Array ( [harmful] => 0 [next] => Array ( [id] => A,2012-102224 [meishou] => 接着性樹脂組成物 ) [prev] => Array ( [id] => A,2012-102222 [meishou] => フッ素樹脂含有傾斜膜、その製造方法及びフッ素樹脂含有傾斜膜形成用樹脂組成物 ) ) 色中心含有酸化物の作製方法

色中心含有酸化物の作製方法

【課題】マグネシウム以外の金属についても、固相反応させることにより、色中心含有金属酸化物を得て、色中心発光特性を有する発光媒体を提供する。
【解決手段】カチオンが電子を受け取って金属原子となる際の標準電極電位が−2.87〜−2.2(V)で、かつ、アルカリ金属,マグネシウムを含むアルカリ土類金属、もしくは、スカンジウムを除く希土類元素のいずれかに属する金属と、酸化物を構成する金属の標準電極電位が−1.7〜+0.4(V)である酸化物とを、所定の雰囲気下で、所定の温度で加熱する固相反応工程と、固相反応工程で得られる金属の昇華物を回収する工程とから成る。得られる昇華物は、酸素空孔を多量に導入させた金属酸化物であり、色中心由来の発光特性を有する。金属と固相反応させる酸化物のバリエーションを増やして、工業的生産の利便性を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近紫外域から可視域の幅広い波長域で発振する色中心(カラーセンター)を含有する酸化物の作製方法に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
イオン性結晶やガラスに紫外線やX線などの比較的高エネルギーの電磁波を照射すると、電子が開放され、開放された電子の一部は、ガラス中の不純物などにトラップされて、ホールとトラップ電子の対が生成して欠陥を形成する。あるいは,格子内の原子が格子間に移動したり,系外に放出されて空孔が生成する場合がある。これらの欠陥は、紫外域から可視域にかけて吸収を持ち、色中心(カラーセンター)という。
【0003】
従来、マグネシウム酸化物の単結晶に中性子を照射して、色中心(カラーセンター)を作製する技術が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。しかしながら、中性子(放射能)の取り扱いが難しいといった問題がある。
既に、発明者は、一酸化珪素(SiO),三酸化ホウ素(B),三酸化二鉄(Fe)のいずれかの酸化物と金属マグネシウムとを固相反応させることにより、色中心(カラーセンター)を含有させた酸化マグネシウムが生成できるといった知見を得て、新規な色中心含有酸化マグネシウムの作製方法を提案している(特許文献1)。
【0004】
また、発明者が見出した色中心含有酸化マグネシウムの作製方法で得られた酸化マグネシウムを利用したレーザー媒体は、レーザー発振波長域がより短波長の近紫外域(約300nm)から可視域(約700nm)に及ぶブロードな発光特性を有しており、また、人為的なレーザーキャビティーや液体窒素冷却を必要とせず室温で安定的に動作できるものであることを既に報告している(非特許文献2,非特許文献3)。
【0005】
発明者は、かかる色中心含有酸化マグネシウムの作製方法の知見から、マグネシウム以外の金属についても、色中心含有金属酸化物を得ることができる可能性があると考えた。
そこで、発明者は色中心含有酸化マグネシウムの作製方法の原理を探究し、その原理を適用できる金属および酸化物を見出し、実際に金属酸化物を作製して発光特性を実験により調べたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開パンフレット WO/2010/024447
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】R.Gonzalez and Y.Chen, Properties of the800nm luminescence band in neutron irradiated magnesium oxide crystals,Physical Review B, Volume 43, number 7, p5228-5233, 1991.
【非特許文献2】T. Uchino and D. Okutsu, Broadband Laser Emission from Color Centers InsideMgO Microcrystals, Physical Review Letters, PRL 101, 117401, 2008.
