説明

色付与及び/又は効果付与する複層塗装系におけるポリウレタンベースの会合増粘剤及び/又はジプロピレングリコールモノアルキルエーテルの使用

【課題】本発明の課題は、新規の成分の組合せを有し、淡色斑又は研磨斑を形成せずに色付与及び/又は効果付与する複層塗装系の製造及び補修を可能にする新規のベースコート材料、特に水系ベースコート材料に関する。
【解決手段】ポリウレタンベースの会合増粘剤及びジプロピレングリコールモノアルキルエーテルを、色付与及び/又は効果付与する複層塗装系並びにその補修塗装系における光学的欠陥を抑えるために用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色付与及び/又は効果付与する複層塗装系又はその補修塗装系における光学的欠陥を抑えるための、ポリウレタンベースの会合増粘剤及び/又はジプロピレングリコールモノアルキルエーテルの使用に関する。更に本発明は、少なくとも1種のポリウレタンベースの会合増粘剤及び/又は少なくとも1種のジプロピレングリコールモノアルキルエーテルを含有する新規の水系ベースコート材料に関する。更に本発明は色付与及び/又は効果付与する複層塗装系及びその補修塗装系の作成のための新規の水系ベースコート材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
その多くの有利な特性のゆえに、今日では多くの範囲において、例えば自動車ボディー、電子工学的な構成部品、コイル及び包装材料及び物質又は家具を含む工業的な構成部品、色付与及び/又は効果付与する複層塗装系の被覆において使用される。自動車の製造元及びその顧客の特に高い要求のゆえに、この使用分野では特に色付与及び/又は効果付与する複層塗装系が定着した。
【0003】
公知のように、今日では自動車のボディーをプライマー、特に電着塗装系、サーフェイサー又は耐チッピング性プライマー及び色付与及び/又は効果付与する複層塗装系からなる複層塗装系で被覆する。複層塗装系自体は一般に少なくとも1種のベースコート及び少なくとも1種のクリヤーコートからなる。有利にはベースコートを水系ベースコート材料から製造する。特に有利なウェット−オン−ウェット法により、水系ベースコート材料をサーフェイサー又は耐チッピング性プライマー上に適用し、架橋させずに乾燥させる。次いで未硬化の水系ベースコート上に少なくとも1つのクリヤーコート層を適用し、水系ベースコート層と一緒に硬化させる。この方法は色付与及び/又は効果付与する複層塗装系の補修塗装においても使用される。
【0004】
色付与及び/又は効果付与する複層塗装系の製造でも、そこに存在する欠陥の補修においても、不快に目に付き、クレームの原因となる光学的欠陥が生じることがある。この光学的欠陥は種々の原因を有することがある。
【0005】
このようにサーフェイサー又は耐チッピング性プライマーの欠陥は通常は研磨によって取り除く。この場合、研磨塵残留物は指紋の形で又は湿式の研磨においては乾燥された水滴の形で残留することがある。水系ベースコート材料及びクリヤーコート材料での上塗りの後にこの"指紋"及び/又は"滴"は得られる色付与及び/又は効果付与する複層塗装系においては淡色の明らかに可視的な部位として浮き上がる。この光学的欠陥は当業者によって"淡色斑"と呼称されている。
【0006】
かかる光学的欠陥は同様に、色付与及び/又は効果付与する複層塗装系のクリヤーコートを、適用されるべき修復塗装系の付着を改善する目的のために研磨する場合にも生じる。これらの光学的欠陥は当業者によって"研磨斑"とも呼称されている。
【0007】
この淡色斑は粗悪に塗布されている研削溝ではなく、該スポットは発汗滴又は指における発汗によっても引き起こされうる。
【0008】
他の種類の光学的欠陥、いわゆる研削斑は完成した色付与及び/又は効果付与する複層塗装系を欠陥のある部位で研磨するときに生じるが、他の欠陥のある部位のゆえに完全な補修塗装をしなければならず、その際、研磨部位を上塗りする。補修塗装においては、研磨部位はその別の色調のため非常に明確に認識できる。
【0009】
今までは光学的欠陥は、極めて入念かつ慎重な作業及び高い付加的な洗浄費用によってのみ回避できた。それというのも提供される水系ベースコートは、サーフェイサーもしくは色付与及び/又は効果付与する複層塗装系中及びそれらの上のかかる欠陥に対する十分な抵抗性を有さず、従ってこれらの欠陥は光学的に補償できないか、又は十分な程度で補償できない。しかしながら、これは塗装においてはラインで又は補修塗装においてはライン又は作業場で、より長期の加工時間ひいてはより大きな費用をもたらす。
【0010】
従って、欠点をもはや有さず、欠陥を光学的に補償するベースコート材料、特に水系ベースコート材料への高い要求があり、その際、その他の有利な特性は全面的に、殆ど改善されない場合には持続して得られる。
【0011】
色付与及び/又は効果付与する塗装系の製造のために極めて適当な水系ベースコート材料は、例えばドイツ国特許出願DE−A−4437535号から公知である。これらは無機増粘剤、例えば層状ケイ酸塩及び、有機溶剤、例えばブチルグリコールを含有する。これらは結合剤として、水溶性又は水分散性のポリウレタン、かかるポリウレタンの存在下に製造される水溶性又は水分散性のポリアクリレート樹脂及び水溶性又は水分散性のポリエステルを含有する。これらは高温においても非常に高い貯蔵安定性を有する。ポリウレタンベースの会合増粘剤及び/又はジプロピレングリコールモノアルキルエーテルの使用はDE−A−4437535号から明らかではない。
【0012】
ポリウレタンベースの会合増粘剤及びその性能特性及び利点は公知である。例えば、これについてはレンプレキシコン(Roempp Lexikon)塗料及び印刷インキ、Georg Thieme出版、シュトゥットガルト、ニューヨーク、1998、>>増粘剤<<、599頁〜600頁及びヨハン ビーレマン(Johan Bieleman)による教科書>>塗料添加剤<<、Wiley−VCH、ヴァインハイム、ニューヨーク、1998、51頁〜59頁及び65頁に示される。ポリウレタンベースのこの会合増粘剤の、色付与及び/又は効果付与する複層塗装系並びに補修塗装系における光学的欠陥を抑えるための使用はこれらには記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】ドイツ国特許出願DE−A−4437535号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】レンプレキシコン(Roempp Lexikon)塗料及び印刷インキ、Georg Thieme出版、シュトゥットガルト、ニューヨーク、1998、>>増粘剤<<、599頁〜600頁
【非特許文献2】ハン ビーレマン(Johan Bieleman)による教科書>>塗料添加剤<<、Wiley−VCH、ヴァインハイム、ニューヨーク、1998、51頁〜59頁及び65頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、新規の成分の組合せを有し、淡色斑又は研磨斑を形成せずに色付与及び/又は効果付与する複層塗装系の製造及び補修を可能にする新規のベースコート材料、特に水系ベースコート材料に関する。更に今までに知られたベースコート材料の特定の利点を更に有するか、又は更に新規の有利な特性を示す新規のベースコート材料、特に新規の水系ベースコート材料であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
それに応じて、ポリウレタンベースの会合増粘剤及びジプロピレングリコールモノアルキルエーテルの、色付与及び/又は効果付与する複層塗装系並びにその補修塗装系における光学的欠陥を抑えるための新規の使用が見いだされた。
【0017】
以下でこの新規の使用を"本発明による使用"と呼称する。
【0018】
更に、
(A)少なくとも1種の水溶性又は水分散性のポリウレタン、
(B)少なくとも1種の架橋剤、
(C)少なくとも1種の色付与及び/又は効果付与する顔料、
(D)少なくとも1種の中和剤、
(E)少なくとも1種の無機の増粘剤及び
(F)少なくとも1種のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル
を含有する新規の水系ベースコート材料が見いだされた。
【0019】
更に、
(A)少なくとも1種の水溶性又は水分散性のポリウレタン、
(B)少なくとも1種の架橋剤、
(C)少なくとも1種の色付与及び/又は効果付与する顔料、
(D)少なくとも1種の中和剤、
(E)少なくとも1種の無機の増粘剤、
(G)少なくとも1種のポリウレタンベースの会合増粘剤、
(H)場合により少なくとも1種の水溶性又は水分散性の、水溶性又は水分散性のポリウレタンの存在下に製造されるポリウレタン樹脂及び
(I)少なくとも1種の水溶性又は水分散性のポリエステル樹脂
を含有する更なる新規の水系ベースコート材料が見いだされた。
【0020】
以下にこれらの新規の水系ベースコート材料をまとめて"本発明による水系ベースコート材料"と呼称する。
【0021】
とりわけ、本発明による水系ベースコート材料から製造可能な少なくとも1種のベースコートを有する新規の色付与及び/又は効果付与する複層塗装系が見いだされた。
【0022】
従来の技術に関しては、本発明の課題を本発明による使用によって解決できたことは意想外であり、当業者に関して予測不可能であった。更に、前記課題の解決は本発明による水系ベースコートのレオロジー特性に基づくものではないのも意想外であった。更に、使用されるべきポリウレタンベースの会合増粘剤(G)及び少なくとも1種のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル(F)の組合せによって研磨斑を持続的に抑制又は回避することが達成されることは予期しないことであった。
【0023】
本発明によれば、ポリウレタンベースの会合増粘剤(G)又はジプロピレングリコールモノアルキルエーテル(F)を単独で使用することができ、その際、会合増粘剤(G)の単独の使用は特定の利点を提供し、従って本発明によれば有利である。これらの両者の成分を一緒に使用することはより特に有利であり、従って本発明によれば特に有利である。
【0024】
本発明による水系ベースコート材料の本発明に必須の第1の成分は従って少なくとも1種のポリウレタンベースの会合増粘剤(G)である。これらの増粘剤は、液体形で、例えば水又は有機溶剤中の50%溶液として、又は粉末形で使用できる非イオン性の疎水性ポリマーから通常は構成される。これらは比較的低い分子量10000〜50000を有する水溶性ポリウレタンをベースとしている。
【0025】
水溶性ポリウレタン(G)はジイソシアネート、特に以下に記載のジイソシアネートとジオール、特に以下に記載のジオール及び疎水性封鎖成分との反応によって製造され、それによって以下の一般式Iの理想的な構造が得られる:
【化1】

【0026】
一般式Iにおいて、係数x及びnは前記に挙げた分子量が得られる大きさの整数を表す。
【0027】
基Rは疎水性脂肪族又は芳香族基を表す。この種の適当な基の例は、オレイル、ステアリル、ドデシルフェニル又はノニルフェニルである。
【0028】
基Rは親水性セグメントを表す。適当な親水性セグメントの例は、ポリエステル、特にマレイン酸及びエチレングリコールのポリエステル、及びポリエーテル、特にポリエチレングリコール又はその誘導体である。
【0029】
従って本発明により使用されるべきポリウレタンベースの会合増粘剤は3種の以下の種類のセグメント又は構成ブロック基:
− 疎水性末端セグメント、
− 複数の親水性セグメント及び
− ウレタン基
を有する。
【0030】
これらのセグメント又は構成ブロック基は互いに異なって結合しているので、種々のポリマー構造が得られる。しかしながら本発明によれば直鎖状及び櫛状のポリマー構造を有する会合増粘剤が有利である。それぞれのポリマー分子が少なくとも2つの疎水性末端基を有することが重要である。
【0031】
本発明による水系ベースコート材料の製造のためには、本発明により使用されるべき会合増粘剤(G)を粉末として又は少なくとも1種の水で希釈できる溶剤中の20〜30質量%の溶液として使用される。
【0032】
有利には、これらを本発明による水系ベースコート材料においてそれぞれの水系ベースコート材料の全質量に対して0.1〜4.0質量%、有利には0.4〜3.5質量%、特に0.4〜3.0質量%の量で含有する。
【0033】
ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルは塗料分野において溶剤又は溶剤添加物として使用される自体公知の化合物である。
【0034】
適当なアルキル基の例は、メチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル又はn−ヘキシルであり、そのうちメチル基が特に有利であり、従って特に有利に使用される。
【0035】
特に有利に使用されるジプロピレングリコールメチルエーテル(F)は自体公知の化合物又は自体公知の混合物であり、これらは両者とも市販されている。これはジプロピレングリコール、1,1′−オキシビス(2−プロパノール)及び/又はその異性体に由来する。
【0036】
有利にはジプロピレングリコールモノアルキルエーテル(F)は本発明による水系ベースコート材料中に、それぞれの水系ベースコート材料の全質量に対して0.5〜11、有利には1.0〜9、特に1.0〜7.0質量%の量で含有されている。
【0037】
本発明による水系ベースコート材料の他の主な成分は、少なくとも1種の水溶性又は水分散性のポリウレタン(A)である。ポリウレタン(A)及びその製造方法は公知であり、例えばドイツ国特許文献DE−A−4437535号に記載されている。
【0038】
