説明

色材分散液、着色硬化性樹脂組成物、カラーフィルタ、液晶表示装置及び有機ELディスプレイ

【課題】 インクジェット法にてカラーフィルタの画素を形成するに際し、トレードオフの関係にある平坦性と分散性に関する効果の双方を満足し、かつ粘度安定性が高い色材分散液、および着色硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (a)色材、(c)有機溶剤、(d)分散剤及び(e)芳香族または脂肪族カルボン酸を含有し、
(d)分散剤が、ブロック共重合体及びグラフト共重合体を含有することを特徴とする色材分散液、及びその用途。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色材分散液、着色硬化性樹脂組成物、カラーフィルタ、液晶表示装置および有機ELディスプレイに関する。詳しくは、カラーフィルタの製造に当たり、インクジェット法による画素形成に適した長期の吐出安定性を有する着色硬化性樹脂組成物と、この組成物を用いて形成された平坦性の高い画素を有するカラーフィルタと、このカラーフィルタを有する液晶表示装置並びに有機ELディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット法により画素バンク内、すなわちブラックマトリックスで囲まれた略矩形の凹部領域に、着色材料(インク)を打ち込む(吐出し着弾させる)方式でのカラーフィルタ製造技術が実用化されている。カラーフィルタに必要な基本品質として、画素バンク内の塗布膜(以下、単に画素と称することがある)の平坦性が良好であること、すなわち凹凸や偏りによる色ムラがないことや、シワやクラックのような塗膜欠陥がないことが重要である。また製造プロセスの安定化や、歩留まりの向上には、撥液性を有するバンク内で、着弾した液滴の濡れ拡がりが良好であること、すなわち画素間の混色を避けながら必要な液滴量を充填できることが重要である。
【0003】
特に画素の平坦性が不充分であると色ムラの原因となり、高品質のディスプレイ用途には不適切である。これまで、画素の平坦性を向上させるために、濡れ広がりの温度、乾燥条件、インク構成材料種など、種々の条件について検討されてきているが、未だ平坦化のメカニズムは充分解明されておらず、経験的かつ試行錯誤的に諸条件を調整しても充分な平坦性が得られていない状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-258619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画素の平坦性については、インク構成材料の種類がその表面形状に影響する。中でも、使用する分散剤の種類はこの平坦性、つまり画素の表面形状への影響が大きく、特にグラフト共重合体タイプの高分子分散剤は塗布膜の平坦性向上効果が高い。
しかしながら、グラフト共重合タイプの分散剤を用いた場合、顔料の分散性は充分とは言いがたく、目標のコントラスト値を得るためには、顔料の分散強度を強くする、分散時間を長くするなど、より多くの分散エネルギーを投入する必要があり、顔料の微粉化と、それに伴う比表面積増大化による粘度上昇が避けられず、インクの経時粘度安定性も悪くなるため、インクジェットインクとしての適正粘度範囲に収めることが非常に困難である。
【0006】
それに対し、ブロック共重合タイプの高分子分散剤は、顔料分散性が高く、高コントラスト値を得ることができるが、画素の平坦性向上には寄与しにくい。
また当該ブロック共重合体が含有するアミン種を高極性にすると、分散性はさらに向上するものの、比較的低沸点でかつ充分に高極性な有機溶剤を併用する必要があり、この低沸点溶剤によってインクジェットヘッドが乾燥しやすくなり、塗布安定性(吐出安定性)を低下させる傾向がある。一方、より低極性のアミン種を含むブロック共重合体を使用した場合、低沸点溶剤を使用する必要性は低下し前記問題は解消するため、塗布安定性の低
下は回避されるが、分散性が不充分となる可能性があり、コントラスト値が低くなるとともに、色材分散液や着色硬化性樹脂組成物の粘度をインクジェットインクとしての適正粘度範囲に調整することが困難になるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は上記の諸問題を解決することにあり、特にインクジェット法にてカラーフィルタの画素を形成するに際し、トレードオフの関係にある平坦性と分散性に関する効果の双方を満足し、かつ粘度安定性が高い色材分散液、および着色硬化性樹脂組成物を提供することにある。
本発明の目的はまた、このような着色硬化性樹脂組成物を用いて形成された画素をもつ、高品質のカラーフィルタ並びに液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、ブロック共重合タイプの分散剤とグラフト共重合タイプの分散剤の両方を併用し、かつカルボン酸を併用することにより、この平坦性と分散性の双方を満足し、高い粘度安定性を示し、インクジェット法による塗布安定性の良好な顔料分散体、および着色硬化性樹脂組成物が得られることを見出した。
すなわち本発明の要旨は、(a)色材、(c)有機溶剤、(d)分散剤及び(e)芳香族または脂肪族カルボン酸を含有し、(d)分散剤が、ブロック共重合体及びグラフト共重合体を少なくとも1種以上含有することを特徴とする色材分散液、及びこれを用いてなる着色硬化性樹脂組成物に存する。
【0009】
本発明の他の要旨は、(a)色材、(b)バインダ樹脂、(c)有機溶剤、(d)分散剤及び(e)芳香族または脂肪族カルボン酸を含有し、(d)分散剤が、ブロック共重合体及びグラフト共重合体を少なくとも1種以上含有することを特徴とする着色硬化性樹脂組成物に存する。
また本発明の他の要旨は、当該着色硬化性樹脂組成物を用いて形成された画素を有するカラーフィルタ、当該カラーフィルタを有する液晶表示装置並びに有機ELディスプレイに存する。
【発明の効果】
【0010】
色材分散液及び着色硬化性樹脂組成物において、分散剤としてブロック共重合体とグラフト共重合体を併用することにより、画素(塗膜)平坦性と色材分散性を両立することができ、更に芳香族または脂肪族カルボン酸を含有することにより、粘度上昇を抑制し、経時粘度安定性を向上させることができる。
結果として、粘度安定性が良好で、高コントラストな、インクジェット方式によるカラーフィルタの製造に適した着色硬化性樹脂組成物を提供することができ、当該組成物を使用することにより、画素平坦性が良好なカラーフィルタを得ることができる。さらに、そのようなカラーフィルタを品質歩留まりよく製造できるため、液晶表示装置を大量安価に提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画素を上面から見た拡大写真である。
【図2】実施例および比較例にて形成された画素及びBMパターンの断面(但し、図1における横断面)の形状を表す模式図である。
【図3】本発明のカラーフィルタを有する有機EL素子の一例を示す断面図である。
【図4】実施例及び比較例において、コントラスト値を測定する際に用いる光源の発光スペクトルを表わす図である。
【図5】(a),(b)はいずれも、本願実施例及び比較例において、着色板の平行透過光および直交透過光の色度を測定する方法を説明するための模式的な図である。
【図6】実施例及び比較例において、コントラスト値の測定に用いた偏光板の光学特性を示すスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施様態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されるものではない。
[1]色材分散液
本発明の色材分散液は、少なくとも(a)色材、(c)有機溶剤、(d)分散剤及び(e)芳香族または脂肪族カルボン酸を含有し、(d)分散剤が、ブロック共重合体及びグラフト共重合体を少なくとも各々1種以上含有することを特徴とする。
【0013】
尚、以下に本発明の色材分散液、および着色硬化性樹脂組成物の各構成成分につき説明するが、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」等は、「アクリルおよび/又はメタクリル」、「アクリレートおよび/又はメタクリレート」等を意味するものとし、例えば「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸および/又はメタクリル酸」を意味するものとする。また、「(共)重合体」は「単一重合体(ホモポリマー)および/又は共重合体(コポリマー)」を意味するものとする。
【0014】
「アミン価」及び「酸価」は、特に断りの無い限り有効固形分換算の値を意味する。いずれも滴定法にて求められるが、特にアミン価については詳細に後述する。
以下において、「全固形分」とは、後記する溶剤成分以外の本発明の、色材分散液中又は着色硬化性樹脂組成物中の全成分を指す。
また、以下において、樹脂((共)重合体)の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算の値である。
【0015】
また、以下において、着色硬化性樹脂組成物は単に「インク」と称されることがある。
[1−1](a)色材
(a)色材は、本発明の色材分散液及び後述する着色硬化性樹脂組成物を着色するものをいう。色材としては、染顔料が使用できるが、耐熱性、耐光性等の点から顔料が好ましい。顔料としては青色顔料、緑色顔料、赤色顔料、黄色顔料、紫色顔料、オレンジ顔料、ブラウン顔料、黒色顔料等各種の色の顔料を使用することができる。また、その構造としてはアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系等の有機顔料の他に種々の無機顔料等も利用可能である。
【0016】
以下に、使用できる顔料の具体例をピグメントナンバーで示す。なお、以下に挙げる「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
赤色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259
、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276などを挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントレッド48:1、122、168、177、202、206、207、209、224、242、254など、更に好ましくはC.I.ピグメントレッド177、209、224、254などを挙げることができる。
【0017】
青色顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79などを挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6など、更に好ましくはC.I.ピグメントブルー15:6を挙げることができる。
【0018】
緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55、58などを挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントグリーン7、36、58などを挙げることができる。
黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208、並びに下記<顔料Y>で定義される顔料(以下、「顔料Y」と称する)が挙げられる。
【0019】
<顔料Y>
下記構造式で表されるアゾバルビツール酸のニッケルとの1:1錯体又はその互換異性体に、他の化合物が挿入されてなる化合物。
【0020】
【化1】

【0021】
これらの中で、好ましくはC.I.ピグメントイエロー83、117、129、138、139、154、155、180、185、及び前記2公報記載の顔料、顔料Y等であり、更に好ましくはC.I.ピグメントイエロー83、138、139、180、及び前記2公報記載の顔料、顔料Y等である。
オレンジ顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、16、17、
19、20、21、22、23、24、34、36、38、39、43、46、48、49、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79などを挙げることができる。この中でも、好ましくは、C.I.ピグメントオレンジ38、71などを挙げることができる。
【0022】
紫色顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50などを挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントバイオレット19、23など、更に好ましくはC.I.ピグメントバイオレット23を挙げることができる。
【0023】
上述の各種の顔料は、複数種を併用することもできる。例えば、色度の調整のために、顔料として、緑色顔料と黄色顔料とを併用したり、青色顔料と紫色顔料とを併用したりすることができる。
なお、これらの顔料の平均一次粒径は通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.25μm以下である。
【0024】
なお、顔料の一次粒径は次の方法で求める。すなわち、顔料をクロロホルム中に超音波分散し、コロジオン膜貼り付けメッシュ上に滴下して、乾燥させ、透過電子顕微鏡(TEM)観察により、顔料の一次粒子像を得、得られた一次粒子像から、個々の顔料粒子の粒径を、同じ面積となる円の直径に換算した面積円相当径として、複数個(通常200〜300個程度)の顔料粒子についてそれぞれ粒径を求める。得られた一次粒径の値を用い、下式の計算式の通り個数平均値を計算し平均粒径を求める。
個々の顔料粒子の粒径:X,X,X,X,・・・・,X,・・・・・・X
【0025】
【数1】

