区画モジュールに甲板までを含めて地上での艤装工事を済ませることができることを意味するほか、船舶に設ける甲板の面積が少なくなり、それだけ船舶の建造作業を短縮できることを意味する。
【0011】
単位区画は、簡易に構成できながら、閉鎖された区画に要求される防火規格を満たすため、できる限り防火パネルのみで囲まれることが望ましい。これから、単位区画は、壁面の延在方向に連続する又は断続的に並ぶパネル受け具が床面に固着され、壁面が前記パネル受け具に下縁を嵌め込んで立設した複数の防火パネルを相互に組み付けて構成され、天井面が壁面を形成する防火パネルの上縁に取り付けたパネル支持具に架け渡された複数の防火パネルを相互に組み付けて構成する。
【0012】
具体的には、床面の周囲へ上向きに開いたチャンネル材を固着し、前記チャンネル材に複数の防火パネルの下縁を差し込み、かつ防火パネル相互を連結して並べ、こうして壁面を形成した防火パネルの上縁に内フランジを設けたチャンネル材を嵌合して、対向する位置関係にある前記内フランジに複数の防火パネルを架け渡し、かつ防火パネル相互を連結して並べる。各防火パネルは、床面に固着したチャンネル材や、壁面を形成する防火パネルの上縁に嵌合したチャンネル材とビス止め、ボルト止め等の固着手段により結合する。
【0013】
上述のように、本発明の区画モジュールは、単位区画を鋼板製の床面と防火パネルを組み付けた壁面及び天井面とから構成できる。しかし、単位区画の壁面又は天井面には、電線、給排水管、空調ダクト等を敷設する必要があり、防火パネルのみの壁面又は天井面では前記配線又は配管等を十分に支持できない。これから、単位区画は、壁面及び天井面を囲む補強柱及び補強梁からなる補強フレームを鋼板製の床面に対して設けるとよい。補強フレームは、船舶用の区画モジュールとしての構造強度を高め、例えば設置後の船舶から伝達される振動により床板が振動することを防止し、補強フレームに囲まれた防火パネルからなる壁面及び天井面のがたつきを防止する。
【0014】
本発明は、天井面、壁面及び床面で囲まれて閉鎖される区画に対して適用できる。これから、具体的な単位区画は、A級防火規格、B級防火規格又はH級防火規格のいずれか又はすべてを満足することが要求される厨房室、配膳室、船員用又は乗船客用船室、操舵室、無線室、荷役制御室、通路室又は階段室、ロッカー室又はストアー室(いわゆる倉庫)や機関室を挙げることができる。船員用船室は船長室、機関長室、一般乗員船室を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、船体に外部から設置し、閉鎖された区画を形成する船舶用の区画モジュールについて、軽量化を実現し、高い防火性能を付与する効果を有する。これは、防火パネルの使用により、重量軽減を図りながら区画毎に求められる防火規格に合格する床面、壁面又は天井面を構成できることによる効果である。既述したように、規格化された防火パネルを複数連結することにより、大小様々な床面、壁面又は天井面を形成できるため、本発明が適用できる単位区画は、厨房室、配膳室、船員用又は乗船客用船室、操舵室、無線室、荷役制御室、通路室又は階段室、ロッカー室又はストアー室、機関室等と多様である点にも特徴がある。
【0016】
こうして様々な区画に本発明を適用して船舶用の区画モジュールを構成できることは、各船舶用の区画モジュールが構成する区画についての艤装工事を、地上で実施できることを意味する。これにより、船体工事と艤装工事とを平行して進めることができるようになり、総じて船舶の建造に要する日数の短縮や、船体工事及び艤装工事をそれぞれ効率よく進められることからコスト低減の効果が得られるようになる。このほか、艤装工事の自由度が高められ、同一構成の船舶用の区画モジュールであっても、艤装仕様を容易に変更して、等級の差別化を図ることができ、船体の区画としての多様性を高めることができる効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は厨房室を単位区画11として本発明により構成した区画モジュール1の正面図、図2は単位区画11内を表した正面図、図3は本例の区画モジュール1の平面図、図4は単位区画11内を表した平面図、図5は本例の区画モジュール1の側面図、図6は単位区画11を構成する床面12、壁面13及び天井面14の組付関係を表す単位区画11の部分断面図、図7は壁面13及び天井面14の組付関係を表す単位区画11の部分斜視図、図8は壁面13及び天井面14の別例の組付関係を表す単位区画11の部分斜視図であり、図9は壁面13の角部における組付関係を表す単位区画11の部分斜視図である。本例は、本発明の適用が最も好ましい単位区画11として、厨房室を構成している。
【0018】
