説明

船舶用ノズルプロペラ

【課題】船舶、特に、内陸航行用船舶及びタグボートのためのノズルプロペラであって、同じエンジン出力であっても、公知のノズルプロペラに比べて速力を増加させ、且つ引き綱を引く力を増強させることが可能なノズルプロペラを提供する。
【解決手段】ノズルプロペラ100は、フィンシステムと、固定ノズル10とを備えており、プロペラ12がシャフトベアリング13上にプロペラシャフトにより取り付けられており、前記ノズルプロペラ100のプロペラ下方回転側29よりものプロペラ上方回転側28に、より多くのガイドフィン17a,18a,19aが配置されていて、且つ/又は前記ガイドフィン17a,18a,19aが非対称のフィンシステムを構成するようにして配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用ノズルプロペラ、特に、沖合航行用船舶、タグボート及び内陸航行用船舶、即ち、プロペラを包含する固定された非回転式ノズルとフィンシステムとを有する船舶のためのノズルプロペラに関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプのノズルプロペラは、日常使用される言葉で「スクリュープロペラ」とも呼ばれる、ノズルに収納されて固定されたプロペラを更に含んでいる。船、特に船舶の駆動ユニットは、ノズルリングとして構成されたノズルによって包囲されるか又は収納されるプロペラを含んでおり、前記駆動ユニットはノズルプロペラと呼ばれている。このタイプのノズルリングは、「コルトノズル(Kort nozzle)」とも呼ばれている。
【0003】
ノズルの内部に配置される前記プロペラは、この場合には、固定されるように構成される。原理的には、先行技術の中には、プロペラを包囲するノズルが固定されるように構成されるノズルプロペラがある。ノズルが固定されているこの種のノズルプロペラにおいては、プロペラの後流中に、即ち、船舶の進行方向に見て前記ノズルプロペラの後側に、追加の機動装置特に舵を設けなければならない。
【0004】
更に、先行技術のノズルプロペラの中には、ノズルの内部に固定配置されたプロペラの周りを前記ノズルが回転可能であるものが、知られている。このような回転可能なノズルプロペラは、舵などの追加の機動装置を随意省くことができるようにして船舶を制御するのに使用できる。
【0005】
本発明は主として、ノズルが固定されているノズルプロペラに関するものであり、ノズルが回転可能であるノズルプロペラに関するものではない。
【0006】
ノズル又はノズルリングは、駆動推進力を高める機能を有している。この点に関しては、このようなノズルプロペラは、それぞれ高い推進力を発揮しなければならないタグボートや補給船などに使用されることが多い。
【0007】
ノズルリングとして構成されたノズルは、この場合には通常、前記ノズルの壁部を形成する円錐状のテーパーの付いた管である。船舶の後方に向かって前記管が細くなるために、前記ノズルプロペラは、エンジンの性能を高める必要もなく、更なる推進力を船舶に移すことができる。
【0008】
推進力を向上させる特性に加えて、更に、航行中の縦揺れがこの手段により軽減されるので、荒波においては、速度の低下が低減され、針路の安定性を高めることができる。前記ノズルプロペラ、又はコルトノズルに固有の抵抗は、船舶の速力が増加するにつれて略二次的に増加するので、これら利点は、大きなプロペラ推進力を発生させなければならない低速船舶(タグボート、漁船など)において特に有効である。
【0009】
船舶用ノズルプロペラは、特許文献1から公知である。このシステムには、いわゆるコルトノズルが設けられている。しかし、一般的なノズルプロペラとは対照的に、前記コルトノズルは、固定されるのではなく、ラダーポストによってプロペラの周りを回動し得るように構成されている。
【0010】
舵の働きを高めるために、水平方向と垂直方向に並べられたフィンが、コルトノズルの主要な流れ方向に見てプロペラの後ろに配置されている。回転可能な又は回動可能なコルトノズルが逆回転するときに前記コルトノズルの舵の働きを同様に高めるために、2つのフィンがプロペラの前に設けられている。前記2つのフィンは、ノズルに取り付けられて該ノズルの内部へと突出しており、断面図において見られるように、対向するようにして前記ノズルプロペラの垂直中心軸上に各々配置されている。
【0011】
