説明

色分解光学系および撮像装置

【課題】入射角の大きさによる偏光分離の影響を考慮しつつ、理想的な分光特性に近い特性を得て色再現性の向上を図ることができるようにする。
【解決手段】緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性を示す曲線が、理想的な緑色の分光特性の特性曲線に沿う形状を有するものとする。また、青色光反射ダイクロイック膜DBの特性を緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性と関連付け、青色光反射ダイクロイック膜DBの透過特性曲線における低透過率から高透過率に変化する部分を、緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性に関連した所定の波長領域内に含める。青色光反射ダイクロイック膜DBで偏光分離が生じたとしても、その偏光分離の影響は緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性に関連付けられた所定の波長領域内にほぼ抑えられ、理想的な分光特性に近い特性が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を複数の色光に分解する色分解光学系、およびその色分解光学系を備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、テレビカメラやビデオカメラ等の撮像装置には、色分解光学系が備えられている。図17は、従来の色分解光学系の構成例を示している。この色分解光学系101は、撮影レンズ102を介して入射した入射光Lを青色光LB、赤色光LR、および緑色光LGの3つの色光成分に分解するものである。色分解光学系101によって分解された各色光に対応する位置には、CCD(Charge Coupled Device)等の各色光用の撮像素子4B,4R,4Gが配置される。この色分解光学系101は、フィリップス型色分解光学系と呼ばれるものであり、光軸Z1に沿って光の入射側から順に、第1のプリズム110と、第2のプリズム120と、第3のプリズム130とを備え、第1のプリズム110で青色光LB、第2のプリズム120で赤色光LR、第3のプリズム130で緑色光LGを取り出す構成とされている。
【0003】
第1のプリズム110の反射・透過面111には、青色光反射ダイクロイック膜DB1が形成されている。第2のプリズム120の反射・透過面121には、赤色光反射ダイクロイック膜DR1が形成されている。第1のプリズム110と第2のプリズム120は、第1のプリズム110における青色光反射ダイクロイック膜DB1が形成された面111と第2のプリズム120における光の入射面とが空気間隔110AGを空けて互いに対向するようにして配置されている。また、第1のプリズム110の光射出面にはトリミングフィルタ151が設けられている。トリミングフィルタ151の光射出面にはダイクロイック膜151Aが形成されている。同様に、第2のプリズム120の光射出面にはダイクロイック膜152Aが形成されたトリミングフィルタ152が設けられ、第3のプリズム130の光射出面にはダイクロイック膜153Aが形成されたトリミングフィルタ153が設けられている。トリミングフィルタ151,152,153は、分光特性を理想とする特性に近づけるために設けられており、青色光反射ダイクロイック膜DB1と赤色光反射ダイクロイック膜DR1とでは十分に整形できなかった波長成分の分光特性を整える役割を持つ。
【0004】
図19は、一般にカラー撮像系で理想とされている分光特性を赤色(R)成分、青色(B)成分、および緑色(G)成分の3色について示している。なお、図19の理想特性は、各色光成分の最大値が1となるように規格化したものである。この「理想特性」は、色再現媒体の3原色の色度座標から換算され、XYZ表色系の等色関数の一次変換により求めることができる。ここで、「色再現媒体」とは、撮像装置によって撮影された画像を再現(表示)するものであり、例えば液晶モニタやプロジェクタ等の表示装置である。図18は、理想特性を求めるための3原色R,G,Bの色度座標の一例を示している。3原色R,G,Bは、色再現媒体で再現可能な色範囲を決定する。
【0005】
図17に示した色分解光学系101を用いて図19に示したような理想特性と同じ特性が得られれば理想的な色再現を行うことができる。しかしながら実際には、完全に理想特性と同じ特性にすることは困難であり、理想特性に近似した特性となるような設計がなされている。従来の色分解光学系101では、各プリズムに形成されたダイクロイック膜DB1,DR1とトリミングフィルタ151,152,153に形成されたダイクロイック膜151A,152A,153Aとを適宜調整することで、理想特性に近似した特性となるような設計がなされていた。図20は、そのような設計を行うことにより得られる従来の一般的な色分解光学系の分光透過特性を示している。
【0006】
図21は、従来の色分解光学系101で用いられているダイクロイック膜DB1,DR1の設計例を示している。図21に示したように、従来では、ダイクロイック膜DB1,DR1として、その波長対透過率の特性曲線が、図19に示した理想特性の曲線に比べて急峻な立ち上がり、または立ち下がりを見せる特性を持つものが使用されていた。さらに,ダイクロイック膜151A,152A,153Aの施されたトリミングフィルタ151,152,153を用いて各プリズムの射出面から射出する光の不要な波長成分を遮断している。
【0007】
このように、従来では、種々のトリミングフィルタを用いて特性を整えることが通常行われている。例えば特許文献1では、特殊な分光透過特性を持つトリミングフィルタを使用する方法で肌色の輝度レベルを上げて、色再現を向上させる方法が提案されている。その他にも、ダイクロイック膜DR1に代えて第2のプリズム120と第3のプリズム130との接合面にハーフミラーを配置し、トリミングフィルタ152,153として理想特性に近似した透過特性を持つダイクロイック膜を施すことで透過特性を調整する方法などが知られている。図22は、そのような特殊な調整を行うことで理想特性に近似させた従来の色分解光学系の分光特性を示している。
【特許文献1】特開2005−208256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、プリズムの射出面にダイクロイック膜付きのトリミングフィルタを用いるような従来の色分解光学系では、そのダイクロイック膜の特性として、波長選択的に反射率の高い波長域があるため、そのダイクロイック面と撮像面との間で多重反射が生じ、ゴースト・フレアとなって画像品質が劣化する問題がある。図23は、一例として、従来の色分解光学系101において緑色光LGを取り出す第3のプリズム130の射出面側で生ずる多重反射について示している。図23に示したように、撮像素子4Gは、撮像面401Gとカバーガラス402と引き出し電極403とを有し、例えば、緑色用のトリミングフィルタ153を通過した緑色光LGの一部が撮像面401Gで反射され、その戻り光がトリミングフィルタ153のダイクロイック膜153Aの波長選択特性に応じて反射される。このようにして多重反射光160が生じてゴースト・フレアとなる。このため、従来では、ゴースト・フレアを低減した形での理想的な分光特性を持つ撮像系の実現は困難であった。
