船艇搬送装置
【課題】 船艇搬送装置において、大小の船艇に対応可能であると共に移動及び保管のための省スペース化を図り、さらに船台コストの低減を図ること。
【解決手段】 船艇の前半部を持ち上げて載置可能な昇降機構2と車輪3の向きを自由に変更可能な自走機構4を有する前部台車5Aと、船艇の後半部を持ち上げて載置可能な昇降機構2と車輪の向きを自由に変更可能な自走機構4を有する後部台車5Bと、前部台車5Aと後部台車5Bとを連結すると共にこれら両者の間隔を調整可能な連結機構6とを備えている。
【解決手段】 船艇の前半部を持ち上げて載置可能な昇降機構2と車輪3の向きを自由に変更可能な自走機構4を有する前部台車5Aと、船艇の後半部を持ち上げて載置可能な昇降機構2と車輪の向きを自由に変更可能な自走機構4を有する後部台車5Bと、前部台車5Aと後部台車5Bとを連結すると共にこれら両者の間隔を調整可能な連結機構6とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、港やマリーナ等においてボートやヨット等の船艇を搬送するための船艇搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、湖川港湾等のマリーナ等では、ボートやヨット等の船艇を着水又は陸揚して陸上保管するために船艇の搬送が行われている。従来、この船艇の搬送を行うために、船艇(特に、小型艇や中型艇)を車輪付き船台に載せてからトレーラー等により船台ごと船艇を牽引して搬送することが行われている。しかしながら、この方法では、船台を引いたトレーラーの移動のために広いスペースが必要になり、多数の船艇が載置された敷地内の限られたスペースで船艇をスムーズに搬送すると共に効率的に載置することが困難であった。このため、船艇を保管できないデッドスペースが多く、このデッドスペースが保管スペース全体の約40%を占めている。また、船体重量に耐えられる重厚で高価な船台が必要であった。
【0003】
このため、例えば特許文献1には、大型艇搭載用船台の下方に入り込んだ際に同船台を持ち上げうるジャッキアップ装置を備え、四輪駆動で駆動及び操舵可能なハンドリング機能を具備した大型艇用搬送車が提案されている。この大型艇用搬送車では、四輪が独立に操舵可能となっているので、比較的狭いスペースでも大型艇を搬送することを可能にしている。
【0004】
また、特許文献2には、自走式走行台車と、水平面内にて伸縮可能なように台車の上部に設けられたテレスコピック式ボート支持フレームと、該支持フレームに設けられたボート昇降装置とを有するボート搬送装置が提案されている。このボート搬送装置では、走行台車からオーバーハングした位置にてボートの昇降が行えるため、走行台車の走行エリアから外れた位置でボートの昇降が可能となるものである。
【0005】
【特許文献1】実開平4−41496号公報
【特許文献2】特開平5−98833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、特許文献1に記載の技術では、大型艇用に作製した大型の搬送車であるため、小型艇の大きさに対応しておらず、小型艇の搬送の際には不必要に大きな搬送車のために、逆に大きな無駄な移動スペースが必要になってしまう不都合があった。したがって、大型の搬送車自体の大きさを考慮した広い移動スペースが必要になり、船艇の陸上保管においてスペース効率が悪くなってしまう。また、搬送使用時以外の際には、大型の搬送車をマリーナ内の空きスペース等に載置して保管しておくが、大型の搬送車を置く広いスペースを確保しておかなければならず、この点でもスペース効率が悪い。また、たとえ小型艇に対応した大きさで設計しても、逆にそれよりも大きな船艇を搬送することができず、搬送可能な船艇の大きさが搬送車のサイズに制限されてしまう不都合があった。
また、特許文献2に記載の技術では、船艇よりも幅広の走行台車及び支持フレームが必要であり、これらの大きさよりも小さい船艇しか搬送ができず、搬送可能な船艇の大きさが制限されてしまう不都合があった。また、この技術では、小型艇から大型艇まで対応させようと走行台車及び支持フレームを大型化すれば、特許文献1と同様に、やはり広い移動スペースが必要になり、特に小型艇の陸上保管においては、マリーナ内でのスペース効率が悪くなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、大小の船艇に対応可能であると共に移動及び保管のための省スペース化を図り、さらに船台コストの低減を図ることができる船艇搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の船艇搬送装置は、船艇の前半部を持ち上げて載置可能な昇降機構と車輪の向きを自由に変更可能な自走機構とを有する前部台車と、前記船艇の後半部を持ち上げて載置可能な昇降機構と車輪の向きを自由に変更可能な自走機構とを有する後部台車と、前記前部台車と前記後部台車とを連結すると共にこれら両者の間隔を調整可能な連結機構とを備えていることを特徴とする。
【0009】
この船艇搬送装置では、前部台車と後部台車とを連結すると共にこれら両者の間隔を調整可能な連結機構を備えているので、船艇の大きさに応じて前部台車と後部台車との間隔を変更して船艇を搬送することができる。また、前部台車及び後部台車が、各車輪の向きを変えて方向変換自在な自走式であるので、搬送作業時の移動スペースが狭くても、少なくとも船艇の大きさの搬送路があれば、充分に移送することが可能になる。さらに、船艇搬送装置が入り込めるスペースがあれば、容易に船艇下部に移動して船底を支持して船艇を載せることができる。また、搬送時以外の保管の際には、連結機構により、前部台車と後部台車との間隔を最も短くすることにより、船艇搬送装置全体の大きさを最小限に変更でき、小さなスペースで保管することができる。
【0010】
また、本発明の船艇搬送装置は、前記連結機構が、前記前部台車及び前記後部台車の一方に対して他方を傾斜可能に支持していることを特徴とする。すなわち、この船艇搬送装置では、連結機構が、前部台車及び後部台車の一方に対して他方を傾斜可能に支持しているので、傾斜変化のある搬送路においても前部台車と後部台車とがそれぞれ個別に搬送路に対応した傾きを保つことができる。したがって、それぞれの車輪に等分布加重がかかるので、前部台車又は後部台車の車輪が地面から浮いて離れたり、荷重が不均衡に加わることで不安定になることを防ぎ、海等からスロープを介して船艇を引き上げる際でも、スムーズに安定した搬送を行うことが可能になる。
【0011】
また、本発明の船艇搬送装置は、前記自走機構が、互いに同一の回転軸を有する1対の前記車輪を複数対有すると共に、各対の前記車輪が水平に対して前記回転軸を傾斜可能に支持されていることを特徴とする。すなわち、この船艇搬送装置では、各対の車輪が水平に対して回転軸を傾斜可能に支持されているので、凹凸の激しい搬送路であっても対である両車輪がいずれも接地状態を維持でき、均等に荷重がかかることから、一方の車輪に過度な負担がかかるのを防ぐことができる。したがって、車輪に等分布荷重がかかることにより単位面積当たりの路面荷重が小さくなって、コンクリート路面だけでなく簡易舗装のアスファルト等の路面でも使用することができる。
【0012】
また、本発明の船艇搬送装置は、前記昇降機構が、前記船艇の船底の両側面を支持する一対の側面支持板を有し互いの側面支持板の角度を変更可能な側面支持部と、前記船底の中央部を支持し前記側面支持板よりも広い座面面積の中央支持板とを備えていることを特徴とする。すなわち、この船艇搬送装置では、角度可変の側面支持板を有する側面支持部により船底の両側面を支持するので、船艇の形状や大きさ(横幅)に応じて船艇の両側面を支持可能であると共に、座面面積の広い中央支持板で船底の中央部を支持するので、接触面積を増大させて船底の損傷を低減することができる。
【0013】
また、本発明の船艇搬送装置は、前記前部台車の前方に配置可能で前記船艇の前半部を載置して支持可能な前部船台と、前記後部台車の後方に配置可能で前記船艇の後半部を載置して支持可能な後部船台とを備え、前記前部船台及び前記後部船台が、前記昇降機構により前記前部台車及び前記後部台車の高さを最も低くした位置より高い位置で前記船艇を支持可能であることを特徴とする。すなわち、この船艇搬送装置では、最低高さの前部台車及び後部台車の高さよりも高い位置で船艇を支持する前部船台及び後部船台を備えているので、前部台車及び後部台車により船艇を所定位置に搬送した際に、前部台車及び後部台車の前後に前部船台及び後部船台を配すれば、前部台車及び後部台車を最低位置に下げることで、容易に前部船台及び後部船台で船艇を支持させることができる。このように前部船台及び後部船台を保管用の簡易式船台とし、前部台車及び後部台車を搬送用の自走式船台として活用することができる。したがって、従来のような重厚で高価な船台を多数用意する必要がなくなり、船台コストを低減することができる。