単一又は複数のスクリューを有する内陸航行用船舶における流れに作用するためのガイド装置は、特許文献2から公知である。プロペラ軸の下側に垂直に位置する比較的大きな予渦流式のフィン又はガイドフィンを1つと、現行のプロペラブラケットアームを2つ含む配置構成を開示している。前記尾面の差し入れ端部の傾斜角度が固定面に対して少なくとも20°であることが記載されている。
【0012】
流れ中にプロペラが円を描く面の実質的な領域においては、前記単一の尾面が、プロペラ前方の予渦流としてのその回転方向とは反対の周方向の成分を発生させるために、プロペラが活発に作動してより好ましく、そして前記プロペラが回転している間には、該プロペラにはより一様に負荷がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US 2,139,594
【特許文献2】DD 267 383 A3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、同じエンジン出力であっても、公知のノズルプロペラに比べて速力の増加や引き綱を引く力の増強を可能にする冒頭に記載したタイプのノズルプロペラを提供することである。より多くの水がスクリュープロペラ全体に、より好適に流動的に案内されることが更に達成される。そのため、同じエンジン出力であっても燃料を節約することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
プロペラ流の方向において前記プロペラの前に配置されている1つ、又は複数の(予渦流)ガイドフィンを含み、且つ、ノズルプロペラのプロペラの下方回転側よりも上方回転側に、より多くのガイドフィンが配置されているフィンシステムによって、本発明の目的は達成される。
【0016】
ノズルプロペラ、特にコルトノズルのための「予渦流」フィンシステムが、引き綱を引く力を増強するのに特に好適であり、前記ガイドフィンの上記配置構成において特に好適であるという発見に、本発明は基づいている。前記フィンシステムのガイドフィンのこのような配置構成の結果、引き綱を引く力を10%増強させること、即ち、10%まで出力を節約することが達成される。
【0017】
前記用語、「ノズルプロペラのプロペラの上方回転側」は、前方推進時においてプロペラが断面図において下から上に回転している、ノズルプロペラの側であることと解釈する。従って、ノズルプロペラのプロペラの下方回転側では、プロペラは上から下に回転している。これに関して、断面図に示されているように、仮想的な内部垂直中心線によって、プロペラの上方回転側と下方回転側に分割される。
【0018】
この場合においては、前記フィンシステムを形成するガイドフィンは、前記ノズルプロペラ上に配置されていてプロペラ流に作用するステーターの意味での流れ案内面である。前記ガイドフィンは、通常、ノズルプロペラ上に固定配置される。前記プロペラの上方回転側でのガイドフィンの配置は、断面図において、ガイドフィン、又は、少なくとも実質的には前記ガイドフィンの一部分が、前記ノズルプロペラのプロペラの上方回転側に配置されるというように解釈すべきである。同じことが、プロペラの下方回転側にも同様に適用される。
【0019】
プロペラへの流れは、船舶の船体によって乱される。従って、前記プロペラの後流域における前記プロペラの後方において、流れのねじれが、その前方にガイドフィンが位置していないプロペラと比べてより小さく発生するように、前記プロペラの位置を調整して、該プロペラの前方にガイドフィンを配置すれば、前記ガイドフィンにより渦が生成される。
【0020】
ところで、もしノズルプロペラのプロペラの下方回転側よりも上方回転側に少なくとも1つでも多くガイドフィンを配置すれば、驚くべきことに、プロペラの後流におけるねじれは、特に小さいことが判明した。本発明に従うフィンシステムは、1つ以上のガイドフィンを含んでいるので、本発明に従うフィンシステムの最小の配置は、前記プロペラの上方回転側にはガイドフィンを1つ配置して前記プロペラの下方回転側にはガイドフィンを1つも配置しないようにすることである。この最小のフィンシステムでは、前記1つのガイドフィンは、前記プロペラの上方回転側に完全にまるごと配置されるべきである。
【0021】
