説明

船舶用ドーリー

【課題】2馬力程度のエンジンを搭載した場合でも、エンジンの回転が可能なようにシャフトを斜め上方に保持できるようにし、この際、可動部が錆び付いて動きにくくなったりするのを防止するとともに、船舶内からシャフトをより簡単に操作できるようにする。
【解決手段】船体側のブラケットに直線状またはくの字型の長孔と円弧状のガイドを形成し、ガイドの内側の上部と斜め上部と下部にストッパa、b、cを内側に向けて切り込んだ状態で設ける。そしてブラケットとシャフト10の基端部を、シャフト10の揺動軸孔とガイド軸孔を挿通して固定される揺動軸7とガイド軸8の2本の軸を介して揺動自在に一体化し、ガイド軸8を各ストッパa、b、cに嵌合させることで、シャフトの揺動位置を上方、斜め上方、下方の位置で規制できるようにする。また、シャフト10に把手15を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば地上から水上にボートを移動させる際に用いられる船舶用ドーリーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばエアチューブに空気を入れて膨らませるインフレータブルボート等の小型船舶を進水させる際、陸上を移動しやすくするためボート船尾のトランサム板等にブラケットを取り付け、このブラケットに車輪のついたシャフトを取り付けて陸上を運搬し、進水した時点でシャフトを揺動させて車輪を上方に移動させて水の抵抗になるのを防止するような技術が知られており、この際、水上を航行中、見栄えが悪くなるのを防止するため、フック部材やピン部材を使用してシャフトを斜め上方に保持できるようにした技術も知られている。(例えば、特許文献1参照。)
また、シャフトを上方に揺動させた際、水上航行時に車輪が特別な効果のある役割を果たしていなことに着目し、車輪を金属製ホイールと空気レスタイヤから構成し、海上で停泊等する時のアンカーとして活用することにより、船体のローリング緩和を図るようにした技術も知られている。(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−196806号広報
【特許文献2】特開2005−212684号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばボート長3m未満のインフレータブルボート等の場合、2馬力以下のエンジンを使用すれば船舶免許や船舶検査等が不要なため、手軽な船舶として近年人気を博するようになっているが、2馬力エンジンはプロペラ回転方向が一方向のものが多く、後進する際には、エンジンを180度回転させる必要がある。一方、船体のサイズは小さく、甲板幅やトランサム幅も小さいため、トランサム板のエンジン装着位置を挟んで取り付けられる左右一対のドーリー幅が狭くなり、シャフトを上方に揺動させて車輪を真上に立ち上げた状態では、エンジンと車輪が干渉してエンジンを回転操作することができなくなる。
このため、シャフトを斜め角度にできる前記特許文献1のような技術を採用することが好ましいが、前記特許文献1の場合は、車輪を斜め上方に保持するため、フック部材やピン部材を使用しているため、可動部が海水で錆び付いたりすると操作しにくくなるという問題がある。また、水中に進水した際、シャフトを揺動させる操作を船舶内から行うのが難しいという問題もあった。
【0005】
そこで本発明は、2馬力のエンジンを搭載した場合でも、エンジンの回転が可能なようにシャフトを斜め上方に保持できるようにし、この際、可動部が錆び付いて動きにくくなったりするのを防止するとともに、船舶内からシャフトをより簡単に操作できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、回転自在な車輪を先端部に取着せしめたシャフトの基端部が、船体のトランサム板に取り付けられるブラケットによって、揺動自在に支持される船舶用ドーリーであって、
前記シャフトの基端部には、シャフトを揺動させる際に揺動中心となる揺動軸が挿通する揺動軸孔と、シャフトの揺動をガイドするためのガイド軸が挿通するガイド軸孔を設け、
前記ブラケットには、前記揺動軸が挿通する長孔と、前記ガイド軸を案内するためのガイドを設けるとともに、前記ガイドには、揺動位置を上方及び斜め上方及び下方の位置で規制するための少なくとも3箇所のストッパを設け、
前記ブラケットを船体のトランサム板に対して外方に突出して固定し、且つ前記ブラケットと前記シャフトの基端部を、前記シャフトの揺動軸孔とガイド軸孔を挿通して固定される揺動軸とガイド軸の2本の軸を介して揺動自在に一体化するようにした。
【0007】
