説明

良好な貯蔵安定性を有する塗料および該塗料から形成される、良好な耐候性と共に高い耐引掻性を有する塗膜

本発明は、(A)少なくとも1つのヒドロキシル基含有のポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレートおよび/またはポリウレタンおよび/またはポリエステルおよび/またはポリシロキサンおよび(B)ブロック化されたイソシアネート基およびアルコキシシラン基を有する少なくとも1つの化合物(B)を含有する非プロトン性溶剤をベースとする塗料であって、(i)成分(A)のヒドロキシル基が少なくとも1つの非環式オルトエステルでブロック化され、(ii)化合物(B)が−N(X−SiR’’x(OR)3-xn(X’−SiR’’y(OR)3-ym (II)〔式中、Rは、水素、シクロアルキル基またはアルキル基であり、X、X’は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状および/または分枝鎖状のアルキレン基またはシクロアルキレン基であり、R’’は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、n、m、x、yは、0〜2であり、ならびにm+nは、2である〕で示される少なくとも1個の構造単位(II)を有し、および(iii)アルコキシシラン基の少なくとも90モル%は、エトキシシラン基であることを特徴とする、非プロトン性溶剤をベースとする塗料に関する。更に、本発明の対象は、前記塗料を使用しての多工程塗装法ならびにクリヤラッカーとしての塗料の使用または自動車量産塗装および自動車内または自動車上の構成部品の塗膜系のための塗装法の使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(A)少なくとも1つのヒドロキシル基含有のポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレートおよび/またはポリウレタンおよび/またはポリエステルおよび/またはポリシロキサンおよび(B)ブロック化されたイソシアネート基およびアルコキシシラン基を有する少なくとも1つの化合物を含有する非プロトン性溶剤をベースとする熱硬化性塗料に関する。
【0002】
欧州特許出願公開第1211273号明細書の記載から、ヒドロキシル基含有結合剤と共に架橋剤として脂肪族および/または脂環式のポリイソシアネートと少なくとも1つの第2級3−アミノプロピルトリアルコキシシランおよび少なくとも1つのブロック化剤との反応生成物を含有する1K[一成分系]塗料は、公知である。この場合、シラン化合物として、有利にN−アルキル−3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、殊にN−ブチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランが使用される。この塗料は、シラン化されていない、ブロック化されたイソシアネートをベースとする従来の1K塗料と比較して、ブロック化されたイソシアネートの僅かな結晶傾向ならびに生じる塗膜の改善された耐引掻性を示す。しかし、なかんずく塗料の不十分な貯蔵安定性だけが欠点である。
【0003】
更に、WO 08/110229およびWO 08/110230の記載から、ヒドロキシル基含有結合剤およびアミノプラスト樹脂および/またはイソシアネートと共に架橋剤としてイソシアネートと表面活性化合物およびアミノアルキルトリアルコキシシランとの反応生成物を含有する1Kおよび2K塗料は、公知である。シラン基含有反応生成物は、生じる塗膜の表面で含量が増大し、そこで塊状物と比較して高められた架橋密度を生じる。それによって、こうして得られた塗膜は、極めて良好な耐候性および亀裂安定性と共に改善された耐引掻性およびミクロ針入硬度を示す。改善が必要であるパラメーターは、1K塗料の貯蔵安定性である。
【0004】
更に、WO 05/092934の記載から、殊に結合剤としてオルトエステルでブロック化されたヒドロキシル基含有ポリ(メタ)アクリレートおよび架橋剤として遊離イソシアネート基を有するジ−および/またはポリイソシアネートを含有する自動車修復塗装のための1K塗料は、公知である。この塗料は、有機溶剤の含量が減少されることを示す。改善が必要であるパラメーターは、生じる塗膜の耐引掻性ならびに塗料の貯蔵安定性である。
【0005】
更に、欧州特許第1225172号明細書の記載から、ポリオルトエステル(A)、ヒドロキシル基と比較して反応性の基を有する架橋剤(B)、例えばブロック化または非ブロック化イソシアネート、アミノプラスト樹脂、エポキシ樹脂、無水物またはアルコキシシラン基含有成分、および場合によりヒドロキシル基含有化合物(C)を含有する塗料は、公知である。この場合、ポリオルトエステル(A)は、(a)少なくとも1つのモノマーのα−グリコールおよび/またはβ−グリコールと(b)ヒドロキシル基含有の、グリコール(a)とは異なるオリゴマーおよび/またはポリマーの化合物、例えばヒドロキシル基含有ポリ(メタ)アクリレートと(c)C1〜C4カルボン酸のオルトエステル、例えば殊にオルトホルミエートおよびオルトアセテートとの反応生成物である。ポリオルトエステルの製造においてα−グリコールおよび/またはβ−グリコールを使用することによって、ポリオルトエステルのゲル化は、阻止され、生じるポリオルトエステルの粘度は、減少されることを目指している。しかし、この場合には、生じる塗料の貯蔵安定性を如何にして改善することができるのかということに関連しての情報があるにも拘わらず、一方で塗料の有効な硬化が保証されるという情報を欠いており、同様に生じる塗膜の耐引掻性を改善することに関連しての情報も欠いている。更に、そこで使用されるポリオルトエステルの製造には、まさしく費用が掛かり、不利である。
【0006】
最後に、米国特許第6297329号明細書の記載から、二環式オルトエステルまたはスピロオルトエステルでブロック化されたヒドロキシル基含有のモノマーまたはポリマー化合物、場合によりブロック化されていないヒドロキシル基含有化合物およびヒドロキシル基に比較して反応性の基を有する架橋剤を含有する塗料は、公知である。特殊なオルトエステルでのブロック化によって、結合剤の粘度は、ブロック化されていない結合剤の粘度に比較して減少され、それによって比較的僅かな溶剤含量を有する塗料の提供を可能にすることを目指している。付加的に、塗膜のたるみ挙動は、改善される。それというのも、塗料の粘度は、塗布後に空気湿分との接触によってオルトエステルが除去され、こうして比較的高い粘度を有するヒドロキシル基含有結合剤が再び放出されるという事実のために増加するからである。
【0007】
架橋剤の適した、ヒドロキシル基と比較して反応性の基のための例として、米国特許第6297329号明細書には、ブロック化または非ブロック化イソシアネート基、アセタール基、エポキシ基、カルボキシル基、無水物基および/またはアルコキシシラン基が挙げられる。それとは別に、架橋剤として、アミノプラスト樹脂が使用されてもよい。しかし、架橋剤を選択することによって、生じる塗膜の性質、例えば耐引掻性、耐候性および耐酸性を如何にして制御することができるかという情報は、この刊行物には、含まれていない。更に、この場合も塗料の貯蔵安定性は、改善の必要があるパラメーターである。
【0008】
課題
本発明の課題は、殊に極めて良好な貯蔵安定性を有する、即ち40℃の温度で貯蔵した際の粘度が28日間で50%を上廻って上昇してはならない、自動車量産塗装および自動車内または自動車上のプラスチック構成部品の塗膜系を提供することであった。同時に、塗料は、自動車塗装の範囲内で通常の硬化条件下で、殊に100〜200℃の温度で10分間ないし1時間で極めて良好な硬化を保証すべきであった。
【0009】
更に、塗料は、硬度に耐引掻性であり、殊に引掻の負荷後に高い光沢保留性を有する、高光沢の塗膜を生じるべきであった。更に、生じる塗膜および塗膜系、殊にクリヤラッカー塗膜は、自動車量産塗装(OEM)の工業的および審美的に特に要求の多い分野にも使用可能であるべきである。即ち、また、塗膜は、良好な耐酸性および焼付けにおける僅かな黄変を有するべきであった。更に、新規の塗料は、簡単に極めて良好に再現可能に製造できるはずであり、塗料材料の施用中に何らの環境問題も起こさないはずである。
【0010】
課題の解決
上記の課された課題に照らしてみて、
