説明

色合わせのためのカラーツールおよび方法

【課題】角度色彩特性を示すコーティングの色を合わせるための改良されたツールを提供する。
【解決手段】物品上のコーティングの色と合わせるためのツール10が開示される。これらのツールは、(a)見掛け上の角度特性を示すコーティングを含む色票20、および(b)色票の少なくとも一辺30に直接隣接して配置される窓40を含み、ここで、この窓は、観察者が、下にある物品のコーティングの見掛け上の角度特性を見、そして、この物品のコーティングの見掛け上の角度特性と、色票上のコーティングの見掛け上の角度特性とを比較するのに十分な寸法を有する。また、そのような複数のカラーツールを有するページを1ページ以上含むペイントチップ掲載本、および、そのようなカラーツールを利用して、物品上のコーティングの色と合わせるための方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願への相互参照)
本願は、2006年11月10日に出願された米国仮特許出願第60/865,255号の利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、物品上のコーティングの色と合わせるために使用され得るツール、および、物品上のコーティング、例えば、乗物(修理中の乗物を含む)の塗装の色と合わせるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景情報)
損傷した車本体が修理されるとき、修理範囲はしばしば再塗装されなければならない。修理範囲の色が車の残りの部分の色と合い、その結果、修理範囲が観察者にとって区別できないことがしばしば重要である。
【0004】
修理者が色合わせを達成するのを援助するために一般的に使用される1つの方法は、色票の使用を伴う。色票は、色が被覆されたパネルであり、利用可能な塗料の色を表す。これらの色票は、例えば、様々な乗物製造業者にとってのモデルイヤーの主要な色のそれぞれに対する色票を含み得るペイントチップ掲載本(paint chip book)の中にしばしば含まれる。
【0005】
ペイントチップ掲載本を用いて色合わせを達成するために、修理者は、利用可能な色票を視覚的に検査し、乗物の色と色票の色を比較し得る。この工程において修理者を援助するために、穴のある色票が時折提供される。そのようなペイントチップを含むペイントチップ掲載本中のページの例として、図1aおよび図1bを示す。明らかなように、これらの先行技術のツールにて提供される色票は、その色票の内部に穴がある。したがって、修理者は修理される乗物本体に対して色票を置き得、視覚的に色票の色と乗物本体の色を比較し得る。修理者は、最も良く合った色を識別し、選択した色に一致するコーティング処方物を得ようと試みる。
【0006】
しかしながら、そのような先行技術の色票はしばしば要求を満たさない。理解されるように、多くの乗物のコーティングは、見掛け上の角度特性(gonio−apparent property)を有するコーティングを結果としてもたらす干渉効果を生み出す金属片および/または金属顔料を含み、その結果、上記コーティングが角度依存性の色変化の特性、すなわち、色が、入射光の角度が変化する際、すなわち、観察者の見る角度が変わるにつれて変化する特性を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上で記載されたペイントチップ掲載本に含まれる先行技術の色票は、しばしば車本体のコーティングの場合のような、見掛け上の角度特性を有するコーティングを処理するとき、塗料の色合わせにしばしば適さない。特に、色票の穴のサイズと位置は、修理者が、修理される乗物本体の色の変化とペイントチップの色の変化の両方をさまざまな角度で見る場合、両者の色の変化を観察および比較することを可能にするのに十分でない。さらには、そのような色票が載せられている基材の白色は、ヒトの目が色票に対して較正する能力に影響を与え得る。
【0008】
結果として、色票およびそのような色票を含むペイントチップ掲載本を含め、角度色彩特性(gonio−chromatic property)を示すコーティングの色を合わせるための改良されたツールを提供することが望ましい。また、そのようなツールを利用する角度色彩特性を示すコーティングの色を合わせるための改良された方法を提供することも好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特定の点において、本発明は物品上のコーティングの色と合わせるためのツールに関しており、ここで、上記コーティングは見掛け上の角度特性を示す。そのようなツールは以下:(a)見掛け上の角度特性を示すコーティングを含む色票;および(b)色票の少なくとも一辺に直接隣接して配置される窓であって、色票に隣接する一辺の少なくとも50%の長さを有する窓、を含む。
