説明

良外観ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シート及びその製造方法

【課題】優れた表面外観、軽量性、形状賦形性及び光学反射性を有したポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シート及びその製造方法を提供することを可能にすること。
【解決手段】(A)ポリトリメチレンテレフタレート60〜99.8重量%、(B)ポリテトラフルオロエチレン0.1〜20重量%、及び(C)SP値(Solubility
Paramater)が6.2〜10.7である熱可塑性樹脂0.1〜20重量%を含むポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物からなる、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シート及びその製造方法に係り、特にポリトリメチレンテレフタレートに対して、特定量のポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと略す)とSP値(Solubility Paramater)が特定範囲の熱可塑性樹脂を配合したポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物からなる発泡シート及び該シートの製造方法に関するものであり、更に詳しくは、内部に微細な気泡を有することにより優れた柔軟性、軽量性、形状保持性、光反射性を有し、且つシート外観に著しく優れた、上記樹脂組成物からなる微細発泡シート及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に熱可塑性ポリエステル樹脂からなる発泡体は、その優れた軽量性、熱伝導性、衝撃吸収性を活かして、断熱材、衝撃吸収材、食品容器等に広く使用されている。特にフィルム、シート等の押出成形体は、機械特性や光学反射性能の点で優れた特徴を有し、食品、日用品の包装容器、包装材、建材、光学反射板等様々な用途向けの材料として期待されている。
これらの用途では、優れた柔軟性、断熱性、軽量性及び光反射機能を得るために、数十μm以下といった非常に微細な気泡を内部に含有させたシートやフィルムが強く望まれてきた。近年、特に成長著しい大型液晶テレビ用の反射板用途としては、ディスプレイの輝度向上及び輝度むら解消を目的として、光反射シートの高光学反射性、形状賦形性が求められている。又更に、ディスプレイの大型化が進み、シートの軽量性や形状保持性も同時に要求されている。
【0003】
従来、内部に微細な気泡を含有する熱可塑性ポリエステル樹脂発泡シートとしては、ポリエチレンテレフタレート(以後、PETと略す)樹脂と、これに非相溶な樹脂を細かく分散させて製膜した後、1軸または2軸に延伸することにより非相溶な樹脂を核とした微細な空洞を形成させたポリエステルフィルムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この他に、PETシートのロールに高圧力容器中にて炭酸ガスを含有させた後、240℃に加熱して含有させたガスを発泡させて得た、平均気泡径50μm以下の微細気泡を有し、暑さが200μm以上、比重が0.7以下の熱可塑性ポリエステル発泡体の提案もある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、架橋剤により改質された熱可塑性ポリエステル樹脂に、PTFE粉末を加え、二軸押出機でベントで揮発分を除きながら溶融混練し、次いで前記溶融物に発泡剤を圧入し、押出発泡させることにより得られる熱可塑性ポリエステル発泡体の製造方法が提案されている。(例えば、特許文献3参照)。
また、30重量%以上がトリメチレンテレフタレート単位であり、特定の極限粘度、末端カルボン酸量であるトリメチレンテレフタレート系ポリマー(PTT樹脂)から構成された、見かけ密度が0.001g/cm〜1.2g/cmである発泡体の提案もある(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】特許3018539号公報
【特許文献2】特許2925745号公報
【特許文献3】特開平09−70871号公報
【特許文献4】特開2002−226619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の特許文献1の発泡フィルムでは、製膜工程での延伸により気泡が形成されるため、フィルムは配向結晶化が進行していて、伸度が低く、賦形性が悪いという問題を有している。また、発泡フィルムは、フィルム面方向に樹脂が積層し、隙間のような気泡を有した構造をしているため、折り曲げたり、面方向から力が加わったりすることにより気泡が潰れてしまい易かったり、折り目やキズが付き易かったりするといった欠点も有している。更に、延伸可能な薄いフィルムのみしか得ることが出来ず、成形体として自立させることは困難である。
【0007】
また、本発明者等の検討によると、特許文献2の技術により得られる発泡シートは、ガスを含有させた際にシートが結晶化するため、形状賦形することは困難である。また、該技術をそのままポリトリメチレンテレフタレート(以下PTTと略す)に応用しても、PTTが発泡する前に結晶化が進むため、発泡させることが困難であり、本願目的に合致した発泡シートを得ることは出来ない。また、特許文献2に記載の発泡シートの製造方法は、バッチ式プロセスであるため、製造コストが高くなる点も問題である。
【0008】
また、特許文献3の技術では、架橋剤により改質された熱可塑性ポリエステルとPTFEからなる溶融状態の樹脂組成物に対して、ブタン等の発泡剤を圧入し、押出発泡成形することにより発泡体を得ている。しかしながら、これらの技術で得られた発泡体は、見掛密度が低くなり、気泡を微細化することが出来ないため、光学反射率や形状保持性に関して、十分に要求特性を満足することができない。
また、特許文献4の技術では、PTTに対して二酸化炭素やn−ブタン等を注入・溶解して発泡体を得ている。しかしながら、これらの技術では、気泡を微細化することは困難であり、前記した問題を解決することは出来ない。
【0009】
