船首形状及び船舶
【課題】波浪抵抗及び風圧抵抗の影響を同時に低減させることができる船首形状及び該船首形状を有する船舶を提供する。
【解決手段】船体の前端部分を構成する船首部1と、船体の後端部分を構成する船尾部と、を有する船舶の船首形状であって、船首部1の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイル4は、喫水線LLより下方の領域で最先端部Tを有する下部船首プロファイル4aと、喫水線LLより上方の全領域に渡って船尾部の方向に後傾する上部船首プロファイル4bと、を有し、船首部1の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状は、喫水線LLより上方の全領域に渡って内側に傾斜した負のフレア角を有する。
【解決手段】船体の前端部分を構成する船首部1と、船体の後端部分を構成する船尾部と、を有する船舶の船首形状であって、船首部1の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイル4は、喫水線LLより下方の領域で最先端部Tを有する下部船首プロファイル4aと、喫水線LLより上方の全領域に渡って船尾部の方向に後傾する上部船首プロファイル4bと、を有し、船首部1の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状は、喫水線LLより上方の全領域に渡って内側に傾斜した負のフレア角を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の船首形状及び船舶に関し、特に、波浪抵抗及び風圧抵抗の影響を低減させる船首形状及び該船首形状を有する船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水上を航行する船舶は、波や風に曝されるため、船体が受ける波浪抵抗及び風圧抵抗により、必要馬力が大きくなり、燃費も悪化する傾向にある。特に、タンカー、バルクキャリア等の肥大船や船首部フレアの大きいコンテナ船等では、波浪抵抗が大きくなりやすい。また、甲板上に操舵室や居住区を有する船舶では、風圧抵抗が大きくなりやすい。そこで、これらの抵抗を低減するために種々の方法が既に提案されている(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、満載喫水線面積よりも狭小な暴露甲板面積をもつように形成した船首形状が記載されており、かかる構成により、船首形状が水線下では肥大した形状であっても、水線上において痩型の形状をしているため、波の破砕を少なくすることができ、波浪抵抗を低減できる旨が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、船底から前方に張り出し、喫水線より上方の船首プロファイルを後傾させ、上部に波除部を配置した船首形状が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、監視装置で船首前方又は舷側の視界を確保しつつ、船橋の高さを低くしたり、船橋ウイングの船体幅方向長さを減少したり、船橋ウイングを設けないことにより、風圧抵抗を減少させるようにした船舶が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−149884号公報
【特許文献2】国際公開第2006/096066号
【特許文献3】特開2009−241902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1乃至特許文献3に記載された船首形状又は船舶は、波浪抵抗と風圧抵抗とを同時に低減させる形状にはなっていない。
【0008】
例えば、特許文献1に記載の船首形状では、船首先端部が狭小に形成され、後方に向かって船幅まで拡大するように形成されているため、側面及び正面からの風を受けやすく、風圧抵抗が大きくなるという問題があった。特に、横風が船首プロファイルを回り込む際には、気流の剥離が起こり、渦流が生じて風圧抵抗が大きくなりやすい。さらに、かかる船首形状では、船首プロファイルの傾斜角が前傾していることから、喫水線近傍の船首先端部において波の抵抗を受けやすく、波浪抵抗の低減効果が少ないという問題もあった。
【0009】
また、特許文献2に記載の船首形状では、船首上部に波除部が形成されていることから、この波除部の部分が風を受けやすく、風圧抵抗が大きくなってしまうという問題があった。特に、波除部の上端部付近では、風が波除部を乗り越える際に、気流の剥離が起こり、渦流が生じて風圧抵抗が大きくなりやすい。さらに、かかる船首形状では、船首プロファイルの最先端部が喫水線より上方に配置されており、船首プロファイルの傾斜角が少なからず前傾に形成されていることから(例えば、特許文献2の図1参照)、喫水線近傍の船首先端部において波の抵抗を受けやすく、波浪抵抗の低減効果が少ないという問題があった。加えて、喫水線より上方の部分で「正のフレア角(船体幅方向の外側に向かって傾斜した角度)」を有することから(例えば、特許文献2の図2参照)、喫水線近傍の船首側面部においても波の抵抗を受けやすく、波浪抵抗の低減効果が少ないという問題があった。
【0010】
また、特許文献3に記載の船舶では、甲板上の上部構造物による風圧抵抗を低減することができたとしても、船首形状は従来のままであるため、船首部における波浪抵抗及び風圧抵抗を低減することができない、という問題があった。
【0011】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、波浪抵抗及び風圧抵抗の影響を同時に低減させることができる船首形状及び該船首形状を有する船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、船体の前端部分を構成する船首部と、船体の後端部分を構成する船尾部と、を有する船舶の船首形状であって、前記船首部の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイルは、喫水線より下方の領域で最先端部を有する下部船首プロファイルと、前記喫水線より上方の領域に渡って前記船尾部の方向に後傾する上部船首プロファイルと、を有し、前記船首部の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状は、前記喫水線より上方で内側に傾斜した負のフレア角を有する、ことを特徴とする船首形状が提供される。なお、本発明において「船首部」とは、船体中央部に形成された平行部より前方の部分を意味する。
【0013】
また、本発明によれば、船体の前端部分を構成する船首部と、船体の後端部分を構成する船尾部と、を有する船舶であって、前記船首部の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイルは、喫水線より下方の領域で最先端部を有する下部船首プロファイルと、前記喫水線より上方の領域に渡って前記船尾部の方向に後傾する上部船首プロファイルと、を有し、前記船首部の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状は、前記喫水線より上方で内側に傾斜した負のフレア角を有する船首形状を有する、ことを特徴とする船舶が提供される。
【0014】
上述した船首形状及び船舶において、前記上部船首プロファイル及び前記船体横切面形状は、上方に凸な形状を有していてもよい。さらに、前記上部船首プロファイルは、前記船尾部の方向に向かって曲率が大きくなるように形成されていてもよい。
【0015】
また、前記船首部の水平方向断面の外形を構成する水平断面形状は、喫水線より上方の領域において前方に凸な形状を有していてもよい。
【0016】
また、前記上部船首プロファイルを有する前記船体横切面形状は、前記上部船首プロファイルの部分が尖端部を構成していてもよい。
【0017】
また、前記船首部の側面に前記船尾方向に延設された整流板を有していてもよい。また、前記喫水線は、例えば、バラスト喫水線から満載喫水線までの間に設定される。また、前記下部船首プロファイルは、バルバスバウを含む又は前記上部船首プロファイルと連続した曲線を有してもよい。
【0018】
また、前記船首形状及び前記船舶は、前記船首部の上部の少なくとも一部を覆うように配置された波除部材を有していてもよい。
【0019】
さらに、本発明によれば、船体の前端部分を構成する船首部と、船体の後端部分を構成する船尾部と、を有する船舶の船首形状であって、前記船首部の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイルは、前記船体の軸心部におけるセンター船首プロファイルが、喫水線より下方の領域で最先端部を有するとともに該最先端部から前記船体の甲板までの領域に渡って前記最先端部から垂直に延長された形状を有し、前記船体の両側部におけるサイド船首プロファイルが、前記喫水線より下方の領域で最先端部を有するとともに該最先端部から前記喫水線までの領域に渡って前記船尾部の方向に後傾するように延長された下部船首プロファイルと、前記喫水線より上方の領域で少なくとも前記船尾部の方向に後傾するように延長された形状を含む上部船首プロファイルと、を有し、前記船首部の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状は、前記喫水線より下方の領域で内側に傾斜した負のフレア角を有する、ことを特徴とする船首形状が提供される。
【0020】
また、本発明によれば、船体の前端部分を構成する船首部と、船体の後端部分を構成する船尾部と、を有する船舶であって、前記船首部の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイルは、前記船体の軸心部におけるセンター船首プロファイルが、喫水線より下方の領域で最先端部を有するとともに該最先端部から前記船体の甲板までの領域に渡って前記最先端部から垂直に延長された形状を有し、前記船体の両側部におけるサイド船首プロファイルが、前記喫水線より下方の領域で最先端部を有するとともに該最先端部から前記喫水線までの領域に渡って前記船尾部の方向に後傾するように延長された下部船首プロファイルと、前記喫水線より上方の領域で少なくとも前記船尾部の方向に後傾するように延長された形状を含む上部船首プロファイルと、を有し、前記船首部の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状は、前記喫水線より下方の領域で内側に傾斜した負のフレア角を有する、ことを特徴とする船舶が提供される。
【0021】
上述した段落0019の船首形状及び段落0020の船舶において、前記上部船首プロファイルは、前記船尾部の方向に頂点を有し、該頂点より上方の領域に渡って垂直に又は前記船首部の方向に前傾するように延長されていてもよい。
【0022】
また、前記船体横切面形状は、前記喫水線より上方の領域で、内側に傾斜した負のフレア角、0°のフレア角又は外側に傾斜した正のフレア角を有していてもよい。
【0023】
また、前記喫水線は、例えば、満載喫水線に設定される。また、前記船首形状及び前記船舶は、前記船首部の上部の少なくとも一部を覆うように配置された波除部材を有していてもよい。
【発明の効果】
【0024】
上述した本発明に係る船首形状及び船舶によれば、船首プロファイルを喫水線より下方の領域で最先端部を有するとともに喫水線より上方の全領域に渡って後傾する形状に構成し、船体中央部の平行部より前方における船体横切面形状を喫水線より上方で負のフレア角を有する形状に構成したことにより、船首形状の全体を滑らかな曲面形状に形成することができ、波浪抵抗及び風圧抵抗の影響を同時に低減させることができる。また、波浪抵抗及び風圧抵抗を低減することにより、必要馬力の低減や燃費の向上を図ることもできる。
【0025】
また、上述した本発明に係る船首形状及び船舶によれば、センター船首プロファイルを最先端部から甲板まで垂直に構成し、サイド船首プロファイルを少なくとも最先端部から喫水線までの領域に渡って後傾する形状に構成し、船体中央部の平行部より前方における船体横切面形状を喫水線より下方で負のフレア角を有する形状に構成したことにより、船首部の先端における波の跳ね返し量を低減することができるとともに、船首部の先端における風の流れをスムースにすることができ、波浪抵抗及び風圧抵抗の影響を同時に低減させることができる。また、波浪抵抗及び風圧抵抗を低減することにより、必要馬力の低減や燃費の向上を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】船舶の船首部の側面線図であり、(a)は第一実施形態、(b)は従来技術、を示している。
【図2】船舶の船首部の正面線図であり、(a)は第一実施形態、(b)は従来技術、を示している。