【0026】
また、(a)色材として使用できる染料としては、アゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、キノンイミン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、カルボニル系染料、メチン系染料等が挙げられる。
アゾ系染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー11,C.I.アシッドオレンジ7,C.I.アシッドレッド37,C.I.アシッドレッド180,C.I.アシッドブルー29,C.I.ダイレクトレッド28,C.I.ダイレクトレッド83,C.I.ダイレクトイエロー12,C.I.ダイレクトオレンジ26,C.I.ダイレクトグリーン28,C.I.ダイレクトグリーン59,C.I.リアクティブイエロー2,C.I.リアクティブレッド17,C.I.リアクティブレッド120,C.I.リアクティブブラック5,C.I.ディスパースオレンジ5,C.I.ディスパースレッド58,C.I.ディスパースブルー165,C.I.ベーシックブルー41,C.I.ベーシックレッド18,C.I.モルダントレッド7,C.I.モルダントイエロー5,C.I.モルダントブラック7等が挙げられる。
【0027】
アントラキノン系染料としては、例えば、C.I.バットブルー4,C.I.アシッドブルー40,C.I.アシッドグリーン25,C.I.リアクティブブルー19,C.I.リアクティブブルー49,C.I.ディスパースレッド60,C.I.ディスパースブルー56,C.I.ディスパースブルー60等が挙げられる。
この他、フタロシアニン系染料として、例えば、C.I.パッドブルー5等が、キノン
イミン系染料として、例えば、C.I.ベーシックブルー3,C.I.ベーシックブルー9等が、キノリン系染料として、例えば、C.I.ソルベントイエロー33,C.I.アシッドイエロー3,C.I.ディスパースイエロー64等が、ニトロ系染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー1,C.I.アシッドオレンジ3,C.I.ディスパースイエロー42等が挙げられる。
【0028】
これらのうち、主に最終的に得られる塗膜の耐光性および/又は耐候性、並びに堅牢性が優れるという点において、(a)色材には顔料を使用することが好ましい。また、色調の調整等の点において、必要に応じて顔料と染料を併用してもよい。
なお本発明は、(a)色材として青色の色材を使用した場合、特に粘度低下などの効果が顕著であり好ましい。
【0029】
本発明の色材分散液において、全固形分に対する(a)色材の占める割合は、通常90重量%以下、好ましくは85重量%以下、より好ましくは80重量%以下であり、また通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上である。
また、後述する本発明の着色硬化性樹脂組成物において、全固形分に対する(a)色材の占める割合は、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上であり、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。
【0030】
(a)色材の含有割合が少なすぎると、着色力が低くなり、所望の色濃度の実現に必要な膜厚が厚くなりすぎて、液晶セル化の際のギャップ制御などに悪影響を及ぼす場合がある。また、逆に(a)色材の含有割合が多すぎると、良好な分散状態が維持されにくく、(a)色材の凝集や沈降が生じ、結果として増粘や輝度、コントラストの低下という問題が生じるとともに、着色硬化性樹脂組成物の架橋密度が下がり、膜強度が下がり脱落しやすくなる傾向がある。
【0031】
[1−2](c)有機溶剤
本発明の色材分散液及び着色硬化性樹脂組成物は、(c)有機溶剤を必須成分とする。(c)有機溶剤は、前記各成分を溶解又は分散させ、粘度を調節する機能を有する。
かかる(c)有機溶剤としては、色材分散液及び着色硬化性樹脂組成物を構成する各成分を溶解または分散させることができるものであればよい。
【0032】
具体的には、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、メトキシメチルペンタノール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルのようなグリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルのようなグリコールジアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコ
ールモノブチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールジアセテートのようなグリコールアルキルエーテルアセテート類;
1,3−ブチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテートなどのグリコールジアセテート類;
アミルエーテル、プロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ジアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジヘキシルエーテルのようなエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、メトキシメチルペンタノンのようなケトン類;
エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、トリエチレングリコール、メトキシメチルペンタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンのような1価又は多価アルコール類;
n−ペンタン、n−オクタン、ジイソブチレン、n−ヘキサン、ヘキセン、イソプレン、ジペンテン、ドデカンのような脂肪族炭化水素類;
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシルのような脂環式炭化水素類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンのような芳香族炭化水素類;
アミルホルメート、エチルホルメート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、メチルイソブチレート、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸メチル、エチルカプリレート、ブチルステアレート、エチルベンゾエート、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトンのような鎖状又は環状エステル類;
3−メトキシプロピオン酸、3−エトキシプロピオン酸のようなアルコキシカルボン酸類;
ブチルクロライド、アミルクロライドのようなハロゲン化炭化水素類;メトキシメチルペンタノンのようなエーテルケトン類; アセトニトリル、ベンゾニトリルのようなニト
リル類、などが挙げられる。
【0033】
上記に該当する市販の溶剤としては、ミネラルスピリット、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、アプコシンナー、ソーカルソルベントNo.1及びNo.2、ソルベッソ#150、シェルTS28 ソルベント、カルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ジグライム(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0034】
これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶剤の沸点は、通常130℃以上300℃以下(圧力1013.25[hPa]条件下。以下、沸点に関しては全て同様。)であり、好ましくは、150℃以上280℃以下である。沸点が低すぎると、得られる塗膜の均一性が不良になる傾向がある。また、沸点が高すぎると、後述するように、硬化性樹脂組成物の乾燥抑制の効果は高いが、熱焼成後に
おいても塗膜中に残留溶剤が多く存在し、品質上の不具合を生じたり、真空乾燥などでの乾燥時間が長くなり、タクトタイムを増大させるなどの不具合を生じたりする場合がある。
【0035】
また、溶剤の蒸気圧は、得られる塗膜の均一性の観点から、通常10mmHg以下、より好ましくは5mmHg以下、さらに好ましくは1mmHg以下のものが使用できる。
なお、インクジェット法によるカラーフィルタ製造において、ノズルから発せられるインクは数〜数十pLと非常に微細であるため、ノズル口周辺あるいは画素バンク内に着弾する前に、溶剤が蒸発してインクが濃縮・乾固する傾向がある。これを回避するためには溶剤の沸点は高い方が好ましく、具体的には、(c)有機溶剤が沸点180℃以上の溶剤を含むことが好ましい。より好ましくは、沸点が200℃以上、特に好ましくは沸点が220℃以上である溶剤を含有する。また、沸点180℃以上である溶剤(以下、「高沸点溶剤」と称する)は、(c)有機溶剤中50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上が最も好ましい。高沸点溶剤が50重量%未満である場合には、インク液滴からの溶剤の蒸発防止効果が十分に発揮されない可能性がある。
【0036】
好ましい高沸点溶剤として、例えば前述の各種溶剤の中ではジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサノールジアセテート、トリアセチンなどが挙げられる。
さらに、インクの粘度調整や固形分の溶解度調整のためには、沸点が180℃より低い溶剤を一部含有することも効果的である。このような溶剤としては、低粘度で溶解性が高く、低表面張力であるような溶剤が好ましく、エーテル類、エステル類やケトン類などが好ましい。中でも特に、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノールアセテートなどが好ましい。
【0037】
一方、有機溶剤がアルコール類などの高極性溶剤を含有すると、インクジェット法における吐出安定性が劣化するという問題が生じる場合がある。よって、アルコール類は全溶剤中20重量%以下とすることが好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下が特に好ましい。
本発明の色材分散液に占める(c)有機溶剤の割合は、特に制限はないが、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上であり、また通常90重量%以下、好ましくは85重量%以下である。(c)有機溶剤が多すぎると、顔料表面から分散剤が脱離して顔料凝集を起こしやすくなる、最終インクが適正な固形分範囲を下回り大量のインクをうたないと適正膜厚を得られない、最終インクが適正粘度範囲の下限を下回りインクジェット塗布しにくくなる等の問題が生じる場合があり、また少なすぎると分散時に高粘度になり顔料が分散しにくくなる、分散工程において液流動性が下がり取り扱いにくい、分散装置内において高粘度のため異常発熱しやすい、等の問題が生じる可能性がある。
【0038】
また、後述する本発明の着色硬化性樹脂組成物全体に占める、(c)有機溶剤の割合は、特に制限はないが、通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上であり、通常99重量%以下、好ましくは95重量%以下である。(c)有機溶剤が多すぎると、相対的に固形分濃度が低くなり過ぎて塗膜を形成するには不適当となったり、インクの粘度が高くなり過ぎて、組成物の安定性に支障をきたす等の問題が生じる場合があり、またインクジェット法に適用した場合に、吐出安定性が低下する可能性がある。
【0039】
[1−3](d)分散剤
本発明の色材分散液及び着色硬化性樹脂組成物は、(d)分散剤として、ブロック共重合体とグラフト共重合体を各々1種類以上含有することを必須とする。グラフト共重合体
は、これを含む着色硬化性樹脂組成物を用いて形成される塗布膜の、平坦性向上に特に効果的であり、ブロック共重合体は、色材の分散性向上に特に効果的であるため、これを含む着色硬化性樹脂組成物を用いることにより高コントラストの画素を得ることができる。
【0040】
ブロック共重合体及びグラフト共重合体の種類に特に制限はないが、より具体的には(d−1)窒素原子を含有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体、(d−2)窒素原子を含有するグラフト共重合体、から選ばれた各々1以上の分散剤を含有することが好ましい。
(d−1)窒素原子を含有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体、及び(d−2)窒素原子を含有するグラフト共重合体は、これに含まれる窒素原子が顔料等の色材表面に対して親和性をもち、窒素原子以外の部分が媒質に対する親和性を高めることにより、全体として分散安定性の向上に寄与するものと推定される。
【0041】
分散剤の性能は、その固体表面に対する吸着挙動により大きく左右される。分子のアーキテクチャーと吸着挙動の関係については、同じユニットを用いた場合は、ランダム共重合<グラフト共重合体<ブロック共重合体、の順で吸着挙動が優れていることが知られている。(例えば、Jones and Richards,”Polymers at Surfaces and Interfaces”
p281)。
【0042】
詳しいメカニズムは不明だが、以下のことが推察される。
即ち、通常のランダム共重合体の場合、共重合体を構成するモノマーは、重合体形成時に、立体的に及び/又は電気的に、共重合体中に安定的に配置される確率が高くなる。モノマーが安定的に配置された部分(分子)は、立体的に及び/又は電気的に安定しているため、色材に吸着するとき、かえって障害となる場合がある。これに対し、グラフト共重合体あるいはブロック共重合体のように分子配列が制御された樹脂は、分散剤の吸着を妨げる部分を、色材と分散剤との吸着部から離れた位置に配置することができる。つまり、色材と分散剤との吸着部には吸着に最適な部分を、溶剤親和性が必要な部分にはそれに適した部分を配置することができる。特に結晶子サイズの小さい色材の分散には、この分子配置が良好な分散性に影響するものと推察される。
【0043】
(d−1)窒素原子を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体
窒素原子を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体(以下「(d−1)共重合体」と称することがある)は、(a)色材を極めて効率よく分散しうる点で好ましい。その理由は明らかではないが、分子配列が制御されていることにより、分散剤が色材に吸着する際に障害となる構造が少ないためと推察される。
【0044】
窒素原子を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体としては、窒素原子を含む官能基を有するB−ブロック及び、窒素原子を含む官能基を有さないA−ブロックからなる共重合体が好ましい。
B−ブロックは、窒素原子を含む官能基を有し、該官能基としてはアミノ基、アミド基、或いはイミダゾリル基などの窒素含有複素環基が挙げられるが、中でも1〜3級アミノ基が好ましい。なお、窒素原子を含む官能基として3級アミノ基を有することにより、4級アンモニウム塩基などの極性基を有する場合と異なり、(c)有機溶剤として高極性溶剤を含む必要性が低下する。つまり高極性溶剤を含まなくても、高い色材分散性が得られる点からも、窒素原子含有官能基としては3級アミノ基がより好ましい。
【0045】
特に、窒素原子を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体としては、(d1)側鎖にアミノ基を有するB−ブロックと、側鎖にアミノ基を有さないA−ブロックからなる、A−Bブロック共重合体および/またはA−B−Aブロック共重合体(以下「(d1)共重合体」と称することがある)が好ましい。
(d1)共重合体を構成する単量体組成において、該1〜3級アミノ基を有する単量体の割合は20モル%以上が好適であり、より好ましくは50モル%以上である。アミノ基の量を上記下限値以上とすることにより、顔料に対する分散剤の吸着性を十分に確保し、高い分散安定性を得ることができる。1〜3級アミノ基としては、好ましくは−NR4142(但し、R41及びR42は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示す。)で表わされ、これを含む部分構造(繰返し単位)として好ましいものは、例えば下記式(VIII)で表される。
【0046】
【化2】

【0047】
(但し、R41及びR42は、上記のR41及びR42と同義であり、R43は炭素数1以上のアルキレン基、R44は水素原子又はメチル基を示す。)
中でも、R41及びR42はメチル基が好ましく、R43はメチレン基、エチレン基が好ましく、R44は水素原子もしくはメチル基であるのが好ましい。このような部分構造としてはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート由来の構造などが、特に好適に用いられる。
【0048】
上記の如きアミノ基を含有する部分構造は、1つのB−ブロック中に2種以上含有されていてもよい。その場合、2種以上のアミノ基含有部分構造は、該B−ブロック中においてランダム共重合又はブロック共重合の何れの態様で含有されていてもよい。またアミノ基を含有しない部分構造が、B−ブロック中に一部含まれていてもよく、そのような部分構造の例としては、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造等が挙げられる。かかるアミノ基を含まない部分構造の、B−ブロック中の含有量は、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜20重量%であるが、かかるアミノ基非含有部分構造はB−ブロック中に含まれないことが最も好ましい。
【0049】
一方、窒素原子を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体を構成するA−ブロックは、上述したアミノ基等の窒素原子含有官能基を有さず、上述したB−ブロックを構成するモノマーと共重合しうるモノマーから成るものであれば、特に制限は無いが、通常、親溶剤性のモノマーから選ばれる。
A−ブロックとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチルアクリル酸グリシジル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリル酸クロライドなどの(メタ)アクリル酸塩系モノマー;酢酸ビニル系モノマー;アリルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル系モノマーなどのコモノマーを共重合させたポリマー構造が挙げられる。
【0050】
これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーがより好ましく、特にA−ブロックおよびB−ブロックを構成するモノマーがいずれも(メタ)アクリル酸エステル系モノマーであることが好ましい。
中でも、A−ブロックに適度な疎水性を付与することにより、溶剤の非極性部分へのなじみをよくする点において、特に下記一般式(IX)で表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造を含むことが好ましい。
【0051】
【化3】

