説明

船舶用の潤滑油組成物

【課題】 2サイクルまたは4サイクルアウトボード船舶用エンジンのギア、または船舶用インボード/アウトボード・ドライブトレインのアウトドライブギアなどを含む、船舶用のギアに使用するのに適した潤滑剤を提供する。
【解決手段】 船舶用の潤滑剤であり、a)多量の基油、b)少なくとも一つの金属含有洗浄剤、c)少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、およびd)少なくとも一つの界面活性剤を含む船舶用の潤滑剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶に使用されるドライブトレイン用として適した潤滑油組成物に関連する。より具体的には、本発明は船舶や海洋機器の耐水性を向上させる潤滑油組成物に関連している。
【背景技術】
【0002】
アウトボードモーターは、エンジン、ドライブトレイン、およびプロペラを含む内臓ユニットで、船の後部に取り付けるようにデザインされている。ギアオイルは通常船舶エンジン用のドライブトレイン、例えば2サイクルあるいは4サイクルの船舶用アウトボードエンジンのギア、または船舶用インボード/アウトボード・ドライブトレインのアウトドライブのギアなどを潤滑するために使用される。船舶用ギアオイルは、海洋環境下でしばらく使用されるとある種の性能特性や長所を失う傾向にある。船舶用ギアオイルの特性は、船舶のドライブトレインに水が浸入するため、特に低下しやすい。通常は水はオイルから分離するもので、エンジンやドライブトレイン中でも同様であり、水によって腐食が起こり、これがある種の潤滑剤の加水分解につながり、エンジンやドライブトレインにさらに悪影響を与える酸性の副産物が生成される原因となる。本発明は、耐磨耗性を有しさらに水を乳化させることのできる船舶用潤滑剤を造ることによってこの問題に対応する。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、アウトボードモーターのギアのような、船舶のギア用に適した新規の潤滑油を提供する。例として、本明細書に記載の潤滑油は、2サイクルあるいは4サイクルのアウトボードエンジン、または船舶用インボード/アウトボード・ドライブトレインのアウトドライブギアに使用するのに適している。さらに本開示の実施例は、船舶用として適した、抗酸化性、耐磨耗特性、防錆性、せん断安定性、耐水性、空気連行性、極圧性、および消泡性が改善された潤滑油を提供する。
【0004】
ある実施例では、船舶用の潤滑剤に、多量の基油、少なくとも一つの金属含有洗浄剤、少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、また少なくとも一つの界面活性剤が含まれている。
【0005】
ある実施例では、船舶用の潤滑剤にはさらに、潤滑剤の総重量を基にした含有量(ppm)の比率が約0.025から約1.5(ppm/ppm)である、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属およびリンが含まれる。
【0006】
ある実施例では、船舶用の潤滑剤の水の乳化テストにおける水の分離スコアは約5mLまたはそれ以下となる。
【0007】
ある実施例では、少なくとも一つの金属洗浄剤に過塩基性カルシウムフェネートが含まれている。
【0008】
ある実施例では、少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤に少なくとも一つの亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物が含まれている。
【0009】
ある実施例では、少なくとも一つの界面活性剤に、一般式(A−COO)Bで表されるブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーが含まれる。式中mは最小値が2である整数、Aは分子量が少なくとも500であるポリマー成分であり、また次の一般構造式で表される油溶性モノカルボン酸錯体の残基である:
【化1】

式中Rは水素または一価の炭化水素または置換された炭化水素基、Rは水素またはCからC24の一価の炭化水素基、RはCからC24の二価の炭化水素基、nは0または1、またpは0または200以下の整数である。Bは分子量が少なくとも500であるポリマー成分であり、mが2である場合は、次の一般式で表される水溶性ポリアルキレングリコールの二価の残基である:
【化2】

式中Rは水素またはCからCのアルキル基、qは10から500までの整数である。またmが2以上である場合は、Bは次の一般式で表される水溶性ポリエーテルポリオールの、原子価がmの残基である:
【化3】

式中Rおよびmは前述と同様、rは次のユニットの分子中での総数が少なくとも10であることを条件として0または1から500までの整数である:
【化4】

またRは、分子中にアルキレンオキサイドに反応性を持つ水素原子をm個含有する有機化合物の残基である。
【0010】
ある実施例では、船舶用の潤滑剤に、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物から得られた約200ppmから約2000ppmのリンが含有される。
【0011】
ある実施例では、船舶用の潤滑剤に、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物から得られた約200ppmから約600ppmのリンが含有される。
【0012】
ある実施例では、船舶用の潤滑剤に、金属含有洗浄剤から得られた約10ppmから約800ppmの金属が含有される。
【0013】
ある実施例では、船舶用の潤滑剤にはさらに、極圧添加剤、耐磨耗剤、摩擦低減剤、分散剤、消泡剤、抗酸化剤、粘度指数向上剤、および流動点降下剤から成る群のなかから選択された少なくとも一つの成分が含有される。
【0014】
一つの実施例では、船舶用エンジンのギア成分が、本明細書に記載の船舶用の潤滑剤で潤滑される。
【0015】
別の実施例において、海洋環境で使用される潤滑剤中での使用に適した添加剤組成物には:a)少なくとも一つの金属含有洗浄剤;b)少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤;およびc)少なくとも一つの界面活性剤が含まれる。
【0016】
ある実施例では、添加剤組成物にはさらに、潤滑剤の総質量を基にした含有量(ppm)の比率が約0.025から約1.5(ppm/ppm)である、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属およびリンが含まれる。
【0017】
ある実施例では、潤滑剤の水の乳化テストにおける水の分離のスコアは約5mLまたはそれ以下となる。
【0018】
ある実施例では、少なくとも一つの金属洗浄剤に、過塩基性カルシウムフェネートが含まれている。
【0019】
ある実施例では、少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤に、少なくとも一つの亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物が含まれている。
【0020】
ある実施例では、少なくとも一つの界面活性剤に、一般式(A−COO)Bで表されるブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーが含まれる。式中mは最小値が2である整数、Aは分子量が少なくとも500であるポリマー成分であり、また次の一般構造式で表される油溶性モノカルボン酸錯体の残基である:
【化5】

式中Rは水素または一価の炭化水素または置換された炭化水素基、Rは水素またはCからC24の一価の炭化水素基、RはCからC24の二価の炭化水素基、nは0または1、またpは0または200以下の整数である。Bは分子量が少なくとも500であるポリマー成分で、mが2である場合は次の一般式で表される水溶性ポリアルキレングリコールの二価の残基である:
【化6】

式中Rは水素またはCからCのアルキル基、qは10から500までの整数である。またmが2より大きい場合は、Bは次の一般式で表される水溶性ポリエーテルポリオールの、原子価がmの残基である:
【化7】

式中Rおよびmは前述と同様、rは次のユニットの分子中での総数が少なくとも10であることを条件として0または1から500までの整数である:
【化8】

またRは、分子中にアルキレンオキサイドに反応性を持つ水素原子をm個含有する有機化合物の残基である。
【0021】
ある実施例では、添加剤組成物には、極圧添加剤、耐磨耗剤、摩擦低減剤、分散剤、消泡剤、抗酸化剤、粘度指数向上剤、および流動点降下剤から成る群から選択された少なくとも一つの成分がさらに含まれる。
【0022】
別の実施例では、船舶での使用に適した潤滑剤の作成方法には、少量の添加剤組成物を多量の基油に加えることが含まれる。この添加剤組成物には、少なくとも一つの金属含有洗浄剤と少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤と少なくとも一つの界面活性剤が含まれる。
【0023】
ある実施例では、船舶での使用に適した潤滑剤の作成方法には、潤滑剤の総質量を基にしたアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量(ppm)とリンの含有量(ppm)の比率が約0.025から約1.5(ppm/ppm)となるような状態で、少量の添加剤組成物を多量の基油に加えることがさらに含まれる。
【0024】
ある実施例では、船舶での使用に適した潤滑剤の作成方法には、潤滑剤の水の乳化テストにおける水の分離のスコアが約5mLまたはそれより小さくなるような状態で少量の添加剤組成物を多量の基油に加えることがさらに含まれる。
【0025】
ある実施例では、船舶での使用に適した潤滑剤の作成方法には、上述の少なくとも一つの界面活性剤に一般式(A−COO)Bで表されるブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーが含まれるような状態で少量の添加剤組成物を多量の基油に加えることがさらに含まれる。式中mは最小値が2である整数、Aは分子量が少なくとも500であるポリマー成分であり、また次の一般構造式で表される油溶性モノカルボン酸錯体の残基である:
【化9】

式中Rは水素または一価の炭化水素または置換された炭化水素基、Rは水素またはCからC24の一価の炭化水素基、RはCからC24の二価の炭化水素基、nは0または1、またpは0または200以下の整数である。Bは分子量が少なくとも500であるポリマー成分であり、mが2である場合は、次の一般式で表される水溶性ポリアルキレングリコールの二価の残基である:
【化10】

式中Rは水素またはCからCのアルキル基、qは10から500までの整数である。またmが2より大きい場合は、Bは次の一般式で表される水溶性ポリエーテルポリオールの、原子価がmの残基である:
【化11】

