説明

色彩効果顔料

被覆された色彩効果顔料が層状の小板によってつくられるが、この場合該小板は異なった小板材料の混合物であり、その一つは板状のガラスまたは板状の酸化アルミニウムであり、該顔料は視覚的な均一性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2002年12月31日出願の米国特許出願第10,335,303号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0002】
真珠光沢、金属光沢および/または玉虫色に近い多色効果を与えるために、色彩効果顔料(effect pigment)或いは真珠光沢顔料または真珠層顔料として知られている顔料が使用されることは公知である。色彩効果顔料は、各々が一つまたはそれ以上の反射/透過層で被覆された多数の層状の小板から構成されている。この種の顔料は、特許文献1および2に記載されているようにまず第1に金属酸化物をベースにしており、またその性質の記述は非特許文献1に見出だすことができる。最近になって光学的に変化し得る効果を実現するために他の被覆層を使用することも開発されている。
【0003】
色彩効果顔料の独特の外観は光が何回も反射および透過する結果得られる。小板の基質は通常被膜とは異なった屈折率をもっており、また通常或る程度の透過度をもっている。被膜は小板の表面上に沈積した一つまたはそれ以上の薄いフィルムの形をしている。
【0004】
色彩効果顔料に対してはいくつかの重要な特徴が存在する。その一つは、通常小板の形をした多数の粒子から構成されていることである。種々の大きさおよび形が存在すると真珠光沢をもった外観は著しく減少し、通常この材料がもはや色彩効果顔料として機能しなくなるまで失われる。
【0005】
小板上の被膜の一つの重要な特徴は、最適の真珠状の外観を得るためにはそれが滑らかで均一でなければならないことである。その理由は、もし不規則な表面が生じると光の散乱が起こり、被覆された小板はもはや色彩効果顔料として機能しなくなるからである。
【0006】
これに加えて、被膜は強く小板に接着していなければならない。そうでないと被膜は加工中に分離し、かなり破損して光沢を失う結果になる。小板の上に被膜をつくる際、小板に付着しなかった粒子、または分離してしまった粒子は光を散乱する原因となり、顔料に不透明性を与える。このような小さい粒子が多数存在し過ぎると、真珠光沢をもった外観は減少するか失われる。
【0007】
小板を被覆して光沢、色および色の均一性を保持することは非常に複雑な工程であり、以前から工業的に広く使用されている板状の物質は雲母だけである。即ち歴史的に言えば、薄いフィルムの干渉に基づく大部分の種類の色彩効果顔料は雲母の基質をベースにしたものである。合成物質、例えば合成雲母、酸化アルミニウム、シリカ、およびガラスが出現するに及び、他の基質も使用できることが明らかになった。何故なら、透明度、屈折率、全体としての色、厚さ、および表面と縁の特徴のために、各基質自身が或る種の効果を与えることができるからである。このように被覆された基質の色彩効果顔料は、小板材料の種類を除いて同じ場合、このような考慮のために似てはいるが異なった視覚効果を与える。
【0008】
工業的には、非常に弾力性に富み且つ光学的にも魅力的であり得るから、ガラスの薄片が望ましい。一つの方法ではガラスの薄片は、熔融したガラスを引き伸ばしてシート、ビーズ、またはガラスの管にした後、ガラスを砕いて薄片にすることによりつくられる。得られた薄片は、大きさおよび形が金属酸化物で被覆した真珠光沢をもつ顔料に使用される雲母の小板に似ており、平均粒径は約1〜150μの範囲にあり、厚さは約0.1〜10μである。
【0009】
金属酸化物を被覆したガラスの小板を工業的に製造する実施可能な方法は特許文献3に記載されている。この特許は引用により本明細書に包含される。該特許によれば、AガラスまたはEガラスよりもCガラスの被膜が優先される。Aガラスはソーダライム・ガラスであり、通常窓を作るのに使用され、カリウムに比べナトリウムの含量が多く、また酸化カルシウムを含んでいる。Cガラスは化学ガラスとしても知られており、酸および水分による腐蝕に抵抗性をもった形をしている。Eガラス、即ち電気的な用途に対して設計されたので電気ガラスの名称をもつガラスは、高温に対して非常に安定であるが、化学的な侵食を受けやすい。共通の出願人による特許文献4も参照のこと。
【0010】
特許文献5および6には、800℃以上の軟化点をもつガラスの薄片をベースにした顔料が記載されている。好適なガラスは石英である。非特許文献2には、TiOを含む硼珪酸塩の顔料が記載されている。またガラスの薄片の真珠光沢をもつ顔料を記載した特許文献7も参照のこと。
【0011】
金属酸化物を被覆した雲母の色彩効果顔料および金属酸化物を被覆したガラスの色彩効果顔料は、小板の材料以外は同じであっても、異なった視覚的効果を与える。その理由は、雲母およびガラスは、透過率、屈折率および全体としての色のいずれもが異なっているからである。また、両方の表面は色彩効果顔料として使用するのに十分滑らかではあるが、この二つの基質のうちでガラスの表面の方が滑らかであり、異なった光学的外観を与えるからである。板状の酸化アルミニウムはガラスと同様な滑らかな表面をもっている。色彩効果顔料は光の反射および透過によってその外観がつくられ、透過度および屈折率の差は反射または透過する光の量を異ならせる原因となる。それにも拘わらず、両方のタイプの色彩効果顔料は極めて魅力的であり、商業的な価値をもっている。
【0012】
被覆したガラスの小板の製造は極めて望ましいが、また価格も高くなる。工業的に許容できるためには一般にCガラスが必要であり、このタイプのガラスは高価である。それに加えて、使用するカ焼温度を低く保たなければならない。何故なら、被覆したガラスの小板は約650℃から熔融し始め、一般にガラスの小板は約1重量%が熔融し始めてかなりの量の熔融が起こると大きな塊になり、その大きさおよび不規則な形のために、所望の真珠光沢をもった効果が得られないからである。それぞれ分離した小板から熔融した小板を分ける操作は時間およびコストがかかり、実用的ではない。さらに、低いカ焼温度が必要なことは、この温度を長期間保持しなければならないことを意味し、これによってさらにコストが加わる。
【0013】