【0052】
(上記一般式(IX)中、R91は、水素原子又はメチル基を表す。R92は、置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。)
なお、色材との親和性が高く、なじみがよいという点では、R92は環状の基であることが好ましい。
【0053】
また、A−ブロックとしては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを共重合成分として含む(すなわち、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート由来の部分構造を含む)ものが好ましく、特に下記式(X)で表される部分構造を有するA−ブロックが好ましい。
【0054】
【化4】

【0055】
(上記一般式(X)中、n10は1〜5の整数を示し、R10は水素原子またはメチル基を示し、V10は炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。)
なお、1分子中に上記ユニット、即ち一般式(X)が複数ある場合、n10は同一でも異なっていてもよい。またV10は、エチル基であることが特に好ましい。
上記一般式(X)で表される部分構造は、当該(メタ)アクリル系共重合体を構成する単量体換算で1分子中に3〜20モル%含まれていることが好ましく、3〜10モル%含まれていることが最も好ましい。
【0056】
詳細の作用機構は不明であるが、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート由来の部分構造、特に上記式にて表される部分構造を有することにより、水素結合性を高めることが可能であり、分散溶剤との親和性が向上し、分散系の安定性が増すものと考えられる。
上記一般式(IX)や(X)等で表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造は、1つのA−ブロック中に各々2種以上含有されていてもよい。
【0057】
もちろん該A−ブロックは、更にこれら以外の部分構造を含有していてもよい。
2種以上のモノマー由来の部分構造がA−ブロック中に存在する場合、各部分構造は該A−ブロック中においてランダム共重合又はブロック共重合の何れの態様で含有されていてもよい。
A−ブロック中に前記一般式(IX)または(X)で表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造以外の部分構成を含有する場合、当該(メタ)アクリル酸エステル系モノマー以外の部分構造の、A−ブロック中の含有量は、好ましくは0〜99重量%、より好ましくは0〜85重量%である。
【0058】
本発明における、窒素原子を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体としては、このようなA−ブロックとB−ブロックとからなる、A−Bブロック又はA−B−Aブロック共重合型高分子化合物が好ましい。中でもA−Bブロック共重合体が好ましい。このようなブロック共重合体は、例えば以下に示すリビング重合法にて調製される。
リビング重合法にはアニオンリビング重合法、カチオンリビング重合法、ラジカルリビング重合法がある。アニオンリビング重合法は、重合活性種がアニオンであり、例えば特開2009−52010号公報に記載のスキームで示される。
【0059】
ラジカルリビング重合法(ニトロキシル法、ATRP法)は重合活性種がラジカルであり、例えば特開2009−52010号公報に記載のスキームで示される。
このような(メタ)アクリル系ブロック共重合体の合成は、特開2009−52010号公報に援用するような公知の方法を採用することができる。
本発明に係るA―Bブロック共重合体およびA−B−Aブロック共重合体の、固形分1g中のアミン価は、好ましくは80〜150mgKOH/gであり、より好ましくは100〜140mgKOH/gである。
【0060】
アミン価が低すぎると、色材表面への吸着力が不十分となり、十分な分散安定性を得られない可能性がある。一方、アミン価が高すぎると逆にA−ブロックの分子量が不十分になることを意味するため、分散安定性が劣る傾向がある。言い換えれば、最適な分散性を発現するためのアミン価が上記範囲にあることが好ましい、ということになる。
なお、分散剤のアミン価(有効固形分換算)は、分散剤試料中の溶剤を除いた固形分1gあたりの塩基量と当量のKOHの重量で表し、次の方法により測定する。100mLのビーカーに分散剤試料の0.5〜1.5gを精秤し、50mLの酢酸で溶解する。pH電極を備えた自動滴定装置を使って、この溶液を0.1mol/LのHClO酢酸溶液にて中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点とし次式によりアミン価を求める。
【0061】
アミン価[mgKOH/g]=(561×V)/(W×S)
(但し、W:分散剤試料秤取量[g]、V:滴定終点での滴定量[mL]、S:分散剤試料の固形分濃度[wt%]を表す。)
また、このブロック共重合体の酸価は、該酸価の元となる酸性基の有無及び種類にもよるが、一般に低い方が好ましく、通常50mgKOH/g以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下である。
【0062】
本発明においては、上述のものと同様の構造を有する市販の(メタ)アクリル系ブロッ
ク共重合体を適用することもできる。
なお、色材の平均一次粒径が小さいときには、比表面積が増大することで単位面積当たりの分散剤吸着量が少なくなる。このような場合に、上述したA−Bブロック共重合体またはA−B−Aブロック共重合体からなる分散剤は、他の構造の分散剤と比べて効果の差が非常に顕著に現れるため、特に好適に用いられるものである。
【0063】
(d−2)窒素原子を含有するグラフト共重合体
窒素原子を含有するグラフト共重合体(以下、「(d−2)共重合体」と称することがある)は、(a)色材を極めて効率よく分散しうる点で好ましい。その理由は明らかではないが、色材と分散剤との吸着の障害となる部分(分子)が、色材への吸着部周辺に配置することを、積極的に排斥し得る構造を有しているためと推察される。
【0064】
(d−2)共重合体として、具体的には、側鎖に窒素原子を含有する繰り返し単位を有するもの、及び主鎖に窒素原子を含有する繰り返し単位を有するものが挙げられる。
(d−2−1)側鎖に窒素原子を含有する繰り返し単位を有するグラフト共重合体
側鎖に窒素原子を含有する繰り返し単位を有するグラフト共重合体としては、特に限定されないが、ポリアリルアミンのアミノ基の一部が、1)片末端にカルボキシル基を有するポリエステル、2)片末端にカルボキシル基を有するポリアミド、又は3)片末端にカルボキシル基を有するポリエステルアミド、で酸アミド化した構造を有するものが挙げられる。
【0065】
具体的には、下記の(d2)一般式(VII)で示されるポリアリルアミン誘導体(以下
「(d2)共重合体」と称することがある)が挙げられる。
【0066】
【化5】

【0067】
(式中、R71は、−NHCOR72又は−NHOCOR72−で示される基を、X及びYは夫々独立に水素原子、重合開始剤残基又は連鎖移動触媒残基の何れかを、nは2〜1000の整数を表す。ここで、R72は遊離のカルボン酸を有するポリエステル、遊離のカルボン酸を有するポリアミド、または遊離のカルボン酸を有するポリエステルアミドのいずれかからカルボキシル基を除いた残基を表す。但し、n個のR71中、少なくとも1個は−NHCOR72で示される基を表す。)
上記一般式(VII)において、R72で表される「遊離のカルボン酸を有するポリエス
テルからカルボキシル基を除いた残基」としては、「ヒドロキシカルボン酸及び/又はラクトンに由来するポリエステルからカルボキシル基を除いた残基」及び「二塩基酸(ジカルボン酸)とジオールに由来するポリエステルからカルボキシル基を除いた残基」が挙げられる。
【0068】
ここで、ヒドロキシカルボン酸に由来するポリエステルとしては、通常、総炭素数3〜20、好ましくは3〜10、より好ましくは3〜8の脂肪族ヒドロキシカルボン酸の脱水縮合で得られるポリエステルが、又、対応するラクトンに由来するポリエステルとしては、通常、総炭素数3〜20、好ましくは3〜10、より好ましくは3〜8のラクトンの開環重合で得られるポリエステルが挙げられる。又、二塩基酸(ジカルボン酸)とジオールに由来するポリエステルとしては、総炭素数4〜24、好ましくは4〜10の脂肪族又は
芳香族ジカルボン酸と、炭素数2〜20、好ましくは2〜10のアルキレングリコール又はポリアルキレングリコールとの脱水縮合で得られるポリエステルが挙げられる。
【0069】
上記ポリエステルの重合度(ポリエステル単位)は、通常、2〜100程度である。又、分子量は、通常、300〜20,000、好ましくは1,000〜10,000である。分子量が小さすぎると、分散剤側鎖が短すぎて十分な分散が得られない場合があり、大きすぎると、分散剤側鎖が長すぎて顔料同士の凝集の原因となり、流動性の低下をもたらす場合がある。
【0070】
上記一般式(VII)において、R72で表される「遊離のカルボン酸を有するポリアミ
ドからカルボキシル基を除いた残基」としては、「アミノカルボン酸に由来するポリアミドからカルボキシル基を除いた残基」が挙げられ、具体的には、通常、総炭素数3〜20、好ましくは3〜10、より好ましくは3〜8の脂肪族アミノカルボン酸の脱水縮合で得られるポリアミドからカルボキシル基を除いた残基が挙げられる。その重合度(ポリアミド単位)は、通常、2〜100程度であり、又、分子量は、上記ポリエステルと同程度のものが挙げられる。
【0071】
上記一般式(VII)において、R72で表される「遊離のカルボン酸を有するポリエス
テルアミドからカルボキシル基を除いた残基」としては、「二塩基酸(ジカルボン酸)とジアミンに由来するポリエステルアミドからカルボキシル基を除いた残基」が挙げられる。ここで、二塩基酸(ジカルボン酸)とジアミンに由来するポリエステルアミドとしては、総炭素数4〜24、好ましくは4〜10の脂肪族又は芳香族ジカルボン酸と、炭素数2〜20、好ましくは2〜10のジアミンとの脱水縮合で得られるポリエステルアミドが挙げられる。上記ポリエステルアミドの重合度(ポリエステルアミド単位)は、通常、2〜100程度であり、又、分子量は、上記ポリエステルと同程度のものが挙げられる。
【0072】
上記の中でも、R71が、−NHCOR72である場合が好ましく、R71の中でも、「ヒドロキシカルボン酸及び/又はラクトンに由来するポリエステルからカルボキシル基を除いた残基」である場合、主鎖にあたるポリアリルアミン由来の窒素原子以外に窒素原子を有さないことにより、分子中の吸着基とそれ以外の構造との役割分担が明確になり、高い顔料分散性や分散安定性が得られるため、好ましい。
【0073】
及びYは夫々独立に水素原子、重合開始剤残基又は連鎖移動触媒残基の何れかを表す。ここで、重合開始剤残基又は連鎖移動触媒残基とは、上記一般式(VII)で表され
る共重合体の主鎖にあたるポリアミンを合成する際に用いられた重合開始剤又は連鎖移動触媒に由来する残基を意味する。
又、nは2〜1000の整数を表し、n個のR71中、少なくとも1個は−NHCOR72で示される基を表す。中でも、n個のR71中、酸アミド結合(上記一般式(VII)において、R71が、−NHCOR72である結合)により結合した残基が60〜
95モル%であるのが好ましく、65〜90モル%であるのが特に好ましい。この値が小さすぎると、顔料同士の凝集が起こり、粘度低下効果の不足や塗膜外観に不都合を生じさせる場合がある。一方、大きすぎると顔料と吸着する官能基が少なくなり、顔料分散に寄与することが困難となり、粘度低下効果が不十分となったり、塗膜外観に不都合を生じさせる場合がある。
【0074】
尚、上記(d2)共重合体の原料となるポリアリルアミンの数平均分子量は、通常、150〜100,000程度であり、好ましくは600〜20,000である。この値が小さすぎると、顔料に対する吸着力が不足して分散が不十分となる場合があり、大きすぎると顔料同士の凝集が起こり分散が困難になる場合がある。
上記(d2)一般式(VII)で表されるポリアリルアミン誘導体のアミン価(mgKO
H/g)は、5〜30程度が好ましい。この値が小さすぎると顔料に対する吸着力が不足して分散が不十分となる場合があり、大きすぎると顔料同士の凝集が起こり分散が困難になる場合がある。又、酸価(mgKOH/g)は、顔料の分散性の点から2.5〜50程度が好ましい。更に、(d2)共重合体の数平均分子量は、通常、2000〜100,000程度である。
【0075】
なお(d2)共重合体は、例えば特開平9−169821号公報に記載の方法に従って製造可能である。
(d−2−2)主鎖に窒素原子を含有する繰り返し単位を有するグラフト共重合体
主鎖に窒素原子を含有する繰り返し単位を有するグラフト共重合体としては、特に限定されないが、具体的には、(d3)一般式(II)で表される繰り返し単位及び一般式(III)で表される繰り返し単位のうち、少なくとも一つを有するグラフと共重合体(以下「(d3)共重合体」と称することがある)が挙げられる。
【0076】
【化6】

【0077】
式中、R51は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、Aは水素原子または下記式(IV)〜(VI)のいずれかを表す。
式(II)中、R51は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の直鎖状または分岐状の炭素数1〜5のアルキレン基を表し、好ましくは炭素数2〜3であり、更に好ましくはエチレン基である。Aは水素原子または下記式(IV)〜(VI)のいずれかを表すが、好ましくは式(IV)である。
【0078】
【化7】

【0079】
式(III)中、R51及びAは、前記式(II)におけるR51およびAと同義である。
【0080】
【化8】

【0081】
式(IV)中、W1は炭素数2〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、中
でもブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等の炭素数4〜7のアルキレン基が好ましい。pは1〜20の整数を表し、好ましくは5〜10の整数である。
【0082】
【化9】

