説明

色彩選別機

【課題】一次選別部と二次選別部との間において、選別アルゴリズム及びエジェクターノズルの作動の両者を異ならせ、良粒の巻き添えによる歩留まり低下を抑制することができる色彩選別機を提供する。
【解決手段】粒状物の画像を二値化する二値化手段と、粒状物の欠陥部分を抽出する欠陥検出手段と、粒状物の外形の画像に対し収縮処理を施す収縮手段と、粒状物の欠陥部分の画像に対し膨張処理を施す膨張手段と、外形の収縮画像と欠陥部分の膨張画像とを合成する合成手段と、該合成手段により得られた画像に基づいて、一次選別部用のエジェクター手段の噴風動作と二次選別部用のエジェクター手段の噴風動作とを異ならせるエジェクター作動決定手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色彩選別機に関する。
【背景技術】
【0002】
粒状物となる被選別物に光を投射し、この被選別物の光量と基準となるバックグラウンドの光量との差を光センサーなどで検知し、この光センサーの検出信号に基づいて所定の色彩を有しない粒状物を噴風ノズルなどのエジェクターにより選別・除去する色彩選別機は周知である。そして、所定の色彩を有しない粒状物の中には、正常な粒状物がある程度混入しているものであり、通常、不良品排出口から排出される粒状物を再選別する二次選別部を設けて選別率の向上を図っている。
【0003】
特許文献1には(図6参照)、ベルトコンベアの搬送面101を仕切壁102によって区画して二次選別用搬送面103を形成するとともに、二次選別用の振動供給樋、検出部104及びエジェクター105を設け、更に、制御部に、一次選別用と二次選別用とに各々プラスの基準電圧を有する比較器とを設けるとともに、各比較器からの信号を出力又は停止させるためのスイッチをそれぞれ設けたことを特徴とする粒状物色彩選別機が開示されている。
【0004】
これにより、ベルトコンベア上の仕切壁102によって形成した二次選別用搬送面103に、一次選別で除去された異色粒子を供給することにより、一次選別と二次選別とを平行して行い、その際、一次選別によって除去された異色粒中に正常粒子が少ないときは、二次選別においては、スイッチにより一次選別とは逆の基準電圧を切換・設定し、より少ない正常粒子の方を異色粒子としてエジェクターにより除去して逆打ちをするものである。
【0005】
上記開示の色彩選別機は、一次選別と二次選別との間において、異色粒の混入割合に応じてプラスの基準電圧を設定したり、マイナスの基準電圧を設定することができ、一次選別と二次選別とで選別感度を変えたり、二次選別に「逆打ち」を設定することができるものである。
【0006】
しかしながら、一次選別部と二次選別部とで選別感度を変えることや、二次選別部に「逆打ち」を設定することは歩留まり低下を解決する根本的な手段とは言えない。すなわち、上記色彩選別機にあっては、一次選別部においては良粒の品質を重要視して不良粒の除去を確実に行うため、不良粒の除去に伴って良粒も一緒に選別・除去される場合が多くなる。同様に、二次選別部においても、不良粒中の良粒の混入率が多くなり、歩留まりの低下傾向が生じる。この原因について図7を参照して説明する。
【0007】
図7は、多チャンネル方式の色彩選別機におけるエジェクターノズル105を示すものである。隣接する2列の噴風ノズル口105a,105b間の間隔は約1.0mmと狭く形成されている。従来の色彩選別機は、図7(a)に示すように、不良粒が良粒に接近して噴風ノズル口105aの近くを通過すると、不良粒の除去ミスを防止するために、噴風ノズル口105aとともに良粒に接近した噴風ノズル口105bを2列同時に作動させて、噴風・除去するように設定している。これにより、歩留まりの低下傾向が生じる。また、図7(b)のように、不良粒が、2列の噴風ノズル口105a,105b間に跨(またが)って通過した場合、1列の噴風ノズル口105bのみの作動にあっては、不良粒の中心位置(重心位置)に対して噴風できないため、不良粒の除去(排除)ミスが発生してしまう。そこで、噴風ノズル口105bとともに噴風ノズル口105aを2列同時に作動して、不良粒の中心位置(重心位置)に対して噴風して除去ミスを防止するように設定してある。