説明

良好な分散性を有する貯蔵安定性のよい硫酸バリウムの製造方法

本発明は、貯蔵安定性のよい硫酸バリウムの製造方法、それにより製造される硫酸バリウムおよび添加剤としてのその使用に関し、前記製造方法において、硫酸バリウムの水性懸濁液を、過剰な硫酸イオンの存在下で9から12のpH値に設定し、得られる硫酸バリウムの懸濁液を、9から12のpH値において、前記pH値で溶ける金属化合物の少なくとも1種の水溶液またはそれらの混合物と混合し、得られる懸濁液を、少なくとも1種の酸または酸混合物の添加によって3から9のpH値に設定し、硫酸バリウム粒子の表面に水溶性金属化合物の金属−酸素化合物が堆積される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は良好な分散性を有する貯蔵安定性のよい硫酸バリウムの製造方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
硫酸バリウムは、例えば、染料、塗料およびラッカー、プラスチック、繊維、製紙およびゴム産業において大いに使用されている。硫酸バリウムは、完全に不活性な充てん剤として、それらの産業の部門において使用される他の薬品とのいかなる反応も伴わないことにおいて卓越している。炭酸カルシウムなどの他の固体と比較して、硫酸バリウムは、その極めて高い耐薬品性によって特徴づけられる。特に、低いモース硬度は、二酸化ケイ素および二酸化アルミニウムと比較して有利である。
【0003】
概括的に言えば、硫酸バリウムは、水溶液中における硫化物、塩化物またはナイトレートのそれなどのバリウム塩の硫酸または硫酸ナトリウムなどのその塩との反応によって生成される。その反応によって通常0.01から20μmの一次粒径を有する硫酸バリウムが一般的に得られる。そのように生成された硫酸バリウムを濾別し、水で洗浄し、様々な使用目的用に乾燥および解凝集(deagglomerate)する。
【0004】
場合によって、乾燥前または乾燥後に、硫酸バリウム粒子に添加剤を添加する。解凝集操作は、一般的に、例えば衝撃粉砕機を使用する乾式破砕によって実施される。技術の現状に従った硫酸バリウム粒子の解凝集が実施される場合、それらの硫酸バリウム粒子を有機系および水系中に十分に分散させることができる。しかし、技術の現状において生成された硫酸バリウム粒子の不利は、貯蔵による有機系および水系中における分散性の著しい低下である。
【0005】
ドイツ特許A1 33 47 191号は、表面処理された硫酸バリウムの製造方法を開示している。その方法は過剰なBaイオンを含む水性BaSO4懸濁液を使用することを含む。0.1から30重量%の水性アルカリシリケート溶液を、最初に硫酸バリウムが析出するように、その懸濁液に添加する。次いで、鉱酸を添加し、硫酸バリウムの分解のために、7以下のpH値に設定して含水二酸化ケイ素を得る。記載された工程段階は、好ましくは少なくとも40℃の温度で実施される。しかし、そのように処理された硫酸バリウムは、特に硫酸バリウムが長期間にわたって貯蔵される場合、満足のいく分散特性を未だ有していない。
【0006】
ドイツ特許A1 44 31 735号は、最初にH3PO4または水溶性ホスフェート化合物が水性BaSO4懸濁液に添加される、BaSO4からの無機的に処理されたポリマー用充てん剤の製造方法を開示している。次いで、その方法は、7.5未満のpH値におけるNa2SiO3の懸濁液および4.5を上回るpH値における水性アルミニウム化合物への連続添加を含む。記載された工程段階は65から75℃の温度で実施される。
【0007】
要約すると、技術の現状において知られている硫酸バリウムは、貯蔵後に分散性の著しい低下を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】ドイツ公開特許A1 33 47 191
【特許文献2】ドイツ公開特許A1 44 31 735
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、長期貯蔵後でさえ有機系および水系において改善した分散性を有する硫酸バリウムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