【非特許文献3】T. Uchino, D. Okutsu, R. Katayama, and S. Sawai, Mechanism of stimulated opticalemission from MgO microcrystals with color centers, PHYSICAL REVIEW B 79, 165107, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、マグネシウム以外の金属についても、固相反応させることにより、色中心含有金属酸化物を得て、色中心発光特性を有する発光媒体を提供することである。
また、本発明は、色中心含有酸化マグネシウムの作製方法において、マグネシウムと固相反応させる酸化物のバリエーションを増やして、工業的生産の利便性を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、発明者自ら以前見出した色中心含有酸化マグネシウムの作製方法の原理を鋭意探究した結果、本発明を創出するに至ったものである。
すなわち、本発明の色中心含有酸化物の作製方法は、カチオンが電子を受け取って金属原子となる際の標準電極電位が−2.87〜−2.2(V)で、かつ、アルカリ金属,マグネシウムを含むアルカリ土類金属、もしくは、スカンジウムを除く希土類元素のいずれかに属する金属と、酸化物を構成する金属の標準電極電位が−1.7〜+0.4(V)である酸化物とを、所定の雰囲気下で、所定の温度で加熱する固相反応工程と、固相反応工程で得られる金属の昇華物を回収する工程とから成るものである。
かかる作製方法によれば、得られる金属の昇華物は、酸素空孔を多量に導入させた金属酸化物であり、色中心由来の発光特性を有する色中心含有酸化物ものを得ることができる。
【0010】
ここで、マグネシウムを含むアルカリ土類金属としたのは、マグネシウムをアルカリ土類金属に含めない場合もあることから、含まれることを確認の意味で記載したものである。
また、スカンジウムを除く希土類元素のいずれかに属する金属としたのは、スカンジウムを除く全ての希土類元素は、標準電極電位が−2.87〜−2.2(V)に属するからである。
以下に、上記のカチオンが電子を受け取って金属原子となる際の標準電極電位が−2.87〜−2.2(V)で、かつ、アルカリ金属,マグネシウムを含むアルカリ土類金属、もしくは、スカンジウムを除く希土類元素のいずれかに属する金属の具体例を挙げる。
【0011】
まず、当該金属のカチオンが電子を受け取って金属原子となる際の標準電極電位が−2.87(V)のカルシウム(Ca)の場合、このカルシウムと、一酸化珪素(SiO),二酸化珪素(SiO),三酸化ホウ素(B),三酸化二鉄(Fe),酸化鉄(FeO),酸化銅(CuO),酸化ゲルマニウム(GeO),酸化亜鉛(ZnO),酸化ニッケル(NiO),三酸化二クロム(Cr)の群から選択される酸化物と、所定の雰囲気下で、1100℃以下の温度で加熱する固相反応工程を施し、固相反応工程で得られるカルシウムの昇華物を回収することにより得られる昇華物は、酸素空孔を多量に導入させたカルシウムの酸化物であり、色中心由来の発光特性を有する色中心含有酸化物となる。
【0012】
次に、当該金属のカチオンが電子を受け取って金属原子となる際の標準電極電位が−2.71(V)のナトリウム(Na)の場合、このナトリウムと、一酸化珪素(SiO),二酸化珪素(SiO),三酸化ホウ素(B),三酸化二鉄(Fe),酸化鉄(FeO),酸化銅(CuO),酸化ゲルマニウム(GeO),酸化亜鉛(ZnO),酸化ニッケル(NiO),三酸化二クロム(Cr)の群から選択される酸化物と、所定の雰囲気下で、800℃以下の温度で加熱する固相反応工程を施し、固相反応工程で得られるナトリウムの昇華物を回収することにより得られる昇華物は、酸素空孔を多量に導入させたナトリウムの酸化物であり、色中心由来の発光特性を有する色中心含有酸化物となる。
【0013】