(A)少なくとも1つのヒドロキシル基含有のポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレートおよび/またはポリウレタンおよび/またはポリエステルおよび/またはポリシロキサンおよび
(B)ブロック化イソシアネート基およびアルコキシシラン基を有する少なくとも1つの化合物(B)を含有する非プロトン性溶剤をベースとする塗料であって、
(i)成分(A)のヒドロキシル基が少なくとも1つの非環式オルトエステルでブロック化され、
(ii)化合物(B)が式(II)
−N(X−SiR’’x(OR)3-xn(X’−SiR’’y(OR)3-ym (II)
〔式中、
Rは、水素、シクロアルキル基またはアルキル基であり、この場合炭素鎖は、隣接していない酸素−、硫黄−またはNRa基によって中断されていてよく、この場合Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、
X,X’は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状および/または分枝鎖状のアルキレン基またはシクロアルキレン基であり、好ましくはX、X’は、1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり、
R’’は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、この場合炭素鎖は、隣接していない酸素−、硫黄−またはNRa基によって中断されていてよく、この場合Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、好ましくは、R’’は、殊に1〜6個のC原子を有するアルキル基であり、
nは、0〜2であり、mは、0〜2であり、m+nは、2であり、ならびにx、yは、0〜2である〕で示される少なくとも1個の構造単位(II)を有し、
および
(iii)成分(B)中に存在する全部のアルコキシシラン基の少なくとも90モル%がエトキシシラン基SiOC25であることによって特徴付けられる、非プロトン性溶剤をベースとする前記塗料が見い出された。
【0011】
更に、本発明の対象は、前記塗料を使用しての多工程塗装法ならびにクリヤラッカーとしての塗料の使用または自動車量産塗装および自動車内または自動車上のプラスチック構成部品の塗装法の使用である。
【0012】
先行技術を考慮して、本発明の根底をなす課題が本発明による塗料により解決できることは驚異的なことでありかつ当業者には予想できなかった。
【0013】
即ち、本発明による塗料が極めて良好な硬化に関連して極めて良好な貯蔵安定性を示すことは、殊に驚異的なことである。即ち、塗料の粘度は、40℃の温度での貯蔵の際に28日間内に50%を上廻って上昇することはない。しかし、また同時に、塗料は、自動車塗装の範囲内で通常の硬化条件下で、殊に100〜200℃の温度で10分間ないし1時間で極めて良好な硬化を示す。
【0014】
更に、本発明による塗料が、高度に耐引掻性を有しかつ殊に引掻の負荷後に高い光沢保留性を有する塗膜を生じることは、好ましい。
【0015】
同時に、本発明による塗料は、応力の亀裂が発生することなしに、40μmを上廻る層厚で形成することもできる、新規の塗膜および塗膜系、特にクリヤラッカー塗膜をもたらす。その結果、本発明による塗膜および塗装系、殊にクリヤラッカー塗膜は、自動車量産塗装(OEM)の工業的および審美的な特に要求の多い分野において使用されうる。また、塗膜は、良好な耐酸性および焼付けにおける僅かな黄変を有する。
【0016】
最後に、本発明による塗料は、特に簡単に極めて良好に再現可能に製造されることができ、塗料材料の適用中に何らの毒性問題および環境問題も起こさない。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明による塗料
ヒドロキシル基含有化合物(A)
塗料が成分(A)として少なくとも1つのヒドロキシル基含有ポリアクリレートおよび/または少なくとも1つのヒドロキシル基含有ポリメタクリレートおよび/または少なくとも1つのヒドロキシル基含有ポリウレタンおよび/または少なくとも1つのヒドロキシル基含有ポリシロキサンおよび/または少なくとも1つのヒドロキシル基含有ポリエステルを含有することは、本発明にとって本質的なことである。
【0018】
好ましいオリゴマーおよび/またはポリマーのポリオール(A)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定した、500ダルトンを上廻る、有利に800〜100000ダルトン、殊に1000〜50000ダルトンの質量平均分子量を有する。
【0019】
ポリオールは、有利に30〜300mg KOH/g、殊に100〜200mg KOH/gのOH価を有する。
【0020】
ポリオールのガラス転移温度は、−150〜100℃、特に有利に−120℃ないし10℃未満である。ガラス転移温度は、DIN−EN−ISO 11357−2によるDSC測定法により測定される。
【0021】
特に有利には、成分(A)として第1級ヒドロキシル基を有するポリオールが使用される。それというのも、このポリオールは、特に有利に完全にオルトエステルでブロック化させることができるからである。
【0022】
適当なポリエステルポリオールは、例えば欧州特許出願公開第0994117号明細書、欧州特許出願公開第1273640号明細書およびドイツ連邦共和国特許第102007026722号明細書中に記載されている。ポリウレタンポリオールは、特にポリエステルポリオールプレポリマーを適当なジ−またはポリイソシアネートと反応させることによって製造され、例えば欧州特許出願公開第1273640号明細書中に記載されている。適当なポリシロキサンポリオールは、例えばWO−A−01/09260中に記載されており、この場合そこに記載されたポリシロキサンポリオールは、有利に他のポリオール、殊に比較的高いガラス転移温度を有するものと組み合わせて使用されてよい。
【0023】
本発明により殊に好ましいポリアクリレートポリオールおよび/またはポリメタクリレートポリオールならびにこれらの共重合体、以下、ポリアクリレートポリオールと呼称する、は、一般にコポリマーであり、それぞれポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した、1000ダルトン、殊に1500〜10000ダルトンの質量平均分子量Mwを有する。
【0024】
コポリマーのガラス転移温度は、一般に−100〜100℃、殊に−50ないし10℃未満である。
【0025】
ガラス転移温度は、DIN−EN−ISO 11357−2によるDSC測定法により測定される。
【0026】
ポリアクリレートポリオールは、有利に60〜250mg KOH/g、殊に70〜200mg KOH/gのOH価を有する。OH価は、アセチル化において物質1gによって結合された酢酸の量と等量である水酸化カリウムのmg数を示す。試料は、測定のために無水酢酸ピリジンと一緒に煮沸され、生じる酸は、水酸化カリウム溶液で滴定される(DIN 53240−2)。
【0027】
また、最終的に硬化された塗膜の性質は、ヒドロキシル基含有結合剤を選択することによって影響を及ぼされうる。即ち、一般に成分(A)のOH価が上昇すると、シラン化度、即ち式(II)および場合により(III)の構造単位の量を減少させることができ、このことは、さらに最終的に硬化された塗膜の耐候性に対してプラスの影響を結果としてもたらす。
【0028】
ポリアクリレートポリオールは、有利に0〜30mg KOH/gの酸価を有する。
【0029】
この場合、酸価は、成分(A)のそれぞれの化合物1gを中和させるために消費される水酸化カリウムのmg数を示す(DIN EN ISO 2114)。
【0030】
ヒドロキシル基含有モノマー形成ブロックとして、好ましくは、ヒドロキシアルキルアクリレートおよび/またはヒドロキシアルキルメタクリレート、例えば殊に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレートならびに4−ヒドロキシブチルアクリレートおよび/または4−ヒドロキシブチルメタクリレートが使用される。特に有利には、ヒドロキシル基含有モノマー形成ブロックとして、第1級ヒドロキシル基を有するヒドロキシアルキルアクリレートおよび/またはヒドロキシアルキルメタクリレート、殊に4−ヒドロキシブチルアクリレートおよび/または4−ヒドロキシブチルメタクリレートが使用される。