式中Rおよびmは前述と同様、rは次のユニットの分子中での総数が少なくとも10であることを条件として0または1から500までの整数である:
【化12】

またRは、分子中にアルキレンオキサイドに反応性を持つ水素原子をm個含有する有機化合物の残基である。
【0026】
別の実施例では、船舶のエンジンギア成分を潤滑する方法に、多量の基油、少なくとも一つの金属含有洗浄剤、少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および少なくとも一つの界面活性剤を含んだ船舶用の潤滑剤を船舶用のギア成分に加え、エンジンを作動させることが含まれる。
【0027】
ある実施例では、船舶のエンジンギア成分を潤滑する方法に、潤滑剤の総質量を基にした含有量(ppm)の比率が約0.025から約1.5(ppm/ppm)となるような、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属とリンとをさらに含んだ船舶用の潤滑剤を船舶用のギア成分に加えることがさらに含まれる。
【0028】
ある実施例では、船舶のエンジンギア成分を潤滑する方法に、潤滑剤の水の乳化テストにおける水の分離のスコアが約5mLまたはそれより小さくなるような船舶用の潤滑剤を船舶用のギア成分に加えることが含まれる。
【0029】
別の実施例では、船舶での使用に適したギアオイルの耐水性を向上させる方法に、多量の基油を、少なくとも一つの金属含有洗浄剤、少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および少なくとも一つの界面活性剤と組み合わせることが含まれる。
【0030】
ある実施例では、船舶での使用に適したギアオイルの耐水性を向上させる方法に、潤滑剤の総重量を基にしたアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量(ppm)とリンの含有量(ppm)の比率が約0.025から約1.5(ppm/ppm)となるような状態で、多量の基油を、少なくとも一つの金属含有洗浄剤、少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および少なくとも一つの界面活性剤と組み合わせることが含まれる。
【0031】
ある実施例では、船舶での使用に適したギアオイルの耐水性を向上させる方法に、潤滑剤の水の乳化テストにおける水の分離のスコアが約5mLまたはそれより小さくなるような状態で、多量の基油を、少なくとも一つの金属含有洗浄剤、少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および少なくとも一つの界面活性剤と組み合わせることが含まれる。
【0032】
別の実施例では、船舶での使用に適したギアオイルの極圧特性を向上させる方法に、多量の基油を、少なくとも一つの金属含有洗浄剤、少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および少なくとも一つの界面活性剤と組み合わせることと組み合わせることが含まれる。
【0033】
ある実施例では、船舶での使用に適したギアオイルの極圧特性を向上させる方法に、潤滑剤の総重量を基にしたアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量(ppm)とリンの含有量(ppm)の比率が約0.025から約1.5(ppm/ppm)となるような状態で、多量の基油を、少なくとも一つの金属含有洗浄剤、少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および少なくとも一つの界面活性剤と組み合わせることが含まれる。
【0034】
ある実施例では、船舶での使用に適したギアオイルの極圧特性を向上させる方法に、潤滑剤の極圧溶接点テストのスコアが約350kgf以上となるような状態で、多量の基油を、少なくとも一つの金属含有洗浄剤、少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および少なくとも一つの界面活性剤と組み合わせることが含まれる。
【0035】
ある実施例では、船舶での使用に適したギアオイルの極圧特性を向上させる方法に、潤滑剤の極圧溶接点テストのスコアが約375kgf以上となるような状態で、多量の基油を、少なくとも一つの金属含有洗浄剤、少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および少なくとも一つの界面活性剤と組み合わせることが含まれる。
【0036】
別の実施例では、船舶用の潤滑剤には、a)多量の基油;b)極圧溶接点を向上させる効果のある量のリンベースの耐磨耗剤が含まれ、またc)このとき上述の船舶用の潤滑剤の4ボール極圧溶接点のスコアは約350kgf以上、水の乳化テストにおける水の分離のスコアは約5mL以下である。
【0037】
ある実施例では、船舶用の潤滑剤に、さらに金属含有洗浄剤が含まれる。
【0038】
ある実施例では、船舶用の潤滑剤に、さらに少なくとも一つの界面活性剤が含まれる。
【0039】
別の実施例では、船舶用の潤滑剤船舶用の潤滑剤には、a)多量の基油;b)リンベースの耐磨耗剤が含まれ、またc)このとき上述の船舶用の潤滑剤の4ボール極圧溶接点のスコアは約350kgf以上、L−42スコアは合格点、また水の乳化テストにおける水の分離のスコアは約5mL以下である。
【0040】
本明細書で使用されている特定の用語の意味を明らかにするため、以下にそれらの用語の定義を挙げる。
【0041】
本明細書で使用されている「オイル組成物」、「潤滑用組成物」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「潤滑組成物」、「完全に調合された潤滑剤組成物」および「潤滑剤」などの用語は、多量の基油と少量の添加剤組成物を含んだ、完成された潤滑生成物を意味し、互いに完全に置き換え可能な同義語であると考えられる。
【0042】
本明細書で使用されている「添加剤パッケージ」、「添加剤濃縮物」および「添加剤組成物」などの用語は、潤滑組成物の中の多量の基油ストックの混合物を除いた部分を意味し、互いに完全に置き換え可能な同義語であると考えられる。
【0043】
本明細書で使用されている「船舶」という用語は、海水および/または淡水など水の存在するすべての環境で使用される船舶およびその他の機器を含むことを意図している。
【0044】
本明細書で使用される「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」という用語は、当技術分野に精通した技術者に周知の通常の意味で使用されている。具体的には、炭素原子が分子の残りの部分に直接結合しており、また主に炭化水素の特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には以下のものが含まれる:
(1)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えばアルキルまたはアルケニル)置換基、脂環式(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、また芳香族、脂肪族、および脂環基によって置換された芳香族置換基、また環が分子の別の部分によって完成されている(例えば二つの置換基が一緒になって脂環式ラジカルを形成している)ような環状置換基;(2)置換された炭化水素置換基、すなわち、本発明の状況下で、主に炭化水素である置換基(例えばハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)などを変化させないような、非炭化水素基を含んだ置換基;
(3)ヘテロ置換基、すなわち、主に本発明の状況下で、主に炭化水素の特性を有しながら、そうでなければ炭素原子から成る環または鎖の中に炭素以外の原子を含んでいるような置換基。ヘテロ原子には硫黄、酸素、および窒素があり、またピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基が含まれる。通常、ヒドロカルビル基中、炭素原子10個につき二つ以下、例えば一つ以下の非炭化水素置換基が存在する。一般的にヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しない。
【0045】
本明細書で使用される「重量パーセント」という用語は、別段の定めが明記されていな
い限り、組成物全体の重量に対して記載の成分が占めるパーセンテージを意味する。
【0046】
本明細書で使用される「油溶性」または「分散性」という用語は、必ずしも化合物あるいは添加剤が炭化水素化合物またはオイル中にあらゆる比率で可溶性である、溶ける、混和性がある、あるいは懸濁が可能であるということを意味するわけではない。しかしながらこれらは、例えばオイルが使用される環境下において、意図された効果を及ぼすために十分な量がオイル中に可溶または安定的に分散可能であることを意味する。さらに、他の添加剤を追加的に混入することにより、必要に応じてより高いレベルの特定の添加剤の混入が可能になる。
【0047】
本開示の船舶用の潤滑油は、以下に詳述するように、一つ以上の添加剤を適切な基油組成物に加えることによって調合される。この添加剤は添加剤パッケージ(または濃縮物)の形態で基油と組み合わされるか、あるいは個々に基油と組み合わされる。完全に調合された船舶用の潤滑剤は、添加された添加剤とそれらの割合に基づき、性能特性の向上を示す。
【0048】
本開示のその他の目的および利点は、以下に続く説明で部分的に説明され、および/または本開示を実行することによって理解することができる。本開示の目的および利点は、添付の請求項で特に指摘されている要素およびそれらの組み合わせによって実現・達成される。
【0049】
前述の概要および以下の詳しい説明は、共に例示および説明のみを目的としたものであり、請求されたとおりに開示を制限するものではない。
【実施例の詳細な説明】
【0050】
ここで本開示について、本開示の組成物の様々な例や用法を含んだ、実施例のより限定された態様で説明する。これらの実施例は本発明を例証することのみを目的として示されたものであり、それらの範囲を限定するものとみなすものではない。
【0051】
船舶用エンジンの環境やハードウェア設定は、水がエンジン内に浸入しそこに閉じ込められるという望ましくない状態を生み出す。通常は水はオイルから分離するもので、エンジン内でもこれが起こり、水によって鉄原料の腐食が引き起こされたり、また添加剤の加水分解によりこれらの鉄材にさらに悪影響を与える酸性の副産物が生成される原因となる。このため、この用途で優れた性能を提供するためには、船舶用の潤滑油が水を乳化させることが望ましい。本明細書に記載された実施例に基づいて調整された潤滑剤組成物および/または添加剤組成物は、このような特典を提供するものである。
【0052】
本開示の一つの実施例において、添加剤組成物には、少なくとも一つの金属洗浄剤と少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤が含まれる。この添加剤組成物には、乳化剤、界面活性剤、極圧添加剤、耐磨耗化合物、摩擦低減剤、分散剤、消泡剤(「発泡防止剤」ともいう)、抗酸化剤、粘度指数向上剤、および流動点降下剤のうちの一つ以上が任意的に含まれることがある。
【0053】
基油
船舶用の潤滑流体組成物の調合での使用に適した基油は、合成油、天然油、またはそれらの混合物のいずれかから選択される。天然油にはパラフィン系、ナフテン系、またはパラフィン−ナフテン混合の、溶媒や酸で処理されたミネラル潤滑油に加え、動物油および植物油(例えばヒマシ油、ラードなど)が含まれる。石炭や頁岩から得られたオイルもまた好適である。基油の粘度は通常、100℃で約2cStから約15cSt、さらなる例では100℃で約2cStから約10cStである。さらに、ガス・ツー・リキッドプロ
セスから得られたオイルもまた好適である。
【0054】
好適な合成基油には、ジカルボン酸のアルキルエステル、ポリグリコールおよびアルコール、ポリブテン、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステル、およびポリシリコンオイルなどを含むポリアルファオレフィンが含まれる。合成油には、ポリマー化およびインターポリマー化されたオレフィン(例えばポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン・イソブチレンコポリマーなど);ポリ(1−ヘキセン)、ポリ−(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)などとそれらの混合物;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジ−ノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)ベンゼン、など);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル、など);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィド、およびそれらの誘導体、類似物および同族体、その他のような炭化水素油が含まれる。
【0055】
アルキレンオキサイドポリマー、インターポリマー、およびそれらの誘導体は、末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化などによって調整されている場合、使用することのできる別の種類の既知の合成油を構成する。このようなオイルは、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドのポリマー化によって調整されたオイル、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキルおよびアリルエーテル(例えば、平均分子量が約1000のメチル−ポリイソプロピレングリコールエーテル、平均分子量が約500−1000のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、平均分子量が約1000−1500のポリプロピレングリコールのジエチルエーテルなど)、またはそれらのモノ−およびポリカルボン酸エステル、例えば酢酸エステル、C−Cの混合脂肪酸エステル、またはテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステルなどによって例示される。
【0056】
使用される別の種類の合成油には、ジカルボン酸(例えばフタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸など)と各種アルコール(例えばブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコールなど)とのエステルが含まれる。これらのエステルの具体例として、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2−エチルヘキサン酸などと反応させることにより形成される複合エステルなどが挙げられる。
【0057】
合成油として有用なエステルにはまた、CからC12のモノカルボン酸およびポリオールから作られるエステル、またネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなどのようなポリオールエステルが含まれる。
【0058】
従って、本明細書に記載のトランスミッション用流体組成物を作るために使用される基油は、米国石油協会(API)基油互換性規定に特定されたグループI−Vの基油の中から選択される。これらの基油グループを以下に示す:
【表1】