現在、驚くべきことに、主請求項において列挙された特徴を有する方法を利用して、このような硫酸バリウムを製造することができることが本発明者らによって見出された。
【0011】
したがって、本発明は、硫酸バリウムの製造のための方法に関し、
a)硫酸バリウムの水性懸濁液を、過剰な硫酸イオンの存在下で9から12のpH値に設定し、
b)得られる硫酸バリウムの懸濁液を、9から12のpH値において、水溶性金属化合物の少なくとも1種の水溶液またはそれらの混合物と混合し、
c)得られる懸濁液を、少なくとも1種の酸または酸混合物の添加によって3から9のpH値に設定して、硫酸バリウム粒子の表面に水溶性金属化合物の金属−酸素化合物を析出させ、
d)得られる硫酸バリウム粒子を濾別する、
ことにある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最初に、水溶性バリウム化合物を、水溶液中で化学量論的過剰量の硫酸イオンで処理し、硫酸バリウム粒子の形態で析出させる。析出した硫酸バリウムを濾過し、洗浄し、水溶液中において9から12のpH値で再懸濁させる。本発明による方法の別の実施形態において、粉末形態の硫酸バリウムを再懸濁することができ、過剰な硫酸イオンが沈降し、次いで、再懸濁した硫酸バリウム懸濁液を9から12のpH値に調節する。
【0013】
過剰な硫酸イオンを含む粒子形態の硫酸バリウムの水性初期スラリーは、好ましくは、過剰量の硫酸イオンの存在下における水溶液中における硫化バリウムの硫酸または硫酸ナトリウムなどのその水溶性塩との反応によって生成することができる。したがって、水溶液中のその反応は、硫酸またはその塩に対して不十分な量の硫化バリウムの存在下でも実施することができる。
【0014】
硫化バリウムの量は、例えば塩化バリウムまたは硝酸バリウムなどの他の水溶性バリウム塩によって置き換えることができる。これは重要ではないが、反応溶液中の硫酸イオンは、一般的に、化学量論量に対して0.01〜20重量%の過剰で、好ましくは0.01〜1.0重量%の過剰で存在する。
【0015】
水溶液中の上記反応は、一般的に、20℃を下回らない温度において、好ましくは40℃から90℃の間で実施する。上記方法の経済性を考慮して、それは重要ではないが、水性初期スラリーは50から500g/lの量の硫酸バリウムを含むような方法で生成することが好ましい。
【0016】
好ましくは少なくとも1回の水による洗浄操作後に、析出した硫酸バリウムを水性懸濁液中に再懸濁して5から60重量%の固体含有量を得る。上記方法の経済性に関わる理由のために、固体含有量は20から40重量%の間であることが好ましい。
【0017】
必要ならば、前述の通り、初期スラリーは水中に微粉化硫酸バリウムを懸濁し、次いで水溶性サルフェート化合物を添加することによって生成することができる。
【0018】
例えばNaOHまたはKOHを用いて、懸濁液のpH値を9から12の範囲のpH値に設定する。
【0019】
本発明によれば、例えばアルカリ金属シリケート、好ましくはナトリウムシリケート、カリウムシリケートもしくはナトリウムアルミネート、もしくはこのような金属化合物の混合物などの9〜12のpH範囲で溶ける少なくとも1種の水溶液、または様々な金属化合物の複数の溶液を、次の工程段階において、3から9のpH範囲へのpH値の変化によって、スラリー中の硫酸バリウムまたは硫酸バリウム粒子の表面上に、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類シリケートまたはアルミネート、二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウムまたは酸化アルミニウム、同様に水和形態などの、金属水酸化物、金属水和物、金属オキシ水酸化物および/または金属オキシ水和物などの、そのpH範囲において不溶性である金属−酸素化合物を析出または堆積させるために、激しく撹拌しながら、硫酸バリウムの水性初期スラリーに同時にまたは連続的に添加する。
【0020】
その点において、本発明によれば、金属化合物という用語は、9〜12の範囲のpH値で硫酸バリウム懸濁液の水相に完全に溶解し、それに関して不活性であり、3〜9のpH範囲で不溶性であり、したがって硫酸バリウム粒子上に堆積される、アルカリおよびアルカリ土類金属、遷移金属および主族金属の群から選択される半金属または金属の水溶性化合物を意味するために使用される。一例として、制限なく、水溶性化合物を形成する金属として本明細書では、アルミニウム、アンチモン、バリウム、カルシウム、セリウム、コバルト、鉄、マンガン、ナトリウム、ケイ素、ストロンチウム、バナジウム、亜鉛、錫およびジルコニウムに言及されよう。ナトリウム、カリウム、アルミニウムおよびケイ素の化合物が好ましい。
