説明

船舶用空調装置

【課題】比較的簡単な構成で凝縮器を冷却できるようにする船舶用空調装置を提供する。
【解決手段】凝縮器40のシェル41の上部には、蒸発器で生じた凝縮水を回収するドレンパン60が設けられている。ドレンパン60は、シェル41の長手方向に沿って延び、上方が開口した長方体形状に形成されている。また、ドレンパン60の側壁には、長手方向に間隔をあけて複数の供給孔61が形成されている。蒸発器で生じた凝縮水は、ドレンパン60に回収され、複数の供給孔61を介して凝縮器40の表面に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハウジング内に、ファンが配設されるファン室が区画形成された空気調和装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の空気調和装置では、ハウジング内に、ファン室と、ファン室と隣接し且つファン室と仕切られた機械室とが区画形成されている。この機械室には、圧縮器や凝縮器等の各種部品が配設される。この空気調和装置では、ファン室内においてファンの上流側に蒸発器が配設されており、ファンによって所定の吸込口からファン室内に吸い込んだ空気を蒸発器を通過させて熱交換した後、その空気を吹出口から吹き出している。このとき、ファン室と機械室とは仕切られているため、ファンを駆動しても機械室からファン室内へ空気が流入しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−008543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の空気調和装置では、機械室に配設された凝縮器を冷却するために海水又は清水を使用している。ここで、凝縮器をさらに冷却させて熱交換効率を高めることで圧縮機入力を抑え、省エネ性を向上させたいという要望がある。これを実現するために、例えば、凝縮器を冷却するファンを別途設けることが考えられるが、コストが増大してしまうため好ましくない。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡単な構成で凝縮器を冷却できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、蒸発器(50)と凝縮器(40)とを有し冷媒を循環させて冷凍サイクルを行う冷媒回路(20)を備え、船舶(100)に搭載される船舶用空調装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、前記蒸発器(50)の下方に配置され、該蒸発器(50)で生じた凝縮水を回収するとともに、回収した凝縮水を前記凝縮器(40)に供給するドレンパン(60)を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
第1の発明では、蒸発器(50)の下方には、ドレンパン(60)が配置される。ドレンパン(60)では、蒸発器(50)で生じた凝縮水が回収されるとともに、回収された凝縮水が凝縮器(40)に供給されるようになっている。
【0010】
このような構成とすれば、ドレンパン(60)で回収した凝縮水を凝縮器(40)に供給することで、凝縮器(40)の熱交換効率を向上させることができる。具体的に、従来の船舶用空調装置では、凝縮器(40)を冷却するための熱交換媒体として海水又は清水を用いており、凝縮器(40)をさらに冷却させるためには、冷却用のファンを別途設ける必要があった。
【0011】
これに対し、本発明では、従来は排水処理されるだけであった蒸発器(50)で生じた凝縮水に着目して、凝縮水をドレンパン(60)で回収するとともに凝縮器(40)に供給するようにしたから、比較的簡単な構成で凝縮器(40)を冷却することができる。これにより、凝縮器(40)の熱交換効率を高めることで圧縮機入力を抑えることができ、省エネ性を向上させる上で有利となる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、
前記ドレンパン(60)は、前記凝縮器(40)の上部で該凝縮器(40)の長手方向に沿って延び、
前記ドレンパン(60)の側壁には、複数の供給孔(61)が長手方向に間隔をあけて形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
第2の発明では、凝縮器(40)の上部で凝縮器(40)の長手方向に沿って延びるようにドレンパン(60)が配置される。ドレンパン(60)の側壁には、複数の供給孔(61)が長手方向に間隔をあけて形成される。