【0009】
また、図17には、第1のプリズム110と第2のプリズム120とが空気間隔110AGを空けて配置されたフィリップス型の色分解光学系101について示したが、特に、空気間隔110AGを設けないギャップレス型の色分解光学系では、反射ダイクロイック面で偏光分離が生じやすい問題がある。図24は、ギャップレス型の色分解光学系101Aの構成例を示している。図24に示した色分解光学系101Aは、図17のフィリップス型の色分解光学系101に比べて色光を取り出す順番が異なっている。この色分解光学系101Aは、第1のプリズム110で緑色光LG、第2のプリズム120で青色光LB、第3のプリズム130で赤色光LRを取り出す構成とされている。この色分解光学系101Aにおいて、第1のプリズム110の反射・透過面111には、緑色光LGを反射し、青色光LBおよび赤色光LRを透過する緑色光反射ダイクロイック膜DG1が形成されている。また、第2のプリズム120の反射・透過面121には、青色光LBを反射し、赤色光LRを透過する青色光反射ダイクロイック膜DB1が形成されている。第1のプリズム110における緑色光反射ダイクロイック膜DG1が設けられた面111と第2のプリズム120における光の入射面は、空気間隔を空けずに互いに密着されている。
【0010】
このようなギャップレス型の色分解光学系101Aの場合、フィリップス型の色分解光学系101に比べて、第2のプリズム120の反射ダイクロイック面(青色光反射ダイクロイック膜DB1)での光の入射角θが大きくなる。入射角θが大きいと、その面に設けられた青色光反射ダイクロイック膜DB1において偏光分離と呼ばれる現象が発生する。このため、図25に透過特性曲線の例を示したように青色光反射ダイクロイック膜DB1に関して、P偏光とS偏光との平均透過率で考えたときに低透過率帯から高透過率帯に達するのに要する波長幅W100が広くなる傾向がある。理想的な分光特性を得るためには、この波長幅W100が適切な波長範囲に設定されている必要があると考えられる。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、入射角の大きさによる偏光分離の影響を考慮しつつ、理想的な分光特性に近い特性を得て色再現性の向上を図ることができるようにした色分解光学系および撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の観点に係る色分解光学系は、入射光を緑色光、青色光、および赤色光の少なくとも3つの色光成分に分解する色分解光学系であって、光の入射側から順に、第1のダイクロイック膜を有し、第1のダイクロイック膜によって反射された第1の色光成分を取り出す第1のプリズムと、第2のダイクロイック膜を有し、第1のダイクロイック膜を透過し第2のダイクロイック膜によって反射された第2の色光成分を取り出す第2のプリズムと、第1および第2のダイクロイック膜を透過した第3の色光成分を取り出す第3のプリズムとを少なくとも備え、第1のダイクロイック膜が、第1の色光成分として緑色光を反射する膜構成とされると共に、第2のダイクロイック膜が、第2の色光成分として青色光を反射する膜構成とされているものである。かつ、第1のダイクロイック膜の波長に対する反射率を示す反射特性曲線の傾きが、理想的な緑色の分光特性の短波長側および長波長側の特性曲線に沿う形状を有しているものである。また、第2のダイクロイック膜の波長に対する透過率を示す透過特性曲線が、最低透過率と最高透過率との間の透過率範囲で20%から80%に立ち上がる変化をする部分を有し、その第2のダイクロイック膜の透過特性曲線の20%から80%に立ち上がる変化をする部分が、第1のダイクロイック膜の波長に対する透過率を示す透過特性曲線において最低透過率と最高透過率との間で透過率が80%となる波長点で挟まれた波長領域内に含まれているものである。
【0013】
本発明の第1の観点に係る色分解光学系では、第1のダイクロイック膜が第1の色光成分として緑色光を反射する膜構成とされ、第1のプリズムにおいて緑色光が取り出される。また、第2のダイクロイック膜が第2の色光成分として青色光を反射する膜構成とされ、第2のプリズムにおいて青色光が取り出される。第3のプリズムからは、第1および第2のダイクロイック膜を透過した第3の色光成分(第1の色光成分および第2の色光成分とは異なる色光)が取り出される。この場合において、第1のダイクロイック膜の特性を示す曲線が、理想的な緑色の分光特性の特性曲線に沿う形状を有していることで、プリズムの射出面にダイクロイック膜付きのトリミングフィルタを用いることなく、理想的な分光特性に近い特性が得られる。ダイクロイック膜付きのトリミングフィルタを用いる必要が無くなるので、従来、トリミングフィルタのダイクロイック膜に起因して生じていたゴースト・フレアの発生が抑制される。これらにより、ゴースト・フレアを低減した形での理想的な分光特性を持つ撮像系の実現が可能となる。
さらに、この色分解光学系では、第2のダイクロイック膜の特性が第1のダイクロイック膜の特性と関連付けられ、第2のダイクロイック膜の透過特性曲線における低透過率から高透過率に変化する部分が、第1のダイクロイック膜の特性に関連した所定の波長領域内に含まれる。これにより、第2のダイクロイック膜で偏光分離が生じたとしても、その偏光分離の影響は第1のダイクロイック膜の特性に関連付けられた所定の波長領域内にほぼ抑えられ、理想的な分光特性に近い特性が得られる。
【0014】
本発明の第2の観点に係る色分解光学系は、入射光を緑色光、青色光、および赤色光の少なくとも3つの色光成分に分解する色分解光学系であって、光の入射側から順に、第1のダイクロイック膜を有し、第1のダイクロイック膜によって反射された第1の色光成分を取り出す第1のプリズムと、第2のダイクロイック膜を有し、第1のダイクロイック膜を透過し第2のダイクロイック膜によって反射された第2の色光成分を取り出す第2のプリズムと、第1および第2のダイクロイック膜を透過した第3の色光成分を取り出す第3のプリズムとを少なくとも備え、第1のダイクロイック膜が、第1の色光成分として緑色光を反射する膜構成とされると共に、第2のダイクロイック膜が、第2の色光成分として赤色光を反射する膜構成とされているものである。かつ、第1のダイクロイック膜の波長に対する反射率を示す反射特性曲線の傾きが、理想的な緑色の分光特性の短波長側および長波長側の特性曲線に沿う形状を有しているものである。また、第2のダイクロイック膜の波長に対する反射率を示す反射特性曲線が、最低反射率と最高反射率との間の反射率範囲で20%から80%に立ち上がる変化をする部分を有し、第2のダイクロイック膜の反射特性曲線の20%から80%に立ち上がる変化をする部分が、第1のダイクロイック膜の波長に対する透過率を示す透過特性曲線において最低透過率と最高透過率との間で透過率が80%となる波長点で挟まれた波長領域内に含まれているものである。
【0015】