【0021】
より正確には、硫酸バリウムの懸濁液を、使用される硫酸バリウムに対して最高20重量%の形成される金属酸化物、好ましくは0.5重量%の形成される金属酸化物の量の金属化合物の少なくとも1種の水溶液またはそれらの混合物と混合する。この工程段階において、金属化合物が水に完全に溶解されて存在するように、pH値および金属化合物の量を本発明に従って選択する。薬剤が懸濁液中に均一に分配されるように、懸濁液を好ましくは少なくとも5分間、激しく撹拌する。好ましくは、少なくとも20℃、好ましくは50℃から90℃、特に好ましくは60℃から90℃の温度で添加操作を実施する。本発明によれば、限界値を特定する場合、それらも含まれる。
【0022】
本発明によれば、次いで、本明細書に前述のように、硫酸バリウムの表面上に溶解された金属化合物を析出させて、金属酸化物、金属水酸化物、金属水和物、金属オキシ水酸化物および/または金属オキシ水和物の層を形成するために、上記スラリーを酸または複数の酸の混合物と混合する。好ましくは、使用される酸は、硫酸、水性硫酸アルミニウム溶液またはリン酸であり、それほど好ましくないのは塩酸および硝酸である。
【0023】
金属化合物の析出がより低いpH値で起こるので、上記スラリーを一般的に3から9のpH値、好ましくは4から7のpH値、特に好ましくは5のpH値に調節する。約20℃以上の温度、好ましくは50℃から90℃の温度で、析出操作を実施することができる。
【0024】
本発明による好ましい一方法は、段階c)において、アルカリ金属、アルカリ土類およびアルミニウム−ケイ素酸素化合物、それらの水和物およびそれらの混合物から選択される化合物を析出させる方法であり、ここで、SiO2/Al23として計算されるSi/Alの重量比は0.1/1〜10/1、好ましくは1/1から5/1、特に好ましくは2/1〜3/1の範囲である。その点において、SiO2/Al23として計算されるSi/Alの重量比が0.1/1〜10/1好ましくは1/1から5/1、特に好ましくは2/1〜3/1の範囲であるケイ酸アルミニウムを析出させることが特に好ましい。
【0025】
硫酸バリウム表面上の金属−酸素化合物の析出後、本方法をさらに発展させて、好ましくは高温で、最大240分間にわたり、特に好ましくは60から120分間にわたり、好ましくは50℃から90℃の温度で、硫酸バリウム懸濁液を熟成処理にかける。
【0026】
熟成処理は硫酸バリウムの表面上の金属化合物の完全な反応および堆積のための後処理段階であり、一般的に特定の時間の後に終了する。
【0027】
熟成処理後、そのように生成された表面修飾された硫酸バリウムを濾別し、乾燥および粉砕することができる。一例として、噴霧乾燥、棚乾燥、凍結乾燥および/またはグラインドミル乾燥(grind mill drying)が表面修飾された粒子の乾燥用に挙げられる。
【0028】
本発明による方法を使用してそのように得ることができる表面修飾された硫酸バリウム粒子は、一般的に、0.1〜20μmの範囲、好ましくは0.1〜10μmの範囲、特に好ましくは0.1〜6.0μmおよび非常に特に好ましくは0.3〜1.5μmの範囲の粒径である。
【0029】
場合によっては、さらなる表面処理を乾燥前または乾燥後に実施することができる。その場合、例えば湿潤剤、分散剤および/または解こう剤などの添加剤を硫酸バリウム粒子の表面に塗布することができる。
【0030】