【0083】
式(V)中、Y1は2価の連結基を表し、中でもエチレン基、プロピレン基等の炭素数
1〜4のアルキレン基、又はエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等の炭素数1〜4のアルキレンオキシ基が好ましい。W2はエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の直鎖
状または分岐状の炭素数2〜10のアルキレン基を表し、中でもエチレン基、プロピレン基等の炭素数2〜3のアルキレン基が好ましい。Y2は水素原子または−CO−R52
52はエチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜10のアルキル基を表し、中でもエチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の炭素数2〜5のアルキル基が好ましい。)を表す。qは、1〜20の整数を表し、好ましくは5〜10の整数である。
【0084】
【化10】

【0085】
式(VI)中、W3は炭素数1〜50のアルキル基または水酸基を1〜5有する炭素数
1〜50のヒドロキシアルキル基を表し、中でもステアリル基等の炭素数10〜20のアルキル基、モノヒドロキシステアリル基等の水酸基を1〜2個有する炭素数10〜20のヒドロキシアルキル基が好ましい。
(d3)共重合体における式(II)または(III)で表される繰り返し単位の含有率は、高い方が好ましく、通常50モル%以上であり、好ましくは70モル%以上である。式(II)で表される繰り返し単位と、式(III)で表される繰り返し単位の、両方を併有してもよく、その含有比率に特に制限は無いが、式(II)の繰り返し単位を多く
含有していた方が好ましい。式(II)または式(III)で表される繰り返し単位の合計数は、1分子中に通常1〜100、好ましくは10〜70、更に好ましくは20〜50である。
【0086】
また、式(II)及び式(III)以外の繰り返し単位を含んでいてもよく、他の繰り返し単位としては、例えばアルキレン基、アルキレンオキシ基などが例示できる。本発明のグラフト共重合体は、その末端が−NH2又は−R51−NH2(R51は、前記R51と同義)のものが好ましい。
尚、(d3)共重合体は、主鎖が直鎖状であっても分岐していてもよい。
【0087】
(d3)共重合体のアミン価は、通常5〜100mgKOH/gであり、好ましくは10〜70mgKOH/gであり、更に好ましくは15〜40mgKOH/gである。アミン価は高すぎても低すぎても分散安定性が低下し、粘度が不安定になることがあり、また、高すぎると液晶パネルを形成した後の電気特性が低下することがある。
(d3)共重合体のGPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、3000〜50000が好ましく、5000〜20000が特に好ましい。重量平均分子量が3000未満であると、色材の凝集を防ぐことができず、高粘度化ないしはゲル化してしまうことがある。重量平均分子量が50000を超えるとそれ自体が高粘度となり、また(c)有機溶剤への溶解性が不足する場合がある。また、分子自体の立体障害により、(a)色材への吸着が阻害されるため、分散性が低下する可能性がある。
【0088】
(d3)共重合体の合成方法は、公知の方法が採用でき、例えば特公昭63−30057号公報に記載の方法を用いることができる。
本発明においては、上述のものと同様の構造を有する市販のグラフト共重合体を適用することもできる。
(d−3)その他の分散剤
本発明の色材分散液及び着色硬化性樹脂組成物に用いられる(d)分散剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記の各種分散剤以外の分散剤を含有していてもよい。
【0089】
その他の分散剤としては、特開2009−52031号公報に記載のウレタン樹脂分散剤の他、特開2006−343648号公報に記載の各種分散剤等、例えば、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレンジエステル系分散剤、ポリエーテルリン酸、ポリエステルリン酸、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤、脂肪族変性ポリエステル系分散剤等を挙げることができる。
【0090】
このような分散剤の具体例としては、EFKA(エフカーケミカルズビーブイ(eFKA)社製)、Disperbyk(ビックケミー社製)、ディスパロン(楠本化成社製)、SOLSPERSE(ルーブリゾール社製)、KP(信越化学工業社製)、ポリフロー(共栄社化学社製)等のシリーズ名で市販のものの中から選択することができる。これらの高分子分散剤は1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0091】
本発明の色材分散液及び着色硬化性樹脂組成物において、(d)分散剤の含有割合は、(a)色材に対して、通常150重量%以下、好ましくは100重量%以下、更に好ましくは50重量%以下であり、また、通常5重量%以上、好ましくは7重量%以上、特に好ましくは10重量%以上である。(d)分散剤の含有割合が少なすぎると、(a)色材への吸着が不足し、凝集を防ぐことができず、高粘度化ないしゲル化してしまうことがあるため、分散安定性が悪化し、再凝集や増粘等の問題が発生する可能性がある。逆に多すぎると、相対的に色材の割合が減るため、着色力が低くなり、色濃度に対して膜厚が厚くなりすぎて、カラーフィルタに用いた場合、液晶セル化工程でのセルギャップ制御不良が出ることがある。
【0092】
(d−2)共重合体の中でも、色材分散液や着色硬化性樹脂組成物の増粘を抑制する効果が高い点から、側鎖に窒素原子を含有する繰り返し単位を有するグラフト共重合体、特に(d2)一般式(VII)で示されるポリアリルアミン誘導体がより好ましい。 本発明
の色材分散液及び着色硬化性樹脂組成物における(d)分散剤は、上述した(d−1)窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体、及び(d−2)窒素原子を含有するグラフト共重合体含有し、その割合は重量比率で5/95〜95/5の範囲内であることが好ましい。含有割合を上記範囲内に制御することにより、両分散剤の長所が生かされ、画素平坦性と色材分散性の両立が、より高いレベルで達成される。
【0093】
[1−4](e)芳香族または脂肪族カルボン酸
本発明の色材分散液及び着色硬化性樹脂組成物は、(e)芳香族または脂肪族カルボン酸を必須成分とする。(e)芳香族または脂肪族カルボン酸(以下「(e)カルボン酸」と称することがある)を含有することにより、色材分散液や着色硬化性樹脂組成物の粘度を下げ、経時の粘度安定性を高めることができる。
【0094】
(e)カルボン酸としては、芳香族および脂肪族のいずれでもよいが、増粘抑制作用の観点から、酸解離定数pKaが比較的低いものが好ましい。具体的には4.5以下の化合物が好ましく、4.2以下がより好ましい。ここで酸解離定数pKaは、23℃で、水を溶剤として測定した場合の値である。
詳細なメカニズムは不明であるが、スルホン酸やリン酸など、カルボン酸以外の酸ではこの効果は殆ど見られず、逆に粘度が不安定になるなどマイナス面が多い。また、カルボン酸の中でも、カルボキシル基を分子内に一つ含む一塩基酸が最も好ましく、多価のカルボン酸と比べて、粘度低減や経時の粘度安定性、高コントラストなどの向上効果がより顕著である。
【0095】
このような(e)カルボン酸の具体的な構造としては、乳酸、プロピオール酸、安息香酸、またはこれらがハロゲン原子またはフェニル基で置換されてなる化合物が挙げられる。中でもハロゲン原子で置換された化合物は、組成物の増粘抑制効果が増進される傾向があり好ましい。特に好ましい化合物としては、3−フェニルプロピオール酸、2−ブロモ安息香酸、安息香酸、及び乳酸が挙げられ、最も好ましくは3−フェニルプロピオール酸が挙げられる。
【0096】
(e)カルボン酸の含有量は、(d)分散剤に含まれるブロック共重合体に含まれるアミノ基の当量数に対し、好ましくは0.01〜3.5当量、より好ましくは0.1〜3当量、特に好ましくは0.2〜2.5当量である。上記上限値以下とすることにより、高い画素形成性を保ちつつ、十分な増粘抑制効果を奏することができるため好ましい。なお、ブロック共重合体に含まれるアミノ基の当量数は、まず前述した方法にて該ブロック共重合体のアミン価(有効固形分換算)を求め、次に該ブロック共重合体の単位重量あたりのアミンのグラム当量(つまり滴定に使用するKOHが56.1g/molであるため、(アミン価)/56.1で求められる値。)として求める。これに対して上述する範囲の当量数となるよう、カルボン酸の含有量を決めればよい。
【0097】
(e)カルボン酸化合物は、(d)分散剤におけるグラフト共重合体の特性に悪影響を与えることはないため、ブロック共重合体とともにこの三者を併用することで、平坦性、分散性、粘度安定性、インクジェット塗布安定性のいずれも良好な色材分散液および着色硬化性樹脂組成物を得ることができる。
[2]着色硬化性樹脂組成物
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、(a)色材、(b)バインダ樹脂、(c)有機溶剤、(d)分散剤及び(e)芳香族または脂肪族カルボン酸を含有し、(d)分散剤が、ブ
ロック共重合体及びグラフト共重合体を少なくとも1種以上含有する。
【0098】
このような着色硬化性樹脂組成物は、予め上述した各成分等を含む色材分散液を調製し、これに(b)バインダ樹脂等の他の成分を含有させて調製したものであってもよく、また該組成物に含まれる各成分を同時に、または順次添加して混合したものであってもよい。着色硬化性樹脂組成物の調製方法については、後に詳述する。
本発明の着色硬化性樹脂組成物の必須成分である(a)色材、(c)有機溶剤、(d)分散剤および(e)芳香族または脂肪族カルボン酸は、各々[1]色材分散液に含まれる成分として上述したものと同様のものが挙げられる。
【0099】
以下、これら以外の成分につき説明する。
[2−1](b)バインダ樹脂
(b)バインダ樹脂の種類に特に制限は無く、例えば、特開平7−207211号、特開平8−259876号、特開平10−300922号、特開平11−140144号、特開平11−174224号、特開2000−56118号、特開2003−233179号、及び特開2009−52031号などの各公報等に記載される公知の高分子化合物を使用することができるが、特に好ましいものにつき、以下に説明する。
【0100】
(b−1)(A)下記一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレート、および(B1)エポキシ基含有(メタ)アクリレートまたは(B2)(メタ)アクリル酸、を含むエチレン性不飽和基含有単量体を反応させて得られる(メタ)アクリル系共重合体。(以下、この共重合体を、単に「(b−1)共重合体」と称する。)
(b−1)共重合体は、(A)下記一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレート由来の部分構造を必須成分とする。
【0101】
【化11】

【0102】
(上記一般式(1)において、R〜Rは各々独立して、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。R及びRは、互いに連結して環を形成していてもよい。)
前記一般式(1)において、RとRが連結して形成される環は、脂肪族環であるのが好ましく、飽和又は不飽和の何れでもよく、炭素数は5〜6であるのが好ましい。
中でも、一般式(1)で表される構造としては、下記式(1a)、(1b)、又は(1c)で表される構造が好ましい。
【0103】
【化12】

【0104】
これらの構造が導入された樹脂を含有することによって、本発明の着色硬化性樹脂組成物をカラーフィルタに使用する場合に、該組成物の耐熱性をより向上させたり、該組成物を用いて形成された画素の強度を増すことが可能である。
尚、前記一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
前記一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートとしては、当該構造を有する限り公知の各種のものが使用できるが、特に下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
【0106】
【化13】