【図3】船舶の船首部の水線面図であり、(a)は第一実施形態、(b)は従来技術、を示している。
【図4】第一実施形態に係る船首部における風の流れを示す図であり、(a)は船首前面からの風の流れを示す側面図、(b)は船首側面からの風の流れを示す平面図、(c)は船首側面からの風の流れを示す正面図、を示している。
【図5】本発明に係る船首部の他の実施形態を示す図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態の側面図、(c)は第三実施形態の平面図、(d)は第三実施形態の変形例、を示している。
【図6】本発明に係る船首部の他の実施形態を示す図であり、(a)は第四実施形態、(b)は第五実施形態、を示している。
【図7】本発明に係る船首部の第六実施形態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面線図、(c)は正面線図、である。
【図8】本発明に係る船首部の第七実施形態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面線図、(c)は正面線図、である。
【図9】第一実施形態、第六実施形態及び第七実施形態に係る船首形状の変遷を示す正面線図である。
【図10】本発明に係る船首部の他の実施形態を示す図であり、(a)は第八実施形態、(b)は第九実施形態、を示している。
【図11】本発明に係る船首部の第十実施形態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は第一変形例、(d)は第二変形例、を示している。
【図12】本発明に係る船舶の実施形態を示す図であり、(a)は第一実施形態の船首形状を採用した船舶の概略全体構成図、(b)は図12(a)の変形例、(c)は第六実施形態の船首形状を採用した船舶の概略全体構成図、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る船首形状の第一実施形態について、図1乃至図4を用いて説明する。ここで、図1は、船舶の船首部の側面線図であり、(a)は第一実施形態、(b)は従来技術、を示している。図2は、船舶の船首部の正面線図であり、(a)は第一実施形態、(b)は従来技術、を示している。図3は、船舶の船首部の水線面図であり、(a)は第一実施形態、(b)は従来技術、を示している。図4は、第一実施形態に係る船首部における風の流れを示す図であり、(a)は船首前面からの風の流れを示す側面図、(b)は船首側面からの風の流れを示す平面図、(c)は船首側面からの風の流れを示す正面図、を示している。
【0028】
なお、側面線図とは、船舶の幅方向(左右方向)に一定の間隔で船体を切断し、格子枠を基準に断面形状を重ねて表示して二次元化したものである。また、正面線図とは、船首部から船尾部に向かって一定の間隔で船体を切断し、格子枠を基準に断面形状を重ねて表示して二次元化したものである。また、水線面図とは、船舶の高さ方向(上下方向)に一定の間隔で船体を切断し、格子枠を基準に断面形状を重ねて表示して二次元化したものである。
【0029】
本発明の第一実施形態に係る船首形状は、図1(a)、図2(a)及び図3(a)に示したように、船体の前端部分を構成する船首部1と、船体の後端部分を構成する船尾部2と、を有する船舶3の船首形状であって、船首部1の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイル4は、喫水線LLより下方の領域で最先端部Tを有する下部船首プロファイル4aと、喫水線LLより上方の領域に渡って船尾部2の方向に後傾する上部船首プロファイル4bと、を有し、船首部1の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状5は、喫水線LLより上方で内側に傾斜した負のフレア角θを有する。なお、本実施形態において「船首部」とは、船体中央部に形成された平行部より前方の部分を意味する。
【0030】
前記喫水線LLは、満載喫水線を示しているが、一点鎖線で示したバラスト喫水線BLであってもよいし、バラスト喫水線BLから満載喫水線LLまでの間に設定される任意の喫水線であってもよい。なお、バラスト喫水線BLは最小喫水線、満載喫水線は最大喫水線と表現することもできる。
【0031】
前記船首プロファイル4は、図1(a)に示したように、船首部1の船体中心線に沿った外形を構成する断面形状である。かかる船首プロファイル4は、喫水線LLから下側の下部船首プロファイル4aと、喫水線LLから上側の上部船首プロファイル4bと、により構成される。なお、図中の破線部は、甲板Dを示している。
【0032】
下部船首プロファイル4aは、船底Bから前方に向かって張り出した形状を有し、船首部1の最先端部Tが配置される。また、最先端部Tから喫水線LLの間における下部船首プロファイル4aは、上方に凸な形状を有する。このように、下部船首プロファイル4aに最先端部Tを配置することにより、船首部1の最先端部Tが喫水線LLよりも上方に露出し難くすることができ、最先端部Tよりも下方の部分が喫水線LL近傍に浮上し難くなり、波浪抵抗の発生を抑制することができる。なお、最先端部Tは、頂点であってもよいし、直線部の一部として線状に配置されてもよい。
【0033】
上部船首プロファイル4bは、全体が後傾する形状を有し、上方に凸な形状を有する。また、下部船首プロファイル4aと上部船首プロファイル4bとは、連続した曲線を有するように接続されている。したがって、船首プロファイル4は、最先端部Tから上方の部分において、船尾部2の方向に後傾するとともに、上方に凸な形状を有することとなる。すなわち、船首プロファイル4の傾斜角φは、後傾する角度を有することとなる。なお、上部船首プロファイル4bは、船尾部2の方向に後傾していれば、必ずしも凸形状を有していなくてもよく、直線状に形成されていてもよい。
【0034】
また、図1(a)の側面線図に示したように、船首部1の幅方向の各断面形状は、上述した船首プロファイル4に近似した形状に構成される。かかる構成により、船首部1は、全体が前方に張り出した滑らかな略曲面状に形成される。なお、「略曲面状」とは、部分的に平面部を有していてもよいという意味である。
【0035】
一方、従来技術における典型的な船首形状では、図1(b)に示したように、船首部101の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイル104は、喫水線LLより下方の領域でバルバスバウ(球状船首)104cを有する下部船首プロファイル104aと、喫水線LLより上方の領域で前傾する上部船首プロファイル104bと、を有する。
【0036】
かかる従来技術の船首形状によれば、喫水線LLに対する船首プロファイル104の傾斜角φ´が鉛直又は前傾していることから、喫水線LL近傍における波の抵抗を受けやすく、波浪抵抗が大きくなる。また、上部船首プロファイル104bが前傾していることから、船体前面からの風を受けやすく、風圧抵抗が大きくなる。特に、船首部101の上端部付近では、風が船首部101を乗り越える際に、気流の剥離が起こり、渦流が生じて風圧抵抗が大きくなりやすい。
【0037】
それに対して、上述した第一実施形態によれば、喫水線LLに対する船首プロファイル4の傾斜角φが後傾していることから、喫水線LL近傍における波の抵抗を受け難く、波浪抵抗を低減することができる。また、上部船首プロファイル4bが上方に凸な形状に形成されていることから、図4(a)に示したように、船体前面からの風を後方に受け流すことができ、風圧抵抗を低減することができる。また、風が船首部1を乗り越える際に、船首部1の上端部付近に生じる気流の剥離を低減することができる。したがって、気流の剥離による渦流の発生を低減することができ、風圧抵抗を小さくすることができる。
【0038】
前記船体横切面形状5は、船首部1の船体幅方向断面の外形を構成する断面形状である。具体的には、例えば、図2(a)に示したように、船体横切面形状5は、正面線図により表示され、断面形状ごとに船首部1の前方側から船体横切面形状5a,5b,5c,5d,・・・を含む。そして、各船体横切面形状5は、船体中央部の平行部より前方において喫水線LLより上方で内側に傾斜した負のフレア角θを有する。ここで、「フレア角」とは、船側外板の傾斜角を意味する。また、「負のフレア角を有する」とは、船側外板が船体幅方向の内側に向かって傾斜していることを意味する。
【0039】
また、各船体横切面形状5は、喫水線LLより上方の領域において、上方に凸な形状を有する。したがって、かかる船体横切面形状5の形状から、船首部1は、喫水線LLより下方の領域で前方に張り出し、船体後方に向かって徐々に面積が拡大する形状を有している。
【0040】
一方、従来技術における典型的な船首形状は、図2(b)に示したように、断面形状ごとに船首部101の前方側から船体横切面形状105a,105b,105c,105d,・・・を含む船体横切面形状105により構成されている。かかる船首部101は、喫水線LLより上方の領域において外側に傾斜した正のフレア角θ´を有する。
【0041】
かかる従来技術の船首形状によれば、喫水線LLより上方の領域において正のフレア角θ´を有することから、船殻が外側に張り出しており、この部分で波の抵抗を受けやすく、波浪抵抗が大きくなる。また、同様に、正のフレア角θ´を有する部分で、船体側面からの風を受けやすく、風圧抵抗が大きくなる。
【0042】
それに対して、上述した第一実施形態によれば、船体横切面形状5が負のフレア角θを有していることから、受けた波を船体に沿って受け流しやすくすることができ、波浪抵抗を低減することができる。また、同様に、船体側面からの風を船体に沿って受け流しやすくすることができ、風圧抵抗を低減することができる。また、風が船首部101を乗り越える際に、船首部1の上端部付近に生じる気流の剥離を低減することができる。したがって、気流の剥離による渦流の発生を低減することができ、風圧抵抗を小さくすることができる。
【0043】
また、図2(a)において、船体中心に一点鎖線で示したラインは、船首プロファイル4(下部船首プロファイル4a及び上部船首プロファイル4b)を示している。そして、船首プロファイル4を有する船体横切面形状5a,5b,5cは、船首プロファイル4の部分が尖端部51を構成している。すなわち、船首部1には、船首プロファイル4に沿って尖った角部が形成されており、船体中心に沿ってピークとなる山形部が形成されている。かかる構成により、船首部1の張り出した部分に打ち上げられた波を船体横切面形状5に沿って両側に落下しやすくすることができ、船首部1に沿って船体後方に駆け上がる波を低減し、船体後方の上部構造物や甲板への波の打ち込みを低減することができる。なお、尖端部51は、船首プロファイル4を有する全ての船体横切面形状5に形成されている必要はなく、船体上方に向かって徐々に消滅するようにしてもよいし、船首部1の最先端部よりも下方の領域は必ずしも尖端部51を有している必要はない。
【0044】
上述した第一実施形態の船首形状は、図3に示したように、船首部1の水平方向断面の外形を構成する複数の水平断面形状6を有する。かかる水平断面形状6は、例えば、図3(a)に示したように、水線面図により表示され、断面形状ごとに船首部1の船底B側から複数の水平断面形状6a,6b,6c,6d,6e,6f,6gを含む。ここで、水平断面形状6a,6b,6c,6dは、喫水線LLより下方の領域における水平断面形状6を構成し、水平断面形状6e,6f,6gは、喫水線LLより上方の領域における水平断面形状6を構成している。そして、水平断面形状6は、喫水線LLより上方の領域(すなわち、水平断面形状6e〜6g)において前方に凸な形状を有する。また、水平断面形状6は、水平断面形状6cで最外形を構成し、水平断面形状6d,6e,6f,6gの順に、徐々に船体内側方向に縮小するように構成されている。したがって、喫水線LLより上方の船首部1は、船体外側方向に張り出した部分を有しておらず、狭小に形成された先端部も有していない。
【0045】
一方、従来技術における典型的な船首形状は、図3(b)に示したように、断面形状ごとに船首部101の船底B側から複数の水平断面形状106a,106b,106c,106d,106e,106f,106gを含む水平断面形状106により構成されている。そして、水平断面形状106は、水平断面形状106gで最外形を構成している。したがって、喫水線LLより上方の船首部101は、船体外側方向に張り出した形状を有しており、この部分で波浪抵抗及び風圧抵抗を受けやすい。
【0046】
