説明

船舶用繊維ロープ

【課題】 2合成繊維を混合して2繊維の特徴をあわせ持たせるロープにおいて伸び・伸度をほぼ同様とし、ロープのストランドリードを比較的短くして初期荷重時の伸度を大にし、比較的安価で、比較的、短距離係船、船舶曳航を良好にする。
【解決手段】 2合成繊維混合ロープにおいて原糸の伸度を合わせて比較的大としまた、繊維の熱収縮差を応用し、なお、繊維ロープ製作に際して、ストランド構成の工夫等により初期負荷を受けるに際してロープの変形を大にし、繊維ロープの短い距離・間隔における使用に適させ、なお、耐初期衝撃力を良好にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、初期荷重時の伸び・伸度を大にし、初期衝撃荷重対抗力の増加を計る繊維ロープに関するものであり、なかでも、短い距離・間隔において使用するときに良好なロープに関する。本機能を船舶関連ロープ以外のロープに応用することが可能である。
【背景技術】
【0001】
従来の合成繊維ロープの開発方向において、以前に用いられていた天然繊維製ロープの性質と比すことから始め、伸度面においては比較的低伸度となし、強度面においては、従来の天然繊維製に比し高強力を更なるものとなし、ワイヤーロープに近づける方向であった。ゆえに、ロープに使用する合成繊維開発においては、高延伸による高強力の繊維開発の方向に向かい、ロープの構造においては、加撚による強度低下を少にするために無撚りとなしたり、加撚による強度低下を可能な限り少にするなどとして合成繊維ロープ需要が増大し、さらに、用途に好適なロープ開発を行うに、単一繊維の性質のみにたよることなく、ポリプロピレン繊維とポリエステル繊維2繊維混合ロープを開発し両繊維の特徴をあわせて持たせたロープとし、船舶用等の用途に適合させてきた。
【0002】
しかし、近来、船舶係留等に際して、荷役業務を、より効率良くするため、岸壁等に、より接近して接岸する方向にあり、なお、船舶荷役の機械化が進み、コンペアー等を用いることが多く、また、フェリーボートにおいては、船体と岸壁に渡す車輌走行用橋の揺動を小にするため船体動を可能な限り小にすることが肝要となり、短い距離・間隔においてロープを使用し、船体揺動を可能な限り少にしなければならなくなっている。
【0003】
また、船舶曳航に際しては、外航船の大型化により、狭隘な港湾内においての自力走航難を補うため、大型船側に曳船が近接し、大型船側に添って短い距離・間隔で曳航ロープを用いて大型船曳航走行することが増加している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
解決しようとしている問題点は、近接接岸短距離・間隔係留時、および、近接曳航短距離繋ぎ時に使用する短尺使用係船曳航繊維ロープについての問題が主であるが、長尺使用ロープにおいての問題も含む。
【課題を解決しようとする手段】
【0004】
船舶係留曳航ロープの仕事量は、図1に示すロープ強力―伸び曲線の下側の面積で現され、したがって、ロープの強力が一定のとき、ロープの仕事量はロープの伸び量に比例し、ロープの伸び量はロープの長さに比例する。したがって、船舶を近接接岸短距離・間隔においての係留時、および、近接曳航短距離・間隔曳航のロープについては、強度を上げるとともに伸び量を多くする要があり、特に海洋が荒れて船舶が激しくローリングし、ロープに衝撃力が加わるときに、対応するようにしなければならない。
【0005】
この点に着目し、船舶を近接接岸短距離係留時、および、近接曳航短距離繋ぎ時の適切な繊維ロープについて各種合成繊維ロープの実際使用の研究を積み重ね、ロープに用いる原糸の性状とロープの構造の工夫に着目し、一つの方法としてロープに用いる原糸において、ポリエステル繊維とポリプロピレン繊維を複合し両繊維の性質を併せ持たせたロープとすることを特徴するほか、両繊維の性質のうち、伸び・伸度のみを、ほぼ同様となるように調整する際、伸度が大なる方、すなわち、ポリプロピレン繊維の伸度、約25%にポリエステル繊維の伸度を合わせることに調整し、ロープが受ける初期荷重時の伸びを大にして耐衝撃力を良好にする。
【0006】
他の方法として、ポリプロピレン繊維とポリエステル繊維とを混合して構成するロープのヤーンを熱処理するに際して、両繊維の熱処理温度を一定とするときの両繊維の熱収縮差を利用して両繊維に収縮差を付与し、該ヤーンによるロープに初期荷重がかかるとき熱収縮が大なる繊維にのみ荷重がかかり、ロープの初期伸びが大となりロープの耐初期衝撃荷重力が大となり、ロープに掛かる荷重が増加するにつれて両繊維に荷重がかかることとなり、ロープの総強力は該熱処理を行わないヤーンを用いたロープと同様となる。さらに、ロープのストランドリードを通常よりも短くする。この際、ロープの強度はやや低下するがロープの初期伸び量が増加し、すなわち、ロープの歪エネルギーの蓄積が大きく、近接接岸短距離・間隔係留時、および、近接曳航短距離・間隔繋ぎ繊維ロープに適する。
【発明の効果】
本発明によるロープにつき、2繊維混合ロープにおいて、両繊維の伸びの調整の工夫によりロープの歪エネルギーを大にすること、および、ロープの変形によるロープの伸びを大にし、ロープ初期負荷時の歪エネルギーを大にし、船舶の近接接岸短距離・間隔係留時、および、近接曳航短距離・間隔繋ぎに適するロープとすることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明ロープの使用に際し、特に短距離・間隔の係船時においてロープの初期荷重衝撃対抗力を大とし、歪エネルギーの蓄積を大とし、ロープの損傷を少にするとともに、船体の衝撃負荷を少にし船体を守ることにある。
【実施例】
図1は、本発明にかかる繊維ロープの構成を現し、図2は、本発明による繊維ロープ強力−伸び線図である。
【産業上の利用可能性】
船舶係留に際しては、荷役業務を、より効率良くするため、岸壁等に、より接近して接岸する方向にあり、船舶曳航に際しては、外航船の大型化により、狭隘な港湾内においての自力走航難を補うため、大型船側に曳船が近接、添って併走することが増加している。これに際して、近接、短距離・間隔における繊維ロープの歪エネルギーを大にすることにより係留、曳航の安全を計ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】繊維ロープの構成を示す図である。
【図2】繊維ロープの強力と伸度関係線図である。
【符号の説明】
1 繊維ロープ
2 ストランド
3 ヤーン
4 原糸・繊維
5 ロープの伸び表示線
6 ロープの強力表示線
7 ロープ強力―伸び曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン繊維とポリエステル繊維の2繊維を混合して構成するロープにおいて、2繊維の性質のうち、伸びを、ほぼ同様となるように調整することを特徴とする船舶用繊維ロープ。
【請求項2】
繊維の熱収縮率においてポリエステル繊維の収縮率よりもポリプロピレン繊維の収縮率が大なることを応用し負荷重時に対して2繊維の伸び調整を行うことを特徴とする請求項1記載の船舶用繊維ロープ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−254941(P2007−254941A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328762(P2006−328762)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(595064887)小浜製綱株式会社 (3)
【Fターム(参考)】