説明

色材分散組成物

【課題】
色材、分散剤、バインダー樹脂、及び液媒体を含む色材分散組成物において、色材分散性と、密着性、硬化性、耐熱性、透明性などその他の性能とを高い次元で両立できるバインダー樹脂、及び該バインダー樹脂を用いた色材分散組成物を提供する。
【解決手段】
色材、分散剤、バインダー樹脂、及び液媒体を含む色材分散組成物において、バインダー樹脂として式(1)で表される構成単位を主鎖中に含む樹脂を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種インキ、塗料その他に用いられる色材分散組成物用樹脂、及び該樹脂を含む色材分散組成物に関する。より詳細には、例えば、自動車、塗装鋼板、建材、缶、グラビア、フレキソ、インクジェットプリンター、カラーフィルター等に使用可能であり、分散性、密着性、耐熱性、表面硬化性、透明性、乾燥再溶解性等に優れる色材分散組成物用樹脂、及び該樹脂を含む色材分散組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
色材分散組成物用樹脂には、分散性だけでなく、用途に応じて、密着性、耐熱性、透明性、硬化性、透明性、乾燥再溶解性、耐光性、耐候性など、様々な性能が求められる。特に、インクジェットインク、カラーフィルター用レジストインキなどの高機能インキには、分散性と、その他の性能を高い次元で両立させることが求められるが、分散性を向上させるために、例えばアミノ基やウレタン基を有する樹脂を用いると、耐久性や透明性が低下しやすく、また、耐久性や透明性を向上させるイソボルニル基、トリシクロデカニル基などの脂環構造を有する樹脂は、分散性が不十分となりやすい。
【0003】
ところで、主鎖に環構造を有する樹脂は耐久性、特に耐熱性に優れることが知られており、主に、環構造を有する単量体を重合する方法により得られるが、環構造を有さない単量体を環化させながら重合する方法でも得ることができる。そのような方法のひとつとして、1,6−ジエン類を環化重合し、主鎖に6員環のエーテル環であるテトラヒドロピラン環を有する樹脂を得る方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この樹脂を用いた色材分散液は、分散性、乾燥再溶解性に優れることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、1,6−ジエン類である式(2)で表される単量体は、条件によっては高い環化率で重合し、式(1)で表される構成単位を主鎖中に有する重合体が得られることが知られているが(例えば、非特許文献2、非特許文献3参照)、該重合体の応用方法、用途などについては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−161035号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Takashi Tsuda、Lon J. Mathias、POLYMER、1994年、第35巻、p.3317−3328
【非特許文献2】Robert D. Thompson、William L. Jarrett、Lon J. Mathias、Macromolecules、1992年、第25巻、p.6455−6459
【非特許文献3】Michio Urushizaki、Toshiyuki Kodaira、Takeji Furuta、Yutaka Yamada、Shoji Oshitani、Macromolecules、1999年、第32巻、p.322−327
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1及び特許文献1に記載の樹脂は、重合時に異常な高分子量化(分子量分布が非常に広くなる)、或いはゲル化を起こし易く、製造安定性、品質管理において課題があった。また、分散性と、その他の性能を高い次元で両立させることに、まだ改良の余地があった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、分散性と、その他の性能、例えば密着性、硬化性などとを、高い次元で両立できる色材分散組成物用樹脂、及び該樹脂を用いた色材分散組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、式(1)で表される構成単位を主鎖中に有する重合体に着目し、この重合体が色材分散性に非常に優れるだけでなく、特に密着性、硬化性に優れることを見出し、各種インキ、塗料その他に用いられる高機能の色材分散組成物に好適に用いることができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0010】
すなわち、本発明は、色材、分散剤、バインダー樹脂、及び液媒体を含む色材分散組成物において、前記バインダー樹脂が、式(1)で表される構成単位を主鎖中に含む樹脂、であることを特徴とする色材分散組成物である。また、前記バインダー樹脂が、式(1)で表される構成単位を主鎖中に含む樹脂、であることを特徴とする色材分散組成物用バインダー樹脂でもある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、分散性と、その他の性能、例えば密着性、硬化性などとを、高い次元で両立できる色材分散組成物が提供され、また、当該色材分散組成物の構成成分である本発明のバインダー樹脂は、製造安定性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1−2で得られた樹脂粉末を用い、測定したH−NMRチャートを図1に示す
【図2】実施例1−10で得られた樹脂粉末を用い、測定したH−NMRチャートを図2に示す
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を詳述するが、これらは本発明の実施様態の一例であり、これらの内容に限定されるものではない。
【0014】
まず、本発明の色材分散組成物の各構成成分について説明する。本発明の色材分散組成物の必須成分は、(A)色材、(B)分散剤、(C)バインダー樹脂、及び(D)液媒体であって、(C)バインダー樹脂は、式(1)で表される構成単位を主鎖中に含む樹脂である。また、各用途の目的や要求特性に応じて、更に上記以外の(E)その他の成分が配合されても良い。以下、本発明の色材分散組成物を構成する各成分について説明する。
【0015】
【化1】