有利には本発明により使用されるべきポリウレタン(A)は安定化の種類に応じて10〜250mgKOH/g(イオン性安定化又は非イオン性+イオン性の安定化)又は0〜10mgKOH/g(非イオン性安定化)の酸価又はアミン価、30〜350mgKOH/gのOH価及び1500〜55000ダルトンの数平均分子量を有する。
【0039】
公知のようにポリウレタン(A)の製造のためにジイソシアネート並びに副次的な量でポリイソシアネートが分枝の導入のために使用される。本発明の範囲においては、副次的な量とは、製造においてポリウレタン(A)のゲル化が生じない量を意味する。これは僅かな量のモノイソシアネートを一緒に使用することによっても防ぐことができる。
【0040】
適当なジイソシアネートのための例は、イソホロンジイソシアネート(=5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチル−シクロヘキサン)、5−イソシアナト−1−(2−イソシアナト−1−イル)−1,3,3−トリメチル−シクロヘキサン、5−イソシアナト−1−(3−イソシアナトプロピ−1−イル)−1,3,3−トリメチル−シクロヘキサン、5−イソシアナト−(4−イソシアナトブチ−1−イル)−1,3,3−トリメチル−シクロヘキサン、1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトプロピ−1−イル)−シクロヘキサン、1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトエチ−1−イル)シクロヘキサン、1−イソシアナト−2−(4−イソシアナトブチ−1−イル)シクロヘキサン、1,2−ジイソシアナトシクロブタン、1,3−ジイソシアナトシクロブタン、1,2−ジイソシアナトシクロペンタン、1,3−ジイソシアナトシクロペンタン、1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−2,4′−ジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘプタンメチレンジイソシアネート又は二量体脂肪酸から導かれる、ヘンケル社から商標名DDI1410として市販され、かつ特許文献DO97/49745号及びWO97/49747号に記載されるようなジイソシアネート、特に2−ヘプチル−3,4−ビス(9−イソシアナトノニル)−1−ペンチル−シクロヘキサン、又は1,2−、1,4−又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2−、1,4−又は1,3−ビス(2−イソシアナトエチ−1−イル)シクロヘキサン、1,2−、1,4−又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2−、1,4−又は1,3−ビス(2−イソシアナトエチ−1−イル)シクロヘキサン、1,3−ビス(3−イソシアナトプロピ−1−イル)シクロヘキサン、1,2−、1,4−又は1,3−ビス(4−イソシアナトブチ−1−イル)シクロヘキサン、30質量%、有利には25質量%、特に20質量%までのトランス/トランス含有率の、特許文献DE−A−4414032号、GB−A−1220717号、DE−A−1618795号又はDE−A−1793785号に記載のような液体のビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン;トルイレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビスフェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート又はジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0041】
適当なポリイソシアネートの例は前記のジイソシアネートのイソシアヌレートである。
【0042】
良好に適当なモノイソシアネートの例はフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート又はステアリルイソシアネートである。
【0043】
本発明により使用されるべきポリウレタン(A)の製造のために、更に
− 飽和及び不飽和の、高分子及び低分子のポリオール、特にジオール、副次的な量のトリオールを分枝の導入のために、
− ポリアミン、
− アミノアルコール及び
− 安定化する(潜在的に)イオン性のかつ/又は非イオン性の官能基を挿入する化合物
が使用される。
【0044】
適当なポリオールの例は飽和又はオレフィン性不飽和のポリエステルポリオールであり、これらは
− 場合によりスルホン化された飽和及び/又は不飽和のポリカルボン酸又はエステル化可能な誘導体、場合によりモノカルボン酸と一緒に並びに
− 飽和及び/又は不飽和ポリオール、場合によりモノオールと一緒に
の反応によって製造される。
【0045】
適当なポリカルボン酸のための例は芳香族、脂肪族及び脂環式のポリカルボン酸である。有利には芳香族及び/又は脂肪族のポリカルボン酸が使用される。
【0046】
適当な芳香族ポリカルボン酸のための例は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸−、イソフタル酸−又はテレフタル酸モノスルホネート、又はハロゲンフタル酸、例えばテトラクロロ−もしくはテトラブロムフタル酸、それらのうちイソフタル酸が有利であり、従って有利に使用される。
【0047】
適当な非環式の脂肪族又は不飽和のポリカルボン酸のための例は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸又は二量体脂肪酸又はマレイン酸、フマル酸又はイタコン酸であり、そのうちアジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、二量体脂肪酸及びマレイン酸が有利であり、従って有利に使用される。
【0048】
適当な脂環式及び環式の不飽和ポリカルボン酸の例は、1,2−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、トリシクロデカンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸又は4−メチルテトラヒドロフタル酸である。これらのジカルボン酸はそのシス形でもトランス形でも両者の形の混合物としても使用できる。
【0049】
また前記のポリカルボン酸のエステル化可能な誘導体、例えば1〜4個のC原子を有する脂肪アルコール又は1〜4個のC原子を有するヒドロキシアルコールとの1価又は多価のエステルが適当である。
【0050】
更に、また前記のポリカルボン酸の無水物も存在するのであれば使用できる。
【0051】
場合により、ポリカルボン酸と一緒にモノカルボン酸も使用してよく、例えば安息香酸、t−ブチル安息香酸、ラウリン酸、イソノナン酸、脂肪酸、天然に生じる油、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸又はクロトン酸を使用してよい。有利にはモノカルボン酸としてイソノナン酸が使用される。
【0052】
適当なポリオールの例は、ジオール及びトリオール、特にジオールである。通常はトリオールはジオールの他に副次的な量で、ポリエステルポリオール中に分枝を導入するために使用される。本発明の範囲において、副次的な量とはその製造においてポリエステルポリオールのゲル化を生じない量を意味する。
【0053】
適当なジオールは、エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロパンジオール、1,2−、1,3−又は1,4−ブタンジオール、1,2−、1,3−、1,4−又は1,5−ペンタンジオール、1,2−、1,3−、1,4−、1,5−又は1,6−ヘキサンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルエステル、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,2−、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチルペンタンジオール、エチルブチルプロパンジオール又は位置異性体のジエチルオクタンジオールである。これらのジオールは本発明により使用されるべきポリウレタン(A)の製造のためにそれ自体で使用することも出来る。
【0054】
適当なジオールの更なる例は、式I又はII:
【化2】

[式中、R及びRはそれぞれ同一又は異なる基を表し、1〜18個のC原子を有するアルキル基、アリール基又は脂環式基を表すが、但し、R及び/又はRはメチル基ではない];
【化3】

[式中、R、R、R及びRはそれぞれ同一又は異なる基を表し、1〜6個のC原子を有するアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、Rは1〜6個のC原子を有するアルキル基、アリール基又は1〜6個のC原子を有する不飽和アルキル基を表し、nは0又は1である]のジオールである。
【0055】
一般式IのジオールIとしては、それぞれRもしくはR又はR及びRが同時にメチルではない式の全てのプロパンジオール、例えば2−ブチル−2−エチルプロパンジオール−1,3、2−ブチル−2−メチルプロパンジオール−1,3、2−フェニル−2−メチルプロパン−ジオール−1,3、2−プロピル−2−エチルプロパンジオール−1,3、2−ジ−t−ブチルプロパンジオール−1,3、2−ブチル−2−プロピルプロパンジオール−1,3、1−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,2−ジエチルプロパンジオール−1,3、2,2−ジプロピルプロパンジオール−1,3又は2−シクロヘキシル−2−メチルプロパンジオール−1,3などである。
【0056】
一般式IIのジオールIIとしては、例えば2,5−ジメチルヘキサンジオール−2,5、2,5−ジエチルヘキサンジオール−2,5、2−エチル−5−メチルヘキサンジオール−2,5、2,4−ジメチルペンタンジオール−2,4、2,3−ジメチルブタンジオール−2,3、1,4−(2′−ヒドロキシプロピル)−ベンゼン及び1,3−(2′−ヒドロキシプロピル)ベンゼンを使用してよい。
【0057】
これらのジオールのうち、ヘキサンジオール及びネオペンチルグリコールが特に有利であり、従って特に有利に使用される。
【0058】
前記のジオールはまた本発明により使用されるべきポリウレタン(A)の製造のためのジオールとして使用できる。
【0059】
適当なトリオールの例はトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン又はグリセリン、特にトリメチロールプロパンである。
【0060】
前記のトリオールは本発明により使用されるべきポリウレタン(A)の製造のためのトリオールとしても使用できる(特許文献EP−A−0339433号)。
【0061】
場合により、副次的な量のモノオールを一緒に使用してよい。適当なモノオールの例はアルコール又はフェノール、例えばエタノール、プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、アミルアルコール、ヘキサノール、脂肪アルコール、アリルアルコール又はフェノールである。
【0062】
ポリエステルポリオールの製造は、共沸剤としての少量の適当な溶剤の存在下に実施できる。共沸剤としては、例えば炭化水素、例えばキシレン及び脂肪族(脂環式)の炭化水素、例えばシクロヘキサン又はメチルシクロヘキサンが使用される。
【0063】
適当なポリオールのための他の例はラクトンとジオールとの反応によって得られるポリエステルジオールである。これらはヒドロキシル末端基及び式−(CO−(CHR10−CH−O−)−の反復ポリエステル成分の存在に優れている。この場合、係数mは有利には4から6であり、置換基R10は水素、アルキル基、シクロアルキル基又はアルコキシ基である。置換基は12個より多い炭素原子を有さない。置換基中の炭素原子の全体の数はラクトン環あたり12を超えない。このための例はヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシデカン酸及び/又はヒドロキシステアリン酸である。
【0064】
ポリエステルジオールの製造のために、非置換のmが4の値を有し、全てのR10置換基が水素である###−カプロラクトンが有利である。ラクトンとの反応は低分子ポリオール、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール又はジメチロールシクロヘキサンによって開始する。しかしながら別の反応成分例えばエチレンジアミン、アルキルジアルカノールアミン又は尿素とカプロラクトンとを反応させてもよい。高分子ジオールとしては例えば###−カプロラクトンと低分子ジオールとの反応によって製造できるポリラクタムジオールが適当である。
【0065】
適当なポリオールの他の例は、特に数平均分子量400〜5000、特に400〜3000を有するポリエーテルポリオールである。良好に適当なポリエーテルジオールは、例えば一般式H−(−O−(CHR11−)OH[式中、置換基R11は水素又は低級の、場合により置換されたアルキル基であり、係数o=2〜6、有利には3〜4であり、係数p=2〜100、有利には5〜50である]のポリエーテルジオールである。特に良好に適当な例としては、直鎖状又は分枝鎖状のポリエーテルジオール、例えばポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール及びポリ(オキシブチレン)グリコールが挙げられる。
【0066】