【0014】
また、本発明の船艇搬送装置は、前記前部船台及び前記後部船台が、底部に設けられた複数の船台車輪と、前記船艇が載置された際に前記船艇の荷重によって前記底部内に前記船台車輪が押し込まれる車輪出し入れ機構とを備えていることを特徴とする。すなわち、この船艇搬送装置では、船艇が載置された際に船艇の荷重によって底部内に船台車輪が押し込まれる車輪出し入れ機構を備えているので、船艇を載置していない状態では、船台車輪が底部から出て、前部船台及び後部船台を作業者の人力で容易に移動することができる。そして、船艇を載置した状態では、船台車輪が底部内に引っ込むことで接地した底部によって船艇の荷重を支持することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る船艇搬送装置によれば、昇降機構及び自走機構を有する前部台車と後部台車とを連結すると共にこれら両者の間隔を調整可能な連結機構を備えているので、船艇の大きさに対応可能であると共に狭いスペースでも容易に船舶上下架、搬送及び保管を行うことができる。したがって、種々の船艇の搬送等が可能であると共に作業効率の向上を図ることができ、さらにマリーナ等での保管スペースを効率的に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る船艇搬送装置の第1実施形態を、図1から図10を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態の船艇搬送装置1は、図1から図5に示すように、例えば港湾のマリーナにおいてボート等の船艇を水際のスロープと港やマリーナ内の敷地における所定位置との間で搬送する装置であって、船艇の前半部(船首側半分)を持ち上げて載置可能な昇降機構2と車輪3の向きを自由に変更可能な自走機構4とを有する前部台車5Aと、船艇の後半部(船尾側半分)を持ち上げて載置可能な昇降機構2と車輪3の向きを自由に変更可能な自走機構4とを有する後部台車5Bと、前部台車5Aと後部台車5Bとを連結すると共にこれら両者の間隔を調整可能な連結機構6とを備えている。
【0018】
上記前部台車5A及び上記後部台車5Bは、自走機構4及び連結機構6の油圧機構等が外板8で水密状態に覆われた防水構造となっており、複数の車輪3を有する台車本体9と、台車本体9上部の中央凹部9aに収納可能に上下動される昇降箱部10とで構成されている。
上記昇降機構2は、上下動可能な上記昇降箱部10と、図5に示すように、台車本体9内に設けられ一対の交差した昇降用支持板部11を介して昇降箱部10を上下動させる昇降用油圧シリンダ12とを備えている。
【0019】
すなわち、昇降用支持板部11は、先端が昇降箱部10の側面に回動可能に支持され、基端が台車本体9の中央凹部9a側面に回動可能に支持されている。また、昇降用支持板部11の基端は、台車本体9内に懸架状態で固定された支持軸部13の先端に固定されている。さらに、昇降用支持板部11の基端には、その回転軸線からずれた位置に昇降用油圧シリンダ12が連結され、該昇降用油圧シリンダ12の伸縮動作によって、支持軸部13が回転するように設定されている。また、昇降用支持板部11の先端は、昇降箱部10の側面に取り付けた側面支持部材10bの長穴支持部10aに長穴方向(昇降箱部10の延在方向)に移動可能に支持されている。すなわち、昇降用支持板部11の先端には、長穴支持部10aに嵌るピンが設けられており、ピンが長穴支持部10a内をスライドするようになっている。また、側面支持部材10bは、昇降箱部10を前後に揺動可能に中央部下部で軸支している。
【0020】
したがって、昇降用油圧シリンダ12を伸縮動作させて支持軸部13を回転させ、互いの先端が近接する方向に一対の昇降用支持板部11を回動させることで、台車本体9の中央凹部9aから昇降箱部10を持ち上げることができる。例えば、本実施形態では、昇降機構2により昇降箱部10を台車本体9の上面から最大700mmリフト可能に設定されている。
また、昇降箱部10は、最も低い位置に下げられると中央凹部9a内に収納され、上面が台車本体9の上面と面一状態となるように設定されている。
さらに、昇降箱部10は、これを支持する昇降用支持板部11の先端が、長穴支持部10aに移動可能に支持されているので、船艇の傾斜に沿って昇降箱部10を前後に傾斜可能になっている。
【0021】
上記昇降箱部10は、船艇の船底の両側面を支持する一対の側面支持板14を有し互いの側面支持板14の角度を変更可能な側面支持部15と、船底の中央部を支持し側面支持板14よりも広い座面面積の中央支持板16とが設けられている。
なお、昇降箱部10を中央凹部9a内に収納した状態で、側面支持板14を水平状態まで下げることにより、台車本体9上部の角に形成した切り欠き部9bに側面支持部15が収納され、側面支持板14の支持面が台車本体9の上面と面一状態となるように設定されている。
【0022】
上記中央支持板16は、昇降箱部10の上板を構成している。また、上記側面支持部15は、昇降箱部10の外端面に設けられている。この側面支持部15は、先端に側面支持板14が固定され基端が昇降箱部10の前端面又は後端面に回動可能に支持された一対の支持腕部17を有している。これらの支持腕部17は、図2及び図4に示すように、基端が1対の側面支持用シャフト18を介して昇降箱部10内の一対の側面支持用油圧シリンダ19に連結されている。
【0023】
これらの側面支持用油圧シリンダ19は、伸縮動作させると、一対の側面支持用シャフト18が互いに逆方向に回転するように側面支持用シャフト18の回転軸線からずれて連結されている。すなわち、一対の側面支持用油圧シリンダ19を伸縮させることにより、一対の側面支持用シャフト18が回転して一対の支持腕部17が回動し、一対の支持腕部17の開口角度及び側面支持板14の角度が変更可能とされている。
【0024】
上記連結機構6は、図2に示すように、前部台車5Aと後部台車5Bとを連結し互いに平行な棒状の一対の連結支持材20と、前部台車5A内及び後部台車5B内に設けられ連結支持材20の端部に設けられた先端ギヤ部21に噛み合った歯車軸23を有する油圧駆動式の伸縮用モータ22とを備えている。上記先端ギヤ部21は、連結支持材20の先端部内部に設けられ、該先端部に形成された長穴部20aを介して挿入された歯車軸23と噛み合っている。すなわち、先端ギヤ部21は、ラック&ピニオンのラックを構成し、歯車軸23がピニオンを構成している。
【0025】
したがって、伸縮用モータ22の歯車軸23を回転させることで、連結支持材20が前部台車5A及び後部台車5Bに対して進退して両台車の間隔が調整可能となっている。例えば、本実施形態では、連結機構6により最も前部台車5Aと後部台車5Bとの間隔を狭めると装置全長が2300mmとなり、最も間隔を広めると装置全長が3500mmとなるように設定されている。
また、連結機構6は、ラック&ピニオン式で連結支持材20を連結して台車本体9に対して傾斜可能とすることで、前部台車5A及び後部台車5Bの一方に対して他方を傾斜可能に支持している。
【0026】
上記自走機構4は、互いに同一の回転軸を有したソリッドタイヤである1対の車輪3を左右に2対、すなわち前部台車5A及び後部台車5B合わせて全部で8対(16個)有している。各対の車輪3は、中心部に油圧駆動モータであるHST(Hydro Static Transmission)モータ24が内蔵されて対毎に正逆自在に回転駆動されるようになっている。また、各対の車輪3のHSTモータ24は、図5に示すように、対の車輪3間の中央で垂直支持軸25に支持されている。
【0027】
さらに、台車本体9の左右にそれぞれ配置された一対の垂直支持軸25は、台車本体9内に設けられたシフトシリンダ26の両端に偏心連結部材27を介してそれぞれ回転可能に連結されている。この偏心連結部材27は、垂直支持軸25の回転軸からずれた位置で垂直支持軸25に連結されている。すなわち、シフトシリンダ26を伸縮させることにより、偏心連結部材27を介して2つの垂直支持軸25が同時に同一方向に回転させられ、各対の車輪3がHSTモータ24と共に回動して車輪方向が変更可能になっている。なお、シフトシリンダ26は、左右で互いに連動して制御されており、台車本体9毎で全車輪3は、同一方向に向くように設定されている。このように、16個の車輪3は、すべて操舵輪となっている。