それに対して、上述した第一実施形態によれば、喫水線LLより上方の船首部1において、船体外側に張り出した部分を有していないため、波及び風の影響を受け難く、波浪抵抗及び風圧抵抗を低減することができる。また、喫水線LLより上方の水平断面形状6(例えば、上端部付近の水平断面形状6f,6g)が狭小に形成されていないことから、側面及び正面からの風を受け流しやすくすることができ、風圧抵抗を低減することができる。例えば、図4(b)に示したように、本実施形態では、特許文献1のような狭小の船首先端部を有しておらず、前方に凸な形状を有することから、横風を受け流しやすい。また、図4(c)に示したように、横風が船首プロファイル4の上部を超えて反対側に回り込む際に生じる気流の剥離を低減することもできる。したがって、気流の剥離による渦流の発生を低減することができ、風圧抵抗をより小さくすることができる。
【0047】
続いて、本発明に係る船首部1の他の実施形態について説明する。ここで、図5は、本発明に係る船首部の他の実施形態を示す図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態の側面図、(c)は第三実施形態の平面図、(d)は第三実施形態の変形例、を示している。また、図6は、本発明に係る船首部の他の実施形態を示す図であり、(a)は第四実施形態、(b)は第五実施形態、を示している。なお、各図において、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0048】
図5(a)に示した第二実施形態は、最先端部Tより上方の船首プロファイル4を有する船体横切面形状5(例えば、船体横切面形状5a,5b,5c)において尖端部を形成しないように構成したものである。このように、船首プロファイル4が尖端部を構成していない場合には、船首部1の先端部は全体として前方に張り出した曲面形状に構成される。かかる第二実施形態の構成によっても、上述した第一実施形態と実質的に同様の効果を奏する。
【0049】
図5(b)に示した第三実施形態は、船首部1の側面に船尾方向に延設された整流板7を配置したものである。かかる整流板7は、喫水線LLより上方の部分、好ましくは甲板Dの近傍に配置される。喫水線LLに近い部分に配置すると波浪抵抗を増加させる場合があるためである。また、整流板7は、図示したように、前方側が高くて後方側が低くなるように傾斜させて配置することが好ましい。このように、整流板7を傾斜させることによって、効果的に水流を後方に受け流すことができる。また、整流板7の船体から突出した長さ(幅)は、船体側面に沿って流れる水流を案内できる程度の幅であればよい。
【0050】
さらに、整流板7は、図5(c)に示したように、両側面部と先端部とを一枚の整流板7により構成してもよい。このように、船体の先端部にも整流板7を配置することにより、波浪抵抗や風圧抵抗の低減効果を多少犠牲にすることとなるが、船首部1を駆け上がる水流を効果的に抑制することができる。また、整流板7は、船首部1の上端部に形成された波除部と異なり、船首プロファイル4の中間部に配置されていることから、前記波除部のような気流の大規模な剥離や渦流の生成を生じないことから、一定の風圧抵抗の低減効果を得ることができる。
【0051】
また、整流板7は、図5(d)の変形例に示したように、先端部を除外して両側面部にそれぞれ配置された一対の整流板7,7により構成してもよい。かかる構成によれば、船体前面からの風圧抵抗の増加を抑制しつつ、船首部1の側面部における水流を効果的に後方に受け流すことができる。
【0052】
図6(a)に示した第四実施形態は、上部船首プロファイル4bを船尾部2の方向に向かって曲率が大きくなるように形成したものである。かかる構成により、効果的に風圧抵抗を低減することができる。
【0053】
図6(b)に示した第五実施形態は、下部船首プロファイル4aにバルバスバウ8を形成したものである。このように、本発明に係る船首形状は、バルバスバウ8を有する船舶(例えば、コンテナ船等)にも適用することができ、上述した第一実施形態と実質的に同様の効果を奏する。なお、タンカーやバルクキャリア等の低速船の場合には、バルバスバウ8の効果が小さいため、第一実施形態のように、船首部1に必ずしもバルバスバウ8を配置する必要はない。
【0054】
続いて、本発明に係る船首形状の他の実施形態について、さらに説明する。ここで、図7は、本発明に係る船首部の第六実施形態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面線図、(c)は正面線図、である。図8は、本発明に係る船首部の第七実施形態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面線図、(c)は正面線図、である。図9は、第一実施形態、第六実施形態及び第七実施形態に係る船首形状の変遷を示す正面線図である。図10は、本発明に係る船首部の他の実施形態を示す図であり、(a)は第八実施形態、(b)は第九実施形態、を示している。図11は、本発明に係る船首部の第十実施形態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は第一変形例、(d)は第二変形例、を示している。なお、各図において、上述した船首形状の第一〜第五実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0055】
図7、図8及び図10に記載した第六〜第九実施形態は、船体の軸心部におけるセンター船首プロファイル41を略垂直に形成したものである。具体的には、船首部1の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイル4は、船体の軸心部におけるセンター船首プロファイル41が、喫水線LLより下方の領域で最先端部Tを有するとともに最先端部Tから船体の甲板Dまでの領域に渡って最先端部Tから垂直に延長された形状を有し、船体の両側部におけるサイド船首プロファイル42が、喫水線LLより下方の領域で最先端部Tを有するとともに最先端部Tから喫水線LLまでの領域に渡って船尾部2の方向に後傾するように延長された下部船首プロファイル42aと、喫水線LLより上方の領域で少なくとも船尾部2の方向に後傾するように延長された形状を含む上部船首プロファイル42bと、を有し、船首部1の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状56は、喫水線LLより下方の領域で内側に傾斜した負のフレア角θを有する。なお、図7(c)及び図8(c)に示した正面線図は、船体の半分のみを図示している。
【0056】
図示した喫水線LLは、満載喫水線を示しており、満載喫水線は最大喫水線と表現することもできる。ただし、喫水線LLは、満載喫水線や最大喫水線に限定されるものではなく、これよりも低い喫水線であってもよい。
【0057】
第六実施形態は、図7(a)及び(b)に示したように、船体の中心線上のセンター船首プロファイル41を最先端部Tから垂直に形成している。ここで、船体の軸心部とは、少なくとも船体の中心線を含み、中心線の近傍を含むように船体幅方向に一定の幅を有していてもよい趣旨である。このように、船首部1の先端に真っ直ぐな尖端部を形成することにより、水切り及び風切りをよくすることができる。なお、船首部1に船首楼が形成されている場合には、船首楼の部分まで、センター船首プロファイル41を垂直に形成してもよいし、船首楼の部分だけ前傾するように形成してもよい。
【0058】
また、センター船首プロファイル41以外の部分における船首プロファイル4、すなわち、サイド船首プロファイル42は、図7(b)に示したように、下部船首プロファイル42a及び上部船首プロファイル42bを有する。
【0059】
下部船首プロファイル42aは、船底Bから前方に向かって張り出した形状に形成され、最先端部Tを有する。そして、下部船首プロファイル42aは、最先端部Tから喫水線LLまでの領域に渡って船尾部2の方向に後傾するように形成されている。ここでは、略直線上に後傾する場合を図示しているが、第一実施形態のように曲線的に後傾させるようにしてもよい。なお、最先端部Tは、頂点であってもよいし、直線部の一部として線状に配置されてもよい。
【0060】
上部船首プロファイル42bは、全体が後傾する形状を有し、下部船首プロファイル42aよりも傾きが大きくなるように形成されている。上部船首プロファイル42bは、主として風圧を受ける部分であるため、風を後方に受け流すように滑らかな曲線状に形成されることが好ましい。また、下部船首プロファイル42aと上部船首プロファイル42bとは、連続した曲線を有するように接続されている。
【0061】
また、船体横切面形状56は、図7(c)に示したように、正面線図により表示され、断面形状ごとに船首部1の前方側から船体横切面形状56a,56b,56c,56d,・・・を含む。そして、各船体横切面形状56は、船体中央部の平行部より前方において喫水線LLより下方で内側に傾斜した負のフレア角θを有する。さらに、第六実施形態の船体横切面形状56は、喫水線LLより上方の領域においても内側に傾斜した負のフレア角θを有するように形成されている。
【0062】
すなわち、第六実施形態に係る船首形状は、第一実施形態におけるセンター船首プロファイル41を略垂直に形成したものであり、かかる形状の変化に合わせてサイド船首プロファイル42及び船体横切面形状56の形状を調整したものといえる。
【0063】
かかる構成によれば、船首部1の先端における波の跳ね返し量を低減することができるとともに、船首部1の先端における風の流れをスムースにすることができ、波浪抵抗及び風圧抵抗の影響を同時に低減させることができる。また、波浪抵抗及び風圧抵抗を低減することにより、必要馬力の低減や燃費の向上を図ることもできる。
【0064】
第七実施形態は、図8(a)及び(b)に示したように、第六実施形態と同様に、船体の中心線上のセンター船首プロファイル41を最先端部Tから垂直に形成している。また、図8(b)及び(c)に示したように、第七実施形態は、サイド船首プロファイル42の下部船首プロファイル42aの形状及び船体横切面形状57の喫水線LLより下方の形状も、第六実施形態と同様の形状に構成されている。なお、船体横切面形状57は、図8(c)に示したように、断面形状ごとに船首部1の前方側から船体横切面形状57a,57b,57c,57d,・・・を含む。
【0065】
さらに、図8(b)に示したように、第七実施形態の上部船首プロファイル42bは、船尾部2の方向に頂点Uを有し、頂点Uより上方の領域に渡って船首部1の方向に前傾するように延長されている。なお、喫水線LLから頂点Uまでの領域における上部船首プロファイル42bは、船尾部2の方向に後傾するように延長された形状を有し、前傾する上部船首プロファイル42bと連続した曲線を有するように接続されている。
【0066】
また、図8(c)に示したように、第七実施形態の船体横切面形状57は、喫水線LLより上方の領域で、外側に傾斜した正のフレア角θを有する。このように、船首部1の喫水線LLより上方の狭い領域で小さな正のフレア角θを設けることにより、船首部1における海水の打ち込みを抑制することができる。特に、上部船首プロファイル42bが、喫水線LLより上方の領域で少なくとも船尾部2の方向に後傾するように延長された形状を含みつつ、頂点Uより上方の領域に渡って船首部1の方向に前傾するように延長されることによって、フレアによる波浪抵抗の増加を抑制しつつ海水の打ち込みを抑制することができる。
【0067】
なお、第七実施形態に係る船首形状は、船体横切面形状57の喫水線LLより上方の領域以外の部分においては、第六実施形態と同様の形状に構成されていることから、第六実施形態と実質的に同様の効果を奏する。
【0068】
ここで、第一実施形態、第六実施形態及び第七実施形態に係る船首形状の変遷について、図9に示した正面線図を参照しつつ説明する。図9において、点線は第一実施形態の船体横切面形状5、一点鎖線は第六実施形態の船体横切面形状56、実線は第七実施形態の船体横切面形状57を図示している。なお、図9に示した各正面線図は、船体の半分のみを図示している。
【0069】
図9に示したように、第一実施形態、第六実施形態及び第七実施形態に係る船体横切面形状5,56,57は、喫水線LLより下方の領域において、内側に傾斜した負のフレア角θを有する点において共通している。また、第一実施形態の船体横切面形状5は、船首形状が船体の中心部において前方に向かって張り出した形状を有しているのに対し、第六実施形態の船体横切面形状56及び第七実施形態の船体横切面形状57は、船首形状が船体の軸心部において垂直な形状を有している点において相違している。
【0070】
そして、第一実施形態及び第六実施形態に係る船体横切面形状5,56は、喫水線LLより上方の領域において、内側に傾斜した負のフレア角θを有する点において共通している。一方、第七実施形態に係る船体横切面形状57は、喫水線LLより上方の領域において、外側に傾斜した正のフレア角θを有する点において他の船体横切面形状5,56と相違している。
