説明

色ずれ補正装置

【課題】撮像装置により撮像される画像に生じる色ずれを補正する色ずれ補正装置で、少ない測定ポイントで、簡易に色ずれを補正する。
【解決手段】色ずれ検出手段が、前記画像において、画素数より少ない複数の測定ポイントについて、色ずれに対する補正量を検出する。基準補正量検出手段が、前記画像をM(Mは2以上の値)個のエリアに分割した各エリアについて、前記色ずれ検出手段による検出結果に基づく直線近似を用いて、色ずれに対する基準となる補正量である基準補正量を検出する。画素補正量検出手段が、前記画像の画素について、前記基準補正量検出手段による検出結果に基づく直線近似を用いて、色ずれに対する補正量を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色収差やレジストレーションのずれ(レジずれ)による色ずれを補正する色ずれ補正装置に関し、特に、少ない測定ポイントで、簡易に色ずれを補正する色ずれ補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、テレビカメラ等のレンズでは、色収差と呼ばれる画像歪みが生じる。色収差を補正する処理の一例として、映像(画像)の画面をM(Mは2以上の値)個のエリアに分割して、各エリアの中心におけるレンズの倍率色収差量(以降、単に、「色収差量」と略して言う。)の測定を行い、各エリア内で一定の補正量(水平方向であるX方向と垂直方向であるY方向)を与えることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−290863号公報
【特許文献2】特開2009−170970号公報
【特許文献3】特開2004−153323号公報
【特許文献4】特開平08−205181号公報
【特許文献5】特開2006−135805号公報
【特許文献6】特開2002−320237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような色収差の補正方法では、測定する色収差量の数が多いため、例えば、映像の画面サイズが大きくなると更に測定する色収差量の数が増えてしまうといった問題や、カメラのアイリス、ズーム、フォーカスのポジションを動かすたびに多数の色収差量を測定し直すことが面倒であるといった問題があった。
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、少ない測定ポイントで、簡易に色ずれを補正することができる色ずれ補正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、撮像装置により撮像される画像に生じる色ずれを補正する色ずれ補正装置において、次のような構成とした。
すなわち、色ずれ検出手段が、前記画像において、画素数より少ない複数の測定ポイントについて、色ずれに対する補正量を検出する。基準補正量検出手段が、前記画像をM(Mは2以上の値)個のエリアに分割した各エリアについて、前記色ずれ検出手段による検出結果に基づく直線近似を用いて、色ずれに対する基準となる補正量である基準補正量を検出する。画素補正量検出手段が、前記画像の画素について、前記基準補正量検出手段による検出結果に基づく直線近似を用いて、色ずれに対する画素毎の補正量を検出する。
従って、例えば従来と比べて、少ない測定ポイントで、簡易に色ずれを補正することができる。
【0006】
本発明に係る色ずれ補正装置では、更に、次のような構成とした。
すなわち、変化検出手段が、前記撮像装置のアイリス、ズーム、フォーカスのいずれかのポジションの変化を検出する。そして、前記変化検出手段により変化が検出されるたびに、前記色ずれ検出手段、前記基準補正量検出手段、前記画素補正量検出手段による処理を実行する。
従って、アイリスやズームやフォーカスのポジションが変化するたびに、色ずれに対する補正量を変化させて、ほぼリアルタイムに対応することが可能である。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明に係る色ずれ補正装置によると、少ない測定ポイントで、簡易に色ずれを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【図2】映像の画面をM分割した各エリアに基準補正量を設定した様子の一例を示す図である。