【0014】
このような構成とすれば、ドレンパン(60)で回収した凝縮水を、複数の供給孔(61)を介して凝縮器(40)の表面に供給することができ、凝縮器(40)の表面全体を満遍なく冷却させることができる。
【0015】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記ドレンパン(60)は、回収した凝縮水に前記凝縮器(40)が浸漬されるように該凝縮器(40)の下方に配置されていることを特徴とするものである。
【0016】
第3の発明では、ドレンパン(60)は、凝縮器(40)の下方に配置される。ドレンパン(60)に回収された凝縮水により、凝縮器(40)が浸漬される。このような構成とすれば、ドレンパン(60)で回収した凝縮水に凝縮器(40)を浸漬させることで、凝縮器(40)を冷却させることができる。
【0017】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記凝縮器(40)は、シェル・アンド・チューブ型の熱交換器で構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
第4の発明では、凝縮器(40)は、シェル・アンド・チューブ型の熱交換器で構成される。このような構成とすれば、凝縮器(40)の熱交換媒体として海水又は清水を用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ドレンパン(60)で回収した凝縮水を凝縮器(40)に供給することで、凝縮器(40)の熱交換効率を向上させることができる。具体的に、従来の船舶用空調装置では、凝縮器(40)を冷却するための熱交換媒体として海水又は清水を用いており、凝縮器(40)をさらに冷却させるためには、冷却用のファンを別途設ける必要があった。
【0020】
これに対し、本発明では、蒸発器(50)で生じた凝縮水に着目して、従来は排水処理されるだけであった凝縮水をドレンパン(60)で回収して凝縮器(40)に供給するようにしたから、比較的簡単な構成で凝縮器(40)を冷却することができる。これにより、凝縮器(40)の熱交換効率を高めることで圧縮機入力を抑えることができ、省エネ性を向上させる上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1に係る船舶用空調システムの概略構成図である。
【図2】船舶用空調装置の概略構成図である。
【図3】空調装置の内部構造を示す側面図である。
【図4】凝縮器の構成を示す側面図である。
【図5】凝縮器の構成を示す正面図である。
【図6】本実施形態2に係る空調装置の凝縮器の構成を示す側面図である。
【図7】凝縮器の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
《実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。本実施形態の空調装置(10)は、船舶用の空調システムに設けられており、船舶(100)内の部屋である船室(104)に調和空気を供給する。
【0024】
図1に示すように、空調装置(10)のケーシング(11)には、吸込ダクト(101)と給気ダクト(102)とが接続されている。吸込ダクト(101)及び給気ダクト(102)は、ケーシング(11)内に形成されて吸込ダクト(101)及び給気ダクト(102)に連通する空間とともに、空気が流れる空気通路を構成している。吸込ダクト(101)には、船室(104)内の室内空気と、屋外の室外空気とが取り込まれる。空調装置(10)には、室内空気と室外空気の混合空気が吸込ダクト(101)を通って送られる。給気ダクト(102)は、各船室(104)に開口する吹出口(103)に接続されている。空調装置(10)から吹き出された空気は、給気ダクト(102)を通って複数の船室(104)に分配される。
【0025】
図2に示すように、空調装置(10)は、冷媒回路(20)と、送風機(15)と、制御器(16)とを備えている。冷媒回路(20)、送風機(15)、及び制御器(16)は、ケーシング(11)内に収容されている。ケーシング(11)内では、吸込ダクト(101)及び給気ダクト(102)に連通する空間に、送風機(15)と、後述する冷媒回路(20)の蒸発器(50)とが配置されている。
【0026】