【0071】
本発明に係る船首形状は、図示した第一実施形態、第六実施形態及び第七実施形態に限定されるものではなく、例えば、第一実施形態に係る船体横切面形状5から第六実施形態に係る船体横切面形状56を経由して第七実施形態に係る船体横切面形状57に至るように変化する範囲内において、任意の形状に構成することができる。
【0072】
ここで、図10(a)に示した第八実施形態に係る船首形状では、船体横切面形状58が、喫水線LLより上方の領域で、0°のフレア角θを有する。すなわち、第八実施形態に係る船首形状は、第六実施形態の船首形状から第七実施形態の船首形状に変化する途中の一形態である。かかる形状であっても、第六実施形態及び第七実施形態と同様の効果を奏する。なお、具体的には図示しないが、図10(a)を参酌すれば、第八実施形態における上部船首プロファイル42bは、船尾部2の方向に頂点Uを有し、頂点Uより上方の領域に渡って垂直に延長されているものといえる。
【0073】
また、図10(b)に示した第九実施形態に係る船首形状は、第六実施形態に係る船首形状において、センター船首プロファイル41の喫水線LLよりも上方の領域を船尾部2の方向に後傾させたものである(傾斜角φ)。かかる第九実施形態に係る船首形状は、第一実施形態の船首形状から第六実施形態の船首形状に変化する途中の一形態である。すなわち、第九実施形態に係る船首形状は、第一実施形態に係る船首形状において、喫水線LLよりも下方の領域を最先端部Tから垂直に延長した形状を有するものということもできる。かかる形状であっても、第一実施形態及び第六実施形態と同様の効果を奏する。
【0074】
続いて、図11を参照しつつ、本発明に係る船首部1の第十実施形態について説明する。図11(a)及び(b)に示した第十実施形態は、船首部1の上部の少なくとも一部を覆うように配置された波除部材12を有する。かかる波除部材12は、船首部1の先端部分における甲板Dの上部を覆うように配置され、ボンネット状又はフード状に形成されている。このように、船首部1の上部に波除部材12を配置することにより、船首部1における海水の打ち込みを抑制することができる。図11(a)及び(b)では、第六実施形態に係る船首部1の上部に波除部材12を配置した場合を図示したが、他の実施形態に係る船首部1の上部に波除部材12を配置するようにしてもよい。なお、波除部材12は、船首部1の上部の甲板D上に固定するようにしてもよいし、甲板Dの縁部を構成する船殻や船首楼に溶接するようにしてよい。
【0075】
また、波除部材12は、図11(c)に示した第一変形例のように、船首部1の先端部分の上部における甲板Dの縁部に沿って部分的に配置するようにしてもよい。さらに、波除部材12は、図11(d)に示した第二変形例のように、後端側が先端側よりも高くなるように傾斜させてもよい。ここでは、波除部材12を直線的に傾斜させた場合を図示したが、後端側が先端側よりも高くなるように曲線的に形成するようにしてもよい。かかる第二変形によれば、カウル状又はフェアリング状に波除部材12を配置することができ、船首部1における海水の打ち込みを抑制することができるとともに、風除けとしても機能させることができる。
【0076】
最後に、本発明に係る船舶の実施形態について説明する。ここで、図12は、本発明に係る船舶の実施形態を示す図であり、(a)は第一実施形態の船首形状を採用した船舶の概略全体構成図、(b)は図12(a)の変形例、(c)は第六実施形態の船首形状を採用した船舶の概略全体構成図、を示している。なお、各図において、上述した船首形状の実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0077】
図12(a)に示した船舶は、船体の前端部分を構成する船首部1と、船体の後端部分を構成する船尾部2と、を有する船舶3であって、船首部1の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイル4は、喫水線LLより下方の領域で最先端部Tを有する下部船首プロファイル4aと、喫水線LLより上方の領域に渡って船尾部2の方向に後傾する上部船首プロファイル4bと、を有し、船首部1の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状5は、喫水線LLより上方で内側に傾斜した負のフレア角θを有する。なお、本実施形態において「船首部」とは、船体中央部に形成された平行部より前方の部分を意味する。
【0078】
すなわち、図12(a)に示した船舶3は、船首部1に上述した本発明の第一実施形態に係る船首形状を適用したものである。もちろん、船首形状として、上述した第二実施形態〜第五実施形態に係る船首形状を適宜選択して適用することもできる。
【0079】
また、図示した船舶3は、甲板上にデッキクレーン9や操舵室や居住区等の上部構造物10等を有するバルクキャリアである。もちろん、バルクキャリア以外の船舶、例えば、タンカー、コンテナ船、フェリー等であってもよい。特に、本発明は、船首部1が幅広に形成された肥大船に適用すると効果的である。
【0080】
上述した本発明に係る船舶3によれば、船首プロファイル4を喫水線LLより下方の領域で最先端部Tを有するとともに喫水線LLより上方の領域に渡って後傾する形状に構成し、船体横切面形状5を船体中央部の平行部より前方において喫水線LLより上方で負のフレア角θを有する形状に構成したことにより、船首形状の全体を前方に張り出した滑らかな曲面形状に形成することができ、波浪抵抗及び風圧抵抗の影響を同時に低減させることができる。また、波浪抵抗及び風圧抵抗を低減することにより、必要馬力の低減や燃費の向上を図ることもできる。
【0081】
図12(b)に示した変形例は、船首部1の上端部に船首楼11が形成されたものである。このように、船首楼11が配置された船舶3であっても、その部分も上述した船首プロファイル4や船体横切面形状5の条件を満足するように形成される。したがって、図12(a)に示した実施形態と同様の効果を奏する。また、船首楼11を形成することにより、船舶3の耐波性を高めることができる。
【0082】
図12(c)に示した船舶3は、船体の前端部分を構成する船首部1と、船体の後端部分を構成する船尾部2と、を有する船舶であって、船首部1の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイル4は、船体の軸心部におけるセンター船首プロファイル41が、喫水線LLより下方の領域で最先端部Tを有するとともに最先端部Tから船体の甲板Dまでの領域に渡って最先端部Tから垂直に延長された形状を有し、船体の両側部におけるサイド船首プロファイル42が、喫水線LLより下方の領域で最先端部Tを有するとともに最先端部Tから喫水線LLまでの領域に渡って船尾部2の方向に後傾するように延長された下部船首プロファイル42aと、喫水線LLより上方の領域で少なくとも船尾部2の方向に後傾するように延長された形状を含む上部船首プロファイル42bと、を有し、船首部1の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状5は、喫水線LLより下方の領域で内側に傾斜した負のフレア角θを有する。なお、喫水線LLは、満載喫水線を意味している。
【0083】
すなわち、図12(c)に示した船舶3は、船首部1に上述した本発明の第六実施形態に係る船首形状を適用したものである。もちろん、船首形状として、上述した第七実施形態〜第十実施形態に係る船首形状を適宜選択して適用することもできる。なお、他の構成については、図12(a)に示した船舶3と同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0084】
上述した本発明に係る船舶3によれば、船首部1の先端における波の跳ね返し量を低減することができるとともに、船首部1の先端における風の流れをスムースにすることができ、波浪抵抗及び風圧抵抗の影響を同時に低減させることができる。また、波浪抵抗及び風圧抵抗を低減することにより、必要馬力の低減や燃費の向上を図ることもできる。
【0085】
本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した本発明に係る船首形状の第一実施形態〜第十実施形態を適宜組み合わせて適用してもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0086】
1…船首部
2…船尾部
3…船舶
4…船首プロファイル
4a,42a…下部船首プロファイル
4b,42b…上部船首プロファイル
5,5a,5b,5c,5d,5e…船体横切面形状
6…水平断面形状
6a,6b,6c,6d,6e,6f,6g…水平断面形状
7…整流板
8…バルバスバウ
9…コンテナ
10…上部構造物
11…船首楼
12…波除部材
41…センター船首プロファイル
42…サイド船首プロファイル
51…尖端部
56,56a,56b,56c,56d,56e…船体横切面形状
57,58…船体横切面形状
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の船首形状及び船舶に関し、特に、波浪抵抗及び風圧抵抗の影響を低減させる船首形状及び該船首形状を有する船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水上を航行する船舶は、波や風に曝されるため、船体が受ける波浪抵抗及び風圧抵抗により、必要馬力が大きくなり、燃費も悪化する傾向にある。特に、タンカー、バルクキャリア等の肥大船や船首部フレアの大きいコンテナ船等では、波浪抵抗が大きくなりやすい。また、甲板上に操舵室や居住区を有する船舶では、風圧抵抗が大きくなりやすい。そこで、これらの抵抗を低減するために種々の方法が既に提案されている(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、満載喫水線面積よりも狭小な暴露甲板面積をもつように形成した船首形状が記載されており、かかる構成により、船首形状が水線下では肥大した形状であっても、水線上において痩型の形状をしているため、波の破砕を少なくすることができ、波浪抵抗を低減できる旨が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、船底から前方に張り出し、喫水線より上方の船首プロファイルを後傾させ、上部に波除部を配置した船首形状が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、監視装置で船首前方又は舷側の視界を確保しつつ、船橋の高さを低くしたり、船橋ウイングの船体幅方向長さを減少したり、船橋ウイングを設けないことにより、風圧抵抗を減少させるようにした船舶が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−149884号公報
【特許文献2】国際公開第2006/096066号
【特許文献3】特開2009−241902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1乃至特許文献3に記載された船首形状又は船舶は、波浪抵抗と風圧抵抗とを同時に低減させる形状にはなっていない。
【0008】
例えば、特許文献1に記載の船首形状では、船首先端部が狭小に形成され、後方に向かって船幅まで拡大するように形成されているため、側面及び正面からの風を受けやすく、風圧抵抗が大きくなるという問題があった。特に、横風が船首プロファイルを回り込む際には、気流の剥離が起こり、渦流が生じて風圧抵抗が大きくなりやすい。さらに、かかる船首形状では、船首プロファイルの傾斜角が前傾していることから、喫水線近傍の船首先端部において波の抵抗を受けやすく、波浪抵抗の低減効果が少ないという問題もあった。
【0009】
また、特許文献2に記載の船首形状では、船首上部に波除部が形成されていることから、この波除部の部分が風を受けやすく、風圧抵抗が大きくなってしまうという問題があった。特に、波除部の上端部付近では、風が波除部を乗り越える際に、気流の剥離が起こり、渦流が生じて風圧抵抗が大きくなりやすい。さらに、かかる船首形状では、船首プロファイルの最先端部が喫水線より上方に配置されており、船首プロファイルの傾斜角が少なからず前傾に形成されていることから(例えば、特許文献2の図1参照)、喫水線近傍の船首先端部において波の抵抗を受けやすく、波浪抵抗の低減効果が少ないという問題があった。加えて、喫水線より上方の部分で「正のフレア角(船体幅方向の外側に向かって傾斜した角度)」を有することから(例えば、特許文献2の図2参照)、喫水線近傍の船首側面部においても波の抵抗を受けやすく、波浪抵抗の低減効果が少ないという問題があった。
【0010】