【図3】色ずれ量の測定ポイントの一例を示す図である。
【図4】各エリアの基準補正量の導出方法の一例を示す図である。
【図5】画素毎の補正量の計算方法の一例を示す図である。
【図6】本発明の一実施例に係る色ずれ補正方法による処理を実行する手順の一例を示すフローチャートの図である。
【図7】色ずれ補正部の水平シフト回路の一例を示す図である。
【図8】各エリアの基準補正量の導出方法の一例を示す図である。
【図9】色ずれ量の測定ポイントの一例を示す図である。
【図10】本発明の一実施例に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
まず、本発明の色ずれ補正方法の実施形態を概略的に説明する。
[1]測定ポイントにおける補正量の導出
(1)水平方向
(i)映像の画面の測定ポイント(例えば、中央、右端、左端)において、色ずれ量を測定する。色ずれ量は、色収差とレジずれの双方を含む。
(ii)中央の色ずれ量(=レジずれ量)から、本来の中央の位置に戻すための補正量、すなわちセンターのずれ量(レジ補正量)が把握される。
(iii)右端と左端の色収差量と、中央のレジずれ量とより、色によってずれている補正量が把握される。
(2)垂直方向
(i)映像の画面の測定ポイント(例えば、上端、下端)において、色ずれ量を測定する。
(ii)上端と下端の色収差量と、中央のレジずれ量とより、色によってずれている補正量が把握される。
【0010】
[2]各エリアの基準補正量の導出(図4)
(i)右端と左端の補正量を用いて、これらの間の各エリアの基準補正量を、直線近似により求める。
(ii)上端と下端の補正量を用いて、これらの間の各エリアの基準補正量を、直線近似により求める。
(iii)これらの結果により、残りの各エリアの基準補正量を、直線近似により求める。
【0011】
[3]画素毎の補正量の導出
(i)各エリアの基準補正量と隣接するエリアの基準補正量を用いて、画素毎の補正量を直線近似により求める。
【実施例1】
【0012】
図1には、本発明の実施例1に係る撮像装置の構成例を示してある。
本例の撮像装置は、3板カラーテレビジョンカメラであり、交換式レンズ1、分光プリズム2、RGBのうちのRに対応した撮像素子(R)3、RGBのうちのGに対応した撮像素子(G)4、RGBのうちのBに対応した撮像素子(B)5、Rに対応したフレームメモリ6、Gに対応したフレームメモリ7、Bに対応したフレームメモリ8、色ずれ検出部9、色ずれ補正部10、基準補正量算出部11、画素毎補正量算出部12、制御部13を備えている。
【0013】
本例の撮像装置における動作の一例を示す。
交換式レンズ1から入射した光が分光プリズム2で色成分毎に分けられて、撮像素子(R)3、撮像素子(G)4、撮像素子(B)5のそれぞれの撮像面に結像した光学像が、それぞれ、電気的な映像信号に変換されて、フレームメモリ6、フレームメモリ7、フレームメモリ8に格納される。
色ずれ検出部9は、フレームメモリ6〜8から映像信号を読み出して、例えば、基準位置(画面の中心。望ましくは倍率色収差のゼロ点)を通る直線上(水平線と垂直線)において、R、G、Bチャンネル間でのずれ、すなわち色ずれ量を像高(光軸からの距離)毎に検出する。
色ずれ補正部10は、R、Bチャンネル(場合によってはGチャンネルも)において別個に、画素毎に変化する画素毎補正量を用いて色ずれ補正を実行する。
【0014】
基準補正量算出部11は、映像の画面をM(Mは2以上の整数)個に等分割したエリア毎に基準補正量(基準補正値)を算出し、保持する。
画素毎補正量算出部12は、基準補正量算出部11が算出した基準補正量から、各エリア内の画素毎に、該画素を移動すべき量(画素毎補正量)を求め、色ずれ補正部10での処理タイミングに合わせて出力する。