前記プロペラの上方回転側と下方回転側との間、即ちノズルプロペラの縦軸に関しての垂直中心線上に配置されるガイドフィンは、この場合には、本発明に従って、(前記プロペラの上方回転側及び下方回転側の)どちらの側にも配置されていないとみなされるか、又はどちらの側にも配置されているとみなされるかの何れかである。もし、1つのガイドフィンが、一側に完全にではなくて一側の主部分に配置されるように任意に配置されるのであれば、本発明の目的のために、1つのガイドフィンはこの側に属させる。
【0022】
同時に、前記ガイドフィン、又はフィンは、純粋のノズルプロペラに異物が入り込むのを防ぐために単に意図された保護グリッドなどのノズルプロペラのための単なる保護装置と区別すべきである。ノズルプロペラのための単なる保護装置とは異なり、ガイドフィン又はフィンは、流れに大きく影響を及ぼす、流れガイド面である。
【0023】
フィンシステムを構成するガイドフィンは、前記ノズルプロペラの領域に配置される。便宜上、前記ガイドフィンは、前記ノズルプロペラのノズルの内側に少なくとも部分的に配置される。
【0024】
本発明は、エンジン出力が同じままで、速力や引き綱を引く力を高めることが可能であるという利点を有している。その結果、高い効率が得られる。
【0025】
速力が同じままで、更に、引き綱を引く力も同じままで、必要なエンジン出力を減らすことが可能であることも、実際的に意義がある。その結果、エンジンの燃料コスト及び購買コストを節約することができる。
【0026】
更に、前記フィンシステムにより予め渦流を発生させる結果として、このプロペラノズルガイドフィンシステムの、全体としてより高い効率が達成される。
【0027】
より多くの水が、流体的により好ましい方法で、スクリュープロペラ全体に、又はプロペラ全体に案内されるので、同じエンジン出力であっても、10%までの燃料を節約できる。
【0028】
本発明は、水深が浅い場合にも使用でき、更に、異物による損傷からプロペラを保護することができる。
【0029】
前記プロペラ上方回転側及び前記プロペラ下方回転側でのガイドフィンの前記配置分布とは別に、又は該分布に追加的に、前記ガイドフィンが非対称なフィンシステムを構成するように、前記フィンシステムのガイドフィンを配置することもできる。この場合に、プロペラシャフト軸に対するガイドフィンの角度配置に対して、及び輪郭長、輪郭断面、又は他の別の量のようなガイドフィンの寸法に対して、又はそれらのうちのいずれか一方に対して非対称となるようにする。
【0030】
プロペラシャフト軸に対する角度配置に関して非対称となるようにした場合、プロペラ軸から径方向に見た場合の個々のガイドフィンの軸の間で、一様でない角度分割を行っている。前記ノズルプロペラの垂直中心軸を、前記ノズルプロペラの断面図における対称軸としてとれば、非対称配置を行うことも可能である。同時に、この対称軸は、前記ノズルプロペラのプロペラ上方回転側とプロペラ下方回転側とに分割する。これにより、構成配置が容易である方法で特に有効なフィンシステムが得られる。ほとんどの場合には、前記プロペラ下方回転側よりも前記プロペラ上方回転側にガイドフィンをより多く配置したフィンシステムも、非対称なものとなる。
【0031】
本発明の更なる好適な構成においては、各ガイドフィンが、その一端でノズルの内壁表面に固定され且つその他端で船尾管又はシャフトベアリングに取り付けられるステーターを、形成するようにして設けられる。前記シャフトベアリングは、前記プロペラシャフトを取り付けるために構成されており、便宜上、前記プロペラの近くに配置されている。前記シャフトベアリングは、例えば、いわゆる「船尾管」によって形成できる。
【0032】
本実施例では、ガイドフィンは、シャフトベアリングとノズル内壁との間に設けられて固定されたステーターとして、それぞれ構成されている。シャフトベアリングとの連結、又はノズルとの連結は、先行技術から公知の適切な接合技術、特に溶接により行うことができる。前記ノズル内壁に固定するための別の、又は追加的な方法としては、ノズル前方側に留め具を設けることもできる。
【0033】
前記ガイドフィンが、前記ノズルプロペラ、又はノズルの内側の空間の中に、完全に含まれて配置されていれば更に好適である。原理的には、ガイドフィンの一部分を前記ノズルの内側の空間の外に配置することは可能である。しかし、本出願人により行われた実験により、ほとんどの適用状況では、前記ノズルにより囲まれた空間内部にガイドフィンが完全に含まれる配置は、流体的に好ましいことが明らかとなった。