また、当該金属のカチオンが電子を受け取って金属原子となる際の標準電極電位が−2.87〜−2.37(V)の範囲内にあると予想されるマグネシウム・カルシウム合金(MgCa),マグネシウム・銅合金(MgCu),マグネシウム・ゲルマニウム合金(MgGe)のいずれかの合金の場合、この合金と、一酸化珪素(SiO),二酸化珪素(SiO),三酸化ホウ素(B),三酸化二鉄(Fe),酸化鉄(FeO),酸化銅(CuO),酸化ゲルマニウム(GeO),酸化亜鉛(ZnO),酸化ニッケル(NiO),三酸化二クロム(Cr)の群から選択される酸化物と、所定の雰囲気下で、800℃以下の温度で加熱する固相反応工程を施し、固相反応工程で得られる合金の昇華物を回収することにより得られる昇華物は、酸素空孔を多量に導入させた合金の酸化物であり、色中心由来の発光特性を有する色中心含有酸化物となる。
【0014】
また、当該金属のカチオンが電子を受け取って金属原子となる際の標準電極電位が−2.37(V)のマグネシウム(Mg)の場合、このマグネシウムと、酸化鉄(FeO),酸化銅(CuO),酸化ゲルマニウム(GeO),酸化亜鉛(ZnO),酸化ニッケル(NiO),三酸化二クロム(Cr)の群から選択される酸化物と、所定の雰囲気下で、800℃以下の温度で加熱する固相反応工程を施し、固相反応工程で得られるマグネシウムの昇華物を回収することにより得られる昇華物は、酸素空孔を多量に導入させたマグネシウムの酸化物であり、色中心由来の発光特性を有する色中心含有酸化物となる。
【0015】
また、当該金属のカチオンが電子を受け取って金属原子となる際の標準電極電位が−2.4〜−2.2(V)のスカンジウムを除く希土類元素の場合、このスカンジウムを除く希土類元素のいずれかと、一酸化珪素(SiO),二酸化珪素(SiO),三酸化ホウ素(B),三酸化二鉄(Fe),酸化鉄(FeO),酸化銅(CuO),酸化ゲルマニウム(GeO),酸化亜鉛(ZnO),酸化ニッケル(NiO),三酸化二クロム(Cr)の群から選択される酸化物と、所定の雰囲気下で、800℃以下の温度で加熱する固相反応工程を施し、固相反応工程で得られる希土類元素の昇華物を回収することにより得られる昇華物は、酸素空孔を多量に導入させた希土類元素の酸化物であり、色中心由来の発光特性を有する色中心含有酸化物となる。
【0016】
ここで、固相反応工程では、希土類元素と酸化物が爆発的に反応することから、飛散防止のために、2重坩堝構造による焼結を用いることが好ましい。
下記表1は、希土類元素の標準電極電位を列挙したものである。このうち、原子番号が最も小さいスカンジウム(Sc)の標準電極電位が−2.03(V)であるが、スカンジウム以外の希土類元素の標準電極電位は全て−2.4〜−2.2(V)の範囲に入っている。
【0017】
【表1】

【0018】
上記の色中心含有酸化物の作製方法において、所定の雰囲気は、水分および酸素を除去した窒素雰囲気もしくは不活性雰囲気であることが好ましい。
また、上記の色中心含有酸化物の作製方法により作製された昇華物の粉体に含まれる酸化物単結晶は、色中心発光媒体として好適に用いられる。
【0019】
また、色中心発光薄膜は、上記の色中心含有酸化物の作製方法により作製された昇華物の粉体に含まれる酸化物単結晶を、該酸化物単結晶基板にエピタキシャル成長させたものが好ましい。酸化物を単結晶基板にエピタキシャル成長させることにより、色中心(カラーセンター)を有する酸化物の均一な薄膜を生成でき、工業上利用が容易となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の色中心含有酸化物の作製方法は、種々のバリエーションの金属酸化物に対して、色中心(カラーセンター)を含有させて、用途に合わせた波長領域の光源デバイスを作製することができるといった効果を有する。
また、通常の金属酸化物の作製プロセスと比べて、低い加熱温度、短い加熱時間(数時間程度)で作製可能であり、簡易かつ安価な製造設備を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】抵抗加熱方式による真空蒸着の装置概念図