しかしながら、噴風ノズル口105a側に良粒が通過していると、巻き添えによって良粒までが除去され、歩留まりの低下傾向が生じる原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3044701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題点にかんがみ、一次選別部と二次選別部との間において、選別アルゴリズム及びエジェクターノズルの作動の両者を異ならせ、良粒の巻き添えによる歩留まり低下を抑制することができる色彩選別機を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明は、原料となる粒状物を帯状に流下させる一次選別用の移送手段、該移送手段から落下する粒状物の落下軌跡に設けられる光学検出部、及び該光学検出部のさらに下方に設けて正常な粒状物から一次不良品を除去するエジェクター手段を備えた一次選別部と、該一次選別部において除去された一次不良品を多列状に流下させる二次選別用の移送手段、該移送手段から落下する粒状物の落下軌跡に設けられる光学検出部、及び該光学検出部のさらに下方に設けて一次不良品から二次不良品を除去するエジェクター手段を備えた二次選別部とを並設した色彩選別機において、
前記光学検出部で撮像して得られた粒状物の画像を二値化する二値化手段と、該二値化手段により得られた画像から粒状物の欠陥部分を抽出する欠陥検出手段と、前記二値化手段により得られた粒状物の外形の画像に対し収縮処理を施す収縮手段と、前記欠陥検出手段により得られた粒状物の欠陥部分の画像に対し膨張処理を施す膨張手段と、前記収縮手段により得られる外形の収縮画像と前記膨張手段により得られる欠陥部分の膨張画像とを合成する合成手段と、該合成手段により得られた画像に基づいて、前記一次選別部用のエジェクター手段の噴風動作と前記二次選別部用のエジェクター手段の噴風動作とを異ならせるエジェクター作動決定手段とを備える、という技術的手段を講じた。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、前記エジェクター作動決定手段は、一次選別部用のエジェクター手段を、当該一次不良品を除去する噴風ノズル口と、これに隣接する噴風ノズル口との複数列を作動させる一方、前記二次選別部用のエジェクター手段を、当該二次不良品を除去する噴風ノズル口の一列のみ作動させることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、さらに、前記合成手段により得られた画像に基づいて粒状物の落下方向の中心位置を算出する中心位置算出手段を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、前記収縮手段は、前記一次選別部で得られた粒状物の外形の画像に対して4近傍収縮処理を少なくとも1回施す一方、前記二次選別部で得られた粒状物の外形の画像に対して横収縮処理を複数回施すことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、前記膨張手段は、前記一次選別部で得られた粒状物の欠陥部分の画像に対して8近傍膨張処理を複数回施す一方、前記二次選別部で得られた粒状物の欠陥部分の画像に対して8近傍膨張処理を複数回施すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の色彩選別機によれば、光学検出部に内装したCCDカメラ等の撮像手段で撮像された粒状物の画像が、二値化手段によって所定のしきい値で二値化され、欠陥検出手段によって、二値化画像の黒部分の画素をカウントして粒状物の欠陥部分の有無を判定する。また、収縮手段によって、粒状物の外形に関する二値化画像に対して収縮処理が施され、収縮画像が生成される。これにより、画像の外形が粒の中心位置方向に収縮され、粒の中心位置寄りの領域の噴風ノズル口のみが作動するような設定が可能となる。さらに、膨張手段によって、粒状物の欠陥部分に関する二値化画像に対して膨張処理が施され、膨張画像が生成される。これにより、欠陥部分を強調して、収縮処理した外形の画像へ取り込むことが容易となる。
【0016】
次に、合成手段により、収縮処理した外形の画像と膨張処理した欠陥の画像とが足し算、引き算又は乗算などの周知の手法により合成される。そして、エジェクター作動決定手段により、前記合成された画像に基づき、一次選別部用のエジェクター手段の噴風動作と前記二次選別部用のエジェクター手段の噴風動作とを異ならせる処理が行われる。これにより、一次選別部においては不良粒の除去漏れを防止し得るという品質に重点を置いた選別が可能となる一方、二次選別部においては良粒の巻き添えを防止するという歩留まりの向上に重点をおいた選別が可能となる。
