説明

船舶発電システムの制御方法、船舶発電システムの制御プログラム、および船舶発電システムの制御装置

【課題】船舶の運航状況や船内電力負荷等に応じて適切な負荷分担制御を行うことが可能となる船舶発電システムの制御方法、船舶発電システムの制御プログラム、および船舶発電システムの制御装置を得る。
【解決手段】少なくともターボチャージャー発電機4が運転状態の際に、主機1の運転状況を示すパラメータを取得するパラメータ取得ステップと、ディーゼル発電機22の少なくとも1つが停止状態であって、パラメータが所定の条件を満たすとき、停止状態のディーゼル発電機22の少なくとも1つを運転させる駆動ステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャーにより駆動される発電機を備えた船舶発電システムの制御方法、その制御プログラム、およびその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術においては、例えば、「過給器付き主機1とプロペラ2を推進軸3で連結し、前記推進軸3に推進加勢用電動機10を設けた船舶推進システムにおいて、前記主機1の過給器4に余剰排気エネルギーを回収して発電する発電機5を直結すると共に、前記発電機5で発電した電力を周波数変換装置11aを介して前記推進加勢用電動機10に供給し、さらに前記発電機5で発電した電力は船内電源系統と独立しているので、発電機5で発電した電力を周波数変換機で主機の所望する周波数に即時変換して推進加勢でき、また多段の減速機を必要とせず、機器設置スペースの削減、機器配置の自由度向上、及び貨物等の積載量の増加と共にメンテナンスコストの低減が可能となる。」ものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−255636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、船舶内の電力負荷で消費する電力は、船舶に搭載された発電用のディーゼル発電装置等により供給されている。
一方、主機の排気エネルギーの一部を電気エネルギーとして回収し、この回収した電気エネルギーを船内の電力負荷に使用することで、省エネルギー性能を向上させる発電システムが望まれている。
このような発電システムとしては、ディーゼル発電装置等に代えて、主機のターボチャージャー(Turbo Charger)により駆動されるターボチャージャー発電機(Turbo Charger Generator)を用いることで省エネルギー効果を向上することが考えられる。
【0005】
しかしながら、ターボチャージャー発電機の発電量は主機の負荷状況に影響される。また、過剰な発電により主機に与える負荷が大きくなる場合もある。また、実際の運航においては、想定以上の電力負荷の発生や、荒天時等により主機の推進負荷が大きく発電のための余力がない状況も生じる。
このため、ターボチャージャー発電機により賄う電力負荷が適切でないと、船内停電の発生や、省エネルギー効果の低下、主機にダメージを与えるといった課題が生じる。
この課題はターボチャージャー発電機単独で船内の電力を賄う場合には特に顕著である。
【0006】
このようなことから、ターボチャージャー発電機とディーゼル発電装置等とで電力負荷を適切に分担する制御(負荷分担制御)ができる船舶発電システムが望まれている。
【0007】
上記特許文献1に記載の技術は、主機のターボチャージャーにより駆動される発電機ではあるが、その電力で推進加勢用の電動機を駆動するものであり、船内の電力を賄うことができない。また、負荷分担制御については何ら開示されていない。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、船舶の運航状況や船内電力負荷等に応じて適切な負荷分担制御を行うことが可能となる船舶発電システムの制御方法、船舶発電システムの制御プログラム、および船舶発電システムの制御装置を得るものである。
また、船内停電の可能性を低減でき、主機に与えるダメージを抑制でき、省エネルギー効果の低減を抑制することができる船舶発電システムの制御方法、船舶発電システムの制御プログラム、および船舶発電システムの制御装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る船舶発電システムの制御方法は、船舶の推進用プロペラを駆動する主機と、前記主機の排気により作動されるターボチャージャーと、前記ターボチャージャーにより駆動され、船内母線に電力を供給する第1発電機と、発電用エンジンにより駆動され、前記船内母線に電力を供給する1つまたは複数の第2発電機とを備えた船舶発電システムの制御方法において、少なくとも前記第1発電機が運転状態の際に、前記主機の運転状況を示すパラメータを取得するパラメータ取得ステップと、前記第2発電機の少なくとも1つが停止状態であって、前記パラメータが所定の条件を満たすとき、停止状態の前記第2発電機の少なくとも1つを運転させる駆動ステップとを有するものである。