【0031】
更に、モノマー形成ブロックとして、ポリアクリレートポリオールには、有利にアルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレート、例えば特にエチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、第三ブチルアクリレート、第三ブチルメタクリレート、アミルアクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、3,3,5−トリメチルヘキシルアクリレート、3,3,5−トリメチルヘキシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレートまたはラウリルメタクリレート、シクロアルキルアクリレートおよび/またはシクロアルキルメタクリレート、例えばシクロペンチルアクリレート、シクロペンチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレートまたは殊にシクロヘキシルアクリレートおよび/またはシクロヘキシルメタクリレートが使用される。
【0032】
更に、ポリアクリレートポリオールのためのモノマー形成ブロックとして、ビニル芳香族炭化水素、例えばビニルトルエン、α−メチルスチレンまたは殊にアクリル酸またはメタクリル酸のスチレン、アミドまたはニトリル、ビニルエステルまたはビニルエーテル、ならびに少量で、殊にアクリル酸および/またはメタクリル酸が使用されてよい。
【0033】
成分(A)のヒドロキシル基が少なくとも1つの非環式オルトエステルでブロック化されることは、本発明にとって本質的なことである。
【0034】
好ましくは、成分(A)のヒドロキシル基は、式(I)
【化1】

〔式中、
1、R2およびR4は、同一かまたは異なる基であり、互いに独立に1〜8個の炭素原子を有する直鎖状および/または分枝鎖状のアルキレン基またはシクロアルキレン基、有利に1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり、および
3は、水素または1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基である〕で示される少なくとも1つの非環式オルトエステルでブロック化されている。
【0035】
適当なオルトエステル(I)の例は、蟻酸のオルトエステル(R3水素)、例えばトリメチルオルトホルミエートおよびトリエチルオルトホルミエート、酢酸のオルトエステル(R3メチル)、例えばトリメチルオルトアセテートおよびトリエチルオルトアセテート、プロピオン酸のオルトエステル(R3エチル)、例えばトリメチルオルトプロピオネートおよびトリエチルオルトプロピオネート、および酪酸のオルトエステル(R3プロピルまたはイソプロピル)である。
【0036】
特に有利には、成分(A)のヒドロキシル基は、酢酸のオルトエステル、殊にトリメチルオルトアセテートおよび/またはトリエチルオルトアセテート、および/または蟻酸のオルトエステル、殊にトリメチルオルトホルミエートおよびトリエチルオルトホルミエートでブロック化されている。殊に有利には、成分(A)のヒドロキシル基は、酢酸のオルトエステル、殊にトリメチルオルトアセテートおよび/またはトリエチルオルトアセテートでブロック化されている。
【0037】
ヒドロキシル基含有化合物(A)とオルトエステル、殊にオルトエステル(I)との反応は、通常、当業者に公知の方法で有機溶剤中で高められた温度、殊に40〜100℃の温度で、場合により例えばWO 05/092934、第11頁、最終欄ないし第12頁、第1欄に記載されたような適当な触媒の存在下で行なわれる。
【0038】
この場合、好ましくは、この反応は、過剰量のオルトエステル(I)を使用して行なわれ、それというのも、このようにまさに簡単に生成物のゲル化は、阻止されうるからである。この場合、特に有利には、ヒドロキシル基含有化合物(A)とオルトエステルとの反応は、化合物(A)のヒドロキシル基含量に対して、100モル%を上廻る過剰量、殊に150〜250モル%の過剰量のオルトエステル(I)を使用して行なわれる。
【0039】
この場合、オルトエステル(I)は、成分(A)のための溶剤として機能するか、または塗料中で全体の本発明による塗料のためにも溶剤として機能する。従って、本発明による好ましい塗料は、ヒドロキシル基のブロック化に溶剤として使用される、単数または複数のオルトエステル(I)を含有する。好ましくは、オルトエステルと一緒にさらに他の非プロトン性の有機溶剤が使用される。
【0040】
更に、好ましくは、第1級ヒドロキシル基を有するヒドロキシル基含有化合物(A)が使用される。特に有利には、60モル%を上廻る、殊に80モル%を上廻る、特に有利に90モル%を上廻る、殊に有利に本質的に化合物(A)の全部のヒドロキシル基は、第1級ヒドロキシル基であり、それというのも、塗料の良好な硬化に関連して、こうしてできるだけ良好な貯蔵安定性が保証されるからである。
【0041】
ブロック化されたイソシアネート基およびアルコキシシラン基を有する化合物(B)
本発明による塗料は、成分(B)としてブロック化されたイソシアネート基およびアルコキシシラン基を有する1つ以上の化合物を含有する。
【0042】
本発明により有利に使用されるイソシアネート基含有化合物(B)のための基体として使用されるジ−および/またはポリイソシアネートは、好ましくは、自体公知の置換または非置換の芳香族、脂肪族、脂環式および/またはヘテロ環式のポリイソシアネートである。好ましいポリイソシアネートの例は、次の通りである:2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、1,12−ドデカン−ジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、ペルヒドロジフェニレンメタン−2,4’−ジイソシアネート、4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(Bayer AG社のDesmodur(登録商標)W)、テトラメチルキシリルジイソシアネート(American Cyanamid社のTMXDI(登録商標))および前記ポリイソシアネートの混合物。更に、好ましいポリイソシアネートは、前記ジイソシアネートのビウレット二量体およびイソシアヌレート三量体である。
【0043】
特に好ましいポリイソシアネートPIは、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび4,4’−メチレンジシクロヘキシル−ジイソシアネート、これらのビウレット二量体および/またはイソシアヌレート三量体である。
【0044】
本発明のもう1つの実施態様において、ポリイソシアネートは、ポリオールと化学量論的過剰量の前記ポリイソシアネートとの反応によって得られる、ウレタン構造単位を有するポリイソシアネート−プレポリマーである。このようなポリイソシアネート−プレポリマーは、例えば米国特許第4598131号明細書中に記載されている。
【0045】
化合物(B)が式(II)
−N(X−SiR’’x(OR)3-xn(X’−SiR’’y(OR)3-ym (II)
〔式中、
Rは、水素、シクロアルキル基またはアルキル基であり、この場合炭素鎖は、隣接していない酸素−、硫黄−またはNRa基によって中断されていてよく、この場合Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、好ましくは、Rは、エチル基またはエチル基とメチルとの混合物であり、
X、X’は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状および/または分枝鎖状のアルキレン基またはシクロアルキレン基であり、好ましくは、X、X’は、1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり、
R’’は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、この場合炭素鎖は、隣接していない酸素−、硫黄−またはNRa基によって中断されていてよく、この場合Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、好ましくは、R’’は、殊に1〜6個のC原子を有するアルキル基であり、