【0017】
そして、請求項2記載の発明は、前記エジェクター作動決定手段が、一次選別部用のエジェクター手段を、当該一次不良品を除去する噴風ノズル口と、これに隣接する噴風ノズル口との複数列を作動させる一方、前記二次選別部用のエジェクター手段を、当該二次不良品を除去する噴風ノズル口の一列のみ作動させるように設定するので、一次選別部において品質を重点においた選別を行う場合、不良粒の除去漏れを防止するために、着色粒として疑わしいものは全て噴風・除去する一方、二次選別部において歩留まりの向上に重点をおいた選別を行う場合、不良粒のみを精度よく適確に除去し、良粒の巻き添えによる歩留まり低下を防止することができる。
【0018】
また、請求項3記載の発明は、さらに、前記合成手段により得られた画像に基づいて、粒状物の落下方向の中心位置を算出する中心位置算出手段を設けたので、簡単な処理で不良粒の中心位置Oを求め、不良粒を精度よく適確に除去することができる。
【0019】
さらに、請求項4記載の発明は、前記収縮手段において、前記一次選別部で得られた粒状物の外形の画像に対しては4近傍収縮処理を少なくとも1回施す一方、前記二次選別部で得られた粒状物の外形の画像に対しては横収縮処理を複数回施したので、一次選別部では画像処理の負荷を軽減できる一方、二次選別部では不良粒の画像の外形が粒の中心位置方向に収縮され、不良粒のみを精度よく適確に除去することができる。
【0020】
さらに、請求項5記載の発明は、前記膨張手段において、前記一次選別部で得られた粒状物の欠陥部分の画像に対して8近傍膨張処理を複数回施す一方、前記二次選別部で得られた粒状物の欠陥部分の画像に対して8近傍膨張処理を複数回施したので、粒状物の外形の画像の収縮処理に起因して欠陥部分の情報が失われないよう、欠陥部分を強調処理することが可能となる。これにより、膨張処理した欠陥部分の画像を収縮処理した外形の画像へ取り込むことも容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る色彩選別機の概略図である。
【図2】本発明の色彩選別機の制御部が有する画像処理部のブロック図である。
【図3】CCDカメラで取得した原画像と、原画像を画像処理部で変換したときの概念図である。
【図4】外形の画像と欠陥部分の画像とを合成した画像データをオーバーラップ処理部に入力したときの概念図である。
【図5】画像処理後の粒の中心位置を算出するときの概念図である。
【図6】従来のベルトコンベアを用いた色彩選別機の斜視図である。
【図7】エジェクターノズルの噴風と良粒の巻き添えを示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態に係る色彩選別機の概略図である。この色彩選別機1は、穀粒、樹脂ペレット、豆、その他の粒状物を原料として、良品と不良品或いは原料に混入する異物等を色彩により選別することができるものである。また、色彩選別機1は、一次選別部と、二次選別部とを並設してあり、それぞれの選別部には従来技術と同様の色彩選別機の構成部品が配置される。
【0023】
すなわち、一次選別部についての構成部品を説明すると、水平位置から約60度の角度で傾斜して配置した移送手段としてのシュート2と、穀粒などの粒状物を貯留するための貯留タンク3と、貯留タンク3からの粒状物をシュート2に搬送するための振動フィーダ4と、シュート2下端から流下する粒状物の流下軌跡の上下を挟んで設けられる光学検出部5と、さらに下方に設けたエジェクターノズル6と、エジェクターノズル6下方で前記シュート2と同傾斜線上にあり、エジェクターノズル6からの噴風を受けずにそのまま流下軌跡の粒状物を受ける一次良品排出樋7と、エジェクターノズル6からの噴風を受けて正常な粒状物から不良粒を回収するための一次不良品排出樋8と、が備えられている。
【0024】
一次選別部用のシュート2は粒状物を広幅で帯状に滑走させるために溝部のない平板形状であるのが好ましい。また、シュート2から粒状物が溢流しないよう、また、選別対象の粒状物がシュート2を滑走中に底面から浮き上がるのを防止するために、底面から所定間隔をあけてシュートカバーを設けてもよい。
