説明

船舶用隔壁パネル

【課題】本発明の目的は、ダイオキシンのような有害なガスを発生せず、可塑材として有害な物質を含まず、かつ見映えの良好な船舶用隔壁パネルを提供することにある。
【解決手段】本発明の船舶用隔壁パネルは、断面コ字型形状を有し、外表面にポリエステル系樹脂またはオレフィン系樹脂皮膜層を備えてなる一対の鋼板製部材を凹部どうしが対向するように配置して、凹部どうしが対向することにより形成される空間内にパネル芯材を配設してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶内の空間を間仕切るための壁面を形成するために使用される船舶用隔壁パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の船舶用隔壁パネルは、防熱性、防音性及び防振性の観点からロックウールやガラス繊維のような繊維質または軽量珪酸カルシウム板のようなポーラスな部分と、鋼板のような補強部材を組み合わせて使用し、要求される性能に合わせてそれぞれの厚さ等を調整している。また、船舶用パネルの施工性を改善するために様々な提案も為されている。例えば、特許文献1には、密度が80〜350kg/m、厚さ20mm以上の板状またはマット状の方形鉱物質繊維材の表面に、相隣る二側端に係合用段部が形成されてなる厚さ1mm以上の鋼板が、他の相隣る二側端を上記鉱物質繊維材の二側端面から適宜寸法突出せしめて上記係合用段部と係合可能な突出片を形成するように固着されてなることを特徴とする船舶用床パネルが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、用板上に配設された複数の鋼板パネル相互を、平板に複数の直立せるカギ形爪を形成した固定具にて接続し、その上に上記固定具を埋設してデッキコンポジシオンを設けてなる船舶の浮床構造が開示されている。
【0004】
更に、特許文献3には、薄板鋼板からなる平板状の面板と該面板の四辺を折り曲げた側縁部とで凹部を形成し、該凹部内にロックウール等の断熱材を設け、船体ウェブ面上に位置する面板両側端部にウェブ面のスタッドピンの配設ピッチに合わせてスタッドピン径よりも大きな径を有するスタッドピン用開孔を設け、エアースペース上に位置する2辺の側縁部の一辺には隣合う防熱パネル同士を接合するための舌状片を設けたことを特徴とする船舶の防熱パネルが開示されている。
【0005】
また、特許文献4には、下面が開口した平箱状の鋼板の下部に、無機質繊維板を嵌入するとともに接着剤を介して接合した浮床パネルであって、前記鋼板の開口縁辺の下縁から外側に向かってつめを突設し、このつめを介して隣接した浮床パネルと連結することを特徴とする船舶用浮床パネルが開示されている。
【0006】
更に、特許文献5には、相対向して配置された不燃性又は難燃性の2枚の板状材(1、1)の間に、不燃性又は難燃性素材で形成したハニカム構造の芯材(2)を挟持したことを特徴とする耐火用板状材(請求項1)が開示されている。
【0007】
更に、船舶用隔壁パネルを構成する鋼板に防錆性を付与し、更に、見映えを良くするために、鋼板表面にポリ塩化ビニル皮膜のような樹脂皮膜をコーティングすることも行なわれている。
【0008】
【特許文献1】実開昭58−172650号公報 実用新案登録請求の範囲
【特許文献2】実開昭61−20498号公報 実用新案登録請求の範囲
【特許文献3】実用新案登録第2535014号公報 実用新案登録請求の範囲
【特許文献4】特開2001−213386号公報 特許請求の範囲
【特許文献5】特開平7−238600号公報 特許請求の範囲
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、鋼板表面にコーティングされているポリ塩化ビニル皮膜は、火災発生時等の燃焼時にダイオキシンを発生し、また、環境に悪影響を及ぼすことが懸念されている所謂環境ホルモンを含有する可塑材が使用されているために、その使用は削減するか、または廃止することが望ましい。また、特許文献5に記載されているような耐火用板状材は、ハニカムを構成する材料によってはヒートブリッジを生じて熱が伝搬するため、耐火性・防火性の面で充分とは言えない。更に、ヒートブリッジの影響が低い材料を使用すると、パネルの耐衝撃性が不充分となる場合もある。