nは、0〜2であり、
mは、0〜2であり、
m+nは、2であり、ならびに
x、yは、0〜2、有利に0〜1であり、特に有利にxおよびyは、0である〕で示される少なくとも1個の構造単位(II)を有することは、本発明にとって本質的なことであり、
および
この場合、成分(B)中に存在する全部のアルコキシシラン基の少なくとも90モル%は、エトキシシラン基SiOC25である。
【0046】
即ち、成分(B)がアルコキシシラン基だけを構造単位(II)の形で有する限り、式(II)中のSiOR基の少なくとも90モル%は、エトキシシラン基SiOC25でなければならない。しかし、成分(B)が構造単位(II)に加えてなお他のアルコキシシラン基を有することも可能である。この場合、成分(B)中に存在する全部のアルコキシシラン基の少なくとも90モル%は、エトキシシラン基SiOC25でなければならない。
【0047】
更に、化合物(B)が式(II’)
−N(X−SiR’’x(OR)3-xn(X’−SiR’’y(OR’)3-ym (II’)
〔式中、
Rは、エチル基であり、R’は、メチル基であり、R’’、XおよびX’、n、m、xおよびyは、式(II)において記載した意味を有する〕で示される少なくとも1個の構造単位(II’)を有するような塗料は、好ましい。
【0048】
更に、化合物(B)の少なくとも一部分が構造単位(II)に加えてなお式(III)
−NRs−(X−SiR’’x(OR)3-x) (III)
〔式中、
sは、水素、アルキル、シクロアルキル基、アリールまたはアラルキルであり、この場合炭素鎖は、隣接していない酸素−、硫黄−またはNRa基によって中断されていてよく、この場合Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、
R、R’’およびXは、式(II)において記載した意味を有し、xは、0〜2、有利に0〜1であり、特に有利にxは0である〕で示される少なくとも1個の構造単位(III)を有するような塗料は、好ましい。
【0049】
イソシアネート基含有化合物(B)が、それぞれ構造単位(II)および(III)の全部に対して、式(II)の少なくとも1個の構造単位(II)を5モル%〜95モル%、有利に10モル%超ないし90モル%、特に有利に20〜80モル%、殊に有利に30〜70モル%および式(III)の少なくとも1個の構造単位(III)を5モル%〜95モル%、有利に10ないし90モル未満、特に有利に20〜80モル%、殊に有利に30〜70モル%有するような塗料は、特に好ましい。
【0050】
この場合には、勿論、構造単位(II)と(III)の混合比を考慮しながら、構造単位(II)および(III)のSiOR基の構造は、成分(B)中に存在する全部のアルコキシシラン基の少なくとも90モル%がエトキシシラン基SiOC25であるように選択されるべきであることに注意すべきである。例えば、構造単位(II)の全てのアルコキシシラン基SiORがエトキシシラン基であり、かつ構造単位(III)のアルコキシシラン基SiORの割合が構造単位(II)および(III)の総和に対して10モル%だけである場合には、専ら構造単位(III)中のメトキシシラン基が使用されてもよい。
【0051】
構造単位(II)および(III)中のそれぞれのアルコキシシラン基SiORは、同一でも異なっていてもよいが、どの点において前記基が加水分解可能なシラン基の反応性に影響を及ぼすかは、前記基の構造にとって決定的なことである。即ち、少なくとも90モル%のエトキシシラン基の高い割合を使用することによってのみ、一面で塗料の貯蔵安定性が極めて良好であることが意外にも保証されるが、しかし、他面、塗料の硬化が極めて良好であることも保証される。
【0052】
成分(B)中に存在する全部のアルコキシシラン基の少なくとも90モル%がエトキシシラン基SiOC25である場合に、好ましい塗料が得られる。特に有利には、成分(B)中に存在する全てのアルコキシシラン基は、エトキシシラン基SiOC25である。
【0053】
この場合、シラン基の構造は、このシラン基の反応性に影響を及ぼす。シランの相容性および反応性に関連して、3個の加水分解可能な基を有するシランが有利に使用され、即ち構造単位(II)および(III)において、それぞれxおよびyは、0である。
【0054】
式(II)の構造単位(II)および式(III)の構造単位(III)は、有利に上記のジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートのイソシアネート基の一部分が式(IIa)
HN(X−SiR’’x(OR)3-xn(X’−SiR’’y(OR’)3-ym (IIa)
で示される少なくとも1つの化合物および式(IIIa)
H−NRs−(X−SiR’’x(OR)3-x) (IIIa)
で示される少なくとも1つの化合物と反応されることによって成分(B)中に導入され、この場合前記置換基は、上記の意味を有する。
【0055】
上記のジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートの残りのイソシアネート基は、少なくとも1つのブロック化剤と反応される。ブロック化のために、原理的にポリイソシアネートのブロック化に使用可能な全てのブロック化剤は、十分に低い脱ブロック化温度で使用されてよい。
【0056】
好ましくは、成分(B)のイソシアネート基は、ピラゾールでブロック化される。殊に、式(IV)
【化2】

〔式中、R20は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、N置換カルバモイル基、フェニル基、エステル基またはハロゲン基であることができ、nは、整数であり、nは、0、1、2または3である〕で示されるピラゾールが適している。基R20が1個より多い場合には、該基は、同一でも異なっていてもよい。適当なピラゾールは、欧州特許出願公開第159117号明細書、第3〜4頁にも記載されている。
【0057】
特に有利には、成分(B)のイソシアネート基は、置換ピラゾールでブロック化される。この場合には、殊にアルキル置換ピラゾールがこれに該当する。殊に、ブロック化剤としては、R20が殊に1〜4個のC原子を有するアルキル基であり、かつnが1、2または3であるような式(IV)のピラゾールが使用される。例えば、ブロック化剤として、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール等が使用されてよい。特に有利には、成分(B)のイソシアネート基は、3,5−ジメチルピラゾールでブロック化される。
【0058】
この場合、ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートとブロック化剤との反応は、殊に式(IIa)の化合物および場合により式(IIIa)の化合物との反応前または反応後に行なうことができるが、しかし、この場合には、一般にブロック化剤とシラン(IIa)と場合により(IIIa)との同時の反応も可能である。しかし、特に有利には、最初にジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートのイソシアネート基の一部分は、ブロック化剤と反応され、引続き残りの遊離イソシアネート基は、式(IIa)の化合物および式(IIIa)の化合物と反応される。
【0059】
ジイソシアネートまたはポリイソシアネートとブロック化剤との反応は、有利に溶剤中、殊に非プロトン性溶剤中で行なわれる。この場合、温度は、一般に20〜100℃である。
【0060】
ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートと化合物(IIa)および(IIIa)との反応は、特に不活性雰囲気中で最大100℃、有利に最大60℃の温度で溶剤または溶剤混合物中で行なわれる。溶剤または溶剤混合物は、芳香族炭化水素、例えば1,2,4−トリメチルベンゼン、メシチレン、キシレン、プロピルベンゼンおよびイソプロピルベンゼンからなることができる。芳香族炭化水素からの適当な溶剤混合物の1つの例は、ソルベントナフサである。ポリイソシアネート硬化剤を製造することができる溶剤は、脂肪族炭化水素、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトンまたはメチルアミルケトン、エステル、例えばエチルアセテート、ブチルアセテート、ペンチルアセテートまたはエチルエトキシプロピオネート、エーテルまたは前記溶剤からの混合物からなることもでき、この場合には、溶剤混合物の全質量に対して、ブチルアセテートの高い割合、殊にブチルアセテート少なくとも60質量%を有する溶剤混合物が好ましい。特に有利には、溶剤混合物は、ブチルアセテート少なくとも80質量%を含有する。