【0025】
振動フィーダ4は、支持部4b上にフィーダトラフ4aが支持されており、電磁駆動コイルなどの振動装置を作動させることによって粒状物をシュート2に供給することができる。
【0026】
光学検出部5は、可視光用のCCDカメラ9と、近赤外光用のNIRカメラ10などから構成される光センサー部と、蛍光灯等からなる可視光源11と、ハロゲンランプ等からなる近赤外光源12と、光センサー部に対する対向用バックグラウンド13が配設されている。
【0027】
符号14は一次選別部で選別された不良粒を再選別するため、二次選別部に供給するための昇降機である。次に、二次選別部についての構成部品を説明する。一次選別部と相違する点としては、シュート2Aの形状が挙げられ、二次選別用のシュート2Aは粒状物を複数列状(多列状)に分割した状態で滑走させるために複数の溝部が形成されている。この溝部の断面形状としては、U字状のもの、V字状のもの、凹字状のもの等、適宜採用することができる。また、エジェクターノズル6下方で前記シュート2Aと同傾斜線上にあり、エジェクターノズル6からの噴風を受けずにそのまま流下軌跡の粒状物を受ける二次良品排出樋7Aと、エジェクターノズル6からの噴風を受けて正常な粒状物から不良粒を回収するための二次不良品排出樋8Aと、が備えられている。その余の構成は前記一次選別部とほぼ同様の構成である。
【0028】
符号15は光学検出部5で取得された画像データに基づいて、粒状物の良、不良を判別したり、演算処理や、色彩選別機を制御するための制御部である。制御部の具体的な構成としては、コンピュータ等の電子計算機によって構成されるものが好ましく、例えば、キーボードやマウス等の入力手段、演算・判断・画像処理等を行うCPU、及び色彩選別機1を作動させるための動作プログラムを記憶したり、画像データを編集したりするための記憶装置(RAM、ROM、ハードディスクドライブ等)等より構成されるものがよい。この制御部15には、振動フィーダ4、CCDカメラ9、NIRカメラ10、可視光源11、近赤外光源12及びエジェクターノズル6の駆動部等が電気的に接続されており、前記各部を制御するものである。
【0029】
<制御部が有する画像処理部について>
図2は、前記制御部15が有する画像処理部16のブロック図である。この画像処理部16は、CCDカメラ9などからの画像を同期化するとともに、偏った照明により取得した画像をシェーディング補正する前処理部17と、補正した画像を二値化処理する二値化処理部18と、当該二値化画像の黒部分の画素をカウントし、所定のしきい値以上を検出したときに粒状物に欠陥部分が存在すると判定する欠陥検出部19と、該欠陥検出部19とのタイミングを合わせるための遅延回路20と、粒状物の外形が抽出された二値化画像を収縮処理する第1収縮処理部21と、該第1収縮処理部21によって収縮された画像を更に収縮処理する第2収縮処理部22と、粒状物の欠陥が抽出された二値化画像を膨張処理する第1膨張処理部23と、該第1膨張処理部23によって膨張された画像を更に膨張処理する第2膨張処理部24と、当該画像に基づき、欠陥部分が存在する粒の噴風ノズル口と隣接する噴風ノズル口とを2列同時に噴風動作するように決定するオーバーラップ処理部25と、エジェクターノズルのバルブのオン・オフ信号を発生させるバルブ割り当て処理部26と、粒状物の落下方向において当該粒状物の中心位置を求める中心位置算出部27と、噴射遅延(遅延時間)処理部28と、噴射長さ(噴射時間)処理部29とから主要部が構成されている。なお、本発明で述べているエジェクター作動決定手段とは、前記オーバーラップ処理部25及びバルブ割り当て処理部26を併せたものを指し示す。
【0030】
図2に示すように、CCDカメラ9には、CCDチップ9aからなるCCD素子が内装されている。そして、このCCDチップ9aは水平方向で見ると全部で2048画素(ピクセル)を有しており、1から1800までは一次選別部(平板形状のシュート2の幅方向)を監視し、1801から2048までは二次選別部(複数の溝部が形成された多列状のシュート2Aの幅方向)を監視するように形成されている。これにより、画素の領域によって一次選別部と二次選別部とが区分けされているから、一次選別部と二次選選別部とで異なる画像処理を行うことを可能にするものである。
【0031】
<二値化処理について>