そして、揺動軸を長孔内で回動させ、ガイドによってガイド軸を案内することによって、シャフトの回動をスムーズに行わせるようにし、ガイド軸が所定のストッパの位置までくると、ガイド軸をストッパに嵌合させれば、その位置でシャフトの位置が固定される。そして、下方のストッパは、車輪を下方に向けて地上を走行する際に使用し、上方と斜め上方のストッパは、ボートが水中を航行するときに使用するが、斜め上方のストッパは、エンジンの向きを180度回転させる際に車輪に干渉させたくない場合に使用する。
ここで、揺動軸を挿通する孔は、揺動の中心が一点に決まる円形の孔であれば、ガイドにガイド軸を移動させたり、ガイドのストッパにガイド軸を嵌合させることが困難であるため、本発明は揺動の中心が一点に固定されない長孔とするものであり、その溝幅や長さは、揺動軸やガイドの形状によって適宜設定される。これにより、シャフトの揺動をスムーズに行える。また、長孔はガイド形状またはストッパの位置等によって、折曲した形状であってもよい。
また、揺動軸やガイド軸がこのような長孔内またはガイドを自由に動けるように空間に余裕を持たせて挿通しているため、各軸等が錆びたような場合でも揺動動作に支障が生じにくい。
なお、ガイドの形状としては、半円形の円弧でも、楕円形の円弧でも、その他の形状でもよく、また、ガイドとしては、ブラケットの外周縁部にガイド形状に合わせた形状を刻設したものでもよく、ブラケットの中間部にガイド形状に合わせたガイド溝を彫り込んだものでもよい。
【0008】
ここで、本発明にあっては、前記揺動軸が挿通するブラケットの長孔として、直線状の長孔か、中間部が折り曲げられたくの字型の長孔であるようにしてもよい。
そして、直線状の長孔にするときは、孔幅を若干太めにして揺動軸との間に余裕を持たせるようにし、くの字型に折り曲げた長孔にするときは、折り曲げた部分の幅を他の部分より大きくしておくようにすれば、シャフトの揺動がスムーズに行われるようになって効果的である。
【0009】
また、本発明にあっては、前記ガイドが円弧状のガイド溝であってもよい。
このようなガイド溝を設けることにより、ガイドの一端側が外部に露出せず、ガイドの形状を保護できる。
【0010】
また、本発明にあっては、前記シャフトには、揺動させる際に手で握ることのできる把手を取り付けてもよい。
このような把手を設けることにより、船舶を水中に入れた時に、上方にシャフトを引き上げる等の船舶内からシャフトを揺動させる操作をより楽に行うことができるようになる。
【0011】
また本発明にあっては、前記ガイドに、前記3箇所以外にシャフトの揺動位置を斜め下方の位置で規制するためのストッパを設けてもよい。
そしてこのストッパにガイド軸を嵌合させれば、車輪を斜め下方の位置にして地上を走行させることができ、例えば、船体下面の一部が後方に張り出しているような場合に、張り出し部と車輪の干渉を避けることができる。
【発明の効果】
【0012】
ブラケットに長孔とガイドを形成し、これに揺動軸孔とガイド軸孔を有するシャフトに固定される揺動軸とガイド軸の二本の軸を介して一体化させるとともに、ガイドに、シャフトの揺動位置を上方、斜め上方、下方の位置で規制することのできる少なくとも3箇所のストッパを設けることにより、例えば2馬力程度の出力の小さいエンジンを装着した小型のボートの場合でも、エンジンの向きを自由に変更することができるようになる。この際、2本の軸をブラケットの長孔や、ガイドに挿通させている構造であるため、錆等が発生しても揺動等の動作に支障は生じにくい。
この際、揺動軸が挿通するブラケットの長孔を、直線状の長孔か、くの字型の長孔にすることで、シャフトの揺動や固定位置への移動をスムーズに行わせることができ、また、ガイドが円弧状のガイド溝であれば、ガイド形状が変形することなく、保護される。
また、シャフトに把手を設けることにより、船舶内からシャフトを揺動させる動作をより楽に行うことができる。
また、ガイドに、前記3箇所以外にシャフトの揺動位置を斜め下方に位置決めするためのストッパを設ければ、船体下面の一部が後方に張り出しているような場合でも、船体と車輪の干渉を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る船舶用ドーリーが装着されるボートの概観図である。
【図2】船舶用ドーリーの分解斜視図である。
【図3】ブラケットの構成例を示す説明図で(a)は長孔を直線状とした場合の説明図、(b)は長孔をくの字型とした場合の説明図である。
【図4】ブラケットの外周縁部をガイドとする場合の構成例図である。
【図5】シャフトの基端部の拡大図である。
【図6】シャフトを3箇所の位置で固定した状態の説明図である。
【図7】シャフトとブラケットの一体化構造の他の構成例を示す説明図で、(a)は一体化した状態の説明図、(b)はブラケットの説明図、(c)はシャフト基端部の説明図である。