【0010】
他の点において、本発明は、1ページ以上からなるペイントチップ掲載本に関しており、ここで、そのページは複数のカラーツールを含む。上記カラーツールは、以下:(a)見掛け上の角度特性を示すコーティングから構成される色票;および(b)色票の少なくとも一辺に直接隣接して配置される窓であって、色票に隣接する一辺の少なくとも50%の長さを有する窓、を含む。
【0011】
また、本発明は、物品(例えば、修理中の乗物)上のコーティングの色と合わせるための方法に関する。この方法は以下:(a)物品の表面に対してカラーツールを置く工程であって、このカラーツールは以下(i)(ii)を含む工程:(i)見掛け上の角度特性を示すコーティングを含む色票;および(ii)色票の少なくとも一辺に直接隣接して配置される窓であって、この窓は、色票に隣接する一辺の少なくとも50%の長さを有する;ならびに(b)上記窓を通して複数の視角で物品の色を観察する工程、を包含する。
【0012】
また、本発明は、本発明のカラーツールを利用して、物品(例えば、修理中の乗物)上の塗装を再仕上げする方法に関連する。
例えば、本発明は以下を提供する。
(1)物品上のコーティングの色と合わせるためのツールであって、以下:
(a)見掛け上の角度特性を示すコーティングを含む色票;および
(b)該色票の少なくとも一辺に直接隣接して配置される窓であって、隣接する該色
票の一辺の少なくとも50%の長さを有する窓、
を含むツール。
(2)前記見掛け上の角度特性を示すコーティングが金属の印象を与える顔料を含む、項目1に記載のツール。
(3)前記金属の印象を与える顔料がアルミニウム、亜鉛、銅、真鍮、鉛、青銅、および/または、ステンレス鋼を含む、項目2に記載のツール。
(4)前記見掛け上の角度特性を示すコーティングが干渉顔料を含む、項目1に記載のツール。
(5)前記色票が正方形または長方形の形状である、項目1に記載のツール。
(6)前記窓が、隣接する前記色票の一辺の少なくとも75%の長さを有する、項目1に記載のツール。
(7)前記窓が、隣接する前記色票の一辺の少なくとも90%の長さを有する、項目6に記載のツール。
(8)前記窓が、隣接する前記色票の一辺の少なくとも100%の長さを有する、項目7に記載のツール。
(9)基材上に置かれた項目1に記載の複数のカラーツールを含むページを1ページ以上含む、ペイントチップ掲載本。
(10)前記基材が灰色の紙である、項目9に記載のペイントチップ掲載本。
(11)物品上のコーティングの色と合わせるための方法であって、以下:
(a)該物品の表面に対してカラーツールを置く工程であって、該カラーツールは以下:
(i)見掛け上の角度特性を示すコーティングを含む色票;および
(ii)該色票の少なくとも一辺に直接隣接して配置される窓を含み、ここで、該窓は、隣接する該色票の一辺の少なくとも50%の長さを有し;ならびに
(b)該窓を通して複数の視角で該物品の色を観察する工程、
を包含する。
(12)項目11に記載の方法であって、
(c)前記物品の色と最も良く合う色票を識別する工程をさらに包含する、
方法。
(13)項目12に記載の方法であって、
(d)選択された色票に一致するコーティング処方物を識別する工程をさらに包含する、
方法。
(14)項目13に記載の方法であって、
(e)前記物品に前記識別されたコーティング処方物を塗布する工程をさらに包含する、
方法。
(15)前記見掛け上の角度特性を示すコーティングが金属の印象を与える顔料を含む、項目11に記載の方法。
(16)前記金属の印象を与える顔料がアルミニウム、亜鉛、銅、真鍮、鉛、青銅、および/または、ステンレス鋼を含む、項目15に記載の方法。
(17)前記色票が正方形または長方形の形状である、項目11に記載の方法。
(18)
前記窓が、隣接する前記色票の一辺の少なくとも75%の長さを有する、項目11に記載の方法。
(19)前記窓が、隣接する前記色票の一辺の少なくとも90%の長さを有する、項目18に記載の方法。