図3はCCDカメラ9などで取得した原画像と、該原画像を画像処理部16より変換したときの各種画像の概念図を示したものである。図3(a)には、エジェクターノズル6の噴風ノズル口6a,6b間に跨(またが)って不良粒が通過する様子を示している。すなわち、不良粒の長さ(エジェクターノズル6の幅方向でみた長さを)を(L)とすると、噴風ノズル口6a側は全長(L)の75%の割合を占有する一方、噴風ノズル口6aからはみ出した部分は全長(L)の25%の割合となっている。
【0032】
ところで、この不良粒は、当該噴風ノズル口6a,6bに到達する前に、既に上流側に設置したCCDカメラ9で撮像されていたことになる。これにより得られた画像は、原画像(図3(a)の画像)として画像処理部16に与えられ、前処理部17により画像を同期化するとともに、偏った照明により取得した画像をシェーディング補正する処理が行われる。
【0033】
前処理部17により補正された画像は、二値化処理部18に入力される。二値化処理部18では、画像が二値化処理され、外形部分と欠陥部分とに分けられる。すなわち、原画像が図3(a)に示すものであったとき、例えば、外形の画像の二値化処理は、図3(b)のように生成される一方、欠陥部分の画像の二値化処理は、図3(c)のように生成される。これにより、不良粒の外形抽出及び欠陥抽出が可能になる。
【0034】
<外形の収縮処理について>
二値化処理部18で生成された外形の二値化画像は、第1収縮処理部21及び第2収縮処理部22に順次送られて収縮処理が複数回繰り返して施される。このとき、一次選別部と二次選別部とで収縮処理の回数及び収縮方法を異ならせるのが好ましい。
【0035】
【表1】

表1のように、一次選別部と二次選別部とで収縮処理の回数及び収縮方法を異ならせると、一次選別部では画像処理の負荷を軽減することができる一方、二次選別部では不良粒の外形の画像が粒の中心位置方向に収縮され、粒の中心位置寄りの領域の噴風ノズル口のみが作動するような設定が可能となる。図3(d)は一次選別部において取得した二値化画像に対し第1収縮処理部21において収縮処理を行っていない画像を示し、図3(e)は一次選別部において取得した二値化画像に対し第2収縮処理部22において4近傍収縮処理(上下左右4方向(4近傍)の収縮)を適用した画像である。これにより、原画像である図3(a)に対し、図3(e)は噴風ノズル口6aの領域とほぼ同等に縮小(粒の全長(L)が75%に縮小)され、不良粒の中心位置寄りの領域の噴風ノズル口6aのみ作動する設定が可能となる。
【0036】
また、図3(f)は二次選別部において取得した二値化画像に対し第1収縮処理部21において横収縮処理(左右2方向の収縮)を適用した画像であり、図3(g)は第2収縮処理部22において更に横収縮処理を適用した画像である。これにより、原画像である図3(a)に対し、図3(g)は噴風ノズル口6aの領域よりも小さくなり(粒の全長(L)が75%以下)、不良粒の中心位置寄りの領域の噴風ノズル口6aのみ作動する設定が可能となる。
【0037】
<欠陥部分の膨張処理について>
二値化処理部18で生成された欠陥部分の二値化画像は、第1膨張処理部23及び第2膨張処理部24に順次送られて膨張処理が複数回繰り返して施される。このとき、一次選別部と二次選別部とで膨張処理の回数及び膨張方法を同じにするのが好ましい。
【0038】
【表2】

表2のように、一次選別部と二次選別部とで膨張処理の回数及び膨張方法を同一にすると、膨張処理した欠陥部分の画像を前記収縮処理した外形の画像(図3(e)、図3(g))へ取り込むことが容易となる。また、表1のように、二次選別部においては、粒状物の外形の収縮処理が2回行われるので、外形端部に存在する欠陥部分の情報が失われるおそれがある。しかし、表2のように欠陥部分の画像について2回の膨張処理を行えば、不良粒の欠陥部分を強調することが可能となる。図3(h)は、一次選別部において取得した欠陥部分の二値化画像について、第1膨張処理部23において8近傍膨張処理(上下左右斜めの8方向(8近傍)の膨張)を適用した画像であり、図3(i)は、第2膨張処理部24において更に8近傍膨張処理を適用した画像である。同様に図3(j)は、二次選別部において取得した欠陥部分の二値化画像について、第1膨張処理部において8近傍膨張処理を適用した画像であり、図3(k)は、第2膨張処理24において更に8近傍膨張処理を適用した画像である。