制御部13は、交換式レンズ1のズーム、フォーカス、アイリスのいずれかのポジションを動かした(動かされた)ことを検出すると、色ずれ検出部9に検出動作を指示する。
【0015】
図2には、映像の画面をM個のエリアに等分割して、各エリアの中心に基準補正量を設定した様子の一例を示してある。本例では、M=144としてあり、水平方向に16分割し、垂直方向に9分割している。
そして、画面の左上端を始点とする画面の水平方向(右向き)及び垂直方向(下向き)のインデックスをそれぞれi、j(いずれも自然数)とすると、水平方向i番目、垂直方向j番目のエリア(以後、エリア(i,j)と表記する)の基準補正量X(i,j)は、ずれの水平成分X(i,j)と、垂直成分X(i,j)とからなるベクトルで表される。
【0016】
図3には、色収差量の測定ポイントの一例を示してある。
本例では、測定ポイントを、中央、右端、左端、上端、下端としている。
具体的には、測定ポイントの中央はエリア(8,5)の中心としてあり、右端はエリア(16,5)の中心としてあり、左端はエリア(1,5)の中心としてあり、上端はエリア(8,1)の中心としてあり、下端はエリア(8,9)の中心としてある。このように、中央、右端、左端は、必ずしも上下方向の正確な中央である必要はなく、中央、上端、下端は、必ずしも左右方向の正確な中央である必要はない。
【0017】
色ずれ検出部9は、例えば特許文献6に記載の方法や、或いは各測定ポイントに対応するエリアでのチャンネル間の最大相関探索により、これらの測定ポイントのそれぞれにおける色ずれ量を得る。例えばエリア(8,5)における色ずれ量は、水平成分がH8−5,垂直成分がV8−5と表記される。
そして、得られた中央の色ずれ量((回転と平行移動とからなる)レジずれの平行移動成分に対応する)から各色ずれ量を減算し、右端、左端、上端、下端の補正量を求める。例えば上端の補正量X(8,1)の垂直成分はV8−5−V8−1などと求められる。なお、色収差は基本的に像高方向(光軸を中心とする半径方向)成分しか持たないため、左右方向の中央から求めた補正量X(8,1)の水平成分はほぼ0となり、無視しても良い。
【0018】
図4には、基準補正量算出部11による各エリアの基準補正量の導出を模式的に示してある。
具体的には、基準補正量算出部11は、4つの測定ポイントの補正量から、下記の式により各エリアの基準補正量X(i,j)を求める。
【数1】

【0019】
上式は、右端と左端の補正量の直線補間式と、上端と下端の補正量の直線補間式を加算したものである。両補間式は、中央の色ずれ量が既にキャンセルされていること、及びそれぞれの成分が水平若しくは垂直成分のみであることから、単なる加算による合成でも、誤差は少ない。(求まる基準補正量Xは、像高とほぼ同じ方向になる。)
基準補正量算出部11或いは画素毎補正量算出部12は、このようにして求めた16×9個の基準補正量X(i,j)を、次に再計算されるまで保持する。
【0020】
図5には、画素毎補正量算出部12による画素毎の補正量の計算方法の一例を示してある。
図5の例では、計算対象の画素として、その水平位置が、エリア(1,1)の中心とエリア(2,1)の中心の間にあり、その垂直位置が、エリア(1,1)の中心と同じ場合を示してある。水平アドレスHは、画面全体における画素の水平位置を示すグローバルなアドレスで、1〜7840の整数であり、垂直アドレスVは、同様に垂直位置を示すアドレスで、1〜4410の整数であり、図5では1≦H≦980、1≦V≦490の範囲を図示している。
【0021】
そして、エリア(1,1)とエリア(2,1)のそれぞれの中心を結ぶ線上の画素における補正量(画素毎補正量)X(H,V)は、エリア(1,1)の基準補正量X(1,1)とエリア(2,1)の基準補正量X(2,1)の線形補間により求められる。
より一般的には、エリア(i,j)に属する任意の画素の画素毎補正量X(H,V)は、その画素がエリアの中央に対してどの位置にあるかに応じ、次の4式のいずれかにより計算される。
【数2】

【0022】