その目的のために、以下の物質の1種または複数を添加剤として使用することができる。アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、有機酸の金属またはアンモニウム塩(例えばポリ(メタ)アクリル酸の塩)、アクリレートまたはメタクリレートコポリマーのアルカリ金属塩、ポリホスフェート(無機または有機ポリホスフェート、カリウムテトラポリホスフェート)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテル、アニオン変性ポリエーテル、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、変性ポリウレタン、アニオン活性(anion−active)脂肪族エステル、カルボン酸、石鹸、金属石鹸、アルコール(例えば、1,1,1−トリメチロールプロパン)、ペンタエリトリトール、ネオペンチルグリコール、ポリグリコール(例えば、ポリエチレングリコール)、ポリエチレングリコールエーテル、有機エステル、シラン、ジルコネート、チタネート、シロキサン、シリコーン油、RSO2Rの式の有機スルホン、有機ケトン(R−(C=O)−R)、有機ニトリル(RCN)、有機スルホキシド(R−SO2)、有機アミド、有機アミン(例えば、トリエタノールアミン)、脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミド、ここでRは有機残基、例えばアルキル残基を表す。
【0031】
シラン処理した表面修飾されたBaSO4粒子の生成のために、本明細書に前述の通り既に生成された無機的に表面修飾されたBaSO4粒子を含む水性懸濁液を少なくとも1種のシランでさらに修飾する。使用されるシランは、好ましくはアルコキシアルキルシランであり、特に好ましくは、アルコキシアルキルシランは、オクチルトリエトキシシラン、γ−メタクリルプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアミノ官能性シラン、γ−イソシナトプロピルトリエトキシ(isocynatopropyltriethoxy)シラン、ビニルトリメトキシシランおよび/またはγ−アミノプロピルシルセスキオキサンなどの加水分解シランから選択される。その目的のため、洗浄操作の前またはその後、金属酸化物で無機的に表面修飾されたBaSO4粒子を含む懸濁液を、激しく撹拌または分散しながらアルコキシアルキルシランと混合する。本発明によれば、好ましくは最高40℃の温度における、好ましくは10から60分の熟成時間がそれに続く。次いで、さらなる手順は既に前述の通りである。別法として、アルコキシアルキルシランを無機的に修飾された粒子にそれらと混合することによって乾燥後に塗布することもできる。
【0032】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの工程段階を連続操作手順で実施する、すなわち、定義された工程段階で形成される生成物を連続的に次の工程段階に移動する。
【0033】
発明の工業的応用の方法
本発明は、本発明による方法によって生成し得る表面処理硫酸バリウムならびに、有機ポリマー組成物、コーティング、染料、塗料およびラッカー、プライマー、分散性染料、コーティングラッカー系、自動車塗料およびラッカー、電子産業用のもの(PCBインキ)を含む印刷インキ、粉末ラッカー、接着剤、紙および熱硬化性または熱可塑性材料などのプラスチック材料、例えば射出成形品、フィルム、繊維またはブロー成形品の形態のものにおける添加剤としての硫酸バリウムの使用にも関する。
【0034】
より正確には、本発明による場合によってシラン処理したBaSO4粒子は、機械的特性、耐薬品性、光沢、耐腐食性、バリヤー性、被覆能力(coverage capability)および/または接着性を改善するためのコーティングに使用することができる。
【0035】
PCBインキの製造用に本発明による硫酸バリウムを使用する場合、例えばレオロジー制御、耐薬品性およびはんだ付け適性についての要求特性を同時に達成しながら、現在使用されている添加剤と比較して改善されている所望の光学特性(増加した光沢、減少した濁り度)を有するラッカー層を生成することができることが見出されている。
【0036】
本発明に従って生成される粒子を、熱硬化性材料、エラストマーおよび熱可塑性材料に使用して機械的特性および熱特性を改善することができる。
【0037】