【0016】
(A)色材
色材は、本発明の色材分散組成物を着色するものであり、従来公知の染顔料が使用できるが、耐久性の点から顔料(有機顔料、無機顔料)が好ましい。
有機顔料としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、多環式顔料(キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジオキサジン系、チオインジゴ系、アントラキノン系、キノフタロン系、金属錯体系、ジケトピロロピロール系等)、染料レーキ系顔料等を使用することができる。無機顔料としては、白色・体質顔料(酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、クレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)、有彩顔料(黄鉛、カドミニウム系、クロムバーミリオン、ニッケルチタン、クロムチタン、黄色酸化鉄、ベンガラ、ジンククロメート、鉛丹、群青、紺青、コバルトブルー、クロムグリーン、酸化クロム、バナジン酸ビスマス等)、黒色顔料(カーボンブラック、ボーンブラック、グラファイト、鉄黒、チタンブラック等)、光輝材顔料(パール顔料、アルミ顔料、ブロンズ顔料等)、蛍光顔料(硫化亜鉛、硫化ストロンチウム、アルミン酸ストロンチウム等)を使用することができる。染料としては、アゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、キノンイミン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、カルボニル系染料、メチン系染料等を使用することができる。
【0017】
以下に、使用できる顔料の具体例を色別に、染料の具体例を構造別にC.I.No.(カラーインデックスナンバー)により示すが、本発明の色材はこれらに限定されるものではない。なお、以下に挙げる「C.I.」はカラーインデックスを、数字はカラーインデックスナンバーを意味する。
【0018】
黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、9、10、12、13、14、15、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、49、53、55、60、61、61:1、62、62:1、63、65、73、74、75、77、81、83、87、93、94、95、97、98、99、100、101、104、105、106、108、109、110、111、113、114、116117、119、120、123、124、126、127、127:1、128、129、130、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、152、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170.172、173、174、175、176、179、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208、209.209:1、212、213、214、215、219等を挙げることができる。
【0019】
橙色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ1、2、3、4、5、13、15、16、17、19、20、21、22、23、24、31、34、36、38、39、40、43、46、48、49、51、60、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79、81等を挙げることができる。
【0020】
赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49、49:1、49:2、50:1、52、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、54、57、57:1、57:2、58、58:4、60、60:1、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、89、90:1、95、101、101:1、104、105、108、108:1、109、112、113、114、122、123、136、144、146、147、149、150、151、164、166、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、181、182、183、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、211、213、214、216、220、221、224、226、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、248、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、279等を挙げることができる。
【0021】
紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、13、14、15、16、17、19、23、25、27、29、31、32、36、37、38、39、42、44、47、49、50を挙げることができる。
【0022】
青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、16、17、17:1、19、24、24:1、25、26、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79、80等を挙げることができる。
【0023】
緑色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55、58等を挙げることができる。
【0024】
褐色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラウン5、6、23、24、25、32、41、42を挙げることができる。
【0025】
黒色顔料としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉄、チタンブラック、C.I.ピグメントブラック1、6、7、9、10、11、12、13、20、31、32、34等を挙げることができる。
【0026】
白色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントホワイト1、2、4、5、6、7、11、12、18、19、21、22、23、26、27、28等を挙げることができる。
アゾ系染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー11、アシッドオレンジ7、アシッドレッド37、アシッドレッド180、アシッドブルー29、ダイレクトレッド28、ダイレクトレッド83、ダイレクトイエロー12、ダイレクトオレンジ26、ダイレクトグリーン28、ダイレクトグリーン59、リアクティブイエロー2、リアクティブレッド17、リアクティブレッド120、リアクティブブラック5、ディスパースオレンジ5、ディスパースレッド58、ディスパースブルー165、ベーシックブルー41、ベーシックレッド18、モルダントレッド7、モルダントイエロー5、モルダントブラック7等を挙げることができる。
【0027】
アントラキノン系染料としては、例えば、C.I.バットブルー4、アシッドブルー40、アシッドグリーン25、リアクティブブルー19、リアクティブブルー49、ディスパースレッド60、ディスパースブルー56、ディスパースブルー60等を挙げることができる。
【0028】
フタロシアニン系染料としては、例えば、C.I.ベーシックブルー5等を挙げることができる。
キノンイミン系染料としては、例えば、C.I.ベーシックブルー3、ベーシックブルー9等を挙げることができる。
【0029】
キノリン系染料としては、例えば、C.I.ソルベントイエロー33、アシッドイエロー3、ディスパースイエロー64等が挙げられる。
ニトロ系染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー1、アシッドオレンジ3、ディスパースイエロー42等を挙げることができる。
【0030】
上述の色材は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。上述の色材は、目的、用途に応じて、適切な平均粒子径を有するものを使用できる。例えば、透明性が必要な場合は、0.1μm以下の小さい平均粒子径が好ましく、隠蔽性が必要な場合は、0.5μm以上の大きい平均粒子径が好ましい。また、上述の色材は、目的、用途に応じて、ロジン処理、界面活性剤処理、樹脂系分散剤処理、顔料誘導体処理、酸化皮膜処理、シリカコーティング、ワックスコーティングなどの表面処理がなされていてもよい。
【0031】
本発明の色材分散組成物における色材の割合は、目的、用途に応じて、適宜設定すればよいが、着色力と分散安定性のバランスを取る点において、色材分散組成物中、通常0.1〜70質量%、好ましくは0.5〜60質量%、更に好ましくは1〜50質量%である。
【0032】
(B)分散剤
分散剤は、色材への相互作用部位と分散媒(液媒体やバインダー樹脂)への相互作用部位とを有し、色材の分散媒への分散を安定化する働きを持つものであり、従来公知の分散剤を使用することができる。一般的には、樹脂型分散剤(高分子分散剤)、界面活性剤(低分子分散剤)、色素誘導体に分類される。
【0033】
樹脂型分散剤として具体的には、例えば、ポリウレタン、ポリアクリレートなどのポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水素基含有ポリカルボン酸エステル、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエステル系、変性ポリアクリレート、エチレンオキサイド/ポリプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0034】
また、構造としては、主鎖が色材への相互作用部位を有するアンカー鎖で、グラフト鎖が分散媒への相互作用性を有する相溶性鎖であるようなグラフト構造の樹脂や、アンカー鎖と相溶性鎖がブロック構造になっている樹脂が、特に好ましく用いられる。
【0035】
界面活性剤としては具体的には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物などのカチオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤;等が挙げられる。
【0036】
色素誘導体は官能基を色素に導入した構造の化合物であり、官能基としては、例えば、スルホン酸基、スルホンアミド基及びその4級塩、ジアルキルアミノ基、水酸基、カルボキシル基、アミド基、フタルイミド基等が挙げられ、母体となる色素の構造としては、例えば、アゾ系、アントラキノン系、キノフタロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系等が挙げられる。
【0037】
以下に、使用可能な市販されている分散剤を商品名で例示するが、本発明の分散剤はこれらに限定されるものではない。
【0038】
例えば、EFKA−46、47,48、745、1101、1120、1125、4008、4009、4046、4047、4520、4540、4550、6750、4010、4015、4020、4050、4055、4060、4080、4300、4330、4400、4401、4402、4403、4406、4800、5010、5044、5244、5054、5055、5063、5064、5065、5066、1210、2150、KS860、KS873N、7004、1813、1860、1401、1200、550、EDAPLAN470、472、480、482、K−SPERSE131、1525070、5207(以上、EFKA ADDITIVES製)、Anti−Terra−U、Anti−Terra−U100、Anti−Terra−204、Anti−Terra−205、Anti−Terra−P、Disperbyk−101、102、103、106、108、109、110、111、112、151、160、161、162、163、164、166、182、P−104、P−104S、P105、220S、203、204、205、2000、2001、9075、9076、9077(以上、ビックケミー製)、SOLSPERSE3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、20000、22000、24000、24000GR、26000、28000(以上、日本ルーブリゾール製)、Disperlon7301、325、374、234、1220、2100、2200、KS260、KS273N、152MS(以上、楠本化成製)、アジスパーPB−711、821、822、880、PN−411、PA−111(以上、味の素ファインテクノ製)、KPシリーズ(信越化学工業製)、ポリフローシリーズ(共栄社化学製)、メガファックシリーズ(DIC製)、ディスパーエイドシリーズ(サンノプコ製)等が挙げられる。
【0039】
これらの分散剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。本発明の色材分散組成物における分散剤の割合は、目的、用途に応じて、適宜設定すればよいが、分散安定性、耐久性(耐熱性、耐光性、耐候性など)や透明性のバランスを取るためには、色材に対して、通常0.01〜60質量%、好ましくは0.1〜50質量%、更に好ましくは0.5〜40質量%である。
【0040】
(C)バインダー樹脂
バインダー樹脂は、分散剤により分散された色材を均一に保持する分散媒であり、色材の分散安定性を補助するとともに、塗布性や乾燥後の塗膜性能を左右する成分である。本発明のバインダー樹脂は、式(1)で表される構成単位を主鎖中に含む樹脂であり、色材分散性に非常に優れ、かつ、特に、密着性、耐熱性、硬化性、透明性等の乾燥後の塗膜性能に優れる。
【0041】
【化2】