【0059】
上述のように、当該の基油はポリアルファオレフィン(PAO)であり得る。一般的にポリアルファオレフィンは、炭素数が約4から約から約30、または約4から約20、または約6から約16のモノマーから得られる。有用なPAOの例として、オクテン、デセン、それらの混合物などから得られたものが挙げられる。PAOの100℃での粘度は約2cStから約15cSt、または約3cStから約12cSt、または約4cStから約8cStである。PAOの例には、100℃で4cStのポリアルファオレフィン、100℃で6cStのポリアルファオレフィン、およびそれらの混合物が含まれる。前述のポリアルファオレフィンとミネラルオイルの混合物を使用することもできる。
【0060】
基油は、フィッシャー・トロプシュ合成された炭化水素から得られたオイルである。フィッシャー・トロプシュ合成された炭化水素は、フィッシャー・トロプシュ触媒を使用し、HおよびCOを含んだ合成ガスから作られる。このような炭化水素を基油として有用なものとするために、一般にさらなるプロセスが必要である。例えば当該の炭化水素を、米国特許第6,103,099号または6,180,575号に開示されたプロセスを用いて水素異性化したり、米国特許第4,943,672号または6,096,940号に開示されたプロセスを用いて水素化分解および水素異性化したり、米国特許第5,882,505号に開示されれたプロセスを用いて脱ろうしたり、あるいは米国特許第6,013,171号、6,080,301号または6,165,949号に開示されたプロセスを用いて水素異性化および脱ろうすることができる。
【0061】
天然油であれ合成油であれ(これら任意の二つ以上の混合物も同様)、本明細書上記に開示された種類の未精製オイル、精製オイル、および再精製オイルを基油中で使用することができる。未精製のオイルは、さらなる精製処理なしで鉱油または合成油源から直接得られたものである。例えば、レトルト工程から直接得られたシェール油、一次蒸留から直接得られた石油、またはエステル化工程から直接得られ、さらなる処理を受けずに使用されたエステル油などが未精製のオイルである。精製オイルは、一つ以上の特性を向上させるために一つ以上の精製ステップで処理されていることを除いて、未精製のオイルと同類である。溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、ろ過、透過などのような精製技術の多くは、当技術分野に精通した技術者に知られている。再精製オイルは、精製オイルを得るために使用したプロセスと同様のプロセスを、すでに使用された精製オイルに適用することによって得られる。このような再精製オイルは、再生油または再処理油としても知られ、またしばしば、使用済みの添加剤、汚染物質、およびオイルの崩壊産物の除去を目的とした技術によってさらに処理される。
【0062】
基油を、本明細書の実施例にて開示された添加剤組成物と組み合わせ、船舶用の潤滑剤流体を得ることができる。当該の基油は、船舶用の潤滑剤流体中に約50重量%から約95重量%の量で存在している。
【0063】
金属含有洗浄剤
本開示の実施例にはまた、少なくとも一つの金属洗浄剤が含まれる。洗浄剤には通常、極性の頭部と疎水性の長いテール部分が含まれ、極性の頭部には酸性有機化合物の金属塩が含まれる。この塩には実質的に化学量論的な量の金属が含まれている。この場合これらの塩は、一般的に正塩または中性塩と称され、(ASTM D2896によって測定された)全塩基価つまりTBNは一般的に約0から約150以下である。酸化物や水酸化物のような金属化合物の超過量を、二酸化炭素のような酸性ガスと反応させることにより、多量の金属塩基を含むことができる。結果として得られる過塩基性の洗浄剤には、無機金属塩基(例えば水和された炭酸塩)の中心を取り囲む中性洗浄剤のミセルが含まれる。このような過塩基性洗浄剤のTBNは約150から約450またはそれより大きいというように、約150あるいはそれより大きい。
【0064】
本実施例での使用に適した洗浄剤には、油溶性の天然または過塩基性スルホン酸塩、フェネート、硫化フェネート、および金属のサリチル酸塩、特に例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、およびマグネシウムなど、アルカリ金属やアルカリ土類金属が含まれる。例えばカルシウムとマグネシウムなど、一つ以上の金属が存在することもある。カルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムの混合物もまた好適である。好適な金属洗浄剤に、TBNが20から450の中性または過塩基性のスルホン酸カルシウムあるいはスルホン酸マグネシウム、TBNが50から450の中性または過塩基性のカルシウムフェネートあるいはマグネシウムフェネートまたは硫化フェネート、またTBNが130から350の中性または過塩基性のサリチル酸カルシウムあるいはサリチル酸マグネシウムなどがある。またこのような塩の混合物が使用されることもある。
【0065】
当該の金属含有洗浄剤は、約0.01重量%から約3重量%の量で潤滑組成物中に存在する。さらなる例として、当該の金属含有洗浄剤は、約0.02重量%から約1重量%の量で存在する。また当該の金属含有洗浄剤は、約10ppmから約800ppmのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在する。さらなる例として、当該金属含有洗浄剤は、約12ppmから約755ppmのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在する。
【0066】
リンベースの耐磨耗剤
リンベースの耐磨耗剤には、これらに限定はされないが、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物のような、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物が含まれる。好適な金属ジヒドロカルビルジチオホスフェートには、ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩が含まれ、このときの金属とはアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、または亜鉛などである。
【0067】
ジヒドロカルビルジチオホスフェートの金属塩は、通常一つ以上のアルコールあるいはフェノールとPとの反応により、まずジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を形成し、次に形成されたDDPAを金属化合物で中和させるという、既知の技術に従って生成される。例えば、ジチオリン酸は、1次アルコールと2次アルコールの混合物を反応させることによって作られる。また一方のヒドロカルビル基は完全に2次の特性を有し、別のヒドロカルビル基は完全に1次の特性を有しているというような、複数のジチオリ
ン酸を生成することもできる。金属塩を作るためには、塩基性あるいは中性の任意の金属化合物が使用されるが、酸化物、水酸化物、および炭酸塩が最も一般的に使用される。中和反応の際に超過量の塩基性金属化合物を使用するため、市販の添加剤にはしばしば超過量の金属が含まれる。
【0068】
亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート(ZDDP)は、ジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性の塩であり、以下の化学式で表される:
【化13】