冷媒回路(20)には、圧縮機ユニット(30)と、凝縮器(40)と、膨張弁(45)と、蒸発器(50)とが設けられている。また、冷媒回路(20)には、冷媒が充填されている。冷媒回路(20)は、圧縮機ユニット(30)と、凝縮器(40)と、膨張弁(45)と、蒸発器(50)とを順に配管で接続して構成された閉回路である。
【0027】
圧縮機ユニット(30)は、第1乃至第4の圧縮機(31,32,33,34)を備えている。なお、圧縮機ユニット(30)に設けられた圧縮機(31,32,33,34)の台数は、単なる一例であり、これに限定するものではない。各圧縮機(31,32,33,34)は、全密閉型のスクロール式の圧縮機(31,32,33,34)である。また、各圧縮機(31,32,33,34)は、回転速度を変更できない容量固定型となっている。
【0028】
圧縮機ユニット(30)において、4台の圧縮機(31,32,33,34)は、互いに並列に接続されている。具体的に、第1乃至第4の圧縮機(31,32,33,34)の吸入側には、第1乃至第4の分岐管(31a,32a,33a,34a)が接続されている。各分岐管(31a,32a,33a,34a)は、冷媒を吸入する吸入管(35)の下流側で分岐している。吸入管(35)は、後述する蒸発器(50)の出口配管(52)に接続されている。
【0029】
また、第1乃至第4の圧縮機(31,32,33,34)の吐出側には、第1乃至第4の吐出管(31b,32b,33b,34b)が接続されている。第1乃至第4の吐出管(31b,32b,33b,34b)は、その下流側で合流して凝縮器(40)の冷媒入口に接続されている。各圧縮機(31,32,33,34)は、吸入管(35)から分岐した第1乃至第4の分岐管(31a,32a,33a,34a)から吸い込んだ冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を吐出管(31b,32b,33b,34b)から吐出する。
【0030】
圧縮機ユニット(30)の運転容量は、圧縮機(31,32,33,34)の運転台数を変更することによって調節される。一般には、インバータを用いて各圧縮機(31,32,33,34)の回転速度を変更し、それによって圧縮機ユニット(30)の運転容量を調節することが考えられる。ところが、インバータを用いると電磁波ノイズが発生し、救難通信等の無線通信に悪影響を及ぼす可能性がある。また、インバータで生じる逆相電流によって発電機の能力が低下するおそれもある。このため、船舶用の空調装置(10)では、圧縮機ユニット(30)の運転容量を調節するためにインバータを用いることができない。従って、本実施形態の圧縮機ユニット(30)は、圧縮機(31,32,33,34)の運転台数を変更することで運転容量を調節するように構成されている。
【0031】
図3は、空調装置の内部構造を示す側面図である。図3に示すように、ケーシング(11)は、基台(11a)上に組まれた支柱に外板部材を取り付けて構成され、略直方体形状をしている。基台(11a)上には、圧縮機(31,32,33,34)が配設されている。
【0032】
ケーシング(11)内は、仕切板(18)によって上下に区画されている。具体的に、仕切板(18)よりも上側にはファン室(12)、下側には機械配設室(13)が区画形成されている。ファン室(12)内には、蒸発器(50)と送風機(15)とが配設されている。また、機械配設室(13)には、凝縮器(40)や膨張弁等が配設されている。
【0033】
蒸発器(50)は、いわゆるクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器であって、ケーシング(11)内における図3で右側の側壁に取り付けられている。この蒸発器(50)は、冷媒を空気と熱交換させる。
【0034】
図2に示すように、蒸発器(50)は、銅製の伝熱管によって構成された流通路(56)と、流通路(56)を構成する伝熱管に接合されたアルミニウム製のフィン(51)とによって構成されている。蒸発器(50)では、流通路(56)の一端が冷媒出口管(22)を介して膨張弁(45)に接続されている。また、蒸発器(50)において、各流通路(56)の他端は、出口配管(52)に接続されている。
【0035】
図3に示すように、ケーシング(11)の天板には、船室(104)まで延びる給気ダクト(102)が接続されている。送風機(15)は、その吹出口が給気ダクト(102)に接続されており、送風機(15)から吹き出される空気は、ケーシング(11)内から給気ダクト(102)へ送り込まれる。
【0036】