【0042】
(Rは水素原子、または炭素数が1〜30の有機基を表す。)
本発明のバインダー樹脂における上記のような特徴の発現は、式(1)で表される構成単位に含まれるテトラヒドロフラン環、及びテトラヒドロフラン環の両隣にあるメチレン基に起因すると推定している。テトラヒドロフラン環は、いわゆるLewis塩基(孤立電子対の供与体)としての作用があり、その作用は強塩基であるアミン類ほど強くなく、適度な塩基性を有するため、分散剤の作用を妨害することなく色材及び分散剤に相互作用し、分散剤により分散された色材をより安定化すると考えられる。また、このLewis塩基性により、テトラヒドロフラン環と基材表面の官能基とが相互作用しやすくなるため、良好な密着性も発現すると考えられる。さらに、テトラヒドロフラン環の酸素補足性により、熱や活性エネルギー線を用いたラジカル硬化における酸素による硬化阻害を低減し、優れた表面硬化性、薄膜硬化性が発現すると考えられる。
【0043】
テトラヒドロフラン環を含む官能基であるテトラヒドロフルフリル基は、下記式(3)で示される機構で酸素を捕捉し、熱や活性エネルギー線を用いたラジカル硬化における酸素による硬化阻害を低減することが知られており、本発明のバインダー樹脂は、下記式(4)に示すように、同様の機構により優れた硬化性が発現すると考えられる。加えてテトラヒドロフランは、極めて広範の物質を溶解させる能力がある物質として、工業用のみならず分析用や研究用にもよく用いられる溶媒だが、本発明のバインダー樹脂が優れた相溶性、乾燥再溶解性を示すのは、テトラヒドロフラン構造を有するためと考えられる。
【0044】
本発明のバインダー樹脂は、主鎖中に環構造を有する構造であるため耐熱性が高く、また、窒素原子を含まないため、透明性が良い。主鎖に環構造を有する樹脂は、耐熱性が高い反面、柔軟性に欠ける場合がほとんどだが、式(1)に示す本発明のバインダー樹脂におけるテトラヒドロフラン環を含む繰り返し単位は、テトラヒドロフラン環の両隣にメチレン基があるため柔軟性が高く、分散性、密着性、硬化性、相溶性、乾燥再溶解性等のテトラヒドロフラン環に由来する各性能が効果的に発現すると考えられる。これらのテトラヒドロフラン環に由来する性能は、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル共重合体のようなテトラヒドロフルフリル基を側鎖に有する(メタ)アクリル系共重合体でもある程度は発現可能であるが、本発明のバインダー樹脂のような高い耐熱性を発現させることは困難である。
【0045】
【化3】

【0046】
【化4】

【0047】
本発明のバインダー樹脂における式(1)で表される構成単位のRは、水素原子、または炭素数が1〜30の有機基を表す。上記のように、本発明のバインダー樹脂の各性能の発現は、主鎖中のテトラヒドロフラン環、及びテトラヒドロフラン環の両隣にあるメチレン基に起因するため、Rは、目的や用途に合わせて、適宜選択すればよい。
【0048】
Rの具体例としては、例えば、水素原子;メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−アミル、s−アミル、t−アミル、n−ヘキシル、s−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、s−オクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、カプリル、ノニル、デシル、ウンデシル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、ペンタデシル、セチル、ヘプタデシル、ステアリル、ノナデシル、エイコシル、セリル、メリシルなどの鎖状飽和炭化水素基;メトキシエチル、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、3−メトキシブチル、エトキシエチル、エトキシエトキシエチル、フェノキシエチル、フェノキシエトキシエチルなどの鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部をアルコキシ基で置き換えたアルコキシ置換鎖状飽和炭化水素基;ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチルなどの鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部をヒドロキシ基で置き換えたヒドロキシ置換鎖状飽和炭化水素基;フルオロエチル、ジフルオロエチル、クロロエチル、ジクロロエチル、ブロモエチル、ジブロモエチルなどの鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部をハロゲンで置き換えたハロゲン置換鎖状飽和炭化水素基;ビニル、アリル、メタリル、クロチル、プロパギルなどの鎖状不飽和炭化水素基、及びその水素原子の一部をアルコキシ基、ヒドロキシ基やハロゲンで置き換えた鎖状不飽和炭化水素基;シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、ジシクロペンタジエニルなどの脂環式炭化水素基、及びその水素原子の一部をアルコキシ基、ヒドロキシ基やハロゲンで置き換えた脂環式炭化水素基;フェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、4−t−ブチルフェニル、ベンジル、ジフェニルメチル、ジフェニルエチル、トリフェニルメチル、シンナミル、ナフチル、アントラニルなどの芳香族炭化水素基、及びその水素原子の一部をアルコキシ基、ヒドロキシ基やハロゲンで置き換えた芳香族炭化水素基;などが挙げられる。また、これら有機基にさらに置換基が結合していてもよい。式(1)中のRは、同一または異なる2種以上であってもよい。
【0049】
本発明のバインダー樹脂における式(1)で表される構成単位の含有量は、目的、用途や、本発明のバインダー樹脂の分子量に応じて適宜設定すればよいが、通常、全繰り返し構成単位中1〜100mol%、好ましくは2〜100mol%、更に好ましくは5〜100mol%である。特に、色材分散性に関しては、本発明のバインダー樹脂が高分子量である場合には、式(1)で表される構成単位の含有量は少なくても性能発現する傾向があり、低分子量である場合には含有量を多くした方が性能発現し易い傾向がある。これは、主鎖1本あたりに含まれる式(1)で表される構成単位の個数(以下、平均官能基数と表す)に関係しているためと考えられ、平均官能基数が0.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは2.0以上である。
【0050】
平均官能基数は、次式のように表されるものである。
平均官能基数=A/P
A:単位質量に含まれる式(1)で表される構成単位のモル数[mol/g]
P:単位質量に含まれる本発明のバインダー樹脂のモル数[mol/g]
Aは、式(1)で表される構成単位の種類が2種類以上ある場合も含めると、次式のように算出できる。
A=ΣA(X=1,2,3,・・・)
=単位質量×(C/100)/F
:単位質量に含まれる、X(X=1,2,3,・・・)種類目の式(1)で表される構成単位のモル数[mol/g]
:単位質量に含まれる、X(X=1,2,3,・・・)種類目の式(1)で表される構成単位の質量割合[質量%]
:X(X=1,2,3,・・・)種類目の式(1)で表される構成単位の分子量[g/mol]
Pは、本発明のバインダー樹脂の数平均分子量(Mn)を用いて次式のように近似できる。
P=単位質量/Mn
Mn:本発明のバインダー樹脂の数平均分子量
したがって、平均官能基数は、C、F、Mnを用いて次式のように表される。
平均官能基数=Mn×Σ{(C/100)×(1/F)} 。
【0051】
なお、後述するように、本発明のバインダー樹脂を式(2)で表される単量体を含む単量体成分を重合する工程を含む製造方法により得る場合は、式(2)で表される単量体の環化率(式(2)で表される単量体から式(1)で表される構成単位が形成される割合)が高いため、C、及びFは、次のように近似できる。
:重合した全単量体に対する、重合したX(X=1,2,3,・・・)種類目の式(2)で表される単量体の質量割合[質量%]
:X(X=1,2,3,・・・)種類目の式(2)で表される単量体の分子量[g/mol]
さらに、重合に用いた各単量体の反応率がいずれも同様に高い(例えば、各単量体の反応率がいずれも90モル%以上となる)場合には、Cは次のように近似できる。
:単量体成分中の、X(X=1,2,3,・・・)種類目の式(2)で表される単量体の質量割合[質量%] 。
【0052】
本発明のバインダー樹脂は、式(2)で表される単量体を含む単量体成分を重合する工程を含む製造方法により得られるものであることが好ましい。これは、式(2)で表される単量体は、重合して式(1)で表される構成単位を高い割合で生成し、異常な高分子量化やゲル化を起こし難いためである。
【0053】
【化5】


