説明

色コンポーネント間予測型画像符号化装置および復号装置

【課題】非基準信号間での予測参照を活用した、残差信号に対する色コンポーネント間予測処理を行う符号化装置と復号装置を提供する。
【解決手段】基準信号選択部14は、基準信号、第1、第2の非基準信号の色コンポーネントを選択し、それぞれ残差信号c1、c2、c3を出力する。第1の非基準信号に対しては、基準残差信号18を参照した線形変換により予測し、残差予測画像22を取得する。減算部23は、残差信号c2から残差予測画像22を減算することで、残差信号の色コンポーネント間予測誤差成分e2を得る。第2の非基準信号に対しては、減算部31で残差信号c3から第1の非基準信号の色コンポーネント間予測誤差成分27が減算されて、補正後残差信号d3が生成される。該補正後残差信号d3は補正後残差予測画像33を減算されて色コンポーネント間予測誤差成分f3が生成される。前記誤差成分e2、f3は符号化されて出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は色コンポーネント間予測型画像符号化装置および復号装置に関し、特に高精細映像を対象とした高能率圧縮符号化のためおよびこれを復号するための色コンポーネント間予測型画像符号化装置および復号装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクレコーダやVTRなどの、蓄積用途での圧縮符号化方式は、RGBに代表される4:4:4の色空間、および4:2:2の色空間をサポートする必然性が高い。このような圧縮符号化方式において符号化効率を高めるための従来技術として、以下のようなものがある。
【0003】
下記の特許文献1では、4:4:4の映像入力を対象として、符号化に先立って色コンポーネント間での予測参照を行い、残差信号のみを後段の符号化処理で扱うことで、符号化性能の改善を図っている。
【0004】
また、特許文献2では、色コンポーネント間予測の適用対象として、入力画像信号そのものとする場合、およびフレーム内予測により得られた残差信号とする場合のいずれかを、入力画像の解析によって決定することを提案している。
【0005】
特許文献3は本出願人による出願発明(非公知)であるが、該出願発明は、前記の既存技術が主に4:4:4映像を適用対象としていたのに対して、該4:4:4映像に加えて4:2:2信号や4:2:0信号などの輝度信号が独立した色空間への適用を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−310941号公報
【特許文献2】特開2010−239423号公報
【特許文献3】特願2010−240721号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記した従来技術によれば、4:4:4形式、4:2:2形式、4:2:0形式といったあらゆるコンポーネント映像フォーマットに対して、色コンポーネント間の相関除去による符号化効率の改善を期待することができる。なお、該従来技術では、基準信号がいずれか一つの色コンポーネントに固定され、他の色コンポーネント(非基準信号)の符号化では、基準信号のみを予測参照する方式となっていた。
【0008】
ところで、実際の符号化処理では、あるフレームの符号化処理および復号処理は、色コンポーネント単位に逐次的に処理することが許容される。このため、基準信号を参照して処理された色コンポーネント信号の符号化結果を、残りの色コンポーネント信号の符号化処理において参照することは原理的に可能であるが、これを積極的に利用することでさらなる符号化性能を改善することについて、従来は、何らの配慮もされていなかった。
【0009】
本発明は、前記した従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は符号化性能を従来のものより向上できる色コンポーネント間予測型画像符号化装置および復号装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した目的を達成するために、本発明は、色コンポーネント間予測の基準信号を適応的に設定可能な動画像符号化装置において、複数の色コンポーネントからなる入力画像信号から基準信号と第1の非基準信号と第2以降の非基準信号とを選択する基準信号選択手段と、前記第1の非基準信号の符号化においては、前記基準信号のみを参照する予測を行う第1の手段と、前記第2以降の非基準信号の符号化においては、前記基準信号と前記第1の非基準信号とを参照する予測を行う第2の手段とを具備した点に第1の特徴がある。
【0011】