本発明の第2の観点に係る色分解光学系では、第1のダイクロイック膜が第1の色光成分として緑色光を反射する膜構成とされ、第1のプリズムにおいて緑色光が取り出される。また、第2のダイクロイック膜が第2の色光成分として赤色光を反射する膜構成とされ、第2のプリズムにおいて赤色光が取り出される。第3のプリズムからは、第1および第2のダイクロイック膜を透過した第3の色光成分(第1の色光成分および第2の色光成分とは異なる色光)が取り出される。この場合において、第1のダイクロイック膜の特性を示す曲線が、理想的な緑色の分光特性の特性曲線に沿う形状を有していることで、プリズムの射出面にダイクロイック膜付きのトリミングフィルタを用いることなく、理想的な分光特性に近い特性が得られる。ダイクロイック膜付きのトリミングフィルタを用いる必要が無くなるので、従来、トリミングフィルタのダイクロイック膜に起因して生じていたゴースト・フレアの発生が抑制される。これらにより、ゴースト・フレアを低減した形での理想的な分光特性を持つ撮像系の実現が可能となる。
さらに、この色分解光学系では、第2のダイクロイック膜の特性が第1のダイクロイック膜の特性と関連付けられ、第2のダイクロイック膜の反射特性曲線における低反射率から高反射率に変化する部分が、第1のダイクロイック膜の特性に関連した所定の波長領域内に含まれる。これにより、第2のダイクロイック膜で偏光分離が生じたとしても、その偏光分離の影響は第1のダイクロイック膜の特性に関連付けられた所定の波長領域内にほぼ抑えられ、理想的な分光特性に近い特性が得られる。
【0016】
なお、本発明の第1または第2の観点に係る色分解光学系は、第1のプリズムにおける第1のダイクロイック膜が設けられた面と第2のプリズムにおける光の入射面とが空気間隔を空けずに互いに密着されて構成されることにより、いわゆるギャップレス型の色分解光学系とされていても良い。
【0017】
本発明の第1または第2の観点に係る色分解光学系において、第1のダイクロイック膜の反射特性曲線の傾きが、430nm以上670nm以下の波長範囲内で立ち上がる部分では、理想的な緑色の分光特性の短波長側の特性曲線に沿う形で低反射率から高反射率に変化をする形状を有し、430nm以上670nm以下の波長範囲内で立ち下がる部分では、理想的な緑色の分光特性の長波長側の特性曲線に沿う形で高反射率から低反射率に立ち下がる変化をする形状を有していることが好ましい。
【0018】
ここで、本発明の第1または第2の観点に係る色分解光学系において、「理想的な分光特性」とは、「目的とする所定の分光特性」である。例えば、RGB表色系の等色関数で示される理想特性である。または、色再現媒体の3原色の色度座標から換算され、XYZ表色系の等色関数の一次変換で示される理想特性であっても良い。
【0019】
また、本発明の第1または第2の観点に係る色分解光学系において、第1のプリズムよりも前側、もしくは赤色光を取り出すプリズムの射出面側に配置され、視感度に近似した特性を持つ吸収型フィルタをさらに備えていても良い。また、第1のプリズムよりも前側に配置され、赤外光をカットするコートタイプの赤外カットフィルタをさらに備えていても良い。また、第1のプリズムよりも前側に配置され、紫外光を遮断する紫外カットフィルタをさらに備えていても良い。また、第1のプリズムよりも前側に配置され、入射光の特定方向への偏光を解消する偏光解消板をさらに備えていても良い。また、赤色光を取り出すプリズムの射出面側に配置され、青色光および緑色光を遮断し、赤色光を透過する吸収フィルタをさらに備えていても良い。
これらにより、理想的な分光特性に近い特性をより得やすくなる。
【0020】
また、少なくとも1つのプリズムの射出面に反射防止膜が施されていても良い。これにより、ゴースト・フレアの低減により有利となる。
【0021】
本発明による撮像装置は、本発明の第1または第2の観点に係る色分解光学系と、この色分解光学系によって分解された各色光に対応して設けられ、入射した各色光に応じた電気信号を出力する撮像素子とを備えたものである。
本発明による撮像装置では、本発明の色分解光学系によって得られた各色光に基づいて色再現性の高い撮像信号が得られる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1の観点に係る色分解光学系によれば、第1のダイクロイック膜によって反射された緑色光を第1の色光成分として第1のプリズムから取り出すと共に、第2のダイクロイック膜によって反射された青色光を第2の色光成分として第2のプリズムから取り出す構成において、第1のダイクロイック膜の特性を示す曲線が、理想的な緑色の分光特性の特性曲線に沿う形状を有するような構成となるようにしたので、プリズムの射出面にダイクロイック膜付きのトリミングフィルタを用いることなく、理想的な分光特性に近い特性を得ることが可能となる。これにより、ダイクロイック膜付きのトリミングフィルタを用いる従来の波長選択手法に比べてゴースト・フレアを低減させることができ、かつ、理想的な分光特性に近い特性を得て色再現性の向上を図ることができる。また、第2のダイクロイック膜の特性を第1のダイクロイック膜の特性と関連付け、第2のダイクロイック膜の透過特性曲線における低透過率から高透過率に変化する部分を、第1のダイクロイック膜の特性に関連した所定の波長領域内に含めるようにしたので、第2のダイクロイック膜で偏光分離が生じたとしても、その偏光分離の影響は第1のダイクロイック膜の特性に関連付けられた所定の波長領域内にほぼ抑えられる。これにより、第2のダイクロイック膜で偏光分離が生じたとしても理想的な分光特性に近い特性が得られる。
【0023】
また、本発明の第2の観点に係る色分解光学系によれば、第1のダイクロイック膜によって反射された緑色光を第1の色光成分として第1のプリズムから取り出すと共に、第2のダイクロイック膜によって反射された赤色光を第2の色光成分として第2のプリズムから取り出す構成において、第1のダイクロイック膜の特性を示す曲線が、理想的な緑色の分光特性の特性曲線に沿う形状を有するような構成となるようにしたので、プリズムの射出面にダイクロイック膜付きのトリミングフィルタを用いることなく、理想的な分光特性に近い特性を得ることが可能となる。これにより、ダイクロイック膜付きのトリミングフィルタを用いる従来の波長選択手法に比べてゴースト・フレアを低減させることができ、かつ、理想的な分光特性に近い特性を得て色再現性の向上を図ることができる。また、第2のダイクロイック膜の特性を第1のダイクロイック膜の特性と関連付け、第2のダイクロイック膜の反射特性曲線における低反射率から高反射率に変化する部分を、第1のダイクロイック膜の特性に関連した所定の波長領域内に含めるようにしたので、第2のダイクロイック膜で偏光分離が生じたとしても、その偏光分離の影響は第1のダイクロイック膜の特性に関連付けられた所定の波長領域内にほぼ抑えられる。これにより、第2のダイクロイック膜で偏光分離が生じたとしても理想的な分光特性に近い特性が得られる。
【0024】
本発明の撮像装置によれば、上記本発明の高性能の色分解光学系によって得られた色光に応じた撮像信号を出力するようにしたので、色再現性の高い撮像を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