【0034】
既に記載したように、原理的には、前記フィンシステムは、最低で、前記プロペラ上方回転側に完全に配置されるガイドフィンを唯一つ含むようにすることが可能である。しかし、便宜上、各フィンシステムは、少なくとも3つのガイドフィンを有していることとする。好適には、これらの内、少なくとも2つのガイドフィンを、前記プロペラ上方回転側に配置する。
【0035】
本発明の好適実施例は、フィンシステムが3〜7つのガイドフィンを有しており、この場合、2〜4つのガイドフィンを前記プロペラ上方回転側に配置して、1〜3つのガイドフィンを前記プロペラ下方回転側に配置する、という構成に基づいている。
【0036】
各ガイドフィンが、外側に向かって湾曲させた吸引面と、広範囲にわたって平坦な圧力面とを有していれば、流体的に非常に好ましい。これは、飛行機の翼に使用されているような、標準的な揚力面となる。
【0037】
また、複数のガイドフィンを使用すれば、ガイドフィンの断面形状を相違させることができる。この方法により、ノズルの内側の流れを更に最適にすることができる。
【0038】
また、前記ガイドフィンが、前記プロペラ軸に対する迎え角が異なるように配置されれば好適である。この場合には、予渦流の最適化も可能である。
【0039】
本発明は、単一のプロペラを有するシステムに適用できる。しかし、複数のプロペラを有するシステムに適用すれば、特に好適である。そのような複数のプロペラを有するシステムは、回転方向が互いに反対である隣接配置された2つのノズルプロペラを含んでいることが多い。従って、2つのノズルプロペラのフィンシステムは、互いに対して鏡面対称に配置できる。
【0040】
本発明の更なる特に好適な実施例においては、予渦流を生成するために使用されるように構成されたプロペラブラケットアームが設けられている。この手段により、推進力の更なる改善が達成される。プロペラブラケットアームは、船尾管又はノズルプロペラを保持するために通常構成されており、船体にしっかりと連結されている。
【0041】
本発明の実施例では、前記プロペラブラケットアームの少なくとも一部の領域、特に、流れ方向に見てノズルの内側に配置されるような一部の領域を、本発明の意味でのガイドフィンとして構成できる。前記プロペラブラケットアームの残りの部分は、相違するように構成させることが可能であり、例えば、互いに相違する輪郭を有するようにすることもできる。しかし、原理的には、プロペラブラケットアームに、全体的に同じであるように輪郭を持たせ、更に前記プロペラ軸に対して同じ迎え角を持たせることは可能である。ノズルプロペラを保持するためにいずれにせよ設けられるプロペラブラケットアームがガイドフィンとして使用されるので、この方法により、本発明の構成は更に簡略化される。
【0042】
本発明に従うノズルプロペラを、沖合航行用船舶、タグボート、又は内陸航行用船舶に使用することは特に好適である。これら船舶においては、好ましくは、船尾領域において2つのノズルが隣接して配置されている。ノズルプロペラは、内陸航行用船舶に特に使用され、そのため本発明は当該船舶にも適している。
【0043】
本発明の好適実施例を、図面を参照して詳細に説明し、本発明の更なる好適な構成及び利点を記載する。以下の図面は概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】ノズルプロペラの断面図を示す。
【図2】1つのノズルプロペラにつき3つのガイドフィンを設けた多プロペラ配置を示す。
【図3】1つのノズルプロペラにつき7つのガイドフィンを設けた外方へ作用する多プロペラ配置を示す。
【図4】ガイドフィンの断面図を示す。
【図5】ガイドフィンの横断面を示した別のノズルプロペラの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、船舶用、特に内陸航行用船舶又はタグボート用ノズルプロペラ100を示している。ノズルプロペラ100は、以下に詳述されるフィンシステムと固定ノズル10を備えており、この固定ノズルは、引き綱を引く力を高めるための、いわゆるコルトノズルとして構成されている。コルトノズルそれ自体は、例えば特許文献1から公知であるので、詳細には説明しない。
【0046】
図1は、ノズルプロペラ100を通る長手方向の断面図(縦断面)を示している。明確にするために、ノズルプロペラの上半部分の構成配置のみを示している。