ポリエーテルジオールは、一方では過剰量のエーテル基をもたらさないべきである。それというのもさもないと形成された本発明により使用されるべきポリウレタン(A)が水中で膨潤するからである。他方ではこれらは、ポリウレタン(A)の非イオン性の安定化を保証する量で使用してよい。これらはその際、以下に記載する官能性の非イオン性基(a3)として用いられる。
【0067】
本発明により使用されるべきポリウレタン(A)は
(a1)中和剤及び/又は第4級化剤によってカチオンに変換できる官能基及び/又はカチオン性基、特にアンモニウム基、又は
(a2)中和剤によってアニオンに変換できる官能基及び/又はアニオン性基、特にカルボン酸基及び/又はカルボキシレート基、及び/又は
(a3)非イオン性の親水性基、特にポリ(アルキレンエーテル)基
のいずれかを有する。
【0068】
本発明により使用されるべき適当な、中和剤(D)及び/又は第4級化剤によってカチオンに変換可能な官能基(a1)の例は、第1級、第2級又は第3級のアミノ基、第2級のスルフィド基又は第4級のホスフィン基、特に第3級アミノ基又は第2級のスルフィド基である。
【0069】
本発明により使用されるべき適当なカチオン性基(a1)の例は、第1級、第2級、第3級又は第4級のアンモニウム基、第3級のスルホニウム基又は第4級のホスホニウム基、有利には第4級のアンモニウム基又は第4級のアンモニウム基、第3級のスルホニウム基、特に第3級のスルホニウム基である。
【0070】
本発明により使用されるべき適当な、中和剤(D)によってアニオンに変換可能な官能基(a2)の例は、カルボン酸基、スルホン酸基又はホスホン酸基、特にカルボン酸基である。
【0071】
本発明により使用されるべき適当なアニオン性基(a2)の例はカルボキシレート基、スルホネート基又はホスホネート基、特にカルボキシレート基である。
【0072】
カチオンに変換可能な官能基(a1)のために適当な中和剤(D)の例は、無機及び有機の酸、例えば硫酸、塩酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、ジメチロールプロピオン酸又はクエン酸である。
【0073】
アニオンに変換可能な官能基(a2)のために適当な中和剤(D)のための例は、第3級アミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、トリフェニルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、又はトリエタノールアミンである。該中和は有機相又は水相で実施する。有利には中和剤としてジメチルエタノールアミンを使用する。
【0074】
本発明による水系ベースコート材料で使用される中和剤(D)の全体量は、本発明により使用されるべきポリウレタン(A)の1〜100当量、有利には50〜90当量の官能基(a1)又は(a2)が中和されるように選択される。
【0075】
これらの官能性(潜在的な)イオン性基(a1)及び(a2)並びに官能性の非イオン性基(a3)のうち、(潜在的な)アニオン性の基(a2)が有利であり、従って特に有利に使用される。
【0076】
ポリウレタン分子に(潜在的な)アニオン性基(a2)を導入することは、少なくとも1つのイソシアネート基に反応性であり、アニオン形成能を有する基を分子中に有する化合物の挿入によって実施する;使用される量は得ようとする酸価から計算できる。
【0077】
この種の適当な化合物の例は、イソシアネート基に対して反応性の2つの基を分子中に有する化合物である。イソシアネート基に対して反応性の適当な基は、特にヒドロキシル基、並びに第1級及び/又は第2級のアミノ基である。それに応じて、例えば2つの置換基を###位の炭素原子に有するアルカン酸が使用できる。該置換基は、ヒドロキシル基、アルキル基又は、有利にはアルキロール基であってよい。このアルカン酸は、少なくとも1つの、一般に1から3個のカルボキシル基を分子中に有する。これらは2から約25個、有利には3〜10個の炭素原子を有する。適当なアルカン酸の例は、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシコハク酸及びジヒドロキシ安息香酸である。アルカン酸の特に有利な基は、一般式R12−C(CHOH)COOH[式中、R12は水素原子又は約20個以下の炭素原子を有するアルキル基を表す]の###,###−ジメチロールアルカン酸である。特に良好に適当なアルカン酸の例は、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸及び2,2−ジメチロールペンタン酸である。有利なジヒドロキシアルカン酸は、2,2−ジメチロールプロピオン酸である。アミノ基を有する化合物は、例えば###,###−ジアミノ吉草酸、3,4−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノトルエンスルホン酸及び2,4−ジアミノジフェニルエーテルスルホン酸である。
【0078】
非イオン性の安定化するポリ(オキシアルキレン)基(a3)は側基又は末端基としてポリウレタン分子中に導入されうる。このために、例えば一般式R13O−(−CH−CHR14−O−)H[式中、R13は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、R14は水素原子又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、係数rは20〜75の数を表す]を有するアルコキシポリ(オキシアルキレン)アルコールを使用してよい(特許文献EP−A−0354261号又はEP−A−0424705号を参照)。
【0079】
ポリオール、ポリアミン及びアミノアルコールの使用は、ポリウレタン(A)の分子量増加をもたらす。
【0080】
連鎖延長のために適当なポリオールは、36個以下の炭素分子を1分子中に有するポリオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油又は硬化ヒマシ油、ジ−トリメチロールプロパンエーテル、ペンタエリトリット、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸−ネオペンチルグリコールエステル、ヒドロキシエチル化された又はヒドロキシプロピル化されたビスフェノールA、水素化ビスフェノールA又はその混合物である(特許文献EP−A−033433号、EP−A−0436941号、EP−A−0517707号)。
【0081】
適当なポリアミンの例は、少なくとも2つの第1級及び/又は第2級アミン基を有する。ポリアミンは主に1〜40個の炭素原子、有利には約2から15個の炭素原子を有するアルキレンポリアミンである。これらはイソシアネート基と反応性でない水素原子を有する置換基を有してよい。例は直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族、脂環式又は芳香族の構造を有し、少なくとも2つの第1級アミノ基を有するポリアミンである。
【0082】
ジアミンとしては、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブチレンジアミン、ピペラジン、1,4−シクロヘキシルジメチルアミン、ヘキサメチレンジアミン−1,6、トリメチルヘキサメチレンジアミン、メタンジアミン、イソホロンジアミン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン及びアミノエチレンエタノールアミンである。有利なジアミンはヒドラジン、アルキル−又はシクロアルキルジアミン、例えばプロピレンジアミン及びーアミン−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンである。
【0083】
また、1分子中に2つより多いアミノ基を有するポリアミンを使用してよい。この場合には、しかしながら、例えばモノアミンの共用によって、架橋したポリウレタン樹脂が得られないことを顧慮する。かかる有用なポリアミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジプロピレンジアミン及びジブチレントリアミンである。モノアミンのための例として、エチルヘキシルアミンが挙げられる(特許文献EP−A−0089497号を参照)。
【0084】
適当なアミノアルコールの例はエタノールアミン又はジエタノールアミンである。
【0085】
本発明による水系ベースコート材料において、ポリウレタン(A)は有利には、それぞれの本発明による水系ベースコートの全質量に対して1.0〜50、有利には2.0〜40、特に有利には3.0〜30、より特に有利には4.0〜25、特に5.0〜20質量%の量で含有されている。
【0086】
本発明による被覆材料の他の主な成分は少なくとも1種の架橋剤(B)である。
【0087】
適当な架橋剤(B)の例はアミノプラスト樹脂、無水物基を有する化合物又は樹脂、エポキシ基を有する化合物又は樹脂、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン、カーボネート基を有する化合物又は樹脂、封鎖された及び/又は封鎖されていないポリイソシアネート、β−ヒドロキシアルキルアミド並びに分子中に少なくとも2つのエステル交換反応可能な基を有する化合物、例えばマロン酸ジエステル及びポリイソシアネートの反応生成物又は、欧州特許文献EP−A−0596460号に記載されるようなマロン酸の多価アルコールのエステル及び半エステルとモノイソシアネートとの反応生成物である。
【0088】
かかる架橋剤は当業者に公知であり、多数の会社から市販製品として提供されている。
【0089】
適したポリエポキシドの例は、殊に例えばビスフェノールAまたはビスフェノールFを基礎とする、全ての公知の脂肪族ポリエポキシドおよび/または脂環式ポリエポキシドおよび/または芳香族ポリエポキシドである。ポリエポキシドとしては、例えばシェル(Shell)社の商品エピコーテ(Epikote(R))、ナガセケミカルズ社(Nagase Chemicals Ltd.),日本在、のデナコール(Denacol(R))の商品名で入手することができるポリエポキシド、例えばデナコールEX-411(ペンタエリトリットポリグリシジルエーテル)、デナコールEX-321(トリメチロールプロパングリシジルエーテル)、デナコール(R)EX-512(ポリグリセロールポリグリシジルエーテル)およびデナコール(R)EX-521(ポリグリセロールポリグリシジルエーテル)が適している。
【0090】
適したトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンは、次式:
【化4】

を有する。
【0091】
適したトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンの例は、米国特許第4939213号明細書、米国特許第5084541号明細書または欧州特許出願公開第0624577号明細書に記載されている。殊に、トリス(メトキシカルボニルアミノ)トリアジン、トリス(ブトキシカルボニルアミノ)トリアジンおよび/またはトリス(2−エチルヘキソキシカルボニルアミノ)トリアジンが使用される。
【0092】
好ましいのは、メチル−ブチル−混合エステル、ブチル−2−エチルヘキシル−混合エステルおよびブチルエステルである。これらは、純粋なメチルエステルと比較してポリマー溶融液中での溶解性が良好であるという利点を有し、また、殆んど晶出傾向を有しない。
【0093】
適したポリ無水物の1つの例は、ポリコハク酸無水物である。
【0094】
適したβ−ヒドロキシアルキルアミドの例は、N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジパミドまたはN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)アジパミドである。
【0095】
適した架橋剤の他の例は、封鎖されたポリイソシアネートである。
【0096】
適した封鎖剤の例は、米国特許文献US−A4444954号の記載から公知の封鎖剤である:
i)フェノール、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、クロロフェノール、エチルフェノール、t−ブチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸、この酸のエステルまたは2,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン;
ii)ラクタム、例えばε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムまたはβ−プロピオラクタム;
iii)活性のメチレン性化合物、例えばジエチルマロネート、ジメチルマロネート、アセト酢酸エチルエステルもしくはアセト酢酸メチルエステルまたはアセチルアセトン;
iv)アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、t−アミルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール、グリコール酸、グリコール酸エステル、乳酸、乳酸エステル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、エチレンクロロヒドリン、エチレンブロモヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,4−シクロヘキシルジメタノールまたはアセトシアンヒドリン;
v)メルカプタン、例えばブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、t−デシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノールまたはエチルチオフェノール;
vi)酸アミド、例えばアセトアニリド、アセトアニシジンアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミドまたはベンズアミド;
vii)イミド、例えばスクシンイミド、フタルイミドまたはマレイミド;
viii)アミン、例えばジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミンまたはブチルフェニルアミン;
ix)イミダゾール、例えばイミダゾールまたは2−エチルイミダゾール;
x)尿素、例えば尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素または1,3−ジフェニル尿素;
xi)カルバメート、例えばN−フェニルカルバミドさんフェニルエステルまたは2−オキサゾリドン;
xii)イミン、例えばエチレンイミン;
xiii)オキシム、例えばアセトンオキシム、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジイソブチルケトキシム、ジアセチルモノキシム、ベンゾフェノンオキシムまたはクロロヘキサノンオキシム;
xiv)亜硫酸の塩、例えば亜硫酸水素ナトリウムまたは亜硫酸水素カリウム;
xv)ヒドロキサム酸エステル、例えばベンジルメタクリロヒドロキサメート(BMH)またはアリルメタクリロヒドロキサメート;または
xvi)置換ピラゾール、ケトキシム、イミダゾールまたはトリアゾール;ならびに
xvii)前記封鎖剤、殊にジメチルピラゾールおよびトリアゾール、マロンエステルおよびアセト酢酸エステルまたはジメチルピラゾールおよびスクシンイミドの混合物。
【0097】
封鎖することができる、適した有機ポリイソシアネートの例は、殊に脂肪族結合したイソシアネート基、脂環式結合したイソシアネート基、芳香脂肪族結合したイソシアネート基および/または芳香族結合したイソシアネート基を有する、所謂ラッカー用ポリイソシアネートである。好ましいのは、1分子当たり2〜5個のイソシアネート基を有しかつ100〜10000、有利に100〜5000の粘度を有するポリイソシアネートである。更に、ポリイソシアネートは、通常の公知方法で親水性または疎水性に変性されていてもよい。
【0098】
封鎖することができる適したポリイソシアネートの他の例は、"Methoden der organischen Chemie", Houben-Weyl, 第14/2巻, 第4版, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1963, 第61〜70頁およびW. Siefken, Liebigs Annalen der Chemie, 第562巻, 第75〜136頁に記載されている。例えば、適しているのは、ポリオールを過剰のポリイソシアネートと反応させることによって得ることができかつ好ましくは低粘性である、イソシアネート基含有のポリウレタンプレポリマーである。
【0099】
封鎖することができる適したポリイソシアネートの他の例は、イソシアヌレート基、ビウレット基、アロファネート基、イミノオキサジアジンドン基、ウレタン基、尿素基および/またはウレットジオン基を有するポリイソシアネートである。ウレタン基を有するポリイソシアネートは、例えばイソシアネート基の一部をポリオール、例えばトリメチロールプロパンおよびグリセリンと反応させることによって得ることができる。好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネート、殊にヘキサメチレンジイソシアネート、二量体化ヘキサメチレンジイソシアネートおよび三量体化ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4′−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、二量体脂肪酸から誘導されたジイソシアネート、例えばDDI 1410の商品名でHenkel社から販売されておりかつWO 97/49745およびWO 97/49747に記載されたもの、殊に2−ヘプチル−3,4−ビス(9−イソシアナトノニル)−1−ペンチル−シクロヘキサン;または1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくは1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(イソシアナトエト−1−イル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトエト−1−イル)シクロヘキサンもしくは1,3−ビス(イソシアナトエト−1−イル)シクロヘキサン、1,3−ビス(3−イソシアナトプロプ−1−イル)シクロヘキサンまたは1,2−ビス(4−イソシアナトブト−1−イル)シクロヘキサン、1,4−ビス(4−イソシアナトブト−1−イル)シクロヘキサンもしくは1,3−ビス(4−イソシアナトブト−1−イル)シクロヘキサン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチル−オクタン、1,7−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチル−ヘプタンもしくは1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキサンまたは前記ポリイソシアネートからの混合物が使用される。
【0100】
特に好ましいのは、ヘキサメチレンジイソシアネートを基礎とする、ウレトジオン基および/またはイソシアヌレート基および/またはアロファネート基を有するポリイソシアネート、例えば適した触媒を使用しながらヘキサメチレンジイソシアネートを接触オリゴマー化することによって生成されたものからの混合物が使用される。
【0101】
特にアミノプラスト樹脂、例えばメラミン樹脂、グアナミン樹脂又は尿素樹脂を架橋剤(B)として使用可能である。この場合それぞれの透明のトップコート又はクリヤーコートのために適当なアミノプラスト樹脂又はかかるアミノプラスト樹脂の混合物を使用できる。補足的にレンプレキシコン塗料及び印刷インキ、Georg Thieme出版、1998、29頁、>>アミノ樹脂<<及びヨハン ビーレマンによる教科書"塗料添加剤"、Wiley−VCH、ニューヨーク、1998、242頁以降、又は書籍"ペイント、コーティング及び溶剤"第2完全改訂版、D.シュトイエ(Stoye)及びW.フライターク(Freitag)、Wiley−VCH、ヴァインハイム、ニューヨーク、1998、80頁以降に示されている。更に慣用かつ公知の、メチロール−及び/又はメトキシメチル基が部分的にカルバメート基又はアロファネート基によって脱官能化されているアミノプラスト樹脂が該当する。この種の架橋剤は特許文献US−A−4710542号及びEP−B−0245700号並びにB.シンフ(Singh)と助手による文献"カルバミルメチル化されたメラミン、コーティング工業のための新規の架橋剤"(Advanced Organic Coatings Science and Technology Series)、1991、第13巻、193〜207頁に記載されている。
【0102】
有利にはアミノプラスト樹脂は本発明による水系ベースコート材料中に主な又は唯一の架橋剤(B)として含有されている。その他の前記の架橋剤(B)を本発明による水系ベースコート材料及びそれから製造される本発明によるベースコート及び本発明による色付与及び/又は効果付与する複層塗装系の特性プロフィールの更なる有利な変更のために使用でき、その際架橋剤(B)の割合は<50質量%である。
【0103】
有利には本発明による水系ベースコート材料中の架橋剤(B)はそれぞれの本発明による水系ベースコート材料の全質量に対して0.1〜30、有利には0.3〜20、特に有利には0.5〜10、特に1.0〜8.0質量%の量で使用される。
【0104】
なおも本発明による水系ベースコート材料の他の主な成分は少なくとも1種の色付与及び/又は効果付与する顔料(C)である。該顔料(C)は無機又は有機の化合物からなってよい。本発明による水系ベースコート材料は従ってその多数の適当な顔料に基づいて広範な使用範囲が保証され、多数の色調及び光学的効果の実現が可能である。
【0105】
効果顔料(C)としては、金属粉顔料、例えば商慣習上のアルミニウムブロンズ、DE−A−3636183号によりクロメート処理されたアルミニウムブロンズ、及び商慣習上のステンレスブロンズ並びに非金属性の効果顔料、例えば真珠光沢顔料もしくは干渉顔料が使用されうる。補足的にレンプレキシコン塗料及び印刷インキ、Georg Thieme出版、1998、176頁、>>効果顔料<<及び380及び381頁>>金属酸化物−雲母−顔料<<から>>金属顔料<<に示される。
【0106】
適当な無機の色付与する顔料(C)のための例は、二酸化チタン、酸化鉄、シコトランイエロー及びカーボンブラックである。適当な有機の色付与する顔料のための例はインダントレンブルー、クロモフタールレッド、イルガジンオレンジ及びヘリオゲングリーンである。補足的にはレンプレキシコン塗料及び印刷インキ(Georg Thieme Verlag, 1998, Seite 176、>>効果顔料<<並びに451〜453頁>>顔料<<ないし>>顔料容積濃度<<、563頁>>チオインジゴ−顔料<<及び567頁>>二酸化チタン顔料<<に示される。
【0107】
本発明による水系ベースコートの顔料(C)の割合は、極めて広範に変動してよく、とりわけ顔料(C)の不透明度、望ましい色調及び望ましい光学的効果に従う。有利には、顔料(C)は本発明による水系ベースコート材料において本発明によるベースコート材料の全質量に対して0.5〜50、有利には0.5〜45、特に有利には0.5〜40質量%、より特に有利には0.5〜35、特に0.5〜30質量%の量で含有される。更に、顔料/結合剤の比、すなわち顔料(C)と前記のポリウレタン(A)との比又はポリウレタン(A)及び以下に記載するポリアクリレート樹脂(H)及びポリエステル(I)との比は極めて広い範囲で変動してよい。該比は有利には、4.0:1.0〜1.0:5.0、有利には3.5:1.0〜1.0:50、特に有利には3.0:1.0〜1.0:40、より特に有利には2.5:1.0〜1.0:30、特に2.3:1.0〜1.0:25である。
【0108】
これらの顔料(C)を顔料ペーストを介して本発明によるベースコート材料に添加してよく、その際、粉砕樹脂、とりわけ前記のポリウレタン(A)及び/又は以下に記載するポリアクリレート樹脂(H)及び/又はポリエステル樹脂(I)が該当する。
【0109】
なお、本発明の水系ベースコート材料の他の主な成分は少なくとも1つの無機増粘剤(E)である。
【0110】
適当な無機増粘剤(E)の例は、無機の層状ケイ酸塩、有利にはスメクタイト、特にモンモリロナイト及びヘクトライト、例えばアルミニウム−マグネシウム−ケイ酸塩、モンモリロナイト型のナトリウム−マグネシウム−及びナトリウム−マグネシウム−フッ素−リチウム−層状ケイ酸塩又は無機の層状ケイ酸塩、例えばアルミニウム−マグネシウム−ケイ酸塩、モンモリロナイト型のナトリウム−マグネシウム−及びナトリウム−マグネシウム−フッ素−リチウム−層状ケイ酸塩である。補足的にヨハン ビーレマンの書籍>>塗料添加剤<<、Wiley−VCH、ヴァインハイム、ニューヨーク、1998、17頁〜30頁に示される。
【0111】
本発明による水系ベースコート材料において、増粘剤(E)は有利には本発明による水系ベースコートの全質量に対して0.01〜5.0、有利には0.05〜3.0、特に有利には0.1〜2.5、より特に有利には0.2〜2.0、特に0.3〜1.5質量%である。
【0112】
本発明による水系ベースコートの有利な実施形において、これはポリウレタン(A)の他に少なくとも1つの水溶性又は水分散性の、水溶性又は水分散性のポリウレタンの存在下に製造されるポリアクリレート樹脂(H)を含有する。
【0113】
ポリアクリレート樹脂(H)の存在下に製造される適当なポリウレタンの例は、側基、末端基及び/又はポリマー主鎖中に存在するオレフィン性不飽和基を有するか、又はオレフィン性不飽和基を有さない。この種の良好に適当なポリウレタンの例は、特許文献EP−A−0521928号、EP−A−0522420号、EP−A−0522419号又はEP−A−0730613号(オレフィン性不飽和)又はDE−A−4437535号(飽和)から公知である。特に良好に適当なポリウレタンの例は、前記のポリウレタン(A)、特にカルボン酸基及び/又はカルボキシレート基を有するポリウレタン(A)である。
【0114】
それに相応して、溶解性基又は分散性基としてカルボン酸基及び/又はカルボキシレート基を有するポリアクリレート樹脂(H)は本発明によれば有利であり、従って有利に使用される。ポリアクリレート樹脂(H)の中和に関しては、前記のポリウレタン(A)において記載した内容に従う。
【0115】
本発明によれば、ポリアクリレート樹脂(H)を飽和ポリウレタン(A)中で製造することが有利であり、従って該変法は特に有利である。
【0116】
より特に良好に適当なポリアクリレート樹脂(H)は、以下に記載するオレフィン性不飽和モノマー(H)の共重合によって得られ、そのうち少なくとも1つは少なくとも1つのカルボン酸基を有し、有利には少なくとも1つは少なくとも1つのヒドロキシル基を有し、主に酸基不含である。
【0117】
適当なモノマー(h)の例は:
アクリル酸、メタクリル酸又は別のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の、酸でエステル化されているアルキレングリコールから導かれるか、又は酸とアルキレンオキシドとの反応によって導かれるヒドロキシアルキルエステル、特にヒドロキシアルキル基が20個以下の炭素原子を有するアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸又はクロトン酸のヒドロキシアルキルエステル、例えば2−ヒドロキシエチル−、2−ヒドロキシプロピル−、3−ヒドロキシプロピル−、3−ヒドロキシブチル−、4−ヒドロキシブチルアクリレート、−メタクリレート、−エタクリレート又は−クロトネート;又はメチルプロパンジオールモノアクリレート、−モノメタクリレート、−モノエタクリレート、−モノクロトネート、−モノマレイネート、−モノフマレート又は−モノイタコネート;又は環式エステル、例えばε−カプロラクトン及びそのヒドロキシアルキルエステルからなる反応生成物;又はオレフィン性不飽和アルコール、例えばアリルアルコール又はポリオール、例えばトリメチロールプロパンモノ−又はジアリルエーテル又はペンタエリトリットモノ−、−ジ−又は−トリアリルエーテル。これらの高官能性モノマー(h1)は一般に副次的な量で使用される。本発明の範囲においては、この場合、高官能性のモノマーの副次的な量とはポリアクリレート樹脂の架橋又はゲル化を引き起こさないような量を意味する。こうして、トリメチロールプロパンモノアリルエーテルの割合は、ポリアクリレート樹脂の製造のために使用されるモノマー(h1)ないし(h6)の全体量に対して2〜10質量%であってよい。しかしながらその他に、ポリアクリレート樹脂の製造のために使用されるモノマー(h)の全質量に対して2〜10質量%のトリメチロールプロパンモノアリルエーテルを完成したポリアクリレート樹脂に添加することも可能である。オレフィン性不飽和ポリオール(h1)は一般のモノマー(h1)として使用できるが、本発明によればこれらを他のモノマー(h1)と組み合わせて使用することも有利である。
【0118】
モノマー(h2):
アルキル基中に20個以下の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、特にメチル−、エチル−、プロピル−、n−ブチル−、s−ブチル−、t−ブチル、ヘキシル−、エチルヘキシル−、ステアリル−及びラウリルアクリレート又は−メタクリレート;(メタ)アクリル酸オキサアルキルエステル又は−オキサシクロアルキルエステル、例えばエチルトリグリコール(メタ)アクリレート及び、有利には550の分子量Mを有するメトキシオリゴグリコール(メタ)アクリレート;又は別のエトキシ化及び/又はプロポキシ化されたヒドロキシ基不含の(メタ)アクリル酸誘導体。これらは副次的な量でより高い官能性を有する(メタ)アクリル酸アルキル−又は−シクロアルキルエステル、例えばエチレングリコール−、プロピレングリコール−、ジエチレングリコール−、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタン−1,5−ジオール−又はヘキサン−1,6−ジオール−ジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパン−ジ−又は−トリ(メタ)アクリレート;又はペンタエリトリット−ジ−、−トリ−又は−テトラ(メタ)アクリレートを含有してよい。本発明の範囲においては、この場合、より高い官能性のモノマーの副次的な量とはポリアクリレート樹脂が架橋又はゲル化を生じない量を意味する。
【0119】
モノマー(h3):
少なくとも1つの酸基、有利には1分子中に1つのカルボキシル基を有するモノマー、特にアクリル酸及び/又はメタクリル酸。しかしながら1分子中に6個以下のC原子を有する別のエチレン性不飽和カルボン酸を使用してもよい。かかる酸のための例はエタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸である。更に、エチレン性不飽和スルホン酸又はホスホン酸もしくは別の部分エステルをモノマー(a4)として使用してよい。モノマー(a4)として、更にマレイン酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル及びフタル酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステルが該当する。
【0120】
モノマー(h4):
α−位で分枝した5〜18個のC原子を1分子中に有するモノカルボン酸のビニルエステル。分枝鎖状のモノカルボン酸はギ酸又は一酸化炭素及び水とオレフィンとの液状の強酸性触媒の存在下に反応させることによって得られ;該オレフィンはパラフィン性炭化水素のクラッキング生成物、例えば鉱油留分であってよく、分枝鎖状か直鎖状の非環式及び/又は脂環式オレフィンを含有してよい。かかるオレフィンとギ酸もしくは一酸化炭素及び水との反応において混合物は、カルボキシル基が主に第4級炭素原子上にあるカルボン酸から構成される。別のオレフィン性出発物質は、例えばプロピレン三量体、プロピレン四量体及びジイソブチレンである。しかしながらビニルエステルは自体公知の方法で酸から、例えば酸をアセチレンと反応させることによって製造してもよい。特に有利には(その良好な利用可能性の故に)α−C原子で分枝している9〜11個のC原子を有する飽和脂肪族モノカルボン酸のビニルエステルが使用される。
【0121】
モノマー(h5):
アクリル酸及び/又はメタクリル酸と各分子中に5〜18個のC−原子を有するα−位で分枝したモノカルボン酸のグリシジルエステルとからなる反応生成物を使用する。高度に分枝したモノカルボン酸のグリシジルエステルは商品名Cardura(R)として得られる。アクリル酸又はメタクリル酸と第3級α−炭素原子を有するカルボン酸のグリシジルエステルとの反応は共重合反応の前、間又は後に実施してよい。有利にはモノマー(a6)としてアクリル酸及び/又はメタクリル酸とVersatic(R)酸のグリシジルエステルとの反応生成物が使用される。このグリシジルエステルはCardura(R)E10の名称で市販されている。補足的にレンプレキシコン塗料と印刷インキ(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben)(Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 1998, 598頁並びに605と606頁)に示されている。
【0122】
モノマー(h6):
主に酸基不含のエチレン性不飽和モノマー、例えば
− オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、ブテ−1−エン、ペンテ−1−エン、ヘキセ−1−エン、ブタジエン及び/又はイソプレン;
− (メタ)アクリル酸アミド、例えば(メタ)アクリル酸アミド、N−メチル−、N,N−ジメチル−、N−エチル−、N,N−ジエチル−、N−プロピル−、N,N−ジプロピル、N−ブチル−、N,N−ジブチル−(メタ)アクリル酸アミド;
− エポキシ基を有するモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸及び/又はイタコン酸のグリシジルエステル;
− ビニル芳香族炭化水素、例えばスチレン、α−アルキルスチレン、特にα−メチルスチレン、α−アリールスチレン、特に1,1−ジフェニルエチレン及び/又はビニルトルエン;
− ニトリル、例えばアクリルニトリル及び/又はメタクリルニトリル;
− ビニル化合物、例えば塩化ビニル、フッ化ビニル、二塩化ビニリデン、二フッ化ビニリデン;N−ビニルピロリドンビニルエーテル、例えばエチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル及び/又はビニルシクロヘキシルエーテル;ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、Deutsche Shell Chemie社から商品名VeoVa(R)として販売されているVersatic(R)酸のビニルエステル。補足的にレンプレキシコン塗料と印刷インキ(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben)(Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 1998, 598頁並びに605と606頁)に示されている。
【0123】
− 数平均分子量M1000〜40000、有利には2000〜20000、特に有利には2500〜10000、特に3000〜7000及び1分子中に平均して0.5〜2.5、有利には0.5〜1.5個のエチレン性不飽和二重結合を有する、例えばDE−A−3807571号の5〜7頁、DE−A3706095号の第3〜7段、DE−B−0358153号の3〜6頁、US−A4754014号の第5〜9段、DE−A4421823号又は国際特許出願WO92/22615号の12頁の18行目ないし18頁の10行目に記載されているようなポリシロキサンマクロモノマー又はヒドロキシ官能性シランとエピクロロヒドリンとの反応及び引き続いての該反応生成物とメタクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルとの反応によって製造されるアクリルオキシシランを有するビニルモノマー。
【0124】
本発明によれば、モノマー(h)を、0〜200、有利には60〜140のOH価、有利には20〜100、有利には25〜50の酸価、有利には−25〜+80℃、有利には−20〜+40℃のガラス転移温度Tg並びに有利には1500〜30000、有利には1500〜20000(内部標準としてポリスチレンを使用するゲル透過クロマトグラフィーによって測定した)の数平均分子量を有するように選択する。
【0125】
ポリアクリレート樹脂(H)のガラス転移温度Tgは使用されるモノマー(h1)及び、場合により(h2)、(h3)、(h4)、(h5)及び/又は(h6)の種類及び量によって規定される。これらのモノマーの選定は当業者によって、(共)重合体、特にポリアクリレート樹脂のガラス転移温度Tgを近似的に算出できる以下のFoxの式の利用によって行うことができる:
【数1】

Tg=ポリアクリレート樹脂のガラス転移温度
=n番目のモノマーの質量部
Tg=n番目のモノマーからなるホモポリマーのガラス転移温度
x=異なるモノマーの数
方法上有用には、本発明により使用されるヒドロキシル基を有するポリアクリレート樹脂(H)の製造は特徴を有さないが、慣用かつ公知のラジカル重合の方法に従って少なくとも1つの重合開始剤の存在下に実施する。
【0126】
適当な重合開始剤の例は、フリーラジカルを形成する開始剤、例えばt−ブチルペルオキシエチルヘキサノエート、ベンゾイルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル及びt−ブチルペルベンゾエートが挙げられる。該開始剤はモノマーの全質量に対して、有利には1〜25質量%、特に有利には2〜10質量%の量で使用される。
【0127】
重合は目的に応じて80〜200℃、有利には100〜180℃の温度で実施する。
【0128】
開始剤の供給を、モノマーの供給の若干の時間前、一般に約1〜15分前に開始する。更に、開始剤の添加をモノマーの添加と同じ時点で開始し、モノマーの添加の完了の30分後に完了させる。この開始剤は、有利には単位時間あたり一定量で添加する。開始剤の添加の完了後に、反応混合物をなおも重合温度にまで、全ての使用されるモノマーが実質的に完全に反応されるほど(一般に1.5時間)保持した。"実質的に完全に反応される"は、有利には使用されるモノマーの100質量%が反応されているが、また反応混合物の質量に対して多くて約0.5質量%の僅かな残留モノマー含有率が未反応で残留しうることを意味すべきである。
【0129】
ポリアクリレート樹脂(H)を製造するための特に有利な方法はDE−A−4437535号に記載されている。
【0130】
この場合、第1のプロセス工程において、共重合可能な二重結合を含まないポリウレタン、特にポリウレタン(A)を有機溶剤中に装入し、次いで少なくとも1つのモノマー(h1)及び少なくとも1種のモノマー(h2)並びに、場合によりそれぞれ少なくとも1つのモノマー(h4)、(h5)及び/又は(h6)からなる混合物を添加して、共重合させる。これらのモノマー(h)がほぼ完全に反応した後に、第2のプロセス工程において少なくとも1つのモノマー(h3)並びにそれぞれ少なくとも1つのモノマー(h1)、(h2)、(h4)、(h5)及び/又は(h6)からなる混合物を添加し、次いで得られる反応混合物を完全に重合させる。
【0131】
また装置的には、本発明により使用されるべきポリアクリレート樹脂(H)の製造は方法的な特徴を有さず、プラスチック分野に慣用かつ公知の連続的又は不連続的な共重合の方法を利用して、常圧又は過圧下に撹拌槽、オートクレーブ、管型反応器又はテイラー反応器中で実施する。
【0132】
適当な共重合法の例は特許文献DE−A19709465号、DE−C−19709476号、DE−A−2848906号、DE−A−19524182号、EP−A−0554783号、WO95/27742号又はWO82/02387号に記載されている。
【0133】
その製造の後に、ポリアクリレート樹脂(H)は少なくとも1つの前記の適当な中和剤(D)で中和され、水に分散される。本発明による水系ベースコート材料中で使用される中和剤(D)の全体量はこの場合、本発明により使用されるべきポリウレタン(A)及びポリアクリレート樹脂(H)のカルボン酸基の1〜100当量、有利には50〜90当量が中和されるように選択する。
【0134】
本発明による水系ベースコート材料のポリアクリレート樹脂(H)の割合は広範に変更可能である。有利には割合は、それぞれ本発明による水系ベースコート材料の全質量に対して0.1〜10、有利には0.5〜8.0、特に有利には0.6〜6.0、より特に有利には0.8〜6.0、特に1.0〜6.0質量%である。