【図8】(a)は斜め下方にストッパを形成したブラケットの構成例図、(b)は同ブラケットの外周縁部をガイドとした場合の説明図、(c)はこのストッパを使用した場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る船舶用ドーリーは、例えば、2馬力程度のエンジンを搭載した場合でも、前後進のためエンジンの向きを180度回転させることができるよう、シャフトを斜め上方に保持できるようにされ、この際、可動部が錆び付いて動きにくくなるのを防止するとともに、船舶内からシャフトをより簡単に操作できるようにされ、ブラケットに長孔とガイドを形成し、これに揺動軸孔とガイド軸孔を有するシャフトに固定される揺動軸とガイド軸の二本の軸を介して揺動自在に一体化させることを特徴としている。
【0015】
すなわち、本船舶用ドーリーが装着されるボートの一例は、図1に示すように、給気によって膨らむインフレータブルボートの船体1の船尾にトランサム板2が取り付けられ、このトランサム板2の中央にエンジン3が搭載可能にされるとともに、エンジン3を挟んで両側に左右一対の船舶用ドーリー4が取り付けられている。
また、インフレータブルボート以外の船舶としては、FRP(繊維強化プラスチック)製の小型船舶、特に長さ4m未満の船舶にも使用できるものである。なお、トランサム板とは、船体の後方に船外機を取り付けるための板を意味するものであり、本船舶用ドーリーはそのような役割をする板に対して取り付けて使用できるものである。
【0016】
本発明の船舶用ドーリー4は、図2にも示すように、ねじ止め等によってトランサム板2に固定される断面コの字型のブラケット6と、このブラケット6のコの字内に嵌め込まれ、かつ、揺動軸7とガイド軸8の二本の軸でブラケット6に基端部が支持されるシャフト10と、シャフト10の先端部に回動自在に取り付けられる車輪11を備えており、シャフト10とは別体の揺動軸7やガイド軸8を後述するブラケット6の長孔13や溝形状のガイド14、及びシャフト10の揺動軸孔9aやガイド軸孔9bに通して挿入し、抜け止め防止具12によって固定することで、シャフト10がブラケット6に揺動自在に一体化するようにしている。
【0017】
前記ブラケット6は、例えば強度のある金属板等を折り曲げて成形され、コの字の対向する両面部には、図3(a)や図3(b)に示すように、長孔13と円弧状の溝からなるガイド14が形成されている。そして、長孔13は、図3(a)に示すように、上下に長く直線状としてもよく、図3(b)に示すように、中間部が折れ曲がったくの字型(図3(b)の方向から見ると逆くの字型)の形状としてもよいが、揺動軸7を挿通せしめることができるようにされている。そして、長孔13が直線状の場合は、長孔13内を長手方向に沿って揺動軸7が自由に移動でき、しかも、後述するように、ガイド14を挿通するガイド軸8を、後述するストッパa、b、cに落し込むことができるような溝幅や長さに設定され、くの字型の場合にも、ガイド軸8をガイド14やストッパa、b、cに沿って自由に移動できるようにされている。
また、この長孔13の周囲に形成される円弧状の溝からなるガイド14は、ガイド軸8を挿通せしめることができるようにされるとともに、ガイド14内を溝に案内されてガイド軸8が自由に移動できるような溝幅にしている。
このような溝幅は、軸が自由に移動できるよう、揺動軸やガイド軸の直径よりも1〜数mm程度大きくすればよく、長さはガイドの形状によって決定される。
【0018】
また、ガイド14の内側には、上部と斜め上部と下部に、それぞれ内側に向けて切り込まれるストッパa、b、cを形成し、ガイド軸8が嵌合可能な溝幅にしている。そして、本実施例では、斜め上部のストッパbは、延出端を略直角方向に曲げて延出させており、上方から落とし込んだガイド軸8をスライドさせて抜け止めを図ることができるようにされている。
【0019】
また、他のブラケット形状として、図4に示すように、ブラケット6aの外周縁部をガイドとして使用することもできる。この場合、図3(a)のブラケット6と比べて小型化、軽量化できるものであり、取り扱い易くなる。また、ガイドがむき出し状態であるので、運搬時など何処かにぶつけてガイドが変形する恐れがあるため、別途保護カバーを設けて使用することもできる。
なお、本実施例では、ガイド14の形状を、長孔13の中央部付近を中心とした半円形としているが、楕円やその他の円弧状にすることも可能である。なお、長孔13をくの字型にする場合、折り曲げた部分の幅を他の部分より多少大きくしておくと、シャフトの揺動をスムーズに行わせることができ、また、図3(b)に示すように、折り曲げた部分の下辺をアール部rとして湾曲させておくと、揺動軸7の移動をよりスムーズに行わせることができる。