これまで、被覆したガラスの色彩効果顔料の製造コストを下げる方法を見出だすことに努力がなされてきた。理論的には、これは被覆したガラスの顔料を被覆した雲母の顔料と配合することによって達成される。しかし、この方法は効果的でないことが分かった。何故なら、この2種の小板材料の間の透明度および屈折率の差、並びに処理変数の相違のために、この2種の配合材料の見かけの色を合わせることは極めて難しいからである。従って実際問題として、配合物の各成分を別々に考えた場合の視覚的な均一性に近い視覚的な均一性をもった配合物を得ることは不可能であった。この結果は当業界の知識から考えれば驚くべきことではない。異なった基質を用いた2種またはそれ以上の色彩効果顔料を一緒にした場合、それぞれの属性が存在してその結果独特の外観が得られる。色彩効果顔料を一緒にすることによる一つの問題は、色の効果は減算的な機構ではなく加算的な機構で生じるから、2種の色彩効果顔料の色の少しの変化でも配合物に種々の程度のぼやけた(washed out)外観を与える可能性があることである。このことは顔料の基本的な外観を駄目にしてしまう。しかし、例えば特許文献8に記載されているように.許容できる程度の隠蔽力および光沢を同時に得ることができるようないくつかの他の属性を達成することも有益である。
【0014】
特許文献9には、酸化鉄を被覆したアルミニウムの薄片および酸化鉄を被覆した雲母の薄片を、予め無色の高い屈折率をもった金属酸化物で被覆しまたは被覆せずに混合した混合物が記載されている。雲母の目的は、これを加えない場合アルミニウムの薄片によって生じる空気中での燃焼および粉塵爆発の危険を減少させることである。この混合物は、流動ベッド中において鉄カルボニルを気相で分解させてアルミニウムおよび雲母の粒子に酸化鉄を一緒に被覆することによってつくられる。この混合物の外観、均一性、またはその他の特性は考慮されていない。
【特許文献1】U.S.3,087,828。
【特許文献2】U.S.3,087,829。
【特許文献3】U.S.5,753,371。
【特許文献4】U.S.6,045,914。
【特許文献5】WO 03/006558 A2。
【特許文献6】WO 02/090448 A2。
【特許文献7】Japanese Patent Publication 11340、1月16日、2001年。
【特許文献8】U.S.6,267,810。
【特許文献9】U.S.5,277,711。
【非特許文献1】Pigment Handbook,第1巻、第2版,829〜858頁,John Wiley & Sons,NY 1988。
【非特許文献2】ENGELHARD REFLECKSTM Pearlescent and Iridescent Pigmentsの2000年版のパンフレット。
【発明の開示】
【0015】
驚くべきことに本発明においては、小板材料の厚さ、屈折率および透明度が異なっているにもかかわらず、基質の小板が異なった板状の材料から成る被覆された色彩効果顔料の視覚的に均一な配合物を得ることができることが見出だされた。また驚くべきことには予め雲母と混合したガラスの小板に関し、被覆されたガラスの小板だけを用いた場合よりもカ焼温度が高く、従ってカ焼を完了する時間を短くでき、さらに製品をの製造コストを低下させ得る方法によって視覚的に均一な製品を製造し得ることが見出だされた。
【0016】
本発明の概要
本発明は少なくとも2種の異なった材料を含んで成る視覚的な均一性を示す色彩効果顔料に関する。該少なくとも2種の異なった材料の各々は該少なくとも2種の異なった材料の全量に関し少なくとも約5〜約95重量%の量で存在している。約5重量%というこの最低量は、純粋でない基質を使用しこのような純粋でない基質を混合物と考えることができる従来法の製品に対し区別を行う値である。本発明においては、下記に説明する予想し得ない結果を達成するために意図的に第2の異なった材料を添加する。
【0017】
他の態様において本発明は、視覚的な均一性をもつ異なった材料の被覆された小板の混合物である色彩効果顔料に関し、また該色彩効果顔料の製造方法に関する。特に、該色彩効果顔料は被覆された層状の小板、好ましくは金属酸化物で被覆された層状の小板の混合物であり、該小板は異なった材料、例えばガラスと雲母の混合物であり、該色彩効果顔料は被覆する前に異なった小板を配合することにより生じる視覚的な均一性を示す。別々に被覆しれ基質を後で配合した基質の組み合わせによっては同じ程度の色の均一性および外観は得られない。
【0018】
本発明の説明
本明細書において使用される「少なくとも2種の異なった材料の被覆された混合物」という言葉は、該少なくとも2種の異なった材料がまず一緒に混合され、次いで該混合物が被覆されたものであることを意味する。
【0019】
本発明に従えば色彩効果顔料は当業界に公知の任意の方法によってつくられる。一例として金属イオンを層状の小板の上に沈澱さた後、被覆された小板をカ焼して金属酸化物で被覆された小板を得ることができる。最も広く使用される金属酸化物は二酸化チタンであり、次には酸化鉄である。他の使用できる酸化物には(但しこれだけではない)錫、クロムおよびジルコニウムの酸化物、並びにこれらの混合物および組み合わせが含まれる。便宜上、この方法の下記の説明においては酸化物の金属として主としてチタンおよび鉄を取り扱うが、他の任意の公知金属または金属の組み合わせを使用することもできるものと了解されたい。
【0020】
金属酸化物の他の有用な組み合わせには硼珪酸カルシウムアルミニウム上にSiOを被覆し、次にTiOを被覆したもの;基質/SiO/Fe;基質/TiO/SiO;基質/TiO/SiO/TiO;基質/TiO/SiO/Fe;:基質/TiO/SiO/Cr;基質/Fe;/SiO;基質/Fe;/SiO/Fe;基質/Fe;/SiO/TiO;基質/Fe;/SiO/Cr;基質/Cr/SiO/Cr;および基質/Cr/SiO/Fe;が含まれる。上記の層の他の組み合わせは当業界の専門家には明らかであろう。
【0021】
性能の特性を強化するための中間層を使用することもできる。有用な中間層にはAl、Ce、Cr、Fe、Mg、Si、Ti、およびZrの水酸化物および酸化物が含まれる。実質的に任意の有機性または無機性の物質が接着の促進、機械的な一体性の保持、製品の強化または他の所望の特性を得るための有用な中間層であることができる。
【0022】
一般にこの方法は、粒子状材料(薄片)を分散させ、酸化チタンまたは酸化鉄の前駆体被膜を薄片の上に生成する前駆体を,この分散物と一緒にする工程を含んでいる。通常、粒子状材料即ち薄片を水に分散させる。水は蒸溜水であることが好ましい。好適に使用される薄片の平均粒径は約3〜約100μの間で変わることができるが、最低約1μまたはそれより以下の小さい薄片、または最大150μの大きな薄片も使用することができる。小板は厚さが約0.1〜10μmでありアスペクト比(平均粒径/厚さ)は少なくとも約10である。水の中における粒子状材料の濃度は約5〜60%の間で変えることができるが、一般に好適な濃度は約10〜20%である。
【0023】