【0061】
それぞれ塗料の固体含量に対してSi2.0質量%〜7.0質量%の算出したケイ素含量、有利にSi3.0質量%〜6.0質量%の算出したケイ素含量を有する本発明による塗料は、特に好ましい。
【0062】
成分(A)と(B)との組合せならびに塗料の他の成分
ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)との質量割合は、特にイソシアネート含有化合物(B)のブロック化イソシアネート基とヒドロキシル基含有化合物(A)のヒドロキシル基とのモル当量比が0.9:1〜1:1.1、有利に0.95:1〜1.05:1、特に有利に0.98:1〜1.02:1であるように選択される。
【0063】
好ましくは、それぞれ塗料の固体含量に対して20〜80質量%、有利に30〜70質量%の少なくとも1つのヒドロキシル基含有ポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレートおよび/またはポリウレタンおよび/またはポリエステルおよび/またはポリシロキサン、有利に少なくとも1つのヒドロキシル基含有ポリアクリレート(A)および/または少なくとも1つのヒドロキシル基含有ポリメタクリレート(A)を含有する、本発明による塗料が使用される。
【0064】
好ましくは、それぞれ塗料の固体含量に対して20〜80質量%、有利に30〜70質量%の少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物(B)を含有する、本発明による塗料が使用される。
【0065】
触媒(D)
本発明による塗料は、通常、酸をベースとする少なくとも1つの触媒(D)を含有する。ヒドロキシル基の脱ブロック化のため、およびアルコキシシラン基の架橋のため、ならびに化合物(A)のヒドロキシル基と化合物(B)の遊離イソシアネート基との反応のための触媒(D)としては、自体公知の化合物が使用されてよい。
【0066】
殊に、本発明による塗料は、有機酸およびその誘導体をベースとする少なくとも1つの酸触媒ならびに無機酸およびその誘導体をベースとする少なくとも1つの酸触媒を含有する。酸触媒を選択する場合、塗料の貯蔵安定性が保証されていること、即ち周囲温度での触媒の反応が高すぎてはいけないことに注意すべきである。
【0067】
この場合、有利には、スルホン酸およびその誘導体をベースとする触媒が使用される。従って、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンジルスルホン酸、ジノニルナフチルスルホン酸ならびにスルホン酸の相応するエステルおよび記載されたスルホン酸の相応するアミン付加物が有利に使用される。特に有利には、p−トルエンスルホン酸をベースとする酸触媒が使用される。
【0068】
触媒(D)は、本発明による塗料の非揮発性成分に対して0.01〜20質量%の割合、特に有利に0.1〜10質量%の割合で使用される。この場合、触媒の比較的僅かな作用は、相応する高い使用量によって部分的に補償されることができる。
【0069】
好ましくは、本発明による塗料は、なお少なくとも1つの金属有機化合物を含有する。この場合、例示的には、Sn(II)化合物、Sn(IV)化合物、Zn(II)化合物およびBi化合物の群からのPUR技術において常用の触媒が挙げられる。好ましくは、金属有機化合物として、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシド、ビスマスラクテート、酸化ビスマス、殊にジブチル錫ジラウレートが使用される。
【0070】
金属有機化合物は、本発明による塗料の非揮発性成分に対して0.01〜10質量%の割合、特に有利に0.1〜5質量%の割合で使用される。
【0071】
化合物(A)および(B)と共に、場合によりなお、特にポリ(メタ)アクリレート(A)のヒドロキシル基および/または化合物(B)のイソシアネート基および/または化合物(B)のアルコキシシリル基と反応し、かつネットワークノード(Netzwerkpunkte)を形成しうる他の結合剤(E)が使用されてよい。
【0072】
例えば、成分(E)としてアミノプラスト樹脂および/またはエポキシ樹脂が使用可能である。メチロール基および/またはメトキシメチル基が部分的にカルバメート基またはアロファネート基により脱官能化されていてよい、常用の公知のアミノプラスト樹脂がこれに該当する。この種の架橋剤は、米国特許第4710542号明細書および欧州特許第0245700号明細書ならびに刊行物Advanced Organic Coatings Science and Technology Series,1991,第13卷,第193〜207頁中のB.Singhおよび協力者,"Carbamylmethylated Melamines,Novel Cross−linkers for the Coatings Industry"中に記載されている。
【0073】
一般にこのような成分(E)は、塗料の非揮発性成分に対して40質量%まで、有利に30質量%まで、特に有利に25質量%までの割合で使用される。
【0074】
本発明による塗料のための溶剤としては、殊に塗料中で化合物(A)、(B)および場合により(E)に対して化学的に不活性であり、かつ塗料の硬化においても(A)、(B)および場合により(E)と反応しないような溶剤が適している。このような溶剤の例は、脂肪族および/または芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、ソルベントナフサ、Solvesso 100またはHydrosol(登録商標)(ARAL社)、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトンまたはメチルアミンケトン、エステル、例えばエチルアセテート、ブチルアセテート、ペンチルアセテートまたはエチルエトキシプロピオネート、エーテルまたは前記溶剤からなる混合物である。有利には、非プロトン性溶剤または溶剤混合物は、溶剤に対して最大1質量%、特に有利に最大0.5質量%の含水量を有する。
【0075】
更に、本発明による結合剤混合物または本発明による塗料は、少なくとも1つの常用の公知の塗料添加剤(F)を、それぞれ塗料の非揮発性成分に対して作用量で、即ち特に30質量%まで、特に有利に25質量%まで、殊に20質量%までの量で含有することができる。
【0076】
適した塗料添加剤の例は、次の通りである:
殊にUV吸収剤;
殊に光安定剤、例えばHALS化合物、
ベンゾトリアゾールまたはオキサールアニリド;
ラジカル捕捉剤;
スリップ添加剤;
重合抑制剤;
消泡剤;
反応性希釈剤、例えば有利に−Si(OR)3−基に対して不活性である、公知技術水準から一般的に公知であるような反応性希釈剤、
湿潤剤、例えばシロキサン、フッ素含有化合物、カルボン酸半エステル、リン酸エステル、ポリアクリル酸およびそのコポリマー、またはポリウレタン;
付着促進剤、例えばトリシクロデカンジメタノール;
流れ制御剤;
被膜形成助剤、例えばセルロース誘導体;
充填剤、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウムをベースとするナノ粒子;さらに詳細は、>>Lacke und Druckfarben<<,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,1998,第250〜252頁に指摘されており;レオロジー制御添加剤、例えば特許刊行物WO 94/22968、欧州特許出願公開第0276501号明細書、欧州特許出願公開第0249201号明細書またはWO 97/12945の記載から公知の添加剤;例えば欧州特許出願公開第0008127号明細書中に開示されているような架橋されたポリマーマイクロ粒子;無機層状珪酸塩、例えばアルミニウム−マグネシウムケイ酸塩、モンモリロン石型のナトリウム−マグネシウム−およびナトリウム−マグネシウム−弗素−リチウム層状珪酸塩;ケイ酸、例えばAerosile(登録商標);またはイオン性基および/または結合作用基を有する合成ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン、スチレン−無水マレイン酸−またはエチレン−無水マレイン酸コポリマーおよびその誘導体または疎水性に変性されたエトキシル化ウレタンまたはポリアクリレート;