本発明による方法によって得ることができる表面処理された硫酸バリウムは、ポリマーフィルムについてのブロッキング防止特性を改善するために特に良好に使用することができる。その場合、ポリマーは熱可塑性ポリマーの群から選択されることが好ましい。それらには、特にポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、PVCまたは2から8個のC原子を有するオレフィンモノマーのポリオレフィンが含まれる。添加剤はポリエステルのポリマーフィルム用に特に適しており、PETは特に好ましい。フィルムのCOF値の著しい改善を、本発明による表面処理された硫酸バリウムを使用した場合に測定した値に基づいて実証することができる。フィルムにおけるブロッキング防止添加剤としての使用のために、本発明による表面処理された硫酸バリウムの粒径は、d=0.01〜20μmの範囲であり、特に好ましくはd=0.5〜10μmである。フィルムにおける表面処理された硫酸バリウムの使用の濃度は本発明によれば0.01〜5.0重量%である。
【0038】
ブロッキング防止特性の改善に加えて、本発明者らは、ポリマーの光学特性を改善するための研究を実施し、本発明に従って生成された添加剤は、特にフィルム形態のポリマーに、より少ない程度の濁り度、増加した透明度および同様に改善された光沢を付与することを確立した。したがって、同時に減少した濁り度を有する高光沢フィルムを製造することが可能である。
【0039】
したがって、本明細書で先に言及されたポリマー用に本発明による添加剤を使用する場合、高光沢布をもたらす「スーパーブライトヤーン」繊維と称されるものを製造することも可能である。d=0.2〜0.9μmの粒径の本発明による添加剤は、その目的に好ましく適している。繊維における表面修飾された硫酸バリウムの使用の濃度は、本発明によれば0.01〜2.0重量%である。
【0040】
熱可塑性材料のマスターバッチおよび化合物を、本発明に従って処理した硫酸バリウムを用いて製造することができ、それらにおいて、特にさらなる複雑化および費用を必要とせずに、高級な製品をそれらから製造することができるほどに、添加剤粒子は良好に分散されていることは特に有利である。ポリマー手順への添加剤の導入は、押出しマスターバッチに加えて、スラリー経路を用いて実施することもできる。
【0041】
研究に基づいて、本発明者らは、本発明による表面処理された硫酸バリウムの使用は、シリカを使用する場合と少なくとも同じ「ブロック防止性能」(COF)を提供し、同時に改善した光学フィルム特性(光沢、濁り度、透明度)および同時に改善した加工特性を提供することを示すことができた。
【0042】
本発明を以下に製造の実施例を参照してさらに説明する。
【0043】
製造の実施例
以下は全ての製造の実施例において出発原料として役立った。
・BaSO4−70%固体含有率を有する濾過ケーク、硫酸バリウムに対して0.1%のサルフェート過剰およびd=1μmの粒径
・約3μS/cmの導電率の脱塩水
・硫酸5%
・384gのSiO2/lを含むNa2SiO3溶液
・75gのAl23/lを含むAl2(SO43溶液
・262gのAl23/lを含むNaAlO2溶液
【0044】
(比較例1)
1683gのBaSO4ペースト(約1200gのBaSO4)を計量して5Lビーカーに入れ、対応する量の脱塩したH2Oを添加して30%の固体含有率に設定した。この懸濁液のpH値は11.2であった。この混合物を分散し、得られた懸濁液を撹拌しながら80℃に加熱した。30分間かけた5%硫酸のゆっくりとした添加によって、この懸濁液をpH5のpH値に調節する。その操作において、この懸濁液を、タービン撹拌機を用いて撹拌した。次いで、この懸濁液を65℃の温度でさらに1時間撹拌した(熟成時間)。その後、この懸濁液を、吸引漏斗を通して吸引した。この濾過ケークを2時間半、乾燥器中において200℃で乾燥した。この固体を粉砕し、0.3%トリエタノールアミンと混合しエアジェット破砕(air jet crushing)にかけた。
【0045】
(比較例2)
比較例2の生成を5Lビーカー中で実施した。1323gのペーストを、脱塩したH2Oを用いてスラリーにして3300gを得た。この懸濁液を70℃に加熱し、次いで塩酸を用いてpH7に調節した。次いで、約5gのBa2+/lのバリウム過剰を350mLのBaS溶液(約50〜55gのBaS/L)を用いて設定した。塩酸を再び使用してpH7に設定し、次いでNa2SiO3溶液(BaSO4に対して0.2%のSiO2)を添加した。塩酸を使用してpH4に設定し、熟成を30分間行った。苛性ソーダ液を使用してpH6.0に設定し、NaAlO2溶液(BaSO4に対して0.1%のAl23)を添加し、pH値を維持した。その後の手順はpH7.0に設定し30分間熟成することであった。懸濁液を吸引し約1.5Lの脱塩水/1kgのBaSO4で洗浄した。濾過ケークを200℃で乾燥しエアジェット破砕にかけた。