また、特許文献3に記載の船舶では、甲板上の上部構造物による風圧抵抗を低減することができたとしても、船首形状は従来のままであるため、船首部における波浪抵抗及び風圧抵抗を低減することができない、という問題があった。
【0011】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、波浪抵抗及び風圧抵抗の影響を同時に低減させることができる船首形状及び該船首形状を有する船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、船体の前端部分を構成する船首部と、船体の後端部分を構成する船尾部と、を有する船舶の船首形状であって、前記船首部の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイルは、喫水線より下方の領域で最先端部を有する下部船首プロファイルと、前記喫水線より上方の領域に渡って前記船尾部の方向に後傾する上部船首プロファイルと、を有し、前記船首部の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状は、前記喫水線より上方で内側に傾斜した負のフレア角を有する、ことを特徴とする船首形状が提供される。なお、本発明において「船首部」とは、船体中央部に形成された平行部より前方の部分を意味する。
【0013】
また、本発明によれば、船体の前端部分を構成する船首部と、船体の後端部分を構成する船尾部と、を有する船舶であって、前記船首部の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイルは、喫水線より下方の領域で最先端部を有する下部船首プロファイルと、前記喫水線より上方の領域に渡って前記船尾部の方向に後傾する上部船首プロファイルと、を有し、前記船首部の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状は、前記喫水線より上方で内側に傾斜した負のフレア角を有する船首形状を有する、ことを特徴とする船舶が提供される。
【0014】
上述した船首形状及び船舶において、前記上部船首プロファイル及び前記船体横切面形状は、上方に凸な形状を有していてもよい。さらに、前記上部船首プロファイルは、前記船尾部の方向に向かって曲率が大きくなるように形成されていてもよい。
【0015】
また、前記船首部の水平方向断面の外形を構成する水平断面形状は、喫水線より上方の領域において前方に凸な形状を有していてもよい。
【0016】
また、前記上部船首プロファイルを有する前記船体横切面形状は、前記上部船首プロファイルの部分が尖端部を構成していてもよい。
【0017】
また、前記船首部の側面に前記船尾方向に延設された整流板を有していてもよい。また、前記喫水線は、例えば、バラスト喫水線から満載喫水線までの間に設定される。また、前記下部船首プロファイルは、バルバスバウを含む又は前記上部船首プロファイルと連続した曲線を有してもよい。
【0018】
また、前記船首形状及び前記船舶は、前記船首部の上部の少なくとも一部を覆うように配置された波除部材を有していてもよい。
【0019】
さらに、本発明によれば、船体の前端部分を構成する船首部と、船体の後端部分を構成する船尾部と、を有する船舶の船首形状であって、前記船首部の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイルは、前記船体の軸心部におけるセンター船首プロファイルが、喫水線より下方の領域で最先端部を有するとともに該最先端部から前記船体の甲板までの領域に渡って前記最先端部から垂直に延長された形状を有し、前記船体の両側部におけるサイド船首プロファイルが、前記喫水線より下方の領域で最先端部を有するとともに該最先端部から前記喫水線までの領域に渡って前記船尾部の方向に後傾するように延長された下部船首プロファイルと、前記喫水線より上方の領域で少なくとも前記船尾部の方向に後傾するように延長された形状を含む上部船首プロファイルと、を有し、前記船首部の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状は、前記喫水線より下方の領域で内側に傾斜した負のフレア角を有する、ことを特徴とする船首形状が提供される。
【0020】
また、本発明によれば、船体の前端部分を構成する船首部と、船体の後端部分を構成する船尾部と、を有する船舶であって、前記船首部の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイルは、前記船体の軸心部におけるセンター船首プロファイルが、喫水線より下方の領域で最先端部を有するとともに該最先端部から前記船体の甲板までの領域に渡って前記最先端部から垂直に延長された形状を有し、前記船体の両側部におけるサイド船首プロファイルが、前記喫水線より下方の領域で最先端部を有するとともに該最先端部から前記喫水線までの領域に渡って前記船尾部の方向に後傾するように延長された下部船首プロファイルと、前記喫水線より上方の領域で少なくとも前記船尾部の方向に後傾するように延長された形状を含む上部船首プロファイルと、を有し、前記船首部の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状は、前記喫水線より下方の領域で内側に傾斜した負のフレア角を有する、ことを特徴とする船舶が提供される。
【0021】
上述した段落0019の船首形状及び段落0020の船舶において、前記上部船首プロファイルは、前記船尾部の方向に頂点を有し、該頂点より上方の領域に渡って垂直に又は前記船首部の方向に前傾するように延長されていてもよい。
【0022】
また、前記船体横切面形状は、前記喫水線より上方の領域で、内側に傾斜した負のフレア角、0°のフレア角又は外側に傾斜した正のフレア角を有していてもよい。
【0023】
また、前記喫水線は、例えば、満載喫水線に設定される。また、前記船首形状及び前記船舶は、前記船首部の上部の少なくとも一部を覆うように配置された波除部材を有していてもよい。
【発明の効果】
【0024】
上述した本発明に係る船首形状及び船舶によれば、船首プロファイルを喫水線より下方の領域で最先端部を有するとともに喫水線より上方の全領域に渡って後傾する形状に構成し、船体中央部の平行部より前方における船体横切面形状を喫水線より上方で負のフレア角を有する形状に構成したことにより、船首形状の全体を滑らかな曲面形状に形成することができ、波浪抵抗及び風圧抵抗の影響を同時に低減させることができる。また、波浪抵抗及び風圧抵抗を低減することにより、必要馬力の低減や燃費の向上を図ることもできる。
【0025】
また、上述した本発明に係る船首形状及び船舶によれば、センター船首プロファイルを最先端部から甲板まで垂直に構成し、サイド船首プロファイルを少なくとも最先端部から喫水線までの領域に渡って後傾する形状に構成し、船体中央部の平行部より前方における船体横切面形状を喫水線より下方で負のフレア角を有する形状に構成したことにより、船首部の先端における波の跳ね返し量を低減することができるとともに、船首部の先端における風の流れをスムースにすることができ、波浪抵抗及び風圧抵抗の影響を同時に低減させることができる。また、波浪抵抗及び風圧抵抗を低減することにより、必要馬力の低減や燃費の向上を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】船舶の船首部の側面線図であり、(a)は第一実施形態、(b)は従来技術、を示している。
【図2】船舶の船首部の正面線図であり、(a)は第一実施形態、(b)は従来技術、を示している。
【図3】船舶の船首部の水線面図であり、(a)は第一実施形態、(b)は従来技術、を示している。
【図4】第一実施形態に係る船首部における風の流れを示す図であり、(a)は船首前面からの風の流れを示す側面図、(b)は船首側面からの風の流れを示す平面図、(c)は船首側面からの風の流れを示す正面図、を示している。
【図5】本発明に係る船首部の他の実施形態を示す図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態の側面図、(c)は第三実施形態の平面図、(d)は第三実施形態の変形例、を示している。
【図6】本発明に係る船首部の他の実施形態を示す図であり、(a)は第四実施形態、(b)は第五実施形態、を示している。
【図7】本発明に係る船首部の第六実施形態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面線図、(c)は正面線図、である。
【図8】本発明に係る船首部の第七実施形態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面線図、(c)は正面線図、である。
【図9】第一実施形態、第六実施形態及び第七実施形態に係る船首形状の変遷を示す正面線図である。
【図10】本発明に係る船首部の他の実施形態を示す図であり、(a)は第八実施形態、(b)は第九実施形態、を示している。
【図11】本発明に係る船首部の第十実施形態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は第一変形例、(d)は第二変形例、を示している。
【図12】本発明に係る船舶の実施形態を示す図であり、(a)は第一実施形態の船首形状を採用した船舶の概略全体構成図、(b)は図12(a)の変形例、(c)は第六実施形態の船首形状を採用した船舶の概略全体構成図、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る船首形状の第一実施形態について、図1乃至図4を用いて説明する。ここで、図1は、船舶の船首部の側面線図であり、(a)は第一実施形態、(b)は従来技術、を示している。図2は、船舶の船首部の正面線図であり、(a)は第一実施形態、(b)は従来技術、を示している。図3は、船舶の船首部の水線面図であり、(a)は第一実施形態、(b)は従来技術、を示している。図4は、第一実施形態に係る船首部における風の流れを示す図であり、(a)は船首前面からの風の流れを示す側面図、(b)は船首側面からの風の流れを示す平面図、(c)は船首側面からの風の流れを示す正面図、を示している。
【0028】
なお、側面線図とは、船舶の幅方向(左右方向)に一定の間隔で船体を切断し、格子枠を基準に断面形状を重ねて表示して二次元化したものである。また、正面線図とは、船首部から船尾部に向かって一定の間隔で船体を切断し、格子枠を基準に断面形状を重ねて表示して二次元化したものである。また、水線面図とは、船舶の高さ方向(上下方向)に一定の間隔で船体を切断し、格子枠を基準に断面形状を重ねて表示して二次元化したものである。
【0029】
本発明の第一実施形態に係る船首形状は、図1(a)、図2(a)及び図3(a)に示したように、船体の前端部分を構成する船首部1と、船体の後端部分を構成する船尾部2と、を有する船舶3の船首形状であって、船首部1の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイル4は、喫水線LLより下方の領域で最先端部Tを有する下部船首プロファイル4aと、喫水線LLより上方の領域に渡って船尾部2の方向に後傾する上部船首プロファイル4bと、を有し、船首部1の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状5は、喫水線LLより上方で内側に傾斜した負のフレア角θを有する。なお、本実施形態において「船首部」とは、船体中央部に形成された平行部より前方の部分を意味する。
【0030】
前記喫水線LLは、満載喫水線を示しているが、一点鎖線で示したバラスト喫水線BLであってもよいし、バラスト喫水線BLから満載喫水線LLまでの間に設定される任意の喫水線であってもよい。なお、バラスト喫水線BLは最小喫水線、満載喫水線は最大喫水線と表現することもできる。
【0031】
前記船首プロファイル4は、図1(a)に示したように、船首部1の船体中心線に沿った外形を構成する断面形状である。かかる船首プロファイル4は、喫水線LLから下側の下部船首プロファイル4aと、喫水線LLから上側の上部船首プロファイル4bと、により構成される。なお、図中の破線部は、甲板Dを示している。
【0032】
下部船首プロファイル4aは、船底Bから前方に向かって張り出した形状を有し、船首部1の最先端部Tが配置される。また、最先端部Tから喫水線LLの間における下部船首プロファイル4aは、上方に凸な形状を有する。このように、下部船首プロファイル4aに最先端部Tを配置することにより、船首部1の最先端部Tが喫水線LLよりも上方に露出し難くすることができ、最先端部Tよりも下方の部分が喫水線LL近傍に浮上し難くなり、波浪抵抗の発生を抑制することができる。なお、最先端部Tは、頂点であってもよいし、直線部の一部として線状に配置されてもよい。
【0033】