このように、従来技術では、優れた柔軟性、軽量性に加えて、形状保持性、形状賦形性、光反射性、及びシート外観を有した微細空孔を有した発泡シートを得ることは出来ないという問題があった。また特に、従来の溶融発泡プロセスにおいては、空孔が微細になると、シートの表面外観が悪化し、シートの厚みムラが大きくなり、均一な光反射性を有する発泡シートを得ることは困難であった。このように相反する性能である、空孔の微細化とシートの表面外観を両立した発泡シートを得ることも大きな課題であった。
【0010】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、優れた表面外観、柔軟性に加え、軽量性、形状保持性、形状賦形性、及び高い光反射性を発現する、微細空孔を有する良外観の発泡シートを提供することである。併せて、この提供を、生産コストを高めることなく、比較的安価な溶融押出設備を用いて実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究した結果、ポリトリメチレンテレフタレートに特定量のPTFE及び特定範囲のSP値有する熱可塑性樹脂を配合したポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物からなる発泡シートは、気泡が微細化し、光学反射率が高く、且つ光学反射率ムラも小さい、シート外観に著しく優れた微細発泡シートを得ることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
更に付言して本発明の特徴を述べる。
本発明の特徴は、ポリトリメチレンテレフタレートと特定量のPTFEからなる樹脂組成に、特定の熱可塑性樹脂を併せ配合した組成物である。
従来、発泡シートの光学反射率を高める為には気泡の微細化を図っているが、このこと
は表面外観の悪化を招くという関係が通常であった。
しかるに本発明によって初めて、優れた光学特性と優れた表面外観を同時に達成することが出来たのである。
ここに用いられる特定の熱可塑性樹脂は、SP値によってこれを特定できる。
【0013】
即ち、本発明は、
1.(A)ポリトリメチレンテレフタレート60〜99.8重量%、(B)ポリテトラフルオロエチレン0.1〜20重量%、及び(C)SP値(Solubility Paramater)が6.2〜10.7である熱可塑性樹脂0.1〜20重量%を含むポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物からなる、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シート。
2.シートの引取り方向と直角方向の平均気泡径(T)が0.1〜50μmである、上記1.に記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シート。
【0014】
3.シートの見かけ密度が0.3g/cm〜1.0g/cmである、上記1.または2.に記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シート。
4.(B)ポリテトラフルオロエチレンの一次粒子の平均粒径が0.05〜1.0μmである、上記1.〜3.のいずれか1つに記載ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シート。
5.(C)成分がポリメタクリル酸メチルである、上記1.〜4.のいずれか1つに記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シート。
【0015】
6.上記1〜5のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物を押出機内で溶融させ、該溶融物に、その溶融温度において、(D)無機ガスを0.01重量%〜0.6重量%注入して混合・溶解した後、10MPa〜100MPaの押出圧力にて口金より押出して発泡成形すると共に、すみやかに冷却固化することにより得られる、上記1.〜5.の何れか1つに記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シート。
7.(D)無機ガスのガス種が窒素である、上記6.に記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シート。
8.上記1.〜7.のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートからなる光学反射板。
である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートは、優れた表面外観、軽量性、形状賦形性、光反射性を有している。このため、食品容器、包装材、建材、光学反射板等の様々な用途へ有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートは、
(A)ポリトリメチレンテレフタレート60〜99.8重量%、(B)ポリテトラフルオロエチレン0.1〜20重量%、及び(C)SP値(Solubility Paramater)が6.2〜10.7である熱可塑性樹脂0.1〜20重量%を含むポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物からなるポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートである。
【0018】
ここで、ポリトリメチレンテレフタレート(以後、PTT樹脂と略す)とは、テレフタル酸を酸成分としトリメチレングリコール(1,3−プロパンジオールともいう、以下「
TMG」と略す)をジオール成分としたトリメチレンテレフタレート繰り返し単位からなるポリエステルのことを示す。また、トリメチレンテレフタレート繰り返し単位を主成分とする共重合体も含まれる。
PTT樹脂は、従来公知の方法により得ることが出来る。例えば、PTT樹脂はテレフタル酸ジメチルとトリメチレングリコール、及び必要に応じて他の共重合成分を原料とし、チタンテトラブトキシドを触媒として常法によって、常圧、180℃〜260℃の温度でエステル交換反応を行った後、減圧下、220℃〜270℃にて重縮合反応を行うことにより得ることが出来る。
【0019】