【図2】アルゴン雰囲気中で1000℃加熱して得たCaOの発光スペクトル
【図3】灰色の昇華物の粉体における発光スペクトル(PL)と励起光スペクトル(PLE)
【図4】MgとCuOの混合粉末の固相反応により得られた昇華物のXRDパターンを示す図
【図5】MgとGeOの混合粉末の固相反応により得られた昇華物のXRDパターンを示す図
【図6】MgとZnOの混合粉末の固相反応により得られた昇華物のXRDパターンを示す図
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0023】
(カルシウムの酸化物)
本発明の色中心含有酸化物の実施例として、カチオンが電子を受け取って金属原子となる際の標準電極電位が−2.87(V)のカルシウム(Ca)と一酸化珪素(SiO)とを、アルゴン雰囲気下、1000℃で数時間加熱して固相反応させて得られるものについて、その酸化物結晶の発光スペクトルを示して説明する。
カルシウム(Ca)と一酸化珪素(SiO)を固相反応させたものは、昇華物の粉体から成るものであり、この昇華物の粉体の構造をX線回折法により解析すると、ほぼ酸化カルシウム(CaO)結晶であった。また、この昇華物の粉体は、走査型電子顕微鏡を用いて観測したところ、結晶が凝集した粒径数ミクロンの微粒子であった。
【0024】
ここで、SiOxとCaの固相還元反応について若干説明を行う。シリカ(SiO)とカルシウム(Ca)とを高温中で反応させると、下記数式1のようにシリカとカルシウムのモル比の違いに従って、シリコンまたは珪化カルシウムが生成することが知られている。ここで、数式の括弧内のsは固体を、lは液体を示している。
【0025】
(数1)
SiO(s)+2Ca(lors) → Si(s)+2CaO(s) ・・・(式1)
SiO(s)+4Ca(lors) → CaSi(s)+2CaO ・・・(式2)
【0026】
しかしながら、これまで一酸化珪素(SiO)とカルシウム(Ca)との反応について報告例は殆どなく、また、一酸化珪素(SiO)はSiとOをほぼ1:1の比で含有する絶縁性の非晶質固体であり、加熱に従って、SiとSiOに不均化することが知られている。
また、一酸化珪素(SiO)は昇華性を有することから、カルシウム(Ca)との反応性はSiOとは異なるものと推察される。
【0027】
そのため、一酸化珪素(SiO)とカルシウム(Ca)の原料粉体を、それぞれ1:2のモル比で十分混合したものを出発原料とし、この試料をアルミナるつぼ中で、アルゴン雰囲気下で、1000℃で2時間加熱し、加熱後に得られた試料からの発光を測定した。
【0028】
坩堝内の反応物は反応中、昇華後、固化したと思われる灰色の物質がるつぼの蓋に堆積し、また、るつぼの底部には灰色の物質が最上面に、さらにその下の下部に溶融後固化したと推察できる黒色や青色の物質が偏析して現れる。上記のるつぼの蓋に堆積した灰色の物質が、本発明の色中心(カラーセンター)を有する酸化カルシウム(CaO)である。
なお、CaOを含む試料に関しては、試料作製後の比較的早い時間で、下記反応式で示される反応が生じてしまうため、シリカ(SiO)とカルシウム(Ca)の混合粉体加熱後のX線回折測定の結果得られる回折図は、CaOとCa(OH)2を含んだ非常に複雑なものとなる。また、CaととSiの化合物は、同族のMgとSiとの比較から、CaSiとなると推測されるが、さらに、CaSiという化合物ができる可能性もある。このようなことから構造解析は困難である。
【0029】
(数2)
CaO+2HO −> Ca(OH)
【0030】