水/粒子状材料のスラリに適当な金属イオン原料を加える。チタンの場合には、塩化チタニルまたは四塩化チタンが好適に使用され、鉄の場合には原料は塩化第二鉄であることが好ましい。チタンまたは鉄を加える際、例えば水酸化ナトリウムのような適当な塩基を用いて得られたスラリのpHを適切なレベルに維持し、粒子状材料の上に二酸化チタンまたは酸化鉄の前駆体を沈澱させる。厚さが増加すると色の干渉が起こる。必要に応じチタンおよび鉄(または他の金属)の水酸化物および/または酸化物の層を逐次的に沈澱させることができる。pHを下げる必要がある場合、塩酸のような酸の水溶液を使用することができる。必要に応じ被覆された小板を洗滌し、乾燥した後、カ焼して最終的な色彩効果顔料にする。
【0024】
二酸化チタンで被覆された製品をつくる場合、アナタ−ゼおよびルチルの両方の結晶変態を使用することができる。二酸化チタンがルチルの形の時に最高の品質と適度な安定性をもった真珠光沢の顔料を得ることができる。雲母およびガラスの両方を含む或る種の基質はアナターゼを使うことを目的とするものであり、従ってルチル製品が望ましい場合には上記の方法を変更する必要がある。ルチル型のTiOを得るのに必要な変更は当業界において公知である。一つの方法では、二酸化チタン前駆体の層をつくる前に粒子状材料の表面の上に錫の水酸化物または酸化物の構成成分を沈澱させる方法が含まれる。層状になった組合せを加工してカ焼する。この方法は米国特許第4,038,099号明細書に詳細に記載されている。この特許は引用により本明細書に包含される。これに代わる一つの方法は米国特許第5,433,779号明細書に記載されている。この特許は引用により本明細書に包含される。この方法は錫を使わずに鉄およびカルシウム、マグネシウムおよび/または亜鉛の存在下において基質の上に二酸化チタン前駆体を沈澱させる方法を含んでいる。ルチルの被膜が好適であるが、アナターゼの被膜をつくることもでき、これも本発明の範囲内に入る。
【0025】
他の被覆方法、例えば化学蒸着法も使用することができる。
【0026】
最近になって光学的に変化し得る色彩効果顔料が開発された。これらの顔料は、反射層(例えば銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、またはこれらの合金)で被覆された基質を用いてつくられ、該層の上には典型的には入射光の入射角に依存して可変長の光の経路を与える1.3〜2.5の範囲の屈折率をもった材料(例えばMgFまたはSiO)が上塗りされ、さらにその上に入って来る光を選択的に透過する第3の層(例えば珪素、酸化鉄、酸化クロム、混合金属酸化物、二酸化チタン、窒化チタンおよびアルミニウム、並びに選択的に光を透過するぼど十分に薄い第1の層と同じ材料)が被覆されている。このような顔料、および該顔料を製造し得る方法は特に米国特許第5,135,812号明細書、同第4,434,010号明細書(例えばTiOおよびSiOの代替層が記載されている)、同第5,059,245号明細書、同第5,281,480号明細書、同第5,958,125号明細書、同第6,160,208号明細書、同第6,325,847号明細書、同第6,440,208号明細書に記載されている。これらの特許は引用により本明細書に包含される。
【0027】
本発明に使用される種々の材料または基質は小板状、球形、立方体、針状、ウィスカー、または繊維状を含む任意の形をしていることができる。有用な板状の材料の例には板状の酸化アルミニウム、板状のガラス、アルミニウム、雲母、オキシ塩化ビスマス、板状の酸化鉄、板状のグラファイト、板状のシリカ、青銅、ステンレス鋼、天然真珠、窒化硼素、二酸化珪素、銅の薄片、銅合金の薄片、亜鉛の薄片、亜鉛合金の薄片、酸化亜鉛、エナメル、陶土、および磁器などが含まれる。上記の板状の材料の任意の組合せ、または少なくとも1種の上記の板状の材料と少なくとも1種の非板状の材料との任意の組合せを使用することができる。便宜上、下記の説明はガラスと雲母との組合せに主として注目して行なうが、他の組合せも使用することができる。透明度が高く、主として小さい被覆された薄片が存在するために反射が大きく且つ彩度(chroma)が強いから、雲母が望ましい。ガラスの薄片は高い透明度、全体的な色が極めて白いこと、および強い光の中でのきらめきの効果のような特性をもっているが、上記のように価格が高く、またその融点のために多くの用途には使用できい。
【0028】
有用な球状の材料の例には、ガラス、プラスティックス、セラミックス、金属、または合金が含まれ、球状の材料は中身が詰まっていても中空でもよい、有用なガラスの球状材料は米国特許第5,217,928号明細書に記載されている。この特許は引用により本明細書に包含される。
【0029】
有用な立方体の材料には立方体のガラスが含まれる。
【0030】
一例として本発明においては2種またはそれ以上の層状の基質が使用される。好ましくは、基質の一つは板状の酸化アルミニウムまたは板状のガラスである。
【0031】
個別的には、各基質は約5〜90%の混合物をなしていることができるが、配合物の大部分は一つの基質、例えば雲母によって構成されていることが好適である。さらに好ましくは、この配合物は少なくとも65%の雲母を含み、さらに好ましくは少なくとも75%が雲母である。個別的には、雲母の小板およびガラスの小板は上記に規定した範囲内の平均粒径および厚さをもっている。粒子の寸法は、得られる被覆された製品が視覚的な均一性を示すように選ばれる。即ち、X−Rite MA 68により鏡面角(speclar angle)から25°の所で評価した場合、得られた被覆製品が同じ割合の配合物に比べ、彩度が少なくとも5彩度単位(Cielab)増加しているか、または少なくとも5%の増加を示すように粒子の寸法が選ばれる。好ましくは、この増加は少なくとも10彩度単位(Cielab)であり、この結果を得るためには、ガラスと雲母の小板の内で平均粒径の小さい方の値はガラスと雲母の小板の内で平均粒径の大きい方の値の約25%以内であることが好ましい。従来法のようにCガラスを使用すことが好ましいが、本発明においては任意の種類および形態のガラスを使用することができる。他の有用なガラスの薄片は厚さが1.0μm以下で、軟化点は800℃以上のものである。
【0032】
ガラスは例えばAガラス、Cガラス、Eガラス、およびECRガラスとして分類することができる。必要とされる軟化点の特徴を満たすガラスの種類は石英ガラス、および軟化点が800℃以上の他の任意のガラス組成物である。この要求を満たすガラスの薄片は例えばSchott DuranまたはSupremaxのタイプのような特殊なガラスである。軟化点はASTM C 338に従い、直径0.55〜0.75mm、長さ23.5cmの均一なガラス繊維を、その上方の10cmの部分を毎分5℃の速度で加熱した場合、その長さを毎分1mmだけ増加させる温度であると定義される。
【0033】
少なくとも2種の異なった材料の有用な混合物の例を下記表に示す。