【0028】
また、伸縮用モータ22、HSTモータ24、昇降用油圧シリンダ12及びシフトシリンダ26は、すべて図示しないリモートコントローラに有線又は無線で接続されて外部から制御可能になっている。さらに、伸縮用モータ22、HSTモータ24、昇降用油圧シリンダ12及びシフトシリンダ26への油圧供給を行う電動機30が、図5に示すように、台車本体9に内蔵されている。この電動機30には、減速機31及び油圧ポンプ32が接続され、電動機30及び減速機31で駆動された油圧ポンプ32から伸縮用モータ22、HSTモータ24、昇降用油圧シリンダ12及びシフトシリンダ26に油圧供給が行われる。そして、この電動機30への電力供給は、台車本体9の中央内部に設置されたバッテリー33によって行われる。
【0029】
また、本実施形態の船艇搬送装置1は、図6に示すように、前部台車5Aの前方に配置可能で船艇の前半部を載置して支持可能な前部船台7Aと、後部台車5Bの後方に配置可能で船艇の後半部を載置して支持可能な後部船台7Bとを備えている。
これら前部船台7A及び後部船台7Bは、昇降機構2により前部台車5A及び後部台車5Bの高さを最も低くした位置より高い位置で船艇を支持可能とされている。
【0030】
また、前部船台7A及び後部船台7Bは、コ字状の底部支持部34と、該底部支持部34上に立設された3本の垂直支持部材35と、これら垂直支持部材35上に固定されたV字状支持部材36とを備えている。
さらに、前部船台7A及び後部船台7Bは、図6及び図7に示すように、底部支持部34に設けられた複数のキャスター(船台車輪)38と、船艇が載置された際に船艇の荷重によって底部支持部34内にキャスター38が押し込まれる車輪出し入れ機構39とを備えている。
【0031】
この車輪出し入れ機構39は、図7に示すように、底部支持部34に下端が固定板41で固定された外筒部40と、外筒部40内に上下に付勢するバネ42を介在して内挿された内筒部43とで構成されている。そして、この内筒部43の下端にキャスター38が垂直軸に対して回転可能に取り付けられており、荷重によって内筒部43が外筒部40内を進退することで上下動するようになっている。なお、上記バネ42の付勢力は、載置する船艇の重量に応じて設定され、船艇が載置された状態でキャスター38が完全に底部支持部34内に収納されるようになっている。また、内筒部43の下部には段差部が形成され、外筒部40から所定長さ以上出ないようにストッパである固定板41に上記段差部が当接するようになっている。
【0032】
次に、本実施形態の船艇搬送装置1による船艇の搬送方法について、図8から図10を参照して説明する。
【0033】
搬送の例として、海に面したスロープからマリーナ内の所定位置まで、船艇を搬送する場合について以下に説明する。
まず、図8の(a)に示すように、予め船艇搬送装置1をリモートコントローラで操作して、海中まで延在したスロープSに自走機構4によって移動させ、水没状態とする。この状態で、船艇BをスロープSまで導くと共に船艇搬送装置1の上方に位置させる。このとき、連結機構6により前部台車5Aと後部台車5Bとの間隔を船艇Bの長さ(大きさ)に対応させて調整する。そして、前部台車5Aの上方に船艇Bの前半部を位置させると共に、後部台車5Bの上方に船艇Bの後半部を位置させる。
【0034】
この状態で、昇降機構2によって前部台車5A及び後部台車5Bの昇降箱部10を高くすると共に、支持腕部17の開口角度を狭める。これにより、船艇Bの両側面に側面支持板14を当接させて支持すると共に、船艇Bの中央部に中央支持板16を当接させて支持する。このとき、中央支持板16は、昇降箱部10と共に船艇Bの傾斜に併せて前後に傾斜し、板の全長にわたって船艇Bの中央部に接触し、支持する。次に、図8の(b)に示すように、船艇Bの両側面及び船底中央部を支持したまま、船艇搬送装置1の自走機構4により、スロープSを登り、マリーナの敷地へ船艇Bを揚げる。この後、前部台車5A及び後部台車5Bの両昇降箱部10の高さ及び傾きを調整して、船艇Bが水平状態になるようにする。なお、スロープSの上端で搬送路の傾斜が変化するが、連結機構6により前部台車5Aと後部台車5Bとが互いに傾斜可能となっているので、搬送路の傾斜状態が変化しても船艇Bの支持状態を良好に維持したまま搬送することができる。
【0035】
次に、マリーナ内の船艇Bを保管する敷地内まで船艇Bを載せたまま船艇搬送装置1を自走機構4により移動させる。このとき、船艇Bを載せた船艇搬送装置1は、各対の車輪3の方向が自在に変更できるため、船艇Bのほぼ一隻分の搬送スペースがあれば、スムーズに船艇Bを移送することができる。例えば、図9の(a)に示すように、船艇Bを保管する場所に隣接する位置まで、船艇Bを搬送し、この後、各対の車輪3の方向を90°変更して、船艇搬送装置1の長さ方向に直交する方向に設定する。さらに、図9の(b)に示すように、船艇搬送装置1を横方向に進めて船艇Bを保管する位置へと移動させる。
【0036】
次に、保管位置まで搬送された船艇Bの下に前部船台7A及び後部船台7Bをキャスター38によって運んで載置する。この際、前部台車5Aの前端から後部台車5Bの後端までの全長に対応して、前部台車5Aの前に前部船台7Aを設置すると共に、後部台車5Bの後に後部船台7Bを設置する。なお、船艇Bは、昇降機構2によって前部船台7A及び後部船台7Bよりも高く支持されているので、容易に前部船台7A及び後部船台7Bを船艇Bの下に運ぶことができる。
【0037】
この状態で、次に、昇降機構2により船艇Bを支持しながら船艇Bの船底が前部船台7A及び後部船台7Bに当接して支持されるまで、船艇Bをゆっくり下げる。船艇Bが前部船台7A及び後部船台7Bに支持されて船艇Bの荷重が加わると、図10の(a)のように、底部支持部34から露出していたキャスター38が、図10の(b)に示すように、車輪出し入れ機構39によって底部支持部34内に押し込まれ、底部支持部34が直接、地面に当接される。
【0038】
次に、船艇Bが前部船台7A及び後部船台7Bにしっかり支持されたことを確認した後、昇降機構2により昇降箱部10をさらに最低位置まで下げると共に支持腕部17の開口角度も最大まで広げて切り欠き部9bに側面支持板14を収納する。これにより、船艇搬送装置1による船艇Bの支持が完全に解除される。
【0039】
船艇Bの支持を解除した船艇搬送装置1は、図9の(c)に示すように、船艇Bの下方から移動され、再び別の船艇BをスロープSにおいて昇降作業するためにスロープSへ移動するか、作業がない場合には、所定の保管位置へ移動して載置される。さらに、船艇搬送装置1を保管する際は、連結機構6により前部台車5Aと後部台車5Bとの間隔を最短に設定することで、コンパクト化した状態で保管する。
なお、上記手順と逆に作業を行うことで、船艇Bを保管スペースからスロープSまで搬送して着水させることができる。
【0040】
このように本実施形態の船艇搬送装置1では、前部台車5Aと後部台車5Bとを連結すると共にこれら両者の間隔を調整可能な連結機構6を備えているので、船艇Bの大きさに応じて前部台車5Aと後部台車5Bとの間隔を変更して船艇Bを搬送することができる。また、前部台車5A及び後部台車5Bが、各対の車輪3の向きを変えて方向変換自在な自走式であるので、搬送作業時の移動スペースが狭くても、少なくとも船艇Bの大きさの搬送路があれば、充分に移送することが可能になる。したがって、種々の船艇Bの搬送等が可能であると共に作業効率の向上を図ることができ、さらにマリーナ等での保管スペースを効率的に活用することができる。この結果、実際に船艇Bを置けるスペースは、保管スペース全体の80%を超える。
【0041】
さらに、船艇搬送装置1が入り込めるスペースがあれば、容易に船艇Bの下部に移動して船底を支持して船艇Bを載せることができる。また、搬送時以外の保管の際には、連結機構6により、前部台車5Aと後部台車5Bとの間隔を最も短くすることにより、船艇搬送装置1全体をコンパクトにし、小さなスペースで保管することができる。
また、船艇Bを載せたまま上下架が可能であり、これらの作業に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0042】
また、連結機構6は、前部台車5A及び後部台車5Bの一方に対して他方を傾斜可能に支持しているので、傾斜変化のある搬送路においても前部台車5Aと後部台車5Bとがそれぞれ個別に搬送路に対応した傾きを保つことができる。したがって、前部台車5A又は後部台車5Bの車輪3が地面から浮いて離れたり、荷重が不均衡に加わることで不安定になることを防ぎ、海等からスロープSを介して船艇Bを引き上げる際でも、スムーズに安定した搬送を行うことが可能になる。
