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色変換器
説明

色変換器

【課題】 投入光の色の成分を変換および調整可能な色変換器を提供すること。
【解決手段】 本発明による色変換器は、短波長成分および長波長成分を有する投入光の波長を変換して変換光を発し、投入光の短波長成分を吸収して長波長成分に変換して変換光を発する蛍光体からなり、変換光における波長4.0×10nmから5.0×10nmの波長の青色光成分の光量子束(PPF(B))と、波長6.0×10nmから7.0×10nmの波長の赤色成分の光量子束(PPF(R))との比(PPF(B)/PPF(R))は、0.05以上0.4以下の範囲であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投入光の波長を変換して発光する色変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜、果物、花木などの植物の育成は屋外で行うのが一般的であるが、植物に適した環境を整えるために、温室やビニールハウスを用いた人工的な育成も行われている。この場合、植物に適した光の波長や量を制御する目的で、太陽光に替えて人工的な光が用いられることもある。人工的な光としては、白熱電球、蛍光ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプなどの光源が用いられてきた。さらに、エネルギー効率に優れる発光ダイオード(LED)を用いた植物栽培方法が知られている(例えば、特許文献1)。LEDを用いた照明として、赤色発光ダイオードと青色発光ダイオードとを併せて用いることにより、育成を促進する手法が知られている(例えば、特許文献2、特許文献3)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
人工光源である白熱電球はエネルギー効率が悪く、投入電力の多くは熱となって温度が上昇する問題があった。蛍光ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプは、光合成に必要な赤色(波長600nmから700nm)と青色(波長450nmから500nm)とのバランスが悪いため、植物の健全な育成に問題があった。赤色LEDと青色LEDとを組み合わせた人工光源では赤色と青色とのバランスの制御は容易であるが、他の光源に比べ素子を得るのが困難である問題があった。さらに、太陽光を用いた植物育成においても青色光と赤色光以外の緑色成分(波長500nmから580nm)とは、植物には吸収されないため照射光のかなりの部分は育成には寄与していなかった。
【0004】
このような事情により、植物育成に有用な光を効率よく得ることが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、このような困難な事情を打破し、投入光の色の成分を適正なものに変換および調整可能な色変換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために、太陽光あるいは安価な人工光源に含まれる短波長成分の光を蛍光体に用い、赤色を主体とする長波長成分に変換することにより、赤色成分と青色成分との比を制御できることを見出し、色変換器に関する発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明による色変換器は、短波長成分および長波長成分を有する投入光の波長を変換して変換光を発し、投入光の前記短波長成分を吸収して前記長波長成分に変換して変換光を発する蛍光体からなり、前記変換光における波長4.0×10nmから5.0×10nmの波長の青色光成分の光量子束(PPF(B))と、波長6.0×10nmから7.0×10nmの波長の赤色成分の光量子束(PPF(R))との比(PPF(B)/PPF(R))は、0.05以上0.4以下の範囲であり、これにより上記目的を達成する。
前記短波長成分の光は、4.5×10nm以上5.8×10nm未満の波長の可視光であり、前記長波長成分の光は、5.8×10nm以上7.0×10nm未満の波長の可視光であってもよい。
前記蛍光体は、Eu、SiおよびNの元素を含んでもよい。
前記蛍光体は、酸素をさらに含んでもよい。
前記蛍光体は、Euを賦活したα型サイアロン、Euを賦活したMAlSiNまたはMSi(ただし、Mは、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群から少なくとも1種選択される元素)、および、これらの固溶体からなる群から選択されてもよい。
前記蛍光体は、前記MがCaであるEuを賦活したCaAlSiNまたはこの固溶体であってもよい。
前記投入光は、白熱電球、蛍光ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプおよびLEDランプからなる群から選択される人工光源からの光であってもよい。