【0069】
式中、RおよびR’は、炭素数が1から18、例えば2から12の、同一あるいは異なったヒドロカルビルラジカルであり、アルキル、アルケニル、アリル、アリルアルキル、アルカリル、および脂環式ラジカルのようなラジカルを含んでいる。RおよびR’基は、炭素数が2から8のアルキル基である。従って、ラジカルは、例えば、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、アミル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2−エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルなどである。油溶性を得るため、ジチオリン酸中の炭素数の合計(すなわちRおよびR’)は、通常約5あるいはそれ以上である。亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートは従って、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含むことができる。
【0070】
リンベースの磨耗防止剤として使用されるその他の好適な成分には、これらに限定はされないが、リン酸塩、チオリン酸塩、ジチオリン酸塩、亜リン酸塩、およびそれらの塩、またホスフォネートのような、任意の好適な有機リン化合物が含まれる。好適な例としては、リン酸トリクレジル(TCP)、ジアルキル亜リン酸塩(例えばジブチル亜リン酸水素)、およびアミル酸ホスフェートなどが挙げられる。
【0071】
その他の好適な成分に、ヒドロカルビル置換のコハク酸アシル化剤と、ポリアミンと無機あるいは有機リン酸のようなリン源、またはエステルとの組み合わせなどとの反応による完全な反応生成物などのような、リン酸化コハク酸イミドある。さらに、アミド、アミジンおよび/または第1次アミノ基と無水物部分との反応から得られる種類のイミド結合に加え、塩結合を有する化合物も含まれる。
【0072】
その他の好適な成分に2−エチルヘキシル酸ホスフェート(2−EHAP)がある。
【0073】
リンベースの耐磨耗剤は、約200から約2000ppmのリンを提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在する。さらなる例としては、リンベースの耐磨耗剤は、約200から約600ppmのリンを提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在する。
【0074】
リンベースの耐磨耗剤は、潤滑組成物中のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の総量を基にしたアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量(ppm)と、潤滑組成物中のリンの総量を基にしたリンの含有量(ppm)との比率を約0.025から約1.5(ppm/ppm)とするのに十分な量で潤滑組成物中に存在する。
【0075】
乳化剤(界面活性剤)
本明細書に記載の潤滑組成物および/または添加剤パッケージには、一つ以上の乳化剤が含まれる。任意の好適な乳化剤を使用することができる。一連の好適な乳化剤の一例が、ユニケマ社(Uniqema)またはその子会社であるクローダ社(Croda)から、商標名ハイパーマー(HYPERMER(登録商標))として販売されている。これらの乳化剤については、参照することにより本明細書に組み込まれている、米国特許第4,504,276号、4,509,950号、および4,776,966号に記載されている。乳化剤はまた「界面活性剤」としても知られているが、これらの用語は完全に同義であり、どちらを使用しても変わりはない。
【0076】
商標名ハイパーマー(HYPERMER(登録商標))として販売されている乳化剤は、一般式(A−COO)Bで表されるブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーであるとされている。式中mは最小値が2である整数、Aは分子量が少なくとも500であるポリマー成分であり、また次の一般構造式で表される油溶性モノカルボン酸錯体の残基である:
【化14】

式中Rは水素または一価の炭化水素または置換された炭化水素基、Rは水素またはCからC24の一価の炭化水素基、RはCからC24の二価の炭化水素基、nは0または1、またpは0または200以下の整数である。またBは分子量が少なくとも500であるポリマー成分であり、mが2である場合は、次の一般式で表される水溶性ポリアルキレングリコールの二価の残基である:
【化15】

式中Rは水素あるいはCからCのアルキル基、qは約10から約500の整数である。またmが2以上である場合は、Bは次の一般式で表される水溶性ポリエーテルポリオールの、原子価がmの残基である:
【化16】

式中Rおよびmは前述と同様、rは次のユニットの分子中での総数が少なくとも10であることを条件として0または1から500までの整数である:
【化17】

またRは、分子中にアルキレンオキサイドに反応性を持つ水素原子をm個含有する有機化合物の残基である。
【0077】
その他のハイパーマー(HYPERMER)乳化剤には、ポリアルキル(アルケニル)無水コハク酸と、少なくとも一つのヒドロキシル基あるいはアミノ基を分子中に含んだ極性化合物との反応生成物が含まれる。好適なポリアルキル(アルケニル)無水コハク酸は、分子量が約400から約5000のポリ(イソブテニル)無水コハク酸である。無水酸と反応する好適な極性化合物は、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはソルビタールなどのポリオール、例えばエチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミンまたはジエチルアミノプロピルアミンのようなポリアミン、あるいは例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはジメチルアミノエタノールなどのヒドロキシアミンなどである。
【0078】
好適な乳化剤には、親水性部分と疎水性部分の反復ユニットを有する分子が含まれている。これらは接触面で安定した位置を占め、安定性が高くコントロール可能な液滴サイズの乳剤を生成する傾向がある。接触面に位置した場合、ポリマーの広範囲な相互作用により、凝固や癒着に対する優れたコロイド安定性が確実になる。このシステムにおいて、分子の親水性の部分は水相におけるアンカー基の役割を果たし、疎水性のポリマー鎖部分はオイル中に浸透し、液滴間の強力な相互作用を妨げる静電安定化バリアを作る。効果的な静電安定性のために必要となるポリマー鎖の化学構造は、使用される非水溶媒との適合性によって決定される。加えて、ポリマー鎖の分子量は、最適なサイズの立体安定化バリアをもたらすようにデザインされていなくてはならない。原則として、ほぼ無限数のポリマー構造が立体的に安定した界面活性剤として適している。これには、脂肪酸疎水性物質とポリエチレングリコール親水性物質、長鎖アルキレン疎水性物質とポリエチレングリコール親水性物質、ポリヒドロキシ脂肪酸疎水性物質とポリエチレングリコール親水性物質、ポリメタクリエート疎水性物質とアルコキシポリエチレングリコール親水性物質、および長鎖アルキレン疎水性物質と陰イオン性/非イオン性(多種)親水性物質の五種類の基本的構造を備えたPEGアルキドが含まれる。適切な界面活性剤の例として、ハイパーマー(Hypermer(登録商標))B210、A70、B206、およびB246のうちの一つ、あるいはそれら一つ以上の組み合わせが挙げられる。例えばハイパーマー(Hypermer)B210はミネラル系の基油と共に使用するのに適しており、またさらなる例では、B210とその他の乳化剤とのブレンドは合成基油と共に使用するのに適している。さらなる例として、適切な界面活性剤のHLB(親水性/親油性バランス)は約3から約6の間である。
【0079】
極圧添加剤
本開示のある実施例では、組成物中に一つ以上の極圧添加剤が含まれていることがある。極圧添加剤には、イオウ含有化合物が含まれる。好適なイオウ含有極圧添加剤には、ジヒドロカルビルポリスルフィド、硫化オレフィン、天然および合成の両方を起源とする硫化脂肪酸エステル、トリチオン、硫化チエニル誘導体、硫化テルペン、C−Cのモノ
オレフィンの硫化オリゴマー、およびその開示が参照することによって本明細書に組み込まれている、再発行米国特許第27,331号に記載されているような硫化ディールス・アルダー付加物が含まれるが、これらに限定はされない。具体例としては、なかでも、硫化ポリイソブテン、硫化イソブチレン、硫化トリイソブテン、ジシクロヘキシルポリスルフィド、ジフェニルおよびジベンジルポリスルフィド、ジ−t−ブチルポリスルフィド、およびジノニルポリスルフィドなどが挙げられる。
【0080】
リン含有極圧添加剤もまた使用される。一般的に言って、リン酸の金属塩および金属を含まないリン化合物の二つの主なカテゴリーのリン含有極圧添加剤がある。これらの金属塩は銅、カドミウム、カルシウム、マグネシウム、また特に亜鉛のような金属の油溶性の塩、またチオリン酸、ジチオリン酸、トリチオリン酸、テトラチオリン酸のようなリンの好適な酸性化合物、リンペンタスルフィドのような反応物を備えた一つ以上のオレフィンあるいはテルペンのような炭化水素をリン・イオウ化し、その結果得られた生成物を加水分解することにより形成された複合酸性生成物の塩である。このような金属塩の形成方法は当技術分野に精通した技術者には周知のものであり、特許文献に広く記載されている。
【0081】
油溶性の非金属リン含有極圧添加剤の大部分は、リンの部分的あるいは完全にエステル化された酸である。このような化合物には、例えばリン酸塩、亜リン酸塩、ホスホン酸塩、亜ホスホン酸塩、およびそれらの各種イオウ類似物が含まれる。例としては、リン酸モノヒドロカルビル、亜リン酸モノヒドロカルビル、モノ−、ジ−、トリ−、およびテトラ亜リン酸モノヒドロカルビル、モノ−、ジ−、トリ−、およびテトラ亜リン酸モノヒドロカルビル、リン酸ジヒドロカルビル、亜リン酸ジヒドロカルビル、モノ−、ジ−、トリ−、およびテトラチオ亜リン酸ジヒドロカルビル、モノ−、ジ−、トリ−、およびテトラチオリン酸ジヒドロカルビル、亜リン酸トリヒドロカルビル塩、リン酸トリヒドロカルビル、モノ−、ジ−、トリ−、およびテトラチオ亜リン酸トリヒドロカルビル、モノ−、ジ−、トリ−、およびテトラチオリン酸トリヒドロカルビル、各種ヒドロカルビルホスホン酸塩およびチオホスホン酸塩、各種ヒドロカルビル亜ホスホン酸塩およびチオ亜ホスホン酸塩、またポリリン酸およびポリチオリン酸の類似油溶性誘導体、その他数多数が挙げられる。このような化合物の数個の具体例に、リン酸トリクレジル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリフェニル、リン酸トリ−(2−エチルヘキシル)、チオ亜リン酸ジヘキシル、ブチルホスホン酸ジイソオクチル、リン酸トリシクロヘキシル、リン酸クレジルジフェニル、亜リン酸トリス(2−ブトキシエチル)、ジチオリン酸ジイソプロピル、テトラチオリン酸トリス(トリデシル)、リン酸トリス(2−クロロエチル)、およびその他の化合物などがある。
【0082】
一つの実施例で、当該のイオウ含有極圧添加剤は、少なくとも一つのジメルカプトチアジアゾール、またはそれらの油溶性誘導体である。このような物質は本明細書に記載の潤滑組成物に極圧および/または耐摩耗性をもたらす。
【0083】
潤滑組成物中で使用されるジメルカプトチアジアゾールには、以下の構造式で表される2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール(DMTD)が含まれるが、これらに限定はされない:
【化18】