本例の区画モジュール1は、図1〜図5に見られるように、床面12、壁面13及び天井面14で囲まれた単位区画11と、前記単位区画11に被せた外観の補強フレーム15とから構成される。単位区画11は、実質的に厨房室を構成する主要部分で、船体の甲板2を切り取った形状の鋼板121に床フレーム122を組み付けた部分甲板構造の床面12と、前記床面12上に複数の防火パネル131,141を組み付けて構成した壁面13及び天井面14から構成される。補強フレーム15は、単位区画11に必要な電線、給排水管、空調ダクト142等(図中空調ダクト142で代表)の支持部分、かつ床面12を介して区画モジュール1としての剛性を高める補強部分で、単位区画11の床面12の四隅と長手方向の辺を3等分する位置とに前記床面12から立設した補強柱151と、前記補強柱151の上端に架け渡された補強梁152とから構成される。補強柱151は、床面12及び補強梁152に対して補強板153を宛てがって、床面12及び補強梁152に対する直交関係を強固に維持している。このように、本例の区画モジュール1は、鋼板121からなる床面12を共通にしながら、それぞれ独立して構成される単位区画11と補強フレーム15との二重構造になっている。
【0019】
単位区画11は、全体が直方体の空間として構成されている。本例では、正面から見て右寄りに、壁面13同様の防火パネル131及びドア132により仕切111を構成し、前記仕切111により分けられた大区画112及び小区画113を合わせて単位区画11とし、前記大区画112及び小区画113それぞれに、厨房室に必要な流し台114、食器収納庫115、第1調理機器116、第2調理機器117及び第3調理機器118等を壁面13に沿って配置している(図2及び図4参照)。厨房室への出入口となるドア132は、壁面13を構成する防火パネル131の一部を切り欠いて取り付けている。このほか、例えば補強フレーム15に支持させた空調ダクト142の開口1421を、防火パネル141を並べて構成した天井面14の一部を切り欠いて設けている。こうした流し台114、第1調理機器116、第2調理機器117及び第3調理機器118等の配置や、壁面13に対するドア132の取り付け、そして電線、給排水管、空調ダクト142等の設置や前記電線、給排水管、空調ダクト142等を流し台114、第1調理機器116、第2調理機器117及び第3調理機器118等に接続する作業、すなわち艤装作業は、船体作業を妨げることなく、区画モジュール1を構築する船外で効率よく、かつ容易に実施できる。
【0020】
具体的な単位区画11及び補強フレーム15は、次のように構成される。まず。単位区画11の壁面13は、図6及び図7に見られるように、床面12上に単位区画11の水平断面に沿ってC型鋼を下向きにして溶接により固着した基礎フレーム123を構成し、前記基礎フレーム123上へ上向きに開いたチャンネル材からなるパネル受け具133を溶接により固着して、前記パネル受け具133に沿って複数の防火パネル131を差し込むことにより構成する。パネル受け具133は、壁面13を構成する防火パネル131の並び方向を揃えるガイド部材としての役割も有しているため、本例のように連続する壁面13に沿って長尺なチャンネル材を用いることが望ましい。また、本例において、パネル受け具133を床面12に固着したC型鋼から構成される基礎フレーム123に対して固着するのは、床面12を構成する鋼板121の剛性を向上させると共に、薄い鋼板からなるチャンネル材の剛性を向上させ、壁面13の安定した立設状態を維持させるためである。
【0021】
単位区画11の天井面14は、図6及び図7に見られるように、壁面13を構成する防火パネル131に対して、前記パネル受け具133同様の内フランジ134を設けたチャンネル材からなるパネル支持具135を上方から嵌合し、前記パネル支持具135の内フランジ134に複数の防火パネル141を水平に架け渡すことにより、構成する。パネル支持具135は、壁面13を構成する防火パネル141の並び方向を揃えるガイド部材としての役割を有するほか、天井面14を構成する防火パネル141の水平面としての一体性を整えるガイド部材としての役割をも有することから、本例のように連続する天井面14に沿って長尺なチャンネル材を用いることが望ましい。しかし、同様なガイド部材として働くのであれば、図8に見られるように、内フランジ136を構成するアングル材からなるパネル支持具137を壁面13の防火パネル131の内側にビス止めし、前記パネル支持具137の内フランジ136に複数の防火パネル141を水平に架け渡すことにより、天井面14を構成してもよい。
【0022】
上記壁面13及び天井面14を構成する防火パネル131,141は、実継構造により相互に隙間なく連結し、パネル受け具133又はパネル支持具135にそれぞれビス止めされて、相互に拘束され、位置固定される。ここで、四方の壁面13に対する天井面14は、前記各壁面13の上縁にパネル支持具135が嵌合される(図7参照)又はビス止めされる(図8参照)ので、壁面13と天井面14とには隙間が生じない。また、例えば正面側の壁面13と側面側の壁面13との角部では、図9に見られるように、内側からアングル材からなるパネル継ぎ部材138を宛ててビス止めすることにより、両壁面13を構成する防火パネル131相互の隙間を完全に塞ぐことができる。このように隙間のない連続面となる壁面13及び天井面14が、国際海上人命安全条約のA級防火規格、B級防火規格又はH級防火規格のいずれか又はすべてを満足すれば、床面12が鋼板121から構成されていることと合わせ、本例の単位区画11はA級防火規格、B級防火規格又はH級防火規格のいずれか又はすべてを満たすことになる。