前記投入光は、太陽光であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明による色変換器は、短波長成分を有する投入光を受光し、短波長成分を吸収し、長波長成分に変換し、変換光を発する蛍光体からなる。これにより、投入光の色を変換することができる。蛍光体の量および種類を適宜選択することにより、変換・放出される長波長成分を調整することもできる。さらに、投入光に長波長成分が含まれる場合には、投入光における短波長成分を減少させるとともに投入光における長波長成分を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による色変換器の模式図。
【図2】本発明による植物育成装置の模式図。
【図3】本発明の植物育成方法のフローチャート。
【図4】Euを賦活したCaAlSiN赤色蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図5】実施例23の色変換器透過後のスペクトル。
【図6】実施例8、13、18の4の色変換器透過後のスペクトル。
【図7】Euを賦活したαサイアロン黄色蛍光体の励起スペクトルと発光スペクトル。
【図8】実施例24の色変換器透過後のスペクトル。
【図9】太陽光を光源とする植物育成装置を用いて植物を育成する様子を示す模式図。
【図10】人工光を光源とする植物育成装置を用いて植物を育成する様子を示す模式図。
【図11】太陽光を光源とする別の植物育成装置を用いて植物を育成する様子を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳しく説明する。同様の要素には同様の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明による色変換器の模式図である。
【0012】
本明細書においては、色変換器とは、あるスペクトルを持つ光を当てた場合にそのスペクトルの形状を変化させる機能を持つ光学素子を意図する。この働きにより色変換器から取り出される光は、そのスペクトル形状および色が投入光とは異なる。
【0013】
図1(A)および(B)に示される本発明の色変換器100、100’は、表面または内部に蛍光体110を有する透光体120を備える。色変換器100、100’は、投入光130を受光し、変換光140に変換する。後述するように、色変換器100、100’は、投入光における短波長成分(本明細書では、青色成分または緑色成分とも言う)を減少させるとともに投入光における長波長成分(本明細書では、赤色成分または黄色成分とも言う)を増大させる作用を持つ。即ち、太陽光や人工光源に含まれる光のうち、光合成への寄与が少ない緑色成分や過剰に含まれる青色成分の光を蛍光体で赤色に変換することにより、赤色成分に富む光に変換する作用を持つ。写真撮影などに使われるカラーフィルターは、特定の波長成分を減少させるが、波長成分を増加させる働きはないため、本発明の色変換器はカラーフィルターとは異なる。
【0014】
透光体120は、蛍光体110を保持する働き、および、投入光130を受光し、蛍光体110に当てる働きをする。蛍光体110は、通常、粉末あるいは膜の形態であるので、これを保持することが好ましい。透光体120は、投入光130の損失を少なくするために、光透過率が高いほうが好ましい。
【0015】
本発明の透光体120は、ガラス、光ファイバ、レンズ、プリズム、樹脂、高分子フィルムおよび液体からなる群から選択される。ガラスやアクリル樹脂は光透過率が高いので望ましい。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの高分子フィルムは、安価なので温室などの大規模育成装置に適している。光源と照射物とが離れている場合は、光ファイバを用いるとよい。光源の光を集光、屈折あるいは拡散させる場合は、レンズやプリズムを用いるとよい。蛍光体110を分散させた液体を2枚のガラス板などの間に入れたてもよい。この場合、蛍光体110の濃度を変えることができるので、色変換の程度を制御する場合に適している。
【0016】
本発明の一つの形態として、透光体の替わりに反射体(図示せず)を用いることができる。反射体もまた、透光体120と同様に蛍光体110を保持する働き、および、投入光130を受光し、蛍光体110に当てる働きを有する。反射体の表面に蛍光体110を塗布すると、色変換された変換光140が投入光130とは異なる方向へ照射される。植物の設置場所と投入光130との位置関係で照射方向を変える場合、反射体を用いるとよい。
【0017】
本発明の反射体は、鏡、凹面鏡、凸面鏡および拡散反射物からなる群から選択される。正反射させる場合は平面鏡を用いるとよい。集光させる場合は凹面鏡を、拡散させる場合は凸面鏡または拡散反射物を用いるとよい。また、鏡が太陽の方向を追随するようにコンピュータ制御する方法を併用すれば、効率よく太陽光を植物に照射することができる。
【0018】