上部船首プロファイル4bは、全体が後傾する形状を有し、上方に凸な形状を有する。また、下部船首プロファイル4aと上部船首プロファイル4bとは、連続した曲線を有するように接続されている。したがって、船首プロファイル4は、最先端部Tから上方の部分において、船尾部2の方向に後傾するとともに、上方に凸な形状を有することとなる。すなわち、船首プロファイル4の傾斜角φは、後傾する角度を有することとなる。なお、上部船首プロファイル4bは、船尾部2の方向に後傾していれば、必ずしも凸形状を有していなくてもよく、直線状に形成されていてもよい。
【0034】
また、図1(a)の側面線図に示したように、船首部1の幅方向の各断面形状は、上述した船首プロファイル4に近似した形状に構成される。かかる構成により、船首部1は、全体が前方に張り出した滑らかな略曲面状に形成される。なお、「略曲面状」とは、部分的に平面部を有していてもよいという意味である。
【0035】
一方、従来技術における典型的な船首形状では、図1(b)に示したように、船首部101の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイル104は、喫水線LLより下方の領域でバルバスバウ(球状船首)104cを有する下部船首プロファイル104aと、喫水線LLより上方の領域で前傾する上部船首プロファイル104bと、を有する。
【0036】
かかる従来技術の船首形状によれば、喫水線LLに対する船首プロファイル104の傾斜角φ´が鉛直又は前傾していることから、喫水線LL近傍における波の抵抗を受けやすく、波浪抵抗が大きくなる。また、上部船首プロファイル104bが前傾していることから、船体前面からの風を受けやすく、風圧抵抗が大きくなる。特に、船首部101の上端部付近では、風が船首部101を乗り越える際に、気流の剥離が起こり、渦流が生じて風圧抵抗が大きくなりやすい。
【0037】
それに対して、上述した第一実施形態によれば、喫水線LLに対する船首プロファイル4の傾斜角φが後傾していることから、喫水線LL近傍における波の抵抗を受け難く、波浪抵抗を低減することができる。また、上部船首プロファイル4bが上方に凸な形状に形成されていることから、図4(a)に示したように、船体前面からの風を後方に受け流すことができ、風圧抵抗を低減することができる。また、風が船首部1を乗り越える際に、船首部1の上端部付近に生じる気流の剥離を低減することができる。したがって、気流の剥離による渦流の発生を低減することができ、風圧抵抗を小さくすることができる。
【0038】
前記船体横切面形状5は、船首部1の船体幅方向断面の外形を構成する断面形状である。具体的には、例えば、図2(a)に示したように、船体横切面形状5は、正面線図により表示され、断面形状ごとに船首部1の前方側から船体横切面形状5a,5b,5c,5d,・・・を含む。そして、各船体横切面形状5は、船体中央部の平行部より前方において喫水線LLより上方で内側に傾斜した負のフレア角θを有する。ここで、「フレア角」とは、船側外板の傾斜角を意味する。また、「負のフレア角を有する」とは、船側外板が船体幅方向の内側に向かって傾斜していることを意味する。
【0039】
また、各船体横切面形状5は、喫水線LLより上方の領域において、上方に凸な形状を有する。したがって、かかる船体横切面形状5の形状から、船首部1は、喫水線LLより下方の領域で前方に張り出し、船体後方に向かって徐々に面積が拡大する形状を有している。
【0040】
一方、従来技術における典型的な船首形状は、図2(b)に示したように、断面形状ごとに船首部101の前方側から船体横切面形状105a,105b,105c,105d,・・・を含む船体横切面形状105により構成されている。かかる船首部101は、喫水線LLより上方の領域において外側に傾斜した正のフレア角θ´を有する。
【0041】
かかる従来技術の船首形状によれば、喫水線LLより上方の領域において正のフレア角θ´を有することから、船殻が外側に張り出しており、この部分で波の抵抗を受けやすく、波浪抵抗が大きくなる。また、同様に、正のフレア角θ´を有する部分で、船体側面からの風を受けやすく、風圧抵抗が大きくなる。
【0042】
それに対して、上述した第一実施形態によれば、船体横切面形状5が負のフレア角θを有していることから、受けた波を船体に沿って受け流しやすくすることができ、波浪抵抗を低減することができる。また、同様に、船体側面からの風を船体に沿って受け流しやすくすることができ、風圧抵抗を低減することができる。また、風が船首部101を乗り越える際に、船首部1の上端部付近に生じる気流の剥離を低減することができる。したがって、気流の剥離による渦流の発生を低減することができ、風圧抵抗を小さくすることができる。
【0043】
また、図2(a)において、船体中心に一点鎖線で示したラインは、船首プロファイル4(下部船首プロファイル4a及び上部船首プロファイル4b)を示している。そして、船首プロファイル4を有する船体横切面形状5a,5b,5cは、船首プロファイル4の部分が尖端部51を構成している。すなわち、船首部1には、船首プロファイル4に沿って尖った角部が形成されており、船体中心に沿ってピークとなる山形部が形成されている。かかる構成により、船首部1の張り出した部分に打ち上げられた波を船体横切面形状5に沿って両側に落下しやすくすることができ、船首部1に沿って船体後方に駆け上がる波を低減し、船体後方の上部構造物や甲板への波の打ち込みを低減することができる。なお、尖端部51は、船首プロファイル4を有する全ての船体横切面形状5に形成されている必要はなく、船体上方に向かって徐々に消滅するようにしてもよいし、船首部1の最先端部よりも下方の領域は必ずしも尖端部51を有している必要はない。
【0044】
上述した第一実施形態の船首形状は、図3に示したように、船首部1の水平方向断面の外形を構成する複数の水平断面形状6を有する。かかる水平断面形状6は、例えば、図3(a)に示したように、水線面図により表示され、断面形状ごとに船首部1の船底B側から複数の水平断面形状6a,6b,6c,6d,6e,6f,6gを含む。ここで、水平断面形状6a,6b,6c,6dは、喫水線LLより下方の領域における水平断面形状6を構成し、水平断面形状6e,6f,6gは、喫水線LLより上方の領域における水平断面形状6を構成している。そして、水平断面形状6は、喫水線LLより上方の領域(すなわち、水平断面形状6e〜6g)において前方に凸な形状を有する。また、水平断面形状6は、水平断面形状6cで最外形を構成し、水平断面形状6d,6e,6f,6gの順に、徐々に船体内側方向に縮小するように構成されている。したがって、喫水線LLより上方の船首部1は、船体外側方向に張り出した部分を有しておらず、狭小に形成された先端部も有していない。
【0045】
一方、従来技術における典型的な船首形状は、図3(b)に示したように、断面形状ごとに船首部101の船底B側から複数の水平断面形状106a,106b,106c,106d,106e,106f,106gを含む水平断面形状106により構成されている。そして、水平断面形状106は、水平断面形状106gで最外形を構成している。したがって、喫水線LLより上方の船首部101は、船体外側方向に張り出した形状を有しており、この部分で波浪抵抗及び風圧抵抗を受けやすい。
【0046】
それに対して、上述した第一実施形態によれば、喫水線LLより上方の船首部1において、船体外側に張り出した部分を有していないため、波及び風の影響を受け難く、波浪抵抗及び風圧抵抗を低減することができる。また、喫水線LLより上方の水平断面形状6(例えば、上端部付近の水平断面形状6f,6g)が狭小に形成されていないことから、側面及び正面からの風を受け流しやすくすることができ、風圧抵抗を低減することができる。例えば、図4(b)に示したように、本実施形態では、特許文献1のような狭小の船首先端部を有しておらず、前方に凸な形状を有することから、横風を受け流しやすい。また、図4(c)に示したように、横風が船首プロファイル4の上部を超えて反対側に回り込む際に生じる気流の剥離を低減することもできる。したがって、気流の剥離による渦流の発生を低減することができ、風圧抵抗をより小さくすることができる。
【0047】
続いて、本発明に係る船首部1の他の実施形態について説明する。ここで、図5は、本発明に係る船首部の他の実施形態を示す図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態の側面図、(c)は第三実施形態の平面図、(d)は第三実施形態の変形例、を示している。また、図6は、本発明に係る船首部の他の実施形態を示す図であり、(a)は第四実施形態、(b)は第五実施形態、を示している。なお、各図において、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0048】
図5(a)に示した第二実施形態は、最先端部Tより上方の船首プロファイル4を有する船体横切面形状5(例えば、船体横切面形状5a,5b,5c)において尖端部を形成しないように構成したものである。このように、船首プロファイル4が尖端部を構成していない場合には、船首部1の先端部は全体として前方に張り出した曲面形状に構成される。かかる第二実施形態の構成によっても、上述した第一実施形態と実質的に同様の効果を奏する。
【0049】
図5(b)に示した第三実施形態は、船首部1の側面に船尾方向に延設された整流板7を配置したものである。かかる整流板7は、喫水線LLより上方の部分、好ましくは甲板Dの近傍に配置される。喫水線LLに近い部分に配置すると波浪抵抗を増加させる場合があるためである。また、整流板7は、図示したように、前方側が高くて後方側が低くなるように傾斜させて配置することが好ましい。このように、整流板7を傾斜させることによって、効果的に水流を後方に受け流すことができる。また、整流板7の船体から突出した長さ(幅)は、船体側面に沿って流れる水流を案内できる程度の幅であればよい。
【0050】
さらに、整流板7は、図5(c)に示したように、両側面部と先端部とを一枚の整流板7により構成してもよい。このように、船体の先端部にも整流板7を配置することにより、波浪抵抗や風圧抵抗の低減効果を多少犠牲にすることとなるが、船首部1を駆け上がる水流を効果的に抑制することができる。また、整流板7は、船首部1の上端部に形成された波除部と異なり、船首プロファイル4の中間部に配置されていることから、前記波除部のような気流の大規模な剥離や渦流の生成を生じないことから、一定の風圧抵抗の低減効果を得ることができる。
【0051】
また、整流板7は、図5(d)の変形例に示したように、先端部を除外して両側面部にそれぞれ配置された一対の整流板7,7により構成してもよい。かかる構成によれば、船体前面からの風圧抵抗の増加を抑制しつつ、船首部1の側面部における水流を効果的に後方に受け流すことができる。
【0052】
図6(a)に示した第四実施形態は、上部船首プロファイル4bを船尾部2の方向に向かって曲率が大きくなるように形成したものである。かかる構成により、効果的に風圧抵抗を低減することができる。
【0053】
図6(b)に示した第五実施形態は、下部船首プロファイル4aにバルバスバウ8を形成したものである。このように、本発明に係る船首形状は、バルバスバウ8を有する船舶(例えば、コンテナ船等)にも適用することができ、上述した第一実施形態と実質的に同様の効果を奏する。なお、タンカーやバルクキャリア等の低速船の場合には、バルバスバウ8の効果が小さいため、第一実施形態のように、船首部1に必ずしもバルバスバウ8を配置する必要はない。
【0054】
続いて、本発明に係る船首形状の他の実施形態について、さらに説明する。ここで、図7は、本発明に係る船首部の第六実施形態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面線図、(c)は正面線図、である。図8は、本発明に係る船首部の第七実施形態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面線図、(c)は正面線図、である。図9は、第一実施形態、第六実施形態及び第七実施形態に係る船首形状の変遷を示す正面線図である。図10は、本発明に係る船首部の他の実施形態を示す図であり、(a)は第八実施形態、(b)は第九実施形態、を示している。図11は、本発明に係る船首部の第十実施形態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は第一変形例、(d)は第二変形例、を示している。なお、各図において、上述した船首形状の第一〜第五実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0055】