また、本発明は、前記動画像符号化装置で符号化された信号の復号装置において、前記符号化された信号から基準信号、第1の非基準信号および第2以降の非基準信号を判別する判別部と、前記第1の非基準信号の復号においては、前記基準信号のみを参照する予測を行う第1の手段と、前記第2以降の非基準信号の復号においては、前記基準信号と前記第1の非基準信号とを参照する予測を行う第2の手段とを具備した点に第2の特徴がある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基準信号がいずれか一つの色コンポーネントに固定された条件で、他の色コンポーネント(非基準信号)を符号化する場合に、該基準信号を予測参照するのではなく、該基準信号を参照して処理された色コンポーネント信号(第1の非基準信号)の符号化結果を、残りの色コンポーネント信号(第2、第3番目以降の非基準信号)の符号化処理において参照可能とする。
【0013】
このことにより、第2以降の非基準信号の予測性能を改善することができるようになる。また、この結果、予測残差信号の符号量が削減できるようになり、符号化性能を向上することができるようになる。
【0014】
また、色コンポーネントの数が4以上である場合にも、第3番目以降の非基準信号は、第2の非基準信号と全く同様に処理することによって、予測性能を改善することができる。
【0015】
本発明の復号装置によれば、前記のようにして符号化された画像信号を、適応的にまたは効率的に復号することができる。この結果、符号化性能を向上した符号化および復号装置を提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態の符号化装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の前処理解析部の動作例を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態の復号装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2実施形態の符号化装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図5】図4の前処理解析部の動作例を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態の復号装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第3実施形態の符号化装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図8】第3実施形態の復号装置の概略の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明を詳細に説明する。動画像符号化において、色コンポーネント間での予測を行う方式または方法として、色コンポーネント間予測の対象を何にするかによって、次の3通りに分けることができる。つまり、(1)色コンポーネント間予測の対象がフレーム内予測残差信号の場合、(2)色コンポーネント間予測の対象がフレーム画像信号の場合(フレーム内予測を併用しない)、(3)色コンポーネント間予測の対象がフレーム画像信号の場合(フレーム内予測を併用する)に分けることができる。
【0018】
前記(2)、(3)は後で説明するとして、前記(1)の場合の実施形態(第1実施形態)について以下に説明する。図1は、該第1実施形態の概略の構成を示すブロック図である。
【0019】
図示されているように、入力画像11が入力してくると、イントラ予測部12は、マクロブロック毎にフレーム内予測を適用しイントラ、またはフレーム内(以下、イントラと呼ぶ)予測残差信号aを前処理解析部13へ出力すると共に、イントラ予測画像bを作成する。前処理解析部13では、イントラ予測残差信号aを処理し、色コンポーネント間予測の基準信号、第1の非基準信号、第2番目以降の非基準信号を決定する。
【0020】
該色コンポーネント間予測の基準信号としては、例えば前処理解析部13で求めることができる色コンポーネントの解像度に従い、解像度の最も大きい色コンポーネントを選択する。4:4:4形式のR(赤)、G(緑)、B(青)信号の場合にはG信号が、また4:2:2形式のY(輝度)、Cb(色差),Cr(色差)信号の場合にはY信号が、基準信号となり、残りの信号が非基準信号となる場合が多い。
【0021】
また、前記残りの信号のうちのどの信号を第1の非基準信号、第2の非基準信号とするかの処理の一例を、図2のフローチャートで説明する。
【0022】
ステップS1では、前記非基準信号のフレーム内予測残差信号を取得する。この予測残差信号を、それぞれDiff1(i,j)、Diff2(i,j)とする。ステップS2では、基準信号のフレーム内予測残差信号を取得する。この予測残差信号を、Diff0(i,j)とする。次いで、ステップS3では、Diff0(i,j)とDiff1(i,j)およびDiff0(i,j)とDiff2(i,j)の相互相関係数を求める。該相互相関係数を、それぞれ、Corr1、Corr2とする。ステップS4では、前記相互相関係数Corr1、Corr2を比較し、Corr1>Corr2ならばステップS5に進んで、予測残差信号Diff1(i,j)の非基準信号を第1、予測残差信号Diff2(i,j)の非基準信号を第2とする。一方、Corr1<Corr2ならばステップS6に進んで、予測残差信号Diff2(i,j)の非基準信号を第1、予測残差信号Diff1(i,j)の非基準信号を第2とする。つまり、基準信号のフレーム内予測残差と相関の大きいフレーム内予測残差を有する非基準信号を第1とする。