本発明の蛍光体110は、短波長成分の光を吸収し、短波長成分の光を長波長成分の光に変換、放出する機能を有する。詳細には、蛍光体110は、450nmから550nmの短波長成分の可視光で励起され、励起光よりも長波長成分の光を放出する蛍光体を用いる。望ましくは、450nm以上580nm未満の短波長成分の青色光または緑色光成分で励起され、580nm以上700nm未満の長波長成分の黄色光または赤色光を放出する蛍光体を用いるとよい。太陽光や可視光照明器具を光源として用い、その赤色成分を富化することを目的としており、上記の励起発光特性が望ましい。
【0019】
本発明の蛍光体110は、Eu、SiおよびNの元素を含む窒化物または酸窒化物蛍光体である。このような蛍光体は、Euを賦活したα型サイアロン、Euを賦活したMAlSiNまたはMSi(ただし、MはMg、Ca、SrおよびBaからなる群から少なくとも1種選択される元素)、および、これらの固溶体結晶からなる群から選択される。これらの蛍光体は、青色および緑色の光(励起光)を吸収し、励起光より長波長の光を発光する。Euを賦活したα型サイアロンは、青色の光を吸収し、560nmから600nmに発光のピーク波長を持つ蛍光体である。Euを賦活したCaAlSiNは、青色および緑色を吸収し、650nm近辺に発光のピーク波長を持つ蛍光体である。Euを賦活したSrAlSiNおよびEuを賦活したBaAlSiNも、青色および緑色を吸収し、橙色や赤色を発光する蛍光体である。Euを賦活したCaSi、Euを賦活したSrSi、Euを賦活したBaSiおよびこれらの固溶体は、青色および緑色を吸収して、600nmから680nmの間の波長に発光ピークを持つ蛍光体である。
【0020】
上記の蛍光体の中で、緑色の吸収に優れるEuを賦活したCaAlSiNを用いると赤色富化効率に優れるので特に良い。選択される蛍光体110の種類および量によっても、赤色富化効率を制御できる。このような制御は、例えば、投入光130と変換光140とのスペクトル形状を比較して行われる。
【0021】
本発明で用いられる投入光130は、少なくとも580nm未満の短波長成分を有する。これにより、色変換器100、100’の蛍光体110において、短波長成分から長波長成分に変換できる。これにより投入光の色変換を達成する。より好ましくは、投入光130は、580nm未満の短波長成分と、580nm以上の長波長成分とを含む。これにより、色変換器100、100’の蛍光体110において、短波長成分は長波長成分に変換され、投入光の長波長成分はそのまま色変換器100、100’を透過し得るので、全体として長波長成分を増大させることができる。
【0022】
特に、投入光130として、450nm以上700nm以下の波長成分の可視光は、植物の育成に適している。より好ましくは、投入光130は、450nm以上580nm未満の短波長成分と、580nm以上700nm以下の長波長成分との両方の成分を含有する光が良い。このような投入光130を本発明の色変換器100、100’に投入すると、450nm以上580nm未満の短波長成分が、580nm以上700nm以下の長波長成分に変換されて、赤色成分に富む光となる。
【0023】
本発明で用いられる投入光130は、白熱電球、蛍光ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプおよびLEDランプからなる群から選択される人工光源からの光である。これらの光源は、450nmから700nmの波長成分の可視光を含有しており、比較的安価に入手することができるため好ましい。
【0024】
投入光130は、人工光源からの光の他に、太陽光であり得る。太陽光は人工的なエネルギーを消費することなく入手できる光源であり、経済性に優れる。太陽光は380nm以上780nm以下の範囲の可視光を万遍なく含んでいるが、光合成に有効な赤色成分の光の量は限られている。本発明の色変換器100、100’を用いることにより、外部から人工的なエネルギーを付加することなく、太陽光の短波長成分を赤色成分に変換することにより、赤色成分に富む光とすることができる。なお、本明細書では、太陽光は太陽光由来の光も含むものとする。太陽光由来の光とは、太陽光を直接用いるのではなく、例えば、太陽光をフィルタリングした光等の太陽光を加工した光である。
【0025】
また、投入光130は、上述の人工光源からの光と、太陽光との組み合わせであってもよい。
【0026】
本発明の色変換器100、100’は、植物育成に最適であるものとして説明してきたが、これに限定されない。色変換器100、100’は、投入光130を色変換する任意の用途に使用され得る。例えば、ステンドグラスに用いると鮮やかな発色の装飾が得られる。また、室内照明やディスプレイ用のカラーフィルターとして用いると特定の色を強調した光が得られ、装飾性にすぐれた光となる。
【0027】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明による植物育成装置の模式図である。
【0028】
植物育成装置200は、短波長成分と長波長成分とを有する投入光210を発する光源220と、色変換器100、100’とを含む。色変換器100、100’は、投入光210を変換光230に変換し、植物240に照射する。色変換器100、100’は、実施の形態1で詳述した色変換器と同一である。