【0039】
<外形と欠陥部分の合成について>
再び、図2を参照して画像処理部16を説明する。第2収縮処理部22からの外形画像の出力線30は、オーバーラップ処理部25に入力する入力線30Aと、アンド回路部31に入力する入力線30Bとに分岐される。一方、第2膨張処理部24からの欠陥画像の出力線32はアンド回路31に入力される。アンド回路31では、外形画像と欠陥画像とが乗算(アンド処理)など周知の手法により合成される。図4(b)は、図3(e)の外形の画像と図3(i)の欠陥部分の画像とを合成した図であり、図4(d)は図3(g)の外形の画像と図3(k)の欠陥部分の画像とを合成した図である。これら複数の合成した画像と外形の画像は、前記オーバーラップ処理部25に入力され、下記表3のように、一次選別部用のエジェクター手段の噴風動作と前記二次選別部用のエジェクター手段の噴風動作とを異ならせる処理が行われる。これにより、一次選別部においては、不良粒の除去漏れを防止し得るという品質に重点を置いた選別を可能とし、二次選別部においては良粒の巻き添えを防止するという歩留まりの向上に重点をおいた選別を可能とし、役割分担することが可能である。
【0040】
【表3】

【0041】
<中心位置算出部について>
図4に示すように、オーバーラップ処理部25の出力信号は、次いで、バルブ割り当て処理部26を経て、中心位置算出部27に入力される。中心位置算出部27では、不良粒の落下方向において粒の先端から後端までの距離hを算出するとともに(図5 参照)、その距離の2分の1を算出される。これにより、簡単な処理で不良粒の中心位置Oを求めることができる。つまり、不良粒の横方向(シュート2の幅方向又はエジェクターノズル6の幅方向)の長さLを算出する必要がない。
【0042】
<噴風・除去処理について>
中心位置算出部27の出力信号は、次いで、噴射遅延(遅延時間)処理部28を経て、噴射長さ(噴射時間)処理部29に入力される(図2参照)。噴射遅延処理部28では、光学検出部5とエジェクターノズル6との間を落下する不良粒の落下時間に合わせて噴風されるように制御されるとともに、噴射長さ処理部29では、エジェクターノズル6による噴風時間が制御される。これにより、精度よく適確に不良粒の除去を行うことができる。そして、一次選別部においては、図5(a)に示すように、破線で示す原画像が、外形の収縮処理及び欠陥部分の膨張処理によって実線で示すように画像処理される。すなわち、原画像では隣の列の噴風ノズル口6bにはみ出した欠陥部分が、不良粒の中心位置Oがある列の噴風ノズル口6aの方向に移動し、不良粒の中心位置Oを含む噴風ノズル口6aを作動させることができる。また、二次選別部においては、図5(b)に示すように、破線で示す原画像が、外形の収縮処理及び欠陥部分の膨張処理によって実線で示すように画像処理される。すなわち、原画像では隣の列の噴風ノズル口6bにはみ出した欠陥部分が、不良粒の中心位置Oがある列の噴風ノズル口6aの方向に移動し、不良粒の中心位置Oを含む噴風ノズル口6aを作動させることができる。このとき、二次選別部では、収縮処理の2回処理により、欠陥部分が、不良粒の中心位置Oがある列の噴風ノズル口6a方向に移動する程度が大きく、不良粒の中心位置を精度よく算出し、不良粒のみ精度よく適確に除去することができる。
【0043】
以上説明したように、従来の色彩選別機にあっては品質の向上を目指していたから、一次選別部及び二次選別部に両選別部において、不良品を除去する噴風ノズル口と、これに隣接する噴風ノズル口との複数列を作動させる方式を採用していた。これにより、巻き添えによって良粒までが除去され、歩留まりの低下傾向が生じる原因となっていた。一方で、本実施形態によれば、一次選別部においては、一次不良品を除去する噴風ノズル口と、これに隣接する噴風ノズル口との複数列を作動させる一方、二次選別部においては、二次不良品を除去する噴風ノズル口の一列のみ作動させる方式とした。これにより、一次選別部においては、不良粒の除去漏れを防止するため、着色粒として疑わしいものは全て噴風・除去するが、二次選別部においては、不良粒の外形の画像が粒の中心位置方向に収縮され、粒の中心位置寄りの領域の噴風ノズル口のみを作動させて不良粒のみ精度よく適確に除去し、良粒の巻き添えによる歩留まり低下を防止することを可能とした。