図1に、本発明のCaO作製における抵抗加熱方式による真空蒸着の装置概念図を示す。本発明のCaO作製における抵抗加熱方式による真空蒸着は、図1に示すように、容器25内の試料粉体24を抵抗加熱源26で所定の温度に熱することにより蒸着を行う。ここで、試料粉体24は、例えば、一酸化珪素(SiO)とカルシウム(Ca)の混合粉体である。試料粉体24を抵抗加熱源26で所定の温度に熱することにより、固相反応が生じ、蒸着分子23が昇華する。装置上部に設けられたCaO単結晶基板21に蒸着分子23が蒸着することで、CaO単結晶基板21の基板表面にエピタキシャル成長が生じ、本発明のCaO薄膜22が形成されることになる。
【0031】
以下に、本発明の色中心(カラーセンター)含有酸化カルシウム(CaO)について、詳細な作製条件、物性測定データを示しながら説明していく。
純粋なカルシウム(Ca:99.9%、〜180マイクロメートル)と一酸化珪素(SiO;99.99%、〜75マイクロメートル)との原料粉体をそれぞれ2:1のモル比で十分混合したものを出発原料とする。この原料をアルミナるつぼ中で、アルゴン雰囲気下、1000℃で2時間加熱する。ここで、アルミナるつぼは、厚さ4mmのアルミナ蓋で閉じられ、電気炉を用いて加熱している。また、電気炉内は、真空ポンプを用いて30Paの圧力まで減圧した後、純度99.99%のアルゴンガスを流通することでアルゴン雰囲気としている。また、電気炉の温度は、7℃/分のレートで、ゆっくりと1000℃まで上昇させている。
【0032】
そして、加熱処理の後、アルミナるつぼ内の反応物が反応中に昇華後に固化したと考えられる薄い灰色の粉体が、るつぼのアルミナ蓋に堆積付着する。なお、アルミナるつぼの底部には灰色の物質が最上面に、さらにその下の下部に溶融後に固化したと思われる黒色/青色の物質が偏析して現れる。
坩堝のアルミナ蓋に堆積付着した薄い灰色の昇華物の粉体が、酸素空孔を多量に含む酸化カルシウム(CaO)である。
【0033】
ここで、坩堝のアルミナ蓋に堆積付着した薄い灰色の昇華物の粉体およびアルミナ坩堝の底部に析出した黒色/青色の物質について説明する。灰色の昇華物の粉体は、ほとんどCaOから成っている。また、黒色/青色の物質は主に、Si,CaSi,CaSi,Ca(OH)が含まれている。
【0034】
次に、図2は、灰色の昇華物の粉体、すなわち、作製した酸化カルシウムの発光スペクトル(PL)を示している。励起光(励起波長280nm)の紫外線を照射することにより、350nm付近〜450nm付近にかけてピークを有するブロードなスペクトルが現れている。
このような発光挙動はCaO結晶を高温で熱化学還元した時に生成する、酸素欠陥であるFセンター及びF+センターの発光と非常に類似している。ここで、Fセンターは酸素空孔に電子が2個充填され電荷の中性が保たれた状態をいい、F+センターは酸素空孔に電子が1個充填されプラス1に帯電した状態をいう。
【実施例2】
【0035】
(合金の酸化物)
実施例2では、カチオンが電子を受け取って金属原子となる際の標準電極電位が−2.87〜−2.37(V)のマグネシウムとカルシウムの合金(Mg−Ca)と、一酸化珪素(SiO)とを、アルゴン雰囲気下で、800℃で加熱し、固相反応により作製した酸化物について説明する。
【0036】
図3は、灰色の昇華物の粉体における発光スペクトル(PL)と励起光スペクトル(PLE)を示している。灰色の昇華物の粉体に、励起光スペクトル(PLE)に示すような紫外線照射することにより、発光スペクトル(PL)のように緑色の発光で400nm付近と500nm付近の2ヶ所のピークが現れている。なお、図3において、PLEのプロットが緑と青の2つあるが、これはPLの400nmと500nmの2つのピークに対応しているものである。
このような発光挙動は、合金(Mg−Ca)の結晶を高温で熱化学還元した時に生成する、酸素欠陥であるFセンター及びF+センターの発光と非常に類似している。
【実施例3】
【0037】
実施例3では、カチオンが電子を受け取って金属原子となる際の標準電極電位が−2.37(V)のマグネシウム(Mg)と、酸化鉄(FeO),酸化銅(CuO),酸化ゲルマニウム(GeO),酸化亜鉛(ZnO),酸化ニッケル(NiO),三酸化二クロム(Cr)の群から選択される酸化物とを、アルゴン雰囲気下で、マグネシウム(Mg)の融点以下もしくは800℃以下の温度で加熱し、固相反応により作製した酸化物について説明する。