図7、図8及び図10に記載した第六〜第九実施形態は、船体の軸心部におけるセンター船首プロファイル41を略垂直に形成したものである。具体的には、船首部1の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイル4は、船体の軸心部におけるセンター船首プロファイル41が、喫水線LLより下方の領域で最先端部Tを有するとともに最先端部Tから船体の甲板Dまでの領域に渡って最先端部Tから垂直に延長された形状を有し、船体の両側部におけるサイド船首プロファイル42が、喫水線LLより下方の領域で最先端部Tを有するとともに最先端部Tから喫水線LLまでの領域に渡って船尾部2の方向に後傾するように延長された下部船首プロファイル42aと、喫水線LLより上方の領域で少なくとも船尾部2の方向に後傾するように延長された形状を含む上部船首プロファイル42bと、を有し、船首部1の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状56は、喫水線LLより下方の領域で内側に傾斜した負のフレア角θを有する。なお、図7(c)及び図8(c)に示した正面線図は、船体の半分のみを図示している。
【0056】
図示した喫水線LLは、満載喫水線を示しており、満載喫水線は最大喫水線と表現することもできる。ただし、喫水線LLは、満載喫水線や最大喫水線に限定されるものではなく、これよりも低い喫水線であってもよい。
【0057】
第六実施形態は、図7(a)及び(b)に示したように、船体の中心線上のセンター船首プロファイル41を最先端部Tから垂直に形成している。ここで、船体の軸心部とは、少なくとも船体の中心線を含み、中心線の近傍を含むように船体幅方向に一定の幅を有していてもよい趣旨である。このように、船首部1の先端に真っ直ぐな尖端部を形成することにより、水切り及び風切りをよくすることができる。なお、船首部1に船首楼が形成されている場合には、船首楼の部分まで、センター船首プロファイル41を垂直に形成してもよいし、船首楼の部分だけ前傾するように形成してもよい。
【0058】
また、センター船首プロファイル41以外の部分における船首プロファイル4、すなわち、サイド船首プロファイル42は、図7(b)に示したように、下部船首プロファイル42a及び上部船首プロファイル42bを有する。
【0059】
下部船首プロファイル42aは、船底Bから前方に向かって張り出した形状に形成され、最先端部Tを有する。そして、下部船首プロファイル42aは、最先端部Tから喫水線LLまでの領域に渡って船尾部2の方向に後傾するように形成されている。ここでは、略直線上に後傾する場合を図示しているが、第一実施形態のように曲線的に後傾させるようにしてもよい。なお、最先端部Tは、頂点であってもよいし、直線部の一部として線状に配置されてもよい。
【0060】
上部船首プロファイル42bは、全体が後傾する形状を有し、下部船首プロファイル42aよりも傾きが大きくなるように形成されている。上部船首プロファイル42bは、主として風圧を受ける部分であるため、風を後方に受け流すように滑らかな曲線状に形成されることが好ましい。また、下部船首プロファイル42aと上部船首プロファイル42bとは、連続した曲線を有するように接続されている。
【0061】
また、船体横切面形状56は、図7(c)に示したように、正面線図により表示され、断面形状ごとに船首部1の前方側から船体横切面形状56a,56b,56c,56d,・・・を含む。そして、各船体横切面形状56は、船体中央部の平行部より前方において喫水線LLより下方で内側に傾斜した負のフレア角θを有する。さらに、第六実施形態の船体横切面形状56は、喫水線LLより上方の領域においても内側に傾斜した負のフレア角θを有するように形成されている。
【0062】
すなわち、第六実施形態に係る船首形状は、第一実施形態におけるセンター船首プロファイル41を略垂直に形成したものであり、かかる形状の変化に合わせてサイド船首プロファイル42及び船体横切面形状56の形状を調整したものといえる。
【0063】
かかる構成によれば、船首部1の先端における波の跳ね返し量を低減することができるとともに、船首部1の先端における風の流れをスムースにすることができ、波浪抵抗及び風圧抵抗の影響を同時に低減させることができる。また、波浪抵抗及び風圧抵抗を低減することにより、必要馬力の低減や燃費の向上を図ることもできる。
【0064】
第七実施形態は、図8(a)及び(b)に示したように、第六実施形態と同様に、船体の中心線上のセンター船首プロファイル41を最先端部Tから垂直に形成している。また、図8(b)及び(c)に示したように、第七実施形態は、サイド船首プロファイル42の下部船首プロファイル42aの形状及び船体横切面形状57の喫水線LLより下方の形状も、第六実施形態と同様の形状に構成されている。なお、船体横切面形状57は、図8(c)に示したように、断面形状ごとに船首部1の前方側から船体横切面形状57a,57b,57c,57d,・・・を含む。
【0065】
さらに、図8(b)に示したように、第七実施形態の上部船首プロファイル42bは、船尾部2の方向に頂点Uを有し、頂点Uより上方の領域に渡って船首部1の方向に前傾するように延長されている。なお、喫水線LLから頂点Uまでの領域における上部船首プロファイル42bは、船尾部2の方向に後傾するように延長された形状を有し、前傾する上部船首プロファイル42bと連続した曲線を有するように接続されている。
【0066】
また、図8(c)に示したように、第七実施形態の船体横切面形状57は、喫水線LLより上方の領域で、外側に傾斜した正のフレア角θを有する。このように、船首部1の喫水線LLより上方の狭い領域で小さな正のフレア角θを設けることにより、船首部1における海水の打ち込みを抑制することができる。特に、上部船首プロファイル42bが、喫水線LLより上方の領域で少なくとも船尾部2の方向に後傾するように延長された形状を含みつつ、頂点Uより上方の領域に渡って船首部1の方向に前傾するように延長されることによって、フレアによる波浪抵抗の増加を抑制しつつ海水の打ち込みを抑制することができる。
【0067】
なお、第七実施形態に係る船首形状は、船体横切面形状57の喫水線LLより上方の領域以外の部分においては、第六実施形態と同様の形状に構成されていることから、第六実施形態と実質的に同様の効果を奏する。
【0068】
ここで、第一実施形態、第六実施形態及び第七実施形態に係る船首形状の変遷について、図9に示した正面線図を参照しつつ説明する。図9において、点線は第一実施形態の船体横切面形状5、一点鎖線は第六実施形態の船体横切面形状56、実線は第七実施形態の船体横切面形状57を図示している。なお、図9に示した各正面線図は、船体の半分のみを図示している。
【0069】
図9に示したように、第一実施形態、第六実施形態及び第七実施形態に係る船体横切面形状5,56,57は、喫水線LLより下方の領域において、内側に傾斜した負のフレア角θを有する点において共通している。また、第一実施形態の船体横切面形状5は、船首形状が船体の中心部において前方に向かって張り出した形状を有しているのに対し、第六実施形態の船体横切面形状56及び第七実施形態の船体横切面形状57は、船首形状が船体の軸心部において垂直な形状を有している点において相違している。
【0070】
そして、第一実施形態及び第六実施形態に係る船体横切面形状5,56は、喫水線LLより上方の領域において、内側に傾斜した負のフレア角θを有する点において共通している。一方、第七実施形態に係る船体横切面形状57は、喫水線LLより上方の領域において、外側に傾斜した正のフレア角θを有する点において他の船体横切面形状5,56と相違している。
【0071】
本発明に係る船首形状は、図示した第一実施形態、第六実施形態及び第七実施形態に限定されるものではなく、例えば、第一実施形態に係る船体横切面形状5から第六実施形態に係る船体横切面形状56を経由して第七実施形態に係る船体横切面形状57に至るように変化する範囲内において、任意の形状に構成することができる。
【0072】
ここで、図10(a)に示した第八実施形態に係る船首形状では、船体横切面形状58が、喫水線LLより上方の領域で、0°のフレア角θを有する。すなわち、第八実施形態に係る船首形状は、第六実施形態の船首形状から第七実施形態の船首形状に変化する途中の一形態である。かかる形状であっても、第六実施形態及び第七実施形態と同様の効果を奏する。なお、具体的には図示しないが、図10(a)を参酌すれば、第八実施形態における上部船首プロファイル42bは、船尾部2の方向に頂点Uを有し、頂点Uより上方の領域に渡って垂直に延長されているものといえる。
【0073】
また、図10(b)に示した第九実施形態に係る船首形状は、第六実施形態に係る船首形状において、センター船首プロファイル41の喫水線LLよりも上方の領域を船尾部2の方向に後傾させたものである(傾斜角φ)。かかる第九実施形態に係る船首形状は、第一実施形態の船首形状から第六実施形態の船首形状に変化する途中の一形態である。すなわち、第九実施形態に係る船首形状は、第一実施形態に係る船首形状において、喫水線LLよりも下方の領域を最先端部Tから垂直に延長した形状を有するものということもできる。かかる形状であっても、第一実施形態及び第六実施形態と同様の効果を奏する。
【0074】
続いて、図11を参照しつつ、本発明に係る船首部1の第十実施形態について説明する。図11(a)及び(b)に示した第十実施形態は、船首部1の上部の少なくとも一部を覆うように配置された波除部材12を有する。かかる波除部材12は、船首部1の先端部分における甲板Dの上部を覆うように配置され、ボンネット状又はフード状に形成されている。このように、船首部1の上部に波除部材12を配置することにより、船首部1における海水の打ち込みを抑制することができる。図11(a)及び(b)では、第六実施形態に係る船首部1の上部に波除部材12を配置した場合を図示したが、他の実施形態に係る船首部1の上部に波除部材12を配置するようにしてもよい。なお、波除部材12は、船首部1の上部の甲板D上に固定するようにしてもよいし、甲板Dの縁部を構成する船殻や船首楼に溶接するようにしてよい。
【0075】
また、波除部材12は、図11(c)に示した第一変形例のように、船首部1の先端部分の上部における甲板Dの縁部に沿って部分的に配置するようにしてもよい。さらに、波除部材12は、図11(d)に示した第二変形例のように、後端側が先端側よりも高くなるように傾斜させてもよい。ここでは、波除部材12を直線的に傾斜させた場合を図示したが、後端側が先端側よりも高くなるように曲線的に形成するようにしてもよい。かかる第二変形によれば、カウル状又はフェアリング状に波除部材12を配置することができ、船首部1における海水の打ち込みを抑制することができるとともに、風除けとしても機能させることができる。
【0076】
最後に、本発明に係る船舶の実施形態について説明する。ここで、図12は、本発明に係る船舶の実施形態を示す図であり、(a)は第一実施形態の船首形状を採用した船舶の概略全体構成図、(b)は図12(a)の変形例、(c)は第六実施形態の船首形状を採用した船舶の概略全体構成図、を示している。なお、各図において、上述した船首形状の実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0077】
図12(a)に示した船舶は、船体の前端部分を構成する船首部1と、船体の後端部分を構成する船尾部2と、を有する船舶3であって、船首部1の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイル4は、喫水線LLより下方の領域で最先端部Tを有する下部船首プロファイル4aと、喫水線LLより上方の領域に渡って船尾部2の方向に後傾する上部船首プロファイル4bと、を有し、船首部1の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状5は、喫水線LLより上方で内側に傾斜した負のフレア角θを有する。なお、本実施形態において「船首部」とは、船体中央部に形成された平行部より前方の部分を意味する。
【0078】
すなわち、図12(a)に示した船舶3は、船首部1に上述した本発明の第一実施形態に係る船首形状を適用したものである。もちろん、船首形状として、上述した第二実施形態〜第五実施形態に係る船首形状を適宜選択して適用することもできる。
【0079】
また、図示した船舶3は、甲板上にデッキクレーン9や操舵室や居住区等の上部構造物10等を有するバルクキャリアである。もちろん、バルクキャリア以外の船舶、例えば、タンカー、コンテナ船、フェリー等であってもよい。特に、本発明は、船首部1が幅広に形成された肥大船に適用すると効果的である。
【0080】