共重合成分としては、例えばエチレングリコール、1,1−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、2,2−プロパンジオール1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、イソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のエステル形成性モノマーやポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びこれらの共重合体等が挙げられる。
シートを製造する際の熱安定性やシートの柔軟性、光反射性、耐熱性を高めるためには、上記したランダム共重合となるような成分を30モル%以下とすることが好ましく、20モル%以下とすることがより好ましく、10モル%以下とすることが更に好ましい。
【0020】
本発明のPTT樹脂の重合度は固有粘度[η]を指標として0.5dl/g〜4dl/gの範囲であることが好ましい。固有粘度を0.5dl/g以上とすることでシートを製造することが容易になると共に、気泡サイズを微細にすることが容易になり、優れた強度、柔軟性を有する発泡シート及び成形体とすることが容易になる。一方、4.0dl/g以下とすることで、シートに成形することが容易になる。固有粘度[η]は0.7dl/g〜3dl/gの範囲がより好ましく、0.9dl/g〜2.5dl/gの範囲が更に好ましく、1.0dl/g〜2dl/gの範囲が特に好ましい。
【0021】
また、本発明のPTT樹脂はカルボキシル末端基濃度が0eq/トン〜80eq/トンであることが好ましい。このようにすることでシート及び成形体の耐候性、耐薬品性、耐加水分解性、及び、耐熱性を高めることが容易になる。カルボキシル末端基濃度は0eq/トン〜50eq/トン以下がより好ましく、0eq/トン〜30eq/トン以下が更に好ましく、0meq/kg〜20meq/kgが特に好ましく、低ければ低いほど良い。
また、同様の理由よりPTT樹脂のグリコール成分であるTMGがエーテル結合を介して結合したグリコール二量体成分であるビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル成分(構造式:−OCH2CH2CH2OCH2CH2CH2O−、以下「BPE」と略す)の含有率が0重量%〜2重量%であることが好ましい。含有率は0.1重量%〜1.7重量%であることがより好ましく、0.15重量%〜1.5重量%であることが更に好ましい。
【0022】
本発明のPTT樹脂は上述の共重合体のほか、他の熱可塑性樹脂を配合した、ブレンド組成物の形態で用いることができる。
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートは、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂以外に各種の有機物質や無機物質及び各種添加剤を含んでいる場合も含む。このような場合でもポリトリメチレンテレフタレート樹脂の割合は前記した範囲で
ある必要がある。
【0023】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物におけるポリトリメチレンテレフタレート樹脂の割合は発泡シートの光学反射率、柔軟性、及び形状賦形性の観点より60.0重量%〜99.8重量%であり、70.0重量%〜95.0重量%であることがより好ましく、80.0重量%〜90.0重量%であることが更に好ましい。
前記の好ましい本発明組成物中のPTT組成は、本発明の目的の一つである、優れた柔軟性、賦形成形性を実現することに寄与しているが、これは、第一にPTT樹脂固有の適度な結晶化速度や、第二に化学的な反応性の低い飽和ポリエステルの一種であるというPTT樹脂の分子構造からくる化学的な安定性や、第三にジグザグの分子骨格構造からくる結晶の柔軟性に由来すると考えられる。
【0024】
本発明で言う(B)ポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと略す)は、(A)PTTの発泡核剤として好ましく用いられる。PTFEの中でも特に低分子量PTFEは、340℃におけるフローテスター法を用いて測定することにより得られる溶融粘度が2500Pa.s以下で、数平均分子量が数千〜数十万(60×10以下)、好ましくは5千〜60万、より好ましくは1万〜60万のPTFEであり、機械的強度が低く、一般的にはポリマーや塗料に対して潤滑性、撥水性を付与するために添加されるものである。前記PTFEの数平均分子量は前記フローテスターを用いて測定し、得られた溶融粘度から算出した値である。又、低分子量PTFEは熱可塑性樹脂と溶融混練した際にフィブリル化しないものであり、熱可塑性樹脂の発泡核剤として用いることにより、これまで達成されなかった微細気泡を有する発泡体を得ることが出来る。
これらの低分子量PTFEの製造方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶媒中でのテトラフルオロエチレンのテロメリゼーション、高分子量PTFEの熱分解法、あるいは放射線による分解法等が知られている。中でも乳化重合法が最も一般的な製造方法である。
【0025】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートにおける低分子量PTFEの粒径は、一次粒子に関して、電子顕微鏡観察、あるいは動的光散乱法での測定で、その平均粒径が、0.05〜1.0μmであることが、発泡シートの光学反射性の観点から好ましく、0.1〜0.5μmであることが最も好ましい。更に二次粒子(一次粒子の凝集体)に関しては、光透過法での測定で、50重量%平均粒径が、0.5〜30μmが好ましく、2〜20μmがより好ましく、3〜10μmが最も好ましい。
また、本発明樹脂組成物における低分子量PTFEの含有量は0.1〜20重量%であることが光学反射特性及びシート外観の観点から好ましく、0.5〜15重量%であることがより好ましく、2〜10重量%であることが更に好ましく、3〜7重量%であることが最も好ましい。
【0026】