【0026】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る色分解光学系1を備えた撮像装置の要部構成を示している。この撮像装置は例えばテレビカメラの撮像部分として利用される。色分解光学系1は、撮影レンズ2を介して入射した入射光Lを青色光LB、赤色光LR、および緑色光LGの3つの色光成分に分解するものである。色分解光学系1によって分解された各色光に対応する位置には、CCD等の各色光用の撮像素子4B,4R,4Gが配置されている。この色分解光学系1は、光軸Z1に沿って光の入射側から順に、IR(赤外)カットフィルタ3と、第1のプリズム10と、第2のプリズム20と、第3のプリズム30とを備えている。本実施の形態における色分解光学系1は、第1のプリズム10で緑色光LG、第2のプリズム20で青色光LB、第3のプリズム30で赤色光LRを取り出す構成例である。
【0027】
第1のプリズム10は、第1の面11、第2の面12、および第3の面13を有している。第1のプリズム10の第3の面13は光射出面である。この射出面にはトリミングフィルタ51が設けられている。このトリミングフィルタ51には、従来用いられていたような特性調整用のダイクロイック膜は設けられておらず、その代わりに、トリミングフィルタ51の光射出面にゴースト・フレア防止用の反射防止膜51ARが形成されている。なお、トリミングフィルタ51を設けることなく、第1のプリズム10の第3の面13に直接、反射防止膜51ARを形成するようにしても良い。
【0028】
第1のプリズム10の第2の面12には、第1のダイクロイック膜としての緑色光反射ダイクロイック膜DGが形成されている。緑色光反射ダイクロイック膜DGは、第1の色光成分として緑色光LGを反射し、青色光LBおよび赤色光LRを透過する膜構成とされている。緑色光反射ダイクロイック膜DGは、波長に対する反射率を示す反射特性曲線の傾きが、色再現媒体の3原色の色度座標から換算されXYZ表色系の等色関数に基づいて決められた理想的な緑色の分光特性の短波長側および長波長側の特性曲線に沿う形状を有している。ここでいう「理想特性」とは、「目的とする所定の分光特性」である。例えば従来から知られている図19に示したような特性であり、色再現媒体の3原色の色度座標から換算され、XYZ表色系の等色関数の一次変換により求めることができる。また、「理想特性」として、RGB表色系の等色関数で示される理想特性そのものを用いても良い。
【0029】
図2(A),(B)は、図1の構成例における緑色光反射ダイクロイック膜DGの反射特性曲線の一例を示している。緑色光反射ダイクロイック膜DGは、その反射特性曲線の傾きが、430nm以上670nm以下の波長範囲内で立ち上がる部分では、図2(A)に示したように、理想的な緑色の分光特性の短波長側の特性曲線に沿う形で低反射率から高反射率に変化をする形状を有するように構成されている。より具体的には、反射特性曲線が、430nm以上670nm以下の波長範囲内において、最低反射率と最高反射率との間で20%から80%に変化する部分では平均傾き値が0.2(%/nm)以上2.0(%/nm)以下となる形状を有していることが好ましい。
【0030】
緑色光反射ダイクロイック膜DGはまた、図2(B)に示したように、430nm以上670nm以下の波長範囲内で立ち下がる部分では、理想的な緑色の分光特性の長波長側の特性曲線に沿う形で高反射率から低反射率に立ち下がる変化をする形状を有するように構成されている。より具体的には、430nm以上670nm以下の波長範囲内において、最高反射率と最低反射率との間で80%から20%に変化する部分では平均傾き値が−2.0(%/nm)以上−0.2(%/nm)以下となる形状を有していることが好ましい。
【0031】
第2のプリズム20は、第1の面21、第2の面22、および第3の面23を有している。この色分解光学系1は、第1のプリズム10と第2のプリズム20との間に空気間隔が設けられておらず、第1のプリズム10の第2の面12と第2のプリズム20の第1の面21とが、緑色光反射ダイクロイック膜DGを介して直接密着されている。言い換えると、第1のプリズム10における緑色光反射ダイクロイック膜DGが設けられた面と第2のプリズム20における光の入射面とが、空気間隔を空けずに互いに密着されている。
【0032】
第2のプリズム20の第3の面23は光射出面である。この射出面にはトリミングフィルタ52が設けられている。このトリミングフィルタ52には、第1のプリズム10におけるトリミングフィルタ51と同様、特性調整用のダイクロイック膜は設けられておらず、その代わりに、トリミングフィルタ52の光射出面にゴースト・フレア防止用の反射防止膜52ARが形成されている。なお、トリミングフィルタ52を設けることなく、第2のプリズム20の第3の面23に直接、反射防止膜52ARを形成するようにしても良い。
【0033】
第2のプリズム20の第2の面22には、第2のダイクロイック膜としての青色光反射ダイクロイック膜DBが形成されている。青色光反射ダイクロイック膜DBは、第2の色光成分として青色光LBを反射し、赤色光LRを透過する膜構成とされている。青色光反射ダイクロイック膜DBは、波長に対する透過率を示す透過特性曲線の傾きが、色再現媒体の3原色の色度座標から換算されXYZ表色系の等色関数に基づいて決められた理想的な赤色の分光特性の短波長側の特性曲線に沿う形状を有していることが好ましい。ここでいう「理想特性」とは、従来から知られている例えば図19に示したような特性であり、色再現媒体の3原色の色度座標から換算され、XYZ表色系の等色関数の一次変換により求めることができる。また、「理想特性」として、RGB表色系の等色関数で示される理想特性そのものを用いても良い。
【0034】
青色光反射ダイクロイック膜DBはまた、緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性と関連付けられた特性であることが好ましい。図3は、図1の構成例における青色光反射ダイクロイック膜DBの透過特性曲線の一例を示している。青色光反射ダイクロイック膜DBの波長に対する透過率を示す透過特性曲線は、最低透過率と最高透過率との間の透過率範囲W1内で20%から80%に立ち上がる変化をする部分を有している。この青色光反射ダイクロイック膜DBの透過特性曲線の20%から80%に立ち上がる変化をする部分が、緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性と関連付けられた所定の波長領域W3に含まれていることが好ましい。ここでいう所定の波長領域W3は、緑色光反射ダイクロイック膜DGの透過特性曲線において最低透過率と最高透過率との間の透過率範囲W2内で、透過率が80%となる2つの波長点で挟まれた領域である。なお、図3における「20%」および「80%」とは、各透過特性曲線における最低透過率と最高透過率との差分における割合を示した値である。
【0035】