投入光210は、580nm未満の短波長成分と、580nm以上の長波長成分とを有する。さらに、投入光210は、580nm以上700nm以下の光である。この範囲の光が、植物の育成に適している。これにより、実施の形態1で説明した蛍光体110が、短波長成分を長波長成分に変換するので、投入光210における短波長成分が減少し、かつ、長波長成分を富化した変換光230を植物240に照射できる。より好ましくは、短波長成分の光は、450nm以上580nm未満の波長の可視光であり、長波長成分の光は、580nm以上700nm以下の可視光である。このような投入光210の場合に、植物の育成効率を向上させることができる。
【0029】
このような投入光210を発する光源220は、白熱電球、蛍光ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプおよびLEDランプからなる群から選択される人工光源を含む。これらの人工光源から発生される投入光210は、いずれも450nm以上700nm以下の波長成分の可視光であり、比較的安価に入手できるため好ましい。
【0030】
光源220はまた、これら人工光源以外に、または、これら人工光源に加えて、太陽光を含み得る。太陽光もまた、380nm〜780nmの範囲の可視光を万遍なく含み、短波長成分と長波長成分とを有しているが、植物の光合成に有効な赤色成分の光の量は限られる。光源220として、外部からの人工的なエネルギーを付加することなく、このような太陽光を用いることができるので、経済性に優れる。例えば、天候が悪く、太陽光の照射が不十分な場合には、人工光源による投入光210を併用し、天候が良く、太陽光の照射が十分な場合には、太陽光のみを採用してもよい。
【0031】
色変換器100、100’は、実施の形態1と同様であり、表面または内部に蛍光体110を有する透光体または反射体120を備える。蛍光体110および透光体または反射体120は、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0032】
色変換器100、110’に用いられる蛍光体150の量および/または種類は、好ましくは、変換光230における波長450nm〜500nmの波長の青色成分の光量子束(PPF(B))と、波長600nm〜700nmの波長の赤色成分の光量子束(PPF(R))との比(PPF(B)/PPF(R))が、所望の範囲の値となるように調整され得る。特に、0.05以上0.4以下の間の値となるように調整されれば、植物の育成効率がよい。
【0033】
上述したように、本発明による植物育成装置200は、短波長成分と長波長成分とを有する透入光210を発する光源220と、色変換器100、100’とを備える。これにより、投入光210における短波長成分は、色変換器100、100’における蛍光体110によって長波長成分に変換され、投入光210における長波長成分は、色変換器100、100’を透過する。その結果、色変換器100、100’から出射される変換光230は、投入光210に含まれる長波長成分に加えて、変換された長波長成分を有するため、赤色成分が富化され得る。このような変換光230を植物育成に用いるので、植物の育成が促進され得る。さらに、投入光210を発する光源220は、新規の人工光源を開発することなく従来の既存の人工光源を用いることができるので、経済的である。また光源220には、太陽光を用いることができるので、経済的かつ環境に優しい。
【0034】
植物育成装置200は、色変換器100、100’の透光体または反射体120が、太陽等の可動する光源220の方向を追随するようにコンピュータ制御部(図示せず)を設けてもよい。また、投入光210と変換光230との色成分の変化は、それぞれのスペクトルの形状の変化として観察できるので、分光器(図示せず)を設け、所望のPPF(B)/PPF(R)値となるように制御してもよい。
【0035】
(第3の実施の形態)
次に本発明の植物育成方法を説明する。
【0036】
図3は、本発明の植物育成方法のフローチャートである。ステップごとに説明する。
【0037】
ステップS310:投入光を蛍光体に投入する。これにより、蛍光体は投入光の波長成分が変換された変換光を生成する。投入光は、580nm未満の短波長成分と、580nm以上の長波長成分とを有し、特に、450nm〜700nmの波長成分の可視光を含む。この範囲の光が、植物の育成に適している。これにより、後述する蛍光体が短波長成分を長波長成分に変換するので、投入光における短波長成分が減少し、かつ、長波長成分を富化した変換光を植物に照射する。より好ましくは、短波長成分の光は、450nm以上580nm未満の波長の可視光であり、長波長成分の光は、580nm以上700nm以下の可視光である。このような投入光の場合に、植物の育成効率を向上させることができる。
【0038】
なお、このような投入光は、図2を参照して説明した光源220(図2)を用いて得られる。特に、太陽光を用いる方法は、経済性に優れるため好ましい。この場合、太陽光に含まれる赤色成分が富化することにより、植物の育成が促進される。また、太陽光と人工光源による光とを併用する方法では、天候が悪く太陽光の照射が不十分な時は人工光源を併用し、天候が良い場合は太陽光だけで育成することができる。