式(2)で表される単量体のRは、水素原子、または炭素数が1〜30の有機基を表し、目的や用途に合わせて、適宜選択すればよい。Rの具体例としては、前記式(1)のRと同じである。
【0054】
また、式(2)で表される単量体を化合物名で例を挙げると、α−アリルオキシメチルアクリル酸、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−プロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸i−プロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘプチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−エチルヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸カプリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ノニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸デシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ウンデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ラウリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ミリスチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ペンタデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸セチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ヘプタデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ノナデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エイコシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸セリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メリシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3−メトキシブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシプロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フルオロエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジフルオロエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸クロロエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジクロロエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ブロモエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジブロモエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ビニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸アリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メタリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸クロチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸プロパギル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロペンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸4−メチルシクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリシクロデカニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸アダマンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンタジエニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジメチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリメチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸4−t−ブチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ベンジル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジフェニルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジフェニルエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリフェニルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シンナミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ナフチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸アントラニルなどが挙げられる。これらの式(2)で表される単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0055】
上記単量体成分は、式(2)で表される単量体以外に、共重合可能な他の単量体を含んでいても良く、その種類、量は、本発明の色材分散組成物の目的、用途に応じて、適宜選択、調整すればよい。
【0056】
このような共重合可能な他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸s−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和多価カルボン酸類;コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)等の不飽和基とカルボキシル基の間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和酸無水物類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等の芳香族ビニル類;メチルマレイミド、エチルマレイミド、イソプロピルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミドなどのN置換マレイミド類;ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム等の重合体分子鎖の片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー類;1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルモルフォリン、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニル化合物類;(メタ)アクリル酸イソシアナトエチル、アリルイソシアネート等の不飽和イソシアネート類などが挙げられる。これらの共重合可能な他の単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0057】
上記単量体成分に含まれる式(2)で表される単量体の含有割合は、目的、用途や、本発明のバインダー樹脂の分子量に応じて適宜設定すればよいが、通常、全単量体成分中1〜100mol%、好ましくは2〜100mol%、更に好ましくは5〜100mol%である。
【0058】
上記単量体成分の重合方法としては、バルク重合、溶液重合、乳化重合など、公知の重合方法を用いることができ、目的、用途に応じて適宜選択すればよいが、溶液重合が工業的に有利で、分子量などの構造調整も容易であり好ましい。重合機構としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合など、公知の機構に基づいた重合方法を用いることができるが、ラジカル重合機構に基づく重合方法が、環化率(式(2)で表される単量体から式(1)で表される構成単位が生成する割合)が高く、また工業的にも有利であるため、好ましい。
【0059】
重合開始方法としては公知の方法を用いることができるが、熱や電磁波(赤外線、紫外線、X線等)、電子線などのエネルギー源から重合開始に必要なエネルギーを単量体成分に供給すればよく、さらに重合開始剤を併用すれば重合開始に必要なエネルギーを大きく下げることができ、かつ反応制御が容易となり好ましい。
【0060】
分子量の制御方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、重合開始剤の量や種類、重合温度、連鎖移動剤の種類や量の調整などにより制御できる。
【0061】
上記単量体成分を溶液重合法により重合する場合、重合に使用する溶媒としては、重合反応に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、重合機構、使用する単量体の種類や量、重合温度、重合濃度等の重合条件に応じて適宜設定すればよいが、後に色材分散組成物とする際に使用する液媒体を含むのが効率的で好ましい。
【0062】
例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール等のモノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン,ジオキサン等の環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシブタノール等のグリコールモノエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールモノエーテルのエステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアルキルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、水等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0063】
溶媒の使用量としては、全単量体成分100質量%に対して、40〜1000質量%が好ましく、100〜400質量%がより好ましい。
【0064】
上記単量体成分をラジカル重合機構により重合する場合、熱によりラジカルを発生する重合開始剤を併用するのが工業的に有利で好ましい。そのような重合開始剤としては、熱エネルギーを供給することによりラジカルを発生するものであれば特に限定されるものではなく、重合温度や溶媒、重合させる単量体の種類等の重合条件に応じて、適宜選択すればよい。
【0065】
例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエート、アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、過酸化水素、過硫酸塩等、公知の過酸化物やアゾ化合物等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、重合開始剤とともに遷移金属塩やアミン類などの還元剤を併用してもよい。
【0066】
重合開始剤の使用量は、使用する単量体の種類や量、重合温度、重合濃度等の重合条件、目標とする重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得るには、全単量体成分100質量%に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
【0067】
上記単量体成分をラジカル重合機構により重合する場合、必要に応じて、公知の連鎖移動剤を使用してもよく、ラジカル重合開始剤と併用するのがより好ましい。重合時に連鎖移動剤を使用すると、分子量分布の増大やゲル化を抑制できる傾向にある。このような連鎖移動剤としては、具体的には、例えば、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸等のメルカプトカルボン酸類;メルカプト酢酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸n−オクチル、3−メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸ステアリル、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)等のメルカプトカルボン酸エステル類;エチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、1,2−ジメルカプトエタン等のアルキルメルカプタン類;2−メルカプトエタノール、4−メルカプト−1−ブタノール等のメルカプトアルコール類;ベンゼンチオール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール、2−ナフタレンチオール等の芳香族メルカプタン類;トリス〔(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル〕イソシアヌレート等のメルカプトイソシアヌレート類;2−ヒドロキシエチルジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド等のジスルフィド類;ベンジルジエチルジチオカルバメート等のジチオカルバメート類;α−メチルスチレンダイマー等の単量体ダイマー類;四臭化炭素等のハロゲン化アルキル類などが挙げられる。これらの中では、入手性、架橋防止能、重合速度低下の度合いが小さいなどの点で、メルカプトカルボン酸類、メルカプトカルボン酸エステル類、アルキルメルカプタン類、メルカプトアルコール類、芳香族メルカプタン類;メルカプトイソシアヌレート類などのメルカプト基を有する化合物が好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0068】
連鎖移動剤の使用量は、使用する単量体の種類や量、重合温度、重合濃度等の重合条件、目標とする重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得るには、全単量体成分100質量%に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
【0069】
上記単量体成分をラジカル重合機構により、熱によりラジカルを発生する重合開始剤を用いて重合する際の重合温度としては、使用する単量体の種類や量、重合開始剤の種類や量等に応じて適宜設定すればよいが、50〜200℃が好ましく、70〜150℃がより好ましい。
【0070】
上記単量体成分を重合する工程以外の工程としては、公知の重合体の製造方法で行われる工程が挙げられ、例えば、重合体の変成処理工程、再沈殿や分液などの精製工程、二軸押出機などによる脱溶媒/ペレット化工程、溶媒の除去或いは追加による重合体の濃度を調整する工程などを必要に応じ用いることができる。以下に、重合体の変成処理工程について述べる。
【0071】
本発明のバインダー樹脂は、式(2)で表される単量体を含む単量体成分を重合した後に、さらに変成処理を行うことにより得られるものであってもよい。変成処理を行うことにより、ラジカル重合性不飽和基の導入、グラフト鎖の導入など、通常の重合工程を行うのみでは得ることが困難な構造を得ることができる。
【0072】
このような変成処理方法としては、バインダー樹脂中の式(1)で表される構成単位が完全に失われない処理方法であれば特に制限はないが、例えば、官能基Xを有する単量体を含む単量体成分を重合した後に、官能基Xと反応しうる官能基Yを有する化合物を反応させる方法が挙げられる。
【0073】
このような官能基XとYの組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基とヒドロキシ基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とイソシアネート基、ヒドロキシ基とイソシアネート基、酸無水物基とヒドロキシ基、酸無水物基とアミノ基などが挙げられる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合した後に(メタ)アクリル酸グリシジルを反応させることによりラジカル重合性不飽和基を有するバインダー樹脂とすることができ、また、(メタ)アクリル酸グリシジルを含む単量体成分を重合した後に片末端カルボキシル基性ポリカプロラクトンを反応させることによりポリカプロラクトンをグラフト鎖に有するバインダー樹脂を得ることができる。
【0074】
本発明のバインダー樹脂の重量平均分子量は、目的、用途に応じて適宜設定すればよいが、通常、2000〜250000、好ましくは3000〜200000、更に好ましくは4000〜150000である。
【0075】
本発明の色材分散組成物における本発明のバインダー樹脂の割合は、目的、用途に応じて、適宜設定すればよいが、通常、色材分散組成物中、0.1〜90質量%、好ましくは0.5〜80質量%、更に好ましくは1〜70質量%である。
【0076】
(D)液媒体
液媒体は、分散剤により分散された色材を均一に保持する分散媒であり、主に色材分散組成物の粘度、塗布特性や乾燥特性等を調整する働きを持つ液状物質である。このような液媒体としては、目的、用途に応じて、従来公知の液媒体を適宜選択して使用することができる。
【0077】
例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール等のモノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン,ジオキサン等の環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシブタノール等のグリコールモノエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールモノエーテルのエステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアルキルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸s−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル等の液状(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸等の液状不飽和モノカルボン酸類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等の液状芳香族ビニル類;1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の液状共役ジエン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等の液状ビニルエステル類;アクリル酸アルキレンオキサイドやブタジエンなどの液状オリゴマーや液状ポリマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート等の多官能性単量体;亜麻仁油、ひまわり油、大豆油、桐油等の乾性油;水、等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0078】
液媒体の使用量としては、目的、用途に応じて、適宜設定すればよいが、通常、色材分散組成物中、10〜95質量%、好ましくは20〜90質量%、更に好ましくは30〜85質量%である。
【0079】
(E)その他の成分
本発明の色材分散組成物は、各用途の目的や要求特性に応じて、更に上記の必須成分以外の成分が配合されても良い。例えば、光硬化型インクにおいては、上記必須成分に加え、光重合性単量体、光開始剤を配合するのが好ましく、空気硬化型塗料においては、上記必須成分に加え、亜麻仁油などの乾性油、オクチル酸コバルトなどのドライヤーを配合するのが好ましい。
【0080】
ソルダーレジスト、カラーフィルター用レジストなどのアルカリ現像型のレジストインキにおいては、上記必須成分に加え、アルカリ可溶性のバインダー樹脂、エポキシ樹脂、ラジカル硬化性の不飽和基含有樹脂、多官能アクリレート、及び光開始剤を配合するのが好ましい。
【0081】
また、必要に応じ、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤、レベリング剤、シラン系やアルミニウム系、チタン系などのカップリング剤などを配合してもよい。
【0082】
本発明の色材分散組成物は、公知の分散方法によって調製でき、目的、用途に応じて、適宜選択すればよい。使用可能な分散機としては、例えば、ペイントコンディショナー、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ニーダー、ブレンダー等が挙げられる。色材を小粒径化する場合には、ロールミル、ニーダー、ブレンダー等で混練分散処理をしてから、ビーズミル等のメディアミルで微分散処理をするのが好ましく、さらに、必要に応じて、フィルター等によって濾過処理をして微細なゴミを除去するのが好ましい。
【0083】
分散機に分散液の構成成分を添加する方法としては、一括でも逐次でもよく、順番も任意であり、分散機の種類などに応じて適宜選択すればよい。また、構成成分(色材、分散剤、バインダー樹脂、液媒体、その他の成分)は全て分散機に添加する必要はなく、色材と分散機で色材を分散するために必要最低限の色材以外の成分とを分散機へ投入、分散処理を行い、高濃度で色材を含有する色材分散組成物を調製した後、色材以外の成分をさらに添加、混合してもよい。
【実施例】
【0084】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0085】
<式(2)で表される単量体の合成>
[合成例1〜5]
表1に示すように、式(2)で表される単量体である各α−アリルオキシメチルアクリル酸エステル(AMA−R)を、特開平10−226669に準じて、触媒として1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを用い、アリルアルコールと対応する各α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル(HMA−R)とから合成した。
【0086】
【表1】