【0010】
従って、本発明の目的は、ダイオキシンのような有害なガスを発生せず、可塑材として有害な物質を含まず、かつ見映えの良好な船舶用隔壁パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明の船舶用隔壁パネルは、断面コ字型形状を有し、外表面にポリエステル系樹脂またはオレフィン系樹脂皮膜層を備えてなる一対の鋼板製部材を凹部どうしが対向するように配置して、凹部どうしが対向することにより形成される空間内にパネル芯材を配設してなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の船舶用隔壁パネルは、ポリエステル系樹脂またはオレフィン系樹脂皮膜層の外表面に、表面化粧層を備えてなることを特徴とする。
【0013】
更に、本発明の船舶用隔壁パネルは、表面化粧層は、印刷層及び/またはクリヤー層から構成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の船舶用隔壁パネルは、パネル芯材がロックウールから構成されることを特徴とする。
【0015】
更に、本発明の船舶用隔壁パネルは、パネル芯材が、鋼板製部材の凹部内面に接着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ダイオキシンのような有害なガスを発生せず、可塑材として有害な物質を含まず、かつ見映えの良好な船舶用隔壁パネルを提供することができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の船舶用隔壁パネルは、断面コ字型形状の鋼板製部材2枚を凹部どうしが対向するように配置して、凹部どうしが対向することにより形成される空間内にパネル芯材を配設してなる構成を有するものであり、このような構成を有する鋼板製部材の少なくとも外表面がポリエステル系樹脂またはオレフィン系樹脂皮膜層を備えてなることを特徴とするものである。
【0018】
ここで、鋼板製部材は、少なくとも片面にポリエステル系樹脂またはオレフィン系樹脂皮膜層を備える鋼板を用い、ポリエステル系樹脂またはオレフィン系樹脂皮膜層が外表面を構成するように、該鋼板の両端を折り曲げて断面コ字型形状とすることにより得ることができる。ここで、鋼板としては、例えば亜鉛メッキ鋼板、ガルバリウム鋼板等を使用することができる。また、鋼板の両面は、化成処理層を有するものであっても良い。なお、化成処理層としては、例えばクロム・りん酸等を使用することができる。
【0019】
鋼板製部材を構成する少なくとも片面にポリエステル系樹脂またはオレフィン系樹脂皮膜層を備える鋼板の厚さは、0.35〜1.6mmの範囲内であり、0.5〜0.8mmの範囲内が好ましい。鋼板の厚さが0.35mm未満であると、パネルの強度が不足し、ハンドリング性も低下するために好ましくなく、また1.6mmを超えると、パネル自体が重くなるために好ましくない。
【0020】
次に、鋼板の少なくとも片面に被覆されたポリエステル系樹脂またはオレフィン系樹脂皮膜層は、従来から使用されている塩化ビニル被覆鋼板とは異なり、有害物質を含まず、ガスバリア性が良好で、透湿性、酸素透過性にも優れ、更に、耐溶剤性、耐薬品性にも優れている。また、ポリエステル系樹脂皮膜層は結晶性ポリエステルより構成されているため、高い耐熱性を有し、不燃性基準及び船舶の表面火炎伝播試験に適合するものである。ここで、ポリエステル系樹脂またはオレフィン系樹脂皮膜層の厚さは、0.035〜0.25mm、好ましくは0.05〜0.2mm、最適には0.075mm程度である。なお、皮膜層の厚さが0.035mm未満であると、鋼板表面に達する傷が発生し易くなり、この傷を介して鋼板が劣化し易くなるために好ましくなく、また、0.25mmを超えると、不燃性及び耐火性が低下するために好ましくない。
【0021】