【0039】
投入光が投入される蛍光体は、投入光に含まれる短波長成分を長波長成分に変換するので、投入光における短波長成分を低減するとともに、投入光における長波長成分を増大するように機能する。さらに詳細には、蛍光体は、投入光のうち光合成への寄与が少ない緑色成分および過剰に含まれる青色成分の光を赤色成分に変換することにより、赤色成分に富む変換光を生成する作用を持つ。これによって、植物育成に効果的な長波長成分に富む変換光が生成され得る。このような蛍光体には、図1を参照して説明した蛍光体110(図1)が用いられ得る。
【0040】
ステップS320:変換光を植物に照射する。変換光は、長波長成分が富化されているので、このような変換光を植物に照射することによって、植物の育成が促進される。変換光の照射は、変換光におけるPPF(B)/PPF(R)の値が、所望の範囲の値となるように調整され得る。特に、0.05以上0.4以下となるように行われれば、植物の育成効率がよい。
【0041】
次に本発明を以下に示す実施例によってさらに詳しく説明するが、これはあくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示したものであって、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
<実施例1〜23>
先ず、赤色蛍光体を作製した。原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93重量%、α型含有量92%の窒化ケイ素粉末、比表面積3.3m/g、酸素含有量0.79重量%の窒化アルミニウム粉末、窒化カルシウム粉末、純度99.9%の酸化ユーロピウム粉末を用いた。組成式Eu0.025Ca0.975AlSiNで示される化合物を得るべく、窒化ケイ素粉末と窒化アルミニウム粉末と窒化カルシウム粉末と酸化ユーロピウム粉末とを、各々33.319重量%、29.209重量%、34.34重量%、3.14重量%となるように秤量し、メノウ乳棒と乳鉢とで10分間混合を行なった。なお、粉末の秤量、混合、成形の各工程は全て、水分1ppm以下酸素1ppm以下の窒素雰囲気を保持することができるグローブボックス中で操作を行った。この混合粉末を窒化ホウ素製のるつぼに入れて黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。焼成の操作は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の速度で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を1MPaとし、毎時500℃で1800℃まで昇温し、1800℃で2時間保持して行った。
【0043】
合成した試料をメノウの乳鉢を用いて粉砕し、CuのKα線を用いた粉末X線回折測定を行った結果、CaAlSiN相であると判定された。この粉末に、波長365nmの光を発するランプで照射した結果、赤色に発光することを確認した。この粉末の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起および発光スペクトルのピーク波長は448nmに励起スペクトルのピークがあり448nmの励起による発光スペクトルにおいて、663nmの赤色光にピークがある蛍光体であることが分かった(図4)。なお、図中325nm付近のシャープなピークは、測定上生じるピークであり実際の発光ではない。
【0044】
製造した蛍光体を用いて、太陽光中の赤色成分を増加させる色変換器を作製した。先ず、信越化学工業製LEDポッティング用シリコーン樹脂約10gに対して表1に示す量の蛍光体を添加して、攪拌および脱泡を行い、均一な混合物を得た。次に、幅28mm長さ48mm厚さ1.3mmのガラス板(ソーダライムガラス)にこの混合物を塗布したものをオーブンに入れ、大気中、90℃で30分間加熱することにより硬化させた。硬化後の樹脂の厚さは約5mmであった。
【0045】
製造した色変換器を通過した太陽光のスペクトルを次の様に測定した。大塚電子製マルチチャンネル分光器MCPD−7000を用い、光ファイバの先端の光入力部を色変換器のガラス面に置き、色変換器を通った太陽光が分光器に取り込まれる様に設置した。図5に実施例23の色変換器を通った光のスペクトルを示す。比較のために色変換器を通さない太陽光のスペクトルも同時に示す。色変換器を通すことにより、太陽光の300nm〜580nmの波長成分の光が減少し、600nm以上の波長成分の光の量が増加した。このように、蛍光体を含有する樹脂を通すことにより、短波長成分の光が減少し長波長成分の光が増加した。
【0046】
図6に実施例8、13、18の色変換器を通った光のスペクトルを示す。比較のために色変換器を通さない太陽光のスペクトルも同時に示す。色変換器を通すことにより、太陽光の300nm〜580nmの波長成分の光が減少し、600nm以上の波長成分の光の量が増加した。
【0047】