第3のプリズム30は、第1の面31、および第2の面32を有している。第3のプリズム30は、青色光反射ダイクロイック膜DBを介して第2のプリズム20に接合されている。より詳しくは、第2のプリズム20の第2の面22と、第3のプリズム30の第1の面31とが青色光反射ダイクロイック膜DBを介して接合されている。第3のプリズム30の第2の面32は光射出面である。この射出面にはトリミングフィルタ53が設けられている。このトリミングフィルタ53には、第1のプリズム10におけるトリミングフィルタ51と同様、特性調整用のダイクロイック膜は設けられておらず、その代わりに、トリミングフィルタ53の光射出面にゴースト・フレア防止用の反射防止膜53ARが形成されている。なお、トリミングフィルタ53を設けることなく、第3のプリズム30の第2の面32に直接、反射防止膜53ARを形成するようにしても良い。
【0036】
IRカットフィルタ3は、第1のプリズム10の前側に配置されている。IRカットフィルタ3は、理想的な分光特性に近い特性をより得やすくするために、視感度に近似した特性を持つ吸収型フィルタで構成されていることが好ましい。また、吸収型フィルタだけでは赤外光を十分に除去できない場合には、赤外光をカットするコートタイプの赤外カットフィルタをさらに備えていても良い。図1では、平板状の吸収型フィルタに赤外光をカットする膜3Rをコートした構成例を示している。なお、IRカットフィルタ3を第1のプリズム10の前側ではなく、赤色光を取り出すプリズム(図1では第3のプリズム30)の光射出面側に配置しても良い。
【0037】
なお、図示しないが、この色分解光学系1において、第1のプリズム10よりも前側に配置され、紫外光をカットする吸収タイプもしくはコートタイプの紫外カットフィルタをさらに備えていても良い。
【0038】
次に、本実施の形態における撮像装置の作用、特に色分解光学系1の光学的な作用および効果を説明する。
【0039】
この撮像装置において、図示しない光源によって照射された図示しない被写体からの被写体光は、撮影レンズ2を介して色分解光学系1に入射される。色分解光学系1では入射光Lを青色光LB、赤色光LR、および緑色光LGの3つの色光成分に分解する。より詳しくは、まず、入射光Lのうち緑色光LGが、緑色光反射ダイクロイック膜DGによって反射され、第1のプリズム10から第1の色光成分として取り出される。また、緑色光反射ダイクロイック膜DGを透過した青色光LBが、青色光反射ダイクロイック膜DBによって反射され、第2のプリズム20から第2の色光成分として取り出される。さらに、緑色光反射ダイクロイック膜DG、および青色光反射ダイクロイック膜DBを透過した赤色光LRが、第3の色光成分として第3のプリズム30から取り出される。色分解光学系1によって分解された各色光は、各色光に対応した設けられた撮像素子4B,4R,4Gに入射する。撮像素子4B,4R,4Gでは、入射した各色光に応じた電気信号を撮像信号として出力する。
【0040】
本実施の形態では、緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性を示す曲線が、理想的な緑色の分光特性の特性曲線に沿う形状を有し、青色光反射ダイクロイック膜DBの特性を示す曲線が、理想的な赤色の分光特性の短波長側の特性曲線に沿う形状を有していることで、プリズムの射出面にダイクロイック膜付きのトリミングフィルタを用いることなく、理想的な分光特性に近い特性が得られる。ダイクロイック膜付きのトリミングフィルタを用いる必要が無くなるので、従来、トリミングフィルタのダイクロイック膜に起因して生じていたゴースト・フレアの発生が抑制される。これらにより、ゴースト・フレアを低減した形での理想的な分光特性を持つ撮像系の実現が可能となる。
【0041】
また、本実施の形態では、青色光反射ダイクロイック膜DBの特性が緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性と関連付けられ、青色光反射ダイクロイック膜DBの透過特性曲線における低透過率から高透過率に変化する部分が、緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性に関連した所定の波長領域W3(図3)内に含まれる。これにより、青色光反射ダイクロイック膜DBで偏光分離が生じたとしても、その偏光分離の影響は緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性に関連付けられた所定の波長領域W3内にほぼ抑えられ、理想的な分光特性に近い特性が得られる。
【0042】
以下、本実施の形態により得られる分光特性を、実際の設計例により示す。
図4は、この色分解光学系1におけるプリズム部分全体(第1、第2および第3のプリズム10,20,30全体)での分光透過特性の一例を示している。また、図5は、この色分解光学系1における緑色光反射ダイクロイック膜DGおよび青色光反射ダイクロイック膜DBの具体的な第1の設計例での膜特性を示している。図5に示した膜特性は、例えば図6および図7に具体的に数値データとして示した膜設計により得られる。ただし、膜物質、層数および各層の膜厚は図6および図7の例に限定されるものではない。
【0043】
図10は、撮像装置におけるプリズム部以外の光学要素の分光特性の一例を示している。図10では、プリズム部以外の光学要素の特性として、図示しない色温度3200Kの光源と、撮影レンズ2と、IRカットフィルタ3と、撮像素子4R,4G,4BとしてのCCDとを示している。図11は、図10に示したプリズム部以外の光学要素の特性と図4に示したプリズム部分全体での特性とを合わせた、撮像装置における光学系全体での総合的な分光透過特性を規格化した形で示している。本実施の形態による設計例での特性は、従来の一般品の特性に比べて理想特性に近づいている。
【0044】
図8は、この色分解光学系1における緑色光反射ダイクロイック膜DGおよび青色光反射ダイクロイック膜DBの具体的な第2の設計例での膜特性を示している。図8に示した設計例における緑色光反射ダイクロイック膜DGは、図5に示した第1の設計例と同じである。図8に示した設計例では、青色光反射ダイクロイック膜DBの特性が図5に示した第1の設計例とは異なっている。図8に示した青色光反射ダイクロイック膜DBの特性は、例えば図9に具体的に数値データとして示した膜設計により得られる。ただし、膜物質、層数および各層の膜厚は図9の例に限定されるものではない。本実施の形態における青色光反射ダイクロイック膜DBの特性は、図8に示したように低透過率帯から高透過率帯に達する移行部分が、ステップ状に立ち上がるような特性となっていても良い。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態に係る色分解光学系1によれば、ダイクロイック膜付きのトリミングフィルタを用いる従来の波長選択手法に比べてゴースト・フレアを低減させることができ、かつ、理想的な分光特性に近い特性を得て色再現性の向上を図ることができる。また、青色光反射ダイクロイック膜DBの透過特性曲線における低透過率から高透過率に変化する部分を、緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性に関連した所定の波長領域内に含めるようにしたので、青色光反射ダイクロイック膜DBで偏光分離が生じたとしても、その偏光分離の影響は緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性に関連付けられた所定の波長領域内にほぼ抑えられる。これにより、青色光反射ダイクロイック膜DBで偏光分離が生じたとしても理想的な分光特性に近い特性が得られる。また、本実施の形態に係る撮像装置によれば、本実施の形態に係る高性能の色分解光学系1によって得られた色光に応じた撮像信号を出力するようにしたので、色再現性の高い撮像を行うことができる。