本発明の(C)SP値(Solubility Paramater)が6.2〜10.7である熱可塑性樹脂とは、(A)PTTのSP値10.7以下、(B)PTFEのSP値6.2以上のSP値を有する熱可塑性樹脂である。SP値が前記範囲の熱可塑性樹脂を用いることによって、シート押出し時の外観不良の原因となるPTFEのダイリップへの析出を防ぐことが出来る。更にシート外観の観点から(C)熱可塑性樹脂のSP値は7.0〜10.0であることがより好ましく、8.5〜9.5であることが最も好ましい。
【0027】
SP値(=δ)は、フェダーズ(Fedors)の方法により決定され、25℃の温度におけるポリマーの繰り返し単位の凝集エネルギー密度(E)とモル分子容(V)から下記(1)式により得られる値を指す。当該方法は、F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14(2),147(1974)に記載されている。
δ=(ΣE/ΣV)1/2 (1)式
(C)SP値(Solubility Paramater)が6.2〜10.7である熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン(δ=8.1)、ポリプロピレン(δ=8.1)、ポリスチレン(δ=9.1)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)(δ=8.5)、ポリメタクリル酸メチル(δ=9.3)、ポリ酢酸ビニル(δ=9.4)、ポリ塩化ビニル(δ=9.6)、ポリカーボネート(δ=9.8)、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル(δ=10.7)等が挙げられる。中でも、ポリメタクリル酸メチルが、気泡の微細化とシート外観を両立させる意味で最も好ましい。
又、本発明樹脂組成物中における(C)SP値(Solubility Paramater)が6.2〜10.7である熱可塑性樹脂の含有量は0.1〜20重量%であることが、シート外観及び形状賦形性の観点から好ましく、1〜10重量%であることがより好ましく、3〜7重量%であることが最も好ましい。
【0028】
本発明樹脂組成物には、増粘剤を更に配合すると、より本願目的に合致した微細発泡シートを得ることが出来る例えば、増粘剤の具体例としては、エポキシ基を有する化合物、酸無水物を含有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、イソシアネート基を含有する化合物、カルボジイミド化合物、及び非焼成の高分子量PTFE等が挙げられる。中でも、エポキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、およびカルボジイミド化合物がより好ましく用いられ、特に多官能性エポキシ化合物が、最も好ましく用いられる。多官能性エポキシ化合物とは、分子中にエポキシ基(オキシラン環)を2個以上持つ化合物を示す。具体的には、ビルフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合反応により製造されるいわゆるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、フェノールノボラックや線状高分子量クレゾールノボラックをグリシジル化した多官能エポキシであるノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、ポリグリシジルアミン型エポキシ、エポキシ基含有スチレン共重合体、エポキシ基含有ポリエステル共重合体などが挙げられる。中でも、エポキシ基含有スチレン共重合体が最も好ましく用いられる。
【0029】
また、本発明樹脂組成物100重量部に対する増粘剤の割合は、該発泡シートの光学反射特性及びシート外観の観点から、0.1〜10重量部配合することが好ましく、0.3〜5重量部配合することがより好ましく、0.5〜3重量部配合することが最も好ましい。
その他、当該樹脂組成物に配合され得る無機物質としては、ガラス繊維、カーボン繊維、タルク、マイカ、ワラストナイト、カオリンクレー、炭酸カルシウム、二酸化チタン、二酸化シリカ等の無機充填剤や無機滑剤、重合触媒残渣等が挙げられる。
更に、当該樹脂組成物に配合され得る添加剤としては、有機や無機の染料や顔料、艶消し剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、整色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、増白剤、不純物の捕捉剤、増粘剤、表面調整材等が挙げられる。
【0030】
当該樹脂組成物に配合され得る熱安定剤としては、5価または/および3価のリン化合物やヒンダードフェノール系化合物が好ましい。リン化合物の添加量は、当該樹脂組成物100重量部に対しリン元素の重量割合として2ppm〜500ppmであることが好ましく、10ppm〜200ppmがより好ましい。具体的な化合物としてはトリメチルホスファイト、リン酸、亜リン酸、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト((チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製のIrgafos168等)が好ましい。
ここで、ヒンダードフェノール系化合物とは、フェノール系水酸基の隣接位置に立体障害を有する置換基を持つフェノール系誘導体であり、分子内に1個以上のエステル結合を有する化合物である。ヒンダードフェノール系化合物の添加量としては、当該樹脂組成物に対する重量割合として0.001重量%〜1重量%であることが好ましく、0.01重量%〜0.2重量%がより好ましい。
【0031】
具体的な化合物としては、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製のIrganox1010等)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製のIrganox1076等)、N,N´−ヘキサメチレンビス(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製のIrganox245等)、N,N´ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製のIrganox1098等)等が好ましい。もちろんこれらの安定剤を併用することも好ましい方法の一つである。