表1に実施例1〜23で作製した色変換器を通った光の青色成分、赤色成分、および青色成分と赤色成分の比(B/R)を示す。ここで、青色成分とは、上記のマルチチャンネル分光器で計測された400nm〜500nmの波長成分のフォトン数(単位は10の25乗個)であり、赤色成分とは、上記のマルチチャンネル分光器で計測された600nm〜700nmの波長成分のフォトン数(単位は10の25乗個)である。なお、比較のために同一条件で測定した太陽光の値は、青色成分は2.72、赤色成分は1.94であった。蛍光体の添加量が増加するに従って、青色成分は減少し、赤色成分が増加することが確認された。これに伴い、B/R比は太陽光の1.4から実施例23の0.06まで低下した。この様に、蛍光体の量を変えることにより、青色成分と赤色成分およびB/R比を変化させることができるので、それぞれの植物に適した条件を選択すると良い。
【表1】



【0048】
<実施例24>
先ず、黄色蛍光体を作製した。原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93重量%、α型含有量92%の窒化ケイ素粉末、比表面積3.3m/g、酸素含有量0.79%の窒化アルミニウム粉末、炭酸カルシウム粉末、純度99.9%の酸化ユーロピウム粉末を用いた。組成式Eu0.06Ca0.94SiAl15で示される化合物を得るべく、窒化ケイ素粉末と窒化アルミニウム粉末と炭酸カルシウム粉末と酸化ユーロピウム粉末とを、各々64.897重量%、18.965重量%、14.51重量%、1.628重量%となるように秤量し、窒化ケイ素製乳棒と乳鉢とで10分間混合を行なった。この混合粉末を窒化ホウ素製のるつぼに入れて黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。焼成の操作は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の速度で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を1MPaとし、毎時500℃で1700℃まで昇温し、1700℃で4時間保持して行った。
【0049】
合成した試料をメノウの乳鉢を用いて粉砕し、CuのKα線を用いた粉末X線回折測定を行った結果、αサイアロン相であると判定された。この粉末に、波長365nmの光を発するランプで照射した結果、黄色に発光することを確認した。この粉末の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起および発光スペクトルのピーク波長は372nmに励起スペクトルのピークがあり372nmの励起による発光スペクトルにおいて、580nmの黄色光にピークがある蛍光体であることが分かった(図7)。なお、図中290nmおよび630nm付近のシャープなピークは測定上生じるものであり、実際の蛍光ではない。
【0050】
製造した蛍光体を用いて、太陽光中の赤色成分を増加させる色変換器を作製した。先ず、信越化学工業製LEDポッティング用シリコーン樹脂約10gに対して蛍光体を20質量%添加して、攪拌および脱泡を行い、均一な混合物を得た。次に、型に流し入れて、大気中、90℃で30分間加熱することにより硬化させた。硬化後の樹脂の厚さは約10mmであった。このようにして、樹脂に蛍光体が分散した色変換器を作製した。
【0051】
製造した色変換器を通過した太陽光のスペクトルを実施例23と同様の手法で測定した。図8に色変換器を通った光のスペクトルを示す。比較のために色変換器を通さない太陽光のスペクトルも同時に示す。色変換器を通すことにより、太陽光の300nm〜550nmの波長成分の光が減少し、550nm以上の波長成分の光の量が増加した。このように、蛍光体を含有する樹脂を通すことにより、短波長成分の光が減少し長波長成分の光が増加した。
【0052】
<実施例25>
色変換器を具備する植物育成装置の設計例および植物の育成方法について説明する。図9は太陽光を光源とする植物育成装置を用いて植物を育成する様子を示す模式図である。植物11、12、13が支持台14に置かれている。支持台14はガラス16、17、18により取り囲まれており、温室を形成している。ガラス16、17、18の内側には、Euを賦活したCaAlSiN蛍光体を樹脂に分散させたもの(色変換器)18、19、20が塗布してある。屋外に置かれた温室は、昼間太陽光が当たり、太陽光21はガラスを通った後に色変換器18、19、20を通過する。蛍光体は太陽光中の青色および緑色の成分を吸収して赤色成分の光に変換する。これにより、赤色成分が富化した光22が植物11、12、13に照射される。赤色成分に富む光は、光合成を活性化させて植物の育成を促進する。
【0053】
<実施例26>
別の植物育成装置の設計例および植物の育成方法について説明する。図10は人工光を光源とする植物育成装置を用いて植物を育成する様子を示す模式図である。植物11、12、13が支持台24に置かれている。支持台24は光を透過するプラスチックで作られている。支持台24の上部に蓋23があり、蓋23は、Euを賦活したCaAlSiN蛍光体を樹脂に分散させたものでできている。即ち、蓋は、色変換器である。温室の上部に設置されたメタルハライドランプ25の光は色変換器23を通過する。蛍光体は人工光源中の青色および緑色の成分を吸収して赤色成分の光に変換する。これにより、赤色成分が富化した光26が植物11、12、13に照射される。赤色成分に富む光は、光合成を活性化させて植物の育成を促進する。