ここで、A(i,j)及びA(i,j)は、それぞれエリア(i,j)の中心の画素の水平アドレス及び垂直アドレスである。また、X(i,j)やX(H,V)は、水平及び垂直成分を持つベクトルであり、例えば上記各式の第2項は、水平方向の偏微分係数に、水平方向の画素間距離を乗じたものである。基準補正量X(i,j)について数1のような補間を行った場合、数2の各式の第2項の垂直成分や第3項の水平成分は0となる。
なお、上式のような内挿により求められない、画面の縁245画素の幅の領域では、外挿により補間するか、或いは補間せず基準補正量X(i,j)をそのまま用いる。
画素毎補正量X(H,V)は、1フレーム毎にリアルタイムで基準補正量X(i,j)から計算してもよく、或いは全画素数分のメモリを備えて一度計算した後はメモリから読み出すようにしても良い。
【0023】
このようにして求めた画素毎補正量X(H,V)は、必ずしも整数にはならない。画素毎補正量算出部12は求めた補正量を画素単位の値(整数)と、1画素に満たない値(小数)に分離して出力する。整数部はアドレス補正係数、小数部はフィルタ補間係数と呼ぶ。
【0024】
再び図1に戻り、色ずれ補正部10は、R、Bチャンネルのそれぞれにおいて、水平シフト回路51、61と、第1メモリ52、62と、垂直シフト回路53、63と、第2メモリ54、64とを備えている。水平シフト回路51、61は、画素毎補正量算出部12から与えられる画素毎補正量X(H,V)の水平成分に応じた画素移動を1/2N画素の分解能(精度)で行う(Nは1以上の整数であり、本例ではN=3)。第1メモリ52、62は、画素の走査方向を水平から垂直に変換するためのフレームメモリである。垂直シフト回路53、63は、水平シフト回路51、61と同等の構成の回路であり、画素毎補正量X(H,V)の垂直成分に応じた画素移動を行う。第2メモリ54、64は、画素の走査方向を垂直から水平に戻すためのフレームメモリである。
【0025】
図7には、本例の色ずれ補正部10の水平シフト回路51、61の一例を示してある。なお、垂直シフト回路53、63についても、同様である。
本例の水平シフト回路51(又は、水平シフト回路61)は、シフトレジスタ部101と、マルチプレクサ部102と、係数保持部103と、係数乗算部104と、平均化部105と、から構成されている。
シフトレジスタ部101は、12ビットの画素値が入力されるたびに、1回のシフト動作を行う、12ビット幅、16段の直列入力/並列出力型シフトレジスタである。
【0026】
マルチプレクサ部102は、シフトレジスタ部101の8段分の出力を、取り出し位置を異ならせて10通り選択する。10通りの取り出し位置は、前記16段の中央の段を中心に、1段ずつずらしたものであり、画素毎補正量算出部12からのアドレス補正係数(画素毎補正量X(H,V)の整数部)により、10通りの1つが選択される。
係数保持部103は、画素毎補正量算出部12から3ビットのフィルタ補間係数(画素毎補正量X(H,V)の小数部)を与えられ、それに応じた8個のタップ係数を出力するメモリである。
係数乗算部104は、マルチプレクサ部102で選択された8段分の出力と、係数保持部103から出力されたタップ係数とを、それぞれ乗算する。
平均化部105は、係数乗算部104から出力された8個の乗算値を加算し、シフトレジスタに入力された画素値と桁があうように所定値で除算し、所定の上限値を超えないようにするクリップ処理をして、出力する。
【0027】
図6には、本例の撮像装置における色ずれ補正処理の実行手順を示してある。
まず、ステップS1では、制御部13は、交換式レンズ1に対する操作信号や交換式レンズ1から取得したポジション信号を監視し、撮像装置のカメラのアイリス、ズーム、フォーカスのいずれかのポジションが動かされたか否かを判定する(ステップS1)。これらのポジションが変化すると、色収差量も変化する。更には、光軸ずれも色収差量変化の原因となるので、撮像装置に内蔵された加速度センサが所定以上の加速度を検出したかも判定するようにしてもよい。
【0028】
次に、ステップS1でいずれかのポジションの変化等を検出した場合には、所定の色ずれ補正処理(ステップS2〜ステップS4)を実行し、画素毎補正量X(H,V)を更新する。