【0047】
ノズルプロペラ100は、スクリュー即ちプロペラ12を含み、そのプロペラシャフト11は、船尾管として構成されているシャフトベアリング13に装架されている。ガイドフィン14は図1に示されている。前記ガイドフィンは、プロペラ12で予渦流を生成するように構成されていて、(予渦流)ガイドフィン14又はフィンとして称呼されるようになっている。「ガイドフィン」又は「ガイド表面」という称呼は、「フィン」に対しても使用される。「ノズル予渦流フィン」という称呼も可能である。プロペラ12も「スクリュープロペラ」と称され得る。
【0048】
前記(予渦流)ガイドフィン14を、流れ方向において、プロペラ12の前方に配置する。図1に示されているように、前記(予渦流)ガイドフィン14は、その一端部15がノズル10の内壁面に固定され、その他端部16がシャフトベアリング13に固定される。
【0049】
図1は、前記(予渦流)ガイドフィン14が第一部分14aを通じて前記ノズルの内部空間にどのようにして延びているのか、そして第二部分14bを通じて前記ノズル10の外側へどのようにして突出しているのかも示している。図1の縦断面図においては、前記ガイドフィン14は、前記内側の部分14aで終わる実質的に垂直に延びた内部縁部と、上から下に移るにつれて外側に向かって傾斜して延びている外部縁部とを有している。前記外部縁部は、前記ノズル10の外側に位置する前記外側の部分14bで終わっている。そして、前記ガイドフィン14は、その上部がノズル10の前側縁部分に接している。
【0050】
前記ガイドフィン14は、幅広側が、略プロペラ流の方向、即ち、略プロペラ軸方向に延びるように配置されており、前記ガイドフィン14の幅狭側前部が流れ中に実質的に置かれるようになっている。前記プロペラシャフト11に対する前記ガイドフィン14の迎え角に応じて、前記ガイドフィン14の2つの平坦面は、多かれ少なかれ流れの中に置かれる。
【0051】
図2は、ノズルプロペラ100が、船体20のA側のために、複数の特に3枚の(予渦流)ガイドフィン17a、18a、及び19aを有するフィンシステムを備えた、船舶の船体20を示している。船体20のB側では、別のノズルプロペラ100に、同様に、3つの(予渦流)ガイドフィン17b、18b、及び19bが設けられている。このシステムは、2つのプロペラを有するシステムとして構成され、従って、マルチプロペラシステムのグループに属する。
【0052】
前記3つのガイドフィン17a、18a、及び19aは、2つのガイドフィン17a、18aがプロペラ上方回転側28に配置され、1つのガイドフィン19aがプロペラ下方回転側29に配置されるように、配置されている。A側及びB側両方のプロペラにおいて、参照数字33の矢印を設けて、船舶20の前進中、ノズルプロペラ又はプロペラ12のそれぞれの回転方向を矢印33により示している。プロペラ12は両方とも内側から外側へと回転している。即ち、A側のプロペラ12は反時計回りに回転している一方で、B側のプロペラ12は時計回りに回転している。
【0053】
更に、各ノズルプロペラ100には、垂直中心軸34が示されている。垂直中心軸34は各々、ノズルプロペラ100の中心を通って延びており、ノズルプロペラ100をプロペラ上方回転側28とプロペラ下方回転側29とに分けている。2つのノズルプロペラ100の回転方向33は互いに反対であるので、各プロペラ上方回転側28は中心に面して配置される一方、各プロペラ下方回転側29は外側に位置している。従って、プロペラ上方回転側28及びプロペラ下方回転側29は両方とも、ノズルプロペラ100の半分の部分により形成される。
【0054】
個々のガイドフィン17a、18a、19a、又は17b、18b、19bはそれぞれ、シャフトベアリング13の外面からノズル10の内側、即ちノズル10の内壁面へと延びている。図2に示されている図解においては、2枚のガイドフィンは、プロペラ上方回転側28中に完全に位置するように各ノズルプロペラ100に配置されている。同様に、何れの場合も、3つ目のガイドフィンはプロペラ下方回転側29中に完全に位置せしめられている。ガイドフィン17a、18a、19a、又は17b、18b、19bをこのように配置すれば、プロペラの前方の流れにおいて渦が好ましく生じて、これによって今度はプロペラの後方の流れの小さなねじれが生成される。
【0055】