(20)前記窓が、隣接する前記色票の一辺の少なくとも100%の長さを有する、項目19に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1aおよび図1bは、先行技術の特定のカラーツールを示す。
【図2】図2は、本発明の特定の実施形態に従う複数のカラーツールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
以下の詳細な説明の目的のために、本発明は、そうでないと特に明記される場合を除き、様々な代替の変更および工程の順序(step sequence)を想定し得ることが理解される。さらに、いずれの実施例も除いて、または他に示される場合を除いて、例えば、本明細書および特許請求の範囲において使用される、例えば、材料の量を表記する、全ての数字は、全ての事例において「約」という用語によって修飾されるものとして理解される。したがって、反対に指示されない場合、以下の明細書、および添付される特許請求の範囲に示される数値パラメータは、本発明により得られる所望の特性に依存して変わり得る近似値である。最低限、特許請求の範囲に均等論を適用することを制限する試みとしてではなく、それぞれの数値パラメータは少なくとも、報告される有効桁数を考慮に入れ、そして、一般的な丸めの技術を適用することにより解釈されるべきである。
【0015】
本発明の広範な範囲を示す数値範囲および数値パラメータは近似値であるにもかかわらず、本明細書の実施例中で示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、それらのそれぞれの試験測定において見出される標準的な変動の結果として必然的に生じる特定の誤差を、本質的に含む。
【0016】
また、本明細書中で挙げられるいずれの数値範囲も、その中に組み込まれる全ての下位範囲を包含することが意図されていることを理解されるべきである。例えば、「1〜10」という範囲は、挙げられた最小値1と挙げられた最大値10の間(1と10を含む)の全ての下位範囲、すなわち、1以上の最小値と10以下の最大値を有する全ての下位範囲を包含することが意図されている。
【0017】
本願において、特に別に述べられない場合は、単数形の使用は複数形の使用を含み、複数は単数を含む。加えて、本願において、特に別に述べられない場合は、たとえ「および/または」が特定の事例で明確に使用され得るとしても、「または」の使用は「および/または」を意味する。
【0018】
上で述べられたように、本発明の特定の実施形態は、コーティングの色と合わせるためのツールに関する。本明細書中で使用される場合、「ツール」という用語は、所望の結果を達成するために使用されるデバイスを指す。本発明において、「所望の結果」は物品上のコーティングの色と合わせることであり、ここで、上記コーティングは、見掛け上の角度特性を示す。本明細書中で使用される場合、「見掛け上の角度特性」という用語は、角度依存性の色変化の特性、すなわち、入射光の角度の変化する際、すなわち、観察者の見る角度が変化するにつれて、色が変化する特性を示すコーティングの外観を指す。
【0019】
特定の実施形態において、本発明のツールは色票を含む。本明細書中で使用される場合、「色票」という用語は、カラーコーティングされたパネルを指す。本明細書中で利用される色票は、見掛け上の角度特性を示すコーティングが含まれる。この見掛け上の角度特性は、例えば、金属の印象を与える顔料(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅、真鍮、鉛、青銅、ステンレス鋼などの粒子)の存在、ならびに/または、干渉顔料(例えば、反射材料の多層(例えば、アルミニウムまたはクロム)、間に挟まれる誘電体材料の層(例えば、金属フッ化物の層、金属酸化物の層、または磁性層)、および吸収層(例えば、雲母または被覆雲母)からなる顔料)の存在の結果として生じ得る。特定の実施形態において、本明細書中の図に示されるように、そのような色票は、必すではないが、しばしば正方形または長方形の形状である。
【0020】
本発明のカラーツールの特定の実施形態において、窓は色票の少なくとも一辺に直接隣接して配置される。本明細書中で使用される場合、「窓」という用語は、開口部を指す。本明細書中で使用される場合、「直接隣接する」という用語は、観察者が、色票を物品の表面に対して置いたとき、色票および下にある物品を連続して見るために、窓と窓に隣接する色票の一辺との間に表面または構成物が存在しないことを意味する。