[第2の実施の形態]
【0046】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。なお、上記第1の実施の形態と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0047】
図12は、本発明の第2の実施の形態に係る色分解光学系1A−1の構成を示している。この色分解光学系1A−1は、図1の色分解光学系1とは色光を取り出す順番が異なっている。この色分解光学系1A−1は、第1のプリズム10で緑色光LG、第2のプリズム20で赤色光LR、第3のプリズム30で青色光LBを取り出す構成とされている。
【0048】
本実施の形態に係る色分解光学系1A−1において、第1のプリズム10の第2の面12には、図1の色分解光学系1と同様、第1のダイクロイック膜として緑色光反射ダイクロイック膜DGが形成されている。本実施の形態における緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性は、図1の色分解光学系1と同様であり、その反射特性曲線は、図2(A),(B)に示した反射特性曲線と同様である。
【0049】
図1の色分解光学系1では、第2のプリズム20の第2の面22には、第2のダイクロイック膜として青色光反射ダイクロイック膜DBが形成されていたが、本実施の形態に係る色分解光学系1A−1では、第2のダイクロイック膜として青色光反射ダイクロイック膜DBに代えて赤色光反射ダイクロイック膜DRが形成されている。本実施の形態において、赤色光反射ダイクロイック膜DRは、第2の色光成分として赤色光LRを反射し、青色光LBを透過する膜構成とされている。本実施の形態における赤色光反射ダイクロイック膜DRは、波長に対する反射率を示す反射特性曲線の傾きが、色再現媒体の3原色の色度座標から換算されXYZ表色系の等色関数に基づいて決められた理想的な赤色の分光特性の短波長側の特性曲線に沿う形状を有していることが好ましい。ここでいう「理想特性」とは、従来から知られている例えば図19に示したような特性であり、色再現媒体の3原色の色度座標から換算され、XYZ表色系の等色関数の一次変換により求めることができる。また、「理想特性」として、RGB表色系の等色関数で示される理想特性そのものを用いても良い。
【0050】
赤色光反射ダイクロイック膜DRはまた、緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性と関連付けられた特性であることが好ましい。図13は、図12の構成例における赤色光反射ダイクロイック膜DRの反射特性曲線の一例を示している。赤色光反射ダイクロイック膜DRの波長に対する反射率を示す反射特性曲線は、最低反射率と最高反射率との間の反射率範囲W1内で20%から80%に立ち上がる変化をする部分を有している。この赤色光反射ダイクロイック膜DRの反射特性曲線の20%から80%に立ち上がる変化をする部分が、緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性と関連付けられた所定の波長領域W3に含まれていることが好ましい。ここでいう所定の波長領域W3は、緑色光反射ダイクロイック膜DGの透過特性曲線において最低透過率と最高透過率との間の透過率範囲W2内で、透過率が80%となる2つの波長点で挟まれた領域である。また、図13における「20%」および「80%」とは、透過特性曲線(または反射特性曲線)における最低透過率(または最低反射率)と最高透過率(または最高反射率)との差分における割合を示した値である。
【0051】
この色分解光学系1A−1では、まず、入射光Lのうち緑色光LGが、緑色光反射ダイクロイック膜DGによって反射され、第1のプリズム10から第1の色光成分として取り出される。また、緑色光反射ダイクロイック膜DGを透過した赤色光LRが、赤色光反射ダイクロイック膜DRによって反射され、第2のプリズム20から第2の色光成分として取り出される。さらに、緑色光反射ダイクロイック膜DG、および赤色光反射ダイクロイック膜DRを透過した青色光LBが、第3の色光成分として第3のプリズム30から取り出される。
【0052】
本実施の形態では、緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性を示す曲線が、理想的な緑色の分光特性の特性曲線に沿う形状を有し、赤色光反射ダイクロイック膜DRの特性を示す曲線が、理想的な赤色の分光特性の短波長側の特性曲線に沿う形状を有していることで、プリズムの射出面にダイクロイック膜付きのトリミングフィルタを用いることなく、理想的な分光特性に近い特性が得られる。ダイクロイック膜付きのトリミングフィルタを用いる必要が無くなるので、従来、トリミングフィルタのダイクロイック膜に起因して生じていたゴースト・フレアの発生が抑制される。これらにより、ゴースト・フレアを低減した形での理想的な分光特性を持つ撮像系の実現が可能となる。
【0053】
また、本実施の形態では、赤色光反射ダイクロイック膜DRの特性が緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性と関連付けられ、赤色光反射ダイクロイック膜DRの反射特性曲線における低反射率から高反射率に変化する部分が、緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性に関連した所定の波長領域W3(図13)内に含まれる。これにより、赤色光反射ダイクロイック膜DRで偏光分離が生じたとしても、その偏光分離の影響は緑色光反射ダイクロイック膜DGの特性に関連付けられた所定の波長領域W3内にほぼ抑えられ、理想的な分光特性に近い特性が得られる。
[第3の実施の形態]
【0054】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。なお、上記第1または第2の実施の形態と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0055】
図14は、本発明の第3の実施の形態に係る色分解光学系1A−2の構成を示している。この色分解光学系1A−2は、図1に示した色分解光学系1に対して、第1のプリズム10よりも前側に配置された偏光解消板55をさらに備えたものである。その他の構成は、図1に示した色分解光学系1と同様である。偏光解消板55は、入射光の特定方向への偏光を解消するためのものである。
【0056】