【0038】
ここで、酸化鉄(FeO),酸化銅(CuO),酸化ゲルマニウム(GeO),酸化亜鉛(ZnO),酸化ニッケル(NiO),三酸化二クロム(Cr)と、Mgとの標準電極電位の差ΔEを以下に示す。
【0039】
・SiO(−0.91(V)) ・・・Mgとの標準電極電位の差ΔE=1.46(V)
・B(−0.89(V)) ・・・Mgとの標準電極電位の差ΔE=1.48(V)
・ZnO (−0.76(V)) ・・・Mgとの標準電極電位の差ΔE=1.61(V)
・Cr(−0.74(V)) ・・・Mgとの標準電極電位の差ΔE=1.63(V)
・FeO(−0.44(V)) ・・・Mgとの標準電極電位の差ΔE=1.93(V)
・NiO(−0.25(V)) ・・・Mgとの標準電極電位の差ΔE=2.12(V)
・Fe(+0.32(V)) ・・・Mgとの標準電極電位の差ΔE=2.69(V)
・GeO(+0.25(V)) ・・・Mgとの標準電極電位の差ΔE=2.62(V)
・CuO(+0.34(V)) ・・・Mgとの標準電極電位の差ΔE=2.71(V)
【0040】
これらの酸化物とマグネシウムとを固相反応させることで、色中心含有酸化マグネシウムが作製される。実際に、上記の実施例2と同様な色中心発光特性を有する発光性MgOが作製された。但し、Fe、GeO、CuOについては色中心発光特性を有するMgOの生成は確認されたが、マグネシウムと爆発的に固相反応が生じ、反応制御が困難であった。しかしながら、反応坩堝を二重構造にするなど,飛散試料が拡散しない工夫を施すことで、色中心含有酸化物を効率的に回収することが可能である。したがって、Fe、GeO、CuOなどの酸化物も発光性MgOを得るための原料として利用可能である。
【0041】
図4は、MgとCuOの混合粉末をアルゴン雰囲気中800℃で熱処理した後の試料、すなわち、MgとCuOの混合粉末の固相反応により得られた昇華物のXRDパターンである。MgO,Cu,CuMgのピークが確認できた。このことから、下記反応式で示す反応により、MgOとCuが生成していることがわかる。なお、CuMgは、過剰のMgと生成物であるCuが反応した結果、生じたものと推察する。
【0042】
(数3)
Mg+CuO −> MgO+Cu
【0043】
また、図5は、MgとGeOの混合粉末をアルゴン雰囲気中800℃で熱処理した後の試料、すなわち、MgとGeOの混合粉末の固相反応により得られた昇華物のXRDパターンである。MgO,Ge,MgGeのピークが確認できた。このことから、下記反応式で示す反応により、MgOとGeが生成していることがわかる。なお、MgGeは、過剰のMgと生成物であるGeが反応した結果、生じたものと推察する。
【0044】
(数4)
2Mg+GeO −> 2MgO+Ge
【0045】
図6は、MgとZnOの混合粉末をアルゴン雰囲気中800℃で熱処理した後の試料、すなわち、MgとZnOの混合粉末の固相反応により得られた昇華物のXRDパターンである。MgO,MgZnのピークが確認できた。このことから、下記反応式で示す反応により、MgOとZnが生成したが、生じたZnは過剰のMgと反応してMgZnとなったと推察する。
【0046】
(数5)
Mg+ZnO −> MgO+Zn
【0047】
上述の実施例1,2では、カルシウムやマグネシウム合金において、固相反応によって色中心含有酸化物が作製できることが実験により確認できた。また、本実施例では、マグネシウムにおいて、様々な酸化物との古固相反応によって色中心含有酸化物が作製できることが実験により確認できた。
ナトリウム(Na)や希土類元素(La,Ybなど)は、爆発的に酸化物と固相反応が生じ反応制御が困難であるが、反応坩堝を二重構造にするなど,飛散試料が拡散しない工夫を施すことで、色中心含有酸化物を効率的に回収することが可能である。