ガイドフィン17a、18a、19a、17b、18b、及び19bは、それらの幅狭側が図2の横断面で見られ得るように、即ち、それらの幅広面が、プロペラ流の方向、即ちノズルプロペラの長手方向に実質的に沿うように、配置されている。図示されたガイドフィン(17a、18a、19a、17b、18b、19b)の長さは、全て略同じである。
【0056】
(予渦流)ガイドフィン17a、18a、19a、又は17b、18b、19b、即ち、A側及びB側の両方のガイドフィンは更に、非対称のフィンシステムを形成するように配置されている。垂直中心軸34を対称軸として用いて、プロペラ上方回転側28に配置するガイドフィンの数をプロペラ下方回転側29に配置するガイドフィンの数と異ならせることにより、この非対称は得られる。更に、ガイドフィン17a〜19aの間の角度分配は等分配ではなく、また、ガイドフィン17b〜19bの間の角度分配も等分配ではない。従って、例えば、A側のノズルプロペラ100において、プロペラ軸でのこれらガイドフィンの交点に関して、ガイドフィン17aと18aとの間の角度は、ガイドフィン17aと19aとの間の角度、及びガイドフィン18aと19bとの間の角度よりも著しく小さい。B側のノズルプロペラ100においても同様の状況となっている。
【0057】
図3は、7つのガイドフィン21〜27を有するプロペラを2つ備えたプロペラシステムの別の例を示している。ここでは、簡略にするために、A側においてのみ引用符号を付けている。B側のノズルプロペラ100の構成は、A側の構成に従っている。ガイドフィン21及び22の2つはプロペラ下方回転側に配置されている一方で、ガイドフィン24、25、及び27の3つはプロペラ上方回転側に配置されている。更に、ガイドフィン23及び26は、実質的に垂直中心軸34に沿って一直線上に配置されている。即ち、ガイドフィン26は、シャフトベアリング13から垂直に上方にノズル壁まで延びており、ガイドフィン23は、シャフトベアリング13から垂直に下方にノズル壁まで延びている。
【0058】
従って、前記2つのガイドフィン23及び26のうちの一方はプロペラ上方回転側28に、他方はプロペラ下方回転側29に、それぞれ割り当てられる。そのため、合計4つのガイドフィンがプロペラ上方回転側28に配置されており、合計3つのガイドフィンがプロペラ下方回転側29に配置されている。原理的には、ガイドフィン23及び26を、前記2つの回転側のどちらにも割り当てなくすることもでき、この場合、プロペラ上方回転側28に配置されるガイドフィンは3つとなり、プロペラ下方回転側29に配置されるガイドフィンは2つとなる。ここで唯一重要なことは、各場合において、プロペラ上方回転側28に1つでも多くガイドフィンを配置することである。
【0059】
ガイドフィン26及び27は、シャフトベアリング13を船体20に連結するプロペラブラケットアームとしての機能を、追加的に果たしている。ノズル10の外側で、プロペラブラケットアーム26及び27は、ガイドフィンとしての輪郭を必ずしも備える必要はない。しかし、ノズル10の内側では、ガイドフィンとしての輪郭をその全長にわたって形成している。前記ガイドフィンを全て、流れ方向におけるプロペラ12の前方に配置していることは、図2及び3において確認できる。
【0060】
図1〜3に示されているガイドフィン14、17a、18a、19a、又は17b、18b、19b、21〜24、及び26、27は、異なる断面輪郭を有することができる。
【0061】
通常、各予渦流ガイドフィンは、プロペラ長手方向軸に対して、異なる迎え角を有している。
【0062】
上記したシステムは、流れの中でプロペラが円を描く領域の実質的範囲において、プロペラの前方の予渦流として、円周方向の成分が、プロペラの回転方向とは反対の方向に発生するという原理に基づいて、作用する。このため、プロペラはより好適に活発に作動して、プロペラが回転している間は、プロペラはより一様に流れを受ける。
【0063】
このシステムは、上記した実施例に限定されるものではなく、タグボートや沖合航行用船舶の固定ノズルの前方に予渦流を発生させて引き綱を引く力と速力とを高めるための別のシステムもまた可能である。
【0064】
上記実施例の一つが有する特徴のうちの一つを別の上記実施例が有する別の特徴と組み合わせることも可能である。これは、特に、図3に記載のプロペラブラケットアームの配置に適用される。
【0065】