図15は、偏光解消板55を設けなかった場合のプリズム部分全体(第1、第2および第3のプリズム10,20,30全体)での、偏光成分ごとの分光透過特性の一例を示している。入射光の成分が例えば特定の直線偏光成分に偏っていると、入射光が無偏光状態である場合に比べて分光特性が変化してしまう。図15には、入射光として互いに直交する直線偏光成分(P偏光およびS偏光)が、それぞれ単独で入射した場合の特性を示している。また、入射光が無偏光である場合の特性を、(P+S)/2として示している。本実施の形態では、第1のプリズム10よりも前側に偏光解消板55を配置していることで、入射光の特定方向への偏光を解消し、図15の(P+S)/2で示したような安定した分光特性を得ることができる。
【0057】
なお、第2の実施の形態における色分解光学系1A−1(図12)に対しても同様に、第1のプリズム10よりも前側に偏光解消板55を設けるようにしても良い。
[第4の実施の形態]
【0058】
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。なお、本実施の形態に係る色分解光学系の基本的な構成は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0059】
本実施の形態に係る色分解光学系は、図1に示した色分解光学系1における、赤色光を取り出すプリズム(第3のプリズム30)の射出面側に設けられたトリミングフィルタ53の特性を、赤色光を透過すると共に、青色光および緑色光を遮断する吸収フィルタの特性にしたものである。その他の構成は、図1に示した色分解光学系1と同様である。
【0060】
図16は、本実施の形態に係る色分解光学系を撮像装置に適用した場合における撮像光学系全体での総合的な分光透過特性を示している(図中、R,G,Bで示した特性)。図16にはまた、比較のためにトリミングフィルタ53の特性を、赤色光を透過すると共に、青色光および緑色光を遮断する吸収フィルタの特性にしなかった場合の特性を示す(図中、実線(TMRless)の特性)。トリミングフィルタ53の特性を上記吸収フィルタの特性にしなかった場合には、赤色の撮像素子4Rに青色光および緑色光が漏れ込み不要成分が混ざるので、色再現性が悪くなる。本実施の形態では、赤色光を取り出すプリズムの射出面側に、青色光および緑色光を遮断する特性のトリミングフィルタ53を配置していることで、不要成分の漏れ込みを防ぎ、色再現性を改善することができる。
【0061】
なお、その他の各実施の形態における各構成例に対しても同様に、赤色光を取り出すプリズムの射出面側に、青色光および緑色光を遮断する特性を有するトリミングフィルタを配置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る色分解光学系を備えた撮像装置の一構成例を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る色分解光学系で用いられる緑色光反射ダイクロイック膜DGの短波長側の特性(A)、および長波長側の特性(B)についての説明図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る色分解光学系で用いられる青色光反射ダイクロイック膜DBの特性についての説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置におけるプリズム部分の分光特性を示す特性図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る色分解光学系で用いられるダイクロイック膜の第1の設計例を示す特性図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る色分解光学系で用いられる緑色光反射ダイクロイック膜DGの膜設計の数値例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る色分解光学系で用いられる青色光反射ダイクロイック膜DBの膜設計の第1の数値例を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る色分解光学系で用いられるダイクロイック膜の第2の設計例を示す特性図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る色分解光学系で用いられる青色光反射ダイクロイック膜DBの膜設計の第2の数値例を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置におけるプリズム部以外の光学要素の分光特性を示す特性図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態における規格化された総合的な分光特性を示す特性図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る色分解光学系を備えた撮像装置の一構成例を示す断面図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る色分解光学系で用いられる青色光反射ダイクロイック膜DBの特性についての説明図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る色分解光学系を備えた撮像装置の一構成例を示す断面図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係る撮像装置におけるプリズム部分の分光特性を示す特性図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態に係る撮像装置における規格化された総合的な分光特性を示す特性図である。
【図17】従来のフィリップス型の色分解光学系の構成例を示す断面図である。
【図18】理想特性を求めるための3原色の色度座標を示すxy色度図である。
【図19】規格化された理想特性を示す特性図である。
【図20】従来の一般的な色分解光学系の分光特性を示す特性図である。
【図21】従来の色分解光学系で用いられているダイクロイック膜の特性の一例を示す特性図である。
【図22】従来の色分解光学系において理想特性に近似した分光特性を示す特性図である。
【図23】従来の色分解光学系において生ずる多重反射についての説明図である。
【図24】従来のギャップレス型の色分解光学系の構成例を示す断面図である。
【図25】ダイクロイック膜の分光透過特性の一例を示す特性図である。
【符号の説明】
【0063】
L…入射光、LB…青色光成分、LR…赤色光成分、LG…緑色光成分、DB…青色光反射ダイクロイック膜、DR…赤色光反射ダイクロイック膜、DG…緑色光反射ダイクロイック膜、1,1A−1,1A−2…色分解光学系、2…撮影レンズ、3…IRカットフィルタ、4R,4G,4B…撮像素子、10…第1のプリズム、20…第2のプリズム、30…第3のプリズム、51…第1のトリミングフィルタ、52…第2のトリミングフィルタ、53…第3のトリミングフィルタ、51AR…第1の反射防止膜、52AR…第2の反射防止膜、53AR…第3の反射防止膜、55…偏光解消板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を緑色光、青色光、および赤色光の少なくとも3つの色光成分に分解する色分解光学系であって、