式中RおよびRは、水素、および炭素数が1から30の直鎖および分岐鎖のアルキル基の中から選択され、aおよびbはそれぞれに1から3の間の整数の中から選択される。DMTDは1モルのヒドラジンあるいはヒドラジン塩と、2モルの二硫化炭素とをアルカ
リ媒体中で反応させ、続いて酸性化させることによって調整される。
【0084】
本明細書に記載の潤滑流体組成物には、前述の構造式で表されるDMTDまたはDMTDの誘導体が含まれる。例えば、米国特許第2,719,125号、2,719,126号、および3,087,937号には、各種2,5−ビス(ヒドロカーボンジチオ)−1,3,4−チアジアゾールの調整について記載されている。
【0085】
本明細書に記載の潤滑組成物中のイオウ含有および/またはリン含有の極圧添加剤の総量は、潤滑組成物中の活性イオウ含有量が約5,000ppmであるとして、潤滑組成物の総量の約0.01から約12.0重量パーセントである。別の例では、潤滑組成物中の活性イオウ含有量は約5,000ppmから約25,000ppm、またさらなる例では、潤滑組成物中の活性イオウ含有量は約15,000から約25,000ppmである。
【0086】
消泡剤
ある実施例では、当該組成物中での使用に適したもう一つの成分として消泡剤が含まれる。消泡剤はシリコン、ポリアクリレート、界面活性剤、その他の中から選択される。一つの好適なアクリル系消泡材料に、サイテック社(Cytec Surface Specialties)から入手可能なPC−2544がある。本明細書に記載の船舶用ギアオイル流体組成物中の消泡剤の量は組成物の総重量を基にして、約0.01重量%から約0.5重量%である。さらなる例では、消泡剤は約0.01重量%から約0.1重量%の量で存在する。
【0087】
摩擦低減剤
本開示のいくつかの実施例には、一つ以上の摩擦低減剤が含まれる。好適な摩擦低減剤には、イミダゾリン、アミド、アミン、コハク酸イミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、第4級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホン酸塩、金属含有化合物、その他が含まれるが、これらに限定はされない。
【0088】
当該の摩擦低減剤には以下の構造式で表される一つ以上のホスホン酸塩が含まれる:
【化19】

式中Rは炭素数が約12から約30のアルキル基またはアルケニル基、RおよびRはそれぞれに水素、アルキル、またはアルケニルグループである。例として、好適なアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、またはそれらの任意の組み合わせなどが含まれる。これらのホスホン酸塩の例としては、ジメチルトリアコンチルホスホン酸塩、ジメチルトリアコンテニルホスホン酸塩、ジメチルエイコシルホスホン酸塩、ジメチルヘキサデシルホスホン酸塩、ジメチルヘキサデセニルホスホン酸塩、ジメチルテトラコンテニルホスホン酸塩、ジメチルヘキサコンテニルホスホン酸塩、ジメチルドデシルホスホン酸塩、ジメチルドデセニルホスホン酸塩その他が挙げられる。一つの実施例において、Rは炭素数が約16から約20のアルキル基あるいはアルケニル基である。これらのホスホン酸塩の例としては、ジメチルヘキサ
デシルホスホン酸塩、ジメチルヘキサデセニルホスホン酸塩、ジメチルオクタデシルホスホン酸塩、ジメチルオクタデセニルホスホン酸塩、ジメチルエイコシルホスホン酸塩、その他が挙げられる。好適なアルキルホスホン酸モノエステルおよびそれらの製造プロセスについては、参照することにより本明細書に組み込まれている、US2004−0230068号、および米国特許第4,108,889号に記載されている。
【0089】
好適な摩擦低減剤には、直鎖、分岐鎖、または芳香族ヒドロカルビル基、あるいはそれらの混合物の中から選択されたヒドロカルビル基が含まれ、これらは飽和である場合も不飽和である場合もある。当該のヒドロカルビル基は、炭素および水素、またはイオウや酸素などのようなヘテロ原子から成り立つ。当該のヒドロカルビル基の炭素数は約12から約25であり、飽和である場合も不飽和である場合もある。
【0090】
好適な摩擦低減剤の別の例に、ポリアミンのアミドがある。このような化合物には、線状の、飽和あるいは不飽和ヒドロカルビル基、またはそれらの混合物が含まれ、また約12から約25の炭素原子を有する。
【0091】
好適な摩擦低減剤のさらなる例として、アルコキシル化アミンおよびアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。このような化合物には、線状の、飽和あるいは不飽和ヒドロカルビル基、またはそれらの混合物が含まれる。これらの炭素数は約12から約25である。例としては、エトキシル化アミンおよびエトキシル化エーテルアミンがある。
【0092】
当該のアミンおよびアミドは、そのままの形態、あるいは付加化合物または酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタホウ酸塩、ホウ酸、またはモノ−、ジ−あるいはトリ−アルキルホウ酸塩などのホウ素化合物との反応生成物の形態で使用される。その他の好適な摩擦低減剤については、参照することによって本明細書に組み込まれている米国特許第6,300,291号に記載されている。
【0093】
好適な摩擦低減剤には、有機、無灰(金属を含まない)、また窒素を含まない有機摩擦低減剤が含まれる。このような摩擦低減剤には、カルボン酸および無水物とアルカノールとを反応させることによって形成されるエステルが含まれる。その他の有用な摩擦低減剤には通常、親油性炭化水素鎖に共役結合している極性末端基(例えばカルボキシル基またはヒドロキシル基)が含まれる。エステルs ofカルボン酸および無水物とアルカノールとのエステルについては、米国特許第4,702,850号に記載されている。窒素を含まない有機無灰摩擦低減剤の別の例に、グリセロールモノオレエート(GMO)がある。その他の好適な摩擦低減剤については、参照することによって本明細書に組み込まれている米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0094】
好適な摩擦低減剤には、一つ以上のモリブデン化合物が含まれる。当該のモリブデン化合物には有機モリブデン化合物が含まれる。例えば当該モリブデン化合物には、一つ以上のモリブデンジアルキルジチオカルバメート、モリブデンジアルキルジチオリン酸塩、モリブデンジアルキルジチオホスフィネート、キサントゲン酸モリブデン、チオキサントゲン酸モリブデン、およびそれらの混合物などが含まれるが、これらに限定はされない。
【0095】
当該のモリブデン化合物は、単核、二核、三核、または四核である。また当該モリブデン化合物は有機モリブデン化合物であり得る。当該のモリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート(MoDTC)、ジチオリン酸モリブデン、モリブデンジチオホスフィネート、キサントゲン酸モリブデン、チオキサントゲン酸モリブデン、硫化モリブデン、三核有機モリブデン化合物、およびそれらの混合物からなる群の中から選択される。
【0096】
加えて、当該のモリブデン化合物は、酸性のモリブデン化合物である。これらには、モ
リブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、およびその他のアルカリ金属のモリブデン酸塩、またその他のモリブデン塩、例えばモリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl、MoOBr、MoCl、三酸化モリブデン、または同様の酸性モリブデン化合物などが含まれる。一方、モリブデンは、例えば米国特許第4,263,152号、4,285,822号、4,283,295号、4,272,387号、4,265,773号、4,261,843号、4,259,195号、および4,259,194号、またWO94/06897に記載の、塩基性窒素化合物のモリブデン/イオウ錯体によりこの組成物にもたらされる。
【0097】
本組成物中で有用なモリブデン化合物は、構造式Mo(ROCSおよびMo(RSCS,で表される有機モリブデン化合物である。式中Rは、通常炭素数が1から30、望ましくは2から12のアルキル、アリル、アラルキル、およびアルコキシアルキル、最も望ましくは炭素数が2から12のアルキルから成る群の中から選択された有機基である。この例に、モリブデンのジアルキルジチオカルバメートがある。
【0098】
好適なモリブデンジチオカルバメートは、以下の構造式によって表される:
【化20】