第1の材料 第2の材料
Aガラス Cガラス
Aガラス Eガラス
Aガラス ECRガラス
Aガラス 石英ガラス
Cガラス Eガラス
Cガラス ECRガラス
Cガラス 石英ガラス
Eガラス ECRガラス
Eガラス 石英ガラス
窒化珪素 雲母
ガラスの球体 雲母
他の酸化物を含む主として酸化鉄 ガラスの球体
他の酸化物を含む主として酸化鉄 雲母
酸化亜鉛 ガラス
金属または合金 ガラス
セラミックスの微小球体 雲母
ガラスの発泡体 雲母

適切なガラスの薄片は、そのの平均粒径が5〜1000μmであり、厚さは0.1〜5μm、好ましくは0.1〜0.3μmであることによって特徴付けられる。ガラスの薄片のアスペクト比は10〜300、好ましくは50〜200の範囲である。
【0034】
基質を被覆するのに使用される方法は、二つまたはそれ以上の基質材料が実質的に同じ速度で被覆され、それによって同じような品質と厚さの被膜が得られるように調節される。これには温度、試薬の添加速度、試薬の種類、基質の予備処理などを制御することが含まれる。小板がその平均粒径および厚さに関して互いに接近した値をもつにつれて、この制御は一層容易に達成されることが多い。少し予備実験を行い適切なパラメータを得ることができれば、当業界の専門家は必要なまたは適切な変更を容易に行うことができる。
【0035】
ガラスおよび雲母の小板を被覆する前に配合を行なう上記の方法は、予想外にも視覚的な均一性を示し均一な色をもつ製品を与える。これは予め製造された被覆された雲母と被覆されたガラスの小板を配合することによっては得ることはできない。この結果は、雲母およびガラスの基質が異なった透明度、表面の化学的特性、および屈折率をもち、また通常は異なった厚さをもっているにも拘わらず達成される。
【0036】
被覆したガラスの薄片のカ焼は典型的には600℃付近において行われる。何故ならば、ガラスの小板は約650〜700℃において熔融し、著しく品質が落ちた塊を生じるからである。驚くべきことには、金属酸化物の前駆体で被覆されたガラスと雲母との配合物は650℃から最高約850℃においてカ焼することができ、ガラスの薄片は熔融しないことが見出だされた。好ましくはカ焼温度は約675〜825℃であり、最も好ましくは金属酸化物がTiOである場合は約800℃であり、金属酸化物がFeの場合には約700℃である。
【0037】
本発明の共沈させた色彩効果顔料を使用する他の利点は、この製品がが混合物の異なった材料と同じ色空間をもち得ることである。2種の異なった材料の色を正確に合わせた後に製品の配合を行うことは、困難な方法であり実用的ではない、基質の粒子の大きさ、表面の化学的特性、屈折率および反射率のような因子が顔料の最終的な光学的性質に影響を及ぼし、同等な色相(hue)の値を評価することは困難である。本発明の共沈法を用いれば、両方の基質に対する色相の値は被覆工程において自動的にコントロールされる。
【0038】
しかし、得られる被覆された基質を当業界に公知の任意の方法によって後処理することができる。このような処理の例は例えば米国特許第4,134,776号明細書、同第5,091,011号明細書、同第5,156,889号明細書、同第5,326,392号明細書、同第 5,423,912号明細書、同第5,759,255号明細書、および同第6,325,846号明細書に記載されている。これらの特許は引用により本明細書に包含される。
【0039】
意図する用途に依存して、本発明の色彩効果顔料は或る形の表面処理によって利点を得ることができる。本発明を限定しない例は、外側の安定性を強化するために金属の水酸化物を含みまたは含まないカップリング剤であろう。しばしば表面処理剤として金属化合物を有機化合物と共にまたは単独で加え、粒子の表面の電荷および/または触覚特性を変えることができる。
【0040】
得られる顔料は、従来色彩効果顔料が使用されてきた任意の用途、例えば化粧品、プラスティックス、安全標識、溶媒および水を用いる自動車用塗料系を含むインクおよび被覆剤に使用することができる。本発明の製品は、すべてのタイプの自動車用および工業用塗料の用途、特に濃い色が必要とされる有機性の着色被膜およびインクの分野において無限の用途をもっている。例えば、これらの顔料はすべてのタイプの自動車および自動車以外の車輛の噴霧塗装を行うための全体の色調(mass tone)に、あるいはスタイリング剤として使用することができる。同様に、すべての粘土/フォーマイカ(formica)/木材/ガラス/金属/エナメル/セラミックスおよび多孔性および非多孔性の表面の上に使用することができる。本発明の顔料は粉末被覆組成物に使用することができる。これらの顔料は玩具産業または家庭用に適したプラスティックス製品に使用することができる。安全面での用途、例えばインクおよび被膜はこれらの製品の価値ある用途である。これらの顔料は繊維の中に含浸させ布地および絨毯に新規な美学的着色を与えることができる。これらの顔料は靴、ゴムおよびビニル/大理石の床、ビニルの側材、および他のすべてのビニル製品の外観を改善するのに使用することができる。さらにまたこれらの着色剤はすべてのタイプの模型工作の分野に使用することができる。
【0041】
本発明の組成物が使用できる上記の組成物は当業界の専門家には公知である。例としては、インク、爪用のエナメル、ラッカー、熱可塑性および熱硬化性材料、天然樹脂および合成樹脂がある。本発明を限定しないいくつかの例には、ポリスチレンおよびその混合重合体、ポリオレフィン、特にポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリアクリル化合物、ポリビニル化合物、例えばポリ塩化ビニルおよびポリ酢酸ビニル、ポリエステルおよびゴム、さらにビスコースおよびセルロースエーテル、セルロースエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、例えばポリグリコールテレフタレートおよびポリアクリロニトリルからつくられる繊維がある。
【0042】
種々の顔料の用途に対する完成度の非常に高い紹介としては、Temple C.Patton編,The Pigment Handbook,第II巻,Applications and Markets,John Wiley and Sons,New York(1973)参照のこと。さらに、例えばインクに関しては、R.H.Leach編,The Printing Ink Manual,第4版,Van Nostrand Reinhold(International)Co.Ltd.,London(1988),特に282〜591頁;塗料に関しては、C.H.Hare,Protective Coatings,Technology Publishing Co.,Pittsburgh 1994),特に63〜288参照のこと。これらの文献は、インク、塗料およびプラスティックス組成物、および着色剤の量を含めた本発明の組成物を使用できる展色剤についは引用により本明細書に包含される。例えば本発明の顔料は、オフセット平版印刷用インクにおいて10〜15%のレベルで使用され、残りはゲル化したおよびゲル化されていない炭化水素樹脂、アルキッド樹脂、ワックス化合物および脂肪族溶媒を含む展色剤であることができる。またこの顔料は例えば自動車用の塗料組成物において二酸化チタンを含むことができる他の顔料、アクリル性ラテックス、癒着剤、水または溶媒とともに1〜10%のレベルで使用することができる。またこの顔料は例えばポリエチレン中のプラスティックス濃縮物の中で20〜30%のレベルで使用することができる。
【0043】
化粧品の分野においては、これらの顔料は眼の周辺領域およびすべての外部の用途、および洗い落し用の用途に使用することができる。即ち、毛染め用スプレー、顔用の粉化粧、脚のメーキャップ、防虫用ローション、マスカラ、ケーキ/クリーム、爪用のエナメル、爪用のエナメル除去剤、香料のローション、およびすべてのタイプのシャンプー(ゲルまたは液状)に使用することができる。これに加えて、本発明の顔料は髭剃り用クリーム(エーロゾル用濃縮物、ブラシなし用クリーム、泡立て用)、皮膚の艶出し用のスティック、皮膚のメーキャップ、毛髪の手入れ剤、アイシャドー(液状、ポマード、粉末、スティック、プレスしたものまたはクリーム)、アイライナー、棒状コロン、コロン、コロンの皮膚緩和剤、浴用泡立て剤、ボディーローション(加湿用、洗浄用、鎮痛用、収斂用)、髭剃り後のローション、入浴後の乳剤、および日焼け止めローションに使用することができる。