難燃剤および/または
水捕捉剤。
【0077】
本発明のもう1つの実施態様において、本発明による塗料は、なお他の顔料および/または充填剤を含有することができ、および顔料が含有されたトップコートの形成に使用される。そのために使用される顔料および/または充填剤は、当業者に公知である。
【0078】
本発明による塗料から形成された本発明による塗膜は、既に硬化された電気泳動塗膜、サーフェイサー塗膜、下塗り塗膜または通常の公知のクリヤラッカー塗膜上にも卓越して付着するので、この本発明による塗膜は、自動車量産(OEM)塗装への使用と共に顕著に、既に塗装された自動車車体に対するモジュール引掻耐性の装備に適している。
【0079】
本発明による塗料は、自動車塗装の範囲内で通常の硬化条件下で、殊に100〜200℃の温度で10分間ないし1時間で極めて良好な硬化に関連して極めて良好な貯蔵安定性を示す。
【0080】
本発明による塗料は、通常の適用方法、例えば噴霧、ナイフ塗り、刷毛塗り、流し塗り、浸漬、含浸、滴下またはローラ塗布によって適用することができる。この場合、被覆すべき基材自体は静止していてもよく、その際、適用装置または適用器具は、可動である。しかしながら、被覆すべき基材、特にコイルは、可動であってもよく、その際、適用装置は基材に対して相対的に静止しているかまたは適当に可動であってもよい。
【0081】
特に、噴霧適用方法、例えば圧縮空気噴霧、エアレススプレー、高速回転塗布、静電噴霧塗装(ESTA)、場合によってはホットスプレーの適用と関連した、例えば熱風ホットスプレーが使用される。
【0082】
適用された本発明による塗料の硬化は、或る程度の静止時間後に行なうことができる。この静止時間は、例えば塗料層の均展および脱気のために、または揮発性成分、例えば溶剤の蒸発のために使用される。静止時間は、この場合に塗料層の損傷または変化が全く起こらず、場合によっては早期の完全な架橋が起こる限り、高められた温度の使用および/または減少された空気湿分によって支持されてよいし、および/または短縮されてよい。
【0083】
塗料の熱硬化は、方法論的な特殊性を有するのではなく、常用の公知の方法、例えば循環空気炉中での加熱またはIR灯を用いた照射により行なわれる。この場合に、熱的硬化は段階的に行なうこともできる。他の有利な硬化方法は、近赤外線(NIR線)を用いた硬化である。
【0084】
好ましくは、熱硬化は、100〜200℃、特に有利に120〜180℃の温度で、10分間ないし1時間までの時間で行なわれ、この場合プラスチック部品の塗装に使用される、比較的低い温度において、比較的長い硬化時間が使用されてもよい。
【0085】
本発明による塗料は、高度に耐引掻性および殊に引掻の負荷後に高い光沢保留性を有する、新たに硬化された塗膜、殊に塗膜系、特にクリヤラッカー塗膜、成形品、特に光学的成形品、および自立シートを提供する。更に、また、本発明により得られた塗膜は、良好な耐酸性および焼付けにおける僅かな黄変を有する。殊に、本発明による塗膜および塗膜系、特にクリヤラッカー塗膜系は、応力の亀裂が発生することなしに、40μmを上廻る層厚で形成することもできる。
【0086】
従って、本発明による塗料は、卓越して前進手段(殊に、自動車、例えばオートバイ、バス、トラックまたは乗用車)の車体またはその部材;内側範囲および外側範囲での建築物;家具、窓およびドア;プラスチック成形部品、殊にCDsおよび窓;工業用小型部材、コイル、コンテナおよびラッピング;白色製品;フィルム;光学的、電子技術的および機械的な構造部材ならびに日常の必需品のガラス中空体および物品の装飾的、保護的および/または効果的な高度に耐引掻性の塗膜および塗膜系として適している。
【0087】
殊に、本発明による塗料および塗膜系、殊にクリヤラッカー塗膜は、自動車量産塗装(OEM)の技術的および審美的に特に要求の高い分野において、特にトップクラスの自動車車体のために、例えばルーフ、テイルゲート、フード、フェンダー、バンパー、スポイラー、シル、保護ストリップ、サイドトリム等の製造のための自動車内または自動車上のプラスチック構成部品の塗装のために使用される。
【0088】
プラスチック部品は、通常、ASA、ポリカーボネート、ASAおよびポリカーボネートからなる配合物、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレートまたは耐衝撃性に変性されたポリメチルメタクリレートからなり、殊に有利に40%を上廻る、殊に50%を上廻るポリカーボネート割合を有する、ASAとポリカーボネートとからなる配合物からなるプラスチック部品が使用される。
【0089】
ここでASAとは一般に、ビニル芳香族化合物、殊にスチレンのグラフトコポリマー、およびシアン化ビニル、殊にアクリロニトリルのグラフトコポリマーが、ポリアルキルアクリレートゴム上に殊にスチレンとアクリロニトリルとからのコポリマーマトリックスで存在する、耐衝撃性に変性されたスチレン/アクリロニトリルポリマーと理解される。
【0090】
特に有利には、本発明による塗料は、多段階の被覆法において、殊に場合により予め被覆された基体上に最初に顔料が含有された下塗り塗料層を施し、その後に1つの層を本発明による塗料で施す方法で使用される。従って、本発明の対象は、少なくとも1つの顔料が含有された下塗り塗料層およびその上に配置された少なくとも1つのクリヤラッカー層からの効果を付与する、および/または色を付与するマルチコート塗装系でもあり、これは、クリヤラッカー層が本発明による塗料から形成されていることによって特徴付けられる。
【0091】
水希釈可能な下塗り塗料ならびに有機溶剤をベースとする下塗り塗料が使用されてよい。適した下塗り塗料は、例えば欧州特許出願公開第0692007号明細書中およびその中の第3欄、第50行以降に記載された刊行物中に記載されている。好ましくは、施された下塗り塗料は、最初に乾燥され、即ち蒸発段階で下塗り塗膜から除去された、有機溶剤または水の少なくとも一部分が取り去られる。乾燥は、特に室温ないし80℃の温度で行なわれる。乾燥後、本発明による塗料が施される。引続き、二層塗膜系は、有利に自動車量産塗装において使用される条件下で100〜200℃、特に有利に120〜180℃の温度で、10分間ないし1時間の間、焼き付けられる。
【0092】
本発明による塗料で形成された層は、なかんずく特に高い耐引掻性および殊に引掻の負荷後に高い光沢保留性を示す。更に、また、本発明により得られた塗膜は、良好な耐酸性および焼付けにおける僅かな黄変を有する。最後に、本発明による塗膜および塗膜系、特にクリヤラッカー塗膜は、応力の亀裂が発生することなしに、40μmを上廻る層厚で形成することもできる。
【0093】
本発明のもう1つの好ましい実施態様において、本発明による塗料は、透明クリヤラッカーとしてプラスチック基体、殊に自動車内または自動車上のプラスチック構成部品を被覆するために使用される。前記のプラスチック構成部品は、有利には同様に多工程塗装法で被覆され、この場合には、場合により予め被覆されたか、または後続の塗膜の良好な付着のために予め処理された基体上に(例えば、基体の火炎処理、コロナ処理またはプラズマ処理)最初に顔料が含有された下塗り塗料層を塗布し、その後に1つの層を本発明による塗料で塗布する。
【0094】
最後に、本発明による塗料は、透明クリヤラッカーとして透明なプラスチック基体を被覆するために使用される。この場合、この塗料は、量および種類の点でプラスチック基体の有効なUV保護の能力が出せるように設計されているUV吸収剤を含む。また、ここで、得られた塗膜は、耐引掻性と、殊に引掻の負荷後の高い光沢保留性との卓越した組合せを示す。更に、本発明により得られた塗膜は、良好な耐酸性および焼付けにおける僅かな黄変を有する。最後に、本発明による塗膜および塗膜系、特にクリヤラッカー塗膜は、応力の亀裂が発生することなしに、40μmを上廻る層厚で形成することもできる。このように被覆された透明なプラスチック基体は、特に自動車産業におけるガラス成分の代用品に使用され、この場合このプラスチック基体は、有利にポリメチルメタクリレートまたはポリカーボネートからなる。
【実施例】
【0095】

ブロック化されていないヒドロキシル基を有するポリ(メタ)アクリレート樹脂A’1の製造