【0010】
本発明に係る船舶発電システムの制御方法においては、前記パラメータは、前記主機のロードインデックス、前記主機の掃気圧、および、前記主機の排ガス温度の少なくとも1つである。
【0011】
本発明に係る船舶発電システムの制御方法においては、前記所定の条件は、前記主機のロードインデックスが所定値より高いとき、前記主機の掃気圧が所定値より低いとき、および、前記主機の排ガス温度が所定値より高いとき、の少なくとも1つを満たす場合である。
【0012】
本発明に係る船舶発電システムの制御方法は、前記駆動ステップの前に、前記主機または前記ターボチャージャーの回転数を取得する回転数取得ステップと、前記主機または前記ターボチャージャーの回転数が所定回転数を超えたとき、前記第2発電機の少なくとも1つを停止状態にさせる停止ステップとを有するものである。
【0013】
本発明に係る船舶発電システムの制御方法においては、前記停止ステップは、全ての前記第2発電機を停止状態にさせるものである。
【0014】
本発明に係る船舶発電システムの制御プログラムは、上記の船舶発電システムの制御方法を、コンピュータに実行させるものである。
【0015】
本発明に係る船舶発電システムの制御装置は、船舶の推進用プロペラを駆動する主機と、前記主機の排気により作動されるターボチャージャーと、前記ターボチャージャーにより駆動され、船内母線に電力を供給する第1発電機と、発電用エンジンにより駆動され、前記船内母線に電力を供給する1つまたは複数の第2発電機とを備えた船舶発電システムを制御する、船舶発電システムの制御装置において、少なくとも前記第1発電機が運転状態の際に、前記主機の運転状況を示すパラメータを取得し、前記第2発電機の少なくとも1つが停止状態であって、前記パラメータが所定の条件を満たすとき、停止状態の前記第2発電機の少なくとも1つを運転させるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、船舶の運航状況や船内電力負荷等に応じて適切な負荷分担制御を行うことが可能となる。
また、船内停電の可能性を低減でき、主機に与えるダメージを抑制でき、省エネルギー効果の低減を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1に係る船舶発電システムの構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る主機負荷・主機回転数・T/C回転数と発電電力との関係の一例を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る船舶発電システムの構成を示す図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る船舶発電システムは、主機1と、ターボチャージャー3(Turbo Charger:以下「T/C」ともいう。)と、ターボチャージャー発電機4(Turbo Charger Generator:以下「TC/G」ともいう。)と、周波数変換装置10と、ディーゼル発電装置20と、発電機盤30とを備えている。
【0019】
主機1は、例えば、中型または大型ディーゼルエンジンにより構成され、船舶の推進用プロペラ2を駆動する。
ターボチャージャー3は、主機1からの排気によって回転するタービンと、このタービンによって駆動されて主機1に給気を供給するコンプレッサとを備えている。
ターボチャージャー発電機4は、ターボチャージャー3のタービンの回転軸に直結されて回転駆動される。ターボチャージャー発電機4は、発電した電力を周波数変換装置10を介して、後述する船内母線40に供給する。
なお、「ターボチャージャー発電機4」は、本発明における「第1発電機」に相当する。
【0020】
周波数変換装置10は、ターボチャージャー発電機4により発電された電力を直流に変換するコンバータ11と、コンバータ11で変換された直流を所望の周波数(例えば60Hz)の交流に変換するインバータ12とを備えている。インバータ12は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子を有し、このスイッチング素子が駆動制御されることにより、出力する電力が制御される。