上述した本発明に係る船舶3によれば、船首プロファイル4を喫水線LLより下方の領域で最先端部Tを有するとともに喫水線LLより上方の領域に渡って後傾する形状に構成し、船体横切面形状5を船体中央部の平行部より前方において喫水線LLより上方で負のフレア角θを有する形状に構成したことにより、船首形状の全体を前方に張り出した滑らかな曲面形状に形成することができ、波浪抵抗及び風圧抵抗の影響を同時に低減させることができる。また、波浪抵抗及び風圧抵抗を低減することにより、必要馬力の低減や燃費の向上を図ることもできる。
【0081】
図12(b)に示した変形例は、船首部1の上端部に船首楼11が形成されたものである。このように、船首楼11が配置された船舶3であっても、その部分も上述した船首プロファイル4や船体横切面形状5の条件を満足するように形成される。したがって、図12(a)に示した実施形態と同様の効果を奏する。また、船首楼11を形成することにより、船舶3の耐波性を高めることができる。
【0082】
図12(c)に示した船舶3は、船体の前端部分を構成する船首部1と、船体の後端部分を構成する船尾部2と、を有する船舶であって、船首部1の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイル4は、船体の軸心部におけるセンター船首プロファイル41が、喫水線LLより下方の領域で最先端部Tを有するとともに最先端部Tから船体の甲板Dまでの領域に渡って最先端部Tから垂直に延長された形状を有し、船体の両側部におけるサイド船首プロファイル42が、喫水線LLより下方の領域で最先端部Tを有するとともに最先端部Tから喫水線LLまでの領域に渡って船尾部2の方向に後傾するように延長された下部船首プロファイル42aと、喫水線LLより上方の領域で少なくとも船尾部2の方向に後傾するように延長された形状を含む上部船首プロファイル42bと、を有し、船首部1の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状5は、喫水線LLより下方の領域で内側に傾斜した負のフレア角θを有する。なお、喫水線LLは、満載喫水線を意味している。
【0083】
すなわち、図12(c)に示した船舶3は、船首部1に上述した本発明の第六実施形態に係る船首形状を適用したものである。もちろん、船首形状として、上述した第七実施形態〜第十実施形態に係る船首形状を適宜選択して適用することもできる。なお、他の構成については、図12(a)に示した船舶3と同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0084】
上述した本発明に係る船舶3によれば、船首部1の先端における波の跳ね返し量を低減することができるとともに、船首部1の先端における風の流れをスムースにすることができ、波浪抵抗及び風圧抵抗の影響を同時に低減させることができる。また、波浪抵抗及び風圧抵抗を低減することにより、必要馬力の低減や燃費の向上を図ることもできる。
【0085】
本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した本発明に係る船首形状の第一実施形態〜第十実施形態を適宜組み合わせて適用してもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0086】
1…船首部
2…船尾部
3…船舶
4…船首プロファイル
4a,42a…下部船首プロファイル
4b,42b…上部船首プロファイル
5,5a,5b,5c,5d,5e…船体横切面形状
6…水平断面形状
6a,6b,6c,6d,6e,6f,6g…水平断面形状
7…整流板
8…バルバスバウ
9…コンテナ
10…上部構造物
11…船首楼
12…波除部材
41…センター船首プロファイル
42…サイド船首プロファイル
51…尖端部
56,56a,56b,56c,56d,56e…船体横切面形状
57,58…船体横切面形状
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体の前端部分を構成する船首部と、船体の後端部分を構成する船尾部と、を有する船舶の船首形状であって、
前記船首部の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイルは、喫水線より下方の領域で最先端部を有する下部船首プロファイルと、喫水線より上方の領域に渡って前記船尾部の方向に後傾する上部船首プロファイルと、を有し、
前記船首部の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状は、喫水線より上方で内側に傾斜した負のフレア角を有する、
ことを特徴とする船首形状。
【請求項2】
前記上部船首プロファイル及び前記船体横切面形状は、上方に凸な形状を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の船首形状。
【請求項3】
前記上部船首プロファイルは、前記船尾部の方向に向かって曲率が大きくなるように形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の船首形状。
【請求項4】
前記船首部の水平方向断面の外形を構成する水平断面形状は、喫水線より上方の領域において前方に凸な形状を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の船首形状。
【請求項5】
前記船首プロファイルを有する前記船体横切面形状は、前記船首プロファイルの部分が尖端部を構成する、ことを特徴とする請求項1に記載の船首形状。
【請求項6】
前記船首部の側面に前記船尾方向に延設された整流板を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の船首形状。
【請求項7】
前記喫水線は、バラスト喫水線から満載喫水線までの間に設定される、ことを特徴とする請求項1に記載の船首形状。
【請求項8】
前記下部船首プロファイルは、バルバスバウを含む又は前記上部船首プロファイルと連続した曲線を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の船首形状。
【請求項9】
船体の前端部分を構成する船首部と、船体の後端部分を構成する船尾部と、を有する船舶の船首形状であって、
前記船首部の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイルは、
前記船体の軸心部におけるセンター船首プロファイルが、喫水線より下方の領域で最先端部を有するとともに該最先端部から前記船体の甲板までの領域に渡って前記最先端部から垂直に延長された形状を有し、
前記船体の両側部におけるサイド船首プロファイルが、前記喫水線より下方の領域で最先端部を有するとともに該最先端部から前記喫水線までの領域に渡って前記船尾部の方向に後傾するように延長された下部船首プロファイルと、前記喫水線より上方の領域で少なくとも前記船尾部の方向に後傾するように延長された形状を含む上部船首プロファイルと、を有し、
前記船首部の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状は、前記喫水線より下方の領域で内側に傾斜した負のフレア角を有する、
ことを特徴とする船首形状。
【請求項10】
前記上部船首プロファイルは、前記船尾部の方向に頂点を有し、該頂点より上方の領域に渡って垂直に又は前記船首部の方向に前傾するように延長されている、ことを特徴とする請求項9に記載の船首形状。
【請求項11】
前記船体横切面形状は、前記喫水線より上方の領域で、内側に傾斜した負のフレア角、0°のフレア角又は外側に傾斜した正のフレア角を有する、ことを特徴とする請求項9に記載の船首形状。
【請求項12】
前記喫水線は、満載喫水線である、ことを特徴とする請求項9に記載の船首形状。
【請求項13】
前記船首部の上部の少なくとも一部を覆うように配置された波除部材を有する、ことを特徴とする請求項1又は請求項9に記載の船首形状。
【請求項14】
船体の前端部分を構成する船首部と、船体の後端部分を構成する船尾部と、を有する船舶であって、前記船首部は、請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の船首形状を有する、ことを特徴とする船舶。
【請求項1】
船体の前端部分を構成する船首部と、船体の後端部分を構成する船尾部と、を有する船舶の船首形状であって、
前記船首部の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイルは、喫水線より下方の領域で最先端部を有する下部船首プロファイルと、喫水線より上方の領域に渡って前記船尾部の方向に後傾する上部船首プロファイルと、を有し、
前記船首部の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状は、喫水線より上方で内側に傾斜した負のフレア角を有する、
ことを特徴とする船首形状。
【請求項2】
前記上部船首プロファイル及び前記船体横切面形状は、上方に凸な形状を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の船首形状。
【請求項3】
前記上部船首プロファイルは、前記船尾部の方向に向かって曲率が大きくなるように形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の船首形状。
【請求項4】
前記船首部の水平方向断面の外形を構成する水平断面形状は、喫水線より上方の領域において前方に凸な形状を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の船首形状。
【請求項5】
前記船首プロファイルを有する前記船体横切面形状は、前記船首プロファイルの部分が尖端部を構成する、ことを特徴とする請求項1に記載の船首形状。
【請求項6】
前記船首部の側面に前記船尾方向に延設された整流板を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の船首形状。
【請求項7】
前記喫水線は、バラスト喫水線から満載喫水線までの間に設定される、ことを特徴とする請求項1に記載の船首形状。
【請求項8】
前記下部船首プロファイルは、バルバスバウを含む又は前記上部船首プロファイルと連続した曲線を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の船首形状。
【請求項9】
船体の前端部分を構成する船首部と、船体の後端部分を構成する船尾部と、を有する船舶の船首形状であって、
前記船首部の船体長さ方向断面の外形を構成する船首プロファイルは、
前記船体の軸心部におけるセンター船首プロファイルが、喫水線より下方の領域で最先端部を有するとともに該最先端部から前記船体の甲板までの領域に渡って前記最先端部から垂直に延長された形状を有し、
前記船体の両側部におけるサイド船首プロファイルが、前記喫水線より下方の領域で最先端部を有するとともに該最先端部から前記喫水線までの領域に渡って前記船尾部の方向に後傾するように延長された下部船首プロファイルと、前記喫水線より上方の領域で少なくとも前記船尾部の方向に後傾するように延長された形状を含む上部船首プロファイルと、を有し、
前記船首部の船体幅方向断面の外形を構成する船体横切面形状は、前記喫水線より下方の領域で内側に傾斜した負のフレア角を有する、
ことを特徴とする船首形状。
【請求項10】
前記上部船首プロファイルは、前記船尾部の方向に頂点を有し、該頂点より上方の領域に渡って垂直に又は前記船首部の方向に前傾するように延長されている、ことを特徴とする請求項9に記載の船首形状。
【請求項11】
前記船体横切面形状は、前記喫水線より上方の領域で、内側に傾斜した負のフレア角、0°のフレア角又は外側に傾斜した正のフレア角を有する、ことを特徴とする請求項9に記載の船首形状。
【請求項12】
前記喫水線は、満載喫水線である、ことを特徴とする請求項9に記載の船首形状。
【請求項13】
前記船首部の上部の少なくとも一部を覆うように配置された波除部材を有する、ことを特徴とする請求項1又は請求項9に記載の船首形状。
【請求項14】
船体の前端部分を構成する船首部と、船体の後端部分を構成する船尾部と、を有する船舶であって、前記船首部は、請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の船首形状を有する、ことを特徴とする船舶。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−17089(P2012−17089A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263713(P2010−263713)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)
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