説明

船舶用防熱パネルおよびこれを設置した船室

【課題】防熱機能を奏すると共に、支持腕を壁面に固定することなく配管を設置することができる、船舶用防熱パネルと、これを設置した船室とを提供する。
【解決手段】船舶用防熱パネル10は、板状に形成された芯材2と、芯材2の内部に配置された配管1と、芯材2の一方の面に設置された一方側面材3と、芯材2の他方の面に設置された他方側面材4と、一方側面材3と他方側面材4とを連結する端部面材5と、を有している。配管1の両端部は曲げられ、端部11が一方側面材3を貫通して突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は船舶用防熱パネルおよびこれを設置した船室、特に、壁面に沿って配管が設置された船室に好適な船舶用防熱パネルと、これを設置した船室とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の防火パネル(防熱パネルに同じ)は、直接または所定の間隔(断熱エアー層に相当する)を設けて船室の壁面に設置されるものであって、船室において火災が発生した際、所定の時間にわたって火炎の通過を阻止するものである。そして、火炎の通過阻止性能が良好で、しかも、軽量で外観も良く、取り付け工事が容易な船舶用防熱パネルが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−231567号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された発明は、防火パネル同士の突当部の壁面側(裏側)に、突当部を跨ぐ所定幅の防火ライナーを当てがって、防熱パネルおよび防火ライナーを貫通する鋼製ピン(一端が壁面に固定されている)によって、両者を壁面に設置するものである。このため、火炎の通過阻止性能が良好で、しかも、軽量で外観も良く、取り付け工事が容易であるという優れた効果を奏するものである。
しかしながら、壁面に沿って配管(電気線、通信線が収納されたり、水や空気等が流通する)を設置しようとすると、配管自体を断熱(防熱)被覆したり、配管を支持する支持腕(サポートアーム)を壁面に固定したりする必要があるため、以下の問題があった。
【0005】
(あ)配管の外周に断熱材(低熱伝達材)を捲回したり吹き付けたりするため、設置作業が煩雑になると共に、配管の見掛けの外径が拡大するため、景観を害するだけでなく、船室の空間が狭くなる。
(い)支持腕が防火パネルから剥き出しになるため、支持腕を介して壁面に伝熱される。
(う)支持腕が防火パネル自体を貫通しようとすると、支持腕の形状が限定されると共に、施工が煩雑(たとえば、支持腕を壁面に固定した後、防火パネルを設置し、最後に配管を設置する)。
(え)支持腕が防火パネル同士の突当部を貫通しようとすると、防火パネルが規格形状であるため、支持腕の固定位置が限定される。
【0006】
本発明は上記問題を解決するものであって、防熱機能を奏すると共に、支持腕を壁面に固定することなく配管を設置することができる、船舶用防熱パネルと、これを設置した船室とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る船舶用防熱パネルは、板状に形成された芯材と、
該芯材の内部に配置された配管と、
前記芯材の一方の面に設置された一方側面材と、
前記芯材の他方の面に設置された他方側面材と、
を有し、
前記一方側面材の側縁の近傍において、前記配管の端部が前記一方側面材を貫通して突出していることを特徴とする。
【0008】
(2)前記(1)において、前記芯材が、熱伝達性能が悪い材料によって形成されることを特徴とする。
(3)前記(1)において、前記一方側面材および前記他方側面材が、繊維強化型合成樹脂製の板材またはシート材であることを特徴とする。
【0009】
(4)また、本発明に係る船室は、前記(1)乃至(3)の何れかに記載の船舶用防熱パネルを複数枚有するものであって、
前記複数枚の船舶用防熱パネルの他方側面材が、直接または所定の間隔を空けて壁面に設置され、
前記船舶用防熱パネルのうちの一方の船舶用防熱パネルから突出している前記配管の端部と、前記船舶用防熱パネルのうちの他方の船舶用防熱パネルから突出している前記配管の端部とが、連結管によって連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
(i)本発明に係る船舶用防熱パネルは、一対の面材によって芯材が挟まれたサンドイッチ構造であって、その芯材の内部に配管が配置されている。したがって、かかる船舶用防熱パネルを壁面に設置するだけで、別途、配管を設置するための支持腕を壁面に設置する必要がない。よって、設置作業が容易であって、壁面はスッキリし、船室の空間が狭くなることもない。
(ii)また、芯材が熱伝達性能が悪い材料によって形成されるから、壁面への伝熱を最少に抑えることができる。
(iii)また、面材が繊維強化型合成樹脂(以下「FRP」と称す)製の板材またはシート材であるから、軽量かつ所定の強度を有するため、壁面への設置等の取り扱いが容易であると共に配管を確実に保持することができる。また、表面の装飾が容易であるため、意匠性を高めることができる。
【0011】
(iv)さらに、本発明に係る船舶用防熱パネルは、前記船舶用防熱パネルを複数枚有するから、仮に火災が発生したとしても、壁面に高熱が伝達されることがない。また、各船舶用防熱パネルの配管は、船舶用防熱パネルから突出している端部同士を連結管によって連結するだけで互いに連通させることができるから、設置作業が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る船舶用防熱パネルを説明するものであって、(a)は模式的に示す平面視の断面図、(b)は模式的に示す正面視の断面図、(c)は模式的に示す斜視図である。
図1において、船舶用防熱パネル10は、板状に形成された芯材2と、芯材2の内部に配置された配管1と、芯材2の一方の面に設置された一方側面材3と、芯材2の他方の面に設置された他方側面材4と、一方側面材3と他方側面材4とを連結する端部面材5と、を有している。配管1の両端部は曲げられ、端部11および端部12が一方側面材3を貫通して突出している。なお、端部面材5と一方側面材3とは折り曲げ部において連続した一体物を、示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、端部面材5と他方側面材4とが折り曲げ部において連続した一体物であってもよいし、端部面材5と一方側面材3または他方側面材4とが、別体あるいは一部が連続したものであってもよい。