【0043】
また、角度可変の側面支持板14を有する側面支持部15により船底の両側面を支持するので、船艇Bの形状や大きさ(横幅)に応じて船底の両側面を支持可能であると共に、座面面積の広い中央支持板16で船底の中央部を支持するので、接触面積を増大させて船底の損傷を低減することができる。
【0044】
さらに、前部船台7A及び後部船台7Bを保管用の簡易式船台とし、前部台車5A及び後部台車5Bを搬送用の自走式船台として活用するので、従来のような重厚で高価な船台を多数用意する必要がなくなり、船台コストを低減することができる。
そして、前部船台7A及び後部船台7Bは、船艇Bが載置された際に、船艇Bの荷重によって底部支持部34内にキャスター38が押し込まれる車輪出し入れ機構39を備えているので、船艇Bを載置していない状態では、キャスター38が底部支持部34から出て、作業者の人力で容易に移動することができる。そして、船艇Bを載置した状態では、キャスター38が底部支持部34内に引っ込むことで接地した底部支持部34によって船艇Bの荷重を支持することができる。
【0045】
次に、本発明に係る船艇搬送装置の第2実施形態について、図11から図14を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0046】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では隣接配置された二対の車輪3が独立して台車本体9に支持されているのに対し、第2実施形態の船艇搬送装置51では、図11から図14に示すように、自走機構64において、隣接配置された二対の車輪3が懸架支持部52で連結されていると共に、各対の車輪3が水平に対して回転軸を傾斜可能に支持されている点である。
【0047】
すなわち、第2実施形態では、台車本体9の両側部から水平に水平軸部53がそれぞれ突出していると共に、中央が水平軸部53に回動可能に支持された懸架支持部52が設けられている。これにより、懸架支持部52の両端部が上下に揺動可能に軸支される。この懸架支持部52の両端部には、それぞれ一対の車輪3が傾斜可能に支持されている。
対である両車輪3を支持するHSTモータ24の中央上部には、車輪3の回転軸に直交する軸を中心にHSTモータ24を回動可能に支持する縦軸部材54が操舵用リングギヤ55を介して連結されている。さらに、縦軸部材54の上部には、中心軸に直交した端部水平軸部56が設けられており、この端部水平軸部56が懸架支持部52の端部に懸架支持部52の延在方向に沿った軸線を中心に回動可能に軸支されている。
【0048】
したがって、懸架支持部52の両端部に支持された車輪3は、懸架支持部52の揺動によって互いに逆の上下動を行うと共に、対である2つの車輪3は、端部水平軸部56を中心に揺動可能となっており、回転軸を水平に対して傾斜可能となっている。
このように第2実施形態では、各対の車輪3が水平に対して回転軸を傾斜可能に支持されているので、凹凸の激しい搬送路であっても対である両車輪3がいずれも接地状態を維持でき、均等に荷重がかかることから、一方の車輪3に過度な負担がかかるのを防ぐことができる。したがって、車輪3に等分布荷重がかかることにより単位面積当たりの路面荷重が小さくなって、コンクリート路面だけでなく簡易舗装のアスファルト等の路面でも使用することができる。
【0049】
なお、一対の車輪3を駆動するHSTモータ24には、図示しないデファレンシャルギアが内蔵され、内側と外側の車輪3で速度差が生じた場合にそれを吸収しつつ同じトルクを与えるようになっている。また、自走機構64は、図示しない操舵油圧モータを各車輪3に備え、この操舵油圧モータにより操舵用リングギヤ55を介して所定方向に車輪3を向けることができるようになっている。
【0050】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る第1実施形態の船艇搬送装置において、昇降機構で最低高さに設定した状態を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態の船艇搬送装置において、側面支持板を傾斜状態とし、昇降機構で高く設定した昇降箱部及び台車本体の一部を破断した斜視図である。
【図3】第1実施形態の船艇搬送装置において、側面支持板を傾斜状態とし、昇降機構で高く設定した状態を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態の船艇搬送装置において、側面支持板を傾斜状態とし、昇降機構で高く設定した昇降箱部の一部を破断した斜視図である。
【図5】第1実施形態の船艇搬送装置において、昇降箱部を取り外し、台車本体の上部を開口させた状態を示す斜視図である。
【図6】第1実施形態の船艇搬送装置において、前部船台及び後部船台を示す斜視図である。
【図7】第1実施形態の船艇搬送装置において、前部船台及び後部船台のキャスター及び車輪出し入れ機構を示す要部の断面図である。
【図8】第1実施形態の船艇搬送装置において、スロープからの船艇の陸揚方法を作業順に示す説明図である。
【図9】第1実施形態の船艇搬送装置において、船艇を保管スペースに搬送する方法を作業順に示す説明図である。
【図10】第1実施形態の船艇搬送装置において、前部船台及び後部船台の荷重が加わる前後の状態を示す正面図である。
【図11】本発明に係る第2実施形態の船艇搬送装置において、昇降機構で最低高さに設定した状態を示す斜視図である。
【図12】第2実施形態の船艇搬送装置において、側面支持板を傾斜状態とし、昇降機構で高く設定した状態を示す斜視図である。
【図13】第2実施形態の船艇搬送装置において、車輪及び自走機構の要部を示す正面図である。
【図14】第2実施形態の船艇搬送装置において、車輪及び自走機構の要部を示す側面図である。
【符号の説明】
【0052】
1、51…船艇搬送装置、2…昇降機構、3…車輪、4、64…自走機構、5A…前部台車、5B…後部台車、6…連結機構、7A…前部船台、7B…後部船台、14…側面支持板、15…側面支持部、16…中央支持板、38…キャスター(船台車輪)、39…車輪出し入れ機構、B…船艇
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、港やマリーナ等においてボートやヨット等の船艇を搬送するための船艇搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、湖川港湾等のマリーナ等では、ボートやヨット等の船艇を着水又は陸揚して陸上保管するために船艇の搬送が行われている。従来、この船艇の搬送を行うために、船艇(特に、小型艇や中型艇)を車輪付き船台に載せてからトレーラー等により船台ごと船艇を牽引して搬送することが行われている。しかしながら、この方法では、船台を引いたトレーラーの移動のために広いスペースが必要になり、多数の船艇が載置された敷地内の限られたスペースで船艇をスムーズに搬送すると共に効率的に載置することが困難であった。このため、船艇を保管できないデッドスペースが多く、このデッドスペースが保管スペース全体の約40%を占めている。また、船体重量に耐えられる重厚で高価な船台が必要であった。
【0003】
このため、例えば特許文献1には、大型艇搭載用船台の下方に入り込んだ際に同船台を持ち上げうるジャッキアップ装置を備え、四輪駆動で駆動及び操舵可能なハンドリング機能を具備した大型艇用搬送車が提案されている。この大型艇用搬送車では、四輪が独立に操舵可能となっているので、比較的狭いスペースでも大型艇を搬送することを可能にしている。
【0004】
また、特許文献2には、自走式走行台車と、水平面内にて伸縮可能なように台車の上部に設けられたテレスコピック式ボート支持フレームと、該支持フレームに設けられたボート昇降装置とを有するボート搬送装置が提案されている。このボート搬送装置では、走行台車からオーバーハングした位置にてボートの昇降が行えるため、走行台車の走行エリアから外れた位置でボートの昇降が可能となるものである。
【0005】
【特許文献1】実開平4−41496号公報