【0021】
ディーゼル発電装置20は、発電用に設けられたディーゼルエンジン21(以下「D/E」ともいう。)と、ディーゼルエンジン21により駆動され、船内母線40に電力を供給するディーゼル発電機22(以下「DG」ともいう。)とを備えている。
なお、本実施の形態では、ディーゼル発電装置20が2台の場合を説明し、それぞれの構成にはサフィックス符号(a、b)を付して区別する。
なお、本実施の形態においては、ディーゼル発電装置20が2台の場合を説明するが、本発明はこれに限るものではなく、1台または3台以上であっても良い。
なお、「ディーゼルエンジン21」は、本発明における「発電用エンジン」に相当する。
なお、「ディーゼル発電機22」は、本発明における「第2発電機」に相当する。
【0022】
発電機盤30には、船舶電力システムを制御する制御装置31と、船内の電力負荷に電力を供給する船内母線40が配置される。
制御装置31は、主機1の運転状況を示すパラメータを取得して、ディーゼル発電装置20の運転を制御する。詳細は後述する。
船内母線40には、開閉器41を介して周波数変換装置10の出力が接続され、ターボチャージャー発電機4の電力が供給される。
また、船内母線40には、開閉器42を介してディーゼル発電装置20の出力が接続され、ディーゼル発電機22の電力が供給される。
【0023】
制御装置31は、この機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアで実現することもできるし、マイコンやCPUなどの演算装置上で実行されるソフトウェアとして実現することもできる。
ソフトウェアとして実現する場合は、ROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等にこの機能を実現するプログラムを格納しておき、CPUやマイコンなどの演算装置がそのプログラムを読み込んで、プログラムの指示に従って当該機能に相当する処理を実行することにより、構成することができる。また、ここでは1つの制御装置31により構成しているが、例えばこの機能を実現するプログラムの処理を、複数の構成部により分けて行うようにしても良い。
【0024】
次に、本実施の形態におけるTC/Gの発電量とDGによる負荷分担の考え方について説明する。
【0025】
図2は実施の形態1に係る主機負荷・主機回転数・T/C回転数と発電電力との関係の一例を示す図である。
図2において、TC/G定格電力100は、TC/G単体での出力電力の定格値を示している。
供給可能電力101は、主機1の通常の運転状態において想定する、定常的に供給可能なTC/Gの出力電力(計画値)を示している。
船内電力負荷必要電力範囲102は、船内の電力負荷が必要とする電力値の範囲(計画値)を示している。
TC/G・DG併用時定格電力103は、TC/Gと1台のDGを併用時での出力電力の定格値を示している。
また、図2の縦軸は電力(kW)を示し、横軸は主機負荷(M/E Load(%))、主機回転数(M/E Speed(rpm))、T/C回転数(T/C speed(rpm))を示している。
なお、図2における具体的な値は一例を示すものであり、本発明はこれに限るものではない。
【0026】
上述したようにTC/Gは主機1のT/Cに直結されているため、TC/Gの出力は、T/Cの回転数つまり主機1の負荷状況によって決定される。
図2において、例えば船内の電力負荷の必要値が400(kW)の場合、主機負荷が75%(T/C回転数が8000rpm)以上で、供給可能電力101が400(kW)を超える。すなわち、船内の電力負荷の必要値を、TC/Gの単独運転により賄うことが可能となる。
一方、TC/Gは主機負荷が60%(T/C回転数が7260rpm)以上で使用可能となるが、主機負荷が60〜75%の領域では、船内の電力負荷の必要値を出力できない。
【0027】
このようなことから、本実施の形態における制御装置31は、主機回転数(主機負荷)またはT/C回転数を取得し、この回転数が所定回転数未満(例えば主機負荷が75%未満)の場合、ディーゼル発電装置20の少なくとも1台を運転させ、TC/GとDGとにより、船内の電力負荷の必要量を賄うようにする。
また、主機回転数(主機負荷)またはT/C回転数が所定回転数を超えた場合(例えば主機負荷が75%以上)、ディーゼル発電装置20の運転を全て停止状態とし、TC/Gのみの単独運転を行う。
【0028】