【0046】
(比較例3)
比較例3の生成を5Lビーカー中で実施した。1323gのペーストを、脱塩したH2Oを用いてスラリーにして3300gを得た。この懸濁液を70℃に加熱し、次いで塩酸を用いてpH7に調節した。次いで、約5gのBa2+/lのバリウム過剰を350mLのBaS溶液(約50〜55gのBaS/L)を用いて設定した。塩酸を再び使用してpH7に設定し、次いでNa2SiO3溶液(BaSO4に対して0.1%のSiO2)を添加した。塩酸を使用してpH4に設定し、熟成を30分間行った。苛性ソーダ液を使用してpH6.0に設定し、NaAlO2溶液(BaSO4に対して0.2%のAl23)を添加し、pH値を維持した。その後の手順はpH7.0に設定し30分間熟成することであった。懸濁液を吸引し約1.5Lの脱塩水/1kgのBaSO4で洗浄した。濾過ケークを200℃で乾燥しエアジェット破砕にかけた。
【0047】
(比較例4)
比較例4の生成を5Lビーカー中で実施した。1720gのBaSO4ペースト(約1204gのBaSO4)を計量し、対応する量の脱塩したH2Oを添加して26重量%の固体含有率に設定した。この懸濁液を70℃に加熱し、次いでpH7に調節した。BaSO4に対して0.3%のP25の割合に対応して、25gの20%リン酸(H3PO4)を、この懸濁液にゆっくりと添加した。その後、BaSO4に対して0.5%のSiO2の割合に対応して、15.7mLのNa2SiO3溶液をゆっくりと添加した。その点において、pH値が7.5を超えないようにpH値を調節した。70℃でさらに15分間、撹拌を実施した。次いで、BaSO4に対して0.57%のAl23の割合に対応して、26.2mLのNaAlO2溶液をゆっくりと添加した。pH7.5を超えないようにpH値を調節した。次いで、この懸濁液を70℃の温度でさらに2時間撹拌した(熟成時間)。その後、この懸濁液を、吸引漏斗を通して吸引した。濾過ケークを2時間半、乾燥器中において200℃で乾燥した。この固体を粉砕しエアジェット破砕にかけた。
【実施例1】
【0048】
比較例1と同じ手順を実施するが、懸濁液の固体含有率を26%に調節した。この懸濁液のpH値は11.4であった。さらに、(pH5への)pH調節の前に、BaSO4に対して0.5%のSiO2の割合に対応して、15.65mLのNa2SiO3溶液をBaSO4溶液に添加し80℃に加熱した。
【実施例2】
【0049】
比較例1と同じ手順を実施するが、懸濁液の固体含有率を26%に調節した。この懸濁液のpH値は11.3であった。さらに、(pH5への)pH調節の前に、BaSO4に対して0.3%のSiO2の割合に対応して、9.4mLのNa2SiO3溶液をBaSO4溶液に添加し80℃に加熱した。
【実施例3】
【0050】
比較例1と同じ手順を実施するが、懸濁液の固体含有率を26%に調節した。この懸濁液のpH値は11.4であった。さらに、(pH5への)pH調節の前に、BaSO4に対して0.32%のSiO2の割合に対応して、10mLのNa2SiO3溶液をBaSO4溶液に添加し80℃に加熱した。硫酸によるpH値の調節の代わりに、Al2(SO43溶液でpH値を調節した。Al2(SO43の添加量は、BaSO4に対する0.11%のAl23の割合に対応した。
【実施例4】
【0051】
1720gのBaSO4ペースト(約1204gのBaSO4)を計量して5Lビーカーに入れ、適切な量の脱塩したH2Oを添加して26%の固体含有率に設定した。この懸濁液のpH値は11.5であった。この混合物を分散し、得られた懸濁液(バッチ)を磁気撹拌機の加熱プレートで80℃に加熱した。BaSO4に対して0.37%のSiO2の割合に対応して、11.6mLのNa2SiO3溶液を、加熱したBaSO4懸濁液に添加した。次いで、約30ml/分で、この懸濁液をポンプでさらなる容器(1Lビーカー、低い形状)に汲み出した。そこで、pH5へのpH値の調節のために、Al2(SO43溶液を、さらなるポンプを用いてこの容器に輸送した。Al2(SO43の添加量は、BaSO4に対する0.11%のAl23の割合に対応した。この懸濁液をタービン撹拌機で撹拌した。8cmの充てんレベルを一定に保つために、5のpHに調節した懸濁液を熟成容器(3Lビーカー)にさらなるポンプで輸送した。その場合、この懸濁液を約30ml/分で容器のより低い部分(約2cmの高さ)から汲み出した。プラスチック台形撹拌機(plastic trapezium agitator)で撹拌しながら、この懸濁液を熟成容器中で65℃の温度に設定した。実験(約55分)の終了および1時間の熟成時間の後、この懸濁液を、吸引漏斗を通して吸引した。濾過ケークを2時間半、乾燥器中において200℃で乾燥した。この固体を粉砕し、0.3重量%のトリエタノールアミンと混合しエアジェット破砕にかけた。