【特許文献2】特開平5−98833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、特許文献1に記載の技術では、大型艇用に作製した大型の搬送車であるため、小型艇の大きさに対応しておらず、小型艇の搬送の際には不必要に大きな搬送車のために、逆に大きな無駄な移動スペースが必要になってしまう不都合があった。したがって、大型の搬送車自体の大きさを考慮した広い移動スペースが必要になり、船艇の陸上保管においてスペース効率が悪くなってしまう。また、搬送使用時以外の際には、大型の搬送車をマリーナ内の空きスペース等に載置して保管しておくが、大型の搬送車を置く広いスペースを確保しておかなければならず、この点でもスペース効率が悪い。また、たとえ小型艇に対応した大きさで設計しても、逆にそれよりも大きな船艇を搬送することができず、搬送可能な船艇の大きさが搬送車のサイズに制限されてしまう不都合があった。
また、特許文献2に記載の技術では、船艇よりも幅広の走行台車及び支持フレームが必要であり、これらの大きさよりも小さい船艇しか搬送ができず、搬送可能な船艇の大きさが制限されてしまう不都合があった。また、この技術では、小型艇から大型艇まで対応させようと走行台車及び支持フレームを大型化すれば、特許文献1と同様に、やはり広い移動スペースが必要になり、特に小型艇の陸上保管においては、マリーナ内でのスペース効率が悪くなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、大小の船艇に対応可能であると共に移動及び保管のための省スペース化を図り、さらに船台コストの低減を図ることができる船艇搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の船艇搬送装置は、船艇の前半部を持ち上げて載置可能な昇降機構と車輪の向きを自由に変更可能な自走機構とを有する前部台車と、前記船艇の後半部を持ち上げて載置可能な昇降機構と車輪の向きを自由に変更可能な自走機構とを有する後部台車と、前記前部台車と前記後部台車とを連結すると共にこれら両者の間隔を調整可能な連結機構とを備えていることを特徴とする。
【0009】
この船艇搬送装置では、前部台車と後部台車とを連結すると共にこれら両者の間隔を調整可能な連結機構を備えているので、船艇の大きさに応じて前部台車と後部台車との間隔を変更して船艇を搬送することができる。また、前部台車及び後部台車が、各車輪の向きを変えて方向変換自在な自走式であるので、搬送作業時の移動スペースが狭くても、少なくとも船艇の大きさの搬送路があれば、充分に移送することが可能になる。さらに、船艇搬送装置が入り込めるスペースがあれば、容易に船艇下部に移動して船底を支持して船艇を載せることができる。また、搬送時以外の保管の際には、連結機構により、前部台車と後部台車との間隔を最も短くすることにより、船艇搬送装置全体の大きさを最小限に変更でき、小さなスペースで保管することができる。
【0010】
また、本発明の船艇搬送装置は、前記連結機構が、前記前部台車及び前記後部台車の一方に対して他方を傾斜可能に支持していることを特徴とする。すなわち、この船艇搬送装置では、連結機構が、前部台車及び後部台車の一方に対して他方を傾斜可能に支持しているので、傾斜変化のある搬送路においても前部台車と後部台車とがそれぞれ個別に搬送路に対応した傾きを保つことができる。したがって、それぞれの車輪に等分布加重がかかるので、前部台車又は後部台車の車輪が地面から浮いて離れたり、荷重が不均衡に加わることで不安定になることを防ぎ、海等からスロープを介して船艇を引き上げる際でも、スムーズに安定した搬送を行うことが可能になる。
【0011】
また、本発明の船艇搬送装置は、前記自走機構が、互いに同一の回転軸を有する1対の前記車輪を複数対有すると共に、各対の前記車輪が水平に対して前記回転軸を傾斜可能に支持されていることを特徴とする。すなわち、この船艇搬送装置では、各対の車輪が水平に対して回転軸を傾斜可能に支持されているので、凹凸の激しい搬送路であっても対である両車輪がいずれも接地状態を維持でき、均等に荷重がかかることから、一方の車輪に過度な負担がかかるのを防ぐことができる。したがって、車輪に等分布荷重がかかることにより単位面積当たりの路面荷重が小さくなって、コンクリート路面だけでなく簡易舗装のアスファルト等の路面でも使用することができる。
【0012】
また、本発明の船艇搬送装置は、前記昇降機構が、前記船艇の船底の両側面を支持する一対の側面支持板を有し互いの側面支持板の角度を変更可能な側面支持部と、前記船底の中央部を支持し前記側面支持板よりも広い座面面積の中央支持板とを備えていることを特徴とする。すなわち、この船艇搬送装置では、角度可変の側面支持板を有する側面支持部により船底の両側面を支持するので、船艇の形状や大きさ(横幅)に応じて船艇の両側面を支持可能であると共に、座面面積の広い中央支持板で船底の中央部を支持するので、接触面積を増大させて船底の損傷を低減することができる。
【0013】
また、本発明の船艇搬送装置は、前記前部台車の前方に配置可能で前記船艇の前半部を載置して支持可能な前部船台と、前記後部台車の後方に配置可能で前記船艇の後半部を載置して支持可能な後部船台とを備え、前記前部船台及び前記後部船台が、前記昇降機構により前記前部台車及び前記後部台車の高さを最も低くした位置より高い位置で前記船艇を支持可能であることを特徴とする。すなわち、この船艇搬送装置では、最低高さの前部台車及び後部台車の高さよりも高い位置で船艇を支持する前部船台及び後部船台を備えているので、前部台車及び後部台車により船艇を所定位置に搬送した際に、前部台車及び後部台車の前後に前部船台及び後部船台を配すれば、前部台車及び後部台車を最低位置に下げることで、容易に前部船台及び後部船台で船艇を支持させることができる。このように前部船台及び後部船台を保管用の簡易式船台とし、前部台車及び後部台車を搬送用の自走式船台として活用することができる。したがって、従来のような重厚で高価な船台を多数用意する必要がなくなり、船台コストを低減することができる。
【0014】
また、本発明の船艇搬送装置は、前記前部船台及び前記後部船台が、底部に設けられた複数の船台車輪と、前記船艇が載置された際に前記船艇の荷重によって前記底部内に前記船台車輪が押し込まれる車輪出し入れ機構とを備えていることを特徴とする。すなわち、この船艇搬送装置では、船艇が載置された際に船艇の荷重によって底部内に船台車輪が押し込まれる車輪出し入れ機構を備えているので、船艇を載置していない状態では、船台車輪が底部から出て、前部船台及び後部船台を作業者の人力で容易に移動することができる。そして、船艇を載置した状態では、船台車輪が底部内に引っ込むことで接地した底部によって船艇の荷重を支持することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る船艇搬送装置によれば、昇降機構及び自走機構を有する前部台車と後部台車とを連結すると共にこれら両者の間隔を調整可能な連結機構を備えているので、船艇の大きさに対応可能であると共に狭いスペースでも容易に船舶上下架、搬送及び保管を行うことができる。したがって、種々の船艇の搬送等が可能であると共に作業効率の向上を図ることができ、さらにマリーナ等での保管スペースを効率的に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る船艇搬送装置の第1実施形態を、図1から図10を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態の船艇搬送装置1は、図1から図5に示すように、例えば港湾のマリーナにおいてボート等の船艇を水際のスロープと港やマリーナ内の敷地における所定位置との間で搬送する装置であって、船艇の前半部(船首側半分)を持ち上げて載置可能な昇降機構2と車輪3の向きを自由に変更可能な自走機構4とを有する前部台車5Aと、船艇の後半部(船尾側半分)を持ち上げて載置可能な昇降機構2と車輪3の向きを自由に変更可能な自走機構4とを有する後部台車5Bと、前部台車5Aと後部台車5Bとを連結すると共にこれら両者の間隔を調整可能な連結機構6とを備えている。
【0018】
上記前部台車5A及び上記後部台車5Bは、自走機構4及び連結機構6の油圧機構等が外板8で水密状態に覆われた防水構造となっており、複数の車輪3を有する台車本体9と、台車本体9上部の中央凹部9aに収納可能に上下動される昇降箱部10とで構成されている。
上記昇降機構2は、上下動可能な上記昇降箱部10と、図5に示すように、台車本体9内に設けられ一対の交差した昇降用支持板部11を介して昇降箱部10を上下動させる昇降用油圧シリンダ12とを備えている。
【0019】