この皮膜層の上には、表面化粧層(つや消し仕様)を形成することもできる。表面化粧層は、印刷層及び/またはクリヤー層から構成することができ、その厚さは、0.015〜0.075mm、好ましくは0.020〜0.050mm、最適には0.025mm程度である。この表面化粧層を設けることにより、本発明の船舶用隔壁パネルの意匠性を向上させることができる。ここで、印刷層は、ポリエステル系樹脂またはオレフィン系樹脂皮膜層の表面にインキを例えばグラビア印刷等で印刷して模様を形成することができるものである。また、クリヤー層は、印刷層を保護することを主目的とし、ポリエステル系樹脂またはオレフィン系樹脂皮膜層と同様の透明フィルムにより形成することができる。なお、表面化粧層は、ISO 5658のパート2及びISO 5659のパート2に適合していることが好ましい。
【0022】
なお、上記鋼板製部材のポリエステル系樹脂またはオレフィン系樹脂皮膜層や表面化粧層が不在の面(裏面)には、裏面塗装層を施すこともできる。この裏面塗装層としては、例えばエポキシ樹脂やポリエステル樹脂等を使用することができる。
【0023】
上述のようなポリエステル系樹脂またはオレフィン系樹脂皮膜層並びに所望により表面化粧層を備えてなる鋼板の両端部を所定の長さずつ折り曲げることにより断面コ字型形状の鋼板製部材を作製することができる。
【0024】
次に、本発明の船舶用隔壁パネルを構成するパネル芯材は、ロックウールから構成される。ロックウールは、例えば密度が60〜250kg/m、好ましくは80〜230kg/mの範囲内にあり、厚さが25〜100mm、好ましくは 25〜50mmの範囲内にあるものを使用することが好ましい。ここで、ロックウールの密度が60kg/m未満であると、パネルの強度が低下するために好ましくなく、また、250kg/mを超えると、パネル自体が重くなるために好ましくない。更に、ロックウールの厚さが25mm未満であると、耐火性が低下するために好ましくなく、また、100mmを超えると、パネルが製造し難くなるために好ましくない。なお、パネル芯材として使用されるロックウールは、一対の断面コ字型形状の鋼板製部材の凹部どうしが対向するように配置して、凹部どうしが対向することにより形成される空間内に1枚物として設置したり、複数個のブロックとして設置することもできる。ここで、ロックウールとしてはISO 1182(不燃性材料試験)に適合しているものを使用することが好ましい。また、ロックウールの繊維配向方向を船舶用隔壁パネルの厚さ方向とすることにより、得られる船舶用隔壁パネルの強度を向上することができる。
【0025】
本発明の船舶用隔壁パネルは、一対の断面コ字型形状の鋼板製部材の凹部どうしが対向するように配置して、凹部どうしが対向することにより形成される空間内にパネル芯材を配設してなるものである。断面コ字型形状の鋼板製部材の凹部内面へのロックウールの取り付けは、一方の断面コ字型形状の鋼板製部材の凹部内面に接着剤、例えば、ポリウレタン樹脂系接着剤等を塗布後、パネル芯材を貼り付けた後、もう一方の断面コ字型形状の鋼板製部材の凹部内面に同様に接着剤を塗布してパネル芯材の他の面へ貼り付けて積層した後、熱圧着することにより行うことができる。なお、ポリウレタン樹脂系接着剤としては、一液型、二液型のいずれの接着剤をも使用することができるが、一液型接着剤の方がパネルの製造及び製造管理が容易であるために好ましい。
【0026】
なお、本発明の船舶用隔壁パネルにおいて、一対の断面コ字型形状の鋼板製部材どうしは接触している必要はなく、一対の鋼板製部材の折り曲げた部分の長さの合計がパネル芯材の厚さよりも短く、従って、船舶用隔壁パネルの側面で、パネル芯材が露出した状態となっている。また、船舶用隔壁パネルの端面は、パネル芯材が露出した状態となっている。
【0027】
なお、本発明の船舶用隔壁パネルの設置方法は特に限定されるものではなく、慣用の方法に従って設置することができ、その際に船舶用隔壁パネルの端面等を適宜加工したり、設置用の部材を適宜取り付けることができることは勿論である。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を挙げて本発明の船舶用隔壁パネルを更に説明する。