【0087】
<式(1)で表される構成単位を主鎖中に含む樹脂の合成>
以下に、式(1)で表される構成単位を主鎖中に含む樹脂の合成について記述する。なお、得られた樹脂溶液の固形分の測定、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)の測定及び式(1)で表される構成単位の平均官能基数の算出、樹脂粉末の取り出し、H−NMRの測定などは、次のように行った。
【0088】
(固形分)
樹脂溶液をアルミカップに約0.3gはかり取り、アセトン約2gを加えて溶解させた後、常温で自然乾燥した。熱風乾燥機を用い、140℃で3時間乾燥した後、デシケータ内で放冷し、重量を測定した。重量減少量から、樹脂溶液の固形分を計算した。
【0089】
(Mw、Mn、Mw/Mn)
樹脂溶液をテトラヒドロフランで希釈し孔径0.45μmのフィルターで濾過したものを、下記ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)装置、及び条件で測定した。
装置:HLC−8220GPC(東ソー製)
溶出溶媒:テトラヒドロフラン
標準物質:標準ポリスチレン(東ソー製)
分離カラム:TSKgel SuperHZM−M(東ソー製)。
【0090】
(平均官能基数)
平均官能基数=Mn×{(単量体成分中のAMA−Rの重量割合[質量%]/100)×(1/AMA−Rの分子量)}。
【0091】
(樹脂の取り出し)
樹脂溶液の一部をテトラヒドロフランで希釈し、過剰のヘキサンに投入して再沈殿を行った。沈殿物を濾過により取り出した後、70℃で真空乾燥(5時間以上)することによって樹脂の白色粉末を得た。
【0092】
H−NMR測定)
上記のように得られた白色粉末200mgをテトラメチルシランを含有する重ジメチルスルホキシド3gに溶解し、核磁気共鳴装置(200MHz、Varian製)により測定した。
【0093】
[実施例1−1]
反応槽として、4口セパラブルフラスコに温度計、冷却管、ガス導入管、攪拌装置を取り付けたものを準備し、反応槽内を窒素置換した。窒素気流下、反応槽にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)223.7部を仕込み、90℃に昇温した。一方、滴下槽Aには合成例1で得たAMA−M20.0部、メタクリル酸ベンジル(BZMA)110.0部、メタクリル酸メチル(MMA)41.4部、メタクリル酸(MAA)28.6部を攪拌混合したものを、滴下槽Bにはt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(PBO)4.7部とPGMEA37.3部を攪拌混合したものを、滴下槽Cには3−メルカプトプロピオン酸(MPA)3.0部とPGMEA39.0部を攪拌混合したものを準備した。
【0094】
反応槽の内温が安定したのを確認してから、滴下槽A、B、Cより各混合物の滴下を同時に開始し、内温を90℃に調整しながら、滴下槽Aからは3時間かけて、滴下槽B及びCからは3.5時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了30分後に昇温を開始して、115℃まで昇温した。115℃を1時間維持してから室温まで冷却し、樹脂溶液を得た。分析結果を表3に示す。
【0095】
[実施例1−2]
滴下槽Aに準備する混合液を、AMA−M60.0部、BZMA110.0部、MMA1.4部、MAA28.6部をよく攪拌混合したものに変えたこと以外は、実施例1−1と同様にして樹脂溶液を得た。また、上記の再沈殿操作により樹脂の白色粉末を得た。分析結果を表3に示す。
また、得られた樹脂粉末を用い、H−NMRを測定した。H−NMRチャートを図1に示す。
【0096】
[実施例1−3]
滴下槽Aに準備する混合液を、AMA−M60.0部、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)110.0部、MMA1.4部、MAA28.6部をよく攪拌混合したものに変えたこと以外は、実施例1−1と同様にして樹脂溶液を得た。分析結果を表3に示す。
【0097】
[実施例1−4]
反応槽として、4口セパラブルフラスコに温度計、冷却管、ガス導入管、攪拌装置を取り付けたものを準備し、反応槽内を窒素置換した。窒素気流下、反応槽にPGMEA208部を仕込み、90℃に昇温した。一方、滴下槽Aにはスチレン(ST)96.8部を、滴下槽BにはAMA−M60.0部、MMA1.4部、MAA28.6部、PBO5.0部をよく攪拌混合したものを、滴下槽CにはMPA3.0部とPGMEA92.0部をよく攪拌混合したものを準備した。
【0098】
反応槽の内温が安定したのを確認してから、反応槽にST13.2部を投入し、その直後に滴下槽A、B、Cより各混合物の滴下を同時に開始し、内温を90℃に調整しながら、滴下槽Aからは8時間かけて、滴下槽B及びCからは10時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了1時間後に昇温を開始して、115℃まで昇温した。115℃を1時間維持してから室温まで冷却し、樹脂溶液を得た。また、上記の再沈殿操作により樹脂の白色粉末を得た。分析結果を表3に示す。
【0099】
[実施例1−5〜1−8]
滴下槽Aに準備する環モノマーの種類を表2に示すものに変えたこと以外は、実施例1−2と同様にして樹脂溶液を得た。分析結果を表3に示す。
【0100】
[実施例1−9]
反応槽として、4口セパラブルフラスコに温度計、冷却管、ガス導入管、攪拌装置を取り付けたものを準備し、反応槽内を窒素置換した。窒素気流下、反応槽にPGMEA213.5部を仕込み、90℃に昇温した。一方、滴下槽Aには合成例1で得たAMA−M121.8部、MMA78.2部を攪拌混合したものを、滴下槽BにはPBO4.7部とPGMEA42.0部を攪拌混合したものを、滴下槽Cには3−メルカプトプロピオン酸メチル(MPM)3.5部とPGMEA44.5部を攪拌混合したものを準備した。
【0101】
反応槽の内温が安定したのを確認してから、滴下槽A、B、Cより各混合物の滴下を同時に開始し、内温を90℃に調整しながら、滴下槽Aからは3時間かけて、滴下槽Bからは3.5時間かけて、滴下槽Cからは4時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後に昇温を開始して、115℃まで昇温した。115℃を1時間維持してから室温まで冷却し、樹脂溶液を得た。また、上記の再沈殿操作により樹脂の白色粉末を得た。分析結果を表3に示す。
【0102】
[実施例1−10]
滴下槽AにAMA−M200.0部を準備したこと以外は、実施例1−9と同様にして樹脂溶液及び樹脂の白色粉末を得た。分析結果を表3に示す。
また、得られた樹脂粉末を用い、H−NMRを測定した。H−NMRチャートを図2に示す。
【0103】
[実施例1−11〜1−14]
滴下槽Aに準備する環モノマーの種類を表2に示すものに変えたこと以外は、実施例1−10と同様にして樹脂溶液及び樹脂の白色粉末を得た。分析結果を表3に示す。
【0104】
[比較例1−1]
滴下槽Aに準備する混合液を、BZMA110.0部、MMA61.4部、MAA28.6部を攪拌混合したものに変えたこと以外は、実施例1−1と同様にして樹脂溶液を得た。また、上記の再沈殿操作により樹脂の白色粉末を得た。分析結果を表3に示す。
【0105】
[比較例1−2]
反応槽として、4口セパラブルフラスコに温度計、冷却管、ガス導入管、攪拌装置を取り付けたものを準備し、反応槽内を窒素置換した。窒素気流下、反応槽にPGMEA111.8部及び2−プロパノール(IPA)111.8部を仕込み、IPAが還流し内温が89℃となるまで昇温した。一方、滴下槽Aにはジメチル−2,2‘−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート(MD)20.0部、BZMA110.0部、MMA41.4部、MAA28.6部をよく攪拌混合したものを、滴下槽Bにはt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(PBO)4.7部、PGMEA18.6部、IPA18.6部を攪拌混合したものを、滴下槽Cには3−メルカプトプロピオン酸(MPA)3.0部、PGMEA19.5部、IPA19.5部を攪拌混合したものを準備した。
【0106】
反応槽の内温及び還流状態が安定したのを確認してから、滴下槽A、B、Cより各混合物の滴下を同時に開始し、滴下槽Aからは3時間かけて、滴下槽B及びCからは3.5時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了30分後に昇温を開始して、IPAを含む溶媒を留去すると同時に、留去した溶媒の量と同量のPGMEAを反応槽に供給した。内温が115℃に到達してから、加熱を一旦停止し、徐々に減圧して系内の圧力を37.3kPaとし、この圧力を維持した。系内の圧力が37.3kPaに到達してから加熱を再開し、減圧により低下した内温を再び115℃としてから、解圧して系内の圧力を常圧に戻し、溶媒の留去及びPGMEAの供給を停止した。さらに室温まで冷却し、樹脂溶液を得た。分析結果を表3に示す。
なお、MDは、非特許文献1及び特許文献2に記載の主鎖にテトラヒドロピラン環を有する樹脂を得ることができる単量体である。
【0107】
[比較例1−3]
反応槽に仕込むPGMEAの量を163.7部とし、滴下槽Aに準備する混合液を、MD60.0部、BZMA110.0部、MMA1.4部、MAA28.6部、PGMEA60.0部をよく攪拌混合したものに変えたこと以外は、実施例1−1と同様にして樹脂溶液を得た。分析結果を表3に示す。
【0108】
[比較例1−4]
滴下槽Aに準備する混合液を、ベンジルマレイミド(BZMI)60.0部、BZMA110.0部、MMA1.4部、MAA28.6部、PGMEA60.0部をよく攪拌混合したものに変えたこと以外は、比較例1−1と同様にして樹脂溶液を得た。また、上記の再沈殿操作により樹脂の白色粉末を得た。分析結果を表3に示す。
なお、BZMIは、耐熱性の高い樹脂として知られている主鎖にイミド環構造を有する樹脂を得ることができる単量体である。
【0109】
[比較例1−5]
滴下槽AにMMA200.0部を準備したこと以外は、実施例1−9と同様にして樹脂溶液及び樹脂の白色粉末を得た。分析結果を表3に示す。
【0110】
[比較例1−6]
AMA-M121.8部のかわりにMD128.1部を用いたこと以外は、実施例1−9と同様にして重合反応を行ったが、重合中にゲル化し、樹脂溶液及び樹脂の粉末を得ることはできなかった。
【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
(本発明のバインダー樹脂の製造安定性に関する効果)
実施例1−3と比較例1−3との対比、及び実施例1−9と比較例1−6との対比から、非特許文献1及び特許文献2に記載の主鎖にテトラヒドロピラン環を有する樹脂は、重合時に異常な高分子量化、或いはゲル化を起こし易いのに対し、本発明のバインダー樹脂はそのような現象を起こし難く、製造安定性に優れることが分かる。
【0114】
<色材分散組成物の調製、及び分散安定性の評価>
[実施例2−1]
(色材分散組成物の調製)
まず、分散剤としてSOLSPERSE24000GR(日本ルーブリゾール製)をPGMEAに溶解させ20%としたものと、バインダー樹脂溶液として実施例1−1で得られた樹脂溶液を20%にPGMEAで希釈したものを用意した。
次に、色材としてC.I.ピグメントグリーン36(Monastral Green 6Y−CL、Heubach製)3.75部、及びC.I.ピグメントイエロー150(Yellow Pigment E4GN−GT、Lanxess製)2.5部を、分散剤としてSOLSPERSE12000(日本ルーブリゾール製)0.2部を225mlマヨネーズ瓶にはかり取った。さらに予め用意しておいた上記の20%分散剤溶液3.75部、及び上記の20%バインダー樹脂溶液14.0部、PGMEA25.8部、径1.0mmのジルコニアビーズ50部を225mlマヨネーズ瓶にはかり取り、フタをした。これをペイントシェーカーにて3時間振とうして分散処理を行った後、色材分散組成物とジルコニアビーズを分別して色材分散組成物を得た。
【0115】
(分散状態の確認)
分散処理直後の色材分散組成物のメジアン径を、動的光散乱式粒径分布測定装置(LB−500、堀場製作所製)により測定し、メジアン系が100nm以下となっているものを○、100nmを超えているものを×とした。結果を表4に示す。
【0116】
(分散安定性の評価)
分散処理直後の分散状態が良好なもの(メジアン径が100nm以下のもの)を恒温室(23℃)で保存し、分散処理をしてから1日後、2週間後、4週間後の粘度をコーンプレート型回転粘度計(TVE22LT、東機産業製)を用いて測定した。また、粘度増加率を次式に従って算出した。結果を表4に示す。
粘度増加率[%]=2週間後(または4週間後)の粘度/1日後の粘度×100−100
[実施例2−2〜2−8]
バインダー樹脂溶液を表4に示すとおりに変えたこと以外は、実施例2−1と同様にして色材分散組成物の調製、及び分散安定性の評価を行った。結果を表4に示す。
【0117】
[実施例2−9]
マヨネーズ瓶に充填する色材分散組成物の構成成分の種類と量を次のように変えたこと以外は、実施例2−1と同様にして色材分散組成物の調製、及び分散安定性の評価を行った。結果を表4に示す。
C.I.ピグメントブルー15:6(Heliogen Blue L6700F、BASF製):5.0部
C.I.ピグメントバイオレット23(Hostaperm Violet RL−NF、Clariant製):1.25部
SOLSPERSE24000GRの20%PGMEA溶液:3.75部
SOLSPERSE12000:0.2部
実施例1−2で得られた樹脂溶液をPGMEAで20%に希釈したもの:14.0部
PGMEA:25.8部。
【0118】
[実施例2−10]
マヨネーズ瓶に充填する色材分散組成物の構成成分の種類と量を次のように変えたこと以外は、実施例2−1と同様にして色材分散組成物の調製、及び分散安定性の評価を行った。結果を表4に示す。
C.I.ピグメントレッド254(Irgaphor Red BT−CF、チバスペシャリティケミカルズ製):4.4部
C.I.ピグメントレッド177(Cromophtal Red A3B、チバスペシャリティケミカルズ製):1.85部
SOLSPERSE24000GRの20%PGMEA溶液:5.0部
実施例1−2で得られた樹脂溶液をPGMEAで20%に希釈したもの:13.75部
PGMEA:25.0部。
【0119】
[実施例2−11]
マヨネーズ瓶に充填する色材分散組成物の構成成分の種類と量を次のように変えたこと以外は、実施例2−1と同様にして色材分散組成物の調製、及び分散安定性の評価を行った。結果を表4に示す。
カーボンブラック(MA220、三菱化学製):6.25部
SOLSPERSE24000GRの20%PGMEA溶液:3.75部
SOLSPERSE12000:0.2部
実施例1−2で得られた樹脂溶液をPGMEAで20%に希釈したもの:14.0部
PGMEA:25.8部。
【0120】
[比較例2−1〜2−3]
バインダー樹脂溶液を表4に示すとおりに変えたこと以外は、実施例2−1と同様にして色材分散組成物の調製、及び分散安定性の評価を行った。結果を表4に示す。
【0121】
【表4】