【0107】
式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、R10は前記一般式(1)で表される構造を示す。
また (b−1)共重合体は、(B1)エポキシ基含有(メタ)アクリレート(以下、「(B1)エポキシ基含有(メタ)アクリレート」と称す)または(B2)(メタ)アクリル酸(以下、「(B2)(メタ)アクリル酸」と称す)由来の部分構造を必須成分とする。
【0108】
(B1)エポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)
アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が例示できる。中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらのエポキシ基含有(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0109】
尚、(A1)前記一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートと、(B1)エポキシ基含有(メタ)アクリレート又は(B2)(メタ)アクリル酸との共重合反応には、公知の溶液重合法が適用される。使用する溶剤はラジカル重合に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、通常用いられている有機溶剤を、通常量使用することができる。
【0110】
又、共重合反応に使用されるラジカル重合開始剤は、ラジカル重合を開始できるものであれば特に限定されるものではなく、通常用いられている有機過酸化物触媒やアゾ化合物触媒を、通常量使用することができる。
共重合反応は、共重合反応に使用される単量体及びラジカル重合開始剤を溶剤に溶解し、攪拌しながら昇温して行ってもよいし、ラジカル重合開始剤を添加した単量体を、昇温、攪拌した溶剤中に滴下して行ってもよい。又、溶剤中にラジカル重合開始剤を添加し昇温した中に単量体を滴下してもよい。反応条件は目標とする分子量に応じて自由に変えることができる。
【0111】
上述した、必須成分として(A)前記一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレート、および(B1)エポキシ基含有(メタ)アクリレートまたは(B2)(メタ)アクリル酸、を反応させて得られる共重合体は、更に(E)その他の単量体由来の部分構造を含んでいてもよい。
(E)その他の単量体としては、特に制限は無く、(A)、および(B1)又は(B2)と共重合しうる化合物であればよい。
【0112】
具体的には、例えば、スチレン、スチレンのα−、o−、m−、p−アルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル誘導体等のビニル芳香族類;ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミド、等の(メタ)アクリル酸アミド;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、等のモノマレイミド類等が挙げられる。
【0113】
これら(E)その他の単量体の中で、着色硬化性樹脂組成物に優れた耐熱性、塗膜の強度、及び顔料分散性を付与させるためには、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート等の(E1)芳香族炭化水素基を有するエチレン性不飽和単量体、が好ましい。
この(E1)芳香族炭化水素基を有するエチレン性不飽和単量体に由来する部分構造が、 (b−1)共重合体に含まれる場合、その含有割合は1〜70モル%であるものが好ましく、3〜50モル%であるものが更に好ましい。
【0114】
(b−1)共重合体の、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、3000〜100000が好ましく、5000〜50000が特に好ましい。分子量が3000未満であると、膜強度に劣る可能性があり、100000を超えると樹脂の粘度が上昇し、これを用いた組成物のインクジェット吐出性が悪化する傾向がある。又、分子量分布の目安として、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比は、2.0
〜5.0が好ましい。
【0115】
なお、インクジェット法にてカラーフィルタの画素を形成する際は、画素上にオーバーコート層を設けずに直接配向膜を設けることが一般的である。従って画素には、近傍に設けられる配向膜に使用されるN−メチルピロリドン等の溶剤への高い耐性が求められる。
耐薬品性に優れた画素を得られる点、および組成物を熱硬化させて画素形成する際にはその熱硬化性の点から(b−1)共重合体のうち「(A)前記一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレート、および(B1)エポキシ基含有(メタ)アクリレートを含む、エチレン性不飽和基含有単量体を重合して得られる(メタ)アクリル系共重合体」が特に好ましい。
【0116】
(b−2) 下記一般式(4)で示される化合物を必須単量体成分とする(メタ)アクリル系共重合体(以下、この共重合体を、単に「(b−2)共重合体」と称する。)
(b−2)共重合体は、下記一般式(4)で表される化合物を必須単量体として得られる共重合体である。
【0117】
【化14】

【0118】
上記一般式(4)中、R1aおよびR2aは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。
一般式(4)で表されるエーテルダイマーにおいて、R1a及びR2aで表される置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、t−アミル、ステアリル、ラウリル、2−エチルヘキシル等の直鎖状又は分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル等の脂環式炭化水素基;1−メトキシエチル、1−エトキシエチル等のアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。
【0119】
これらの中でも特に、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような酸や熱で脱離しにくい1級又は2級炭素の置換基が耐熱性の点で好ましい。なお、R1a及びR2aは、同種の置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。
前記エーテルダイマーの具体例としては、特開2004−300203号公報及び特開2004−300204号公報に記載の化合物等が挙げられる。これらの中でも特に、ジメチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。これらエーテルダイマーは、1種のみ単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0120】
(b−2)共重合体を得る際の、単量体成分中における前記エーテルダイマーの割合は、特に制限されないが、全単量体成分中、通常2〜60重量%、好ましくは5〜55重量
%、さらに好ましくは5〜50重量%である。エーテルダイマーの量が多すぎると、重合の際、低分子量のものを得ることが困難になったり、あるいはゲル化し易くなったりするおそれがあり、一方、少なすぎると、透明性や耐熱性などの塗膜性能が不充分となるおそれがある。
【0121】
また (b−2)共重合体が更に酸基を有することにより、本発明の着色硬化性樹脂組成物が後述する(b-3)エポキシ基を有する樹脂を含有する場合、これらが有するエポ
キシ基と酸基が反応してエステル結合を形成する架橋反応(以下、「酸−エポキシ硬化」と称す場合がある。)により硬化可能となるため好ましい。前記酸基としては、特に制限されないが、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、カルボン酸無水物基等が挙げられる。これら酸基は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0122】
酸基を導入するには、例えば、酸基を有するモノマー及び/又は「重合後に酸基を付与しうるモノマー」(以下「酸基を導入するための単量体」と称することもある。)を、単量体成分として使用すればよい。なお「重合後に酸基を付与しうるモノマー」を単量体成分として使用する場合には、重合後に、例えば特開2009−52031号公報に記載のような酸基を付与するための処理が必要となる。
【0123】
前記酸基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸やイタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマー;N−ヒドロキシフェニルマレイミド等のフェノール性水酸基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマー等が挙げられるが、これらの中でも特に、(メタ)アクリル酸が好ましい。
前記重合後に酸基を付与しうるモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマー;2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有するモノマー等が挙げられる。
【0124】
これら酸基を導入するための単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
酸基を導入するための単量体を含む場合、その含有割合は特に制限されないが、通常は(b−2)共重合体を構成する全単量体成分中5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%である。この量が多過ぎると酸価が高くなりすぎるため、分散剤との相性が悪くなり、濁りを生じる等の問題が生じる可能性があり、着色硬化性樹脂組成物の保存安定性が低下する傾向がある。
【0125】
更に、(b−2)共重合体はラジカル重合性二重結合やエポキシ基を有していてもよい。これらを有する共重合体の具体例としては、例えば特開2009−52031号公報に記載の化合物を挙げることができ、また製造方法についても、同公報に記載の合成方法が挙げられる。
(b−2)共重合体を得る際の単量体成分は、上記必須の単量体成分のほかに、必要に応じて、他の共重合可能なモノマーを含んでいてもよい。
【0126】
他の共重合可能なモノマーとしては、特に制限は無いが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレンが、透明性が良好で、耐熱性を損ないにくい点で好ましい。これら共重合可能な他のモノマーは、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
前記共重合可能な他の単量体を含む場合、その含有割合は特に制限されないが、95重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましい。
【0127】
なお、この (b−2)共重合体は、後述するように(d)分散剤とともに分散処理工
程に用いることが好ましく、その場合には特に、原料モノマーの一部として(メタ)アクリル酸ベンジルを用いることが好ましい。(メタ)アクリル酸ベンジルの含有量は、通常、(b-2)共重合体を構成する全単量体成分中1〜70重量%、好ましくは5〜60重
量%であるのがよい。
【0128】
(b−2)共重合体の分子量は、特に制限されないが、好ましくはGPCにて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が2000〜200000、より好ましくは4000〜100000である。重量平均分子量が200000を超える場合、高粘度となりすぎ塗膜を形成しにくくなる場合があり、一方2000未満であると、十分な耐熱性を発現しにくくなる傾向がある。
【0129】
なお (b−2)共重合体は、例えば特開2004−300203号公報及び特開2004−300204号公報に記載の方法にて製造することができる。
(b−3) エポキシ基を有する樹脂
(b−3)エポキシ基を有する樹脂(以下、「(b−3)樹脂」と称することがある)は、樹脂内にエポキシ基を有していれば特にその構造に限定はないが、中でも好ましいものとしては、側鎖にエポキシ基を有する脂環式ポリエーテル化合物、ポリグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルエステル化合物、ポリグリシジルアミン化合物エポキシ基を有する(メタ)アクリレートを1種単独または2種以上の組み合わせて得られた重合体、あるいは、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート構成単位にその他の単量体を通常10〜70モル%好ましくは15〜60モル%含有させた重合体が挙げられる。
【0130】
エポキシ基を含有する樹脂の具体例としては次に挙げるような化合物が挙げられる。
(b−3−1)側鎖にエポキシ基を有する脂環式ポリエーテル化合物
側鎖にエポキシ基を有する脂環式ポリエーテル化合物としては、例えば2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物などの、側鎖にエポキシ基を有するポリシクロヘキシルエーテルが挙げられる。このような化合物の市販品としては、例えばEHPE3150(ダイセル化学工業社製)などが挙げられる。
【0131】
(b−3−2)ポリグリシジルエーテル化合物
ポリグリシジルエーテル化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル型エポキシ、グリセロールのトリグリシジルエーテル型エポキシ、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル型エポキシ、ペンタエリスリトールのテトラグリシジルエーテル型エポキシ、ソルビトールのヘキサグリシジルエーテル型エポキシ、ビス(4−ヒドロキシフェニル)のジグリシジルエーテル型エポキシ、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)のジグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル型エポキシ、テトラメチルビスフェノールAのジグリシジルエーテル型エポキシ、エチレンオキシド付加ビスフェノールAのジグリシジルエーテル型エポキシ、ジハイドロオキシルフルオレン型エポキシ、ジハイドロオキシルアルキレンオキシルフルオレン型エポキシ、ビスフェノールA/アルデヒドノボラック型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、クレ
ゾールノボラック型エポキシ、及びポリグリシジルエーテル樹脂として、ビスフェノールSエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、フェノールとジシクロペンタジエンとの重合エポキシ樹脂、フェノールとナフタレンとの重合エポキシ樹脂等のフェノール樹脂タイプエポキシ樹脂が挙げられる。
【0132】
これらの(ポリ)グリシジルエーテル化合物は、残存するヒドロキシル基に酸無水物や二塩基酸等を反応させカルボキシル基を導入したものであってもよい。
(b−3−3)ポリグリシジルエステル化合物
ポリグリシジルエステル化合物としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル型エポキシ、フタル酸のジグリシジルエステル型エポキシ等が挙げられる。
【0133】
(b−3−4)ポリグリシジルアミン化合物
ポリグリシジルアミン化合物としては、例えば、ビス(4−アミノフェニル)メタンのジグリシジルアミン型エポキシ、イソシアヌル酸のトリグリシジルアミン型エポキシ等が、それぞれ挙げられる。
(b−3−5)その他の単量体
また、その他の例として、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸− 4,5−エポ
キシペンチル、(メタ)アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル等のエポキシ基を有する(メタ)アクリレートを1種単独または2種以上の組み合わせでた重合体、あるいは、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート構成単位に他の共単量体を通常10〜70モル%好ましくは15−60モル%含有させた重合体が挙げられる。このうち共重合体としては、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボロニルの如き(メタ)アクリル酸のエステル、及びスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレンの如きビニル芳香族系化合物を挙げることができる。好ましいエポキシ基を有する(メタ)アクリレートは(メタ)アクリル酸グリシジルが挙げられる。好ましい共重合体としては(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、α−スチレンが挙げられる。
【0134】
また(b−3)樹脂に使用されるエポキシ基は、通常1,2−エポキシ基であるが、経時安定性の向上又は柔軟性の付与等の目的で、1,3−エポキシ基(オキセタン)、4,3−エポキシシクロへキシル基を使用することも出来る。
また、本発明に係る(b−3)樹脂において、芳香族環を含有しないもの、若しくは、無置換又はp(パラ)位に置換基を有するフェニル基を含有するものは加熱処理による変色が抑えられるため好適である。
【0135】
(b−3)樹脂の中でも、(b−3−1)または(b−3−2)が好ましく、特に芳香族環を含有しないものが好ましい。
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、光硬化性であっても熱硬化性であっても、その両方の作用により硬化するものであってもよいが、インクジェット法にてカラーフィルタ用画素を形成する場合には、輝度を低下させうる光重合開始剤を必要とせず、また光硬化プロセスを省いて生産性を上げることができる点から、熱硬化性の着色硬化性樹脂組成物を使用することが好ましい。
【0136】
熱硬化作用を用いて硬化させる場合、バインダー樹脂としては、(b−1)共重合体として説明したもののうち、「(A)前記一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ
)アクリレート、および(B1)エポキシ基含有(メタ)アクリレートを含む、エチレン
性不飽和基含有単量体を重合して得られる(メタ)アクリル系共重合体」および(b−3)樹脂を併用することが好ましい。
【0137】
併用する場合、(b−3)樹脂の割合は、本発明の硬化性樹脂組成物における全固形分中、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは35重量%以下である。(b−3)樹脂の割合
が少なすぎると耐薬品性向上効果が不十分となる可能性があり、多すぎると保存安定性が不十分となる場合がある。
【0138】
(b−3)樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、通常300以上好ましくは500以上であり通常100,000以下、好ましくは50,000以下である。分子量が小さすぎると膜強度に劣る傾向があり、大きすぎると塗布液としての液特性が非ニュートニアンとなる可能性がある。また、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、2.0以上5.0以下が好ましい。
【0139】
本発明の着色硬化性樹脂組成物において、(b)バインダ樹脂の含有割合は、全固形分中、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上であり、又、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下である。(b)バインダ樹脂の含有量がこの範囲よりも少ないと、膜が脆くなり、基板への密着性が低下したり、耐熱性や輝度が低下する場合がある。逆にこの範囲よりも多いと、着色力が不足したり、適性膜厚に調整することが困難となる場合がある。
【0140】
また、上述した(b)バインダ樹脂の一部を前述の(d)分散剤とともに、後述する分散処理工程に使用することにより、基板との密着性に優れた高濃度の色画素を形成しうるため好ましい。この時、併用する(b)バインダ樹脂は(a)色材に対して5〜200重量%程度使用することが好ましく、10〜100重量%程度使用することがより好ましい。
【0141】
このように、分散処理工程に使用する併用するバインダ樹脂としては、上述の各種樹脂を使用することができるが、特に、(b−2)共重合体が好ましい。
(d)分散剤とともに分散処理工程に使用する(b)バインダ樹脂の酸価は10mgKOH/g以上が好ましく、30mgKOH/g以上がより好ましく、150mgKOH/g以上が最も好ましく、また500mgKOH/g以下が好ましく、300mgKOH/g以下がより好ましく、200mgKOH/g以上が最も好ましい。なお、組成物の保存安定性の観点からは、酸価は低いほうが好ましい。
【0142】
また(d)分散剤とともに分散処理工程に使用する場合、併用するバインダ樹脂のGPCにて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、1000以上が好ましく、1500以上がより好ましく、2000以上が最も好ましく、また200000以下が好ましく、50000以下がより好ましく、30000以下が最も好ましい。分子量が大きすぎると、樹脂の粘度が上昇し、組成物のインクジェット吐出性が悪化するおそれがあり、また分子量が小さすぎると、分散安定性が低下するおそれがある。
【0143】
[2−2]界面活性剤
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、非イオン性、両性界面活性剤等、各種のものが用いられるが、電圧保持率や有機溶剤に対する相溶性等の諸特性に悪影響を及ぼす可能性が低い点で、非イオン界面活性剤が好ましい。
【0144】
中でも、下記一般式(XI)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0145】
【化15】