【0032】
また、本発明では、低分子量の揮発性不純物の捕捉剤を添加するのも好ましい。捕捉剤としては、ポリアミドやポリエステルアミドのポリマーやオリゴマー、アミド基やアミン基を有した低分子量化合物等が好ましい。添加量としては、当該樹脂組成物に対する重量割合として0.001重量%〜1重量%であることが好ましく、0.01重量%〜0.2重量%がより好ましい。
具体的な化合物としてはナイロン6.6、ナイロン6、ナイロン4.6等のポリアミドやポリエチレンイミン等のポリマー、更にはN−フェニルベンゼンアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製のIrganox 5057等)、N,N´ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製のIrganox1098等)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製のIrganox565等)等が好ましい。もちろんこれらを併用することも好ましい方法の一つである。
【0033】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートの厚みは50μm〜10mmであることが好ましい。厚みを50μm以上とすることでシートの取り扱いが容易になり、10mm以下とすることで加熱成形(賦形)が容易となる。発泡シートの厚みは100μm〜5mmであることがより好ましく、200μm〜3mmであることが更に好ましい。更に、発泡シートの自己保持性及び熱賦形性の観点から、500μm〜2mmであることが特に好ましい。
【0034】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートの見かけ密度は、気泡微細化の観点から0.3g/cm〜1.0/cmであることが好ましい。見かけ密度を0.3g/cm以上とすることで、発泡シートをシーティング時に破泡無く押出すことが可能となり、又、1.0g/cm以下とすることで、発泡シートの光学反射性能を満たすことが出来る。
さらに、気泡を微細化させる観点から、前記発泡シートの見かけ密度は0.4g/cm〜0.9g/cmであることがより好ましく、0.5g/cm〜0.8g/cmであることが最も好ましい。
【0035】
また、本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートは、: シートの引取り方向と直角方向の平均気泡サイズは、光学反射性能の観点から、0.1μm〜50μmであることが好ましく、0.5μm〜30μmであることがより好ましく、1μm〜20μmであることが更に好ましく、2μm〜10μmであることが最も好ましい。
また、シートの引取り方向に直角方向の平均気泡サイズは優れた柔軟性、光反射性とする観点より、シート厚みの1/10以下であることが好ましく、1/50以下であることがより好ましく、1/100以下であることが特に好ましい。
なお、シートの引取り方向に直角方向の平均気泡サイズは、シート断面を走査型電子顕微鏡(以下「SEM(Scanning Electron Microscope)」と略す)を用いて観察した断面画像より画像解析ソフトを用い、円相当径として求める。
【0036】
また、本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートは、波長が450nm〜700nmにおける該ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートの平均光反射率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが最も好ましい。このような反射率とすることで光学反射板として適するようになる。尚、ここで光反射率とは硫酸バリウム白色板の反射率を100%とした時の相対的な値を示す。ここで記載した反射率とは、分光光度計を用いて測定した値であり、拡散反射と鏡面反射を含めた全反射率を示す。
【0037】
次に本発明に係るポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートの製造方法について説明する。
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートは、(A)ポリトリメチレンテレフタレート60〜99.8重量%、(B)ポリテトラフルオロエチレン0.1〜20重量%、及び(C)SP値(Solubility Paramater)が6.2〜10.7である熱可塑性樹脂0.1〜20重量%を含むポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物からなる溶融物を、該溶融物の溶融温度において、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物100重量部に対して、(D)無機ガス0.01〜0.6重量部を注入して混合・溶解した後、特定の条件にて口金より押出して発泡成形すると共に、すみやかに冷却固化する、「特殊溶融押出発泡法」により得られることが好ましく、より好ましくは、二軸押出機を用いて溶融混練した(A)ポリトリメチレンテレフタレート60〜99.8重量%と(B)PTFE0.1〜20重量%と(C)SP値(Solubility Paramater)が6.2〜10.7である熱可塑性樹脂0.1〜20重量%を含むポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物を、単軸押出機に供給し、該溶融物の溶融温度において、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物100重量部に対して、(D)無機ガス0.01〜0.6重量部を注入して混合・溶解した後、10MPa〜100MPaの押出圧力にて口金より押出して発泡成形すると共に、すみやかに冷却固化する、「特殊溶融押出発泡法」により得ることができる。
【0038】