【実施例5】
【0052】
比較例1と同じ手順を実施したが、懸濁液の固体含有率を26%に設定した。この懸濁液のpH値は11.7であった。硫酸によるpH値の調節の代わりに、Al2(SO4)溶液を用いて5のpH値に設定した。Al2(SO43の添加量はBaSO4に対する0.1%のAl23の割合に対応した。
【0053】
分散性試験
1日、4日および7日の空調された室内貯蔵(35℃;70%空気湿度)の前およびその後に、本明細書で後述する分散試験に従って、サンプルの分散性を試験した。初期の分散性に関して、本発明に従って後処理した全てのサンプル(実施例1〜5)は、後処理にかけなかった比較サンプル1より著しくより良好であった。本発明に従って後処理した全てのサンプル(実施例1〜5)の初期の分散性レベルは、無機的に後処理した比較サンプル2、3および4と比較しても著しく改善されている。空調された室内貯蔵の後でさえ、実施例1から5から本発明に従って生成したサンプルは、無機的な後処理にかけなかった比較サンプル1ならびに比較サンプル2、3および4より著しくより良好に分散することができる。
【0054】
本発明によれば、実用条件下で6カ月の貯蔵期間の後に、それらが25μm未満の細末度(それぞれHegman 6または1ミルに対応)を有する場合、無機添加剤および硫酸バリウムなどの粒子は良好な分散性を有することを理解されたい。強制条件下の試験として、7日間の空調された室内貯蔵(35℃、70%空気湿度)の後に、細末度を評価することができ、良好な分散性としては25μm未満であるべきである。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
示され得るように、本発明に従って実施される無機的な後処理は、硫酸バリウムの空調された室内貯蔵後の分散性および貯蔵安定性に好ましい影響を有する。
【0058】
分散性試験
2.5gの結合剤(Synolac AS 631 HV 試験ベンジン中48%)を計量しプラスチックビーカー中に入れ、その後、5gのサンプル材料を添加する。全体をへらで完全によく練り、次いで、自動顔料ミル(pigment mill)、例えばJEL/25/53のより低いプレート上に置く。次いで、1×25回転で2.5kgの適用重量(50kg/cm2に対応)で、分散を実施した。分散したペーストをガラスプレートから、へらで取り出し、第2のプラスチックビーカー中に導入し、1.5g(±0.2g)の結合剤で希釈し、グラインドメーター上に引き伸ばす。破砕細末度の程度(粒度)をDIN/EN/ISO 1524に基づいて求める。最初の1個または複数の凝集物が斜面上に見られた目盛りにおいて過大粒子を読み取る。視覚的に確認された粒子の細末度の値または過大粒子を書き留める。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵安定性のよい硫酸バリウムの製造方法であって、
a)硫酸バリウムの水性懸濁液を、過剰な硫酸イオンの存在下で9から12のpH値に設定し、
b)得られる硫酸バリウムの懸濁液を、9から12のpH値において、前記pH値で溶ける金属化合物の少なくとも1種の水溶液またはそれらの混合物と混合し、
c)得られる懸濁液を、少なくとも1種の酸または酸混合物の添加によって3から9のpH値に設定し、ここで硫酸バリウム粒子の表面に水溶性金属化合物の金属−酸素化合物を堆積させ、
d)得られる硫酸バリウム粒子を濾別する、
硫酸バリウムの製造方法。
【請求項2】