式中R、R、R、およびRはそれぞれに水素原子、CからC20のアルキル基、CからC20のシクロアルキル、アリル、アルキルアリル、またはアラルキル基、あるいはエステル、エーテル、アルコール、またはカルボキシル基を含むCからC20のヒドロカルビル基であり、X、X、Y、およびYはそれぞれにイオウまたは酸素原子を表す。
【0099】
、R、R、およびRに適した基の例としては、2−エチルヘキシル、ノニルフェニル、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、ラウリル、オレイル、リノレイル、シクロヘキシル、およびフェニルメチルなどが挙げられる。RからRはそれぞれにCからC18のアルキル基を有する。XおよびXは同一であることがあり、またYとYも同一であることがある。XおよびXには両方ともイオウ原子が含まれ、YおよびYには両方とも酸素原子が含まれる。
【0100】
モリブデンジチオカルバメートのさらなる例としては、C−C18のジアルキルまたはジアリルジチオカルバメート、あるいはジブチル−、ジアミル−ジ−(2−エチルヘキシル)−、ジラウリル−、ジオレイル−、およびジシクロヘキシル−ジチオカルバメートのようなアルキル−アリルジチオカルバメートが挙げられる。
【0101】
好適な有機モリブデン化合物の別の種類に、構造式Moで表される三核モリブデン化合物、およびそれらの混合物がある。式中Lは化合物をオイルに可溶性または分散可能にするのに十分な数の炭素原子を有する有機基を含んだ、個々に選択されたリガンドを表し、nは1から4であり、kは4から7の間で変化し、Qは水、アミン、アルコール、ホスフィン、およびエーテルなどの中性電子供与化合物群から選択され、またzは0から5であり、不定比値を含む。すべてのリガンドの有機基の炭素数の合計は最低21、例えば少なくとも25、30、または35である。その他の好適なモリブデン化合物
については、参照することにより本明細書に組み込まれている米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0102】
当該モリブデン化合物は、約10ppmから200ppmのモリブデンをもたらす量で、完全に調合された船舶用の潤滑剤中に存在する。さらなる例としては、当該モリブデン化合物は、約75to125ppmのモリブデンを提供する量で存在する。
【0103】
本明細書に記載の組成物の調合に使用される添加剤は、個々にまたは各種の組み合わせによって基油中に混入される。しかしながら、添加剤濃縮物(即ち添加剤と炭化水素溶媒などの希釈剤)を使用してすべての成分を一度に混和することが望ましい。添加剤濃縮物の使用により、添加剤濃縮物の形態での成分の組み合わせによって得られる相互間の適合性が活かされれる。また、濃縮物の使用により混和にかかる時間を短縮し、また混和エラーの発生の可能性を減少することができる。
【0104】
本開示は、2サイクルあるいは4サイクルのアウトボードエンジンのギア、あるいは船舶のインボード/アウトボード・ドライブトレインのアウトドライブのギアに使用するために特に調合された新規の潤滑油ブレンドを提供する。本開示の実施例は、船舶用に適し、抗酸化性、耐磨耗特性、防錆性、せん断安定性、耐水性、空気連行性、および消泡性が改善された潤滑油を提供する。
【0105】
本開示による潤滑剤は、船舶用ギアオイルとしての使用に適している。さらに、本潤滑剤は、回転ドライブシャフト、ユニバーサルジョイントまたはそれに対応するもの、前進と後退の両方のギアとドライビングピニオンを備えたかさ歯車セット、一対のみのギアを備えたかさ歯車セット、前進または後退のギアを選択するかみ合いクラッチ、およびこれらの成分からのラジアルおよびスラスト荷重をサポートするベアリングなどを含むが、これらに限定はされない船舶のエンジンの各種ギア成分用に適している。
【0106】

テスト
乳化テスト
メーカーの要求に加え、中古の船舶用ギアオイルに水が浸入することを表した、中古船舶用ギアオイルのフィールドサンプルから得られたデータにより、乳化テストの必要性が生まれた。水のオイルからの分離を示すASTM D1401デマルジョンテストは、水とオイルの完全な混合を評価するエマルジョンテストのフレームワークとなる。
【0107】
ASTM D1401デマルジョンテストの修正である乳化テストを行い、満足の行く乳化特性を評価した。通常、乳化テストの最中、ある量の試験流体と、蒸留水、海水、または人工海水のうちの一つの一定量をメスシリンダー中で混合して機械的にかくはんし、約30Cから約90Cの範囲内の一定温度で24時間±10分間おいた。このメスシリンダーを観察し、サンプル流体、水、および存在する乳化層の堆積の測定値を記録した。約24時間後に水の層が存在しなかった場合、このサンプル流体のスコアは0となり、約24時間後の完全な乳化を示す。また3mLの水が目に見えて分離していた場合、このサンプル流体のスコアは3となり、この流体が3mLの水を乳化できなかったことを示す。
【0108】
乳化テストの具体的な実施例において、20mLの人工海水をメスシリンダー中に入れ、次に60mLのテスト流体サンプルを入れた。ASTM D−1141−52のセクション4、表1、フォーミュラAに基づいて人工海塩を調整した。次にASTM D1401テスト装置を使用して、約82Cの好適な温度にメスシリンダーの中身を加熱しながら、二種類の異なった液体を完全に混合・かくはんし乳化させた。平刃のへらで5分間か
くはんした後このへらを完全に取り出し、メスシリンダーとその内容物を加熱したオイルバスに入れ、温度約82Cで約24時間おいた。約24時間の終わりに、このテスト流体サンプルと水のエマルジョンをテスト流体、水、および存在するエマルジョンの量について評価した。エマルジョンの最高値は80mL、水の最高値は20mLであった。乳化性を示さなかったテスト流体では、60mLのテスト流体の分離、20mLの水の分離、および0mLのエマルジョンの分離が見られた。エマルジョンを維持したテスト流体では、80mLのエマルジョン、0mLのテスト流体の分離、0mLの水の分離が起こった。乳化テストでの満足のいくスコアは約5mLの水の分離である。別の例では、乳化テストでの満足のいくスコアは約1mLの水の分離、また別の例では、乳化テストでの満足のいくスコアは約0mLの水の分離である。
【0109】
4ボール極圧溶接点テスト
テスト流体と市販の流体をの4ボール極圧溶接点テストを、流体の性能のより正確な値を得るために負荷の間隔を10kgfに減少した以外はASTM 2783に基づいて行った。このテストでは、極度な高圧下で一つのスティールボールが他の三つのスティールボールと溶接するのを防ぐ、潤滑剤の能力が測定される。これは潤滑剤業界で一般に行われている簡単なテストである。極圧溶接点は高いほど望ましい。例えば200kgfの値はEPからの保護が十分でないことを示す。
【0110】
L−42ショックテスト
テスト流体サンプルAと比較例H、I、およびKの製品の対引っかき傷特性を、高速・ショック条件下でDANAモデル44ハイポイドリアアクスルを使用して、ASTM刊行のSTP 512A(ASTMインターナショナルテストモニター(ASTM International Test Monitoring)のウェブサイト:http://www.astmtmc.cmu.edu/から入手可能)に記載されている、L−42アクスルショックテスト法によってテストした。以下の表に表されるテストの結果は、ピニオンとリングギア上の傷のついた面積に基づいたもので、参照用のオイル組成物との比較に基づいて合格/不合格が決定された。合格/不合格の基準は、合格の基準となるオイルテスト上に比べ、リングおよびピニオンギア上の引っかき傷の量が少ないことを要求する。
【0111】
テスト流体
発明された六種類のテスト流体を用意し、乳化テストおよび4ボールEP溶接点テストを行った。さらに市販のギアオイルである五種類の比較用テスト流体についても乳化テストおよび4ボールEP溶接点テストを行った。発明の各流体には次の基本流体が含まれる:界面活性剤、イオウ含有極圧添加剤、リン含有耐摩耗化合物、ZDDP耐磨耗化合物、モリブデン含有摩擦低減剤、油溶性ホスホン酸塩摩擦低減剤、少なくとも一つの分散剤、少なくとも一つの消泡剤、抗酸化剤、少なくとも一つの粘度指数向上剤、少なくとも一つの流動点降下剤、および少なくとも一つの多量の基油。使用された界面活性剤には、ユニケマ社(Uniqema)またはその子会社であるクローダ社(Croda)から入手が可能なハイパーマー(HYPERMER(登録商標))B210界面活性剤が含まれている。以下の例の基本流体の添加剤組成物は、金属含有洗浄剤のレベルが発明の各流体ごとに多様であること以外は、各テスト流体において一定に保たれた。テストされた流体とその結果を以下に表す。
【0112】
テスト流体サンプルAは、約0.022重量%の金属含有洗浄剤、合計約28ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、および約494ppmのリンを含む発明のテスト流体である。当流体のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属とリンの比率は、約0.06ppm/ppmである。当流体は水の分離が0mL、乳化量が80mLであったため、エマルジョンテストに合格した。また当流体は4ボールEP溶接点が約390kg
f、またL−42ショックテストにも合格した。
【0113】
テスト流体サンプルBは、約0.044重量%の金属含有洗浄剤、合計約54ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、および約495ppmのリンを含む発明のテスト流体である。この流体のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属とリンの比率は約0.11ppm/ppmであった。当流体は水の分離が0mL、乳化量が80mLであったため、エマルジョンテストに合格した。当流体の4ボールEP溶接点は約390kgfであった。
【0114】
テスト流体サンプルCは、約0.088重量%の金属含有洗浄剤、合計約87ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、および約495ppmのリンを含む発明のテスト流体である。この流体のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属とリンの比率は約0.18ppm/ppmであった。当流体は水の分離が0mL、乳化量が80mLであったため、エマルジョンテストに合格した。当流体の4ボールEP溶接点は約380kgfであった。
【0115】
テスト流体サンプルDは、約0.176重量%の金属含有洗浄剤、合計約167ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、および約499ppmのリンを含む発明のテスト流体である。この流体のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属とリンの比率は約0.33ppm/ppmであった。当流体は水の分離が0mL、乳化量が80mLであったため、エマルジョンテストに合格した。当流体の4ボールEP溶接点は約380kgfであった。
【0116】
テスト流体サンプルEは、約0.352重量%の金属含有洗浄剤、合計約313ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、および約502ppmのリンを含む発明のテスト流体である。この流体のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属とリンの比率は約0.62ppm/ppmであった。当流体は水の分離が0mL、乳化量が80mLであったため、エマルジョンテストに合格した。当流体の4ボールEP溶接点は約400kgfであった。
【0117】
テスト流体サンプルFは、約0.704重量%の金属含有洗浄剤、合計約631ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、および約499ppmのリンを含む発明のテスト流体である。この流体のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属とリンの比率は約1.26ppm/ppmであった。当流体は水の分離が0mL、乳化量が80mLであったため、エマルジョンテストに合格した。当流体の4ボールEP溶接点は約400kgfであった。
【0118】
テスト流体比較用サンプルGは、合計約5ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属と約364ppmリンを含む、市販の80W90グレードの流体である。当流体のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属とリンの比率は約0.01ppm/ppmであった。当流体は水の分離が20mL、乳化量が0mLであったため、エマルジョンテストは不合格であった。当流体の4ボールEP溶接点は約230kgfであった。
【0119】
テスト流体比較用サンプルHは、合計約2612ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属と約332ppmのリンを含む、市販の85グレードの流体である。当流体のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属とリンの比率は約7.87ppm/ppmであった。当流体は水の分離が20mL、乳化量が0mLであったため、エマルジョンテストは不合格であった。当流体の4ボールEP溶接点は約315kgf、L−42ショックテストも不合格であった。
【0120】
テスト流体比較用サンプルIは、合計約1ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属と約939ppmのリンを含んだ、市販の75W90合成流体である。当流体のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属とリンの比率は約0ppm/ppmであった。当流体は水の分離が20mL、乳化量が0mLであったため、エマルジョンテストは不合格であった。当流体の4ボールEP溶接点は約290kgf、またL−42ショックテストに合格した。
【0121】
テスト流体比較用サンプルJは、合計約2ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属と約940ppmのリンを含んだ、市販の80W90グレードの流体である。当流体のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属とリンの比率は約0ppm/ppmであった。当流体は水の分離が約0mL、乳化量が80mLであったため、エマルジョンテストに合格した。当流体の4ボールEP溶接点は約290kgfであった。
【0122】
テスト流体比較用サンプルKは、合計約25ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属および約859ppmのリンを含む、市販の80W90グレードの流体である。当流体のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属とリンの比率は約0.03ppm/ppmであった。当流体は水の分離が約0mL、乳化量が80mLであったため、エマルジョンテストに合格した。当流体の4ボールEP溶接点は約315kgf、またL−42ショックテストには不合格であった。
【表2】