【0135】
なおも本発明による水系ベースコート材料の更に有利な実施態様において、これは少なくとも1つの水溶性又は水分散性のポリエステル樹脂(I)を含有する。
【0136】
ポリエステル樹脂(I)の製造のために適当な出発生成物の例は、前記でポリエステルポリオールの製造で記載した化合物である。
【0137】
適当なポリエステル樹脂(I)の例及び挙げられた出発生成物からのその製造は特許文献DE−A−4009858号又はDE−A−4437535号に詳細に記載されている。
【0138】
本発明による水系ベースコートのポリエステル樹脂(I)の割合も広範に変更してよい。有利には割合は、それぞれ本発明による水系ベースコート材料の全質量に対して0.5〜12、有利には0.7〜10、特に有利には0.8〜9.0、より特に有利には1.0〜8.0、特に1.5〜7.0質量%である。
【0139】
前記の成分の他に、本発明による水系ベースコート材料は慣用かつ公知の添加剤(J)を有効量で含有してよい。
【0140】
適当な添加剤(J)の例は
− 有機及び無機の充填物、例えば白亜、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸塩、例えばタルク又はカオリン、ケイ酸、酸化物、例えば水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム又は有機充填剤、例えばテキスタイル繊維、セルロース繊維、ポリエチレン繊維又は木粉;補足的にレンプレキシコン塗料及び印刷インキ(Georg Thieme Verlag, 1998, Seite 176、>>充填剤<<に示されている;
− 慣用かつ公知のオリゴマー及びポリマーの結合剤、例えば熱硬化可能なヒドロキシル基を有するか、又は化学線によって硬化可能な直鎖状及び/又は分枝鎖状及び/又はブロック状、櫛状及び/又はランダムに構成されたポリ(メタ)アクリレート又はアクリレート共重合体、ポリエステル、アルキド、ポリウレタン、アクリル化ポリウレタン、アクリル化エステル、ポリラクトン、ポリカーボネート、ポリエーテル、エポキシ樹脂−アミン付加物、(メタ)アクリレートジオール、部分鹸化されたポリビニルエステル又はポリ尿素又は化学線で硬化可能な(メタ)アクリル官能性(メタ)アクリレートコポリマー、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、不飽和ポリエステル、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アミノアクリレート、メラミンアクリレート、シリコーンアクリレート及び相応のメタクリレート;
− 慣用かつ公知の熱的及び/又は化学線によって硬化可能な反応性希釈剤、例えば位置異性体のジエチルオクタンジオール又はヒドロキシル基を有するハイパーブランチ型の化合物又はデンドリマー;
− 低沸点及び高沸点の有機溶剤("ロング溶剤(lange Loesemittel)");
− UV−吸収剤;
− 光保護剤、例えばHALS−化合物、ベンゾトリアゾール又はオキサルアニリド;
− ラジカル捕捉剤;
− 熱反応性ラジカル開始剤、例えば有機ペルオキシド、有機アゾ化合物又はC−C開裂する開始剤、例えばジアルキルペルオキシド、ペルオキソカルボン酸、ペルオキソジカーボネート、ペルオキシドエステル、ヒドロペルオキシド、ケトンペルオキシド、アゾジニトリル又はベンズピナコールシリルエーテル;
− 架橋のための触媒、例えばジブチルスズジラウレート、リチウムドデカノエート又は亜鉛オクトエート又はアミンで封鎖された有機スルホン酸;
− 脱蔵剤、例えばジアザジシクロウンデカン;
− スリップ剤;
− 重合抑制剤;
− 消泡剤;
− 乳化剤、特に非イオン性乳化剤、例えばアルコキシル化アルカノール、ポリオール、フェノール及びアルキルフェノール又はアニオン性乳化剤、例えばアルカンカルボン酸、アルカンスルホン酸及びアルコキシル化アルカノール、ポリオール、フェノール及びアルキルフェノールのスルホン酸のアルカリ塩又はアンモニウム塩;
− 湿潤剤、例えばシロキサン、フッ素含有化合物、カルボン酸半エステル、リン酸エステル、ポリアクリル酸、及びそのコポリマー又はポリウレタン;
− 付着促進剤、例えばトリシクロデカンジメタノール;
− レベリング剤;
− 皮膜形成助剤、例えばセルロース誘導体;
− 二酸化ケイ素、酸化アルミニウム又は酸化ジルコニウムをベースとする透明充填剤;補足的にレンプレキシコン塗料及び印刷インキ(Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1998, Seiten 250 bis 252)に示される;
− 特許文献WO94/22968号、EP−A−0276501号、EP−A−0249201号又はWO97/12945号から公知のようなレオロジー調節剤;EP−A−0008127号に開示されているような架橋したポリマー微粒子;ケイ酸、例えばエアロシル;又はイオン性作用及び/又は会合作用を有する基、例えばポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン、スチレン−無水マレイン酸コポリマー又はエチレン−無水マレイン酸コポリマー及びそれらの誘導体又は疎水性に変性されたポリアクリレート;
− 難燃剤。
【0141】
適当な塗料添加剤の他の例は、ジョアン ビーレマンの教科書>>塗料添加剤<<(Wiley-VCH,Weinheim, New York, 1998)に記載されている。
【0142】
本発明による水系ベースコートは噴霧粘性において、有利にはそれぞれ本発明による水系ベースコート材料の全質量に対して5.0〜60、有利には5.0〜50、特に有利には10〜45、より特に有利には13〜40、特に13〜35質量%の固体含有率を有する。
【0143】
本発明による水系ベースコート材料の製造は特徴を有さず、慣用かつ公知の方法で前記の成分の混合によって適当な混合装置、例えば撹拌槽、溶解機又は押出機中でそれぞれの水系ベースコート材料の製造のために適当な方法によって実施する。
【0144】
本発明による水系ベースコート材料は本発明による下塗りされた又は下塗りされていない基材上の塗装系、特に複層塗装系MLの製造のために使用される。
【0145】
基材として、上に存在する塗装系が熱及び/又は化学線の使用下に損傷されていない塗装されるべき全ての表面が該当し、これは例えば本発明による成形部品、シート及び繊維、金属、プラスチック、木材、セラミック、石材、テキスタイル、複合繊維、皮革、ガラス、ガラス繊維、ガラスウール及び石綿、鉱物と複合した及び樹脂と複合した建材、例えば石膏板及びセメント板又は屋根瓦並びに材料の複合物である。それに応じて、本発明による塗装系は車両塗装、特に自動車塗装以外の使用のために適当である。この場合、これらは特にコイルコーティング、コンテナコーティング及び電子工学的構成部品の含浸又は被覆を含む家具及び工業的な塗装のために該当する。工業的な塗装の範囲においては、個人用又は工業的な使用のための実質的に全ての部品、例えばラジエータ、日用品、金属製の小部品、例えばネジ及びナット、ホイールキャップ、リム、包装材料又は電子工学的な構成部品、例えばモーターコイル又は変圧器コイルの塗装のために適当である。
【0146】
導電性基材の場合には、サーフェイサーを使用してよく、これらは慣用かつ公知の方法によって電着塗料(ETL)から製造する。このために、アノード電着塗料(ATL)もカソード電着塗料(KTL)も、特にKTLが該当する。
【0147】
本発明による複層塗装系に関しては、特に下塗りされた又は下塗りされていないプラスチック、例えばABS、AMMA、ASA、CA、CAB、EP、UF、CF、MF、MPF、PF、PAN、PA、PE、HDPE、LDPE、LLDPE、UHMWPE、PET、PMMA、PP、PS、SB、PUR、PVC、RF、SAN、PBT、PPE、POM、PUR−RIM、SMC、BMC、PP−EPDM及びUP(DIN7728T1による略記)を塗装してよい。塗装されるべきプラスチックは勿論ポリマーブレンド、変性プラスチック又は繊維強化プラスチックであってもよいことは明らかである。また車両構造、特に自動車構造に使用されるプラスチックを使用してもよい。
【0148】
非官能化及び/又は非極性の基材表面の場合においては、これらを被覆の前に公知法において、例えばプラズマ又は火炎によって前処理するか、又は水系プライマーを施してもよい。
【0149】
本発明による複層塗装系MLは種々の様式で製造してよい。
【0150】
第1の有利な変法においては、本発明による方法は以下のプロセス工程を含む:
(I)基材上への本発明による水系ベースコート材料の施与によるベースコートの製造、
(II)ベースコート層の乾燥、
(III)ベースコート層上へのクリヤーコートの施与によるクリヤーコート層の製造、
(IV)ベースコート及びクリヤーコートを得るためのベースコート層及びクリヤーコート層の一緒の硬化(ウェット−オン−ウェット法)。
【0151】
この変法は、特にプラスチックの塗装において特に有利であり、従って特に有利に使用される。
【0152】
本発明による他の有利な変法はプロセス工程:
(I)基材上へのサーフェイサーの施与によるサーフェイサー層の製造、
(II)サーフェイサー層を得るためのサーフェイサー塗料層の硬化、
(III)サーフェイサー層上への本発明による水系ベースコートの施与によるベースコート層の製造、
(IV)ベースコート塗料層の乾燥、
(V)ベースコート層上へのクリヤーコート材料の施与によるクリヤーコート層の製造、
(VI)ベースコート及びクリヤーコートを得るためのベースコート層及びクリヤーコート層の一緒の硬化(ウェット−オン−ウェット法)
を含む。
【0153】
本発明による方法の第3の有利な変法はプロセス工程:
(I)基材へのサーフェイサーの施与によるサーフェイサー層の製造、
(II)サーフェイサー塗料層の乾燥、
(III)サーフェイサー塗料層上への本発明による水系ベースコート塗料の施与によるベースコート層の製造、
(IV)ベースコート塗料層の乾燥、
(V)ベースコート塗料層上へのクリヤーコートの施与によるクリヤーコート層の製造、
(VI)ベースコート及びクリヤーコートを得るためのベースコート層及びクリヤーコート層の一緒の硬化(ウェット−オン−ウェット法)
を含む。
【0154】
最後の両方の変法は、特に自動車ボディーの塗装において特に有利であり、従ってより特に有利に使用される。
【0155】
この場合、本発明による水系ベースコート材料及び本発明による方法の他の特定の利点として、つまり全体的な慣用かつ公知のクリヤーコート材料を本発明による方法の範囲内で本発明による水系ベースコート層と組み合わせることができるとが明らかである。
【0156】
公知の1成分系(1K)−、2成分系(2K)−、又は多成分系(3K、4K)−クリヤーコートの公知の適当な例は特許文献DE−A−4204518号、US−A−5474811号、US−A−5356669号、US−A−5605965号、WO94/10211号、WO94/10212号、WO94/10213号、EP−A−0594068号、EP−A−0594071号、EP−A−0594142号、EP−A−0604992号、WO94/22969号、EP−A−0596460号又はWO92/22615号から公知である。
【0157】
1成分系(1K)−クリヤーコートは公知のようなヒドロキシル基を有する結合剤及び架橋剤、封鎖されたポリイソシアネート、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン及び/又はアミノプラスト樹脂を含有する。他の変体においては、これらは結合剤としてカルバメート側基及び/又はアロファネート側基及びカルバメート及び/又はアロファネートで変性されたアミノプラスト樹脂を架橋剤として含有する(US−A−5474811号、US−A−5356669号、US−A−5605965号、WO94/10211号、WO94/10212号、WO94/10213号、EP−A−0594068号、EP−A−0594071号又はEP−A−0594142号を参照)。
【0158】
2成分系(2K)−又は多成分系(3K、4K)−クリヤーコートは主な成分として公知のヒドロキシル基を有する結合剤及び架橋剤として、その使用まで別々に貯蔵するポリイソシアネートを含有する。
【0159】
適当な粉末クリヤーコートの例は、例えばドイツ国特許文献DE−A−4222194号又はBASF Lacke+Farben AG社のプロダクト−インフォメーション、"粉末塗料"、1990から公知である。
【0160】
粉末塗料は主な成分として公知のエポキシ基を有する結合剤及び架橋剤としてポリカルボン酸を含有する。
【0161】
適当な粉末スラリー−クリヤーコートの例は、例えば米国特許文献US−A−4268542号及びドイツ国特許出願DE−A−19518392.4号及びDE−A−19613547号から公知であるか、又は以前に公開されていないドイツ国特許出願DE−A−19814471.7号に記載されている。
【0162】
粉末スラリー−クリヤーコートは公知の粉末クリヤーコートを水性媒体中に分散されて有している。
【0163】
UV硬化性クリヤーコートは、例えば特許文献DE−A−0540884号、EP−A−0568967号又はUS−A−4675234号から明らかである。
【0164】
更に該クリヤーコートはなおも付加的に少なくとも1つの他のクリヤーコートで、例えば有機的に変性されたセラミック層が被覆されており、それによって本発明による複層塗装系の耐引掻性は極めて改善できる。
【0165】
従って、本発明による複層塗装系MLは種々の構造を有する。
【0166】
本発明による複層塗装系の第1の有利な変法においては、