【0146】
(上記式中、置換基A11は炭素数1〜5のフッ化アルキル基を表し、n11は2〜100の整数を表す。)
上記一般式(XI)で表される化合物において、置換基A11は炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜4であるフッ化アルキル基を表す。炭素数が6以上の場合、置換基部分が嵩高く成りすぎ、界面への配向性が損なわれるおそれがある。
【0147】
中でも、水素原子の全てがフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基が好ましい。またフッ素置換された炭素原子の数は、1〜3個が好ましく、1または2個がより好ましい。4個以上の炭素原子がフッ素置換されている場合、人体に蓄積する有害性を示す場合がある。
このような置換基A11として、具体的には−CF、−CFCF、−CFなどが挙げられ、中でも特に−CF、または−CFCFが好ましい。
【0148】
一般式(XI)中のn11は2〜100の整数を表し、好ましくは5〜30の整数を表す。n11が100を超えると、分子量が大きくなりすぎて、溶解性が損なわれるおそれがある。またn11が2を下回ると分子量が小さくなりすぎて、溶液中での安定性が損なわれる可能性がある。
一般式(XI)で表される化合物のうち、さらに好ましい化合物は、例えば以下の化合物である。
【0149】
【化16】

【0150】
また、一般式(XI)で表される化合物は、市販されており、例えばOMNOVA社製P
F−636、PF−656、PF−6320、PF−6520(いずれも商品名)等を使用することができる。
なお、画素バンク内での濡れ拡がりの観点からは、着色硬化性樹脂組成物は、後述するカラーフィルタの透明基板との接触角が小さいことが好ましく、例えば本発明の着色硬化性樹脂組成物の場合、ガラス(清浄な素ガラス)面に対する接触角が5度未満であることが好ましい。このような接触角を達成しやすい点では、例えば上記4化合物の中では(ii)、(iii)および(iv)が特に好ましい。
【0151】
一般式(XI)で表される化合物は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
本発明の着色硬化性樹脂組成物における一般式(XI)で表される化合物の含有量は、全固形分中、通常0.005〜5重量%、好ましくは0.02〜1重量%、より好ましくは0.05〜0.5重量%である。該化合物の含有量が多すぎると析出したり、表面張力の低下が過大となるおそれがあり、また少なすぎると画素平坦性が不良となる場合がある。
【0152】
界面活性剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記一般式(XI)で表される化合物以外の界面活性剤を含有していてもよい。この場合、上述した一般式(XI)で表される化合物の含有量のうち一部を置き換える形で使用することが好ましい。
尚、上記一般式(XI)で表される化合物と他の界面活性剤を併用する場合、各種のものを用いることができるが、電圧保持率や有機溶剤に対する相溶性等の諸特性に悪影響を及ぼす可能性が低い点で、非イオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0153】
[2−3]その他成分
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、前記各成分の外に、単量体を含有してもよい。単量体の種類、使用量、好ましいものとしては、例えば、特開2009−52031号公報に記載の単量体が挙げられる。又、光重合開始系及び/又は熱重合開始系を含有してもよい。光重合開始系及び/又は熱重合開始系の種類、使用量、好ましいものとしては、例えば、特開2009−52031号公報に記載のものが挙げられる。
【0154】
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、更に、分散助剤、可塑剤、熱重合防止剤、保存安定剤、表面保護剤、密着向上剤、現像改良剤等を含有していてもよい。
分散助剤は、前記(a)色材の分散性の向上、分散安定性の向上等のために用いられ、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンツイミダゾロン系、キノフタロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、アントラキノン系、インダンスレン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、ジオキサジン系顔料等の誘導体が挙げられる。
【0155】
これらの顔料誘導体の置換基としては、スルホン酸基、スルホンアミド基及びその4級塩、フタルイミドメチル基、ジアルキルアミノアルキル基、水酸基、カルボキシル基、アミド基等が挙げられる。これらの置換基は顔料骨格に直接結合していてもよく、又はアルキル基、アリール基、複素環基等を介して結合していてもよい。前記置換基のうち、スルホンアミド基及びその4級塩、スルホン酸基が好ましく、スルホン酸基がより好ましい。これら置換基は、一つの顔料骨格に複数置換していてもよいし、置換数の異なる化合物の混合物でもよい。
【0156】
顔料誘導体の具体例としては、アゾ系顔料のスルホン酸誘導体、フタロシアニン系顔料のスルホン酸誘導体、キノフタロン系顔料のスルホン酸誘導体、アントラキノン系顔料のスルホン酸誘導体、キナクリドン系顔料のスルホン酸誘導体、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン酸誘導体、ジオキサジン系顔料のスルホン酸誘導体等が挙げられる。中でも好ましくは、ピグメントイエロー138のスルホン酸誘導体、ピグメントイエロー139
のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド254のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド255のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド264のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド272のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド209のスルホン酸誘導体、ピグメントオレンジ71のスルホン酸誘導体、ピグメントバイオレット23のスルホン酸誘導体であり、より好ましくはピグメントイエロー138のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド254のスルホン酸誘導体である。
【0157】
本発明の着色硬化性樹脂組成物において、これらの分散助剤の含有割合は、前記(a)色材成分に対して、通常0.1重量%以上であり、又、通常30重量%以下、好ましくは200重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。添加量が少ないとその効果が発揮されない可能性があり、逆に添加量が多過ぎると分散性、分散安定性がかえって悪くなる場合があるためである。
【0158】
又、本発明の着色硬化性樹脂組成物は、熱重合防止剤を含有していてもよく、その熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ピロガロール、カテコール、2,6−t−ブチル−p−クレゾール、β−ナフトール等が挙げられる。これら熱重合防止剤の含有割合は、全固形分中、3重量%以下の範囲であるのが好ましい。
[3]着色硬化性樹脂組成物の調製方法
次に、本発明の着色硬化性樹脂組成物を調製する方法を説明する。
【0159】
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、予め前述した各成分等を含む色材分散液を調製し、これに(b)バインダ樹脂等の他の成分を含有させて調製したものであってもよく、また該組成物に含まれる各成分を同時に、または順次添加して混合したものであってもよい。色材分散液は、(d)分散剤のうち、ブロック共重合体とグラフト共重合体の双方を含有するものを調製し使用してもよいし、ブロック共重合体を含むものと、グラフト共重合体を含むもの等、複数の色材分散液を調製し、所望の割合で混合して使用してもよい。
【0160】
熱や光で硬化する性質を有するバインダ樹脂やモノマー、或いは重合開始剤などの成分が、分散処理工程で発生する熱により変質しがたい点からは、予め調製した色材分散液に、他の成分を配合させる方法が好ましい。以下、この方法を例に、本発明の着色硬化性樹脂組成物の調製方法につき説明する。
先ず(a)色材、(c)有機溶剤、及び(d)分散剤を各所定量秤量し(a)色材を分散させて色材分散液とする(分散処理工程)。この分散処理工程では、ペイントコンディショナー、サンドグラインダー、ボールミル、ロールミル、ストーンミル、ジェットミル、ホモジナイザー等を使用することができる。この分散処理を行なうことによって色材が微粒子化されるため、着色硬化性樹脂組成物の塗布特性が向上し、製品のカラーフィルタ基板等の透過率が向上する。
【0161】
色材を分散処理する際には、(b)バインダ樹脂の一部及び分散助剤等を適宜併用するのが好ましい。また、(e)芳香族または脂肪族カルボン酸は、この分散処理工程にて含有させることが好ましい。
サンドグラインダーを用いて分散処理を行なう場合は、0.1〜数mm径のガラスビーズ、又はジルコニアビーズを用いるのが好ましい。分散処理する際の温度は、通常0℃以上、好ましくは室温以上、又、通常100℃以下、好ましくは80℃以下の範囲に設定する。尚、分散時間は、色材分散液の組成、及びサンドグラインダーの装置の大きさ等により適正時間が異なるため、適宜調整する必要がある。
【0162】
上記分散処理によって得られた色材分散液に、更に(b)バインダ樹脂(分散処理工程で添加したものの残余)、(c)有機溶剤、場合によっては、任意成分である単量体、光重合開始系および/または熱重合開始系、並びにそれら以外の成分を混合し、均一な分散
溶液とすることにより、着色硬化性樹脂組成物を得る。尚、分散処理工程及び混合の各工程において、微細なゴミが混入することがあるため、得られた色材分散液をフィルター等によって濾過処理することが好ましい。
【0163】
[4]着色硬化性樹脂組成物の応用
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、通常、すべての構成成分が(c)有機溶剤中に溶解或いは分散された状態である。これが基板上へ供給され、カラーフィルタや液晶表示装置の構成部材が形成される。
以下、本発明の着色硬化性樹脂組成物を用いたカラーフィルタの製造方法、及びそれを用いた液晶表示装置(パネル)並びに有機ELディスプレイについて、説明する。
【0164】
[4−1]カラーフィルタ
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、インクジェット法によるカラーフィルタの画素形成に特に適している。インクジェット法によるカラーフィルタの製造は、まず基板上に隔壁パターン(ブラックマトリックス)を設け、そのパターン内に画素形成用のインクをダイレクトに付与し、カラーフィルタを作製する。インクの微小液滴を所望の位置に描画できるため、カラーフィルタの高生産性、低コスト化が達成できる。
【0165】
インクジェット法により形成されるカラーフィルタのブラックマトリックス(BM)は、従来必要とされている遮光機能のみならず、画素内に打ち込まれたRGBインクが混色しないための隔壁としての機能も果たしているため、従来のフォトリソグラフィー法によるカラーフィルタの場合に比べ、膜厚が厚い(通常は膜厚1.5μm以上、好ましくは1.8〜2.5μm程度、より好ましくは2.0〜2.3μm程度の厚さである。)という特徴がある。また、RGBインクの混色を防ぐために、ブラックマトリクスの上面に撥液処理を施す場合が多い。
【0166】
従って、従来用いられてきた金属クロム、酸化クロム、窒化クロム等のクロム化合物や、ニッケルとタングステン合金等の遮光金属材料からなるブラックマトリックスより、黒色色材を含む感光性材料を用いて形成された、樹脂ブラックマトリクス(BM)の方が好ましい。
本発明のカラーフィルタにおいて、樹脂ブラックマトリクス(BM)は一般的なフォトリソグラフィー法にて形成すればよい。得られた樹脂BMに対して、透明基板表面の親水化とBMパターンの撥液化を、各々化学的処理あるいは物理的処理により施す。
【0167】
次に、樹脂BMパターンに囲まれた略矩形の凹部領域に、本発明の着色硬化性樹脂組成物を用いてインクジェット装置により描画し、乾燥、光硬化および/または熱硬化にて該組成物を完全に硬化させ、画素を形成することによりカラーフィルタを得る。画素形成用の着色硬化性樹脂組成物としては、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色が使用される場合が多いが、これらに限定されない。
【0168】
本発明のカラーフィルタに用いられる透明基板の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルやポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン等、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン等の熱可塑性プラスチックシート、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂等の熱硬化性プラスチックシート、或いは各種ガラス板等を挙げることができる。特に、耐熱性の点からガラス板、耐熱性プラスチック板が好ましく用いられる。
【0169】
着色硬化性樹脂組成物の塗膜の乾燥には、ホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブン等の加熱乾燥を用いることができ、好ましい乾燥条件は40〜150℃、乾燥時間は10秒〜60分の範囲である。また減圧(真空)乾燥を用いることもでき、好まし
い乾燥条件は0.1〜1Torr、乾燥時間は10秒〜60分の範囲である。さらに両者を併用することもでき、順次または同時に行うこともできる。
【0170】
また、本発明の着色硬化性樹脂組成物を光硬化により硬化させる場合、露光に用いる光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯等のランプ光源やアルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマーレーザー、窒素レーザー等のレーザー光源等が挙げられる。特定の照射光の波長のみを使用する場合には光学フィルターを利用することもできる。