前記二軸押出機の押出条件としては、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートの気泡を微細化する観点から、(A)PTTと(B)PTFEと(C)SP値(Solubility Paramater)が6.2〜10.7である熱可塑性樹脂を含む成分を二軸押出機のシリンダ出口の樹脂温度を310℃以下に制御することが好ましく300℃以下に制御することがより好ましく、290℃以下に制御することが最も好ましい。
前記単軸押出機の押出条件としては、押出機内で未溶融物が残らず、且つ、前記樹脂組成物の熱分解が抑制出来る温度に設定することが望ましく、おおよそポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物の融点+0℃〜30℃とすることが好ましく、融点+0℃〜20℃とすることがより好ましく、融点+0℃〜15℃とすることが更に好ましい。
【0039】
押出機と口金との間には、必要に応じて、フィルターを設置して異物等を除去したり、定量供給性を上げるためにギアポンプ等を設けたり、注入物質の分散性を向上させるために静止型ミキサーを設置したり、温度を一定にするために熱交換ユニットを設置することができる。このような場合は、該機器類付近にて注入した物質が大きな気泡とならないように圧力や温度を適宜選択することが望ましい。これらの機器を設置する場合も未溶融物
が残らず、且つ、組成物の熱分解が抑制出来る温度に設定することが望ましく、おおよそポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物の融点+0℃〜30℃に設定することが好ましい。
【0040】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートは、前記ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物溶融物に、(D)無機ガスを特定量注入し、押出発泡成形することにより、極めて微細な発泡シートを得ることができる。具体的な例としては水素、酸素、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、水等不活性化合物等が挙げられる。中でも、窒素がシート内に微細空孔を形成させる観点から、特に好ましく用いられる。
(D)無機ガスの注入量は、気泡を微細化させることと、シートの表面状態を良好にするといった観点より、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物100重量部に対して、0.01重量部〜0.6重量部であることが好ましく、0.02重量部〜0.4重量部であることがより好ましく、0.05重量部〜0.2重量部であることが最も好ましい。
注入する方法としては、押出機から口金の間であれば、何れの時期でも良いが、押出機にて注入することが(C)無機ガスを均一に溶融物中に注入出来るので好ましい。
【0041】
溶融物は次いで口金より押出されてシート状の形状に成形されるとともに、圧力が開放されて注入した(C)無機ガスにより発泡する。口金としては目的とするシートの形状によって適宜選ぶことが出来るが、均一な厚みのシートを得るためには、Tダイ、Iダイと呼ばれるような直線状のスリットや、丸ダイと呼ばれる円周状のスリットを用いることが望ましい。口金の構造は、口金内で破泡が起こらないように適宜設計することが望ましい。さらに、発泡シートの空孔サイズを微細化する観点から、前記口金入口におけるの溶融物の圧力が10MPa以上とすることが好ましく、13MPa以上とすることがより好ましく、15MPa以上とすることが最も好ましい。上限は特に無いが、設備の構造より考えて100MPa以下の押出圧力とすることが良い。
押出す際の口金温度は溶融物が固化しない範囲で低く設定することが望ましく、具体的には前記樹脂組成物の融点+0℃〜30℃とすることが好ましく、融点+0℃〜20℃とすることがより好ましく、融点+0℃〜15℃とすることが更に好ましく、溶融物を均一に押出せる範囲で出来るだけ低く設定することが好ましい。
【0042】
特殊溶融押出発泡法ではシート状に成形され発泡した溶融物は次いで冷却固化されるが、本発明では気泡の大型化が抑えられるように、すみやかに冷却して固化させる。ここですみやかにとは前記したシートの熱的特性を有するように冷却することを指し、具体的には、口金より押出してから該樹脂組成物のガラス転移温度以下にシートを冷却する時間を30秒以内とすることが好ましく、10秒以内とすることがより好ましく、5秒以内とすることが特に好ましい。非晶のシートを得る場合は特にすみやかに冷却固化させることが重要となる。
【0043】
このような冷却固化を達成させる方法としては溶融物を、冷却ロールや冷却ベルト等の固体と接触させる方法、シートを水等の液体と接触させる方法、及び、これらを組み合わせた方法等が挙げられる。これらのうち、スリット状の口金より押出した溶融物をロールまたはベルト上にキャスト(配置)し、次いで水中に入れてすみやかに冷却固化する方法が最も好ましい。
尚、冷却ロールやベルト等の固体は熱伝導の良好な金属製のものが好ましい。接触させる固体や液体の温度は0℃〜50℃がより好ましく、0℃〜30℃が更に好ましく、0℃〜20℃が特に好ましい。口金より押出してから固体や液体に接触させるまでの時間は0.1秒〜10秒とすることが好ましく、0.1秒〜5秒とすることがより好ましく、0.1秒〜2秒とすることが特に好ましい。
【0044】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートのうち、非晶性のものは熱成形することにより、賦形発泡成形体とすることが出来る。
成形体の形状は用途に応じて適宜選択することが出来る。例えば、箱状、カップ状、波板状等が挙げられる。このような成形体を成形する方法としてはプレス成形やストレート成形、ドレープ成形、プラグアシスト成形、真空成形、真空圧空成形、圧空成形、真空プレス成形等が挙げられるが、このうち真空成形、真空圧空成形、真空プレス成形がより好ましい。