【0023】
次に、基準信号選択部14では、基準信号の色コンポーネントを選択し、その予測残差信号c1を出力する。基準信号の予測残差信号c1は、DCT部15,量子化部16および可変長符号化部17により符号化処理されて出力される。また、前記量子化部16の出力を局所復号して、基準残差信号18を得る。該基準残差信号18は、色コンポーネント間予測部21、32に送られる。
【0024】
次に、前記基準信号選択部14は、第1の非基準信号色コンポーネントを選択し、その予測残差信号c2を出力する。該予測残差信号c2は、色コンポーネント間予測部21と減算部23に入力される。色コンポーネント間予測部21は、前記基準残差信号18を参照した線形変換により予測し、予測係数d2を出力すると共に残差予測画像22を生成する。減算部23は、予測残差信号c2から前記残差予測画像22を減算することで、予測残差信号の色コンポーネント間予測誤差成分e2を得る。この色コンポーネント間予測誤差成分e2は、次に、DCT部24,量子化部25および可変長符号化部26に送られ、前記予測係数d2と共に符号化されて出力される。また、前記量子化部25の出力を局所復号して、色コンポーネント間予測誤差成分27を得る。
【0025】
次に、前記基準信号選択部14は、第2の非基準信号色コンポーネントを選択し、その予測残差信号c3を出力する。減算部31は、予測残差信号c3から色コンポーネント間予測誤差成分27を減算することで、補正後残差信号d3を得る。色コンポーネント間予測部32は、前記基準残差信号18を参照した線形変換により予測し、予測係数e3を出力すると共に残差予測画像33を生成する。次いで、減算部34は、前記補正後残差信号d3から前記補正後残差予測画像33を減算して、補正後残差信号d3の色コンポーネント間予測誤差成分f3を取得する。続いて、この色コンポーネント間予測誤差成分f3は、DCT部35,量子化部36および可変長符号化部37に送られ、前記予測係数e3と共に符号化されて出力される。
【0026】
前記基準信号、第1、第2の非基準信号の符号化出力には、それぞれの信号を表すフラグなどの識別情報が付加されて出力される。
【0027】
上記の符号化装置によれば、第2の非基準信号は第1の非基準信号の色コンポーネント間予測誤差成分27を用いて補正後残差信号d3を得るようにしているので、該色コンポーネント間予測誤差成分27を用いないものに比べて第2の非基準信号の予測性能を改善することができるようになる。
【0028】
以上は、符号化装置の構成と動作の説明であったが、次に該符号化装置に対応する復号装置を、図3を参照して説明する。図3は、該復号装置の概略の構成を示すブロック図である。
【0029】
前記符号化装置により圧縮されたストリーム、つまり入力ストリーム41が入力してくると、基準信号判別部42は該ストリームに付加されている前記識別情報により、基準信号、第1、第2の非基準信号の判別を行う。
【0030】
基準信号の符号化データc4は、可変長復号部43に送られて部分的に復号され、フレーム内予測残差信号d4は逆量子化部44へ、またイントラ予測方法e4はイントラ予測部48へ送られる。前記フレーム内予測残差信号d4は、逆量子化部44、逆DCT部45で局所復号されて基準残差信号46となる。また、イントラ予測部48は、イントラ予測方法e4を用いてイントラ予測画像49を生成し、該イントラ予測画像49は、加算部47で前記基準残差信号46と加算されて復号画像50になる。該復号画像50は出力されると共に、イントラ予測部48に送られる。前記基準残差信号46は、色コンポーネント間予測部55、75にも入力される。
【0031】
次に、可変長復号部51は、第1の非基準信号の符号化データc5を部分的に復号し、フレーム内予測残差信号の符号化色コンポーネント間予測誤差成分d5、予測係数e5およびイントラ予測方法f5を出力する。符号化色コンポーネント間予測誤差成分d5は逆量子化部52,逆DCT部53で復号されて色コンポーネント間予測誤差成分54となる。該色コンポーネント間予測誤差成分54は、加算部57と79へ送られる。色コンポーネント間予測部55は前記予測係数e5に従って前記基準残差信号46を線形変換し、残差予測画像56を生成する。加算部57は、前記残差予測画像56を色コンポーネント間予測誤差成分54に加算して復号残差画像58を得る。次に、イントラ予測部59は、前記可変長復号部51から得たイントラ予測方法f5に基づいて近傍の復号画像を参照してイントラ予測処理を行い、イントラ予測画像60を生成する。加算部61は、該イントラ予測画像60を前記復号残差画像58に加算することにより、復号画像62を得る。該復号画像62は出力されると共にイントラ予測部59に送られる。