(1)機械エネルギーを吸収するサーフェイサー層、
(2)色付与及び/又は効果付与するベースコート及び
(3)クリヤーコート
が上記の順序で重なって存在する。
【0167】
本発明による複層塗装系MLの第2の有利な変法においては、
(1)色付与及び/又は効果付与するベースコート層及び
(2)クリヤーコート
が前記の順序で重なって存在する。有利な変法は、特にプラスチック塗装において使用される。
【0168】
本発明による水系ベースコート材料の施与は、全ての慣用の施与法によって、例えば吹き付け塗布、ブレード塗布、刷毛塗り、流延、浸漬塗布、含浸、滴下又はローラー塗布によって実施できる。この場合、被覆されるべき基材自体は停止しており、その際、施与装置又は設備が動く。しかしながら、また被覆されるべき基材、特にコイルが動いてもよく、その際、施与装置は基材と相対的に停止しているか、又は適当に動いている。
【0169】
有利には吹き付け塗布法、例えば圧力空気噴霧、エアレス噴霧、高速回転、静電的噴霧吹き付け塗装(ESTA)を、場合によりホットスプレー塗布、例えばホットエアーホットスプレーと組み合わせて使用される。この施与は最大70〜80℃で実施するので、適当な施与粘度は短時間で作用する加熱において被覆材料及び場合により再調製されたオーバースプレーの変性又は損傷を生じることなく達成される。こうしてホットスプレーは、被覆材料がスプレーノズルの非常に近辺でか、又はそのすぐ前で加熱される。
【0170】
前記の施与のために使用されるスプレーブースは、例えば場合により温度調節可能な循環系によって操作でき、この循環系はオーバースプレーのための適当な吸着媒体、例えば被覆材料自体を使用して操業する。
【0171】
一般にサーフェイサー層、トップコート層、ベースコート層及びクリヤーコート層は、その硬化の後に機能に必要かつ有利な層厚を有する層が得られる湿式層厚で施与される。サーフェイサー層の場合には、サーフェイサーは10〜150、有利には15〜120、特に有利には10〜100、特に10〜90μmの層厚、ベースコートの場合は、5〜50、有利には5〜40、特に有利には5〜30、特に10〜25μm、並びにクリヤーコートの場合には10〜100、有利には15〜80、特に有利には20〜70、特に25〜60μmである。
【0172】
サーフェイサー層、ベースコート層及びクリヤーコート層は熱的に硬化される。
【0173】
硬化は、一定の休止時間の後に実施できる。硬化は30秒から2時間、有利には1分間から1時間、特に1分間から45分間の期間を有する。休止時間は、例えば塗料層の供給及び脱ガスのため、又は揮発性成分、例えば溶剤の蒸発のために用いられる。休止時間は90℃までのより高い時間の使用によって、かつ/又は低減された空気湿気<10g水/kg空気、特に<5g水/kg空気によって促進し、かつ/又は短縮することができるが、それは塗料層の損傷又は変化、例えば早期の完全な架橋が起こらない場合である。
【0174】
熱的な硬化は方法的に特徴はなく、慣用かつ公知の方法によって、例えば強制空気炉での加熱又はIR灯での照射によって実施する。この場合には、熱的硬化を段階的に実施してよい。有利には熱的硬化は50〜100℃、有利には80〜100℃、特に90〜100℃の温度において、1分間〜2時間、特に2分間〜1時間、特に3分間〜30分間の時間で実施する。熱を強く負荷できる基材を使用する場合には熱的な架橋は100℃より高い温度で実施できる。一般に、本願では温度180℃、有利には160℃、特に155℃を超えないことが推奨される。
【0175】
クリヤーコートの場合に、硬化は使用されるクリヤーコートに応じて化学線又は熱的及び化学線で(デュアル キュア)実施できる。化学線としては、電磁線、例えば近紫外(NIR)、可視光又はUV光又はX線並びに粒子線、例えば電子線が該当する。
【0176】
本発明による複層塗装系は同様に、機械的、光学的、腐食防止性及び付着に関して非常に良好にバランスのある優れた特性プロフィールを有する。このように本発明による複層塗装系は市場で要求される高い光学的な品質及び中間層付着性を有し、サーフェイサー層の結露防止の欠損、ベースコートにおける亀裂形成(疲労亀裂)又はクリヤーコートにおけるレベリング性障害又は表面構造のような問題点を投じない。
【0177】
特に本発明による複層塗装系MLは優れたメタリック効果、優れたD.O.I(distinctiveness of the reflected image)及び優れた表面光沢を有する。これらは、耐候性であり、化学薬品及び鳥の糞に耐性であり、かつ耐引掻性であり、非常に良好なリフロー性を示す。
【0178】
しかしながら、とりわけ前記の方法を使用して主に本発明による水系ベースコート材料をベースとする複層塗装系が得られることはより特に有利であると証明される。
【0179】
従って、本発明による基材はより長い使用期間、より良好な消費者における美的印象及びより良好な技術的使用可能性を有し、このことは該基材を実質的に特に魅力的にすることが特に有利である。
【実施例】
【0180】
実施例及び比較例
製造例1
水性ポリウレタン分散液(A)の製造
1.81モルのポリマーの脂肪酸(二量体含有率 少なくとも98質量%、三量体含有率 多くて2.0質量%、単量体含有率 多くて微量)、0.82モルのイソフタル酸、0.61モルのヘキサンジオール及び0.61モルのネオペンチルグリコール、61質量部のジメチロールプロピオン酸、10.6質量部のネオペンチルグリコール、365質量部のメチルエチルケトン及び308.3質量部のm−テトラメチルキシリリデンジイソシアネートからなる716.6質量部の縮合生成物(数平均分子量:1410)を適当な反応容器中で攪拌しながら窒素雰囲気下に摂氏80℃に加熱した。反応を反応混合物の全量に対して1.1質量%のイソシアネート含有率まで継続させる。引き続き52.6質量部のトリメチロールプロパンを供給し、次いで得られた反応混合物を遊離イソシアネート基がもはや検出できなくなるまで摂氏80℃で攪拌した。次いで33質量部のジメチルエタノールアミン、255質量部のブチルグリコール及び引き続き2153質量部の脱イオン水を緩慢に攪拌導入した。メチルエチルケトンを真空下で留去した。微細な分散液が得られ、そのpH値をジメチルエタノールアミンによって7.4に調整し、その不揮発性成分を脱イオン水を使用して31質量%に調整した。
【0181】
製造例2
水性ポリエステル樹脂溶液(I)の製造
撹拌機、温度計及び充填塔を備えた反応器中で、729質量部のネオペンチルグリコール、768質量部のヘキサンジオール、462質量部のヘキサヒドロフタル酸無水物及び1710質量部のポリマーの脂肪酸(二量体含有率 少なくとも98質量%、三量体含有率 多くて2質量%、単量体含有率 多くて微量)を秤量し、溶融させた。得られた溶融物を攪拌しながら塔頂温度が摂氏100℃を超過しないように加熱した。最高で摂氏220℃において、酸価9が達成されるまでエステル化させた。摂氏180℃まで冷却した後に、768質量部のトリメリト酸無水物を添加し、更に酸価32が達成されるまで更にエステル化した。次いで反応混合物を摂氏120℃まで冷却し、1392質量部のブチルグリコールで溶解させた。摂氏90℃に冷却した後に、158質量部のジメチルエタノールアミン及び、引き続き1150質量部の脱イオン水を緩慢に攪拌導入した。得られるポリエステル樹脂溶液をジメチルエタノールアミンでpH値7.6に調整し、脱イオン水で不揮発性成分を60質量%に調整した。
【0182】
製造例3
ポリアクリレート樹脂(H)の製造
1.0モルのポリマーの脂肪酸(二量体含有率 少なくとも98質量%、二量体含有率 多くて2.0質量%、単量体含有率 多くて微量)、1.5モルのイソフタル酸、1.6モルのネオペンチルグリコール及び1.7モルのヘキサンジオール、31.2質量部のネオペンチルグリコール、185質量部のメチルエチルケトン、201.7質量部のm−テトラメチルキシリリデンジイソシアネート及び0.7質量部のジブチルスズジラウレートからなる500質量部の縮合生成物(数平均分子量:1423)を攪拌しながら窒素雰囲気下で摂氏80℃に加熱した。反応を反応混合物の全量に対して1.3質量%のイソシアネート含有率になるまで継続した。次いで30質量部のジエタノールアミンを添加し、得られる反応混合物を摂氏80℃で、イソシアネート基がもはや検出されなくなるまで攪拌した。引き続き、466質量部のブチルグリコールを攪拌導入し、次いでメチルエチルケトンを真空中で留去した。得られるポリウレタン溶液を引き続きブチルグリコールで60質量%の不揮発性割合になるまで調整した。
【0183】
モノマー供給路、開始剤供給路、温度計、オイルヒーター及び還流冷却器を備えた鋼製容器中で、28.44質量部のブチルグリコール及び24.24質量部の前記のポリウレタン溶液を装入し、摂氏110℃に加熱した。次いで5.1質量部のt−ブチルペルエチルヘキサノエートの6.0質量部のブチルグリコール中の溶液を、5.5時間後に添加が完了するような速度で一定に添加した。開始剤の添加の開始と一緒に、18.36質量部のn−ブチルメタクリレート、17質量部のメチルメタクリレート、17質量部のラウリルメタクリレート、17.34質量部のヒドロキシプロピルアクリレート及び12.75質量部のスチレンからなる混合物の添加を開始した。該モノマー混合物を、5時間で添加が完了するような速度で一定に添加した。開始剤溶液を完全に添加した後に、反応温度を更に1時間の間、摂氏110℃に保持した。
【0184】
それに引き続いて、3.5質量部のブチルグリコール中の1.17質量部のt−ブチルペルエチルヘキサノエートの溶液を1.5時間後に添加が完了するような速度で一定に添加した。開始剤の添加の開始と一緒に、5.85質量部のアクリル酸及び4.65質量部のn−ブチルメタクリレート、2.94質量部のメチルメタクリレート、5.90質量部のラウリルメタクリレート、1.25質量部のヒドロキシプロピルアクリレート及び2.94質量部のスチレンからなる混合物の添加を開始した。該モノマー混合物を1時間以内で添加が完了するような速度で一定に添加した。次いで反応混合物の温度を更に1.5時間の間、摂氏110℃に保持した。得られる樹脂溶液を、真空下に蒸留によって80質量%の固体含有率に濃縮し、ジメチルエタノールアミンを該温度で30分間以内で80%の中和度まで中和した。該樹脂溶液を摂氏60℃に冷却し、次いで加熱をやめた。引き続き水を、分散液の固体含有率が40質量%になるまで緩慢に添加した。該分散液は36.7mgKOH/gの酸価及び7.6のpH値を有した。
【0185】
例1及び例2並びに比較例V1及び比較例V2
本発明による水系ベースコート材料(例1及び例2)並びに本発明によるものでない水系ベースコート材料(比較例V1及び比較例V2)の製造
例1及び例2の本発明による水系ベースコート材料並びに比較例V2の本発明によるものでない水系ベースコート材料の製造は以下に記載の本発明によるものでない比較例V1の水系ベースコート材料のための製造工程と同様に実施した。第1表は使用される出発生成物の量に関する一覧である。
【0186】
比較例V1のために、増粘剤1(ラポルテ社(Laporte)の合成のナトリウム−マグネシウム−層状ケイ酸塩のペースト;水中3%)を装入した。このために攪拌しながら脱イオン水、増粘剤3(アライド コロイズ(Allied Colloids)社のポリアクリル酸の3%水溶液;商標名:Viscalex)、製造例1によるポリウレタン分散液(A)、製造例2によるポリエステル樹脂溶液(I)、製造例3によるポリアクリレートの溶液(H)、ブチルグリコール、市販のブタノール中のメラミン樹脂(Maprenal(R)VMF3924)、二酸化ケイ素を含有する充填剤ペースト(12質量部のグレース社(Grace)のSyloid(R)ED-3;30質量部の前記のポリエステル樹脂溶液(I))、中和剤(D)(ジメチルエタノールアミン、水中10%)、アルキンジオールベースの市販の脱泡剤(ブチルグリコール中の50%;エアープロダクツ社(Air Products))、脱イオン水、顔料ペースト1(63質量部のポリウレタン分散液、31質量部のTitan Rutil Tayca(R)MT500HD タイカ社(Tyca))、顔料ペースト2(64質量部のポリウレタン分散液及び32質量部の二酸化チタン ケミラ社(Kemira)のUVL530)を攪拌しながら導入した。
【0187】
これとは別個に、5.0質量部の市販のアルミニウムペースト(エッカルト社(Eckart)のAlu-Stapa-Hydrolux(R))、6.0質量部の溶剤及び2.4質量部のポリエステル樹脂溶液(I)からなるアルミニウム顔料スラリーを製造した。このアルミニウム顔料スラリーを前記の混合物に攪拌導入した。
【0188】
引き続き、得られる混合物を中和剤溶液(D)で約8.0のpH値に調整し、脱イオン水で1291s-1の剪断において65mPasの粘度に調整した。
【0189】
比較例V2のために、比較例V1を繰り返すが、但し、増粘剤1の代わりに増粘剤2を使用した。これはジュードヒェミー(Suedchemie)の合成のナトリウム−マグネシウム−層状ケイ酸塩の3%溶液である。
【0190】
例1のために比較例V1を繰り返すが、但し、増粘剤3の代わりに増粘剤4を使用した。これはポリウレタンベースの50質量%の会合増粘剤(G)(ヘンケル社のNopco(R)DSX1550)及び50質量%のブチルグリコールからなる混合物である。
【0191】
例2のために例1を繰り返すが、但し、アルミニウム顔料スラリーの製造におけるブチルグリコールの代わりにジプロピレングリコールモノアルキルエーテルを使用した。
【0192】
比較例V2及び例1及び例2の水系ベースコート材料を中和剤溶液(D)で約8.0のpH値に調整し、脱イオン水で1291s-1の剪断において65mPasの粘度に調整した。
【0193】
第1表は出発生成物及び水系ベースコート材料の組成に関する一覧である。
【0194】