なお、所定回転数未満の場合に運転させるディーゼル発電装置20の台数は、船内の電力負荷の必要量に応じて適宜設定することができる。また、複数台のディーゼル発電装置20を運転させる場合における出力割合等は適宜設定することができる。
なお、ここでは、所定回転数以上の場合に全てのディーゼル発電装置20の運転を停止させたが、本発明はこれに限るものではなく、少なくとも1台を停止状態とするようにしても良い。
【0029】
このように、TC/Gの単独運転を行うことで、主機1の排気エネルギーの一部を電気エネルギーとして回収してこの回収した電気エネルギーにより船内の電力を賄うことが可能となる。また、TC/Gの発電量に応じてDGの運転を停止または運転させることで、船内電力負荷を分担することが可能となり、DGを駆動するディーゼルエンジン21の運転時間を低減することができ、エネルギー消費量を低減することができる。また、運転時間の低減によりメンテナンスコストを低減することができる。
【0030】
次に、実際の運航状況等において生じるTC/G発電の課題と、本実施の形態における補償動作について説明する。
【0031】
上記図2に示したように、計画上におけるTC/Gの供給可能電力101と船内電力負荷必要電力範囲102とを用いて負荷分担制御を行うことは可能である。
一方、実際の運行状況においては、想定以上の船内電力負荷の発生や、荒天時などにより主機1の推進負荷が大きくなりTC/G駆動のための余力が無い状況も生じる。
【0032】
想定以上の船内電力負荷を賄うため、例えばインバータ12の駆動制御によりTC/Gの出力電力を上昇させることは可能であるが、出力電力の上昇によりTC/Gに直結されるT/Cの回転に必要なトルクも増加することとなる。
このような駆動トルクの増加により、T/C回転数が低下する。そして、適正なT/C回転数が確保されないことで、主機1の要求する掃気圧が不足した状態で主機1を運転することとなり、主機1の排ガス温度の上昇、主機1の推進出力の低下やこれを補うための燃料増加など、主機1にダメージを与え、また省エネルギー効果が低減し、主機1の健全な運転を阻害することとなる。
【0033】
また、主機回転数に応じてTC/Gの供給可能電力101を想定することは可能であるが、平時と荒天時とでは同じ主機回転数であっても主機1に生じる負荷は異なる。
このように運航状況により、現在の回転数において取り得る主機負荷の最大値に対する、現在の主機負荷の割合であるロードインデックス(Load Index)が変化することとなる。
荒天時などロードインデックスが高い場合には、TC/Gの発電によりさらに負荷がかかり、主機1の掃気圧の低下や排ガス温度の上昇など、主機1にダメージを与え、また省エネルギー効果が低減し、主機1の健全な運転を阻害することとなる。また、出力電力の不足により船内停電の可能性が高まることとなる。
【0034】
このような実際の運航状況等を考慮して主機1の健全な運転を補償する、本実施の形態における補償動作について、図3により説明する。
【0035】
図3は実施の形態1に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
以下、図3の各ステップに基づき説明する。
【0036】
(S101)
制御装置31は、TC/Gが運転状態であるか否かを判断する。
主機1の回転数が低い場合や、インバータ12の駆動を停止して電力を出力しない場合など、TC/Gによる発電が停止状態である場合には、当該ステップS101を繰り返す。
【0037】
(S102)
一方、主機1の回転数が発電可能領域を超えてTC/Gが運転状態である場合、主機1の運転状況を示すパラメータを取得する。
このパラメータとしては、主機1のロードインデックス、主機1の掃気圧、および、主機1の排ガス温度の少なくとも1つを用いることができる。
ここでは、これら3つを用いる場合を説明する。
なお、主機1の運転状況を示すパラメータは、これに限定されるものではない。例えばTC/Gの駆動により影響される任意のパラメータを用いることができる。
【0038】
主機1のロードインデックスは、現在の回転数において取り得る主機負荷の最大値に対する、現在の主機負荷の割合であり、主機1から出力されるものである。
主機1の掃気圧は、主機1に設けられたセンサ等により検出され、主機1から出力されるものである。
主機1の排ガス温度は、主機1に設けられたセンサ等により検出され、主機1から出力されるものである。
【0039】
(S103)
次に、制御装置31は、ディーゼル発電機22の少なくとも1つが停止状態であるか否かを判断する。すなわち、ディーゼル発電装置20a、20bの一方または両方が停止状態であるか否かを判断する。