【0020】
前記シャフト10は、図2に示すように、例えばアルミ等の軽量金属の中空フレーム材から構成され、このシャフト10の側面一端部には、把手15を取り付けている。この把手15は、船舶内からシャフト10を揺動させる際に掴んで使用するものであり、本実施例では、シャフト10が下方に揺動した時点で、船体1とは反対方向に張り出す形態で設けられている。
このようなシャフトの長さは、トランサム板への取り付け位置、船体の高さ、及び車輪の大きさによって適宜設定されるものであるが、シャフトが下方に固定されている状態で、車輪の上端部と船底の間に隙間が設けられ、かつシャフトが上方に固定されている状態で、車輪の下端部が船体上部を超す位置にあればよい。
また、シャフトを揺動させやすくするために、図5の拡大図に示すように、シャフト基端部は丸みを帯びた形状であることが好ましい。
また、前記車輪11は、例えば軽量でかつ水中で浮力を受けやすい中空タイヤとしている。これにより、シャフトを上方へ移動させることがより容易に行える。
【0021】
また、本実施例では、ガイド軸8を上方のストッパaに嵌め込んだ際、船体の振動等によってガイド軸8がストッパaから脱落するのを防止するため、図2に示すように、ブラケット6とシャフト10の対応する箇所にピン挿入孔p、qを設け、シャフト10を上方に揺動させてガイド軸8をストッパaに落とし込んだ後、ピン挿入孔p、qに不図示のピンを挿入できるようにしているが、ブラケット6側のピン挿入孔pのみを設けてシャフトの揺動を防止する等の、他の脱落防止方法を用いてもよい。また、ブラケット6には、必要に応じて、ガイド軸8を斜め上方のストッパbに落とし込んだときにシャフト10を固定する不図示のピン挿入孔を設けるようにしてもよい。
【0022】
なお、ブラケットとシャフトの基端部を一体化する方法としては、図2の実施例で示されるような、シャフト基端部を断面コの字型のブラケットに挟み込んだ状態で、揺動軸とガイド軸を挿通して、抜け止め防止具12で固定することのほか、図7(b)に示すような板状のブラケット6bを、図7(c)に示すようなシャフト10aの基端部で挟み込んだ状態で、揺動軸7とガイド軸8をそれぞれの揺動軸孔9a、ガイド軸孔9bに挿通して、任意の抜け止め防止具で固定することにより図7(a)に示すような一体化構造にすることもできる。
なお、抜け止め防止具12としては、図2に図示したものに限定されるものではない。
【0023】
このような船舶用ドーリーは、船体のトランサム板などに取りける際、図1や図7(a)に示すように、ブラケット6(または6a、6b)をトランサム板2に対して外方に突出した状態で、ボルト等で容易に固定される。
【0024】
以上のような船舶用ドーリー構造において、地上を走行するときは、図2の一体構造に基づいて図示した図6(c)に示すように、シャフト10を下方に揺動させ、ガイド軸8を下方のストッパcに嵌合させれば、車輪11は地上を走行する状態になる。この状態で船体1を押す等により船体1は地上を走行し、水中に入った時点で、人が船舶の中に入り、シャフト10の把手を握って持ち上げれば、車輪11は浮力を受けた状態にあるため、楽にシャフト10を上方に揺動させることができる。そして、ほぼ真上まで揺動させた後、ガイド軸8を上方のストッパaに落とし込み、必要に応じて、不図示のピンをピン挿入孔p、qに挿入して固定すれば、図6(a)に示す状態となって水上を航行する姿勢となる。
【0025】
ところで、船体1を後進させるような場合には、2馬力程度のエンジン3を搭載した小型ボートの場合、エンジン3を軸周りに180度回転させる必要があるが、小型ボートの場合、車輪11が図6(a)に示す位置では、エンジン3と車輪11が干渉してエンジン3を回転させることができない。このため、このような場合には、図6(b)に示すように、シャフト10を斜め上方に傾けて車輪11を斜め上方に位置させる。すなわち、シャフト10を斜め上方に揺動させてガイド軸8を斜め上方のストッパbに落とし込み、溝に沿って直角方向にスライドさせることによりシャフト10を固定する。この状態でエンジン3の向きを変えて始動する。
この場合、エンジンを180度回転させ易く、かつ車輪の下端部が喫水線より高い位置に固定するためには、シャフトがトランサム板に対して45度程度に傾いていることが好ましい。
【0026】
以上のようなシャフト10の揺動及び固定機構を採用することで、揺動軸7やガイド軸8等が海水の影響で錆び付いたりしたような場合でも、動作に支障が生じる可能性が少なく、確実に操作することができる。しかも、構造が単純であるため安価に作成でき、しかも、把手15を把持して操作することにより操作が極めて簡単である。
【0027】