光の入射側から順に、
第1のダイクロイック膜を有し、前記第1のダイクロイック膜によって反射された第1の色光成分を取り出す第1のプリズムと、
第2のダイクロイック膜を有し、前記第1のダイクロイック膜を透過し前記第2のダイクロイック膜によって反射された第2の色光成分を取り出す第2のプリズムと、
前記第1および第2のダイクロイック膜を透過した第3の色光成分を取り出す第3のプリズムと
を少なくとも備え、
前記第1のダイクロイック膜が前記第1の色光成分として緑色光を反射する膜構成とされると共に、前記第2のダイクロイック膜が前記第2の色光成分として青色光を反射する膜構成とされ、かつ、
前記第1のダイクロイック膜の波長に対する反射率を示す反射特性曲線の傾きが、理想的な緑色の分光特性の短波長側および長波長側の特性曲線に沿う形状を有すると共に、
前記第2のダイクロイック膜の波長に対する透過率を示す透過特性曲線が、最低透過率と最高透過率との間の透過率範囲で20%から80%に立ち上がる変化をする部分を有し、
前記第2のダイクロイック膜の透過特性曲線の20%から80%に立ち上がる変化をする部分が、前記第1のダイクロイック膜の波長に対する透過率を示す透過特性曲線において最低透過率と最高透過率との間で透過率が80%となる波長点で挟まれた波長領域内に含まれている
ことを特徴とする色分解光学系。
【請求項2】
入射光を緑色光、青色光、および赤色光の少なくとも3つの色光成分に分解する色分解光学系であって、
光の入射側から順に、
第1のダイクロイック膜を有し、前記第1のダイクロイック膜によって反射された第1の色光成分を取り出す第1のプリズムと、
第2のダイクロイック膜を有し、前記第1のダイクロイック膜を透過し前記第2のダイクロイック膜によって反射された第2の色光成分を取り出す第2のプリズムと、
前記第1および第2のダイクロイック膜を透過した第3の色光成分を取り出す第3のプリズムと
を少なくとも備え、
前記第1のダイクロイック膜が前記第1の色光成分として緑色光を反射する膜構成とされると共に、前記第2のダイクロイック膜が前記第2の色光成分として赤色光を反射する膜構成とされ、かつ、
前記第1のダイクロイック膜の波長に対する反射率を示す反射特性曲線の傾きが、理想的な緑色の分光特性の短波長側および長波長側の特性曲線に沿う形状を有すると共に、
前記第2のダイクロイック膜の波長に対する反射率を示す反射特性曲線が、最低反射率と最高反射率との間の反射率範囲で20%から80%に立ち上がる変化をする部分を有し、
前記第2のダイクロイック膜の反射特性曲線の20%から80%に立ち上がる変化をする部分が、前記第1のダイクロイック膜の波長に対する透過率を示す透過特性曲線において最低透過率と最高透過率との間で透過率が80%となる波長点で挟まれた波長領域内に含まれている
ことを特徴とする色分解光学系。
【請求項3】
前記第1のプリズムにおける前記第1のダイクロイック膜が設けられた面と前記第2のプリズムにおける光の入射面とが空気間隔を空けずに互いに密着されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の色分解光学系。
【請求項4】
前記第1のダイクロイック膜の反射特性曲線の傾きが、430nm以上670nm以下の波長範囲内で立ち上がる部分では、前記理想的な緑色の分光特性の短波長側の特性曲線に沿う形で低反射率から高反射率に変化をする形状を有し、
430nm以上670nm以下の波長範囲内で立ち下がる部分では、前記理想的な緑色の分光特性の長波長側の特性曲線に沿う形で高反射率から低反射率に立ち下がる変化をする形状を有する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の色分解光学系。
【請求項5】
前記第1のダイクロイック膜の反射特性曲線が、430nm以上670nm以下の波長範囲内において、最低反射率と最高反射率との間で20%から80%に変化する部分では平均傾き値が0.2(%/nm)以上2.0(%/nm)以下となる形状を有すると共に、
430nm以上670nm以下の波長範囲内において、最高反射率と最低反射率との間で80%から20%に変化する部分では平均傾き値が−2.0(%/nm)以上−0.2(%/nm)以下となる形状を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の色分解光学系。
【請求項6】
前記理想的な分光特性は、RGB表色系の等色関数で示される理想特性である
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の色分解光学系。
【請求項7】
前記理想的な分光特性は、色再現媒体の3原色の色度座標から換算され、XYZ表色系の等色関数の一次変換で示される理想特性である
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の色分解光学系。
【請求項8】
前記第1のプリズムよりも前側に配置され、赤外光をカットするコートタイプの赤外カットフィルタをさらに備えた
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の色分解光学系。
【請求項9】
前記第1のプリズムよりも前側に配置され、紫外光を遮断する紫外カットフィルタをさらに備えた
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の色分解光学系。
【請求項10】
少なくとも1つのプリズムの射出面に反射防止膜が施されている
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の色分解光学系。
【請求項11】
前記第1のプリズムよりも前側に配置され、入射光の特定方向への偏光を解消する偏光解消板をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の色分解光学系。
【請求項12】
赤色光を取り出すプリズムの射出面側に配置され、青色光および緑色光を遮断し、赤色光を透過する吸収フィルタをさらに備えた
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の色分解光学系。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の色分解光学系と、
前記色分解光学系によって分解された各色光に対応して設けられ、入射した各色光に応じた電気信号を出力する撮像素子と
を備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−86165(P2009−86165A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254184(P2007−254184)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】