仕切板(18)は、図3で右側の側壁からケーシング(11)中央位置に向かって斜め下方に延びた後、ケーシング(11)中央位置から左側の側壁に向かって斜め上方に延びている。そして、仕切板(18)における傾斜面の最下点位置(ケーシング(11)中央位置に相当)には、貫通孔(18a)が形成されている。
【0037】
凝縮器(40)は、いわゆるシェル・アンド・チューブ型の熱交換器であって、機械配設室(13)内における、仕切板(18)の貫通孔(18a)の直下に配設されている。図4及び図5に示すように、凝縮器(40)は、円筒形状のシェル(41)と、シェル(41)の両端の管板(41a)に跨って支持された複数の伝熱チューブ(42)と、シェル(41)の両端開口を塞ぐヘッダ部(43)とを備えている。シェル(41)の上部には、冷媒入口管(21)が接続されている。また、シェル(41)の下部には、冷媒出口管(22)が接続されている。これにより、冷媒入口管(21)からシェル(41)内に流入した冷媒は、シェル(41)内を通って冷媒出口管(22)から流出する。
【0038】
また、図4で左側のヘッダ部(43)には、冷却水(海水又は清水)をシェル(41)内に給水する給水管(43a)と、冷却水をシェル(41)外に排水する排水管(43b)とが接続されている。左側のヘッダ部(43)内は、給水管(43a)に連通する空間と、排水管(43b)に連通する空間とに仕切られている。つまり、給水管(43a)から給水された冷却水は、シェル(41)内の下半分に配置された伝熱チューブ(42)の管群を通って右側のヘッダ部(43)まで流れる。そして、右側のヘッダ部(43)で折り返され、シェル(41)内の上半分に配置された伝熱チューブ(42)の管群を通って左側のヘッダ部(43)まで流れた後、排水管(43b)から排水される。ここで、冷媒入口管(21)からシェル(41)内に供給された冷媒は、複数の伝熱チューブ(42)を流れる冷却水と熱交換して冷却された後、冷媒出口管(22)から流出する。
【0039】
凝縮器(40)のシェル(41)の上部には、蒸発器(50)で生じた凝縮水を回収するドレンパン(60)が設けられている。ドレンパン(60)は、シェル(41)の長手方向に沿って延び、上方が開口した長方体形状に形成されている。また、ドレンパン(60)の側壁には、長手方向に間隔をあけて複数の供給孔(61)が形成されている。
【0040】
ここで、図3に示すように、ケーシング(11)内に吸い込まれた空気は、蒸発器(50)を通過する間に冷媒によって冷却される。通常、蒸発器(50)を通過した空気の温度は、蒸発器(50)へ送られる空気の露点温度よりも低くなる。このため、蒸発器(50)では、空気に含まれる水蒸気が凝縮して凝縮水となる。
【0041】
そして、凝縮水は、蒸発器(50)の表面に沿って流下し、仕切板(18)の傾斜面に沿って貫通孔(18a)に向かって流れる。凝縮水は、貫通孔(18a)を通って機械配設室(13)内に流入し、凝縮器(40)上部のドレンパン(60)に回収される。ドレンパン(60)に回収された凝縮水は、複数の供給孔(61)を介して凝縮器(40)の表面全体に満遍なく供給される。このように、ドレンパン(60)で回収した凝縮水を凝縮器(40)に供給することで、凝縮器(40)の熱交換効率を高めて圧縮機入力を抑えることができ、省エネ性を向上させる上で有利となる。
【0042】
なお、本実施形態では、蒸発器(50)で生じた凝縮水を、仕切板(18)の傾斜面に沿って流すことで、凝縮器(40)上部のドレンパン(60)に回収するようにしているが、凝縮器(40)を蒸発器(50)の直下に配設し、蒸発器(50)で生じた凝縮水を凝縮器(40)のドレンパン(60)に直接回収するようにしても良い。
【0043】
図2に示すように、凝縮器(40)の冷媒出口は、冷媒出口管(22)を介して蒸発器(50)に接続されている。冷媒出口管(22)の途中には、膨張弁(45)が設けられている。
【0044】
膨張弁(45)は、いわゆる温度自動膨張弁である。膨張弁(45)の感温筒(45a)は、蒸発器(50)の出口配管(52)に取り付けられ、出口配管(52)の表面と接している。なお、膨張弁(45)は、いわゆる電子膨張弁であってもよい。
【0045】
空調装置(10)には、吸込風温センサ(81)が設けられている。吸込風温センサ(81)は、空気の流通経路における蒸発器(50)の上流側に配置されている。この吸込風温センサ(81)は、船室(104)内の室内空気が通る吸込ダクト(101)の空気温度を計測する。
【0046】