【0023】
本例の防火パネル131は、1枚の薄鋼板(0.6mm厚)を折り曲げて表面及び裏面を形成した中空パネル内にロックウール等の断熱材を充填した構造である。防火パネル131を連結すると、一方の防火パネル131の薄鋼板が開いた実継の凸条1311,1411は、他方の防火パネル131の薄鋼板を折り曲げて形成される実継の凹溝1312,1412に嵌め込まれるため、完全に隠れてしまう。この結果、壁面13又は天井面14は、薄鋼板が連続する内面及び外面の間に断熱材を充填した構造となり、高い断熱性を実現する。また、実継の凸条1311,1411及び凹溝1312,1412が深ければ、長時間の罹災による変形によっても前記凸条1311,1411及び凹溝1312,1412の嵌合関係が崩れず、炎が貫通する虞もない。こうして、本例の単位区画11は、国際海上人命安全条約のA級防火規格を十分に満たすことができる。
【0024】
実際の単位区画11では、床面12を構成する鋼板121に化粧タイル等の床面被覆材125を敷き詰めたり(図6参照)、壁面13又は天井面14を構成する複数の防火パネル131にわたって化粧シートを貼着し、外観を整え、それぞれ質感を向上させることができる。例えば、本例のように単位規格が厨房室である場合、床面12は排水性に優れることが好まれるため、撥水性のある化粧タイルを敷き詰めるとよい。また、壁面13は複数の防火パネル131にわたってステンレスフィルムを貼着することにより、壁面13としての外観上の一体性を高め、壁面13全体の質感を向上させるほか、防火性をも高めることができる。本発明の区画モジュール1は船外で構築できるため、前記化粧タイル又は化粧シートを取り付ける艤装工事も自由であり、結果として従来に比べて高品質の厨房室を提供できるようになる。
【0025】
補強フレーム15は、図1、図3、図5及び図6に見られるように、床面12を構成する鋼板121に組み付けられる床フレーム122と共に、区画モジュール1の構造強度を確保する強度要素(強度メンバー)を構成する。本例の区画モジュール1は、上述したように、部分甲板構造の床面12としており、船舶の甲板2に設けられる開口21に嵌め込んで設置される。これから、床面12には甲板相当の構造強度が求められる。そこで、本例の床面12は、大型のC型鋼を四角形に組んだ床フレーム122を鋼板121の下面に溶接により固着し、I型鋼からなる接地部1221を前記床フレーム122に溶接により固着している。これから、本例の区画モジュール1は、床フレーム122及び補強フレーム15から構成される直方体形状の枠体の前記床フレーム122に鋼板121を載せて固着することにより床面12を形成し、前記床面12に防火パネル131を組み付けた壁面13及び天井面14を形成することにより、単位区画11を構成した構造と見ることもできる。
【0026】
床フレーム122は、鋼板121より小さく組まれ、床フレーム122から鋼板121が突出する接合フランジ1211を形成している。この接合フランジ1211は、甲板2に設けた開口21に対して上方から係合し、区画モジュール1を甲板2に設置する際の接合要素として機能する(図6参照)。また、鋼板121には、図5に見られるように、区画モジュール1をクレーン3(吊り下げワイヤで代表)等で吊り上げるための吊り上げ部124を4基設けている。本例の吊り上げ部124は、壁面13に直交して張り出す円弧状の鋼板1241に、クレーン3等のフック31を係合する係合孔1242を開口した構造である。床面12は、床フレーム122と、壁面13の基礎となるC型鋼とにより剛性が高められているため、区画モジュール1を吊り上げる際に撓まない十分な剛性を備えている。
【0027】
船外で構築された区画モジュール1が、補強フレーム15に倣う外形状が既存コンテナの規格に従った外形及び大きさであれば、例えばトラック等で陸上輸送することができる。本例の厨房室の区画モジュール1は、こうしたコンテナ用の陸上輸送を考慮して、コンテナの規格に倣った外形及び大きさの略直方体の外形及び大きさにしている。この場合、図示を省略するが、複数の区画モジュール1を並べる又は重ねることで、大きな単位区画11を構成できる。そして、各区画モジュール1の外形及び大きさをコンテナの規格に揃えることで、区画モジュール1自体が規格化され、製造コストの低減や取り扱いが容易になる等の利点を得ることができる。
【0028】
本発明の区画モジュールは、天井面、壁面及び床面で囲まれて閉鎖される区画に対して適用できることから、上記例示の厨房室のほか、A級防火規格、B級防火規格又はH級防火規格のいずれか又はすべてを満足することが要求される配膳室、船員用又は乗船客用船室、操舵室、無線室、荷役制御室、通路室又は階段室、ロッカー室又はストアー室や機関室にも適用できる。図10は本発明を適用して構成された階段室である単位区画41からなる区画モジュール4の斜視図であり、図11は本発明を適用して構成されたロッカー室である単位区画51からなる区画モジュール5の参考図である。前記階段室及びロッカー室となる区画モジュール4,5の基本構成は、上記例示の厨房室となる区画モジュール1と同様であるが、それぞれの用途によって一部構成が異なっている。
【0029】