非対称とは、3つのフィンの場合においては、これらフィンが120°の一様な角度の分配で配置されてはいないということを意味する。4つのフィンの場合においては、前記4つのフィンの角度分配が90°からずれている、などである。
【0066】
図4は、本発明に従うノズルプロペラのフィンシステムに使用可能なガイドフィン32の一例の断面図を示す。ガイドフィン32は、図4の上部に位置する湾曲した吸引面32aと、これに対向して位置している実質的に平坦な圧力面32bとを有している。円形面32cは、ノズルプロペラに設置された状態では、流れの中に置かれる。即ち、前記円形面は上流側に配置される一方で、略点状面32dはプロペラの下流側に配置される。
【0067】
図5は、図1に示された実施例に実質的に対応するノズルプロペラの更に別の好適実施例の断面図を示している。図1とは異なり、図5に示されている好適実施例においては、ガイドフィン14がノズル10又はノズルリングよって囲まれた空間、即ちノズル10の内側の空間に完全に含まれて配置されていて、ノズル10から突き出る部分、即ちノズル10を超えて突き出る部分を有していないようにして、前記ガイドフィン14を構成している。この点に関して、図5の側面図におけるガイドフィン14の前側の縁及び後側の縁は、互いに平行に配置されており、ガイドフィン14の前側の縁はノズル10の前側の縁と略同一の平面上で終わっている。
【0068】
更に、図5は、別のガイドフィン14aの断面図を概略的に示している。ガイドフィン14aは、同様に、ノズル10の内側の空間の内部に配置されており、図5の図面ではプロペラシャフトの長手方向軸18と交差せしめられている。
【0069】
ガイドフィン14aの横断面の輪郭は、前記プロペラシャフト軸に対して傾斜して位置していることがわかる。この状況を説明するために、ガイドフィン14aの横断面の輪郭が、改めてノズルプロペラ100の右側に、特にプロペラシャフト軸18に関して同じ位置に別に示されている。更に、迎え角αで前記プロペラシャフトの軸と交差する中心線19を、ガイドフィン14aの別に示した前記横断面の輪郭に貫通させている。
【0070】
本発明の好適実施例においては、これら迎え角αを、ノズルプロペラ100の異なるガイドフィンに応じて変化させる。そのため、最適な迎え角αをガイドフィンそれぞれの位置に応じて定めることができる。
【符号の説明】
【0071】
100 ノズルプロペラ
10 ノズル
11 プロペラシャフト
12 プロペラ
13 シャフトベアリング
14,14a 予渦流ガイドフィン
15 予渦流ガイドフィンの外側端部
16 予渦流ガイドフィンの内側端部
17a,18a,19a A側の予渦流ガイドフィン
17b,18b,19b B側の予渦流ガイドフィン
18 プロペラシャフト軸
19 ガイドフィンの中心線
20 船体
21〜25 ガイドフィン
26 第一プロペラブラケットアーム
27 第二プロペラブラケットアーム
28 プロペラ上方回転側
29 プロペラ下方回転側
30 ガイドフィン
32a 吸引面
32b 圧力面
32c 上流側の面
32d 下流側の面
33 回転方向
34 垂直中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィンシステムと、固定ノズル(10)と、プロペラ(12)とを含み、前記プロペラ(12)は前記固定ノズル(10)の内部に配置され、前記フィンシステムは流れ方向において前記プロペラ12の前方に配置されたガイドフィン(14,17,18,19,21,22,23,24,25,26,27)を1つ以上含んでおり、且つ、前記ガイドフィン(14,17,18,19,21,22,23,24,25,26,27)はノズルプロペラ(100)のプロペラ下方回転側(29)よりも前記ノズルプロペラ(100)のプロペラ上方回転側(28)により多くの前記ガイドフィン(14,17,18,19,21,22,23,24,25,26,27)が設置されように配置されており、且つ/又は、前記ガイドフィン(14,17,18,19,21,22,23,24,25,26,27)は非対称のフィンシステムを構成するように配置されている、船舶、特に、沖合航行用船舶、タグボート及び内陸航行用船舶のためのノズルプロペラ(100)。
【請求項2】