ところで、図8(a)に示すブラケット6のストッパは他の実施例であり、この実施例では、ストッパとして、上記3箇所のストッパa、b、cの他に、斜め下方のストッパdを追加して設けた例である。
【0028】
このように斜め下方のストッパdを設ける理由は、船体1側の関係で、図8(c)に示すように、ブラケット6の下方のトランサム板2の下部等に、後方に向けて張り出す張出し部1tが設けられているような場合に、下方のストッパcを使用するとシャフト10が張出し部1tに引っ掛かるためである。この場合は、図8(a)に示すような斜め下方のストッパdにガイド軸8を嵌合させて地上を走行する。この場合に、必要に応じてガイド軸8が斜め下方のストッパdに嵌合した状態でシャフト10を固定するためのピン挿入孔p´を設け、ピン挿入孔p´、qにピンを挿入すればより安定した地上走行が可能となる。そして、この挿入ピンは、水中に入るときに抜いておけば、水中でシャフト10を容易に揺動させることができる。
そして、上記のように、ストッパを使用条件に合わせて設けることで、船体1の形状等の如何にかかわらず本発明の固定手段を適用することができる。
なお、この実施例の場合にも、ブラケットの構造としては、外周縁部にガイドを刻設する図8(b)のブラケット6aのような構造を採用できる。
【0029】
なお、本発明は以上のような実施形態に限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載した事項と実質的に同一の構成を有し、同一の作用効果を奏するものは本発明の技術的範囲に属する。
例えば、ブラケット6やシャフト10の素材や形状等は一例である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
地上でボートを移動させるための船舶用ドーリーとして、安価に構成できるとともに、簡素な構成であり、しかも海水等によって錆が発生しても操作性に影響を与えないので、特に、2馬力程度のエンジンを搭載するボート等や、大型エンジンまたは小型エンジンのボートの両方に使用可能な船舶用ドーリーとして普及が期待される。
【符号の説明】
【0031】
1…船体、2…トランサム板、3…エンジン、4…船舶用ドーリー、6(6a、6b)…ブラケット、7…揺動軸、8…ガイド軸、10(10a)…シャフト、11…車輪、13…長孔、14…ガイド、15…把手。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在な車輪を先端部に取着せしめたシャフトの基端部が、船体のトランサム板に取り付けられるブラケットによって、揺動自在に支持される船舶用ドーリーであって、
前記シャフトの基端部には、シャフトを揺動させる際に揺動中心となる揺動軸が挿通する揺動軸孔と、シャフトの揺動をガイドするためのガイド軸が挿通するガイド軸孔が設けられ、
前記ブラケットには、前記揺動軸が挿通する長孔と、前記ガイド軸を案内するためのガイドが設けられるとともに、前記ガイドには、揺動位置を上方及び斜め上方及び下方の位置で規制するための少なくとも3箇所のストッパが設けられており、
前記ブラケットは船体のトランサム板に対して外方に突出して固定され、且つ前記ブラケットと前記シャフトの基端部は、前記シャフトの揺動軸孔とガイド軸孔を挿通して固定される揺動軸とガイド軸の2本の軸を介して揺動自在に一体化されていることを特徴とする船舶用ドーリー。
【請求項2】
前記揺動軸が挿通するブラケットの長孔は、直線状の長孔か、中間部が折り曲げられたくの字型の長孔であることを特徴とする請求項1に記載の船舶用ドーリー。
【請求項3】
前記ガイド部分が円弧状のガイド溝からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の船舶用ドーリー。
【請求項4】
前記シャフトには、揺動させる際に手で握ることのできる把手が取り付けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の船舶用ドーリー。
【請求項5】
前記ガイドの内側には、シャフトの揺動位置を斜め下方の位置で規制するためのストッパが設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の船舶用ドーリー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−195387(P2010−195387A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11519(P2010−11519)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)