段階a)において、硫酸バリウムが20から60重量%の固体含有率を有する水溶液中で使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階b)において、硫酸バリウムの前記懸濁液が、硫酸バリウムに対して金属化合物の最大20重量%、好ましくは10重量%、特に好ましくは1重量%、非常に特に好ましくは0.5重量%の量の前記金属化合物の水溶液と混合される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
段階c)およびd)の間の中間段階において、硫酸バリウムの前記懸濁液が、最大240分間にわたり熟成処理にかけられる、請求項1、2および3の一項に記載の方法。
【請求項5】
段階b)における付加操作が、少なくとも20℃の温度で、好ましくは50℃から90℃で実施される、請求項1から4の一項に記載の方法。
【請求項6】
段階b)において、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびアルミニウム塩、それらの水和物およびそれらの混合物から選択される9から12のpH値において溶ける少なくとも1種の金属化合物が使用される、請求項1から5の一項に記載の方法。
【請求項7】
段階c)においてpH値を調節するための酸として、硫酸、硫酸アルミニウム溶液および/またはリン酸が使用される、請求項1から6の一項に記載の方法。
【請求項8】
段階c)におけるpH調節が最大120分間にわたり、好ましくは最大60分間にわたり、特に好ましくは5〜30分間にわたり実施される、請求項1から7の一項に記載の方法。
【請求項9】
段階c)において、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびアルミニウム−ケイ素酸素化合物、それらの水和物およびそれらの混合物から選択される化合物を析出させ、ここで、SiO2/Al23として計算されるSi/Alの比は0.1/1〜10/1、好ましくは1/1から5/1および特に好ましくは2/1〜3/1の範囲である、請求項1から8の一項に記載の方法。
【請求項10】
段階c)において、ケイ酸アルミニウムを析出させ、ここで、SiO2/Al23として計算されるSi/Alの比は0.1/1〜10/1、好ましくは1/1から5/1および特に好ましくは2/1〜3/1の範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
段階d)からの硫酸バリウム粒子が、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、石鹸および解こう剤から選択される1種または複数の添加剤と混合される、請求項1から10の一項に記載の方法。
【請求項12】
段階d)からの硫酸バリウム粒子を、さらなる段階において乾燥し破砕する、請求項1から11の一項に記載の方法。
【請求項13】
前記硫酸バリウム粒子が0.01〜20μmの範囲、好ましくは0.1〜10μmの範囲、特に好ましくは0.1〜6.0μmおよび非常に特に好ましくは0.3〜1.5μmの範囲の粒径である、請求項1から12の一項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの工程段階が、連続操作手順において実施される、請求項1から13の一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14の一項に記載の方法によって製造し得る表面処理された硫酸バリウム。
【請求項16】
特に繊維、ブロー成形およびフィルム用の有機ポリマー組成物用の添加剤としての、請求項15に記載の硫酸バリウムの使用。
【請求項17】
コーティング剤における添加剤としての、請求項15に記載の硫酸バリウムの使用。

【公表番号】特表2011−522079(P2011−522079A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511017(P2011−511017)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056585
【国際公開番号】WO2009/147077
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(510113265)サハトレーベン・ヒェミー・ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】