すなわち、昇降用支持板部11は、先端が昇降箱部10の側面に回動可能に支持され、基端が台車本体9の中央凹部9a側面に回動可能に支持されている。また、昇降用支持板部11の基端は、台車本体9内に懸架状態で固定された支持軸部13の先端に固定されている。さらに、昇降用支持板部11の基端には、その回転軸線からずれた位置に昇降用油圧シリンダ12が連結され、該昇降用油圧シリンダ12の伸縮動作によって、支持軸部13が回転するように設定されている。また、昇降用支持板部11の先端は、昇降箱部10の側面に取り付けた側面支持部材10bの長穴支持部10aに長穴方向(昇降箱部10の延在方向)に移動可能に支持されている。すなわち、昇降用支持板部11の先端には、長穴支持部10aに嵌るピンが設けられており、ピンが長穴支持部10a内をスライドするようになっている。また、側面支持部材10bは、昇降箱部10を前後に揺動可能に中央部下部で軸支している。
【0020】
したがって、昇降用油圧シリンダ12を伸縮動作させて支持軸部13を回転させ、互いの先端が近接する方向に一対の昇降用支持板部11を回動させることで、台車本体9の中央凹部9aから昇降箱部10を持ち上げることができる。例えば、本実施形態では、昇降機構2により昇降箱部10を台車本体9の上面から最大700mmリフト可能に設定されている。
また、昇降箱部10は、最も低い位置に下げられると中央凹部9a内に収納され、上面が台車本体9の上面と面一状態となるように設定されている。
さらに、昇降箱部10は、これを支持する昇降用支持板部11の先端が、長穴支持部10aに移動可能に支持されているので、船艇の傾斜に沿って昇降箱部10を前後に傾斜可能になっている。
【0021】
上記昇降箱部10は、船艇の船底の両側面を支持する一対の側面支持板14を有し互いの側面支持板14の角度を変更可能な側面支持部15と、船底の中央部を支持し側面支持板14よりも広い座面面積の中央支持板16とが設けられている。
なお、昇降箱部10を中央凹部9a内に収納した状態で、側面支持板14を水平状態まで下げることにより、台車本体9上部の角に形成した切り欠き部9bに側面支持部15が収納され、側面支持板14の支持面が台車本体9の上面と面一状態となるように設定されている。
【0022】
上記中央支持板16は、昇降箱部10の上板を構成している。また、上記側面支持部15は、昇降箱部10の外端面に設けられている。この側面支持部15は、先端に側面支持板14が固定され基端が昇降箱部10の前端面又は後端面に回動可能に支持された一対の支持腕部17を有している。これらの支持腕部17は、図2及び図4に示すように、基端が1対の側面支持用シャフト18を介して昇降箱部10内の一対の側面支持用油圧シリンダ19に連結されている。
【0023】
これらの側面支持用油圧シリンダ19は、伸縮動作させると、一対の側面支持用シャフト18が互いに逆方向に回転するように側面支持用シャフト18の回転軸線からずれて連結されている。すなわち、一対の側面支持用油圧シリンダ19を伸縮させることにより、一対の側面支持用シャフト18が回転して一対の支持腕部17が回動し、一対の支持腕部17の開口角度及び側面支持板14の角度が変更可能とされている。
【0024】
上記連結機構6は、図2に示すように、前部台車5Aと後部台車5Bとを連結し互いに平行な棒状の一対の連結支持材20と、前部台車5A内及び後部台車5B内に設けられ連結支持材20の端部に設けられた先端ギヤ部21に噛み合った歯車軸23を有する油圧駆動式の伸縮用モータ22とを備えている。上記先端ギヤ部21は、連結支持材20の先端部内部に設けられ、該先端部に形成された長穴部20aを介して挿入された歯車軸23と噛み合っている。すなわち、先端ギヤ部21は、ラック&ピニオンのラックを構成し、歯車軸23がピニオンを構成している。
【0025】
したがって、伸縮用モータ22の歯車軸23を回転させることで、連結支持材20が前部台車5A及び後部台車5Bに対して進退して両台車の間隔が調整可能となっている。例えば、本実施形態では、連結機構6により最も前部台車5Aと後部台車5Bとの間隔を狭めると装置全長が2300mmとなり、最も間隔を広めると装置全長が3500mmとなるように設定されている。
また、連結機構6は、ラック&ピニオン式で連結支持材20を連結して台車本体9に対して傾斜可能とすることで、前部台車5A及び後部台車5Bの一方に対して他方を傾斜可能に支持している。
【0026】
上記自走機構4は、互いに同一の回転軸を有したソリッドタイヤである1対の車輪3を左右に2対、すなわち前部台車5A及び後部台車5B合わせて全部で8対(16個)有している。各対の車輪3は、中心部に油圧駆動モータであるHST(Hydro Static Transmission)モータ24が内蔵されて対毎に正逆自在に回転駆動されるようになっている。また、各対の車輪3のHSTモータ24は、図5に示すように、対の車輪3間の中央で垂直支持軸25に支持されている。
【0027】
さらに、台車本体9の左右にそれぞれ配置された一対の垂直支持軸25は、台車本体9内に設けられたシフトシリンダ26の両端に偏心連結部材27を介してそれぞれ回転可能に連結されている。この偏心連結部材27は、垂直支持軸25の回転軸からずれた位置で垂直支持軸25に連結されている。すなわち、シフトシリンダ26を伸縮させることにより、偏心連結部材27を介して2つの垂直支持軸25が同時に同一方向に回転させられ、各対の車輪3がHSTモータ24と共に回動して車輪方向が変更可能になっている。なお、シフトシリンダ26は、左右で互いに連動して制御されており、台車本体9毎で全車輪3は、同一方向に向くように設定されている。このように、16個の車輪3は、すべて操舵輪となっている。
【0028】
また、伸縮用モータ22、HSTモータ24、昇降用油圧シリンダ12及びシフトシリンダ26は、すべて図示しないリモートコントローラに有線又は無線で接続されて外部から制御可能になっている。さらに、伸縮用モータ22、HSTモータ24、昇降用油圧シリンダ12及びシフトシリンダ26への油圧供給を行う電動機30が、図5に示すように、台車本体9に内蔵されている。この電動機30には、減速機31及び油圧ポンプ32が接続され、電動機30及び減速機31で駆動された油圧ポンプ32から伸縮用モータ22、HSTモータ24、昇降用油圧シリンダ12及びシフトシリンダ26に油圧供給が行われる。そして、この電動機30への電力供給は、台車本体9の中央内部に設置されたバッテリー33によって行われる。
【0029】
また、本実施形態の船艇搬送装置1は、図6に示すように、前部台車5Aの前方に配置可能で船艇の前半部を載置して支持可能な前部船台7Aと、後部台車5Bの後方に配置可能で船艇の後半部を載置して支持可能な後部船台7Bとを備えている。
これら前部船台7A及び後部船台7Bは、昇降機構2により前部台車5A及び後部台車5Bの高さを最も低くした位置より高い位置で船艇を支持可能とされている。
【0030】
また、前部船台7A及び後部船台7Bは、コ字状の底部支持部34と、該底部支持部34上に立設された3本の垂直支持部材35と、これら垂直支持部材35上に固定されたV字状支持部材36とを備えている。
さらに、前部船台7A及び後部船台7Bは、図6及び図7に示すように、底部支持部34に設けられた複数のキャスター(船台車輪)38と、船艇が載置された際に船艇の荷重によって底部支持部34内にキャスター38が押し込まれる車輪出し入れ機構39とを備えている。
【0031】
この車輪出し入れ機構39は、図7に示すように、底部支持部34に下端が固定板41で固定された外筒部40と、外筒部40内に上下に付勢するバネ42を介在して内挿された内筒部43とで構成されている。そして、この内筒部43の下端にキャスター38が垂直軸に対して回転可能に取り付けられており、荷重によって内筒部43が外筒部40内を進退することで上下動するようになっている。なお、上記バネ42の付勢力は、載置する船艇の重量に応じて設定され、船艇が載置された状態でキャスター38が完全に底部支持部34内に収納されるようになっている。また、内筒部43の下部には段差部が形成され、外筒部40から所定長さ以上出ないようにストッパである固定板41に上記段差部が当接するようになっている。
【0032】
次に、本実施形態の船艇搬送装置1による船艇の搬送方法について、図8から図10を参照して説明する。
【0033】
搬送の例として、海に面したスロープからマリーナ内の所定位置まで、船艇を搬送する場合について以下に説明する。
まず、図8の(a)に示すように、予め船艇搬送装置1をリモートコントローラで操作して、海中まで延在したスロープSに自走機構4によって移動させ、水没状態とする。この状態で、船艇BをスロープSまで導くと共に船艇搬送装置1の上方に位置させる。このとき、連結機構6により前部台車5Aと後部台車5Bとの間隔を船艇Bの長さ(大きさ)に対応させて調整する。そして、前部台車5Aの上方に船艇Bの前半部を位置させると共に、後部台車5Bの上方に船艇Bの後半部を位置させる。