なお、本発明の色彩選別機は、上記実施の形態に限らず、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、その構成を適宜変更できることはいうまでもない。例えば、一次選別部、二次選別部、三次選別部を備えた色彩選別機において、各選別部間において噴風動作を異ならせたり、選別アルゴリズムを異ならせたりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、一次選別と二次選別との間で選別アルゴリズムを異ならせることにより、二次選別部において不良粒の中心位置を精度よく算出し、不良粒のみを除去することができる色彩選別機を提供するものである。
【符号の説明】
【0045】
1 色彩選別機
2 シュート
3 貯留タンク
4 振動フィーダ
5 光学検出部
6 エジェクターノズル
7 一次良品排出樋
8 一次不良品排出樋
9 CCDカメラ
10 NIRカメラ
11 可視光源
12 近赤外光源
13 対向用バックグラウンド
14 昇降機
15 制御部
16 画像処理部
17 前処理部
18 二値化処理部
19 欠陥検出部
20 遅延回路
21 第1収縮処理部
22 第2収縮処理部
23 第1膨張処理部
24 第2膨張処理部
25 オーバーラップ処理部
26 バルブ割り当て処理部
27 中心位置算出部
28 噴射遅延処理部
29 噴射長さ処理部
30 出力線
31 アンド回路
32 出力線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料となる粒状物を帯状に流下させる一次選別用の移送手段、該移送手段から落下する粒状物の落下軌跡に設けられる光学検出部、及び該光学検出部のさらに下方に設けて正常な粒状物から一次不良品を除去するエジェクター手段を備えた一次選別部と、
該一次選別部において除去された一次不良品を多列状に流下させる二次選別用の移送手段、該移送手段から落下する粒状物の落下軌跡に設けられる光学検出部、及び該光学検出部のさらに下方に設けて一次不良品から二次不良品を除去するエジェクター手段を備えた二次選別部とを並設した色彩選別機において、
前記光学検出部で撮像して得られた粒状物の画像を二値化する二値化手段と、
該二値化手段により得られた画像から粒状物の欠陥部分を抽出する欠陥検出手段と、
前記二値化手段により得られた粒状物の外形の画像に対し収縮処理を施す収縮手段と、
前記欠陥検出手段により得られた粒状物の欠陥部分の画像に対し膨張処理を施す膨張手段と、
前記収縮手段により得られる外形の収縮画像と前記膨張手段により得られる欠陥部分の膨張画像とを合成する合成手段と、
該合成手段により得られた画像に基づいて、前記一次選別部用のエジェクター手段の噴風動作と前記二次選別部用のエジェクター手段の噴風動作とを異ならせるエジェクター作動決定手段とを備えたことを特徴とする色彩選別機。
【請求項2】
前記エジェクター作動決定手段は、一次選別部用のエジェクター手段を、当該一次不良品を除去する噴風ノズル口と、これに隣接する噴風ノズル口との複数列を作動させる一方、前記二次選別部用のエジェクター手段を、当該二次不良品を除去する噴風ノズル口の一列のみ作動させてなる請求項1記載の色彩選別機。
【請求項3】
前記合成手段により得られた画像に基づいて粒状物の落下方向の中心位置を算出する中心位置算出手段を設けてなる請求項1又は2記載の色彩選別機。
【請求項4】
前記収縮手段は、前記一次選別部で得られた粒状物の外形の画像に対して4近傍収縮処理を少なくとも1回施す一方、前記二次選別部で得られた粒状物の外形の画像に対して横収縮処理を複数回施してなる請求項1から3のいずれかに記載の色彩選別機。
【請求項5】
前記膨張手段は、前記一次選別部で得られた粒状物の欠陥部分の画像に対して8近傍膨張処理を複数回施す一方、前記二次選別部で得られた粒状物の欠陥部分の画像に対して8近傍膨張処理を複数回施してなる請求項1から4のいずれかに記載の色彩選別機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−575(P2012−575A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138808(P2010−138808)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】