【0044】
化粧品としての用途に対する総説はCosmetics:Science and Technology,第2版,M.S.Balsam および Edward Sagarin編,Wiley Interscience(1972);および deNavarre,The Chemistry and Science of Cosmetics,第2版,第1巻および第2巻(1962),Van Nostrand Co.Inc.,第3巻および第4巻(1975),Continental Pressを参照のこと。これら二つの文献は引用により本明細書に包含される。
【0045】
本発明をさらに例示するために本発明を限定しない実施例を下記に掲げる。これらの実施例、並びに本明細書の残りの部分および特許請求の範囲において、特記しない限りすべての割合は重量により、すべての温度は摂氏温度とする。
[実施例1〜4]
【0046】
平均粒径約140μ(レーザー光散乱による)のCガラスの薄片50gを平均粒径約80μの白雲母50gと混合する。この混合物を750mlの水に分散させ、鉄および亜鉛を塩化第2鉄の39%水溶液1mlおよび塩化亜鉛の9%水溶液7mlの形で導入する。水酸化ナトリウムの35%水溶液を用いこのスラリのpHを3.0に調節し、スラリを76℃の温度に加熱する。次いで塩酸を加えてpHを1.6に低下させ、四塩化チタンの40%水溶液を毎時100mlの速度で加え、この間水酸化ナトリウムの35%水溶液を加えてpHを1.6に保った。外観が白色の真珠色または干渉した金色、赤色、および青色になるまでチタンの導入を継続した。所望の終点に達したら、ブフナー濾斗でスラリを濾過し、水を加えて洗滌した。次に被覆された小板を乾燥し、約800℃でカ焼した。
【0047】
得られた顔料を顕微鏡で検査した結果、小板は二酸化チタンの滑らかな層で被覆されていることが示された。被覆された顔料は視覚的に均一であった。
【0048】
半分が黒色、半分が白色のハイディング・チャート(hiding chart)(The Letena Companyの形式2〜6の不透明チャート)上のドローダウン(drawdown)を用い、得られた顔料の光沢および色を眼および機器を用いて評価した。このチャートの黒色の部分の被膜は鏡で検査した場合反射する色を表し、白色の部分の被膜は鏡に映らない角度で見た場合の透過する色を表す。ドローダウンはニトロセルロースのラッカーの中に12%の濃度で顔料を混入し、この懸濁液をBirdのフィルム被覆棒で白黒のチャートに被覆することによってつくられる。これらの実施例でつくられたドローダウンは一連の高い色度(chromaticity)および被覆力を有する生き生きとした高品質の色を示す。
[実施例5〜9]
【0049】
実施例1〜4のガラス/雲母配合物100gを330mlの蒸溜水に分散させ、次いでこれを74℃に加熱し、希塩酸を用いてpHを1.6に調節した。次に、7mlの塩化第1錫18%水溶液をゆっくりと加え、次に100ml/時の速度で四塩化チタンの40%水溶液を加えた。錫およびチタンを加える際、同時に水酸化ナトリウムの希薄水溶液を加えてpHを1.6に保った。白色の真珠色または干渉を起こした金色、赤色、青色または緑色が観測されるまでチタニアの添加を続けた。所望の終点に達したら、スラリを濾過し、さらに水を加えて洗滌し、800℃でカ焼した。
【0050】
得られた顔料を顕微鏡で検査した結果、小板は二酸化チタンの滑らかな層で被覆されていることが示された。被覆された顔料は視覚的に均一であった。
【0051】
これらの実施例の顔料ででつくられたドローダウンは一連の高い色度および被覆力を有する生き生きとした高品質の色を示す。
[実施例10〜17]
【0052】
実施例1〜4のガラス/雲母配合物75gを300mlの蒸溜水に分散させた。この分散物を76℃に加熱し、希塩酸でpHを3.2に調節した。希薄水酸化ナトリウムを用いてpHを3.2に保ちながら、塩化第2鉄の水溶液を0.2ml/分の速度で加えた。所望の色が観測されるまで塩化第2鉄の水溶液の添加を続け、この時点においてスラリを濾過し、水で洗滌し、800℃でカ焼して酸化第2鉄が被覆された色彩効果顔料を得た。
【0053】
酸化第2鉄は固有の赤色をもっているから、この酸化物で被覆された薄片は反射色および吸収色の両方をもっている。干渉色は光の干渉によって生じ、他方吸収色は光の吸収によって生じる。反射色は、層状の薄片の上に被覆される酸化鉄(III)の量が増加するにつれて、金色から赤、青を経て緑へと変化する。もっと多くの酸化鉄(III)を加えると、もっと厚いFeの被膜が得られるが、これは第2の観測可能な干渉色として知られている他の系列の干渉色を生じる。この第2の色は第1の色よりも濃い色をもっている。被覆工程をさらに続けると、第3の系列の干渉色を得ることができる。
【0054】
この酸化鉄で被覆された薄片のドローダウンをつくった場合、一連の生き生きとした高品質の色が観測される。これらの実施例で得られる干渉色は青銅色、第1の橙色、第1の赤色、第1の紫青色、第1の緑色、第2の橙色、第2の赤色および第2の緑色である。
[実施例18〜20]
【0055】
二酸化チタンは、その層の厚さが増加するにつれて一連の干渉色をつくることができる。二酸化チタンは白色の反射を生じるが、これは最初真珠色または銀色に見え、TiO層が厚くなると、金色、赤色、青色、および緑色の干渉色が観測される。被膜がさらに厚くなると、一連の第2の観測可能な色が観測される。第2の色は上記の実施例に説明した第1の色よりも濃い。
【0056】
第2の色は、実施例1〜4に使用した雲母/ガラス配合物50gを333mlの蒸溜水に分散させることによってつくった。希塩酸を用いてpHを1.6に調節し、この懸濁液を74℃に加熱した。次に塩化第1錫の18%溶液7mlを加えた後、0.33ml/分の速度で40%四塩化チタン溶液を加えた。同時に希薄水酸化ナトリウムを加えることによりpHを1.6に保った。所望の色が得られるまでチタンの添加を続け、この時点においてスラリを濾過し、水で洗滌し、800℃でカ焼した。この方法で第2の色の金色、橙色、および赤色を得た。ドローダウンをつくった場合、この製品は色の濃さが対応する第1の観測可能な干渉色よりも強かった。
[実施例21〜25]
【0057】
実施例5〜9を繰り返したが、層状の小板配合物は平均粒径が約25μの白雲母75部、および平均粒径が約25μのCガラスの薄片25部によって構成されている点が異なっていた。
[実施例26〜33]
【0058】
実施例10〜17を繰り返したが、層状の小板配合物は平均粒径が約25μの白雲母75部、および平均粒径が約25μのCガラスの薄片25部によって構成されている点が異なっていた。
[実施例34〜41]
【0059】
実施例10〜17を繰り返したが、層状の小板配合物は平均粒径が約20μ(レーザー光散乱法による)の板状酸化アルミニウム50g、および平均粒径が約25μの白雲母50gによって構成されている点が異なっていた。
[実施例42]
【0060】
平均粒径が約25μmの白雲母150gを公称の厚さが1μmで主要寸法(D50)が20μmのガラスの薄片50gと混合した。この混合物を2,000mlの蒸溜水の中に分散させ、78℃に加熱した。この温度において希HCl溶液を用いこのスラリのpHを1.5に低下させ、20gの18%SnCl水溶液20gを0.4ml/分の速度で加え、この間NaOH溶液を用いてpHを1.5に保った。SnCl添加後、希薄NaOHを用いてpHを3.2に上昇させ、所望の色が得られるまで39%のFeClを1.5ml/分の速度で加えた。次に生成物を洗滌し、乾燥し、650℃で熱処理した。
[実施例43]
【0061】
実施例42の生成物を市販の自動車用ウレタン再仕上げ塗料組成物の中に分散させ、X Rite MA 68を用い鏡面角から25°および15°の所で彩度に対して評価を行う。被覆する前に予備配合した基質から得た試料、および個別的に被覆した基質を同じ割合で用い同じようにしてつくられた試料から得られた値を下記表に掲げる。予め配合した試料は各角度において10単位を越える彩度の増加を示した。即ち15°においては59.7に対して76.1に、25°においては51.8に対して62.4になった。