【0034】
この状態で、昇降機構2によって前部台車5A及び後部台車5Bの昇降箱部10を高くすると共に、支持腕部17の開口角度を狭める。これにより、船艇Bの両側面に側面支持板14を当接させて支持すると共に、船艇Bの中央部に中央支持板16を当接させて支持する。このとき、中央支持板16は、昇降箱部10と共に船艇Bの傾斜に併せて前後に傾斜し、板の全長にわたって船艇Bの中央部に接触し、支持する。次に、図8の(b)に示すように、船艇Bの両側面及び船底中央部を支持したまま、船艇搬送装置1の自走機構4により、スロープSを登り、マリーナの敷地へ船艇Bを揚げる。この後、前部台車5A及び後部台車5Bの両昇降箱部10の高さ及び傾きを調整して、船艇Bが水平状態になるようにする。なお、スロープSの上端で搬送路の傾斜が変化するが、連結機構6により前部台車5Aと後部台車5Bとが互いに傾斜可能となっているので、搬送路の傾斜状態が変化しても船艇Bの支持状態を良好に維持したまま搬送することができる。
【0035】
次に、マリーナ内の船艇Bを保管する敷地内まで船艇Bを載せたまま船艇搬送装置1を自走機構4により移動させる。このとき、船艇Bを載せた船艇搬送装置1は、各対の車輪3の方向が自在に変更できるため、船艇Bのほぼ一隻分の搬送スペースがあれば、スムーズに船艇Bを移送することができる。例えば、図9の(a)に示すように、船艇Bを保管する場所に隣接する位置まで、船艇Bを搬送し、この後、各対の車輪3の方向を90°変更して、船艇搬送装置1の長さ方向に直交する方向に設定する。さらに、図9の(b)に示すように、船艇搬送装置1を横方向に進めて船艇Bを保管する位置へと移動させる。
【0036】
次に、保管位置まで搬送された船艇Bの下に前部船台7A及び後部船台7Bをキャスター38によって運んで載置する。この際、前部台車5Aの前端から後部台車5Bの後端までの全長に対応して、前部台車5Aの前に前部船台7Aを設置すると共に、後部台車5Bの後に後部船台7Bを設置する。なお、船艇Bは、昇降機構2によって前部船台7A及び後部船台7Bよりも高く支持されているので、容易に前部船台7A及び後部船台7Bを船艇Bの下に運ぶことができる。
【0037】
この状態で、次に、昇降機構2により船艇Bを支持しながら船艇Bの船底が前部船台7A及び後部船台7Bに当接して支持されるまで、船艇Bをゆっくり下げる。船艇Bが前部船台7A及び後部船台7Bに支持されて船艇Bの荷重が加わると、図10の(a)のように、底部支持部34から露出していたキャスター38が、図10の(b)に示すように、車輪出し入れ機構39によって底部支持部34内に押し込まれ、底部支持部34が直接、地面に当接される。
【0038】
次に、船艇Bが前部船台7A及び後部船台7Bにしっかり支持されたことを確認した後、昇降機構2により昇降箱部10をさらに最低位置まで下げると共に支持腕部17の開口角度も最大まで広げて切り欠き部9bに側面支持板14を収納する。これにより、船艇搬送装置1による船艇Bの支持が完全に解除される。
【0039】
船艇Bの支持を解除した船艇搬送装置1は、図9の(c)に示すように、船艇Bの下方から移動され、再び別の船艇BをスロープSにおいて昇降作業するためにスロープSへ移動するか、作業がない場合には、所定の保管位置へ移動して載置される。さらに、船艇搬送装置1を保管する際は、連結機構6により前部台車5Aと後部台車5Bとの間隔を最短に設定することで、コンパクト化した状態で保管する。
なお、上記手順と逆に作業を行うことで、船艇Bを保管スペースからスロープSまで搬送して着水させることができる。
【0040】
このように本実施形態の船艇搬送装置1では、前部台車5Aと後部台車5Bとを連結すると共にこれら両者の間隔を調整可能な連結機構6を備えているので、船艇Bの大きさに応じて前部台車5Aと後部台車5Bとの間隔を変更して船艇Bを搬送することができる。また、前部台車5A及び後部台車5Bが、各対の車輪3の向きを変えて方向変換自在な自走式であるので、搬送作業時の移動スペースが狭くても、少なくとも船艇Bの大きさの搬送路があれば、充分に移送することが可能になる。したがって、種々の船艇Bの搬送等が可能であると共に作業効率の向上を図ることができ、さらにマリーナ等での保管スペースを効率的に活用することができる。この結果、実際に船艇Bを置けるスペースは、保管スペース全体の80%を超える。
【0041】
さらに、船艇搬送装置1が入り込めるスペースがあれば、容易に船艇Bの下部に移動して船底を支持して船艇Bを載せることができる。また、搬送時以外の保管の際には、連結機構6により、前部台車5Aと後部台車5Bとの間隔を最も短くすることにより、船艇搬送装置1全体をコンパクトにし、小さなスペースで保管することができる。
また、船艇Bを載せたまま上下架が可能であり、これらの作業に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0042】
また、連結機構6は、前部台車5A及び後部台車5Bの一方に対して他方を傾斜可能に支持しているので、傾斜変化のある搬送路においても前部台車5Aと後部台車5Bとがそれぞれ個別に搬送路に対応した傾きを保つことができる。したがって、前部台車5A又は後部台車5Bの車輪3が地面から浮いて離れたり、荷重が不均衡に加わることで不安定になることを防ぎ、海等からスロープSを介して船艇Bを引き上げる際でも、スムーズに安定した搬送を行うことが可能になる。
【0043】
また、角度可変の側面支持板14を有する側面支持部15により船底の両側面を支持するので、船艇Bの形状や大きさ(横幅)に応じて船底の両側面を支持可能であると共に、座面面積の広い中央支持板16で船底の中央部を支持するので、接触面積を増大させて船底の損傷を低減することができる。
【0044】
さらに、前部船台7A及び後部船台7Bを保管用の簡易式船台とし、前部台車5A及び後部台車5Bを搬送用の自走式船台として活用するので、従来のような重厚で高価な船台を多数用意する必要がなくなり、船台コストを低減することができる。
そして、前部船台7A及び後部船台7Bは、船艇Bが載置された際に、船艇Bの荷重によって底部支持部34内にキャスター38が押し込まれる車輪出し入れ機構39を備えているので、船艇Bを載置していない状態では、キャスター38が底部支持部34から出て、作業者の人力で容易に移動することができる。そして、船艇Bを載置した状態では、キャスター38が底部支持部34内に引っ込むことで接地した底部支持部34によって船艇Bの荷重を支持することができる。
【0045】
次に、本発明に係る船艇搬送装置の第2実施形態について、図11から図14を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0046】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では隣接配置された二対の車輪3が独立して台車本体9に支持されているのに対し、第2実施形態の船艇搬送装置51では、図11から図14に示すように、自走機構64において、隣接配置された二対の車輪3が懸架支持部52で連結されていると共に、各対の車輪3が水平に対して回転軸を傾斜可能に支持されている点である。
【0047】
すなわち、第2実施形態では、台車本体9の両側部から水平に水平軸部53がそれぞれ突出していると共に、中央が水平軸部53に回動可能に支持された懸架支持部52が設けられている。これにより、懸架支持部52の両端部が上下に揺動可能に軸支される。この懸架支持部52の両端部には、それぞれ一対の車輪3が傾斜可能に支持されている。
対である両車輪3を支持するHSTモータ24の中央上部には、車輪3の回転軸に直交する軸を中心にHSTモータ24を回動可能に支持する縦軸部材54が操舵用リングギヤ55を介して連結されている。さらに、縦軸部材54の上部には、中心軸に直交した端部水平軸部56が設けられており、この端部水平軸部56が懸架支持部52の端部に懸架支持部52の延在方向に沿った軸線を中心に回動可能に軸支されている。
【0048】
したがって、懸架支持部52の両端部に支持された車輪3は、懸架支持部52の揺動によって互いに逆の上下動を行うと共に、対である2つの車輪3は、端部水平軸部56を中心に揺動可能となっており、回転軸を水平に対して傾斜可能となっている。
このように第2実施形態では、各対の車輪3が水平に対して回転軸を傾斜可能に支持されているので、凹凸の激しい搬送路であっても対である両車輪3がいずれも接地状態を維持でき、均等に荷重がかかることから、一方の車輪3に過度な負担がかかるのを防ぐことができる。したがって、車輪3に等分布荷重がかかることにより単位面積当たりの路面荷重が小さくなって、コンクリート路面だけでなく簡易舗装のアスファルト等の路面でも使用することができる。