その後、ステップS5では、色ずれ補正部10が、画素毎の補正量X(H,V)を用いて画素を移動させて(ステップS5)、ステップS1の処理へ戻る。一方、いずれかのポジションを動かしたことを検出しなかった場合には、前フレームと同じ画素毎補正量X(H,V)を用いて画素を移動させて(ステップS5)、ステップS1の処理へ戻る。
【0029】
所定の色ずれ補正処理では、色ずれ検出部9が測定ポイントの補正量の導出を行い(ステップS2)、次いで、基準補正量算出部11が各エリアの基準補正量X(i,j)の導出を行い(ステップS3)、そして、画素毎補正量算出部12が画素毎の補正量X(H,V)の導出を行う(ステップS4)。
【0030】
以上のように、本例では、カメラのアイリスやズームやフォーカスのポジションを動かすたびに、本例の色ずれ補正方法による処理を実行する。
従って、本例の色ずれ補正では、少ない測定ポイントで色ずれ量を測定すればよいため、例えば、アイリスやズームやフォーカスを変えるたびに、少ない測定ポイントで色ずれ量を測定し、基準補正量X(i,j)を修正し、画素単位の補正量X(H,V)を求めることで、画像歪みを補正することが容易となる。
【0031】
具体例として、収差の少ない高級レンズの使用時などに、取り付けマウント誤差等に起因する倍率色収差(のずれ)を線形近似で補正することができ、補正量をほぼリアルタイムで最適化することが可能である。
【実施例2】
【0032】
本発明の実施例2に係る撮像装置を説明する。
本例の撮像装置は、色ずれ検出部9に代えて、補正量の算出方法が異なる色ずれ検出部29を備え、基準補正量算出部11に代えて、補間方法が異なる基準補正量算出部21を備えた、点で実施例1(図1)と異なる。なお、本例の撮像装置の概略的な構成は、図1に示されるものと同様であるため、図示は省略する。
本例の色ずれ検出部29は、画面の右端、中央、左端、上端、下端の5箇所の測定ポイントで測定された色ずれ量を、単純に向きを逆にして、対応する5つの補正量(基準補正量(ア)〜(オ))を算出する。
【0033】
図8には、基準補正量算出部21による各エリアの基準補正量の導出方法を模式的に示してある。
すなわち、右端と中央の補正量を用いて、これらの間の各エリアの基準補正量を、直線近似により求める。また、中央と左端の補正量を用いて、これらの間の各エリアの基準補正量を、直線近似により求める。
上下についても同様に、上端と中央との間、中央と下端との間を直線近似する。
【0034】
より一般的には、5つの測定ポイントの基準補正量算出部21は、5つの測定ポイントの補正量から、下記の式により各エリアの基準補正量X(i,j)を求める。
【数3】

本例によれば、画面中央の測定ポイントに対して点対称でない色収差に対して、実施例1よりも近似精度を高くできる場合がある。
【実施例3】
【0035】
図9には、本発明の実施例3に係る撮像装置における、色ずれ量の測定ポイントを示す図を示してある。
本例の撮像装置は、色ずれ検出部9に代えて、角が光軸位置に来るように選んだL字状のエリアで色ずれ量をそれぞれ測定する色ずれ検出部39を備え、また基準補正量算出部11に代えて、基準補正量算出部21を備えた、点で実施例1(図1)と異なる。なお、本例の撮像装置の概略的な構成は、図1に示されるものと同様であるため、図示は省略する。
【0036】
色ずれ検出部39は、図9において斜線で示すように、画面中央のエリア(8,5)と、エリア(8,5)の左側にあるエリア(1,5)〜エリア(7,5)と、エリア(8,5)の上側にあるエリア(8,1)〜エリア(8,4)の各エリアおいて、その中心を測定ポイントとして色ずれ量を測定する。そして、各色ずれ量を、単純に向きを逆にして、測定ポイントの補正量(対応する各エリアの基準補正量)とし、基準補正量算出部21に出力する。
【0037】
基準補正量算出部21は、まず、以下の式により、中央のエリア(8,5)で交差する十字状のエリアについて、基準補正量X(i,j)を求める。ただし、測定ポイントの補正量が得られているエリアは、その補正量をそのまま基準補正量とする。
【数4】

【0038】