【0122】
(本発明のバインダー樹脂の分散安定性に対する効果)
実施例2−1〜2−2と比較例2−1との対比から、式(1)で表される構成単位を含むことにより一般的なバインダー樹脂より分散安定性が向上することが分かる。また、実施例2−1〜2−2と比較例2−2〜2−3との対比から、その効果は非特許文献1及び特許文献2に記載の主鎖にテトラヒドロピラン環を有する樹脂よりも高いことが分かる。なお、比較例2−3において分散不良となっているのは、バインダー樹脂(比較例1−3)が異常な高分子量化を起こしているためと考えられる。さらに、実施例2−3〜2−8から、その他の共重合成分を変えても、また、式(1)で表される構成単位におけるRを変えても、分散安定性に優れることが分かる。
【0123】
<密着性の評価>
密着性は、バインダー樹脂が大きく寄与する乾燥後の塗膜性能の1つであり、式(1)で表される構成単位の密着性に対する効果を明確に評価するため、バインダー樹脂のみで評価した。また、樹脂構造としては、カルボキシル基などの酸基やアミンなどの強塩基を含まない樹脂構造とした。
【0124】
[実施例3−1]
実施例1−9で得られたバインダー樹脂の粉末をIPACに溶解し、39%の溶液とした。これをバーコーターを用いてフロート板ガラスに塗布し、室温で10分間自然乾燥した後、熱風乾燥器を用い70℃で5分間乾燥し、厚さ10μmのバインダー樹脂塗膜を得た。この塗膜の密着性を、JIS K 5600−5−6(クロスカット法)に従い、0〜5の6段階に評価した。結果を表5に示す。
【0125】
[実施例3−2〜3−6、比較例3−1]
用いたバインダー樹脂の粉末を表5に示すとおりに変えたこと以外は、実施例3−1と同様にして密着性を評価した。結果を表5に示す。
【0126】
【表5】