階段室は、図10に見られるように、各層に分かれた甲板相互を繋ぐ区画であることから、前記各層に対応した踊り場とした床面42を有する複数の単位区画41に対し、前記各単位区画41の各床面42を階段411やそれぞれの補強フレーム45で繋ぐことにより一体の区画モジュール4として構成される。すなわち、階段室である単位区画41からなる区画モジュール4は、上層の単位区画41の床面42が下層の単位区画41の天井となることから、最上層の単位区画41のみ天井面44を設け、前記最上層以外の単位区画41は上層の単位区画41の床面42に壁面43を連結することで天井面を省略できる。ここで、上述したように、各単位区画41をコンテナの外形及び大きさに合わせて規格化した場合、個々の単位区画41の陸上輸送及び取り扱いが容易になる利点がある。
【0030】
ロッカー室は、図11に見られるように、上記例示(図1〜図9参照)の厨房室同様に単位区画51をそのまま区画モジュール5とすることもできるが、本例では2つの単位区画51を並べて、一体の区画モジュール5とし、大きな収容空間のロッカー室を形成している。本例の場合、図11中前後に単位区画51を並べており、手前側の単位区画51は奥側の壁面を、また奥側の単位区画51は手前側の壁面をそれぞれ設けることなく、連通面としている。これから、各単位区画51の床面52は溶接により、また天井面54や壁面53は専用の介装部材531,541で繋ぎ、隙間を塞ぐ。この際、各単位区画51の補強フレーム55も連結することが望ましい。ロッカー室に具える棚511は、各単位区画51毎に設置して、前記単位区画51同様に連結してもよいし、両単位区画51を設置した後から取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】厨房室を単位区画として本発明により構成した区画モジュールの正面図である。
【図2】単位区画内を表した正面図である。
【図3】本例の区画モジュールの平面図である。
【図4】単位区画内を表した平面図である。
【図5】本例の区画モジュールの側面図である。
【図6】単位区画を構成する床面、壁面及び天井面の組付関係を表す単位区画の部分断面図である。
【図7】壁面及び天井面の組付関係を表す単位区画の部分斜視図である。
【図8】壁面及び天井面の別例の組付関係を表す単位区画の部分斜視図である。
【図9】壁面の角部における組付関係を表す単位区画の部分斜視図である。
【図10】本発明を適用して構成された階段室である単位区画からなる区画モジュールの斜視図である。
【図11】本発明を適用して構成されたロッカー室である単位区画からなる区画モジュールの参考図である。
【符号の説明】
【0032】
1 区画モジュール
11 単位区画
12 床面
121 鋼板
122 床フレーム
13 壁面
131 防火パネル
133 パネル受け具
135 パネル支持具
14 天井面
141 防火パネル
15 補強フレーム
151 補強柱
152 補強梁
2 甲板
3 クレーン
4 区画モジュール
5 区画モジュール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体に外部から設置して、閉鎖された単位区画を形成する船舶用の区画モジュールにおいて、単位区画は、鋼板からなる床面と、前記床面上に複数の防火パネルを組み付けて構成した壁面及び天井面とからなり、船体の甲板に床面を接面し、前記船体の甲板と床面とを結合して設置する船舶用の区画モジュール。
【請求項2】
単位区画は、床面が船体の甲板を切り取った形状の鋼板に床フレームを組み付けた部分甲板構造であり、船体の甲板に設けた前記床面と同形状の開口に床面を嵌め込み、前記船体の甲板に床面又は床フレームの一方又は双方を結合して設置する請求項1記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項3】
単位区画は、壁面の延在方向に連続する又は断続的に並ぶパネル受け具が床面に固着され、壁面が前記パネル受け具に下縁を嵌め込んで立設した複数の防火パネルを相互に組み付けて構成され、天井面が壁面を形成する防火パネルの上縁に取り付けたパネル支持具に架け渡された複数の防火パネルを相互に組み付けて構成される請求項1又は2いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項4】
単位区画は、壁面及び天井面を囲む補強柱及び補強梁からなる補強フレームを床面に設けた請求項1〜3いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項5】
単位区画は、厨房室である請求項1〜4いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項6】
単位区画は、配膳室である請求項1〜4いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項7】
単位区画は、船員用又は乗船客用船室である請求項1〜4いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項8】
単位区画は、操舵室である請求項1〜4いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項9】