温度計、馬蹄形攪拌機、2個の滴下漏斗および還流冷却器を装備した、油循環サーモスタットにより加熱可能な二重壁の4 lの特殊鋼製タンク中に、重合のために溶剤を予め装入する。滴下漏斗の1つにモノマー混合物を予め装入し、第2の滴下漏斗に、適当な開始剤(一般に、過酸化物)を含有する開始剤溶液を予め装入する。初期装入量を140℃の重合温度に加熱する。重合温度の達成後、最初に開始剤の供給を開始する。開始剤の供給の開始から15分後に、モノマーの供給(期間240分)を開始する。開始剤の供給は、この供給がモノマーの供給の終結後にさらになお30分間継続されるように調節される。開始剤の供給の終結後に、この混合物は、140℃でさらに2時間攪拌され、引続き室温に冷却される。引続き、この反応混合物を溶剤で第2表中に記載された固体含量に調節する。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
ブロック化されたヒドロキシル基を有するポリ(メタ)アクリレート樹脂A1の製造
還流冷却器および温度計を装備した鋼製反応器中に、ヒドロキシル基含有ポリアクリレート(A’1)55部、ソルベントナフサ4.6部および氷酢酸0.2部を予め装入する。窒素ブランケット下で攪拌しながら室温で徐々に滴下漏斗を介してトリメチルオルトアセテート40.2部を供給する。供給の終結後、反応温度を50〜60℃に上昇させ、かつ維持する。反応は、約7時間後に終結する。澄明な溶液が生じる。最終製品をIR分光分析法によりOH官能基が完全にブロック化されているかどうかについて検査する。
【0099】
ブロック化されたヒドロキシル基(FK)を有するポリアクリレート(A1)の固体、120℃で1時間:約39%。
【0100】
c=40モル%のイソシアネート基のシラン化度、100モル%のエトキシシラン基の割合および残りのイソシアネート基の完全なブロック化を有する硬化剤(B1)の製造
還流冷却器および温度計を装備した鋼製反応器中に、三量体化されたヘキサメチレンジイソシアネート28.8部(HDI)(BASF SE社のBasonat HI 100)、ブチルアセテート25.1部および3,5−ジメチルピラゾール8.7部(DMP)を予め装入する。窒素ブランケット下で攪拌しながら約65℃への温度上昇が観察される。引続き、反応温度を約50〜60℃で約2時間維持する。この第1のブロック化段階の後に、4.04%の目標の残りのNCOを、滴定により検査する。その後に、残りの遊離イソシアネート基のシラン化を行なう。反応混合物を冷却する。付加的にブチルアセテート11.8部を供給する。引続き、滴下漏斗を介して、ビス−[3−(トリエトキシ−シリル)プロピル]アミン25.6部(Dynasylan 1122,Degussa社,Rheinfelden)を滴加する。この場合、温度は、60℃を上廻らないことに注意すべきである。反応混合物を50〜60℃で2時間攪拌する。澄明な溶液が生じる。遊離NCOがもはや存在しないことを滴定により検査する。
【0101】
固体(FK)理論値:63%;クリヤラッカーを焼き付けた際にDMPが脱ブロック化する場合の溶液に対するNCO含量:3.80%。
【0102】
c=40モル%のイソシアネート基のシラン化度、95モル%のエトキシシラン基および5モル%のメトキシシラン基の割合ならびに残りのイソシアネート基の完全なブロック化を有する硬化剤(B2)の製造
還流冷却器および温度計を装備した鋼製反応器中に、三量体化されたヘキサメチレンジイソシアネート29.4部(HDI)(BASF SE社のBasonat HI 100)、ブチルアセテート25.6部および3,5−ジメチルピラゾール8.9部(DMP)を予め装入する。窒素ブランケット下で攪拌しながら約65℃への温度上昇が観察される。引続き、反応温度を約50〜60℃で約2時間維持する。この第1のブロック化段階の後に、4.04%の目標の残りのNCOを、滴定により検査する。その後に、残りの遊離イソシアネート基のシラン化を行なう。反応混合物を冷却する。引続き、ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アミン22.9部(Dynasylan 1122,Degussa社,Rheinfelden)およびブチルアセテート11.4部中のトリメトキシプロピルシリルアミン1.8部(Dynasilan 1189,Evonik社)からなる混合物を滴下漏斗を介して滴加する。この場合、温度は、60℃を上廻らないことに注意すべきである。反応混合物を50〜60℃で2時間攪拌する。澄明な溶液が生じる。遊離NCOがもはや存在しないことを滴定により検査する。
【0103】
固体(FK)理論値:63%;クリヤラッカーを焼き付けた際にDMPが脱ブロック化する場合の溶液に対するNCO含量:3.80%。
【0104】
c=40モル%のイソシアネート基のシラン化度、100モル%のメトキシシラン基の割合ならびに残りのイソシアネート基の完全なブロック化を有する本発明によらない硬化剤(B3)の製造
還流冷却器および温度計を装備した鋼製反応器中に、三量体化されたヘキサメチレンジイソシアネート31.2部(HDI)(BASF SE社のBasonat HI 100)、ブチルアセテート27.3部および3,5−ジメチルピラゾール9.4部(DMP)を予め装入する。窒素ブランケット下で攪拌しながら約65℃への温度上昇が観察される。引続き、反応温度を約50〜60℃で約2時間維持する。この第1のブロック化段階の後に、4.04%の目標の残りのNCOを、滴定により検査する。その後に、残りの遊離イソシアネート基のシラン化を行なう。反応混合物を冷却する。引続き、滴下漏斗を介して、ブチルアセテート9.7部中のビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン22.4部(Dynasylan 1124,Degussa社,Rheinfelden)を滴加する。この場合、温度は、60℃を上廻らないことに注意すべきである。反応混合物を50〜60℃で2時間攪拌する。澄明な溶液が生じる。遊離NCOがもはや存在しないことを滴定により検査する。
【0105】
固体(FK)理論値:63%;クリヤラッカーを焼き付けた際にDMPが脱ブロック化する場合の溶液に対するNCO含量:4.10%。
【0106】
実施例1〜2ならびに比較例V1〜V4の塗料の製造、および実施例1〜2ならびに比較例V1〜V4の塗膜の形成
第3表中に記載された成分から、本発明による実施例1〜2および比較例V1〜V4のクリヤラッカーは、第3表中に記載された成分を合わせ、均一な混合物が生じるまで攪拌することによって製造される。
【0107】
【表3】

【0108】
第3表についての説明:
1)ブロック化されたヒドロキシル基を有する上記のポリアクリレートA1
2)ブロック化されていないヒドロキシル基を有する上記のポリアクリレートA’1
3)Dynoadd F1=Hertfelder GmbH社、Bielefeld在、の市販の多官能性の表面活性添加剤
4)Tinuvin(登録商標)384=Ciba社のベンズトリアゾールをベースとする市販の光安定剤
5)Tinuvin(登録商標)292=Ciba社の立体障害アミンをベースとする市販の光安定剤
6)活性剤=ブチルアセテート80部とキシレン20部とからなる混合物中の1%のジブチル錫ジラウレート溶液
7)Dynapol(登録商標)1203=Evonik社の市販の触媒
8)シラン基およびブロック化されたイソシアネート基を有する上記の硬化剤B1
9)シラン基およびブロック化されたイソシアネート基を有する上記の硬化剤B2
10)シラン基およびブロック化されたイソシアネート基を有する上記の硬化剤B3
【0109】
こうして得られた、実施例1〜2ならびに比較例V1〜V4の塗料の40℃で貯蔵後の貯蔵安定性を、最初に出発粘度およびその後に40℃で7、14、21、28および35日間の貯蔵後の粘度を測定することにより、測定し、この場合粘度は、23℃でDIN4カップからの流出時間として測定される。結果は、第4表中に記載されている。
【0110】
【表4】

【0111】
塗料の性質は、塗料を2.5バールで3つの噴霧通路でBASF Coatings AG社の市販の一体色のブラック水性下塗り塗料上に空気圧で塗布した後に検査された。この下塗り塗料は、先に、BASF Coatings AG社の市販の焼き付けられた電着塗膜およびBASF Coatings AG社の市販の焼き付けられたプライマーで被覆された、Chemetall社の市販の燐酸被膜化された鋼製パネル上に塗布された。その後に、それぞれ生じる塗膜を室温で5分間フラッシュし、引続き140℃で22分間焼き付けた。