【0032】
次に、可変長復号部71は、第2の非基準信号の符号化データc6を部分的に復号し、フレーム内予測残差信号の符号化色コンポーネント間予測誤差成分d6、予測係数e6およびイントラ予測方法f6を出力する。符号化色コンポーネント間予測誤差成分d6は逆量子化部72,逆DCT部73で復号されて色コンポーネント間予測誤差成分74となる。該色コンポーネント間予測誤差成分74は、加算部77へ送られる。色コンポーネント間予測部75は前記予測係数e6に従って前記基準残差信号46を線形変換し、補正前残差予測画像76を生成する。この「補正前」は、前記第1の非基準信号によって補正される前であることを意味する。加算部77は、前記補正前残差予測画像76を色コンポーネント間予測誤差成分74に加算して復号補正前残差画像78を得る。次に、加算部79は、第1の非基準信号の色コンポーネント間予測誤差成分54を復号補正前残差画像78に加算することで復号残差画像80を得る。次いで、イントラ予測部81は、前記可変長復号部71から得たイントラ予測方法f6に基づいて近傍の復号画像を参照してイントラ予測処理を行い、イントラ予測画像82を生成する。加算部83は、該イントラ予測画像82を前記復号残差信号80に加算することにより、復号画像84を得る。該復号画像84は出力されると共にイントラ予測部81に送られる。
【0033】
以上のようにして、図1の符号化装置で符号化された画像信号は、適応的にまたは効率よく復号されることができる。
【0034】
なお、前記の符号化および復号装置では、1つの基準信号と2つの非基準信号の画像信号について説明したが、本実施形態はこれに限定されず、3以上の非基準信号をもつ画像信号に対しても同様に適用できる。また、参照先のサンプル数や予測方式が異なる場合には、前記特許文献3の手段を活用した上で、色コンポーネント間予測を適用するようにすればよい。これらのことは、以下の実施形態でも同様である。
【0035】
次に、前記(2)の色コンポーネント間予測の対象がフレーム画像信号の場合(フレーム内予測を併用しない)の第2実施形態について、図4〜6を参照して説明する。図4は、符号化装置のブロック図、図6は復号装置のブロック図である。この実施形態は、前記第1実施形態の「フレーム内予測残差信号」を「画像信号」と読み替えればよいので、第1実施形態と違うところだけ説明することにする。また、図4〜6において、それぞれ図1〜3と対応する機能部は、ダッシュ(')を付けて表すものとする。
【0036】
前処理解析部13'では、入力画像11'を処理し、色コンポーネント間予測の基準信号、第1の非基準信号、および第2番目以降の非基準信号を決定する。色コンポーネント間予測の基準信号としては、例えば該前処理解析部13'で求めることができる色コンポーネントの解像度に従い、解像度の最も大きい色コンポーネントを選択する。
【0037】
基準信号選択部14'は、図5のステップS1'〜S6'の処理により、第1の非基準信号、第2の非基準信号を決定する。図5の処理は、図2の処理において、「フレーム内予測残差信号」を「画像信号」と読み替えただけであるので、説明を省略する。
【0038】
基準信号の画像信号c1'は、イントラ予測部12'に送られイントラ予測される。イントラ予測部12'から出力されたイントラ予測残差信号d1'は、DCT部15'、量子化部16'、および可変長符号化部17'に送られて符号化され、出力される。また、前記イントラ予測部12'により得られたイントラ予測画像19は局所復号された予測残差信号d1'と加算部20で加算され基準画像信号18'を得る。該基準画像信号18'は、色コンポーネント間予測部21'、32'へ送られる。
【0039】
該色コンポーネント間予測部21'では、第1の非基準信号の画像信号c2'と前記基準画像信号18'との色コンポーネント間予測を行い、予測画像22'と予測係数d2'を出力する。減算部23'は、第1の非基準の画像信号c2'から予測画像22'を減算し、画像信号の色コンポーネント間予測誤差成分e2'を得る。この予測誤差成分e2'は、次に、DCT部24',量子化部25'および可変長符号化部26'に送られ、前記予測係数d2'と共に符号化されて出力される。また、前記量子化部25'の出力を局所復号して、色コンポーネント間予測誤差成分27'を得る。
【0040】
次に、第2の非基準信号の画像信号c3'は、減算部31'で前記色コンポーネント間予測誤差成分27'を減算され、補正後画像誤差信号d3'を得る。色コンポーネント間予測部32'は、前記基準画像信号18'を参照した線形変換により予測し、予測係数e3'を出力すると共に残差予測画像33'を生成する。次いで、減算部34'は、前記補正後画像誤差信号d3'から前記補正後予測画像33'を減算して、補正後画像誤差信号d3'の色コンポーネント間予測画像成分f3'を取得する。続いて、この色コンポーネント間予測誤差成分f3'は、DCT部35',量子化部36'および可変長符号化部37'に送られ、前記予測係数e3'と共に符号化されて出力される。