【0049】
なお、一対の車輪3を駆動するHSTモータ24には、図示しないデファレンシャルギアが内蔵され、内側と外側の車輪3で速度差が生じた場合にそれを吸収しつつ同じトルクを与えるようになっている。また、自走機構64は、図示しない操舵油圧モータを各車輪3に備え、この操舵油圧モータにより操舵用リングギヤ55を介して所定方向に車輪3を向けることができるようになっている。
【0050】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る第1実施形態の船艇搬送装置において、昇降機構で最低高さに設定した状態を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態の船艇搬送装置において、側面支持板を傾斜状態とし、昇降機構で高く設定した昇降箱部及び台車本体の一部を破断した斜視図である。
【図3】第1実施形態の船艇搬送装置において、側面支持板を傾斜状態とし、昇降機構で高く設定した状態を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態の船艇搬送装置において、側面支持板を傾斜状態とし、昇降機構で高く設定した昇降箱部の一部を破断した斜視図である。
【図5】第1実施形態の船艇搬送装置において、昇降箱部を取り外し、台車本体の上部を開口させた状態を示す斜視図である。
【図6】第1実施形態の船艇搬送装置において、前部船台及び後部船台を示す斜視図である。
【図7】第1実施形態の船艇搬送装置において、前部船台及び後部船台のキャスター及び車輪出し入れ機構を示す要部の断面図である。
【図8】第1実施形態の船艇搬送装置において、スロープからの船艇の陸揚方法を作業順に示す説明図である。
【図9】第1実施形態の船艇搬送装置において、船艇を保管スペースに搬送する方法を作業順に示す説明図である。
【図10】第1実施形態の船艇搬送装置において、前部船台及び後部船台の荷重が加わる前後の状態を示す正面図である。
【図11】本発明に係る第2実施形態の船艇搬送装置において、昇降機構で最低高さに設定した状態を示す斜視図である。
【図12】第2実施形態の船艇搬送装置において、側面支持板を傾斜状態とし、昇降機構で高く設定した状態を示す斜視図である。
【図13】第2実施形態の船艇搬送装置において、車輪及び自走機構の要部を示す正面図である。
【図14】第2実施形態の船艇搬送装置において、車輪及び自走機構の要部を示す側面図である。
【符号の説明】
【0052】
1、51…船艇搬送装置、2…昇降機構、3…車輪、4、64…自走機構、5A…前部台車、5B…後部台車、6…連結機構、7A…前部船台、7B…後部船台、14…側面支持板、15…側面支持部、16…中央支持板、38…キャスター(船台車輪)、39…車輪出し入れ機構、B…船艇
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船艇の前半部を持ち上げて載置可能な昇降機構と車輪の向きを自由に変更可能な自走機構とを有する前部台車と、
前記船艇の後半部を持ち上げて載置可能な昇降機構と車輪の向きを自由に変更可能な自走機構とを有する後部台車と、
前記前部台車と前記後部台車とを連結すると共にこれら両者の間隔を調整可能な連結機構とを備えていることを特徴とする船艇搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の船艇搬送装置において、
前記連結機構が、前記前部台車及び前記後部台車の一方に対して他方を傾斜可能に支持していることを特徴とする船艇搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の船艇搬送装置において、
前記自走機構が、互いに同一の回転軸を有する1対の前記車輪を複数対有すると共に、各対の前記車輪が水平に対して前記回転軸を傾斜可能に支持されていることを特徴とする船艇搬送装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の船艇搬送装置において、
前記昇降機構が、前記船艇の船底の両側面を支持する一対の側面支持板を有し互いの側面支持板の角度を変更可能な側面支持部と、
前記船底の中央部を支持し前記側面支持板よりも広い座面面積の中央支持板とを備えていることを特徴とする船艇搬送装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の船艇搬送装置において、
前記前部台車の前方に配置可能で前記船艇の前半部を載置して支持可能な前部船台と、
前記後部台車の後方に配置可能で前記船艇の後半部を載置して支持可能な後部船台とを備え、
前記前部船台及び前記後部船台が、前記昇降機構により前記前部台車及び前記後部台車の高さを最も低くした位置より高い位置で前記船艇を支持可能であることを特徴とする船艇搬送装置。
【請求項6】
請求項5に記載の船艇搬送装置において、
前記前部船台及び前記後部船台が、底部に設けられた複数の船台車輪と、
前記船艇が載置された際に前記船艇の荷重によって前記底部内に前記船台車輪が押し込まれる車輪出し入れ機構とを備えていることを特徴とする船艇搬送装置。
【請求項1】
船艇の前半部を持ち上げて載置可能な昇降機構と車輪の向きを自由に変更可能な自走機構とを有する前部台車と、
前記船艇の後半部を持ち上げて載置可能な昇降機構と車輪の向きを自由に変更可能な自走機構とを有する後部台車と、
前記前部台車と前記後部台車とを連結すると共にこれら両者の間隔を調整可能な連結機構とを備えていることを特徴とする船艇搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の船艇搬送装置において、
前記連結機構が、前記前部台車及び前記後部台車の一方に対して他方を傾斜可能に支持していることを特徴とする船艇搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の船艇搬送装置において、
前記自走機構が、互いに同一の回転軸を有する1対の前記車輪を複数対有すると共に、各対の前記車輪が水平に対して前記回転軸を傾斜可能に支持されていることを特徴とする船艇搬送装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の船艇搬送装置において、
前記昇降機構が、前記船艇の船底の両側面を支持する一対の側面支持板を有し互いの側面支持板の角度を変更可能な側面支持部と、
前記船底の中央部を支持し前記側面支持板よりも広い座面面積の中央支持板とを備えていることを特徴とする船艇搬送装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の船艇搬送装置において、
前記前部台車の前方に配置可能で前記船艇の前半部を載置して支持可能な前部船台と、
前記後部台車の後方に配置可能で前記船艇の後半部を載置して支持可能な後部船台とを備え、
前記前部船台及び前記後部船台が、前記昇降機構により前記前部台車及び前記後部台車の高さを最も低くした位置より高い位置で前記船艇を支持可能であることを特徴とする船艇搬送装置。
【請求項6】
請求項5に記載の船艇搬送装置において、
前記前部船台及び前記後部船台が、底部に設けられた複数の船台車輪と、
前記船艇が載置された際に前記船艇の荷重によって前記底部内に前記船台車輪が押し込まれる車輪出し入れ機構とを備えていることを特徴とする船艇搬送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−230536(P2007−230536A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2006−147706(P2006−147706)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(506182859)株式会社沼津パワートレンサービス (1)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147706(P2006−147706)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(506182859)株式会社沼津パワートレンサービス (1)
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