【0112】
表面の光沢をBYK−Gardner社の光沢計(型:Micro Haze Plus)で測定する。生じる塗膜の表面の耐引掻性をクロックメーター試験(9μmのサンドペーパー(3M 281 Q wetordry TM production TM)により10回の二重の擦りおよび9Nの擦過力でEN ISO 105−X12に準拠して)により測定し、引続き市販の光沢計を用いて20°で残りの光沢を測定した。結果は、第5表中に記載されている。
【0113】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも1つのヒドロキシル基含有のポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレートおよび/またはポリウレタンおよび/またはポリエステルおよび/またはポリシロキサンおよび
(B)ブロック化されたイソシアネート基およびアルコキシシラン基を有する少なくとも1つの化合物(B)を含有する非プロトン性溶剤をベースとする塗料であって、
(i)成分(A)のヒドロキシル基が少なくとも1つの非環式オルトエステルでブロック化され、
(ii)化合物(B)が式(II)
−N(X−SiR’’x(OR)3-xn(X’−SiR’’y(OR)3-ym (II)
〔式中、
Rは、水素、シクロアルキル基またはアルキル基であり、この場合炭素鎖は、隣接していない酸素−、硫黄−またはNRa基によって中断されていてよく、この場合Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、
X、X’は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状および/または分枝鎖状のアルキレン基またはシクロアルキレン基であり、好ましくは、X、X’は、1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり、
R’’は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、この場合炭素鎖は、隣接していない酸素−、硫黄−またはNRa基によって中断されていてよく、この場合Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、好ましくは、R’’は、殊に1〜6個のC原子を有するアルキル基であり、
nは、0〜2であり、mは、0〜2であり、m+nは、2であり、ならびにx、yは、0〜2である〕で示される少なくとも1個の構造単位(II)を有し、
および
(iii)成分(B)中に存在する全部のアルコキシシラン基の少なくとも90モル%がエトキシシラン基SiOC25であることを特徴とする、非プロトン性溶剤をベースとする前記塗料。
【請求項2】
成分(A)のヒドロキシル基が、式(I)
【化1】

〔式中、
1、R2およびR4は、同一かまたは異なる基であり、互いに独立に1〜8個の炭素原子を有する直鎖状および/または分枝鎖状のアルキレン基またはシクロアルキレン基、有利に1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり、および
3は、水素または1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基である〕で示される少なくとも1つの非環式オルトエステルでブロック化されている、請求項1記載の塗料。
【請求項3】
化合物(B)の少なくとも一部分がさらに式(III)
−NRs−(X−SiR’’x(OR)3-x) (III)
〔式中、
sは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、この場合炭素鎖は、隣接していない酸素−、硫黄−またはNRa基によって中断されていてよく、この場合Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、
R、R’’およびXは、式(II)において記載した意味を有し、xは、0〜2、有利に0〜1である〕で示される少なくとも1個の構造単位(III)を有する、請求項1または2記載の塗料。
【請求項4】
基Rがエチル基であるか、またはメチル基とエチル基とからなる混合物である、請求項1から3までのいずれか1項記載の塗料。
【請求項5】
成分(B)中に存在する全部のアルコキシシラン基の少なくとも95モル%がエトキシシラン基SiOC25である、請求項1から4までのいずれか1項記載の塗料。
【請求項6】
塗料が、それぞれ塗料の固体含量に対してSi2.0質量%〜7.0質量%の算出したケイ素含量、有利にSi3.0質量%〜6.0質量%の算出したケイ素含量を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の塗料。
【請求項7】
化合物(B)のイソシアネート基がピラゾール、有利に3,5−ジメチルピラゾールでブロック化されており、および/またはイソシアネート基含有化合物(B)の製造に使用されるジ−および/またはポリイソシアネートが1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはそのイソシアヌレート三量体および/またはそのアロファネート三量体である、請求項1から6までのいずれか1項記載の塗料。
【請求項8】
成分(A)のヒドロキシル基が、酢酸のオルトエステル、殊にトリメチルオルトアセテートおよび/またはトリエチルオルトアセテートでブロック化されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の塗料。
【請求項9】
成分(A)が第1級ヒドロキシル基を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の塗料。
【請求項10】
塗料が化合物(A)として少なくとも1つのヒドロキシル基含有ポリアクリレート樹脂および/または少なくとも1つのヒドロキシル基含有ポリメタクリレート樹脂を含有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の塗料。
【請求項11】
塗料が酸をベースとする、殊にスルホン酸をベースとする、有利にp−トルエンスルホン酸をベースとする、少なくとも1つの触媒を含有し、および/または塗料が少なくとも1つの金属有機化合物を含有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の塗料。
【請求項12】
塗料が、ヒドロキシル基含有化合物(A)とオルトエステル(I)とを、化合物(A)のヒドロキシル基の含量に対して100モル%を上廻る過剰量、殊に150〜250モル%の過剰量のオルトエステル(I)を使用して反応させることによって得られたものである、請求項1から11までのいずれか1項記載の塗料。
【請求項13】
多工程塗装法において、場合により予め被覆された基体上に顔料が含有された下塗り塗料層を施し、その後に請求項1から12までのいずれか1項に記載の塗料の層を施すことを特徴とする、多工程塗装法。
【請求項14】
自動車量産塗装および自動車内または自動車上の構成部品の塗膜系のための、クリヤラッカーとしての請求項1から12までのいずれか1項に記載の塗料の使用または請求項13記載の方法の使用。
【請求項15】
少なくとも1つの顔料が含有された下塗り塗料層およびその上に配置された少なくとも1つのクリヤラッカー層からなる、効果を付与する、および/または色を付与するマルチコート塗装系において、クリヤラッカー層が請求項1から12までのいずれか1項に記載の塗料から製造されたものであることを特徴とする、効果を付与する、および/または色を付与する上記マルチコート塗装系。

【公表番号】特表2013−511577(P2013−511577A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539206(P2012−539206)
【出願日】平成22年10月16日(2010.10.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006330
【国際公開番号】WO2011/060858
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】