【0123】
上記の表に見られるように、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属とリンの比率が
約0.06から約1.26であるテスト流体サンプルA−Fはすべてエマルジョンテストに合格した。さらに、これらのサンプルはエマルジョンテストに合格したのみならず、比較用のテスト流体と比べて溶接点の結果も優れていた。テスト流体サンプルA−Fの溶接点の結果は約350kgf以上であった。さらに驚くべきことに、テスト流体サンプルA−Fの溶接点の結果は約375kgf以上でもあった。比較用のサンプルでこのような優れた極圧溶接点を出したものは一つもなかった。最後に、4−ボールEP溶接点テストに加え、発明のテスト流体サンプルAは、L−42ショックテスト、および水の硫化テストにも同時に合格した。
【0124】
本明細書の全体を通した多くの箇所で、多数の米国特許が参照されている。このような引用文献はすべて、完全に説明されたものとして本開示に明白に組み込まれている。
【0125】
本開示の他の実施例は、本明細書を検討することおよび本明細書に開示された発明を実施することにより、当技術分野に精通した技術者には明白なものである。本明細書および添付の請求項の英文において使用されている「a」および/または「an」などの単語は、一つのものあるいは一つ以上のものを指す。本明細書および請求項で使用されている、成分の量や、分子量、パーセンテージ、比率、反応条件などの特性を表す数値はすべて、特記されていない限り、「約」という言葉で修飾されていると理解されるべきである。従って、それに反する指定がない限り、本明細書および請求項で示されている数値パラメータは、開示された実施例によって得ようとされている希望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、また本請求項の範囲に対応する原理の適応を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも使用された有効数字の数と通常の四捨五入の使用を考慮に入れて解釈されるべきものである。開示された実施例の広い範囲を説明する数値の範囲およびパラメータは近似値ではあるが、特定な例において示される数値はできる限り正確に記録されている。しかしながら、いかなる数値も、それぞれの試験測定に見られる標準偏差の結果必然的に生じる若干のエラーを本質的に含んでいる。本明細および実施例は例示としてのみ解釈され、本発明の真の範囲および精神は、以下の請求項に示される。
【0126】
前述の実施例はその実行においてかなり変化する余地がある。従って当実施例は、上記に述べられた特定の例証に制限されることを意図したものではない。むしろ前述の実施例は、法律的に使用可能なそれらの対応範囲を含む、添付の請求項の精神および範囲内にある。
【0127】
当特許権者は、開示された実施例のいずれをも一般に提供することは意図しておらず、また開示された修正または変更は、それらがすべて完全に請求項の範囲内に収まらない状態になるまで、均等論により当実施例の一部であると見なされる。
【0128】
本発明の主な特徴及び態様を示せば以下のとおりである。
【0129】
1.船舶用の潤滑剤であり、
a)多量の基油、
b)少なくとも一つの金属含有洗浄剤、
c)少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および
d)少なくとも一つの界面活性剤
を含む船舶用の潤滑剤。
2.潤滑剤の総重量を基にした含有量(ppm)の比率が約0.025から約1.5(ppm/ppm)である、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属およびリンをさらに含む、上記1に記載の船舶用の潤滑剤。
3.潤滑剤の水の乳化テストにおける水の分離のスコアが約5mLまたはそれより小さい
、上記1に記載の船舶用の潤滑剤。
4.前述の少なくとも一つの金属洗浄剤が過塩基性カルシウムフェネートである、上記1に記載の船舶用の潤滑剤。
5.前述の少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤に少なくとも一つの亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物が含まれる、上記1に記載の船舶用の潤滑剤。
6.上述の少なくとも一つの界面活性剤に一般式(A−COO)Bで表されるブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーが含まれる、上記1に記載の船舶用の潤滑剤。式中mは最小値が2である整数、Aは分子量が少なくとも500であるポリマー成分であり、また次の一般構造式で表される油溶性モノカルボン酸錯体の残基である:
【化21】

式中Rは水素または一価の炭化水素または置換された炭化水素基、Rは水素またはCからC24の一価の炭化水素基、RはCからC24の二価の炭化水素基、nは0または1、またpは0または200以下の整数である。またBは分子量が少なくとも500であるポリマー成分であり、mが2である場合は、次の一般式で表される水溶性ポリアルキレングリコールの二価の残基である:
【化22】

式中Rは水素あるいはCからCのアルキル基、qは10から500までの整数である。またmが2より大きい場合は、Bは次の一般式で表される水溶性ポリエーテルポリオールの、原子価がmの残基である:
【化23】

式中Rおよびmは前述と同様、rは次のユニットの分子中での総数が少なくとも10であることを条件として0または1から500までの整数である:
【化24】

またRは、分子中にアルキレンオキサイドに反応性を持つ水素原子をm個含有する有機化合物の残基である。
7.上述の組成物に亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物から得られた約200ppmから約2000ppmのリンが含まれる、上記5に記載の船舶用の潤滑剤。
8.上述の組成物に、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物から得られた約200から600ppmのリンが含まれる、上記7に記載の船舶用の潤滑剤。
9.上述の組成物に、金属含有洗浄剤からの約10ppmから約800ppmの金属が含まれる、上記1に記載の船舶用の潤滑剤。
10.極圧添加剤、耐磨耗剤、摩擦低減剤、分散剤、消泡剤、抗酸化剤、粘度指数向上剤、および流動点降下剤から成る群から選択された少なくとも一つの成分をさらに含む、上記1に記載の船舶用の潤滑剤。
11.上記1に記載の組成物で潤滑された船舶用エンジンのギア成分。
12.船舶など、海洋環境で使用される潤滑剤中での仕様に適した添加剤組成物であり、a)少なくとも一つの金属含有洗浄剤、
b)少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および
c)少なくとも一つの界面活性剤
を含む添加剤組成物。
13.潤滑剤の総重量を基にした含有量(ppm)の比率が約0.025から約1.5(ppm/ppm)である、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属およびリンをさらに含む、上記12に記載の添加剤組成物
14.潤滑剤の水の乳化テストにおける水の分離のスコアが約5mLまたはそれより小さい、上記12に記載の添加剤組成物。
15.前述の少なくとも一つの金属洗浄剤が過塩基性カルシウムフェネートである、上記12に記載の添加剤組成物。
16.前述の少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤に少なくとも一つの亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物が含まれる、上記12に記載の添加剤組成物。
17.上述の少なくとも一つの界面活性剤に一般式(A−COO)Bで表されるブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーが含まれる、上記12に記載の添加剤組成物。式中mは最小値が2である整数、Aは分子量が少なくとも500であるポリマー成分であり、また次の一般構造式で表される油溶性モノカルボン酸錯体の残基である:
【化25】

式中Rは水素または一価の炭化水素または置換された炭化水素基、Rは水素またはCからC24の一価の炭化水素基、RはCからC24の二価の炭化水素基、nは0または1、またpは0または200以下の整数である。またBは分子量が少なくとも500であるポリマー成分であり、mが2である場合は、次の一般式で表される水溶性ポリアルキレングリコールの二価の残基である:
【化26】

式中Rは水素あるいはCからCのアルキル基、qは10から500までの整数である。またmが2より大きい場合は、Bは次の一般式で表される水溶性ポリエーテルポリオールの、原子価がmの残基である:
【化27】