【0127】
<酸素による重合阻害を低減する効果の評価(表面硬化性)>
酸素による重合阻害を低減する効果を評価する指標として、光ラジカル硬化における表面硬化性を用いた。表面硬化性は、バインダー樹脂が大きく寄与する乾燥後の塗膜性能の1つであり、式(1)で表される構成単位の表面硬化性に対する効果を明確に評価するため、色材と分散剤を含まない光硬化性樹脂組成物を調製し評価した。
【0128】
[実施例4−1]
実施例1−9で得られたバインダー樹脂の粉末1.2部、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)2.8部、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア1173、チバスペシャリティケミカルズ製)0.2部、IPAC6.0部を攪拌混合して均一な溶液とし、これをバーコーターを用いてフロート板ガラスに塗布した。室温で10分間自然乾燥した後、熱風乾燥器を用い70℃で5分間乾燥し、厚さ10μmの光ラジカル硬化性の塗膜を得た。次に、この塗膜に一定光量を照射できる超高圧水銀ランプを用いてUVを照射し、表面を指触しタック性を確認した。UV照射と指触を繰り返し、表面がタックレスとなった時のUV積算照射量[J/cm]を記録した。UV積算照射量が少ないほど、表面硬化性が良好であることになる。結果を表6に示す。
【0129】
[実施例4−2〜4−6、比較例4−1]
用いたバインダー樹脂の粉末を表6に示すとおりに変えたこと以外は、実施例4−1と同様にして表面硬化性を評価した。結果を表6に示す。
【0130】
【表6】