各ガイドフィン(14,17,18,19,21,22,23,24,25,26,27)は、前記ノズル(10)の内壁面にその一端が固定され、且つ、前記プロペラ(12)のプロペラシャフト(11)を取り付けるために構成されたシャフトベアリング(13)、特に船尾管にその他端部が固定されているステーターを、形成していることを特徴とする、請求項1に記載のノズルプロペラ。
【請求項3】
前記ガイドフィン(14,17,18,19,21,22,23,24,25,26,27)は、前記ノズル(10)の内部空間内に完全に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載のノズルプロペラ。
【請求項4】
前記ノズルプロペラ(100)は、少なくとも3つ、好ましくは3〜7枚のガイドフィン(17,18,19)を含んでいることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一つに記載のノズルプロペラ。
【請求項5】
前記プロペラ上方回転側(29)に、2〜4枚のガイドフィン(14,17,18,19,21,22,23,24,25,26,27)が配置され、前記プロペラ下方回転側(29)に、1〜3枚のガイドフィンが配置されていることを特徴とする、請求項4に記載のノズルプロペラ。
【請求項6】
前記フィンシステムが、ガイドフィン(14,17,18,19,21,22,23,24,25,26,27)を奇数枚含んでいることを特徴とする、請求項1乃至5の何れか一つに記載のノズルプロペラ。
【請求項7】
前記プロペラ(100)は、3枚のガイドフィン(17,18,19)を含み、第一及び第二のガイドフィン(17,18)は、互いに50°〜110°、好ましくは、60°〜100°、特に好ましくは70°〜90°の角度をなして配置されており、更に、第一及び第二ガイドフィン(17,18)は各々第三のガイドフィン(19)と125°〜155°、好ましくは、130°〜150°、特に好ましくは135°〜145°の角度をなしていることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか一つに記載のノズルプロペラ。
【請求項8】
前記ノズルプロペラ(100)は、4枚のガイドフィン(21,22,23,24)を含み、前記4枚のガイドフィン(21,22,23,24)は全て、約180°の角度範囲内で、特に、前記ノズルプロペラ(100)のプロペラ上方回転側(28)に全部配置されていることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか一つに記載のノズルプロペラ。
【請求項9】
前記ガイドフィン(14,17,18,19,21,22,23,24,25,26,27)は各々、外側へ湾曲した、特に丸みを帯びた円弧状の吸引面(30)と、実質的に平坦な圧力面(31)と、を有していることを特徴とする、請求項1乃至8の何れか一つに記載のノズルプロペラ。
【請求項10】
前記ガイドフィン(14,17,18,19,21,22,23,24,25,26,27)は、異なる断面形状を有していることを特徴とする、請求項1乃至9の何れか一つに記載のノズルプロペラ。
【請求項11】
前記ガイドフィン(14,17,18,19,21,22,23,24,25,26,27)は、前記プロペラ軸に対して放射状に異なる迎え角(α)で配置されていることを特徴とする、請求項1乃至10の何れか一つに記載のノズルプロペラ。
【請求項12】
複数のプロペラを備えたシステムとして構成されていることを特徴とする、請求項1乃至11の何れか一つに記載のノズルプロペラ。
【請求項13】
前記ノズル(10)がコルトノズルとして構成されていることを特徴とする、請求項1乃至12の何れか一つに記載のノズルプロペラ。
【請求項14】
ガイドフィンとして構成された部分領域を少なくともそれぞれ1つ有している、1つ以上のプロペラブラケットアーム(26,27)を備えていることを特徴とする、請求項1乃至13の何れか一つに記載のノズルプロペラ。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか一つに記載のノズルプロペラを1つ以上備えている、船舶、特に、沖合航行用船舶、タグボート、又は内陸航行用船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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