【0048】
下記表2は、金属として、カルシウム(Ca),ナトリウム(Na),マグネシウム(Mg),カチオンが電子を受け取って金属原子となる際の標準電極電位が−2.4〜−2.2(V)のスカンジウムを除く希土類元素で、標準電極電位が最も大きいランタン(La)と標準電極電位が最も小さいイッテルビウム(Yb)のそれぞれについて、一酸化珪素(SiO),二酸化珪素(SiO),三酸化ホウ素(B),酸化亜鉛(ZnO),三酸化二クロム(Cr),酸化鉄(FeO),酸化ニッケル(NiO),三酸化二鉄(Fe),酸化ゲルマニウム(GeO),酸化銅(CuO)の酸化物との標準電極電位の電位差(単位V)を示している。括弧内は、金属および反応酸化物のそれぞれの標準電極電位(単位V)である。
また、下記表2において、標準電極電位は、それぞれの酸化物中におけるカチオン状態のイオンが金属原子の状態まで還元されるときの標準電極電位を表している。
【0049】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る色中心含有酸化物は、分光計測や分光分析に用いる可変波長レーザー装置として、また、高速光伝送用として光通信装置やそれらに使用される光コンポーネントとして利用できる。
【符号の説明】
【0051】
21 金属酸化物の単結晶基板
22 エピタキシャル成長させた色中心含有金属酸化物薄膜
23 蒸着分子
24 試料粉体
25 容器
26 抵抗加熱源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオンが電子を受け取って金属原子となる際の標準電極電位が−2.87〜−2.2(V)で、かつ、アルカリ金属,マグネシウムを含むアルカリ土類金属、もしくは、スカンジウムを除く希土類元素のいずれかに属する金属と、
酸化物を構成する金属の標準電極電位が−1.7〜+0.4Vである酸化物とを、
所定の雰囲気下で、所定の温度で加熱する固相反応工程と、
前記固相反応工程で得られる金属の昇華物を回収する工程とから成り、
該昇華物は酸素空孔を多量に導入させた金属酸化物である、
ことを特徴とする色中心含有酸化物の作製方法。
【請求項2】
カチオンが電子を受け取って金属原子となる際の標準電極電位が−2.87(V)のカルシウム(Ca)と、
酸化物を構成する金属の標準電極電位が−1.7〜+0.4Vである、一酸化珪素(SiO),二酸化珪素(SiO),三酸化ホウ素(B),三酸化二鉄(Fe),酸化鉄(FeO),酸化銅(CuO),酸化ゲルマニウム(GeO),酸化亜鉛(ZnO),酸化ニッケル(NiO),三酸化二クロム(Cr)の群から選択される酸化物とを、
所定の雰囲気下で、1100℃以下の温度で加熱する固相反応工程と、
前記固相反応工程で得られるカルシウムの昇華物を回収する工程とから成り、
該昇華物は酸素空孔を多量に導入させたカルシウムの酸化物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の色中心含有酸化物の作製方法。
【請求項3】
カチオンが電子を受け取って金属原子となる際の標準電極電位が−2.71(V)のナトリウム(Na)と、
酸化物を構成する金属の標準電極電位が−1.7〜+0.4Vである、一酸化珪素(SiO),二酸化珪素(SiO),三酸化ホウ素(B),三酸化二鉄(Fe),酸化鉄(FeO),酸化銅(CuO),酸化ゲルマニウム(GeO),酸化亜鉛(ZnO),酸化ニッケル(NiO),三酸化二クロム(Cr)の群から選択される酸化物とを、
所定の雰囲気下で、800℃以下の温度で加熱する固相反応工程と、
前記固相反応工程で得られるナトリウムの昇華物を回収する工程とから成り、
該昇華物は酸素空孔を多量に導入させたナトリウムの酸化物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の色中心含有酸化物の作製方法。
【請求項4】