【0171】
[4−2]液晶表示装置
次に、本発明の液晶表示装置(パネル)について説明する。
本発明の液晶表示装置は、上述の本発明のカラーフィルタを用いて、例えば、次の様にして製造される。
先ず、カラーフィルタ上に配向膜を形成し、この配向膜上にスペーサーを配置した後、対向基板と貼り合わせて液晶セルを形成する。次いで、形成した液晶セルに液晶を注入し、対向電極に結線して完成する。
【0172】
配向膜は、ポリイミド等の樹脂膜が好適である。配向膜の形成には、通常、グラビア印刷法やフレキソ印刷法が採用され、配向膜の厚さは、通常、10〜100nmとされる。熱焼成によって配向膜の硬化処理を行った後、紫外線(UV)の照射やラビング布による処理によって表面処理し、液晶の傾きを調節し得る表面状態に加工される。
スペーサーは、対向基板とのギャップ(隙間)に応じた大きさのものが使用され、通常2〜8μmのものが好適である。カラーフィルタ基板上に、フォトリソグラフィー法によって透明樹脂膜のフォトスペーサー(PS)を形成し、これをスペーサーの代わりに活用することも出来る。対向基板としては、通常、アレイ基板が使用され、特にTFT(薄膜トランジスタ)基板が好適である。
【0173】
対向基板との貼り合わせのギャップは、液晶表示装置の用途によって異なるが、通常2〜8μmの範囲で選ばれる。対向基板と貼り合わせた後、液晶注入口以外の部分は、エポキシ樹脂などのシール材によって封止する。シール材は、UV照射および/または加熱によって硬化させ、液晶セル周辺がシールされる。
周辺がシールされた液晶セルは、パネル単位に切断した後、真空チャンバー内で減圧とし、上記の液晶注入口を液晶に浸漬した後、チャンバー内をリークすることによって、液晶セル内に液晶を注入する。液晶セル内の減圧度は、通常1×10−2〜1×10−7Pa、好ましくは1×10−3〜1×10−6Paである。また、減圧時に液晶セルを加温するのが好ましく、加温温度は、通常30〜100℃、好ましくは50〜90℃である。減圧時の加温保持は、通常10〜60分間の範囲とされ、その後に液晶中に浸漬される。液晶が注入された液晶セルは、UV硬化樹脂の硬化により、液晶注入口を封止することによって、液晶表示装置(パネル)が完成する。
【0174】
液晶の種類は、特に制限されず、芳香族系、脂肪族系、多環状化合物など、従来公知の液晶であって、リオトロピック液晶、サーモトロピック液晶などの何れでもよい。サーモトロピック液晶には、ネマティック液晶、スメスティック液晶、コレステリック液晶などが知られているが、これらの何れであってもよい。
[4−3]有機ELディスプレイ
本発明のカラーフィルタを用いて有機ELディスプレイを作成する場合、例えば図3に示すように、まず透明支持基板10上に、着色樹脂組成物により形成されたパターン(すなわち、画素20、及び隣接する画素20の間に設けられた樹脂ブラックマトリックス(図示せず))が形成されてなるカラーフィルタを作製し、該カラーフィルタ上に有機保護
層30及び無機酸化膜40を介して有機発光体500を積層することによって、有機EL素子100を作製することができる。なお、画素20の内、少なくとも一つは本発明の着色樹脂組成物を用いて作製されたものである。有機発光体500の積層方法としては、カラーフィルタ上面へ透明陽極50、正孔注入層51、正孔輸送層52、発光層53、電子注入層54、及び陰極55を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体500を無機酸化膜40上に貼り合わせる方法などが挙げられる。このようにして作製された有機EL素子100を用い、例えば「有機ELディスプレイ」(オーム社,2004年8月20日発光,時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載された方法等にて、有機ELディスプレイを作製することができる。
【0175】
なお、本発明のカラーフィルタは、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
【実施例】
【0176】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例)
<合成例1:バインダ樹脂1の合成>
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート400重量部を仕込み、窒素置換したあと、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。
【0177】
一方、モノマー槽中にジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート10重量部、メタクリル酸15重量部、メタクリル酸メチル20重量部、メタクリル酸ベンジル55重量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2.6重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40重量部を仕込み、連鎖移動剤槽にn−ドデシルメルカプタン5.7重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート27重量部を仕込み、反応槽の温度が90℃に安定してからモノマー槽および連鎖移動剤槽から滴下を開始し、重合を開始させた。
【0178】
温度を90℃に保ちながら滴下をそれぞれ135分かけて行い、滴下が終了して60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。3時間、110℃を維持した後、室温まで冷却し、重量平均分子量6000,酸価100mgKOH/gの重合体溶液を得た。
<合成例2:バインダ樹脂2の合成>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145重量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。
【0179】
ここにグリシジルメタクリレート95.1重量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製FA−513M)72.6重量部を滴下し、さらに2.2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル10.2重量部を3時間かけて滴下し、更に90℃で2時間攪拌して、重量平均分子量Mwが約4200の樹脂溶液を得た。
<合成例3:グラフト共重合体タイプ分散剤の合成>
重量平均分子量約5000を有するポリエチレンイミン50重量部、ポリカプロラクトン(5量体)40重量部、及びステアリン酸6重量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300重量部と混合し、150℃で3時間、窒素雰囲気下にて攪拌し、グラフト共重合体(A)を得た。得られたグラフト共重合体(A)のアミン価は54mgKOH/g、酸価は10mgKOH/gであった。
【0180】
<実施例1>
(色材分散液1の調製)
顔料((a)色材)として、C.I.ピグメントブルー15:6を29.4g、C.I.ピグメントバイオレット23を3.3g、(d)分散剤として、ブロック共重合体であるビックケミー社製高分子分散剤「BYK−LPN6919」を固形分換算で12.5g、(e)カルボン酸として3−フェニルプロピオール酸(東京化成工業社製。pKa=2.45。)3.9g(すなわち、ブロック共重合体が有するアミノ基の当量数に対して1当量)、(b)バインダ樹脂として合成例1で得られた樹脂(バインダ樹脂1)を固形分換算で10.9g、(c)有機溶剤としてジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート 240.0gを混合し、攪拌均一化した。続いて、撹拌回転型循環分散装置を用いて、粒子径0.5mmのジルコニアビーズで1時間分散処理した後、更に0.1mmのジルコニアビーズで5時間分散処理し、色材分散液1を調製した。
【0181】
(色材分散液2の調製)
顔料((a)色材)として、C.I.ピグメントブルー15:6(以下、「P.B.15:6」と称する場合がある)を28.9g、C.I.ピグメントバイオレット23(以下、「P.V.23」と称する場合がある)を3.2g、(d)分散剤として、グラフト共重合体である味の素ファインテクノ社製高分子分散剤「PB880」を固形分換算で21.4g、(b)バインダ樹脂として合成例1で得られた樹脂(バインダ樹脂1)を固形分換算で6.4g、(c)有機溶剤としてジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート 240.0gを混合し、攪拌均一化した。続いて、撹拌回転型循環分散装置を用いて粒子径0.5mmのジルコニアビーズで1時間分散処理した後、更に0.1mmのジルコニアビーズで4時間分散処理し、色材分散液2を調製した。
【0182】
(着色硬化性樹脂組成物の調製)
得られた色材分散液1および2を1:0.75の重量比率で混合した。
別途、合成例2で得られた樹脂(バインダ樹脂2)の固形分換算で21.6重量%となるよう、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテートを加えて混合し、クリアーベースを調製した。
【0183】
先に混合しておいた色材分散液(混合分散液)を攪拌しながら、上記クリアーベースを、着色硬化性樹脂組成物の全固形分に占める顔料濃度比率が20重量%となるように滴下混合した後、5μmのメンブレンフィルターで濾過して、均一な着色硬化性樹脂組成物を得た。
(色材分散液および着色硬化性樹脂組成物の評価)
色材分散液1及び2を前述の割合で混合し、得られた色材分散液(混合分散液)につき、後述する方法にて粘度安定性を測定した。
【0184】
また、得られた着色硬化性樹脂組成物につき、後述する評価方法に従って、ΔT−B、及びコントラスト値を測定した。結果を表1に示す。
<実施例2>
(e)カルボン酸を安息香酸に変更し、その含有量を3.3g(ブロック共重合体が有するアミノ基の当量数に対し1当量)とした以外は、実施例1における色材分散液1と同様に色材分散液を調製した(色材分散液1’)。また、グラフト共重合体を合成例3にて得られたグラフト共重合体(A)に変更した以外は、実施例1における色材分散液2と同様に色材分散液を調製した(色材分散液2’)。この色材分散液1’及び2’を使用した以外は実施例1と同様に、着色硬化性樹脂組成物を調製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0185】
<比較例1>
(e)カルボン酸を使用しない点以外は、実施例1における色材分散液1と同様に色材分散液を調製した(色材分散液1”)。この色材分散液1”を用いた以外は実施例1と同
様に、着色硬化性樹脂組成物を調製し、評価を行った。結果を表1に示す。なお、当該組成物は調製直後から粘度が高く、インクジェット法による塗布ができなかったため、ΔT−Bは測定しなかった。
【0186】
<実施例3>
顔料((a)色材)として、C.I.ピグメントレッド177(以下、「P.R.177」と称する場合がある)を1.07g、(d)分散剤として、ブロック共重合体であるビックケミー社製高分子分散剤「BYK−LPN6919」を固形分換算で0.11g、合成例3にて得られたグラフト共重合体(A)0.40g、(e)カルボン酸として安息香酸0.03g、(c)有機溶剤としてジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート 6.40gを混合し、ペイントシェーカーを用いて粒子径0.5mmのジルコニアビーズで6時間分散処理し、色材分散液3を調製して、粘度安定性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0187】
<比較例2>
グラフト共重合体を使用しない点以外は、実施例3における色材分散液3と同様に色材分散液を調製した(色材分散液3’)。この色材分散液3’を用いた以外は、実施例3と同様にして、粘度安定性の評価を行った。結果を表2に示す。
<比較例3>
ブロック共重合体及びカルボン酸を使用しない点以外は、に実施例3における色材分散液3と同様に色材分散液を調製した(色材分散液3”)。この色材分散液3”を用いた以外は、実施例3と同様にして、粘度安定性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0188】
<実施例4>
顔料((a)色材)として、顔料Yを1.07g、(d)分散剤として、ブロック共重合体であるビックケミー社製高分子分散剤「BYK−LPN6919」を固形分換算で0.21g、グラフト共重合体(A)0.27g、(e)カルボン酸として安息香酸0.06g、(c)有機溶剤としてジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート
6.40gを混合し、ペイントシェーカーを用いて粒子径0.5mmのジルコニアビーズで6時間分散処理し、色材分散液4を調製して、粘度安定性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0189】
<比較例4>
グラフト共重合体を使用しない点以外は、実施例4における色材分散液4と同様に色材分散液を調製した(色材分散液4’)。この色材分散液4’を用いた以外は、実施例4と同様にして、粘度安定性の評価を行った。結果を表2に示す。
<比較例5>
ブロック共重合体及びカルボン酸を使用しない点以外は、実施例4における色材分散液4と同様に色材分散液を調製した(色材分散液4”)。この色材分散液4”を用いた以外は、実施例4と同様にして、粘度安定性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0190】
【表1】

【0191】
【表2】

【0192】
なお、実施例および比較例にて使用した市販材料の詳細は、以下の通りである。
〔ビックケミー社製高分子分散剤「BYK−LPN6919」〕
3級アミノ基を有するメタクリル系A−Bブロック共重合体。重量平均分子量Mwは9000、アミン価は121mgKOH/g、酸価はほぼ0mgKOH/gであり、Bブロックにおける「側鎖にアミノ基を有する繰り返し単位」が下記式(i)で表される構造であり、Aブロックに含まれる下記式(ii)で表される繰り返し単位の、全繰り返し単位
に対する割合は11モル%である。
【0193】
【化17】

【0194】
〔味の素ファインテクノ社製高分子分散剤「アジスパーPB−880」〕
下記部分構造(a)、(b)及び(c)を有するポリアリルアミン誘導体からなる高分子分散剤。アミン価は17mgKOH/g、酸価は14mgKOH/gである。
【0195】
【化18】