鏡面から15°
L a B C
実施例42 76.8 64.4 40.5 76.1
配合物 80.0 56.5 19.1 59.7

鏡面から25°
L a B C
実施例42 56.4 61.7 33.5 62.4
配合物 52.6 48.5 18.3 51.8

[実施例44]
【0062】
平均粒径が約20μ(レーザー光散乱による)の板状の酸化アルミニウム50gを平均粒径が25μの白雲母50gと混合する。この混合物を水750mlに分散させ、39%塩化第2鉄溶液1mlおよび9%塩化亜鉛水溶液7mlの形で鉄および亜鉛を導入する。35%水酸化ナトリウム水溶液を用いてスラリのpHを3.0に調節し、温度76℃に加熱する。次いで塩酸を加えてpHを1.6に低下させ、毎時100mlの速度で四塩化チタンの40%水溶液を加え、この間35%水酸化ナトリウム水溶液によりpHを1.6に保つ。白色の真珠色の外観が得られるまでチタンの導入を続ける。所望の終点が達成されると、ブフナー濾斗でスラリを濾過し、さらに水を加えて洗滌する。次に被覆された小板を乾燥し、800℃でカ焼する。
[実施例45]
【0063】
ガラスの薄片(平均主要寸法100μ)と雲母(平均主要寸法100μ)との等重量の混合物を、2%デキストロース溶液393gを含む磁気撹拌棒を備えた1リットルのビーカーの中に入れる。このスラリを室温で撹拌する。7.87gの硝酸銀の結晶、375mlの蒸溜水、沈澱を溶解させるのに十分な量の水酸化アンモニウムを含む溶液をこのスラリに素早く加える。数滴の濃塩酸を上澄液に加えて銀イオンの試験を行う。この試験は、沈澱および/または濁りに対する眼による評価であり、これらが生じないことがわかった場合、スラリを濾過し、数回蒸溜水で洗滌し、プレスケーキを100℃で恆量になるまで乾燥する。乾燥した試料は光沢があり、不透明で、銀色をした材料である。
【0064】
この銀で被覆した材料50gを600mlのイソプロパノールの中において25℃でスラリ化する。このスラリに75gの蒸溜水、3.5gの29%NHOHおよび75gのテトラエトキシシランを加える。このスラリを室温において7時間撹拌した後濾過し、生成物を洗滌し、炉で乾燥する。
【0065】
このシリカで被覆した材料10gを1%のデキストロース溶液50g中でスラリ化する。0.4gのAgNO、40gの水および僅かに過剰な29%水酸化アンモニウムから成る溶液を素早くスラリに加える。スラリの上澄液の試験が銀イオンに対して陰性になった時、これを濾過し、生成物を120℃で乾燥する。この生成物は、この生成物を含むラッカー・フィルムを見る角度の変化により、青色から紫色に至る非常に鮮やかな色の急変を示す。この顔料は視覚的に均一である。
[実施例46]
【0066】
実施例1の顔料を調合して下記組成の粉末アイシャドウーをつくることができる。下記の材料を十分に配合して分散させる:
成分 重量部
MEARLTALC TCA(R)(タルク) 18
MEARLMICA(R) SVA(雲母) 20
ミリスチン酸マグネシウム 5
シリカ 2
CLOISONNE(R) Red 424C(赤色のTiO−被覆雲母) 20
CLOISONNE(R) Violet 525C
(紫色のTiO−被覆雲母) 13
CLOISONNE(R) Nu−Antique Blue 626CB
(TiO2−被覆雲母/酸化鉄被覆雲母) 2
CLOISONNE(R) Cerise Flambe 550Z
(酸化鉄被覆雲母) 2
防腐剤および酸化防止剤 適量