実施例
鋼板(亜鉛メッキ鋼板)表面にポリエステル系樹脂層(厚さ0.075mm)並びに表面化粧層(厚さ0.025mm)を備えてなる長さ2200mm、幅600mm、厚さ0.6±0.06mmの鋼板の両端部を、ポリエステル系樹脂層並びに表面化粧層が外側表面となるように6mmの幅で直角に折り曲げ、有効幅600mmの断面コ字型形状の鋼板製部材を作製した。
次に、断面コ字型形状の鋼板製部材の内面に、一液型ポリウレタン樹脂系接着剤(ポリウレタン樹脂100%、密度:1150kg/m)を塗布した後、パネル芯材となるブロック状ロックウール(長さ910mm、幅24mm、厚さ100mm、密度150kg/m)12.5本並びにブロック状ロックウール(長さ910mm、幅24mm、厚さ50mm、密度250kg/m)5本を、鋼板の折り曲げ部分とブロック状ロックウール並びにブロック状ロックウールどうしの接触部分に隙間が空かないように並べて接着した。なお、この時、ブロック状ロックウールの繊維配向方向を船舶用隔壁パネルの厚さ方向となるようにした。
次に、もう一枚の断面コ字型形状の鋼板製部材の内面に、一液型ポリウレタン樹脂系接着剤を塗布した後、ブロック状ロックウールのもう一方の面に接着し、熱圧着(プレス圧:1〜5MPa、プレス温度:55〜80℃、プレス時間:110〜130秒)して成形することにより本発明の船舶用隔壁パネルを製造した。
本発明の船舶用隔壁パネルは、ISO 1182(不燃性試験)において、炉内熱電対の温度上昇の平均が30℃を超えないこと;試験体表面熱電対の温度上昇の平均が30℃を超えないこと;持続炎の平均時間が10秒を超えないこと;平均質量減少が50%を超えないことを有するものであった。また、船舶の表面火炎伝播試験における表面燃焼性試験並びに発熱量試験の合格するものであった。更に、得られた本発明の船舶用隔壁パネルのISO 5659パート2[IMO MSC41(64)]に基づく他の諸特性を以下の表1に記載する。
【0029】
比較例
表面に塩化ビニル皮膜(厚さ:0.15mm)を有する鋼板に代えた以外は、上記実施例と同様の方法により比較品の船舶用隔壁パネルを製造した。
得られた比較品の船舶用隔壁パネルの諸特性を以下の表1に併記する。
【0030】
【表1】

【0031】
表1中、耐汚染性の欄において、○は、殆ど残らない、△は、僅かに残る、×は、残るをそれぞれ示す。
耐溶剤性並びに耐薬品性の欄において、○は、異常なし、△は、皮膜膨潤、×は、皮膜破壊をそれぞれ示す。
耐食性の欄において、○は、異常なしを示す。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の船舶用隔壁パネルは、船舶内の空間を間仕切るための壁面を形成するために好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面コ字型形状を有し、外表面にポリエステル系樹脂またはオレフィン系樹脂皮膜層を備えてなる一対の鋼板製部材を凹部どうしが対向するように配置して、凹部どうしが対向することにより形成される空間内にパネル芯材を配設してなることを特徴とする船舶用隔壁パネル。
【請求項2】
ポリエステル系樹脂またはオレフィン系樹脂皮膜層の外表面に、表面化粧層を備えてなる、請求項1記載の船舶用隔壁パネル。
【請求項3】
表面化粧層は、印刷層及び/またはクリヤー層から構成される、請求項2記載の船舶用隔壁パネル。
【請求項4】
パネル芯材は、ロックウールから構成される、請求項1ないし3のいずれか1項記載の船舶用隔壁パネル。
【請求項5】
パネル芯材は、鋼板製部材の凹部内面に接着されている、請求項1ないし4のいずれか1項記載の船舶用隔壁パネル。

【公開番号】特開2007−38737(P2007−38737A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222942(P2005−222942)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(000126609)株式会社エーアンドエーマテリアル (99)