上式は、基準補正量X(i,j)が、エリア(8,5)を中心に対称であることを利用している。
次に、基準補正量算出部21は、以下の式により、残りの各エリアについて、基準補正量X(i,j)を求める。
【数5】

【0039】
より高精度を求める場合は、上式の代わりに、以下の式を用いてもよい。この式は、収差の大きさが、像高に関する奇数次のみのべき級数関数で近似できることに基づいている。
【数6】

【0040】
基準補正量算出部21以降の、画素毎補正量算出部等の動作は、上述の実施例1等と同様である。
なお、画面のエリアへの分割数(縦方向又は横方向)が偶数の場合、エリア単位での色ずれ量の測定では、正確に画面の縦中央又は横中央の色ずれ量とはならない。例えば横分割数が16の場合、8列目のエリア(例えばエリア(8,1))の右半分と9列目のエリア(例えばエリア(9,1))の左半分とからなる1エリア分の領域で色ずれ量を測定し、この量をエリア(8.5,1)の色ずれ量等とする。そして、X(i,j)=X(i,5)+X(8.5,j)−X(8.5,5)により残りの各エリアの基準補正量を求めることができる。
【0041】
本例では、例えば12箇所で色ずれ量を測定する。ズーム等のポジションが変化した際、12箇所の色ずれ量が揃うのを待って、色ずれ検出部39が基準補正量算出部21に出力したのでは、追従性が悪い。したがって、一例として、像高の大きいエリア(1,5)やエリア(8,1)から優先して測定し、順次、基準補正量算出部21が保持し出力する基準補正量を更新させる。更には、優先して更新された基準補正量の更新前後の比で以って、未測定のエリアも仮更新してもよい。また、中央のエリア(1,5)の色ずれ量は、0とみなし、測定しなくても良い。本例では、測定ポイントを中央から左端及び中央から上端としたが、それ以外(例えば、中央から右端、中央から下端)でもよいことは明らかである。
【実施例4】
【0042】
本発明の実施例4に係る撮像装置を説明する。
本例の撮像装置は、基準補正量算出部21に代えて、補間方法が異なる基準補正量算出部31を備えた点で実施例3と異なる。なお、本例の説明で言及しない部分の構成は、実施例3と同一である。
【0043】
基準補正量算出部31は、まず、色ずれ検出部39から与えられたエリア(1,5)〜エリア(8,5)の補正量(エリアの中心における補正量を示す)から、直線近似により、エリア間の補正量を定義する。すなわち、当初自然数として定義したエリアのインデックスi,jを小数まで拡張し、以下の式によりエリア間を補間する。また、値が求まっている基準補正量X(i,j)からレジずれ分を差し引いた(ほぼ色収差のみとなる)基準補正量X(i,j)も定義しておく。
【数7】

【0044】
次に、基準補正量算出部31は、以下のようにして各エリアの基準補正量X(i,j)を導出する。
(1)各エリアの中心と中央エリア(エリア(8,5))の中心との距離Aと、上記補間した補正量X(i,5)において中心からの距離がAと等しい位置の補正量C=X(A,5)を得る。
(2)この補正量Cを水平、垂直の要素に分解する。中央エリアの中心を原点とし、原点からエリア(1,5)の中心へ向かう半直線を基線としたときに、各エリアの中心と原点との線分と基線とがなす角をθ(基線からエリア(8,1)へ回る方向を正にする)とすれば、基準補正量Xの水平成分XはCcosθ、垂直成分XはCsinθで算出できる。
(3)上記を左上の1/4象限にあるエリアについて、算出する。この象限ではcosθ、sinθはともに0以上である。
(4)他の象限については、上記エリアの点対称、もしくは線対称となっているため、それぞれ該当するエリアの補正値を正負逆転するなどして複製する。
(5)色ずれ検出部39から与えられたエリア(5,1)〜エリア(5,4)の補正量(の垂直成分)と、像高が等しいエリア(4,5)〜エリア(7,5)(の水平成分)の補正値を比較することにより、3板方式に特有のプリズムで生じる垂直位置依存の色ずれ量XVが算出できる。この値をそれぞれのエリアの垂直方向の補正値に加算することで、この色ずれも補正が可能である。
これらを式で示すと以下のようになる。