MEARLTALC TCA(R)、MEARLMICA(R)SVA、およびCLOISONNE(R)はすべてEngelhard Corporationの登録商標である。

次に7部のパルミチン酸オクチルおよび1部のネオペンタン酸イソステアリルを加熱し、均一になるまで混合し、その時点で得られた混合物を上記分散物に噴霧し、配合を続ける。配合された材料を粉末にし、次いで5部のCloisonne Red 424Cおよび5部の実施例1の他の顔料を加え、均一な粉末のアイシャドーが得られるまで混合する。
[実施例47]
【0067】
実施例1の顔料を調合して棒状の口紅にすることができる。
【0068】
下記の成分を下記の量だけ加熱した容器に入れ、温度を85±3℃に上昇させる。
【0069】
重量部
キャンデリア蝋 2.75
カルナウバ蝋 1.25
蜜蝋 1.00
セレシン蝋 5.90
地蝋 6.75
微結晶ワックス 1.40
オレイルアルコール 3.00
パルミチン酸イソステアリル 7.50
イソステアリン酸イソステアリル 5.00
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド 5.00
ビス−ジグリセリルポリアルコールアジペート 2.00
アセチル化されたラノリンアルコール 2.50
ソルビタントリステアレート 2.00
アロエ・ベラ(Aloe Vera) 1.00
ひまし油 37.50
Red 6 Lake 0.25
酢酸トコフェリル 0.20
フェノキシエタノール、イソプロピルパラベン、
およびブチルパラベン 1.00
酸化防止剤 適量

次に14部の実施例1の顔料を加え、すべての顔料が十分分散するまで混合する。必要に応じ香料を加え撹拌しながら混合する。得られた混合物を75±5℃において型に注ぎ、冷却し、焔で処理して棒状の口紅にする。
[実施例48および対照例A]
【0070】
平均粒径が20μmの白雲母115gを2リットルの脱イオン水に懸濁させた。このスラリに30gの同様な粒径をもつNippon Sheet Glass製のガラスを加え、希塩酸でpHを1.4に調節した。この懸濁液にSnCl・5HOの77%溶液2.7gを加え、このスラリを83℃に加熱した。
【0071】
この時点において、40%のTiCl溶液を毎分2.8gの速度で加えることにより懸濁液にTiOを加えた。この沈澱の間スラリを一定のpHおよび温度に保った。所望の色が得られるまでTiOの添加を続けた。次いで被覆物を濾過し、洗滌し、800℃において20分間カ焼した。
【0072】
この被覆工程から得られた実施例48の顔料は、同じ色相の値をもつがTiOを被覆した雲母とTiOを被覆したガラスとを乾式混合してつくられた他の顔料(対照例A)と比較した場合、下記に示すように改善された色度の値を示す。本明細書に使用される「改善された色度」と言う言葉は、酸化物で被覆した第1の基質とそれと同じ色相をもつ酸化物で被覆した第2の異なった基質との混合物に比べ、色度の値が増加していることを意味する。
【0073】
この2種の顔料の色の特性はX−Rite MA68 II Multi Angle分光光度計を使用してスペクトル角から15°の所での読みで定義した。試料は33.3gのNCワニスの中に含まれる1gの顔料を使用してつくった。この混合物を制御された被覆装置を用いて黒色のカードに被覆した。

X−RITE MA68 II
15°の反射角における色スペクトルデータ

実施例48 94.6 1.29 50.84 50.86 88.54
対照例A 92.72 1.62 46.53 46.55 88.01
差 1.96 −0.32 4.32 4.3 0.53

このデータから明らかなように、実施例48の顔料に対する色度の値(C)は、色相の値(h)が同じ場合、対照例Aに比べて殆ど10%大きい。実施例48の生成物は対照例Aと同等の視覚的均一性を示す。
[実施例49および対照例B]
【0074】
TiOを被覆した本発明の共沈させた25%の雲母とガラスとの配合物の他の利点は、カ焼された最終製品の全体としての色が改善されたことである。二酸化チタンで被覆された雲母の製品は、カ焼した場合、全体として黄色を示す。「全体としての色」と言う言葉は、カ焼した粉末を眺めた場合に観察される色を意味する。雲母のスラリにガラスを加え、被覆してカ焼すると、得られる製品の全体としての色は黄色味がかなり少ない。純度が大きい基質のガラスは、TiOで被覆した顔料に黄色味を加える可能性がある着色した不純物の含量が少ない。このことは、本発明のTiOで被覆されたガラス/雲母の製品(実施例49)の色特性を、雲母とTiOだけからつくられた同様な被膜をもつ製品(対照例B)と比較して観測することによって実証される。
【0075】
ASTME 313に記載された白色度インデックス(Whiteness Index)を測定できるX−Rite SP62型分光光度計を用い、TiOで被覆した雲母の試料(対照例B)、および同様な方法で被覆された25%ガラス/75%雲母の試料(実施例49)の粉末についてこのインデックスを測定した。
【0076】
白色度インデックスの値は雲母の試料(対照例B)に対し23.3であり、ガラスとの配合物試料(実施例49)に対して33.9であった。明らかに、このことは本発明の配合されたガラス製品の色が著しく改善された結果である。本明細書における「改善された白色度インデックス」と言う言葉は、雲母試料に比べて白色度インデックスが増加していることを意味する。
[実施例50および対照例C]
【0077】
実施例50はTiOで被覆された共沈した25%雲母およびガラス薄片の配合物の他の例であり、上記実施例48に従ってつくられた。対照例CはTiOで被覆した雲母およびTiOで被覆したガラスの薄片を乾式混合することによってつくられた。これらの顔料の色特性は、X−Rite MA68 II Multi Angle分光光度計を用い、スペクトル角から15°のところの読みを用いて定義した。その結果を次に示す。
【0078】

対照例C 63.96 2.56 −51.06 51.12 272.87
実施例51 67.34 4.25 −56.59 56.75 274.29

これらの結果は、対照例Cに比べ実施例50は色度および視覚的な均一性が改善されていることを示している。
[実施例51]
【0079】
実施例48に従ってTiOで被覆した共沈させた25%雲母およびガラスの他の配合物をつくったが、ガラスの薄片(Nippon Sheet Glass製)の平均粒径が30μである点が異なっていた。これらの顔料の色特性は、X−Rite MA68 II Multi Angle分光光度計を用い、スペクトル角から15°のところの読みを用いて定義した。その結果を次に示す。
【0080】
X−RITE MA68 II
15°の反射角における測色データ

金 104.34 −1.8 46.82 46.86 92.2
赤 69.67 40.41 −3.82 40.59 354.6
青 71.53 −19.33 −41.98 46.21 245.27
緑 92.63 −27.39 7.59 28.42 164.5