【0131】
(本発明のバインダー樹脂の密着性、及び表面硬化性に対する効果)
実施例3−1〜3−2、4−1〜4−2と、比較例3−1、4−1との対比から、式(1)で表される構成単位を含むことにより、密着性及び表面硬化性が向上していることが分かる。また、実施例3−3〜3−6、4−3〜4−6から、式(1)で表される構成単位におけるRを変えても、その効果が発現することが分かる。
【0132】
<耐熱分解性の評価>
耐熱分解性は、バインダー樹脂が大きく寄与する乾燥後の塗膜性能の1つであり、式(1)で表される構成単位の耐熱分解性に対する効果を明確に評価するため、バインダー樹脂のみで評価した。
【0133】
[実施例5−1]
実施例1−2で得られたバインダー樹脂の粉末を、次の測定機器、及び条件下で測定し、ダイナミックTG曲線を得た。得られたTG曲線から5%重量減少温度を得た。結果を表7に示す。
装置:Thermo Plus TG8120(リガク製)
雰囲気:窒素フロー100ml/分
昇温条件:階段状等温制御(SIAモード)、昇温速度=10℃/分、質量変化速度値=0.005%/秒。
【0134】
[実施例5−2、比較例5−1〜5−2]
実施例5−1と同様にして各バインダー樹脂の5%重量減少温度を測定した。結果を表7に示す。
【0135】
【表7】

【0136】
<透明性の評価>
透明性は、バインダー樹脂が大きく寄与する乾燥後の塗膜性能の1つであり、透明性の差異を明確にするため、バインダー樹脂のみで評価した。
【0137】
[実施例6−1]
実施例1−2で得られたバインダー樹脂の粉末をPGMEAに溶かして30%溶液とし、この溶液の波長400nmにおける透過率[%]を分光光度計(UV−3100、島津製)で測定し、加熱前の透過率とした。一方、バインダー樹脂の粉末をガラス容器に入れ、230℃で1.5時間加熱してからPGMEAに溶かして30%溶液とし、波長400nmにおける透過率[%]を測定し、これを加熱後の透過率とした。また、加熱前と加熱後の透過率を用い、次式に従って透過率保持率[%]を算出した。結果を表8に示す。
透過率保持率[%]=加熱後透過率/加熱前透過率×100。
【0138】
[比較例6−1]
比較例1−4で得られたバインダー樹脂の粉末を用い、実施例6−1と同様にして透明性の評価を行った。結果を表8に示す。
【0139】
【表8】

【0140】
(本発明のバインダー樹脂の耐熱分解性及び透明性に対する効果)
実施例5−1〜5−3と比較例5−1との対比から、式(1)で表される構成単位を含むことにより耐熱分解性が向上し、実施例5−1〜5−3と比較例5−2との対比から、そのレベルは既知の耐熱樹脂(主鎖にイミド環を含有する樹脂)並の耐熱分解性であることが分かる。また、実施例6−1と比較例6−2との対比から、主鎖にイミド環を含有する樹脂よりも高い透明性を有し、耐熱分解性と透明性を高いレベルで両立していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の色材分散組成物は、分散性と、その他の性能、例えば、密着性、耐熱性、表面硬化性、透明性等とを高い次元で両立させることができ、特に、高機能インキ、塗料に好適であり、例えば、自動車、塗装鋼板、建材、缶、グラビア、フレキソ、インクジェットプリンター、カラーフィルター等に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材、分散剤、バインダー樹脂、及び液媒体を含む色材分散組成物において、前記バインダー樹脂が、下記式(1)で表される構成単位を主鎖中に含む樹脂、であることを特徴とする色材分散組成物。
【化1】

(Rは水素原子、または炭素数が1〜30の有機基を表す。)
【請求項2】
前記バインダー樹脂が下記式(2)で表される単量体を含む単量体成分を重合する工程を含む製造方法により得られることを特徴とする請求項1記載の色材分散組成物。
【化2】

【請求項3】
請求項1記載の色材分散組成物に用いられるバインダー樹脂であって、前記バインダー樹脂が、下記式(1)で表される構成単位を主鎖中に含む樹脂、であることを特徴とする色材分散組成物用バインダー樹脂。
【化3】

【請求項4】
請求項2記載の色材分散組成物に用いられるバインダー樹脂であって、前記バインダー樹脂が、下記式(2)で表される単量体を含む単量体成分を重合する工程を含む製造方法により得られ、かつ、下記式(1)で表される構成単位を主鎖中に含む樹脂、であることを特徴とする色材分散組成物用バインダー樹脂。
【化4】


【化5】

(Rは水素原子、または炭素数が1〜30の有機基を表す。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−168579(P2010−168579A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298595(P2009−298595)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】