式中Rおよびmは前述と同様、rは次のユニットの分子中での総数が少なくとも10であることを条件として0または1から500までの整数である:
【化28】

またRは、分子中にアルキレンオキサイドに反応性を持つ水素原子をm個含有する有機化合物の残基である。
18.極圧添加剤、耐磨耗剤、摩擦低減剤、分散剤、消泡剤、抗酸化剤、粘度指数向上剤、および流動点降下剤から成る群から選択された少なくとも一つの成分をさらに含む、上記12に記載の添加剤組成物。
19.少量の添加剤組成物を多量の基油に加えることを含んだ、船舶での使用に適した潤滑剤を作る方法であり、当該の少量の添加剤組成物に、
a)少なくとも一つの金属含有洗浄剤、
b)少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および
c)少なくとも一つの界面活性剤
が含まれている、船舶での使用に適した潤滑剤を作る方法。
20.潤滑剤の総重量を基にした、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量(ppm)とリンの含有量(ppm)の比率が約0.025から約1.5(ppm/ppm)である、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属およびリンをさらに含んだ、上記19に記載の方法。
21.潤滑剤の水の乳化テストにおける水の分離のスコアが約5mLまたはそれより小さい、上記19に記載の方法。
22.上述の少なくとも一つの界面活性剤に、一般式(A−COO)Bで表されるブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーが含まれる、上記19に記載の方法。式中mは最小値が2である整数、Aは分子量が少なくとも500であるポリマー成分であり、また次の一般構造式で表される油溶性モノカルボン酸錯体の残基である:
【化29】

式中Rは水素または一価の炭化水素または置換された炭化水素基、Rは水素またはC
からC24の一価の炭化水素基、RはCからC24の二価の炭化水素基、nは0または1、またpは0または200以下の整数である。Bは分子量が少なくとも500であるポリマー成分であり、mが2である場合は、次の一般式で表される水溶性ポリアルキレングリコールの二価の残基である:
【化30】

式中Rは水素あるいはCからCのアルキル基、qは10から500までの整数である。またmが2より大きい場合は、Bは次の一般式で表される水溶性ポリエーテルポリオールの、原子価がmの残基である:
【化31】

式中Rおよびmは前述と同様、rは次のユニットの分子中での総数が少なくとも10であることを条件として0または1から500までの整数である:
【化32】

またRは、分子中にアルキレンオキサイドに反応性を持つ水素原子をm個含有する有機化合物の残基である。
23.船舶のエンジンギア成分に船舶用の潤滑剤を添加すること、およびそのエンジンを作動することを含んだ、船舶のエンジンギア成分を潤滑する方法であり、当該の潤滑剤に、
a)多量の基油、
b)少なくとも一つの金属含有洗浄剤、
c)少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および
d)少なくとも一つの界面活性剤
が含まれている船舶のエンジンギア成分の潤滑方法。
24.潤滑剤の総重量を基にした、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量(ppm)とリンの含有量(ppm)の比率が約0.025から約1.5(ppm/ppm)である、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属およびリンをさらに含んだ、上記23に記載の方法。
25.潤滑剤の水の乳化テストにおける水の分離のスコアが約5mLまたはそれより小さい、上記23に記載の方法。
26.多量の基油を、少なくとも一つの金属含有洗浄剤、少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および少なくとも一つの界面活性剤と組み合わせることを含んだ、船舶での使
用に適したギアオイルの耐水性を向上させる方法。
27.潤滑剤の総重量を基にした、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量(ppm)とリンの含有量(ppm)の比率が約0.025から約1.5(ppm/ppm)である、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属およびリンをさらに含んだ、上記26に記載の方法。
28.潤滑剤の水の乳化テストにおける水の分離のスコアが約5mLまたはそれより小さい、上記26に記載の方法。
29.多量の基油を、少なくとも一つの金属含有洗浄剤、少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および少なくとも一つの界面活性剤と組み合わせることを含んだ、船舶での使用に適したギアオイルの極圧特性を向上させる方法。
30.潤滑剤の総重量を基にした、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量(ppm)とリンの含有量(ppm)の比率が約0.025から約1.5(ppm/ppm)である、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属およびリンをさらに含んだ、上記29に記載の方法。
31.潤滑剤の極圧溶接点テストのスコアが約350kgf以上である、上記30に記載の方法。
32.潤滑剤の極圧溶接点テストのスコアが約375kgf以上である、上記31に記載の方法。
33.船舶用の潤滑剤であり、
a)多量の基油と
b)極圧溶接点を向上する効果のある量のリンベースの耐磨耗剤を含み、また
c)上述の船舶用の潤滑剤の4ボール極圧溶接点スコアが約350kgf以上、水の乳化テストにおける水の分離のスコアが約5mLまたはそれより小さくなるような、船舶用の潤滑剤。
34.金属含有洗浄剤をさらに含む、上記33に記載の船舶用の潤滑剤。
35.少なくとも一つの界面活性剤をさらに含む、上記33に記載の船舶用の潤滑剤。
36.船舶用の潤滑剤であり、
a)多量の基油と、
b)リンベースの耐磨耗剤を含み、また
c)上述の船舶用の潤滑剤の4ボール極圧溶接点スコアが約350kgf以上、L−42スコアが合格点、水の乳化テストにおける水の分離のスコアが約5mLまたはそれより小さくなるような、船舶用の潤滑剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶用の潤滑剤であり、
a)多量の基油、
b)少なくとも一つの金属含有洗浄剤、
c)少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および
d)少なくとも一つの界面活性剤
を含む船舶用の潤滑剤。
【請求項2】
潤滑剤の総重量を基にした含有量(ppm)の比率が約0.025から約1.5(ppm/ppm)である、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属およびリンをさらに含む、請求項1に記載の船舶用の潤滑剤。
【請求項3】
潤滑剤の水の乳化テストにおける水の分離のスコアが約5mLまたはそれより小さい、請求項1に記載の船舶用の潤滑剤。
【請求項4】
前述の少なくとも一つの金属洗浄剤が過塩基性カルシウムフェネートである、請求項1に記載の船舶用の潤滑剤。
【請求項5】
前述の少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤に少なくとも一つの亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物が含まれる、請求項1に記載の船舶用の潤滑剤。
【請求項6】
上述の少なくとも一つの界面活性剤に一般式(A−COO)Bで表されるブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーが含まれる、請求項1に記載の船舶用の潤滑剤。式中mは最小値が2である整数、Aは分子量が少なくとも500であるポリマー成分であり、また次の一般構造式で表される油溶性モノカルボン酸錯体の残基である:
【化1】

式中Rは水素または一価の炭化水素または置換された炭化水素基、Rは水素またはCからC24の一価の炭化水素基、RはCからC24の二価の炭化水素基、nは0または1、またpは0または200以下の整数である。またBは分子量が少なくとも500であるポリマー成分であり、mが2である場合は、次の一般式で表される水溶性ポリアルキレングリコールの二価の残基である:
【化2】

式中Rは水素あるいはCからCのアルキル基、qは10から500までの整数である。またmが2より大きい場合は、Bは次の一般式で表される水溶性ポリエーテルポリオールの、原子価がmの残基である:
【化3】

式中Rおよびmは前述と同様、rは次のユニットの分子中での総数が少なくとも10であることを条件として0または1から500までの整数である:
【化4】

またRは、分子中にアルキレンオキサイドに反応性を持つ水素原子をm個含有する有機化合物の残基である。
【請求項7】
上述の組成物に亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物から得られた約200ppmから約2000ppmのリンが含まれる、請求項5に記載の船舶用の潤滑剤。
【請求項8】
上述の組成物に、金属含有洗浄剤からの約10ppmから約800ppmの金属が含まれる、請求項1に記載の船舶用の潤滑剤。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物で潤滑された船舶用エンジンのギア成分。
【請求項10】
船舶など、海洋環境で使用される潤滑剤中での仕様に適した添加剤組成物であり、
a)少なくとも一つの金属含有洗浄剤、
b)少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および
c)少なくとも一つの界面活性剤
を含む添加剤組成物。
【請求項11】
少量の添加剤組成物を多量の基油に加えることを含んだ、船舶での使用に適した潤滑剤を作る方法であり、当該の少量の添加剤組成物に、
a)少なくとも一つの金属含有洗浄剤、
b)少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および
c)少なくとも一つの界面活性剤
が含まれている、船舶での使用に適した潤滑剤を作る方法。
【請求項12】
船舶のエンジンギア成分に船舶用の潤滑剤を添加すること、およびそのエンジンを作動することを含んだ、船舶のエンジンギア成分を潤滑する方法であり、当該の潤滑剤に、
a)多量の基油、
b)少なくとも一つの金属含有洗浄剤、
c)少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および
d)少なくとも一つの界面活性剤
が含まれている船舶のエンジンギア成分の潤滑方法。
【請求項13】
多量の基油を、少なくとも一つの金属含有洗浄剤、少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および少なくとも一つの界面活性剤と組み合わせることを含んだ、船舶での使用に適したギアオイルの耐水性を向上させる方法。
【請求項14】
多量の基油を、少なくとも一つの金属含有洗浄剤、少なくとも一つのリンベースの耐磨耗剤、および少なくとも一つの界面活性剤と組み合わせることを含んだ、船舶での使用に適したギアオイルの極圧特性を向上させる方法。
【請求項15】
船舶用の潤滑剤であり、
a)多量の基油と
b)極圧溶接点を向上する効果のある量のリンベースの耐磨耗剤を含み、また
c)上述の船舶用の潤滑剤の4ボール極圧溶接点スコアが約350kgf以上、水の乳化テストにおける水の分離のスコアが約5mLまたはそれより小さくなるような、船舶用の潤滑剤。
【請求項16】
船舶用の潤滑剤であり、
a)多量の基油と、
b)リンベースの耐磨耗剤を含み、また
c)上述の船舶用の潤滑剤の4ボール極圧溶接点スコアが約350kgf以上、L−42スコアが合格点、水の乳化テストにおける水の分離のスコアが約5mLまたはそれより小さくなるような、船舶用の潤滑剤。

【公開番号】特開2008−274284(P2008−274284A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118687(P2008−118687)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】