カチオンが電子を受け取って金属原子となる際の標準電極電位が−2.87〜−2.37(V)の範囲内にあると予想されるマグネシウム・カルシウム合金(MgCa),マグネシウム・銅合金(MgCu),マグネシウム・ゲルマニウム合金(MgGe)のいずれかの合金と、
酸化物を構成する金属の標準電極電位が−1.7〜+0.4Vである、一酸化珪素(SiO),二酸化珪素(SiO),三酸化ホウ素(B),三酸化二鉄(Fe),酸化鉄(FeO),酸化銅(CuO),酸化ゲルマニウム(GeO),酸化亜鉛(ZnO),酸化ニッケル(NiO),三酸化二クロム(Cr)の群から選択される酸化物とを、
所定の雰囲気下で、800℃以下の温度で加熱する固相反応工程と、
前記固相反応工程で得られる前記合金の昇華物を回収する工程とから成り、
該昇華物は酸素空孔を多量に導入させた前記合金の酸化物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の色中心含有酸化物の作製方法。
【請求項5】
カチオンが電子を受け取って金属原子となる際の標準電極電位が−2.37(V)のマグネシウム(Mg)と、
酸化物を構成する金属の標準電極電位が−1.7〜+0.4Vである、酸化鉄(FeO),酸化銅(CuO),酸化ゲルマニウム(GeO),酸化亜鉛(ZnO),酸化ニッケル(NiO),三酸化二クロム(Cr)の群から選択される酸化物とを、
所定の雰囲気下で、800℃以下の温度で加熱する固相反応工程と、
前記固相反応工程で得られるマグネシウムの昇華物を回収する工程とから成り、
該昇華物は酸素空孔を多量に導入させたマグネシウムの酸化物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の色中心含有酸化物の作製方法。
【請求項6】
カチオンが電子を受け取って金属原子となる際の標準電極電位が−2.4〜−2.2(V)のスカンジウムを除く希土類元素と、
酸化物を構成する金属の標準電極電位が−1.7〜+0.4Vである、一酸化珪素(SiO),二酸化珪素(SiO),三酸化ホウ素(B),三酸化二鉄(Fe),酸化鉄(FeO),酸化銅(CuO),酸化ゲルマニウム(GeO),酸化亜鉛(ZnO),酸化ニッケル(NiO),三酸化二クロム(Cr)の群から選択される酸化物とを、
所定の雰囲気下で、800℃以下の温度で加熱する固相反応工程と、
前記固相反応工程で得られる希土類元素の昇華物を回収する工程とから成り、
該昇華物は酸素空孔を多量に導入させた希土類元素の酸化物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の色中心含有酸化物の作製方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの色中心含有酸化物の作製方法において、所定の雰囲気は、水分および酸素を除去した窒素雰囲気もしくは不活性雰囲気であること。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの色中心含有酸化物の作製方法により作製された昇華物の粉体に含まれる酸化物単結晶を用いた色中心発光媒体。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかの色中心含有酸化物の作製方法により作製された昇華物の粉体に含まれる酸化物単結晶を、該酸化物単結晶基板にエピタキシャル成長させたものであることを特徴とする色中心発光薄膜。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−102223(P2012−102223A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251208(P2010−251208)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(800000057)公益財団法人新産業創造研究機構 (99)
【Fターム(参考)】