【0054】
<実施例27>
さらに別の植物育成装置の設計例および植物の育成方法について説明する。図11は太陽光を光源とする別の植物育成装置を用いて植物を育成する様子を示す模式図である。植物11、12、13が支持台27に置かれている。支持台27には支柱28が接続されており、支柱28の上部には平面鏡30が設置してある。平面鏡30と支柱28とは、3次元の任意の角度に固定できる接続部29を介して接続されており、接続部29は手動により任意の方向に平面鏡30を設置できる。さらに、コンピュータ制御(図示せず)により平面鏡30が常に太陽の方向を向くように制御することもできる。平面鏡30の表面には実施例23で用いた赤色蛍光体をシリコーン樹脂に分散させた樹脂層31が塗布してある。蛍光体は太陽光中の青色および緑色の成分を吸収して赤色成分の光に変換する。これにより、赤色成分が富化した光33が植物11、12、13に照射される。赤色成分に富む光は、光合成を活性化させて植物の育成を促進する。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の色変換器は、投入光中の短波長成分の光を赤色の長波長成分に変換する。特に、投入光が短波長成分および長波長成分を有する場合には、投入光中の赤色成分を富化した光が生成されるので、植物の育成に好適である。本発明は、園芸植物、果樹、野菜、穀物などの収穫増収効果があるため、幅広い農業の発展に寄与することが期待できる。
【符号の説明】
【0056】
11、12、13、240 植物。
14、24、27 支持台。
15、16、17 ガラス板。
18、19、20、23、100、100’ 色変換器。
21、32 太陽光。
22、26、33 色変換器で赤色成分が富化された光。
25 人工光源。
28 支持棒。
29 方向可変接続部。
30 平面鏡。
31 蛍光体を含む樹脂層。
120 透光体
130、210 投入光
140、230 変換光
200 植物育成装置
220 光源
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】特開2001−28947号公報
【特許文献2】特開2002−27831号公報
【特許文献3】特開2004−113160号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短波長成分および長波長成分を有する投入光の波長を変換して変換光を発する色変換器であって、
投入光の前記短波長成分を吸収して前記長波長成分に変換して変換光を発する蛍光体からなり、
前記変換光における波長4.0×10nmから5.0×10nmの波長の青色光成分の光量子束(PPF(B))と、波長6.0×10nmから7.0×10nmの波長の赤色成分の光量子束(PPF(R))との比(PPF(B)/PPF(R))は、0.05以上0.4以下の範囲である、色変換器。
【請求項2】
前記短波長成分の光は、4.5×10nm以上5.8×10nm未満の波長の可視光であり、
前記長波長成分の光は、5.8×10nm以上7.0×10nm未満の波長の可視光である、請求項1に記載の色変換器。
【請求項3】
前記蛍光体は、Eu、SiおよびNの元素を含む、請求項1に記載の色変換器。
【請求項4】
前記蛍光体は、酸素をさらに含む、請求項5に記載の色変換器。
【請求項5】
前記蛍光体は、Euを賦活したα型サイアロン、Euを賦活したMAlSiNまたはMSi(ただし、Mは、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群から少なくとも1種選択される元素)、および、これらの固溶体からなる群から選択される、請求項1に記載の色変換器。
【請求項6】
前記蛍光体は、前記MがCaであるEuを賦活したCaAlSiNまたはこの固溶体である、請求項5に記載の色変換器。
【請求項7】
前記投入光は、白熱電球、蛍光ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプおよびLEDランプからなる群から選択される人工光源からの光である、請求項1に記載の色変換器。
【請求項8】
前記投入光は、太陽光である、請求項1に記載の色変換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−109(P2012−109A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118216(P2011−118216)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【分割の表示】特願2007−14556(P2007−14556)の分割
【原出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】