【0013】
配管1を形成する材料は、これに挿入される電気線や通信線等に応じて、あるいはこれを流れる流体(空気、水等)に応じて、たとえば、金属管や樹脂管等が、選定される。
芯材2は、比較的熱を伝え難い(「熱伝達性能が悪い」と称している)材料、たとえば、スチロール樹脂の発泡体やハニカム構造体、グラスウール等、によって形成されている。
一方側面材3、他方側面材4および端部面材5は、所定の強度と所定の耐熱性とを有するシート状に形成したFRPである。
したがって、配管1は芯材2によって断熱的に保持され、芯材2は一方側面材3および他方側面材4によって挟まれているから、配管1は、特別の支持手段を設けることなく移動不能になっている。
【0014】
すなわち、船舶用防熱パネル10を壁面に設置すれば、壁面に支持腕等を設置することなく、配管1を壁面に沿って配置することができる。そして、配管は芯材によって包囲されているから、配管の外周に断熱材(低熱伝達材)を捲回したり吹き付けたりする作業が激減する。
よって、設置作業が容易であって、壁面はスッキリし、船室の空間が狭くなることもない。また、壁面への伝熱を抑えることができ、表面の装飾等によって意匠性を高めることができる。
【0015】
[実施形態2]
図2は、本発明の実施形態2に係る船室を説明するものであって、一部を模式的に示す平面視の断面図である。なお、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号(数字)を付し、一部の説明を省略する。
図2において、船室100の壁面90には、船舶用防熱パネル10a、10bと公知の船舶用防火パネル9c(たとえば、特許文献1参照)が設置されている(たとえば、接着剤によって貼り付けられている)。
船舶用防熱パネル10aの他方側(図中、右側)の端部面材52aに段差が形成され、該段差が、船舶用防熱パネル10bの一方側(図中、左側)の端部面材51bに形成された段差に当接して(咬み合って)いる。また、船舶用防熱パネル10bの他方側(図中、右側)の端部面材52bに形成された段差が、船舶用防火パネル9cの一方側(図中、左側)の端部面材51cに形成された段差に当接して(咬み合って)いる。
【0016】
そして、船舶用防熱パネル10aの他方側(図中、右側)の側縁の近傍から突出する配管1aの端部12aと、船舶用防熱パネル10bの一方側(図中、左側)の側縁の近傍から突出する配管1bの端部11bと、が連結管20によって接続されている。
また、船舶用防熱パネル10bの他方側(図中、右側)の側縁の近傍から突出する配管1bの端部12bには、室内配管30が接続されている。
そして、配管1aの端部12a、配管1bの端部11bおよび連結管20が、図示しない防熱手段によって包囲され、同様に、配管1bの端部12bおよび室内配管30が、図示しない防熱手段によって包囲されている。
【0017】
よって、船室100は、仮に火災が発生したとしても、壁面90に高熱が伝達されることがない。また、船舶用防熱パネル10a、10bおよび船舶用防火パネル9cを壁面90に設置して、船舶用防熱パネル10aから突出する配管1aの端部12aと船舶用防熱パネル10bから突出する配管1bの端部11bと、を連結管20によって、連結するだけで、配管を設置することができるから、設置工事が簡素で迅速になる。
なお、図1において、船舶用防熱パネル10a、10b等を壁面90に直接設置しているが、本発明はこれに限定するものではなく、壁面90との間に所定の距離の隙間(断熱エアー層に相当する)を設けてもよい。また、図2において、端部面材52aや端部面材51b等に、段差を設けているが、本発明はこれに限定するものではない(図1参照)。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は以上の構成であるから、配管の設置が容易で、壁面への防熱を図ることができるから、各種形態の船室の壁面に設置する船舶用防熱パネルとして、また、各種構造物の壁面に設置する防熱パネルとして広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態1に係る船舶用防熱パネルを説明する模式的に示す平面視の断面図、正面視の断面図、および斜視図。
【図2】本発明の実施形態2に係る船室を説明する一部を模式的に示す平面視の断面図。
【符号の説明】
【0020】
1 配管
2 芯材
3 一方側面材
4 他方側面材
5 端部面材
9c 船舶用防火パネル
10 船舶用防熱パネル
11 端部
20 連結管
30 室内配管
90 壁面
100 船室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成された芯材と、
該芯材の内部に配置された配管と、
前記芯材の一方の面に設置された一方側面材と、
前記芯材の他方の面に設置された他方側面材と、
を有し、
前記一方側面材の側縁の近傍において、前記配管の端部が前記一方側面材を貫通して突出していることを特徴とする船舶用防熱パネル。
【請求項2】
前記芯材が、熱伝達性能が悪い材料によって形成されることを特徴とする請求項1記載の船舶用防熱パネル。
【請求項3】
前記一方側面材および前記他方側面材が、繊維強化型合成樹脂製の板材またはシート材であることを特徴とする請求項1記載の船舶用防熱パネル。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の船舶用防熱パネルを複数枚有する船室であって、
前記複数枚の船舶用防熱パネルの他方側面材が、直接または所定の間隔を空けて壁面に設置され、
前記船舶用防熱パネルのうちの一方の船舶用防熱パネルから突出している前記配管の端部と、前記船舶用防熱パネルのうちの他方の船舶用防熱パネルから突出している前記配管の端部とが、連結管によって連結されていることを特徴とする船室。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−95013(P2010−95013A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264964(P2008−264964)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
【Fターム(参考)】