【0041】
以上のようにして、色コンポーネント間予測の対象がフレーム画像信号の場合の符号化処理が行われる。また、この符号化装置においては、第2の非基準信号は第1の非基準信号の色コンポーネント間予測誤差成分27'を用いて補正後残差信号d3'を得るようにしているので、該色コンポーネント間予測誤差成分27'を用いないものに比べて第2の非基準信号の予測性能を改善することができるようになる。
【0042】
次に、図6の復号装置では、入力ストリーム41'は、基準信号判別部42'で該ストリームに付加されている識別情報により、基準信号、第1、第2の非基準信号の判別を行う。基準信号のストリーム(符号化信号)c4'は可変長復号部43'で部分的に復号され、部分的復号残差信号d4'は逆量子化部44'へ、またイントラ予測方法e4'はイントラ予測部48'へ送られる。前記部分的復号残差信号d4'は逆量子化部44'で逆量子化され、逆DCT部45'で逆DCTされて残差信号46'とされる。また、イントラ予測部48'は、イントラ予測方法e4'を用いてイントラ予測画像49'を生成し、該イントラ予測画像49'は、加算部47'で前記残差信号46'と加算されて復号画像になる。該復号画像は出力されると共に、イントラ予測部48'に送られる。また、該復号画像は、基準復号画像50'として色コンポーネント間予測部55'、75'に送られる。
【0043】
次に、第1の非基準信号のストリーム(符号化信号)c5'は可変長復号部51'に続く処理部52'〜57'により、また第2の非基準信号のストリーム(符号化信号)c6'は可変長復号部71'に続く処理部72'〜79'により復号処理されるが、詳細な説明は省略する。
【0044】
上記の復号装置は、第2の非基準信号の復号補正前画像78'が、第1の非基準信号の色コンポーネント間予測誤差成分54'と加算されて最終的に復号される。このため、図4の符号化装置で符号化された画像信号に適合した復号を、効率的に行うことができる。
【0045】
次に、前記(3)の色コンポーネント間予測の対象がフレーム画像信号の場合(フレーム内予測を併用する)の第3実施形態について、図7,8を参照して説明する。図7は、符号化装置のブロック図、図8は復号装置のブロック図である。この実施形態は、前記第2実施形態の符号化処理段階で、符号化対象に色コンポーネント内でのフレーム内予測を適用した上でその誤差信号を符号化対象としたものである。
【0046】
図7の符号化装置が図4の符号化装置と違う主なところは、点線で囲まれている機能部(符号化対象に色コンポーネント内でのフレーム内予測を適用した上でその誤差信号を得る機能部)が付加されている点であるので、以下では該点線で囲まれている機能部についてのみ説明する。
【0047】
第1の非基準信号の画像信号c2'の色コンポーネント間予測誤差成分e2'と色コンポーネント間予測残差105はイントラ予測部100に入力され、該イントラ予測部100はイントラ予測画像102を生成する。また、減算部101は前記予測誤差成分e2'からイントラ予測画像102を減算して色コンポーネント間予測誤差成分f2'を生成する。また、加算部104は、イントラ予測画像102とイントラ予測残差103とを加算し、前記色コンポーネント間予測残差105を生成する。前記色コンポーネント間予測誤差成分f2'は、DCT部24'、量子化部25'および可変長符号化部26'を介して符号化され、出力される。
【0048】
前記色コンポーネント間予測残差105は、第2の非基準信号の画像信号c3'の処理を行う減算信号31'にも送られ、減算処理に供される。該減算処理により得られた補正後画像誤差信号d3'は、その後、図4と同様に符号化処理され、出力される。
【0049】
この実施形態の符号化装置によれば、第2の非基準信号は第1の非基準信号の色コンポーネント間予測残差成分105を用いて補正後残差信号d3'を得るようにしているので、該色コンポーネント間予測残差成分105を用いないものに比べて第2の非基準信号の予測性能を改善することができるようになり、予測残差信号の符号量を削減できるようになる。
【0050】
図8は図7の符号化装置に対応する復号装置の構成を示すブロック図である。この復号装置の機能は図3,図6の復号装置の機能と類似しているので、詳細な機能の説明は省略するが、この復号装置によれば、第2の非基準信号の補正前復号画像130に、第1の非基準信号から得た色コンポーネント間予測残差120を加算して、第2の非基準信号を復号するようにしており、適応的に復号することができるようになる。
【0051】
以上、本発明を実施形態を参照して説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内の変形は当業者に可能であり、本発明の権利に含まれることは明らかである。
【符号の説明】
【0052】