全てのディーゼル発電機22が運転状態である場合、ディーゼル発電装置20の追加運転が不能であるとして、ステップS101に戻り上記動作を繰り返す。
【0040】
(S104)
一方、ディーゼル発電装置20a、20bの一方または両方が停止状態である場合、制御装置31は、主機1の運転状況を示すパラメータが所定の条件を満たすか否かを判断する。ここでは、主機1のロードインデックスが所定値より高いか否か、主機1の掃気圧が所定値より低いか否か、および、主機1の排ガス温度が所定値より高いか否かを判断する。
なお、各所定値は、主機1の仕様やシミュレーション、実験データ等により適宜設定する。
なお、各所定値は、例えば制御装置31内の記憶装置等に予め記憶させるようにしても良いし、制御装置31に情報を入力する入力手段(操作スイッチ等)により入力するようにしても良い。
【0041】
これら3つの何れも満たさない場合には、現在の主機1の運転が健全であると判断し、ステップS101に戻り上記動作を繰り返す。
一方、これらの3つのうち少なくとも1つのパラメータが条件を満たす場合、現在の主機1の運転が健全でないと判断し、ステップS105に進む。
【0042】
なお、ここでは、ロードインデックス、掃気圧、排ガス温度の何れか1つの条件を満たすとき、主機1の運転が健全でないと判断したが、本発明はこれに限るものではない。
例えば、これら3つのパラメータのうち、任意の2つまたは全ての条件が満たさないとき、主機1の運転が健全でないと判断するようにしても良い。
また、上記3つのパラメータのうち、任意の1つまたは2つのみについて、条件を満たすか否かを判断するようにしても良い。
【0043】
(S105)
次に、制御装置31は、停止状態のディーゼル発電機22のうち、少なくとも1つを運転させる。
ディーゼル発電装置20a、20bが共に停止状態で、TC/G単独運転状態においては、1台のディーゼル発電装置20を運転させる。または、要求される船内電力負荷に応じて、2台のディーゼル発電装置20を運転させる。
一方、ディーゼル発電装置20a、20bの何れか一方のみが運転状態で、TC/GとDGとが併用運転時においては、停止中のディーゼル発電装置20を運転させる。
以降、上記ステップS101に戻り上記動作を繰り返す。または、定期的に当該動作を実行する。
【0044】
以上のように本実施の形態においては、少なくともターボチャージャー発電機4が運転状態の際に、主機1の運転状況を示すパラメータを取得し、ディーゼル発電機22の少なくとも1つが停止状態であって、パラメータが所定の条件を満たすとき、停止状態のディーゼル発電機22の少なくとも1つを運転させる。
このため、船舶の運航状況や船内電力負荷等に応じて適切な負荷分担制御を行うことが可能となる。よって、主機1の健全な運転を補償することができる。
したがって、船内停電の可能性を低減でき、主機1に与えるダメージを抑制でき、省エネルギー効果の低減を抑制することができる。
【0045】
また、船舶の運航状況や船内電力負荷等に応じて、主機1の健全な運転を補償することができるので、ターボチャージャー発電機4のみを単独で運転させることが可能となる。
【0046】
また、本実施の形態においては、主機1の運転状況を示すパラメータとして、主機1のロードインデックス、主機1の掃気圧、および、主機1の排ガス温度の少なくとも1つを取得する。
また、主機1のロードインデックスが所定値より高いとき、主機1の掃気圧が所定値より低いとき、および、主機1の排ガス温度が所定値より高いとき、の少なくとも1つを満たす場合、上記所定の条件を満たすとして、停止状態のディーゼル発電機22を運転させる。
このため、主機1の要求する掃気圧が不足した状態で主機1が運転されることを防止することができる。また、主機1の排ガス温度の上昇を抑制できる。また、主機1の推進出力の低下やこれを補うための燃料増加を抑制することができる。よって、主機1の健全な運転を補償することができる。
したがって、主機1に与えるダメージを抑制でき、省エネルギー効果の低減を抑制することができる。
【0047】
また、本実施の形態においては、主機1またはターボチャージャー3の回転数を取得し、主機1またはターボチャージャー3の回転数が所定回転数を超えたとき、ディーゼル発電機22の少なくとも1つを停止状態にさせる。
このため、ディーゼル発電機22を駆動するディーゼルエンジン21の運転時間を低減することができ、エネルギー消費量を低減することができる。また、運転時間の低減によりメンテナンスコストを低減することができる。
【0048】