制御器(16)は、圧縮機ユニット(30)の運転容量を調節する動作を行う。具体的に、制御器(16)には、吸込風温センサ(81)の計測値が入力されている。そして、制御器(16)は、吸込風温センサ(81)の計測値に基づいて圧縮機ユニット(30)の運転容量を調節する。
【0047】
−運転動作−
以下、本実施形態に係る空調装置(10)の運転動作について説明する。まず、冷媒回路(20)の動作について、図2を参照しながら説明する。
【0048】
圧縮機ユニット(30)の運転容量が最大の場合は、全ての圧縮機(31,32,33,34)が運転される。各圧縮機(31,32,33,34)から吐出された冷媒は、合流した後に凝縮器(40)へ流入し、冷却水である海水又は清水へ放熱して凝縮する。凝縮器(40)において凝縮した冷媒は、膨張弁(45)を通過する際に減圧されて気液二相状態となる。
【0049】
膨張弁(45)を通過した冷媒は、蒸発器(50)へ流入する。具体的に、膨張弁(45)を通過した冷媒は、冷媒出口管(22)を通って流通路(56)へ流入する。流通路(56)を流れる冷媒は、フィン(51)間を通過する空気から吸熱して蒸発し、通常は過熱蒸気となって出口配管(52)へ流入する。
【0050】
ここで、蒸発器(50)では、空気に含まれる水蒸気が凝縮して凝縮水となる。そして、凝縮水は、蒸発器(50)の表面に沿って流下して、仕切板(18)の傾斜面に沿って貫通孔(18a)に向かって流れ、凝縮器(40)の上部のドレンパン(60)に回収される。ドレンパン(60)に回収された凝縮水は、複数の供給孔(61)を介して凝縮器(40)の表面全体に満遍なく供給される。
【0051】
流通路(56)から出口配管(52)へ流入した冷媒は、蒸発器(50)から流出し、その後に4台の圧縮機(31,32,33,34)に分かれて吸入される。各圧縮機(31,32,33,34)へ吸入された冷媒は、圧縮された後に各圧縮機(31,32,33,34)から吐出される。
【0052】
上述したように、膨張弁(45)の感温筒(45a)は、蒸発器(50)の出口配管(52)に取り付けられている。従って、膨張弁(45)の開度は、出口配管(52)を流れる冷媒の過熱度が所定の目標過熱度となるように調節される。つまり、出口配管(52)を流れる冷媒の過熱度が高すぎる場合は、過熱度を引き下げるために膨張弁(45)の開度が拡大される。一方、出口配管(52)を流れる冷媒の過熱度が低すぎる場合は、過熱度を引き上げるために膨張弁(45)の開度が縮小される。
【0053】
次に、空気の流れについて、図1を参照しながら説明する。空調装置(10)の運転中には、送風機(15)が運転される。送風機(15)は、吸込ダクト(101)から空気を吸い込む。このため、空調装置(10)には、船室(104)内の室内空気と船外の室外空気とが、吸込ダクト(101)を通って吸い込まれる。
【0054】
空調装置(10)に吸い込まれた空気は、蒸発器(50)を通過する間に冷媒によって冷却される。通常、蒸発器(50)を通過した空気の温度は、蒸発器(50)へ送られる空気の露点温度よりも低くなる。このため、蒸発器(50)では、空気に含まれる水蒸気が凝縮して凝縮水となる。つまり、蒸発器(50)では、空気の冷却と除湿が行われる。冷却され且つ除湿された空気は、空調装置(10)から給気ダクト(102)へ送り出される。給気ダクト(102)を流れる空気は、各船室(104)に設けられた吹出口(103)へ分配され、吹出口(103)から船室(104)へ吹き出される。
【0055】
−制御器の動作−
次に、制御器(16)が行う動作について説明する。まず、圧縮機ユニット(30)の運転容量を調節する動作について説明する。制御器(16)は、吸込風温センサ(81)の計測値が船室(104)の設定温度となるように、圧縮機ユニット(30)の運転容量を調節する。
【0056】
具体的に、吸込風温センサ(81)の計測値が設定温度よりも低い場合、制御器(16)は、吸込風温センサ(81)の計測値を引き上げるために、圧縮機ユニット(30)における圧縮機(31,32,33,34)の運転台数を減らしてゆく。つまり、この場合、制御器(16)は、圧縮機ユニット(30)の運転容量を、段階的に低下させてゆく。また、圧縮機(31,32,33,34)のうちの1台だけが運転されている状態でも吸込風温センサ(81)の計測値が設定温度よりも低い場合には、制御器(16)は、全ての圧縮機(31,32,33,34)を停止させる。
【0057】
一方、吸込風温センサ(81)の計測値が設定温度よりも高い場合、制御器(16)は、吸込風温センサ(81)の計測値を引き下げるために、圧縮機ユニット(30)における圧縮機(31,32,33,34)の運転台数を増やしてゆく。つまり、この場合、制御器(16)は、圧縮機ユニット(30)の運転容量を、段階的に増加させてゆく。