第1表:本発明による水系ベースコート材料(例1及び例2)並びに本発明によるものでない水系ベースコート材料(比較例V1及びV2)の組成
成分 比較例V1 比較例V2 例1 例2
増粘剤1 29 − 29 29
増粘剤2 − 29 − −
脱イオン水 9.0 9.0 9.0 9.0
増粘剤3 5.5 5.5 − −
ポリウレタン分散液(A) 21.5 21.5 21.5 21.5
ポリエステル溶液(I) 2.0 2.0 2.0 2.0
ポリアクリレート
樹脂溶液(H) 5.0 5.0 5.0 5.0
ブチルグリコール 2.0 2.0 2.0 2.0
メラミン樹脂(B) 5.0 5.0 5.0 5.0
充填剤ペースト 1.2 1.2 1.2 1.2
中和剤(D) 0.4 0.4 0.4 0.4
脱泡剤 2.0 2.0 2.0 2.0
増粘剤4 − − 1.6 1.6
脱イオン水 4.0 4.0 4.0 4.0
顔料ペースト1 4.3 4.3 4.3 4.3
顔料ペースト2 0.8 0.8 0.8 0.8
Alu-Stapa-Hydrolux(R) 5.0 5.0 5.0 5.0
ブチルグリコール 6.0 6.0 6.0 −
ジプロピレングリコール
メチルエーテル − − − 6.0
ポリエステル溶液(I) 2.4 2.4 2.4 2.4
本発明による水系ベースコート材料(例1及び例2)並びに本発明によるものでない水系ベースコート材料(比較例V1及び比較例V2)の粘性を種々の剪断速度で測定した。結果を第2表に示す。
【0195】
第2表:本発明による水系ベースコート材料(例1及び例2)並びに本発明によるものでない水系ベースコート材料(比較例V1及び比較例V2)の粘性
剪断速度(s-1) 粘度(mPas):
比較例V1 比較例V2 例1 例2
34(前方) 360 220 355 350
1.000 73 73 73 73
34(後方) 250 180 245 235
第2表の値は、例1及び例2の水系ベースコート材料並びに比較例V1及び比較例V2の水系ベースコート材料は匹敵する(一方で比較例V2と、他方で例1及び例2及び比較例V1)もしくは同一の粘性(例1及び例2並びに比較例V1)を有することを証明している。
【0196】
例3及び例4並びに比較例V3及び比較例V4
本発明による水系ベースコート材料(例3及び例4)並びに本発明によるものでない水系ベースコート材料(比較例V3及び比較例V4)の光学的欠陥の形成に対する作用の試験
例3のために例1の本発明による水系ベースコート材料を使用した。
【0197】
例4のために例2の本発明による水系ベースコート材料を使用した。
【0198】
比較例V3のために本発明によるものでない比較例V1の水系ベースコート材料を使用した。
【0199】
比較例V4のために本発明によるものでない比較例V2の水系ベースコート材料を使用した。
【0200】
例3及び例4並びに比較例V3及び比較例V4の試験板を以下の一般的な工程に従って使用した:
市販の電着塗料でカソード的に被覆された鋼板(層厚18〜22μmを有する電着塗装)上にカップガン(Becherpistol)でまずBASF Coating AG社から市販されているサーフェイサーを適用し、焼き付けた。層厚35〜40μmを有するサーフェイサーが得られた。引き続きサーフェイサー上に同様に本発明による水系ベースコート材料並びに本発明によるものでない水系ベースコート材料(第1表を参照)を適用し、80℃で10分間の前乾燥をした。該板を冷却した後に、デュポン社から市販されている2成分系のハイソリッドクリヤーコート材料からなる1層をそれぞれ施し、室温で10分間の前乾燥をし、引き続き140℃で45分間ベースコートと一緒に架橋させた。15μmの層厚のベースコート並びに44μmの層厚のクリヤーコートが得られた。
【0201】
1.淡色斑
第1塗装又はサーフェイサーの欠陥の湿式研削において、ベースコート及びクリヤーコートで被覆されるボディーの一部に水滴が残留する。これらの水滴は水、クリヤーコート及び/又はサーフェイサーの研削塵及び研削紙の残留物からなる。この水滴の乾燥及び、引き続いてのベースコート及びクリヤーコートでの被覆の後に、乾燥された水の部位が淡色斑として認めることができる。
【0202】
この効果のシュミレーションのために種々のサイズの研削水滴(脱イオン水+サーフェイサー及びクリヤーコートの研削塵+Plochmann社の水に浸けて柔らかくした研削紙)をそれぞれの試験板に施与し、室温で乾燥させ、それぞれ第1塗装のために使用される第1表で記載したベースコート及びデュポン社の2成分系−ハイソリッドクリヤーコート材料で被覆した。被覆において得られる色調の差異(淡色斑)を視覚的に評価した。得られた結果を第3表に示す。
【0203】
2.研磨斑
試験板に赤色/白色フェルト(3M社の"バフィングパッド(Buffing Pad)"、マテリアル番号049−5765)及び3M社の灰色の研磨ペースト(マテリアル番号029−2778)で研磨部位をもたらした。引き続き第1表に記載されるベースコート及び前記のクリヤーコートで被覆する場合に、この研磨部位はその異なる色調のゆえに明らかに確認された。それぞれの色調の差異を視覚的に測定した。得られた結果を第3表に示す。
【0204】
3.研削斑
試験板にPlochmann社の2000の粗さを有する研削紙で円形もしくは交差形の研削部位のいずれかを施した。この研削部位を第1表に記載されるベースコート材料及び前記のクリヤーコート材料で被覆した。それぞれの色調の差異を視覚的に測定した。得られた結果を第3表に示す。
【0205】
色調の差異、すなわち欠陥の顕著さを以下のように評価した:
評価の意味
1 欠陥を確認できない
2 欠陥を非常に僅かに確認できる
3 欠陥を僅かに確認できる
4 欠陥を明らかに確認できる
5 欠陥を非常に明らかに確認できる
第3表:本発明による水系ベースコート材料(例3及び例4)並びに本発明によるものでない水系ベースコート材料(比較例V3及び比較例V4)の光学的欠陥の形成における効果
光学的欠陥 比較例V3 比較例V4 例3 例4
淡色斑 4 5 2 2
研磨斑 4 5 4 2〜3
研削斑 3〜4 4 2〜3 2
この結果は、本発明による水系ベースコート材料によって光学的欠陥の形成が効果的に抑えられることを裏付けている。
【0206】
ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルの使用によって付加的な改善が得られる。水系ベースコート材料の粘性に関する第3表での結果の比較は、意想外にも粘性が本発明による水系ベースコート材料の有利な作用の原因とならないことの基礎となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色付与及び/又は効果付与する複層塗装系又はその補修塗装系での光学的欠陥を抑えるためのポリウレタンベースの会合増粘剤及び/又はジプロピレングリコールモノアルキルエーテルの使用。
【請求項2】
色付与及び/又は効果付与する複層塗装系及び/又はその補修塗装系が少なくとも1つのベースコート及び少なくとも1つのクリヤーコートを有する、請求項1記載の使用。
【請求項3】
ベースコートを水系ベースコート材料から製造する、請求項2記載の使用。
【請求項4】
ポリウレタンベースの水系ベースコート材料である、請求項3記載の使用。
【請求項5】
ポリウレタンベースの会合増粘剤及び/又はジプロピレングリコールモノアルキルエーテルが1つ以上のベースコート材料中に含まれている、請求項2から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
ポリウレタンベースの会合増粘剤及びジプロピレングリコールモノアルキルエーテルが1つ以上のベースコート材料中に含まれている、請求項2から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
光学的欠陥が
− 欠陥の摩耗の後に、色付与及び/又は効果付与する複層塗装系に又は色付与及び/又は効果付与する複層塗装系で被覆されるべきサーフェイサーにその上に残留する乾燥残液及び/又は摩耗塵残滓によってもたらされる淡色斑;及び
− 色付与及び/又は効果付与する複層塗装系の修復の目的で行われる、色付与及び/又は効果付与する複層塗装系の欠陥の研磨によってもたらされる研磨斑
である、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
水系ベースコート材料が
(A)少なくとも1種の水溶性又は水分散性のポリウレタン、
(B)少なくとも1種の架橋剤、
(C)少なくとも1種の色付与及び/又は効果付与する顔料、
(D)少なくとも1種の中和剤、
(E)少なくとも1種の無機増粘剤及び
(F)少なくとも1種のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル
を含有する、請求項3から7までのいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
水系ベースコート材料が
(G)少なくとも1種のポリウレタンベースの会合増粘剤
を含有する請求項8記載の使用。
【請求項10】
水系ベースコート材料が
(A)少なくとも1種の水溶性又は水分散性のポリウレタン、
(B)少なくとも1種の架橋剤、
(C)少なくとも1種の色付与及び/又は効果付与する顔料、
(D)少なくとも1種の中和剤、
(E)少なくとも1種の無機増粘剤、
(G)少なくとも1種のポリウレタンベースの会合増粘剤、
(H)場合により少なくとも1種の水溶性又は水分散性の、水溶性又は水分散性ポリウレタンの存在下に製造されるポリアクリレート樹脂、及び
(I)少なくとも1種の水溶性又は水分散性のポリエステル樹脂
を含有する、請求項3から7までのいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
水系ベースコート材料が
(F)少なくとも1種のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル
を含有する、請求項10記載の使用。
【請求項12】
水系ベースコート材料がその全質量に対して0.5〜11質量%のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル(F)を含有する、請求項8、9又は11のいずれか1項記載の使用。
【請求項13】
水系ベースコート材料がその全質量に対して0.1〜4質量%の少なくとも1種のポリウレタンベースの会合増粘剤(G)を含有する、請求項9から12までのいずれか1項記載の使用。
【請求項14】
水系ベースコート材料が
(J)少なくとも1種の添加剤
を含有する、請求項3から13までのいずれか1項記載の使用。
【請求項15】
以下の
(A)少なくとも1種の水溶性又は水分散性のポリウレタン、
(B)少なくとも1種の架橋剤、
(C)少なくとも1種の色付与及び/又は効果付与する顔料、
(D)少なくとも1種の中和剤、
(E)少なくとも1種の無機増粘剤及び
(F)少なくとも1種のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル
を含有する、水系ベースコート材料。
【請求項16】
該ベースコート材料が
(G)少なくとも1種のポリウレタンベースの会合増粘剤
を含有する、請求項15記載の水系ベースコート材料。
【請求項17】
以下の
(A)少なくとも1種の水溶性又は水分散性のポリウレタン、
(B)少なくとも1種の架橋剤、
(C)少なくとも1種の色付与及び/又は効果付与する顔料、
(D)少なくとも1種の中和剤、
(E)少なくとも1種の無機増粘剤、
(G)少なくとも1種のポリウレタンベースの会合増粘剤、
(H)場合により少なくとも1種の水溶性又は水分散性の、水溶性又は水分散性のポリウレタンの存在下に製造されるポリアクリレート樹脂、及び
(I)少なくとも1種の水溶性又は水分散性のポリエステル樹脂
を含有する、水系ベースコート材料。
【請求項18】
該ベースコート材料が
(F)少なくとも1種のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル
を含有する、請求項17記載の水系ベースコート材料。
【請求項19】
全質量に対して、0.5〜11質量%のジプロピレングリコールモノアルキルエーテルを含有する、請求項15、16又は18のいずれか1項記載の水系ベースコート材料。
【請求項20】
全質量に対して、0.1〜4質量%の少なくとも1種のポリウレタンベースの会合増粘剤を含有する、請求項16から19までのいずれか1項記載の水系ベースコート材料。
【請求項21】
該ベースコート材料が、
(J)少なくとも1種の添加剤
を含有する、請求項15から20までのいずれか1項記載の水系ベースコート材料。
【請求項22】
自動車ボディー、電子工学的構成部品、コイル及び包装材料、プラスチック又は家具を含む工業的な構成部品の第1塗装又はその上にある色付与及び/又は効果付与する複層塗装系の補修塗装のための、請求項15から21までのいずれか1項記載の水系ベースコート材料の使用。
【請求項23】
請求項15から21までのいずれか1項記載の水系ベースコート材料から製造できる少なくとも1つのベースコートを含む色付与及び/又は効果付与する複層塗装系。

【公開番号】特開2012−136714(P2012−136714A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93348(P2012−93348)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【分割の表示】特願2001−525284(P2001−525284)の分割
【原出願日】平成12年8月31日(2000.8.31)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】