[実施例52および対照例D]
【0081】
実施例52はTiOで被覆された共沈した25%雲母およびガラスの薄片の他の配合物であり、上記実施例48に従ってつくられた。対照例DはTiOで被覆した雲母およびTiOで被覆したガラスの薄片を乾式混合することによってつくられた。これらの顔料の色特性は、X−Rite MA68 II Multi Angle分光光度計を用い、スペクトル角から15°のところの読みを用いて定義した。その結果を次に示す。


対照例D 71.84 40.40 −2.43 40.47 356.55
実施例52 71.91 44.67 −4.77 44.93 353.91

これらの結果は、対照例Dに比べ実施例52は色度および視覚的な均一性が改善されていることを示している。
[実施例53]
【0082】
210gの雲母(粒子の大きさの中間値D(50)=50μ);30gのガラスの薄片(D(50)=100μ;Nippon Glass製);および2リットルの蒸溜水から成るスラリをつくり、毎分350回転で撹拌した。1:1のHClでpHを1.4に低下させた。2.7gの77%SnCl・5HO溶液を滴下した。この組成物を83℃に加熱した。2.1ml/分の速度で180gの40%のTiClを添加し、同時に35%のNaOHを用いてpHを1.4に制御した。35%のNaOHを用いてpHを8.2に上昇させた。3.5ml/分の速度で2500gの28%NaSiO・9HOを添加し、同時に1:1のHClでpHを8.2に制御した。0.5ml/分の速度で1:1のHClを用いpHを1.9に低下させた。2.1ml/分の速度で180gの40%TiClを加え、同時に35%のNaOHを用いてpHを1.9に制御した。生成物1は次の組成をもっていた:12.5% TiO、33.4% SiO、47.3% 雲母、および6.8% ガラス。生成物2は次の組成をもっていた:13.5% TiO、33.0% SiO、46.8% 雲母、および 6.7% ガラス。生成物3は次の組成をもっていた:16.6% TiO、31.8% SiO、45.2% 雲母、および6.4% ガラス。得られた製品のX−Rite特性は次の通りである。

生成物1 生成物2 生成物3
15°
D65/10° L 77.01 79.27 82.76
−23.64 −25.01 −17.19
−12.6 −5.99 10.78
26.79 25.72 20.29
h° 208.06 193.46 147.91

25°
D65/10° L 44.13 45.81 48.35
−12.28 −12.3 −9.21
−8.79 −5.96 3.86
15.1 13.67 9.99
h° 215.58 205.83 157.27

45°
D65/10° L 21.69 23.58 25.15
−3.72 −3.96 −4.8
−9.09 −8.21 −1.76
9.82 9.ll 5.ll
h° 247.76 244.21 200.18

75°
D65/10° L 14.4 15.91 17.16
−1.37 −1.36 −2.6
−7.99 −7.83 −5.12
8.1 7.95 5.74
h° 260.27 260.14 243.02

110°
D65/10° L ll.88 13.25 14.45
−0.45 −0.38 −0.46
−8.3 −8.27 −7.94
8.31 8.28 7.95
h° 266.86 267.39 266.67

本発明の精神および範囲を逸脱することなく本発明の製品および方法に対し多くの変形および変更を行うことができる。本明細書において開示された種々の具体化例は本発明をさらに例示する目的のためであって、本発明を限定する意図をもつものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種の異なった材料の被覆された混合物を含んで成る色彩効果顔料であって、該少なくとも2種の材料の各々は該少なくとも2種の異なった材料の全量に関し少なくとも約5重量%〜約95重量%の量で存在し、該顔料は視覚的な均一性を示すことを特徴とする色彩効果顔料。
【請求項2】
該色彩効果顔料は改善された白色度インデックスを示すことを特徴とする請求項1記載の色彩効果顔料。
【請求項3】
該色彩効果顔料は改善された色度を示すことを特徴とする請求項1記載の色彩効果顔料。
【請求項4】
該被膜は多数の層を含んで成り、該層の少なくとも一つは酸化物を含んで成ることを特徴とする請求項1記載の色彩効果顔料。
【請求項5】
該酸化物の層は珪素の水酸化物および酸化物を含んで成ることを特徴とする請求項4記載の色彩効果顔料。
【請求項6】
該多数の層はSiO/Fe;TiO/SiO;TiO/SiO/TiO;TiO/SiO/Fe:TiO/SiO/Cr;Fe/SiO2;Fe/SiO/Fe;Fe/SiO/TiO;Fe/SiO/Cr;Cr/SiO/Cr;またはCr/SiO/Feを含んで成ることを特徴とする請求項5記載の色彩効果顔料。
【請求項7】
該被覆された混合物は少なくとも3種の異なった材料を含んで成ることを特徴とする請求項1記載の色彩効果顔料。
【請求項8】
該被覆された混合物の上にさらに表面処理がなされていることを特徴とする請求項1記載の色彩効果顔料。
【請求項9】
該異なった材料の少なくとも一つは立方体状または繊維状であることを特徴とする請求項1記載の色彩効果顔料。
【請求項10】
該異なった材料の少なくとも一つは球状の材料であることを特徴とする請求項1記載の色彩効果顔料。
【請求項11】
該球状の材料はガラスであることを特徴とする請求項10記載の色彩効果顔料。
【請求項12】
該球状の材料は金属または合金であることを特徴とする請求項10記載の色彩効果顔料。
【請求項13】
該異なった材料の少なくとも一つは板状の材料であることを特徴とする請求項1記載の色彩効果顔料。
【請求項14】
該少なくとも二つの異なった材料は板状の材料であることを特徴とする請求項1記載の色彩効果顔料。
【請求項15】
該少なくとも二つの異なった材料は二つの異なったガラスを含んで成ることを特徴とする請求項1記載の色彩効果顔料。
【請求項16】
該ガラスの少なくとも一つは石英ガラスであることを特徴とする請求項15記載の色彩効果顔料。
【請求項17】
該ガラスの少なくとも一つはCガラスであることを特徴とする請求項15記載の色彩効果顔料。
【請求項18】
該板状の材料は金属であることを特徴とする請求項14記載の色彩効果顔料。
【請求項19】
該金属材料はアルミニウム、青銅、ステンレス鋼、銅、銅合金、亜鉛および亜鉛合金から成る群から選ばれることを特徴とする請求項18記載の色彩効果顔料。
【請求項20】
請求項1記載の該色彩効果顔料を含んで成る化粧品。

【公表番号】特表2006−522165(P2006−522165A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−565835(P2004−565835)
【出願日】平成15年12月30日(2003.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/041632
【国際公開番号】WO2004/061012
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(591044371)エンゲルハード・コーポレーシヨン (43)
【氏名又は名称原語表記】ENGELHARD CORPORATION
【Fターム(参考)】