又、本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートは、上記熱成形により、例えば大型液晶テレビ用の光学反射板として輝度向上、輝度むらの解消に効果を発現する。更に、反射板が大型化するに従い、反射シートは自己支持性及び寸法安定性を要求されるが、熱賦形によりリブ構造、ボス構造等の賦形が可能となり、成形体の剛性及び寸法精度も著しく向上し、部品点数を減らすことも可能となる。
【実施例】
【0045】
以下実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。ただし本発明はこれらの例になんら限定されるものではない。なお、使用した(A)ポリトリメチレンテレフタレート、(B)PTFE、及び(C)SP値(Solubility Paramater)が6.2〜10.7である熱可塑性樹脂は下記のとおりである。
(A)ポリトリメチレンテレフタレート
・A1:ポリトリメチレンテレフタレート(PTT);コルテラ CP513000−0312RC
極限粘度[η]=1.30(dl/g)
なお、PTTの極限粘度[η]は、オストワルド粘度計を用い、35℃、o−クロロフェノール中での比粘度ηspと濃度C(g/100ml)の比ηsp/Cを濃度ゼロに外挿し、以下の式により求めた。
[η]=lim(ηsp/C) C→0
【0046】
(B)PTFE
・B1:PTFE−1(ポリテトラフルオロエチレン);ルブロン L−5(ダイキン工業社製)
(C)SP値(Solubility Paramater)(δ)が6.2〜10.7である熱可塑性樹脂
・C1:PMMA(ポリメタクリル酸メチル);デルペット 60N(旭化成ケミカルズ社製)
δ=9.2
・C2:LDPE(低密度ポリエチレン);DFDJ−6775(日本ユニカー社製)
δ=8.1
・C3:PP(ポリプロピレン);E−105GM(プライムポリマー社製)
δ=8.1
・C4:GPPS(ポリスチレン);スタイロン 685(旭化成ケミカルズ社製)
δ=9.1
・C5:PC(ポリカーボネート);ワンダーライト 110(奇美化成社製)
δ=9.8
・C6:Ny66(ナイロン66);レオナ 1300S(旭化成ケミカルズ社製)
δ=13.6
・C7:POM(ポリアセタール);テナック 3010(旭化成ケミカルズ社製)
δ=11.2
【0047】
以下の実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)シート厚み
ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートの厚みを、厚み計を用いて計測し、求めた。
(2)見かけ密度
ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートを50℃で乾燥し、恒量値に達した時の重量を体積で除して求めた。尚、体積はシートを水中に浸漬して求めた。
【0048】
(3)平均気泡径
ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートの気泡の平均径は、シートのシートの引取り方向に直角方向にダイヤモンドカッターを用いてシートを切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した断面画像(表層から内部までの1000μm×1000μmの領域)の気泡径について、画像解析ソフトを用いて円相当径として計算した値の平均値として求めた。画像解析ソフトとして株式会社プラネトロン社製のimage−Pro Plus ver.4.0を用いた。
【0049】
(4)平均光反射率
島津製作所製UV−2200を用いて、入射角を8°ずらした方式で、波長が450nm〜700nm領域における、該発泡シートの全反射率(鏡面反射率+拡散反射率)を10nm毎に測定し、前記波長領域における平均全反射率を計算により求めた。前記平均全反射率を、シート幅方向に、10mm間隔で測定し、その平均値を求め、平均光反射率とした。この際、光反射率とは硫酸バリウム白色板の反射率を100%とした時の相対的な値を示す。
【0050】
(5)反射率ムラ
前記各測定部位における最大平均全反射率と平均光反射率の差、あるいは最小平均全反射率と平均光反射率の差が3%以上の場合は×、1%以上、3%未満の場合は△、1%未満の場合は○とした。
(6)賦形性
ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートを用いて、図1に示す真空成形金型で、真空成形を行った。成形品に、ソリ変形がない場合を○、ある場合を×とした。
詳細な条件については、実施例に記載した。
【0051】
[実施例1]
極限粘度[η]が1.30dl/g、のPTT樹脂(SHELL社製、CP513000−0312RC)84.7重量部、一次粒子の平均粒径0.2μm、二次粒子の平均粒径5μmのPTFE(前記B1)5.0重量部及びポリメチルメタクリレート樹脂(前記C1)10.0重量部、更に熱安定剤としてチバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製のIrgafos168、Irganox245、Irganox1098を各0.1重量部タンブラーでドライブレンドした後、TEX−54二軸押出機でスクリュ回転数200rpm、吐出量200kg/時間、ダイ出口の樹脂組成物温度295℃の条件で押出し、融点225℃のPTT樹脂組成物を得た。前記PTT樹脂組成物を235℃に設定した90mmφの一軸押出機に供給して溶解した後、押出機と同じ温度に加熱した流路を通じて、口金として幅1000mm、間隔が0.6mmのTダイより線速10m/分にて押出してシート状に成形した。
【0052】
この際、組成物に対して0.1重量%の窒素ガスを該押出機の中間より注入して溶融物と混合・溶解させた。また、Tダイ入り口での溶融物の圧力は15MPaであった。Tダイより押出した溶融物は50mm離れた金属製の回転ロール上にキャストした後、冷却水中に導入して冷却固化させて発泡シートを得た。この際、回転ロール及び冷却水は10℃になるようにコントロールし、溶融物を押出してから回転ロールに接触させるまでの時間は0.6秒であった。
【0053】
得られたPTT樹脂組成物発泡シートは厚みが1.0mm、幅960mmであり、表面外観が良好であった。また、見掛け密度が0.69g/cm 、平均気泡径4μm微細な気泡を有しており、平均光反射率96%で、反射率ムラの小さい発泡シートであった。