13・・・前処理解析部、14・・・基準信号選択部、18・・・基準残差信号、21、32・・・色コンポーネント間予測部、22・・・残差予測画像、27・・・・色コンポーネント間予測誤差成分、33・・・補正後残差予測画像、c1,c2,c3・・・残差信号、e2・・・残差信号の色コンポーネント間予測誤差成分、d3・・・補正後残差信号、f3・・・色コンポーネント間予測誤差成分、42・・・基準信号判別部、43、51、71・・・可変長復号部、46・・・基準残差信号、54、74・・・色コンポーネント間予測誤差成分、55、75・・・色コンポーネント間予測部、56・・・残差予測画像、76・・・補正前残差予測画像、78・・・復号補正前残差画像、58、80・・・復号残差画像、50、62、84・・・復号画像、120・・・色コンポーネント間残差、130・・・補正前復号画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色コンポーネント間予測の基準信号を適応的に設定可能な動画像符号化装置において、
複数の色コンポーネントからなる入力画像信号から基準信号と第1の非基準信号と第2以降の非基準信号とを選択する基準信号選択手段と、
前記第1の非基準信号の符号化においては、前記基準信号のみを参照する予測を行う第1の手段と、
前記第2以降の非基準信号の符号化においては、前記基準信号と前記第1の非基準信号とを参照する予測を行う第2の手段とを具備することを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動画像符号化装置において、
前記第1および第2の手段は色コンポーネント間予測を行い、該色コンポーネント間予測の対象をコンポーネント内でのフレーム内予測残差信号または画像信号そのものとすることを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項3】
請求項2に記載の動画像符号化装置において、
前記基準信号選択手段は、前記非基準信号の第1、第2以降の区別を、前記色コンポーネント間予測の対象となる信号と、予測参照先となる信号との相関係数を基に、より高い相関を有する色コンポーネントを第1の非基準信号とすることを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の動画像符号化装置において、
前記第2の手段は、前記色コンポーネント間予測の対象となる信号を、第1の非基準信号の色コンポーネント間予測残差信号を考慮して補正した上で、基準信号を参照した色コンポーネント間予測を行うことを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項5】
請求項4に記載の動画像符号化装置において、
前記色コンポーネント間予測の対象となる信号の補正は、前記第1の非基準信号の色コンポーネント間予測残差信号の減算により行うことを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項6】
請求項1の動画像符号化装置で符号化された信号の復号装置において、
前記符号化された信号から基準信号、第1の非基準信号および第2以降の非基準信号を判別する判別部と、
前記第1の非基準信号の復号においては、前記基準信号のみを参照する予測を行う第1の手段と、
前記第2以降の非基準信号の復号においては、前記基準信号と前記第1の非基準信号とを参照する予測を行う第2の手段とを具備することを特徴とする復号装置。
【請求項7】
請求項6に記載の復号装置において、
前記第1および第2の手段は色コンポーネント間予測を行い、該色コンポーネント間予測の対象をコンポーネント内でのフレーム内予測残差信号または画像信号そのものとすることを特徴とする復号装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の復号装置において、
前記第2以降の非基準信号の復号において、色コンポーネント間予測の残差信号を、前記第1の非基準信号の色コンポーネント間予測残差信号を考慮して逆補正した上で、基準信号を参照する色コンポーネント間予測を行うことを特徴とする復号装置。
【請求項9】
請求項8に記載の復号装置において、
前記色コンポーネント間予測の残差信号の逆補正は、前記第1の非基準信号の色コンポーネント間予測残差信号の加算により行うことを特徴とする復号装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−106302(P2013−106302A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250694(P2011−250694)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/超高精細映像符号化技術に関する研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】