【数8】

【0045】
本例においても、ポジションが変化時の追従性をよくするため、水平方向に並ぶエリア(1,5)〜エリア(8,5)の色ずれ量を優先して測定し、残りの色ずれ量が得られるまでの間、一時的に以下の式で基準補正量Xを求めても良い。
【数9】

【実施例5】
【0046】
図10には、本発明の実施例5に係る撮像装置の構成例を示してある。
本例の撮像装置は、歪曲収差も色収差と一緒に補正するものであり、新たに歪曲収差保持部32を備え、また、基準補正量算出部11に代えて、基準補正量算出部31を備えた点、及び色ずれ補正部10aにおいて、Gについても、水平シフト回路71、第1メモリ72、垂直シフト回路73、第2メモリ74を備えた点で、実施例1(図1)と異なる。
【0047】
歪曲収差保持部32は、交換式レンズ1に固有の収差データを、SDカード(商標)等のフラッシュメモリから読み込んで保持する。収差データは、図2に示される基準補正量X(i,j)と同様なエリア毎のデータである。収差データとしては、必ずしもズーム等の全てのポジション毎に収差データを保持する必要はなく、特に収差が大きくなるポジションのみでもよい。歪曲収差保持部32は、制御部13等から交換式レンズ1のポジションの値を得て、保持している収差データの中で最も該当するポジションの収差データを出力する。
基準補正量算出部31は、基準補正量算出部11と同様な機能を有していることに加え、自身で算出した色収差に関する基準補正量X(i,j)に、歪曲収差保持部32から出力された歪曲収差に関する収差データを合成(加算或いは減算)し、最終的な基準補正量として保持し、画素毎補正量算出部12に出力する。色収差に関する基準補正量X(i,j)がないGチャンネルに対しては、歪曲収差保持部32からの収差データがそのまま基準補正量になる。
【符号の説明】
【0048】
1・・交換式レンズ、 2・・分光プリズム、 3・・撮像素子(R)、 4・・撮像素子(G)、 5・・撮像素子(B)、 6、7、8・・フレームメモリ、 9、29、39・・色ずれ検出部、 10、10a・・色ずれ補正部、 11、21、31・・基準補正量算出部、 12・・画素毎補正量算出部、 13・・制御部、 32・・歪曲収差保持部、 51、61、71・・水平シフト回路、 52、54、62、64、72、74・・メモリ、 53、63、73・・垂直シフト回路、 101・・シフトレジスタ部、 102・・マルチプレクサ部、 103・・係数保持部、 104・・係数乗算部、 105・・平均化部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置により撮像される画像に生じる色ずれを補正する色ずれ補正装置において、
前記画像において、画素数より少ない複数の測定ポイントについて、色ずれに対する補正量を検出する色ずれ検出手段と、
前記画像をM(Mは2以上の値)個のエリアに分割した各エリアについて、前記色ずれ検出手段による検出結果に基づく直線近似を用いて、色ずれに対する基準となる補正量である基準補正量を検出する基準補正量検出手段と、
前記画像の画素について、前記基準補正量検出手段による検出結果に基づく直線近似を用いて、色ずれに対する補正量を検出する画素補正量検出手段と、
を備えたことを特徴とする色ずれ補正装置。
【請求項2】
請求項1に記載の色ずれ補正装置において、
前記撮像装置のアイリス、ズーム、フォーカスのいずれかのポジションの変化を検出する変化検出手段を備え、
前記変化検出手段により変化が検出されるたびに、前記色ずれ検出手段、前記基準補正量検出手段、前記画素補正量検出手段による処理を実行する、
ことを特徴とする色ずれ補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−182202(P2011−182202A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44642(P2010−44642)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】