得られたPTT樹脂組成物発泡シートを真空圧空成形法にて成形して縦630mm、横400mm、深さ25mmの反射板をなす成形品を得た。成形は、先ず、シートを55℃にヒーター輻射にて加熱した後、120℃に加熱したアルミニウム製の金型(図1参照)に真空度720mmH、加圧圧力0.3MPaにて接触させて賦型し、そのまま20秒間保持して結晶化させることによって行った。得られた成形品は破れも無く、金型形状を再現した。更に、得られた成形品を120℃の乾燥機中に48時間放置し、シートの引取り方向及びシートの引取り方向と直角方向の熱収縮率を測定したところ、共に0.1%であった。又、成形品のソリ変形等は認められなかった。結果を以下の表1に示す。
【0054】
[実施例2、4]
以下の表1に示した様にポリメチルメタクリレート樹脂の配合量を変えた以外は前記実施例1と同様にしてPTT樹脂組成物発泡シートを得た。結果を以下の表1に示す。微細な空孔を有し、本発明の範囲内で優れた軽量性、表面外観を有した微細発泡シートを得ることができた。
[実施例3]
以下の表1に示した様に窒素ガス量を変えた以外は前記実施例2と同様にしてPTT樹脂組成物発泡シートを得た。結果を以下の表1に示す。何れの場合も本発明の範囲内で優れた軽量性、表面外観を有したPTT樹脂組成物発泡シートであった。
【0055】
[実施例5〜8]
以下の表1に示した様に特定範囲のSP値有する熱可塑性樹脂の種類を変えた以外は前記実施例1と同様にしてPTT樹脂組成物発泡シートを得た。結果を以下の表1に示す。何れの場合も本発明の範囲内で優れた軽量性、表面外観を有したPTT樹脂組成物発泡シートであった。
[実施例9]
以下の表1に示した様に無機ガスの種類を変えた以外は前記実施例1と同様にしてPTT樹脂組成物発泡シートを得た。結果を以下の表1に示す。何れの場合も本発明の範囲内で優れた軽量性、表面外観を有したPTT樹脂組成物発泡シートであった。
【0056】
[比較例1]
実施例1における特定範囲のSP値有する熱可塑性樹脂を用いなかった事以外は前記実施例1と同様にしてPTT組成物発泡シート得た。結果を以下の表1に示す。得られたシートは、反射率ムラが大きく、本願要求特性を満足できるものではなかった。
[比較例2、3]
実施例1におけるポリメチルメタクリレート樹脂の配合量を変えた以外は前記実施例1と同様にしてPTT組成物発泡シートを得た。結果を以下の表1に示す。比較例2で得られたシートは、光反射率ムラが大きく、本願要求特性を満足できるものではなかった。また、比較例3で得られたシートは、見掛密度が大きく、平均光反射率が低く、反射率ムラが大きく、満足できるものではなかった。
【0057】
[比較例4,5]
以下の表1に示した様に特定範囲のSP値有する熱可塑性樹脂の種類を変えた以外は前記実施例1と同様にしてPTT樹脂組成物発泡シートを得た。結果を以下の表1に示す。得られたシートはいずれも反射率ムラが大きく、満足できるものではなかった。
[比較例6]
実施例1における特定範囲のSP値有する熱可塑性樹脂を用いない事及び無機ガスを変
えた事以外は前記実施例1と同様にしてPTT組成物発泡シートを得た。結果を以下の表1に示す。得られたシートは反射率ムラが大きく、平均光反射率が低く満足できるものではなかった。
【0058】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートは、優れた表面外観、断熱性、軽量性、光反射性を有している。このため、本発明の活用例として、食品容器、包装材、建材、光学反射板等の様々な用途へ有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】真空成形金型を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリトリメチレンテレフタレート60〜99.8重量%、(B)ポリテトラフルオロエチレン0.1〜20重量%、及び(C)SP値(Solubility Paramater)が6.2〜10.7である熱可塑性樹脂0.1〜20重量%を含むポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物からなる、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シート。
【請求項2】
シートの引取り方向と直角方向の平均気泡径(T)が0.1〜50μmである、請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シート。
【請求項3】
シートの見かけ密度が0.3g/cm〜1.0g/cmである、請求項1または2に記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シート。
【請求項4】
(B)ポリテトラフルオロエチレンの一次粒子の平均粒径が0.05〜1.0μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シート。
【請求項5】
(C)成分がポリメタクリル酸メチルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物を押出機内で溶融させ、該溶融物に、その溶融温度において、(D)無機ガスを0.01重量%〜0.6重量%注入して混合・溶解した後、10MPa〜100MPaの押出圧力にて口金より押出して発泡成形すると共に、すみやかに冷却固化することにより得られる、請求項1〜5の何れか1項に記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シート。
【請求項7】
(D)無機ガスのガス種が窒素である、請求項6に記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物発泡シートからなる光学反射板。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−88204(P2008−88204A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267261(P2006−267261)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】