また、本実施の形態においては、主機1またはターボチャージャー3の回転数が所定回転数を超えたとき、全てのディーゼル発電機22を停止状態にさせる。
このため、主機1の排気エネルギーの一部を電気エネルギーとして回収して、この回収した電気エネルギーにより船内の電力を全て賄うことが可能となる。
【0049】
なお、本実施の形態では、ディーゼル発電装置20の少なくとも1つが停止状態の場合に、パラメータ条件の判断をして、ディーゼル発電装置20を追加して運転させる場合を説明したが、これに限らずディーゼル発電装置20の出力電力を制御するようにしても良い。
例えば、上記ステップS103にてディーゼル発電装置20の一方または両方が運転中であると判断した場合であって、ステップS104の条件を満たした場合には、運転中のディーゼル発電装置20の出力電力を増加させるように制御しても良い。このような動作であっても、上記と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 主機、2 推進用プロペラ、3 ターボチャージャー、4 ターボチャージャー発電機、20 ディーゼル発電装置、21 ディーゼルエンジン、22 ディーゼル発電機、30 発電機盤、31 制御装置、40 船内母線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の推進用プロペラを駆動する主機と、
前記主機の排気により作動されるターボチャージャーと、
前記ターボチャージャーにより駆動され、船内母線に電力を供給する第1発電機と、
発電用エンジンにより駆動され、前記船内母線に電力を供給する1つまたは複数の第2発電機と
を備えた船舶発電システムの制御方法において、
少なくとも前記第1発電機が運転状態の際に、前記主機の運転状況を示すパラメータを取得するパラメータ取得ステップと、
前記第2発電機の少なくとも1つが停止状態であって、前記パラメータが所定の条件を満たすとき、停止状態の前記第2発電機の少なくとも1つを運転させる駆動ステップと
を有することを特徴とする船舶発電システムの制御方法。
【請求項2】
前記パラメータは、
前記主機のロードインデックス、前記主機の掃気圧、および、前記主機の排ガス温度の少なくとも1つである
ことを特徴とする請求項1記載の船舶発電システムの制御方法。
【請求項3】
前記所定の条件は、
前記主機のロードインデックスが所定値より高いとき、前記主機の掃気圧が所定値より低いとき、および、前記主機の排ガス温度が所定値より高いとき、の少なくとも1つを満たす場合である
ことを特徴とする請求項2記載の船舶発電システムの制御方法。
【請求項4】
前記駆動ステップの前に、
前記主機または前記ターボチャージャーの回転数を取得する回転数取得ステップと、
前記主機または前記ターボチャージャーの回転数が所定回転数を超えたとき、前記第2発電機の少なくとも1つを停止状態にさせる停止ステップと
を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の船舶発電システムの制御方法。
【請求項5】
前記停止ステップは、全ての前記第2発電機を停止状態にさせる
ことを特徴とする請求項4記載の船舶発電システムの制御方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の船舶発電システムの制御方法を、コンピュータに実行させることを特徴とする船舶発電システムの制御プログラム。
【請求項7】
船舶の推進用プロペラを駆動する主機と、
前記主機の排気により作動されるターボチャージャーと、
前記ターボチャージャーにより駆動され、船内母線に電力を供給する第1発電機と、
発電用エンジンにより駆動され、前記船内母線に電力を供給する1つまたは複数の第2発電機と
を備えた船舶発電システムを制御する、船舶発電システムの制御装置において、
少なくとも前記第1発電機が運転状態の際に、前記主機の運転状況を示すパラメータを取得し、
前記第2発電機の少なくとも1つが停止状態であって、前記パラメータが所定の条件を満たすとき、停止状態の前記第2発電機の少なくとも1つを運転させる
ことを特徴とする船舶発電システムの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−125012(P2012−125012A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272415(P2010−272415)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
【Fターム(参考)】