【0058】
以上のように、本実施形態に係る船舶用空調装置(10)によれば、従来は排水処理されるだけであった蒸発器(50)で生じた凝縮水を、ドレンパン(60)で回収して凝縮器(40)に供給するようにしたから、比較的簡単な構成で凝縮器(40)を冷却することができる。これにより、凝縮器(40)の熱交換効率を高めて圧縮機入力を抑えることができ、省エネ性を向上させる上で有利となる。
【0059】
《実施形態2》
図6は、本実施形態2に係る空調装置の凝縮器の構成を示す側面図、図7は正面図である。前記実施形態1との違いは、ドレンパン(60)の配置を変更した点であるため、以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0060】
図6及び図7に示すように、凝縮器(40)の下方には、ドレンパン(60)が配置されている。ドレンパン(60)は、凝縮器(40)の長手方向に沿って延び、上方が開口した長方体形状に形成されている。そして、蒸発器(50)で生じた凝縮水は、凝縮器(40)の上部に供給されて凝縮器(40)の表面に沿って流下するか、又はドレンパン(60)に直接供給されることで、ドレンパン(60)内に貯留される。ここで、ドレンパン(60)に凝縮水が貯留されると、凝縮器(40)の下部よりも凝縮水の水面の方が高くなり、凝縮器(40)が凝縮水に浸漬されるようになっている。ドレンパン(60)に貯留された凝縮水は、図示しない排水管によって排水される。
【0061】
このような構成とすれば、ドレンパン(60)に回収された凝縮水に凝縮器(40)を浸漬させることで、凝縮器(40)を冷却させることができる。これにより、凝縮器(40)の熱交換効率を高めて圧縮機入力を抑えることができ、省エネ性を向上させる上で有利となる。また、この場合には、過冷却度をとることも期待できる。
【0062】
なお、本実施形態2の形態に加えて、前記実施形態1のドレンパン(60)を凝縮器(40)のシェル(41)の上部に配設し、上部のドレンパン(60)から供給された凝縮水を、下部のドレンパン(60)で再度回収することで、凝縮器(40)に浸漬させるようにした構成であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明は、比較的簡単な構成で凝縮器を冷却することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0064】
10 船舶用空調装置
20 冷媒回路
40 凝縮器
50 蒸発器
60 ドレンパン
61 供給孔
100 船舶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発器(50)と凝縮器(40)とを有し冷媒を循環させて冷凍サイクルを行う冷媒回路(20)を備え、船舶(100)に搭載される船舶用空調装置であって、
前記蒸発器(50)の下方に配置され、該蒸発器(50)で生じた凝縮水を回収するとともに、回収した凝縮水を前記凝縮器(40)に供給するドレンパン(60)を備えたことを特徴とする船舶用空調装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ドレンパン(60)は、前記凝縮器(40)の上部で該凝縮器(40)の長手方向に沿って延び、
前記ドレンパン(60)の側壁には、複数の供給孔(61)が長手方向に間隔をあけて形成されていることを特徴とする船舶用空調装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記ドレンパン(60)は、回収した凝縮水に前記凝縮器(40)が浸漬されるように該凝縮器(40)の下方に配置されていることを特徴とする船舶用空調装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1つにおいて、
前記凝縮器(40)は、シェル・アンド・チューブ型の熱交換器で構成されていることを特徴とする船舶用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−136152(P2012−136152A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290017(P2010−290017)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)