【0196】
なお、分散剤のアミン価は、以下の方法で測定した。
(アミン価の測定)
100mLのビーカーに分散剤の0.5〜1.5gを精秤し、50mLの酢酸で溶解す
る。pH電極を備えた自動滴定装置を使って、この溶液を0.1mol/LのHCLO酢酸溶液にて中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点とし次式によりアミン価を求める。
【0197】
アミン価 [mgKOH/g]=(561×V)/(W×S)
(但し、W:分散剤試料秤取量[g]、V:滴定終点での滴定量[mL]、S:分散剤試料の固形分濃度[wt%]である。)
<評価方法>
なお、上記表1及び2における「粘度安定性」、「ΔT−B」及び「コントラスト値」は以下の方法にて測定した。
【0198】
(粘度安定性:初期粘度と1週間後の粘度)
上述の各実施例及び比較例において、調製後に23℃の恒温槽で、24時間静置した混合分散液、及び1週間静置した混合分散液につき、それぞれ粘度を測定した。測定には、BROOKFIELD社製粘度計「DV−IIIULTRA」を用い、23℃で150S
における値を測定した。
【0199】
(画素の平坦性:ΔT−B)
旭ガラス社製無アルカリガラス基板(AN635)10cm角0.7mm厚に、ブラックマトリックス(BM)用硬化性樹脂組成物を塗布し、フォトリソ法によって線幅20μm、開口幅220μm×700μm、厚み2.0μmのBMパターンを形成した。
次に、BMパターンを設けたガラス基板に対し、フッ素プラズマ処理にてBM表面を撥液化した後、BMパターンにて形成された各画素バンクの中心部に対して、インクジェット法により550pL相当量の、上記着色硬化性樹脂組成物1の塗布を行った。なお、塗布範囲は10cm角とした。
【0200】
その後50Pa、5分間の減圧乾燥を行い、さらにホットプレートで100℃、10分、オーブンで240℃、40分の条件で熱硬化処理を行い、画素を形成した。
得られた画素(画素を上面から見た図を、図1に示す)の、横断面(模式図を、図2に示す)における断面形状を、レーザー顕微鏡で測定した。具体的には、熱硬化処理後の画素(平均膜厚2.0μm)に対し、前述の横断面における最大膜厚と最小膜厚の差(ΔT−B)を算出し、これを平坦性の評価指標とした。算出結果を表−1に示す。
【0201】
ΔT−Bの値は小さいほど形状が平坦であることを示しており、1.0以下であれば十分な平坦性であると考えられる。
(コントラスト値)
まず、前記「(画素の平坦性:ΔT−B)」で用いたと同様のガラス基板上に、各実施例及び比較例にて得られた着色硬化性樹脂組成物をスピンコートし、乾燥させ、膜厚2μmの塗布膜を設けた。この塗布膜を設けたガラス基板を、以下「着色板」と称す。
【0202】
図5(a),(b)は、いずれも、着色板の平行透過光および直交透過光の色度を測定する方法を説明するための模式的な図である。まず、図5(a)に示すように、着色板の両側に偏光板3、5を重ねて、偏光板3、5の偏光軸を互いに平行にした状態で、一方の偏光板5の側からバックライト7の光6を当てて、他方の偏光板3を透過した光の輝度Lp(平行透過光の輝度)を色彩輝度計トプコンテクノハウス製「BM−5A」32を使用して、2゜視野の条件で測定した。
【0203】
次に、図5(b)に示すように、偏光板3、5の偏光軸を互いに直交させた状態で、一方の偏光板5側からバックライト7の光6を当て、他方の偏光板3を透過した光の輝度Lc(直交透過光の輝度)を、色彩輝度計2にて上記Lpと同様に測定した。
尚、バックライト7は、図4に示すような発光スペクトルを有するものを用いた。このスペクトルの測定は、コニカミノルタ製分光放射輝度計CS−1000Aと、光量を制御し、測定を容易にするため、ケンコー社製のフィルター「NDフィルターND4」を用いて測定し、算出した。
【0204】
又、偏光板3、5は、図6のスペクトル特性を持つものを用いた。
着色板における画素のコントラスト値は、平行透過光の輝度Lpと直交透過光の輝度Lcから式Lp/Lcを用いて算出し、実施例1にて得られた組成物を用いた場合のコントラスト値を1.00とし、実施例2及び比較例1におけるコントラスト値をその相対値で示した。結果を表−1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0205】
本発明によれば、色材分散液及び着色硬化性樹脂組成物において、画素(塗膜)平坦性と色材分散性を両立することができ、更に粘度上昇を抑制し、経時粘度安定性を向上させることができる。
結果として、粘度安定性が良好で、高コントラストな、インクジェット方式によるカラーフィルタの製造に適した着色硬化性樹脂組成物を提供することができ、当該組成物を使用することにより、画素平坦性が良好なカラーフィルタを得ることができる。さらに、そのようなカラーフィルタを品質歩留まりよく製造できるため、液晶表示装置を大量安価に提供することが可能である。
【符号の説明】
【0206】
2 色彩輝度計
3,5 偏光板
4 着色板
6 光
7 バックライト
10 透明支持基板
20 画素
30 有機保護層
40 無機酸化膜
50 透明陽極
51 正孔注入層
52 正孔輸送層
53 発光層
54 電子注入層
55 陰極
100 有機EL素子
500 有機発光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)色材、(c)有機溶剤、(d)分散剤及び(e)芳香族または脂肪族カルボン酸を含有し、
(d)分散剤が、ブロック共重合体及びグラフト共重合体を含有することを特徴とする色材分散液。
【請求項2】
前記(d)分散剤に含まれるブロック共重合体が、窒素原子を含有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体を含む、請求項1に記載の色材分散液。
【請求項3】
前記窒素原子を含有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体のアミン価が、有効固形分換算で80〜150mgKOH/gである、請求項2に記載の色材分散液。
【請求項4】
前記窒素原子を含有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体が、(d1)側鎖にアミノ基を有するB−ブロックと、側鎖にアミノ基を有さないA−ブロックからなる、A−Bブロック共重合体および/またはA−B−Aブロック共重合体を含む、請求項2または3に記載の色材分散液。
【請求項5】
前記(d)分散剤に含まれるグラフト共重合体が、窒素原子を含有するグラフト共重合体を含む、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の色材分散液
【請求項6】
前記窒素原子を含有するグラフト共重合体が、(d2)下記一般式(VII)で表されるポリアリルアミン系誘導体を含む、請求項5に記載の色材分散液。
【化1】

(式中、R71は、−NHCOR72又は−NHOCOR72−で示される基を、X及びYは夫々独立に水素原子、重合開始剤残基又は連鎖移動触媒残基の何れかを、nは2〜1000の整数を表す。ここで、R72は遊離のカルボン酸を有するポリエステル、遊離のカルボン酸を有するポリアミド、または遊離のカルボン酸を有するポリエステルアミドのいずれかからカルボキシル基を除いた残基を表す。但し、n個のR71中、少なくとも1個は−NHCOR72で示される基を表す。)
【請求項7】
前記窒素原子を含有するグラフト共重合体が、(d3)下記一般式(II)で表される繰り返し単位及び式(III)で表される繰り返し単位のうち、少なくとも一つを有するグラフト共重合体を含む、請求項5または6に記載の色材分散液。
【化2】

(上記一般式(II)において、R51は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、Aは水素原子または下記式(IV)〜(VI)のいずれかを表す。)
【化3】

(上記一般式(III)において、R51及びAは、前記一般式(II)におけるR51およびAと同義である。 )
【化4】

(上記一般式(IV)において、Wは炭素数2〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、pは1〜20の整数を表す。)
【化5】

(上記一般式(V)において、Yは2価の連結基を表し、Wは炭素数2〜10のアルキレン基を表し、Yは水素原子または−CO−R52(但しR52は炭素数1〜10のアルキル基を表す。)を表す。qは、1〜20の整数を表し、好ましくは5〜10の整数である。
【化6】

(上記一般式(VI)において、Wは炭素数1〜50のアルキル基または水酸基を1〜5有する炭素数1〜50のヒドロキシアルキル基を表す。)
【請求項8】
前記(e)芳香族または脂肪族カルボン酸の解離定数pKaが4.5以下である、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の色材分散液。
【請求項9】
前記(e)芳香族または脂肪族カルボン酸の含有量が、前記(d)分散剤におけるブロ
ック共重合体に含まれるアミノ基の当量数に対して0.01〜3.5当量である、請求項2ないし8のいずれか一項に記載の色材分散液。
【請求項10】
前記(d)分散剤におけるブロック共重合体とグラフト共重合体の含有量が、重量比率で5/95〜95/5である、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の色材分散液。
【請求項11】
前記(c)有機溶剤が、沸点180℃以上(圧力1013.25[hPa]条件下での沸点)である溶剤を含有する、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の色材分散液。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載の色材分散液、及び(b)バインダ樹脂を含有する着色硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
(a)色材、(b)バインダ樹脂、(c)有機溶剤、(d)分散剤及び(e)芳香族または脂肪族カルボン酸を含有し、
(d)分散剤が、ブロック共重合体及びグラフト共重合体を含有することを特徴とする着色硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
前記(d)分散剤に含まれるブロック共重合体が、窒素原子を含有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体を含む、請求項13に記載の着色硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
前記窒素原子を含有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体のアミン価が、有効固形分換算で80〜150mgKOH/gである、請求項14に記載の着色硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
前記窒素原子を含有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体が、(d1)側鎖にアミノ基を有するB−ブロックと、側鎖にアミノ基を有さないA−ブロックからなる、A−Bブロック共重合体および/またはA−B−Aブロック共重合体を含む、請求項14または15に記載の着色硬化性樹脂組成物。
【請求項17】
前記(d)分散剤に含まれるグラフト共重合体が、窒素原子を含有するグラフト共重合体を含む、請求項13ないし16のいずれか一項に記載の着色硬化性樹脂組成物。
【請求項18】
前記窒素原子を含有するグラフト共重合体が、(d2)下記一般式(VII)で表されるポリアリルアミン系誘導体を含む、請求項17に記載の着色硬化性樹脂組成物。
【化7】

(式中、R71は、−NHCOR72又は−NHOCOR72−で示される基を、X及びYは夫々独立に水素原子、重合開始剤残基又は連鎖移動触媒残基の何れかを、nは2〜1000の整数を表す。ここで、R72は遊離のカルボン酸を有するポリエステル、遊離のカルボン酸を有するポリアミド、または遊離のカルボン酸を有するポリエステルアミドのいずれかからカルボキシル基を除いた残基を表す。但し、n個のR71中、少なくとも1個は−NHCOR72で示される基を表す。)
【請求項19】
前記窒素原子を含有するグラフト共重合体が、(d3)下記一般式(II)で表される繰り返し単位及び式(III)で表される繰り返し単位のうち、少なくとも一つを有する
グラフト共重合体を含む、請求項17または18に記載の着色硬化性樹脂組成物。
【化8】

(上記一般式(II)において、R51は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、Aは水素原子または下記式(IV)〜(VI)のいずれかを表す。)
【化9】

(上記一般式(III)において、R51及びAは、前記一般式(II)におけるR51およびAと同義である。 )
【化10】

(上記一般式(IV)において、Wは炭素数2〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、pは1〜20の整数を表す。)
【化11】

(上記一般式(V)において、Yは2価の連結基を表し、Wは炭素数2〜10のアルキレン基を表し、Yは水素原子または−CO−R52(但しR52は炭素数1〜10のアルキル基を表す。)を表す。qは、1〜20の整数を表し、好ましくは5〜10の整数である。
【化12】

(上記一般式(VI)において、Wは炭素数1〜50のアルキル基または水酸基を1〜5有する炭素数1〜50のヒドロキシアルキル基を表す。)
【請求項20】
前記(e)芳香族または脂肪族カルボン酸の解離定数pKaが4.5以下である、請求項13ないし19のいずれか一項に記載の着色硬化性樹脂組成物。
【請求項21】
前記(e)芳香族または脂肪族カルボン酸の含有量が、前記(d)分散剤におけるブロック共重合体に含まれるアミノ基の当量数に対して0.01〜3.5当量である、請求項4ないし20のいずれか一項に記載の着色硬化性樹脂組成物。
【請求項22】
前記(d)分散剤におけるブロック共重合体とグラフト共重合体の含有量が、重量比率で5/95〜95/5である、請求項13ないし21のいずれか一項に記載の着色硬化性樹脂組成物。
【請求項23】
前記(c)有機溶剤が、沸点180℃以上(圧力1013.25[hPa]条件下での沸点)である溶剤を含有する、請求項13ないし22のいずれか一項に記載の着色硬化性樹脂組成物。
【請求項24】
請求項12ないし23のいずれか一項に記載の着色硬化性樹脂組成物を用いて形成された画素を有するカラーフィルタ。
【請求項25】
請求項24に記載のカラーフィルタを有する液晶表示装置。
【請求項26】
請求項24に記載のカラーフィルタを有する有機ELディスプレイ。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−25943(P2012−25943A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138538(P2011−138538)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】