単位区画は、無線室である請求項1〜4いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項10】
単位区画は、荷役制御室である請求項1〜4いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項11】
単位区画は、通路室又は階段室である請求項1〜4いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項12】
単位区画は、ロッカー室又はストアー室である請求項1〜4いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項13】
単位区画は、機関室である請求項1〜4いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項1】
船体に外部から設置して、閉鎖された単位区画を形成する船舶用の区画モジュールにおいて、単位区画は、鋼板からなる床面と、前記床面上に複数の防火パネルを組み付けて構成した壁面及び天井面とからなり、船体の甲板に床面を接面し、前記船体の甲板と床面とを結合して設置する船舶用の区画モジュール。
【請求項2】
単位区画は、床面が船体の甲板を切り取った形状の鋼板に床フレームを組み付けた部分甲板構造であり、船体の甲板に設けた前記床面と同形状の開口に床面を嵌め込み、前記船体の甲板に床面又は床フレームの一方又は双方を結合して設置する請求項1記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項3】
単位区画は、壁面の延在方向に連続する又は断続的に並ぶパネル受け具が床面に固着され、壁面が前記パネル受け具に下縁を嵌め込んで立設した複数の防火パネルを相互に組み付けて構成され、天井面が壁面を形成する防火パネルの上縁に取り付けたパネル支持具に架け渡された複数の防火パネルを相互に組み付けて構成される請求項1又は2いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項4】
単位区画は、壁面及び天井面を囲む補強柱及び補強梁からなる補強フレームを床面に設けた請求項1〜3いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項5】
単位区画は、厨房室である請求項1〜4いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項6】
単位区画は、配膳室である請求項1〜4いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項7】
単位区画は、船員用又は乗船客用船室である請求項1〜4いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項8】
単位区画は、操舵室である請求項1〜4いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項9】
単位区画は、無線室である請求項1〜4いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項10】
単位区画は、荷役制御室である請求項1〜4いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項11】
単位区画は、通路室又は階段室である請求項1〜4いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項12】
単位区画は、ロッカー室又はストアー室である請求項1〜4いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【請求項13】
単位区画は、機関室である請求項1〜4いずれか記載の船舶用の区画モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
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【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−245867(P2007−245867A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70710(P2006−70710)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(591083118)ツネイシホールディングス株式会社 (18)
【出願人】(395008333)株式会社大晃産業 (12)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(591083118)ツネイシホールディングス株式会社 (18)
【出願人】(395008333)株式会社大晃産業 (12)
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