【0021】
本発明のカラーツールにおいて、窓は、観察者が、下にある物品上のコーティングの見掛け上の角度特性を見て、それを色票上のコーティングの見掛け上の角度特性と比較するのに十分な寸法を有する。したがって、特定の実施形態において、窓は、窓に隣接する色票の一辺の少なくとも50%の長さ、例えば、少なくとも75%、または、いくつかの場合において、少なくとも90%、または、少なくとも100%の長さを有する。特定の実施形態において、窓の幅(長さに対して垂直方向の寸法)は窓の長さの少なくとも3分の1、例えば、窓の長さの少なくとも50%である。
【0022】
ここで図2が参照され、そこに、本発明の特定の実施形態に一致する複数のカラーツールを含むペイントチップ掲載本のあるページが示されている。本明細書中で使用される場合、「ペイントチップ掲載本」という用語は、複数のカラーツールを含むシート状の紙または他の材料の集合体を指し、ここで、シートが一緒に束ねられ一冊の本となる。特定の実施形態において、「ペイントチップ掲載本」は色相環ではない。
【0023】
明らかなように、描かれているツール10は見掛け上の角度特性を示すコーティングを含む色票20を含む。これらの実施形態において、上記色票は、配置されている窓40に直接隣接する一辺30を有する正方形の一般的形状である。これらの実施形態において、窓40は、直接隣接する側の色票の一辺の長さの約100%の長さを有する。
【0024】
さらに図2を参考にしながら、図2に示されるペイントチップ掲載本のページは、基材50上に置かれた複数の色票20を含むことが分かる。基材50は、本のページを形成する任意の適切な材料(例えば、紙、プラスチックなど)を含み得る;しかし、最も使用される基材はある種の紙である。さらに、紙の色は所望される任意の色(例えば、白)であり得る。しかし、特定の実施形態において、基材50は、図2に示されるように灰色である。本明細書中で使用される場合、「灰色」という用語は、黒と白の間の中間無彩色(neutral achromatic color)、すなわち、無色相色(hueless color)を指す。実際に、本発明の色票の本のページに対して灰色の基材の使用することで、白色基材上に与えられた色票に比べて、灰色基材上の色票に対しての方がヒトの目がより良く較正することが可能になることが発見されてきた。
【0025】
上で示されたように、本発明はまた、物品、例えば乗物(例えば、修理中の乗物を含む)上のコーティングの色と合わせるための方法に関する。これらの方法は、以下:(a)物品の表面に対して、上記の型のカラーツールを置く工程;および(b)窓を通して複数の視角で物品の色を観察する工程、を包含する。これらの方法において、上記のように物品の色を観察した後、使用者は次いで、物品の色に対して最も良く合う色票を識別することが可能となる。使用者は次いで、選択した色票に一致するコーティング処方物を識別し得、再仕上げする工程の一部としてコーティング処方物を物品へ塗布し得る。本明細書中で使用される場合、「再仕上げする」という用語は、表面を改装する動作、修復する動作、もしくは、修理する動作、または、物品の仕上げ、すなわち、自動車修理の場合には、例えば、表面の調整、または、そのような修理に関連する物品の仕上げを指す。
【0026】
上記の実施形態に対して本発明の広範な概念から逸脱すること無しに変更がなされ得ることは当業者によって理解される。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されないが、添付される特許請求の範囲により規定されるような本発明の趣旨および範囲内である改変を含むことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−7755(P2013−7755A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−189841(P2012−189841)
【出願日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【分割の表示】特願2009−536456(P2009−536456)の分割
【原出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ,インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】